JP3663591B2 - 無公害杭打ち工法、および、無公害杭打ち装置 - Google Patents

無公害杭打ち工法、および、無公害杭打ち装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、杭に起振機を取り付けて該杭を地盤内に貫入せしめる振動杭打ち工事において、振動公害および騒音公害の発生を防止する方法、および同装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
既製の杭を地中に貫入せしめて打設する工法の中で、現在もっとも多く用いられているのは振動杭打工法と圧入杭打工法とである。この他にドロップハンマ工法やディゼルハンマ工法なども有るが、多大の振動,騒音を発生するので、その施工が著しく制約されている。
前記の圧入杭打工法および振動杭打工法の技術は、ほとんどそのまま、杭の引抜きにも応用される点に着目して、圧入杭打抜工法,振動杭打抜工法と呼ばれることも少なくない。本発明に係る杭打工法は、杭の無公害打込みのために創作したものであるが、これを杭の引抜きに応用することも容易に可能であり、本発明の技術的範囲に属するものである。すなわち、本発明における「杭の打ち込み」は広義であって、引抜きを含む概念である。
前記圧入杭打工法と振動杭打工法とには、それぞれ長短が有るが、概要的に見れば振動杭打工法は圧入杭打工法に比較して強力であり、比較的硬質の地盤中に杭を打設することができる。その代り振動杭打工法は圧入杭打工法に比較して、振動や騒音の発生が大きい。
【0003】
上記の振動杭打工法は、杭に対して(通常は杭の上端に)起振機を装着して、該杭に長手方向の振動を与えて杭を地盤内に貫入せしめる。
上記の起振機を大別すると偏心重錘式(別称・振子式)と、シリンダ式(別称・油圧式もしくはピストン式)とが有る。
偏心重錘式起振機の基本的な構造機能は、1対の偏心重錘を互いに反対方向に、互いに等速で回転させることにより、該1対の偏心重錘の水平方向の遠心力を相殺せしめるとともに、上下方向の遠心力を重畳せしめて、振動として取り出すものである(具体的には偏心重錘を支承している回転軸の軸受を介してケーシングを振動させる)。
また、シリンダ式の起振機は慣性力で反力を支持する反力ウエイトと、杭を把持するチャックとの間にシリンダ手段を設け、サーボバルブを介して流体エネルギーを供給して該シリンダ手段を繰り返し伸縮せしめることによって杭に振動を与える。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
先に長短を比較説明した圧入杭打工法と振動杭打工法との何れを採用するかは、施工設計者の考察と施工責任者の決断とを必要とする重大問題であるが、原則的に言えば、硬質地盤では圧入工法の遂行が極めて困難であって、振動杭打工法によらざるを得ない場合が多い。
しかし、例えば病院の近傍とか、自動制御設備を有する鉄道の近傍などといった箇所で振動杭打を行なう場合は、振動杭打工法に際して発生する振動や騒音の防止が重要で、しかも難しい問題となる。こうした問題を解消するための一助として、振動杭打工事を施工する際、運転を停止させることなく起振力を増減調節し得る技術が提案されている。
偏心重錘式起振機の起振力増減調節技術の例としては、特開平7−141035号公報が公知であり、
またシリンダ式起振機の起振力増減調節技術の例としては、特開平3−279514号公報が公知であるが、この公知技術には、振動を規制値以内ならしめるように制御するという技術的思想は開示されていない。
【0005】
例えば病院もしくは学校の周辺や、自動制御方式の鉄道線路近傍などのように、騒音,振動規制が著しく厳しい区域で振動杭打工事を遂行しようとした場合、前記公知技術によって起振機の起振力を調節して、振動,騒音を規制値以内に抑制すると、起振力の減少に伴って、杭を地盤の中へ沈下させてゆく貫入力が低下し、杭打ち工事が進まなくなる場合が有る。また、多くの場合、沈下速度が著しく遅くなって作業能率が低下する。
このような場合、振動,騒音の少ない圧入杭打工法を用いようとしても、地盤が比較的硬質であると圧入杭打機では杭を打ち込むことができない。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述の事情に鑑みて、地盤内へ杭を貫入させる力の比較的強大な振動杭打工法を母体として、振動,騒音を規制値以内に抑制しつつ、可能な範囲内で最大限の起振力を発生させて作業能率を高めるため、本発明者らは先ず振動公害発生のメカニズムを解明した。
図3は、振動公害発生の様相を説明するために示した振動杭打工事の模式的な垂直断面図であって、(A)は打込初期の杭の下端が表層部の粘土層内に在る状態を描き、(B)は打込中期の杭の下端がシルト層内に在る状態を描き、(C)は打込末期の杭の下端が主たる支持層である礫層に貫入した状態とクレーンブームとを描いてある。
振動は起振機2で発生して杭1に伝えられるが、杭1に伝わった振動がそのまま地上の人に到達するものではなく、杭と地盤5と摩擦することによっても振動が発生し、杭の下端が地層を破砕したり圧密したりすることによって振動が発生する。その上、地盤5を形成している粘土層5a,シルト層5b,砂層5c,礫層5dなど、それぞれによって情況が異なる。また、起振器2で発生した振動の一部はクレーンロープ4を経てクレーンブーム3にも伝わり、共振した場合には種々のトラブルを発生する。
【0007】
図4は、杭の振動が地層によって変化する状態を説明するために示したもので、(A)は杭の下端が比較的軟質の地盤に対向している状態における振動波形図表であり、(B)は杭の下端が比較的硬質の地盤(礫層)に対向している状態の振動波形図表である。
比較的軟質の地盤に貫入しつつある時の杭の振動(A図)は、正弦波に近い波形ではあるが、杭が上昇から下降に転じる箇所では自由振動に近い状態であるのに比して、杭が下降から上昇に転じる箇所では無視できない程度の反撥を受けていることが波形に表れている。
上述のように杭が地盤から受ける反撥は、(B)図のように硬質地盤ではより著しく、この例では高調波が明瞭に表れている。
(A)図の振動波形と(B)図の振動波形とを比較したとき、振幅には顕著な差は無いが、加速度の最大値を比較すると(B)図のように地盤が硬いときは明確に増大している。
上述のように、地盤の土質変化に応じて振動特性が変化することに着目すると、同一地点に1本の杭を打ち込む場合であっても、上下方向の地質変化に対応して有害なレベルの振動を発生させないように、しかも、制限値を越えない範囲内で最大限に能率を向上させるように起振機を制御することが必要である。
【0008】
上述のような振動公害発生メカニズムの解明に基づいて創作した本発明の基本的な原理を、その1実施形態に対応する図1を参照して略述すると次のとおりである。すなわち、杭打施工地点近傍の公害防止対象箇所の振動,騒音を規制値以内に抑制しつつ、しかも上記規制値の範囲内で最大の作業能率を発揮するため、杭1に振動を与える起振機2は、振動の振幅と周波数とを相互に独立に調節し得る構造のものとする。一方、公害防止対象箇所に振動ピックアップ8とマイクロホン9とを設置し、杭1の沈下進行に伴って変化してゆく振動a〜dを時々刻々に検知して、これを制御装置10に入力する。該制御装置10は、振動ピックアップ8で捕捉される振動が規制値を超えないよう、かつ、マイクロホン9で捕捉される騒音が規制値を超えないように、起振機2が発生する振動の振幅と周波数とのそれぞれを個別に制御する。
【0009】
以上に説明した原理に基づいて前記の目的を達成するための具体的な構成として、請求項1に係る発明工法の構成は、偏心重錘を回転させて振動を発生させる方式の起振機を杭に装着し、上記の杭に対してその長手方向の振動を与えて地盤内へ貫入せしめる杭打ち工法において、
前記偏心重錘を回転せしめつつ、該偏心重錘の実効回転モーメントを変化させて起振力を制御し得る構造の起振機を用いるとともに、
杭の打設地点から離間せしめて、かつ、地盤に接せしめて振動ピックアップを設置し、前記の起振機を作動せしめて杭に振動を与え、該杭を地盤内へ貫入せしめつつ、前記の振動ピックアップまで伝播してくる振動を計測し、
計測された振動の強さを表す物理量が、予め指定された制限値を超えないように、かつ、制限値の範囲内で、なるべく制限値に接近するように前記実効回転モーメントを調節して、起振機の起振力を制御し、
前記の起振機は、振動の周波数を増減調節し得る起振機を用い、該起振機を作動させて杭を地盤中に貫入せしめつつ、振動周波数を試験的に、かつ、連続的もしくは階段的に変化せしめつつ振動ピックアップによる振動の計測を行ない、
計測された振動の強さを表す物理量が、地盤もしくは構築物の共振によって増大する周波数範囲を求め、
上記の共振周波数範囲を避けて前記の起振機を作動せしめて振動杭打作業を遂行することを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る無公害杭打ち工法の構成は、シリンダを繰り返し伸縮させ、もしくはピストンを往復させて振動を発生させる方式の起振機を杭に装着し、上記の杭に対してその長手方向の振動を与えて地盤内へ貫入せしめる杭打ち工法において、
前記シリンダもしくはピストンに供給するエネルギー源の流体力学的な値を変化させて、振動の振幅と周波数とを相互に独立に制御し得る構造の起振機を用いるとともに、
杭の打設地点から離間せしめて、かつ、地盤に接しめて振動ピックアップを設置し、
前記の起振機を作動せしめて杭に振動を与え、該杭を地盤内へ貫入せしめつつ、前記の振動ピックアップまで伝播してくる振動を計測し、
計測された振動の強さを表す物理量が、予め指定された制限値を超えないように、かつ、制限値の範囲内で、なるべく制限値に接近するように、前記シリンダもしくはピストンに供給するエネルギー源を調節して、起振機が発生する振動の周波数を変化させず、かつ杭の貫入速度と関係無く振幅を制御し、
前記の起振機は、振動の周波数を増減調節し得る起振機を用い、該起振機を作動させて杭を地盤中に貫入せしめつつ、振動周波数を試験的に、かつ、連続的もしくは階段的に変化せしめつつ振動ピックアップによる振動の計測を行ない、
計測された振動の強さを表す物理量が、地盤もしくは構築物の共振によって増大する周波数範囲を求め、
上記の共振周波数範囲を避けて前記の起振機を作動せしめて振動杭打作業を遂行することを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明工法の構成は、請求項1又は請求項の構成要件に加えて、
杭打ち施工地点に隣接する、1もしくは複数の建築物もしくは構築物について、予め、その共振周波数を調査し、
調査によって得られた共振周波数、および/または、調査によって得られた共振周波数の整数分の1の周波数を避けて起振機を作動せしめて、振動杭打作業を遂行することを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明工法の構成は、前記請求項3の発明工法の構成要件に加えて、
地質構造に著しい差の無い区域の中に複数本ないし多数本の杭を打設する場合、
上記の区域内に試験的に1本もしくは複数本の杭を打設し、
杭の貫入深さ寸法の関数として、もしくは貫入深さ寸法と一義的に対応する数値の関数として、最適振幅および/または最適周波数を求め、
試験的に打設した杭以外の杭については、上記最適振幅および/または最適周波数で起振機を作動せしめて打設工事を遂行し、
または試験的な打設した杭以外の杭については、前記の振動ピックアップによる振動の実測を行ないつつ、前記最適振幅および/または最適周波数で起振機を作動せしめて打設工事を遂行し、振動ピックアップによる実測値が予め指定された制限値に達したときは、該制限値を超えないように起振機の起振力を抑制することを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明工法の構成は、前記請求項3の発明工法の構成要件に加えて、
1もしくは複数の工区の中に複数本ないし多数本の杭を起振機によって打設する場合、
1本の杭ごとに前記振動ピックアップによる振動の実測および/または前記マイクロホンによる騒音レベルの実測を行いつつ打設工事を遂行し、
杭の貫入深さの変化に伴う振動・騒音の発生・伝播情況の変化に対応して、振動および/または騒音レベルが制限値を超えないように起振機の起振力を制御することを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明装置の構成は、少なくとも1対の偏心重錘と、上記偏心重錘を回転させるための、回転速度調節可能な駆動モータと、前記少なくとも1対の偏心重錘相互の回転位相差を変化させて総合偏心モーメントを調節する手段と、を具備した起振機を有する杭打ち装置において、
地盤の振動を計測し得る振動ピックアップと、上記振動ピックアップの出力信号を入力されて、前記偏心重錘の総合偏心モーメント、およびその回転速度を制御する自動制御装置とが設けられており、
上記の自動制御装置は、入力された振動を周波数分析する機能を有していて、
計測される振動の強さを表す物理量の値が、予め与えられた値以下となり、かつ、予め指定された周波数もしくは周波数範囲の振動の強さを表す物理量の値が、前記と異なる予め与えられた値以下となるように、前記総合偏心モーメント、および/または回転速度を自動的に制御する機能を有しており、
かつ、前記の起振機は、動力源であるエンジンを備えたパワーユニットを有していて、前記の振動ピックアップは、上記パワーユニットのケーシングに装着されて地盤に接するようになっており、
上記振動ピックアップのマイクロホンは、「前記のエンジンから伝わってくる音響を減衰せしめ、かつ、起振機から空中を伝播してくる音響をなるべく減衰させないように、遮音材で半ば囲まれた状態」で、パワーユニットのケーシングに対して直接、もしくは間接的に装着されていることを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る発明装置の構成は、振動を発生させるためのシリンダ手段と、上記シリンダ手段に供給する流体エネルギを調節するサーボバルブとより成る起振機を有する杭打装置において、
地盤の振動を計測し得る振動ピックアップと、上記振動ピックアップの出力信号を入力されて、前記サーボバルブを介してシリンダ手段の作動を制御する自動制御装置とが設けられており、
上記の自動制御装置は、入力された振動を周波数分析する機能を有していて、
計測される振動の強さを表す物理量の値が、予め与えられた値以下となり、
かつ、予め指定された周波数もしくは周波数範囲の振動の強さを表す物理量の値が、前記と異なる予め与えられた値以下となるように、前記のサーボバルブを介して起振機の起振力を、杭の貫入速度と関係無く制御する機能を有しており、
前記の起振機は、動力源であるエンジンを備えたパワーユニットを有していて、
前記の振動ピックアップは、上記パワーユニットのケーシングに装着されて地盤に接するようになっており、
上記振動ピックアップのマイクロホンは、「前記のエンジンから伝わってくる音響を減衰せしめ、かつ、起振機から空中を伝播してくる音響をなるべく減衰させないように、遮音材で半ば囲まれた状態」で、パワーユニットのケーシングに対して直接、もしくは間接的に装着されていることを特徴とする。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係る無公害杭打ち装置を用いた無公害杭打ち工法の1実施形態を示す模式的な垂直断面図である。ただし、原理図として描いてあるので、必ずしも写実的な投影図ではない。
起振機2は、杭1の上端を把持している。本例の起振機2は1対の偏心重錘2aを備えていて、駆動モータ2bによって回転せしめられる。上記1対の偏心重錘は、同期して反対方向に回転し、その位相差を振動制御器2cによって増減調節される。
1個の偏心重錘について考察すると、その偏心モーメントは一定不変であるが、2個の偏心重錘が同期して回転すると該2個の偏心モーメントの総合偏心モーメントが起振力を発生し、かつ、該2個の回転位相差が変わると上記総合偏心モーメントが変化する。これに伴って起振力が変化し、その結果として振動の振幅が変わる。
このようにして、同一回転速度で回転していても、実効偏心モーメントが変化せしめられて、起振力が増減調節される。このような機能を有する偏心重錘式の起振機は公知であるが、本発明においては上述のごとく、回転速度を一定に保って振動の強さを変化させることが重要な構成要件である。
喚言すれば、振動の周波数に対して独立に、振動の強さを調節し得る機能を必要とする。ただし、振動公害の規制値は振幅で表されることも有り、振動加速度(gal)で表されることも有り、また仮定条件の下にデシベル(dB)で表されることも有るので、総括的に言えば周波数に対して独立に、振動の強さを表す物理量を調節し得る型式の偏心重錘式起振機を用いる。
【0022】
この型式の偏心重錘式起振機は、また、振動の強さを表す物理量に対して独立に周波数を調節することもできる。この機能を詳細に見れば次のごとくである。実効回転モーメント(総合偏心モーメントと同意)を変化させずに偏心重錘の回転速度を変えると、これに伴って振動の強さも変わってしまう。しかし、実効回転モーメントを調節して振動の強さを変えないことは容易に可能である。本発明においては、振動の強さを一定ならしめるように補償しつつ周波数を変化させる場合も含めて、振動の強さ(を表す物理量)に対して独立に周波数を制御する、というものとする。
【0023】
杭1の打設地点から離れて、その近傍のパワーユニット6を設置する。このパワーユニットは動力源としてのエンジンを備えていて、起振機2に対してケーブルもしくはホース7を介して動力エネルギを供給する。
杭打地点から離れて、その近傍に、地盤に接せしめて振動ピックアップ8を設置する。ここに地盤に接せしめてとは、そのセンサーエレメントが地盤の振動を検知し得る状態であることを意味し、必ずしも外観的に接触していることを要しない。
さらに、その近傍に、空中を伝播してくる音響を捕捉し得るようにマイクロホン9を設置し、該マイクロホン9の出力信号および前記振動ピックアップ8の出力信号を、制御装置10に入力せしめる。
【0024】
杭1が地上に立てられて、地中に貫入され始めると、発生する振動が矢印aのように地盤内を伝播し、振動ピックアップ8に到達して検知される。
杭1の貫入深度が深まるにつれて矢印b,矢印c,矢印dのように、広い範囲から振動が発生する。本図1にはa〜dの4本の矢印で表してあるが、これに限らず、杭1が地盤5に接している区域Lの総べての個所から振動が発生して、四方八方へ伝播してゆく、矢印a〜dは、それらの中の一部分が振動ピックアップ8に到達することを模式的に例示したものである。
起振機2で発生した騒音は、矢印eのように空中を伝わってマイクロホン9に到達する。このマイクロホン9には、暗騒音(矢印g)も入ってくる。ここにおいて、振動杭打工事の施工者は、自己が発生した騒音のみでなく、暗騒音を加えた合計量が騒音公害規制値以下であることを求められる。従って、本実施形態においては、起振機2からの音響(矢印e)と暗騒音(矢印g)とを区別せずにマイクロホン9で検知して、その出力信号を制御装置10に入力させる。
振動ピックアップ8の出力信号と、マイクロホン9の出力信号とを入力された制御装置10は、以下に述べるようにして制御の演算を行ない、起振機2の振動制御器2cに対して指令信号fを与え、偏心重錘2aの総合偏心モーメントを増減調節する。
【0025】
本実施形態においては、制御の主目的を振動とし、副目的を騒音として構成されている。その理由は次のとおりである。すなわち、起振機2から発生する騒音については、該起振機を防音カバーで覆うという方法や、杭打ち工区の周囲に防音壁を設けるという方法も有るが、杭と地盤とが接触している箇所から発生した振動は、その伝播経路の途中を遮断することが実際問題としては不可能であって、振動の発生源を制御することのみが有効な手段だからである。
【0026】
杭打ち工事においては、許容される振動の強さを表す物理量が予め与えられている。例えば病院の場合、地震工学における震度階の「無感」の段階(0.8gal以下)が一つの目安である。
起振機2が発生する振動の周波数は、駆動モータ2bの回転速度によって定まり、総合偏心モーメントだけを変えても周波数は変化しない。そして、総合偏心モーメントを増減調節すると、振動の強さは比例的に変化する。そこで前記の制御装置10は指令信号fを出力して、振動制御器2cを作動させ、振動の強さを表す物理量が、予め指定された値(振動公害規制値)を超えないように、総合偏心モーメントを制御する。
上記の総合偏心モーメントの制御は、振動の強さを表す物理量が振動公害規制値を超えないように、かつ、振動公害規制値を超えない範囲内で、なるべく該振動公害規制値に近づけるように制御する。これにより、振動公害を発生すること無く、しかも、振動公害を発生しない範囲内で可能な限り作業能率を向上せしめることができる。
【0027】
図1を参照して以上に説明した実施形態は、偏心重錘起振機に本発明を適用して改良した1例であるが、次に、この図1を援用して油圧式(別称・ピストン式,シリンダ方式)の起振機に本発明を適用して改良した実施形態について説明する。
油圧式起振機は、偏心重錘2aや駆動モータ2bを備えておらず、その代り、反力ウエイトと油圧シリンダ手段(共に図示せず)を備えている。上記の油圧シリンダ手段は油圧に限られず、流体圧シリンダ手段であれば良い。
上述のごとく、図1を油圧式起振機として見る場合、パワーユニット6の中にはエンジン駆動の油圧ポンプ(図示せず)が設けられており、図示の符号7の部材は油圧ホースとなり、振動制御器2cはサーボバルブより成る。上記サーボバルブは油圧シリンダ手段を制御して往復作動を行なわせ、振動を発生させる。この場合、振動の周波数と振動の強さとは、制御装置10の指令信号fによって定められる。本実施形態において、発生する振動の周波数はサーボバルブの切換作動回数により、振動の強さは(油圧×流量)により、それぞれ相互に独立に制御される。
振動の強さと周波数とが相互に独立に制御されれば、先に説明した偏心重錘式起振機におけると同様にして、振動公害規制値を超えないように、かつ、振動公害規制値に近づけるように、振動の強さを表わす物理量を制御することにより、前記偏心重錘式起振機におけると同様の効果を奏することができる。
【0028】
(図1参照)偏心重錘式起振機の場合も油圧式起振機の場合も、振動の強さを表す物理量の制御は、「振動ピックアップ8によって検知される物理量が振動公害規制値を超えないこと」を例外の無い第1条件として行なわれる。
さらに、上記の第1条件の下において、なるべく上記の振動公害規制値に近づけた制御が行なわれることは既に述べたとおりであるが、この「なるべく規制値に近づける」という条件は、騒音公害を生じないことという制約が加えられる。
騒音公害規制に対応する制御は、マイクロホン9が感知する音響レベルを騒音公害規制値以内ならしめるように起振機2の振動出力を制限するよう、制御装置10によって行なわれる。
【0029】
(イ)起振機2の発生する振動が同じであっても、地層構造の相違に因り、振動ピックアップ8に到達する振動の強さは、共振現象のために著しく変わる場合が多い(むしろ、変わるのが通常である)。
(ロ)振動ピックアップ8に到達する振動の強さが同じであっても、該振動ピックアップの近傍に存在する建造物(図示せず)に生じる振動は、共振現象に因って著しく変化する。従って杭打ち工事において共振の問題を無視することはできない。
同じく共振現象に因るものであっても、前記の(イ)と(ロ)とは本質的に異なる問題であり、これに対する方策も異なったものでなければならない。以下、順次に説明する。
地盤の振動が振動ピックアップ8に到達するまでの問題に対処するため、複数本ないし多数本の杭を打つに先立って、もしくは杭打ち地点を移動するに先立って、次に述べるようにして試験的に1本の杭を打設する。この場合「試験的に」とは、利用すべきデータを採取しながらという意味であって、余分の杭を無駄打ちするには及ばない。
【0030】
試験打設は、連続的に、もしくは段階的に、起振機が発生する振動の周波数を変化させながら行ない、振動ピックアップ8に到達する振動の強さ(例えば振幅)を検出,記録する。
すると、起振機2が発生する振動の振幅が一定であっても、振動ピックアップ8で検出される振動の振幅がピーク値を示す周波数が発見される。ピークの鮮明な場合と不鮮明な場合とは有るが、地盤、および地中構造物は一般に固有振動数を有しているので、ほとんど例外無く共振周波数もしくは共振周波数範囲(別名共振周波数帯)が見出だされる。試験打設の後の本格的な打設においては、上記の共振周波数もしくは共振周波数帯を避けて行なう。
この場合、起振機を吊持しているクレーンの共振周波数も避けねばならないが、クレーンブームの共振周波数は通常の場合は既知であるから、試験打設においても、当初からクレーンブームの共振周波数を避けて行なうことが望ましい。
【0031】
杭打設工事場の近くに、特に振動を禁忌する建造物などが有る場合としては、例えば病院、博物館などのように建造物の中の人または物に振動が伝わってはならない場合と、例えば煉瓦造りの建物などのように建物自体が崩壊する危険を有している場合とが有る。
このような場合、工事設計者は当然に斯うした事情を知悉しており、もしくは調査した上で工事仕様書を発行するから、杭打工事の施工責任者は指示された共振周波数、および、その整数分の一の周波数を避けて起振機の発生振動周波数を設定すれば良い。整数比の周波数を避ける理由は、起振機の発生周波数の高調波による共振を防止するという意味も含んでいる。
前掲の図3について説明したように、杭を打ち込む場合、その打込み深度の間に複数の地層が存在するのが通例である。地層,地質が異なれば、その振動特性も変わる。
【0032】
極度に模式化した例について考えると(図3(C)参照)、起振機2が発生する振動の大きさが一定であれば、杭1の下端が固結した礫層5dは到達すると、地盤を伝播してゆく振動(図1における矢印d)が大きくなる。この振動増大は振動ピックアップ8によって感知されるので、感知される振動が規制値に比して若干少なくなるように起振機2の振動出力を制御すれば良い。
【0033】
実際には、図3に示したように各種の地層5a,5b,5cを貫いて支持層となる地層5dに到達する間に、図1に示した振動(矢印a)ないし振動(矢印d)が変遷するので、杭の貫入深度の増加に伴って最適の起振機振幅を求めることができる。
上述のようにして、杭の貫入深さ寸法の関数としての最適振幅(最適起振力の意)を、試験的に求める。
先に、回避すべき振動周波数の策定を終えているので、本格的な杭打ち作業の際は上記の回避すべき振動周波数以外の周波数で杭を打ち込みながら、貫入深度に応じて、上記の試験的に求めた最適振幅(最適起振力)(貫入深さの関数)となるように起振機の出力を制御する。この方法は、地層構造が平行地層から成っているときに好適である。なお、前記の「杭の貫入深さ」は、間接的に計測しても良い。すなわち、杭の貫入深さと一義的に対応する物理量(例えばクリーンロープ4の繰り出し長さ寸法)を以て代えることができる。
【0034】
1本の試験打設によって得られたデータに従って、その他の杭を一定のパターンで打設すると、起振機の起振力制御が簡単である。この場合、上記一定のパターンは、制御装置10に記憶させておいて、各杭ごとに貫入深度の関数としての適正起振力(従来技術におけるがごとき貫入速度の勘案は不要)を制御することによって、全部の杭について無公害杭打ち作業を遂行することができ、しかも全部の杭について公害規制に抵触しない範囲内において最大限の作業能率を発揮することができる。
上述のようにして多数の杭を一定のパターンで打設する場合、振動ピックアップ8および/またはマイクロホン9を併用して、公害規制抵触しないことを確認するように監視することも有益である。
地盤構造が複雑であって、地層が平行でない場合は、1もしくは複数の工区の中に打設する複数本ないし多数本の杭のそれぞれについて、杭の打ち始めから打ち終りまでの間、振動ピックアップ8によって検される振動の強さを表す物理量を振動公害規制値未満のなるべく規制値に近い値とする制御、および/または、マイクロホン9によって検出される音響を騒音公害規制値以内ならしめる制御を、1本の杭ごとに実施しなければならない。
【0035】
先に述べたように、起振機が発生する振動の周波数を変えながらデータを記録して試験杭を打設して、地盤や構造物の共振周波数を求め、得られた共振周波数を避けて本格的な打設を行なうという方法は、共振に因る不測のトラブルを未然に防止するために有効であるが、試験杭を打設してデータを記録するには、それなりの時間と費用とが必要であるから、打設本数が少ない場合には不経済である。そこで次のような、周波数分析を利用した便法も、作業条件によって非常に有益である。
制御装置10は、振動ピックアップ8から入力された振動波形を周波数分析し得る機能を備えたものとしておく。
振動ピックアップ8に対しては、矢印a〜dで代表されるような各種の振動が到達し、該振動ピックアップ8は種々の振動が合成された複合振動を検出する。検出された複合振動を制御装置10で分析した結果を熟練した技術員が見れば地盤および構築物の振動工学的な特性の概要を判定することができる。従って、上記の判定に基づいて、施工に適正な(安全で高能率な)振動周波数を策定することができる。例えば、堰堤の近傍で杭を打っているときの周波数分析データの中に、通常の作業においては表れないような周波数にピークが表れているときはその周波数が堰堤の固有振動数であると推測される。このような判定は、各種の作業条件で杭打作業を行なった経験者であれば、容易に、かつ即座に行なうことができる。
【0036】
図1は、先に述べたように模式化して描かれた原理的な説明図であるから、パワーユニット6と、振動ピックアップ8およびマイクロホン9とを離間させた形に描いてあるが、実際にこのような構造であると、杭打ち工事に際して振動ピックアップ8やマイクロホン9を設置して配線し、杭打ち工事の後は撤収して保管しなければならない。その上、作業中に外部障害物の衝突を受けるなどして損傷を被る虞れ無しとしない。
図2は、前掲の図1において模式的に描かれていた振動ピックアップと、マイクロホンと、自動制御装置と、パワーユニットとの間の相対的な位置関係を示すとともに、センサ類の出力信号の伝達を表す矢印およびマイクロホンの付属部材を描いた断面図である。
振動ピックアップ8は、パワーユニット6のケーシング(フレームを含む)に装着されて、地盤5に接せしめられ、その出力信号は自動制御装置11の中に無公害演算部11aに入力されるようになっている。
マイクロホン9は、パワーユニット6のケーシングに対して直接に、もしくは間接的に設置されるとともに、回転機器6bからの音響を遮断するように防音材12で半ば囲まれている。上記遮音材12は、パワーユニット外からの音響はなるべく減衰させないように、かつ、回転機器6bからの音響はなるべく減衰させるように構成されている。
本図2に示された構造によると、振動ピックアップ8やマイクロホン9の設置,撤収,保管といった高度の技術的操作を必要としなくなるので、未経験労務者を使用せざるを得ない開発途上国向けに好適である。また、本邦内において開発途上国出身の出稼ぎ労務者に就役させる場合にも、格別の教員訓練を必要とせず、振動ピックアップやマイクロホンの接続忘れ,接続誤り、置き忘れなどのトラブルを生じる虞れが無い。
【0037】
【発明の効果】
以上に本発明の実施形態を挙げてその構成・機能を明らかならしめたように、請求項1の発明工法においては、起振機が発生する振動の周波数が偏心重錘の回転数と一致する。従って、振動の周波数と振動の振幅とを相互に独立に制御することができる。
一方、公害防止のための振動の強さの規制は、振幅で表示される場合も有れば振動加速度で表示される場合も有り、またデシベルで表される場合も有る。
しかしながら、実際問題においては振動杭打ちの為に発生させる振動エネルギー量の大小だけでなく、地盤や構築物の共振によって実害の大小が決まる。
本請求項1の発明の工法は偏心重錘式の振動杭打機に適用され、地盤や構築物の共振を回避して振動公害を防止することができる。
【0038】
請求項2の発明工法は、ピストン式の振動杭打機に適用され、前記請求項1におけると同様にして地盤や構築物の共振を回避し、振動公害を防止することができる。
【0039】
請求項3の発明工法によると、人造の構築物(例えば家屋,橋染,柱,擁壁など)が共振で破損することを完全に防止することができる(同一周波数における共振のみでなく、整数倍関係の共振も防止する)。さらに、構築物の共振を防止することは、該構築物そのものの破損を防止するのみでなく、その中に居る人や、その中に設置されている易損品に対する振動の害を間接的に防止することができ、実際問題としては上述のごとく人や易損品を間接的に保護し得ることの実用的価値が大きい。
例えば病院の近傍で杭打工事を施工したとき、病院の建屋を支持している地盤の振動を無感振動(加速度0.8gal(約55dB)以下)であっても、建屋が共振すると、建屋の中で横臥している患者は著しい刺激を受ける。本請求項3は、こうした不測の事態を未然に、かつ完全に防止して無公害杭打工事を可能ならしめる。
【0040】
請求項4の発明方法によると、試験的な杭の打設によって当該地区の地質構造の振動工学的な特性を「最適振幅および/または最適周波数」をパラメータとして把握することにより、試験杭以外の大多数の杭については1本ごとの精密な制御を省略して、しかも無公害で打設することができるので、工事の管理工数が軽減される。
この請求項4の発明工法は、地層がほぼ平行をなしている場合に適用することが望ましい。
地層構造が単純かつ平行であると予測して本請求項4を適用して杭打設工事を開始した後、振動ピックアップによる計測値がしばしば振動制限値を超えそうになった場合は、本請求項4の適用を中止して1本ずつの制御に切り替えることも容易に可能である。
【0041】
請求項5の発明工法によると、地層構造が複雑であったり、工区が広大であったり、もしくは複数工区が分散していたりしても、公害規制に違背することなく、しかも杭打作業能率の低下を最小限度に抑えて振動杭打工事を遂行することができる。
この請求項5に係る工法は、複数の工区において各工区ごとに起振機を配設して複数本の杭を同時に併行的に打設する場合を適用することもでき、また、1個の起振機を移動させて複数の工区を順次に巡回しつつ、1本ずつ打設する場合にも適用することができる。
【0042】
請求項6の発明装置によると、偏心重錘の回転速度を調節することにより、発生する振動の周波数を制御することができ、かつ該偏心重錘の総合偏心モーメントを調節することにより、発生する振動の振幅を制御することができ、上述のようにして発生させる振動の周波数と振幅とを個別に制御することができるので、一つには周波数を変えることなく振幅を制御して振動公害の規制値以内の振幅に抑制することができる。同様の理由により、振動公害の規制値が振動加速度で与えられてもデシベルで与えられても該規制値をクリアーすることができる。
さらに、振幅もしくは振動加速度を所望の値に保ちつつ周波数を変化させることもできる。このように周波数を任意に制御できるから、地盤の共振周波数を避けて所望強さの振動を発生させることもでき、建造物の共振周波数を避けて所望強さの振動を発生させることもできる。
特に、本請求項6の発明装置によると、振動公害規制をクリアーしつつ、併せて騒音公害規制をクリアーすることができる。
本請求項に係るマイクロホンは空中伝播音響を感知するようになっているので、杭が地盤と摩擦して発生する音響や、杭が地層を破砕することによって発生する音響はほとんど感知せず、専ら地上機器が発生する騒音を感知するので、地上に在る人の感覚に近い音響を捉えて、これに基づいて実用的で実効の有る騒音制御が可能である。
そして、本請求項6の発明によると、杭打ち工事に携わる作業員が、振動ピックアップおよびマイクロホンを設置したり、撤収したり、保管したりする必要を無くすることができる。この請求項6の発明は建設作業現場の実情から生まれたものであって「高度の知識を有し、現場管理能力を備えた熟練技術者」が稀少となった業界の趨勢に鑑み、単純労務者によって公害防止作業を可能ならしめるように創作した、極めて実用的な発明である。 これを建設機械メーカーの立場から見れば、ユーザーの管理業務負担を軽減させることによって需要を喚起し、振動杭打機産業の発展に寄与することができる。
さらに、上述したように現場管理の負担を軽減することによって、業界技術レベルの高くない開発途上国に対する輸出の促進に貢献するところも決して少なくない。
【0043】
請求項7の発明装置によると、シリンダ手段を用いた(いわゆるピストン式の)振動杭打機を改良して、振動公害や騒音公害を防止し、しかも可能な範囲内で高能率の作業を遂行することができる。
特に、周波数分析機能を有しているので、地盤の振動工学的特性に対応して、振動を抑制しつつ、可能な範囲内で最大振幅で作動せしめることにより、公害規制のクリアーと、作業能率向上とを両立せしめることができる。
前記の地盤の振動特性は不変のものではなく、杭の貫入に伴って該杭を接触している地層の範囲が増えてゆき、該杭の下端によって破砕,圧密される地層が変化してゆくので、本請求項の発明装置は時々刻々に変化してゆく「杭に対して振動工学的に関連している地層」に対応して、リアルタイムに振動公害規制や騒音公害規制に違反しない範囲内で最大能率の振動杭打工事を遂行することを可能ならしめる。
本請求項に係るマイクロホンは、空中伝播音響を感知するようになっているので、杭が地盤と摩擦して発生する音響や、杭が地層を破砕することによって発生する音響はほとんど感知せず、専ら地上機器が発生する騒音を感知するので、地上に在る人の感覚に近い音響を捉えて、これに基づいて実用的で実効の有る騒音制御が可能である。
本請求項7の発明によると、杭打ち工事に携わる作業員が、振動ピックアップおよびマイクロホンを設置したり、撤収したり、保管したりする必要を無くすることができる。この請求項7の発明は建設作業現場の実情から生まれたものであって「高度の知識を有し、現場管理能力を備えた熟練技術者」が稀少となった業界の趨勢に鑑み、単純労務者によって公害防止作業を可能ならしめるように創作した、きわめて実用的な発明である。
これを、建設機械メーカーの立場から見れば、ユーザーの管理業務負担を軽減させることによって需要を喚起し、振動杭打機産業の発展に寄与することができる。
さらに、上述したように現場管理の負担を軽減することによって、業界技術レベルの高くない開発途上国に対する輸出の促進に貢献するところも決して少なくない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る無公害杭打ち装置を用いた無公害杭打ち工法の1実施形態を示す模式的な垂直断面図である。ただし、原理図として描いてあるので、必ずしも写実的な投影図ではない。
【図2】前掲の図1において模式的に描かれていた振動ピックアップと、マイクロホンと、自動制御装置と、パワーユニットとの間の相対的な位置関係を示すとともに、センサ類の出力信号の伝達を表す矢印およびマイクロホンの付属部材を描いた断面図である。
【図3】振動公害発生の様相を説明するために示した振動杭打工事の模式的な垂直断面図であって、(A)は打込初期の杭の下端が表層部の粘土層内に在る状態を描き、(B)は打込中期の杭の下端がシルト層内に在る状態を描き、(C)は打込末期の杭の下端が主たる支持層である礫層に貫入した状態とクレーンブームとを描いてある。
【図4】杭の振動が地層によって変化する状態を説明するために示したもので、(A)は杭の下端が比較的軟質の地盤に対向している状態における振動波形図表であり、(B)は杭の下端が比較的硬質の地盤(礫層)に対向している状態の振動波形図表である。
【符号の説明】
1…杭、2…起振機、2a…偏心重錘、2b…駆動モータ、2c…振動制御器、3…クレーンブーム、4…クレーンロープ、5…地盤、5a…粘土層、5b…シルト層、5c…砂層、5d…礫層、6…パワーユニット、6a…操作盤、6b…回転機器、7…ケーブルもしくはホース、8…振動ピックアップ、9…マイクロホン、10…制御装置、11…自動制御装置、11a…無公害演算部、12…遮音材。

Claims (7)

  1. 偏心重錘を回転させて振動を発生させる方式の起振機を杭に装着し、上記の杭に対してその長手方向の振動を与えて地盤内へ貫入せしめる杭打ち工法において、前記偏心重錘を回転せしめつつ、該偏心重錘の実効回転モーメントを変化させて起振力を制御し得る構造の起振機を用いるとともに、
    杭の打設地点から離間せしめて、かつ、地盤に接せしめて振動ピックアップを設置し、前記の起振機を作動せしめて杭に振動を与え、該杭を地盤内へ貫入せしめつつ、前記の振動ピックアップまで伝播してくる振動を計測し、
    計測された振動の強さを表す物理量が、予め指定された制限値を超えないように、かつ、制限値の範囲内で、なるべく制限値に接近するように前記実効回転モーメントを調節して、起振機の起振力を制御し、
    前記の起振機は、振動の周波数を増減調節し得る起振機を用い、該起振機を作動させて杭を地盤中に貫入せしめつつ、振動周波数を試験的に、かつ、連続的もしくは階段的に変化せしめつつ振動ピックアップによる振動の計測を行ない、
    計測された振動の強さを表す物理量が、地盤もしくは構築物の共振によって増大する周波数範囲を求め、
    上記の共振周波数範囲を避けて前記の起振機を作動せしめて振動杭打作業を遂行することを特徴とする、無公害杭打ち工法。
  2. シリンダを繰り返し伸縮させ、もしくはピストンを往復させて振動を発生させる方式の起振機を杭に装着し、上記の杭に対してその長手方向の振動を与えて地盤内へ貫入せしめる杭打ち工法において、
    前記シリンダもしくはピストンに供給するエネルギー源の流体力学的な値を変化させて、振動の振幅と周波数とを相互に独立に制御し得る構造の起振機を用いるとともに、
    杭の打設地点から離間せしめて、かつ、地盤に接しめて振動ピックアップを設置し、
    前記の起振機を作動せしめて杭に振動を与え、該杭を地盤内へ貫入せしめつつ、前記の振動ピックアップまで伝播してくる振動を計測し、
    計測された振動の強さを表す物理量が、予め指定された制限値を超えないように、かつ、制限値の範囲内で、なるべく制限値に接近するように、前記シリンダもしくはピストンに供給するエネルギー源を調節して、起振機が発生する振動の周波数を変化させず、かつ杭の貫入速度と関係無く振幅を制御し、
    前記の起振機は、振動の周波数を増減調節し得る起振機を用い、該起振機を作動させて杭を地盤中に貫入せしめつつ、振動周波数を試験的に、かつ、連続的もしくは階段的に変化せしめつつ振動ピックアップによる振動の計測を行ない、
    計測された振動の強さを表す物理量が、地盤もしくは構築物の共振によって増大する周波数範囲を求め、
    上記の共振周波数範囲を避けて前記の起振機を作動せしめて振動杭打作業を遂行することを特徴とする、無公害杭打ち工法。
  3. 杭打ち施工地点に隣接する、1もしくは複数の建築物もしくは構築物について、予め、その共振周波数を調査し、
    調査によって得られた共振周波数、および/または、調査によって得られた共振周波数の整数分の1の周波数を避けて起振機を作動せしめて、振動杭打作業を遂行することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載した無公害杭打ち工法。
  4. 地質構造に著しい差の無い区域の中に複数本ないし多数本の杭を打設する場合、
    上記の区域内に試験的に1本もしくは複数本の杭を打設し、
    杭の貫入深さ寸法の関数として、もしくは貫入深さ寸法と一義的に対応する数値の関数として、最適振幅および/または最適周波数を求め、
    試験的に打設した杭以外の杭については、上記最適振幅および/または最適周波数で起振機を作動せしめて打設工事を遂行し、
    または、試験的に打設した杭以外の杭については、前記の振動ピックアップによる振動 の実測を行ないつつ、前記最適振幅および/または最適周波数で起振機を作動せしめて打設工事を遂行し、振動ピックアップによる実測値が予め指定された制限値に達したときは、該制限値を超えないように起振機の起振力を抑制することを特徴とする、請求項3に記載した無公害杭打ち工法。
  5. 1もしくは複数の工区の中に複数本ないし多数本の杭を起振機によって打設する場合、
    1本の杭ごとに前記振動ピックアップによる振動の実測および/または前記マイクロホンによる騒音レベルの実測を行いつつ打設工事を遂行し、
    杭の貫入深さの変化に伴う振動・騒音の発生・伝播情況の変化に対応して、振動および/または騒音レベルが制限値を超えないように起振機の起振力を制御することを特徴とする、請求項3に記載した無公害杭打ち工法。
  6. 少なくとも1対の偏心重錘と、上記偏心重錘を回転させるための、回転速度調節可能な駆動モータと、前記少なくとも1対の偏心重錘相互の回転位相差を変化させて総合偏心モーメントを調節する手段と、を具備した起振機を有する杭打ち装置において、
    地盤の振動を計測し得る振動ピックアップと、上記振動ピックアップの出力信号を入力されて、前記偏心重錘の総合偏心モーメント、およびその回転速度を制御する自動制御装置とが設けられており、
    上記の自動制御装置は、入力された振動を周波数分析する機能を有していて、
    計測される振動の強さを表す物理量の値が、予め与えられた値以下となり、かつ、予め指定された周波数もしくは周波数範囲の振動の強さを表す物理量の値が、前記と異なる予め与えられた値以下となるように、前記総合偏心モーメント、および/または回転速度を自動的に制御する機能を有しており、
    かつ、前記の起振機は、動力源であるエンジンを備えたパワーユニットを有していて、前記の振動ピックアップは、上記パワーユニットのケーシングに装着されて地盤に接するようになっており、
    上記振動ピックアップのマイクロホンは、「前記のエンジンから伝わってくる音響を減衰せしめ、かつ、起振機から空中を伝播してくる音響をなるべく減衰させないように、遮音材で半ば囲まれた状態」で、パワーユニットのケーシングに対して直接、もしくは間接的に装着されていることを特徴とする、無公害杭打ち装置。
  7. 振動を発生させるためのシリンダ手段と、上記シリンダ手段に供給する流体エネルギを調節するサーボバルブとより成る起振機を有する杭打装置において、
    地盤の振動を計測し得る振動ピックアップと、上記振動ピックアップの出力信号を入力されて、前記サーボバルブを介してシリンダ手段の作動を制御する自動制御装置とが設けられており、
    上記の自動制御装置は、入力された振動を周波数分析する機能を有していて、
    計測される振動の強さを表す物理量の値が、予め与えられた値以下となり、
    かつ、予め指定された周波数もしくは周波数範囲の振動の強さを表す物理量の値が、前記と異なる予め与えられた値以下となるように、前記のサーボバルブを介して起振機の起振力を、杭の貫入速度と関係無く制御する機能を有しており、
    前記の起振機は、動力源であるエンジンを備えたパワーユニットを有していて、
    前記振動の振動ピックアップは、上記パワーユニットのケーシングに装着されて地盤に接するようになっており、
    上記振動ピックアップのマイクロホンは、「前記のエンジンから伝わってくる音響を減衰せしめ、かつ、起振機から空中を伝播してくる音響をなるべく減衰させないように、遮音材で半ば囲まれた状態」で、パワーユニットのケーシングに対して直接、もしくは間接的に装着されていることを特徴とする、無公害杭打ち装置。
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