JP3663470B2 - 超電導軸受装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、たとえば余剰電力をフライホイールの運動エネルギに変換して貯蔵する電力貯蔵装置に適用される超電導軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、超電導軸受装置として、回転体と、回転体の回転駆動源と、回転体に固定状に設けられかつ永久磁石を有する環状永久磁石部と、環状永久磁石部と対向するように固定部に配置されかつ超電導体を有する環状超電導体部と、環状超電導体部に冷却流体を供給することにより超電導体を冷却する冷却手段と、固定部に設けられたタッチダウン軸受とを備えたものが知られている。この超電導軸受装置では、冷却手段により超電導体を臨界温度よりも低い温度まで冷却して超電導体を超電導状態とし、これにより回転体を固定部に対して非接触状態で支持しうるようになっている。また、このような超電導軸受装置では、通常回転体と固定部との間に保護用タッチダウン軸受が配置されており、超電導軸受装置の運転中に、何らかの理由により超電導体の温度が臨界温度よりも高くなって常電導化した場合に、回転体がタッチダウン軸受により固定部に回転支持されて回転体およびそのまわりの部品の破損を防止するようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の超電導軸受装置では、回転体が回転駆動源により高速回転させられた状態で、タッチダウン軸受により固定部に回転支持されるようになっているので、タッチダウン軸受が数回の使用で破損することが多く、タッチダウン軸受の交換回数が多くなって、交換作業が面倒であるとともにコストが高くなるという問題がある。
【0004】
この発明の目的は、上記問題を解決した超電導軸受装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明による超電導軸受装置は、
回転体と、回転体の回転駆動源と、回転体に固定状に設けられかつ永久磁石を有する環状永久磁石部と、環状永久磁石部と対向するように固定部に配置されかつ超電導体を有する環状超電導体部と、環状超電導体部に冷却流体を供給することにより超電導体を冷却する冷却手段と、固定部に設けられたタッチダウン軸受とを備えた超電導軸受装置において、
上記冷却手段と併設され、かつ環状超電導体部に冷却流体を供給することにより超電導体を冷却する補助冷却手段と、超電導体の温度を検出する温度センサと、温度センサにより検出された温度が超電導体の臨界温度よりも高くなった際に補助冷却手段から環状超電導体部に冷却流体を供給させる制御手段と、回転体を制動する非接触の制動手段とを備えており、
上記制御手段が、補助冷却手段による冷却後、温度センサにより検出された温度が上記臨界温度よりも高い場合に、回転駆動源を停止させ、さらに制動手段により回転体に制動をかけることを特徴とするものである。
【0006】
【作用】
冷却手段と併設され、かつ環状超電導体部に冷却流体を供給することにより超電導体を冷却する補助冷却手段と、超電導体の温度を検出する温度センサと、温度センサにより検出された温度が超電導体の臨界温度よりも高くなった際に補助冷却手段から環状超電導体部に冷却流体を供給させる制御手段とを備えていると、温度センサにより検出された温度が超電導体の臨界温度よりも高くなった際に、制御手段が補助冷却手段から環状超電導体部に冷却流体を供給させ、これにより超電導体を臨界温度よりも低い温度に冷却することが可能になる。したがって、この間に回転体の回転駆動源を停止させれば、回転体の回転速度が小さくなった後に、回転体がタッチダウン軸受により固定部に回転支持されることになる。
【0007】
回転体の制動手段を備えており、制御手段が、温度センサにより検出された温度が超電導体の臨界温度よりも高くなった際に制動手段を作動させるようになっていると、温度センサにより検出された温度が超電導体の臨界温度よりも高くなった際に、補助冷却手段から環状超電導体部に冷却流体を供給させることにより超電導体を臨界温度よりも低い温度に冷却している間に、制御手段が制動手段を作動させることにより回転体の回転速度が減速させることができるので、回転体の回転速度を速やかに小さくすることができる。したがって、回転体をタッチダウン軸受により固定部に回転支持するまでの時間を短縮することができる。
【0008】
【実施例】
以下、この発明の実施例を、図面を参照して説明する。この実施例は、超電導軸受装置を電力貯蔵装置に適用したものである。
【0009】
図1および図2は電力貯蔵装置の概略を示し、図3は電力貯蔵装置の原理を示す図である。
【0010】
図1および図2において、電力貯蔵装置は、真空チャンバ(1)と、真空チャンバ(1)内に配置された垂直軸状の回転体(2)と、回転体(2)の高さの中間部に固定状に設けられたフライホイール(3)とを備えている。
【0011】
真空チャンバ(1)の頂壁(1a)の中央部に、下方に突出しかつ下端がフライホイール(3)の若干上方に至る厚肉円筒状部(4)が一体に形成されている。また、真空チャンバ(1)の底壁(1b)上面に内周面が円筒面となされた凹所(5)が形成されている。回転体(2)の上部は厚肉円筒状部(4)内に径方向に間隔をおいて入り込み、回転体(2)の下端部の小径部(2a)が凹所(5)内に径方向に間隔をおいて入り込んでいる。厚肉円筒状部(4)の内周面の上端部および凹所(5)の内周面の上端部に、それぞれ転がり軸受からなりかつ通常は回転体(2)と非接触で、非常時に回転体(2)を支持する保護用のタッチダウン軸受(6)(7)が設けられている。
【0012】
回転体(2)におけるフライホイール(3)よりも上側の部分と厚肉円筒状部(4)との間に、回転体(2)を高速回転させる高周波電動機(回転駆動源)(8)が配置されている。高周波電動機(8)は、回転体(2)に取付けられたロータ(9)と、その周囲において厚肉円筒状部(4)の内周面に取付けられたステータ(10)とよりなる。高周波電動機(8)は、回生制動により回転体(2)の回転速度を減速する機能を有しており、回転体(2)の制動手段を兼ねている。
【0013】
高周波電動機(8)の上下において、回転体(2)と厚肉円筒状部(4)との間にそれぞれ磁気軸受部(11)が設けられている。磁気軸受部(11)は、回転体(2)の回転を開始した後、安定回転領域に達するまでに回転体(2)に共振が発生して回転体(2)の互いに直交するラジアル方向のふれが発生した場合に、このふれを補正する働きをする。図示は省略したが、回転体(2)の互いに直交する方向に伸びる軸をX軸およびY軸とすると、各磁気軸受部(11)は、X軸方向の制御形磁気軸受と、Y軸方向の制御形磁気軸受とよりなる。両制御形磁気軸受は、それぞれX軸上およびY軸上に、回転体(2)を両側から吸引するするように配置された電磁石と、各電磁石の近傍に配置され、かつ回転体(2)のX軸方向の変位およびY軸方向の変位を検出するラジアル方向変位センサとを備えている。
【0014】
フライホイール(3)の上面の周縁部には厚肉円筒状部(12)が一体に形成されている。厚肉円筒状部(12)は、真空チャンバ(1)の頂壁(1a)の厚肉円筒状部(4)の下部の周囲を囲繞するようになっている。フライホイール(3)の厚肉円筒状部(12)の上面に、回転体(2)と同心状に複数の環状凹溝(13)が形成されており、各環状凹溝(13)内に環状永久磁石(14)が嵌められて固定されている。また、フライホイール(3)の下面に、回転体(2)と同心状に複数の環状凹溝(15)が形成されており、各環状凹溝(15)内に環状永久磁石(16)が嵌められて固定されている。そして、フライホイール(3)と上下の永久磁石(14)(16)とにより上下の環状永久磁石部(17)(18)が形成されている。
【0015】
真空チャンバ(1)に、上側の環状永久磁石部(17)の上方において回転体(2)の
回転軸心方向に間隔をおいて対向するように上部環状超電導体部(19)が設けられ、下側の環状永久磁石部(18)の下方において回転体(2)の回転軸心方向に間隔をおいて対向するように、下部環状超電導体部(20)が設けられている。
【0016】
下部環状超電導体部(20)は、図2に示すように、2つの半環状の水平ハウジング(21)を備えており、両水平ハウジング(21)が全体として環状となるように組み合わされている。そして、この組合わせ体(22)の中心にこれを上下方向に貫通する貫通穴(23)が形成され、この貫通穴(23)に回転体(2)が径方向に間隔をおいて通されている。各半環状水平ハウジング(21)は半環状中空部(21a)を備えており、この中空部(21a)内に水平な半環状の第2種超電導体(24)が配置されている。各半環状ハウジング(21)に、その内部の中空部(21a)と連通するように冷却流体供給管(25)および同排出管(26)が接続されている。各冷却流体供給管(25)は、ハウジング(21)の中空部(21a)に、たとえば液体窒素からなる冷却流体を供給する下部冷却装置(冷却手段)(27)に接続されている。冷却流体供給管(25)の下部冷却装置(27)側の端部に、下部冷却装置(27)から冷却流体が出て行く方向の流体の流れのみを許容する逆止弁(28)が設けられている。冷却流体供給管(25)における逆止弁(28)よりも下流側の部分から分岐管(29)が設けられており、分岐管(29)の先端が、ハウジング(21)の中空部(21a)に、たとえば液体窒素からなる冷却流体を供給する下部補助冷却装置(補助冷却手段)(30)に接続されている。分岐管(29)の途中には電磁弁(31)が設けられている。
【0017】
上部環状超電導体部(19)は、図示は省略したが、下部環状超電導体部(20)と同様に2つの半環状の水平ハウジング(32)を備えており、両水平ハウジング(32)が全体として環状となるように組み合わされている。そして、この組合わせ体(33)の中心にこれを上下方向に貫通する貫通穴(34)が形成され、この貫通穴(34)に真空チャンバ(1)の頂壁(1a)の厚肉円筒状部(4)が径方向に間隔をおいて通されている。各半環状水平ハウジング(32)は半環状中空部(32a)を備えており、この中空部(32a)内にも水平な半環状の第2種超電導体(35)が配置されている。各半環状ハウジング(32)に、その内部の中空部(32a)と連通するように冷却流体供給管(36)および同排出管(37)が接続されている。冷却流体供給管(36)は、ハウジング(32)の中空部(32a)に、たとえば液体窒素からなる冷却流体を供給する上部冷却装置(冷却手段)(38)に接続されている。冷却流体供給管(36)の上部冷却装置(38)側の端部に、上部冷却装置(38)から冷却流体が出て行く方向の流体の流れのみを許容する逆止弁(39)が設けられている。冷却流体供給管(36)における逆止弁(39)よりも下流側の部分から分岐管(40)が設けられており、分岐管(40)の先端が、ハウジング(32)の中空部(32a)に、たとえば液体窒素からなる冷却流体を供給する上部補助冷却装置(補助冷却手段)(41)に接続されている。分岐管(40)の途中には電磁弁(42)が設けられている。
【0018】
超電導体(24)(35)は、イットリウム系高温超電導体、たとえばYBaCuからなるバルクの内部に常電導体粒子(YBaCu)を均一に混在させたものからなり、第2種超電導状態が出現する環境下において、永久磁石(16)(14)から発せられる磁束を内部に拘束する性質を持つものである。そして、超電導体(24)(35)は、永久磁石(16)(14)の磁束が所定量侵入する離隔位置であってかつ回転体(2)の回転によって侵入磁束の分布が変化しない位置に、永久磁石(16)(14)と対向するように配置されている。
【0019】
そして、上部環状永久磁石部(17)と上部環状超電導体部(19)により上部超電導軸受部(43)が形成され、下部環状永久磁石部(18)と下部環状超電導体部(20)により下部超電導軸受部(44)が形成されている。
【0020】
図3に示すように、上部および下部環状超電導体部(19)(20)には、それぞれ2つの超電導体(35)(24)の温度を検出する温度センサ(45)が設けられている。温度センサ(45)は、上部および下部環状超電導体部(19)(20)において、それぞれ各超電導体(35)(24)の2箇所の温度を検出するように合計で4つ設けられており、平面から見て円周方向に等角度間隔で配されている。
【0021】
下部環状超電導体部(20)の両ハウジング(21)には、それぞれフライホイール(3)との間隔を検出する2つのギャップセンサ(46)が設けられている。これらのギャップセンサ(46)は、平面から見て円周方向に等角度間隔で配されている。
【0022】
温度センサ(45)、ギャップセンサ(46)、電磁弁(31)(42)および高周波電動機(8)はそれぞれ制御装置(制御手段)(47)に接続されている。制御装置(47)には、温度センサ(45)により検出された温度が超電導体(24)(35)の臨界温度よりも高くなった際にオペレータに知らせる報知装置(48)が接続されている。制御装置(47)は、温度センサ(45)により検出された温度が超電導体(24)(35)の臨界温度よりも高くなった際に電磁弁(31)(42)を開状態とし、補助冷却装置(30)(41)から冷却流体をハウジング(21)(32)の中空部(21a)(32a)に供給する。また、制御装置(47)は、ギャップセンサ(46)により検出されたフライホイール(3)と下部環状超電導体部(20)のハウジング(21)の間隔が所定間隔よりも小さくなった際に電磁弁(31)(42)を開状態として、補助冷却装置(30)(41)から冷却流体をハウジング(21)(32)の中空部(21a)(32a)に供給する。さらに、制御装置(47)は、温度センサ(45)により検出された温度が超電導体(24)(35)の臨界温度よりも高くなった際に報知装置(48)を作動させてオペレータに知らせる。
【0023】
回転体(2)の下方に、真空チャンバ(1)の底壁(1b)を上下方向に昇降自在に貫通しかつ回転体(2)を真空チャンバ(1)に対して上昇、下降させうる昇降体(49)が配置されている。回転体(2)と昇降体(49)との間に、真空チャンバ(1)と回転体(2)との相対位置を決定する初期位置決め機構(50)が、次のように設けられている。回転体(2)の下端面の中心部に上方に向かって狭まったテーパ穴(図示略)が形成され、昇降体(49)の上端面の中心部に下方に向かって狭まったテーパ穴(図示略)が形成されている。また、回転体(2)と昇降体(49)との間に、テーパ穴の大端径よりも大きな直径を有するボール(51)が配置されている。そして、回転体(2)および昇降体(49)のテーパ穴とボール(51)とにより初期位置決め機構(50)が構成されている。
【0024】
上記電力貯蔵装置は、次のようにして運転状態にされる。
【0025】
まず、真空チャンバ(1)内を真空状態とし、昇降体(49)によってボール(51)を介して回転体(2)を上昇させ、初期位置決め機構(50)により回転体(2)のアキシアル方向およびラジアル方向の位置決めを行う。また、磁気軸受部(11)によっても回転体(2)のラジアル方向の位置決めを行う。ついで、上部冷却装置(38)および下部冷却装置(27)から、上部環状超電導体部(19)の各ハウジング(32)の中空部(32a)および下部超電導体部(20)の各ハウジング(21)の中空部(21a)に冷却流体を供給し、これにより超電導体(35)(24)を臨界温度よりも低い温度に冷却し、超電導体(35)(24)を第2種超電導状態に保持する。すると、上下の永久磁石部(17)(18)の永久磁石(14)(16)から発せられる磁束の多くが超電導体(35)(24)の内部に侵入して拘束されることになる(ピンニング現象)。ここで、超電導体(35)(24)はその内部に常電導体粒子が均一に混在されているため、超電導体(35)(24)内部への侵入磁束の分布が一定となり、そのため超電導体(35)(24)に対して永久磁石(14)(16)とともに回転体(2)が拘束される。したがって、回転体(2)は、きわめて安定的に浮上した状態でアキシアル方向およびラジアル方向に支持されることになる。このとき、超電導体(35)(24)に侵入した磁束は、磁束分布が回転軸心に対して均一で不変である限り、回転を妨げる抵抗とはならない。超電導体(35)(24)が冷却されて第2種超電導状態になると、前述のようにし磁力が発生するので、昇降体(49)を下降位置まで下降させてこれによる支持をなくす。昇降体(49)による支持力がなくなると、回転体(2)は自重で若干下降して、上部および下部環状超電導軸受部(19)(20)の磁気力、つまり超電導体(35)(24)の磁気反発力に釣り合う位置に停止する。
【0026】
そして、回転体(2)が高周波電動機(8)により回転させられる。回転体(2)が安定回転領域で回転しているときに、電気エネルギが回転運動エネルギに変換されてフライホイール(3)に貯蔵される。運転開始時から安定回転領域に達するまでの間の回転体(2)のふれの補正は、磁気軸受部(11)により行われる。
【0027】
電力貯蔵装置の運転中に、たとえば上部および下部冷却装置(38)(27)から上部および下部環状超電導体部(19)(20)のハウジング(32)(21)の中空部(32a)(21a)内に供給される冷却流体の量が減少した場合のように、超電導体(35)(24)の温度が上昇し、すべての温度センサ(45)により検出される温度のうちの最高温度が超電導体(35)(24)の臨界温度よりも高くなった場合、制御装置(47)は、電磁弁(42)(31)を開いて補助冷却装置(41)(30)からハウジング(32)(21)の中空部(32a)(21a)内に冷却流体を供給し、超電導体(35)(24)を冷却する。このとき、制御装置(47)は、報知装置(48)により、上部および下部のいずれかの冷却装置(38)(27)に異常が発生したことをオペレータに知らせる。そして、制御装置(47)は、電磁弁(42)(31)を開いてから1分経過した後にすべての温度センサ(45)により検出される温度のうちの最高温度が超電導体(35)(24)の臨界温度よりも低くなっていれば、電磁弁(42)(31)を開状態に保持し、補助冷却装置(41)(30)からハウジング(32)(21)の中空部(32a)(21a)への冷却流体の供給を続けて超電導体(35)(24)を引き続き冷却する。この状態で電力貯蔵装置の運転を続ける。一方、制御装置(47)は、電磁弁(42)(31)を開いてから1分経過した後も、すべての温度センサ(45)により検出される温度のうちの最高温度が超電導体(35)(24)の臨界温度よりも高いままであれば、高周波電動機(8)を停止させる。高周波電動機(8)を停止させた後も、補助冷却装置(41)(30)からハウジング(32)(21)の中空部(32a)(21a)への冷却流体の供給を続け、引き続き超電導体(35)(24)を冷却しておく。
【0028】
ついで、制御装置(47)は、高周波電動機(8)を停止させてから1分経過した後も、すべての温度センサ(45)により検出される温度のうちの最高温度が超電導体(35)(24)の臨界温度よりも高いままであれば、高周波電動機(8)により回生制動をかけて回転体(2)の回転速度を減速する。その後、回転体(2)は、回転速度が小さくなった状態でタッチダウン軸受(6)(7)に支持される。
【0029】
また、電力貯蔵装置の運転中に、すべてのギャップセンサ(46)により検出される下部環状超電導体部(20)のハウジング(21)とフライホイール(3)下面との間隔のうちの最小間隔がしきい値よりも小さくなった場合、上部および下部環状超電導体部(19)(20)の超電導体(35)(24)うちの少なくともいずれかの温度が臨界温度よりも高くなって常電導化したと推測されるので、制御装置(47)は、電磁弁(42)(31)を開いて補助冷却装置(41)(30)からハウジング(32)(21)の中空部(32a)(21a)内に冷却流体を供給し、超電導体(35)(24)を冷却する。このとき、制御装置(47)は、報知装置(48)により、上部および下部のいずれかの冷却装置(38)(27)に異常が発生したことをオペレータに知らせる。そして、制御装置(47)は、電磁弁(42)(31)を開いてから1分経過した後にすべてのギャップセンサ(46)により検出される下部環状超電導体部(20)のハウジング(21)とフライホイール(3)下面との間隔のうちの最小間隔がしきい値よりも大きくなっていれば、電磁弁(42)(31)を開状態に保持し、補助冷却装置(41)(30)からハウジング(32)(21)の中空部(32a)(21a)への冷却流体を供給を続けて超電導体(35)(24)を引き続き冷却する。この状態で電力貯蔵装置の運転を続ける。一方、制御装置(47)は、電磁弁(42)(31)を開いてから1分経過した後も、すべてのギャップセンサ(46)により検出される下部環状超電導体部(20)のハウジング(21)とフライホイール(3)下面との間隔のうちの最小間隔がしきい値よりも小さいままであれば、高周波電動機(8)を停止させる。高周波電動機(8)を停止させた後も、補助冷却装置(41)(30)からハウジング(32)(21)の中空部(32a)(21a)への冷却流体の供給を続け、引き続き超電導体(35)(24)を冷却しておく。
【0030】
ついで、制御装置(47)は、高周波電動機(8)を停止させてから1分経過した後も、すべてのギャップセンサ(46)により検出される下部環状超電導体部(20)のハウジング(21)とフライホイール(3)下面との間隔のうちの最小間隔がしきい値よりも小さいままであれば、高周波電動機(8)により回生制動をかけて回転体(2)の回転速度を減速する。その後、回転体(2)は、回転速度が小さくなった状態でタッチダウン軸受(6)(7)に支持される。
【0031】
このようにして、回転体(2)が高速回転した状態でタッチダウン軸受(6)(7)に支持されることが防止される。
【0032】
上記実施例において、上部および下部環状超電導体部は、それぞれ2つの半環状ハウジングを備えているが、電力貯蔵装置がより小型のものであれば、1つの環状ハウジングを備えていてもよい。これとは逆に、電力貯蔵装置がさらに大型のものであれば、上部および下部環状超電導体部は、それぞれ3以上の部分環状ハウジングを備える場合もある。
【0033】
また、上記実施例において、下部環状超電導体部のハウジングに、フライホイールとの間の間隔を検出するギャップセンサが設けられているが、ギャップセンサは必ずしも必要としない。
【0034】
さらに、上記実施例は、この発明による超電導軸受装置が電力貯蔵装置に適用された場合を示しているが、超電導軸受装置は、他の装置にも適用可能である。
【0035】
【発明の効果】
この発明の超電導軸受装置によれば、上述のように、回転体の回転速度が小さくなった後に、回転体がタッチダウン軸受により固定部に回転支持されることになるので、回転体が高速回転した状態でタッチダウン軸受に支持されることが防止され、タッチダウン軸受を使用できる回数が多くなる。したがって、タッチダウン軸受の交換回数が減少し、その結果交換作業が簡単になるとともに、コストが安くなる。
【0036】
また、回転体の制動手段を備えており、制御手段が、温度センサにより検出された温度が超電導体の臨界温度よりも高くなった際に制動手段を作動させるようになっていると、上述のように、回転体の回転速度を速やかに小さくすることができる。したがって、回転体をタッチダウン軸受により固定部に回転支持するまでの時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の超電導軸受装置を適用した電力貯蔵装置の実施例を示す垂直断面図である。
【図2】 同じく下部環状超電導体部の平面図である。
【図3】 同じく電力貯蔵装置の原理を説明する図である。
【符号の説明】
(2) 回転体
(6) タッチダウン軸受
(7) タッチダウン軸受
(8) 高周波電動機(回転駆動源)
(14) 永久磁石
(16) 永久磁石
(17) 上部環状永久磁石部
(18) 下部環状永久磁石部
(19) 上部環状超電導体部
(20) 下部環状超電導体部
(24) 超電導体
(27) 冷却装置(冷却手段)
(30) 補助冷却装置(補助冷却手段)
(35) 超電導体
(38) 冷却装置(冷却手段)
(41) 補助冷却装置(補助冷却手段)
(45) 温度センサ
(47) 制御装置(制御手段)

Claims (1)

  1. 回転体と、回転体の回転駆動源と、回転体に固定状に設けられかつ永久磁石を有する環状永久磁石部と、環状永久磁石部と対向するように固定部に配置されかつ超電導体を有する環状超電導体部と、環状超電導体部に冷却流体を供給することにより超電導体を冷却する冷却手段と、固定部に設けられたタッチダウン軸受とを備えた超電導軸受装置において、
    上記冷却手段と併設され、かつ環状超電導体部に冷却流体を供給することにより超電導体を冷却する補助冷却手段と、超電導体の温度を検出する温度センサと、温度センサにより検出された温度が超電導体の臨界温度よりも高くなった際に補助冷却手段から環状超電導体部に冷却流体を供給させる制御手段と、回転体を制動する非接触の制動手段とを備えており、
    上記制御手段が、補助冷却手段による冷却後、温度センサにより検出された温度が上記臨界温度よりも高い場合に、回転駆動源を停止させ、さらに制動手段により回転体に制動をかけることを特徴とする超電導軸受装置。
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