JP3662733B2 - 超重質油エマルション燃料の製造方法 - Google Patents
超重質油エマルション燃料の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3662733B2 JP3662733B2 JP31547797A JP31547797A JP3662733B2 JP 3662733 B2 JP3662733 B2 JP 3662733B2 JP 31547797 A JP31547797 A JP 31547797A JP 31547797 A JP31547797 A JP 31547797A JP 3662733 B2 JP3662733 B2 JP 3662733B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- weight
- oil
- emulsion fuel
- water
- fuel obtained
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は火力発電用などの燃料として使用し得る水中油滴型の超重質油エマルション燃料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
超重質油エマルション燃料は混合添加剤(乳化剤、安定剤など)を用いると安定なエマルション燃料が得られることは良く知られており、優れた乳化剤などが開発されている(特開平1−185394号公報)。しかし、従来の方法では、長期貯蔵安定性が不足することや乳化剤の量が多く必要なことが課題とされてきた。また、油の濃度が高いほど水による熱量の損失が少なく、燃料としての価値が高いため、油濃度を可能なかぎり高くすることが要望されている。油濃度が高いエマルションで、粗粒子量が少なく、流動性があり、取扱いが容易なものが得られれば、熱量の点だけでなく、必要に応じて希釈して使用できる点でも有利である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、超重質油濃度が高く流動性があり、取扱いが容易で、しかも長期保存安定性が良好な超重質油エマルション燃料を製造する方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った。その結果、工程1において、0.8重量%以下のカチオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤と0.5重量%以下の安定剤を用い、1000〜60000/秒の高剪断速度で攪拌し、油分を74〜82重量%含む濃厚な水中油滴型(O/W)のエマルション燃料を調製し、工程1で得られるエマルション燃料に、0.5重量%以下となるアニオン性分散剤、又はさらに水を添加、混合した後、再び10000/秒以下の剪断速度で攪拌して、油分を68〜79重量%の範囲にしたところ、長期保存安定性に優れたエマルション燃料を製造できることを発見した。本発明はかかる発見にもとづき、さらに研究を進めて完成するに至ったものである。
【0005】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕 以下の工程を有することを特徴とする超重質油エマルション燃料の製造方法、
工程1:超重質油、水、カチオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤を配合してなる、又はこれらに加えてさらに安定剤を配合してなる混合液を調製し、次いで1000〜60000/秒の高剪断速度で攪拌して油分を74〜82重量%含む水中油滴型(O/W)のエマルション燃料を調製する工程(但し、該カチオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤は、工程1で得られるエマルション燃料に対して0.1〜0.8重量%配合し、該安定剤は工程1で得られるエマルション燃料に対して0.001〜0.5重量%となるように配合する。なお、安定剤は工程2で添加することもできる。)、及び
工程2:工程1で得られるエマルション燃料に、アニオン性分散剤、又はさらに水を添加、混合し、更に10〜10000/秒の剪断速度で攪拌して、油分を68〜79重量%含む水中油滴型(O/W)のエマルション燃料を調製する工程(但し、該アニオン性分散剤は、工程2で得られるエマルション燃料に対して0.01〜0.5重量%となるように配合する。)、
〔2〕 工程1における混合液の調製に際して、非イオン界面活性剤を、カチオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の、1/100〜4/1重量倍を添加する前記〔1〕記載の製造方法、
〔3〕 安定剤として、高分子化合物(天然高分子もしくは合成高分子)及び/又は水膨潤性粘土鉱物を用いる前記〔1〕又は〔2〕記載の製造方法、
〔4〕 工程1で得られる水中油滴型(O/W)のエマルション燃料の油分の濃度が77〜81重量%である前記〔1〕〜〔3〕いずれか記載の製造方法、
〔5〕 工程1における混合液の調製に際して、カチオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の添加量が0.1〜0.4重量%、非イオン界面活性剤の添加量が0.1〜0.4重量%、安定剤の添加量が0.005〜0.1重量%、工程2におけるアニオン性分散剤の添加量が0.02〜0.2重量%である前記〔2〕〜〔4〕いずれか記載の製造方法、
〔6〕 工程2で得られる超重質油エマルションにおけるカチオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤とアニオン性分散剤との重量比が、90/10〜60/40である前記〔1〕〜〔5〕いずれか記載の製造方法、
〔7〕 工程1における剪断速度が5000〜20000/秒、工程2における剪断速度が100〜6000/秒である前記〔1〕〜〔6〕いずれか記載の製造方法、
〔8〕 工程1で得られる水中油滴型(O/W)のエマルション燃料の油滴の50%累積粒子径が3〜30μm、150μm以上の粗粒子が0〜3重量%を示す粒子径分布を持つものである前記〔1〕〜〔7〕いずれか記載の製造方法、
〔9〕 工程1で得られる水中油滴型(O/W)のエマルション燃料の粘度が400〜3000cp(25℃)である前記〔1〕〜〔8〕いずれか記載の製造方法、
〔10〕 工程1において、高剪断型タービンミキサーを有するホモミキサーを高剪断攪拌装置として用いることを特徴とする前記〔1〕〜〔9〕いずれか記載の製造方法、
〔11〕 工程1で得られる水中油滴型(O/W)のエマルション燃料が150μm以上の粒子を0〜2重量%含むものである前記〔1〕〜〔10〕いずれか記載の製造方法、
〔12〕 工程1における混合液の調製に際して、マグネシウム、カルシウム、又は鉄の酢酸塩、硫酸塩、又は硝酸塩を、工程1で得られるエマルション燃料に対して0.01〜0.2重量%となるようにさらに添加することを特徴とする前記〔1〕〜〔11〕いずれか記載の製造方法、に関するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0007】
本発明の超重質油エマルション燃料の製造方法は、次の二つの工程を有する。
【0008】
1.工程1について
工程1は、超重質油、水、カチオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤を配合してなる、又はこれらに加えてさらに安定剤を配合してなる混合液を調製し、次いで1000〜60000/秒の高剪断速度で攪拌して油分を74〜82重量%含む水中油滴型(O/W)のエマルション燃料を調製する工程(但し、該カチオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤は、工程1で得られるエマルション燃料に対して0.1〜0.8重量%配合し、該安定剤は工程1で得られるエマルション燃料に対して0.001〜0.5重量%となるように配合する。なお、安定剤は工程2で添加することもできる。)である。
【0009】
本発明に用いられる超重質油とは、常温で固体又は半流動状態のものであり、高温に加温しないと流動しない油である。具体的には、(1)石油系アスファルト類及びその油の混合物、(2)石油系アスファルト各種処理物、その中間製品、残留物及びそれらの油混合物、(3)高温で流動しない高流動点油あるいは原油、(4)石油系タールピッチ及びその油混合物、(5)ビチューメン類(オリノコタール、アサバスカビチューメン)等が含まれる。
【0010】
本発明に使用されるカチオン界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。
(1)炭素数1〜18のモノ、ジ、トリアルキルアミン及び/又はモノ、ジ、トリアルケニルアミンを塩酸、硫酸などの無機酸又は、酢酸などの有機酸で中和したアルキルアミン塩及び/又はアルケニルアミン塩。
(2)芳香族基で水素基が置換された炭素数1〜18のアルキル基又は、アルケニル基を含むモノ、ジ、トリアルキルアミン及び/又はモノ、ジ、トリアルケニルアミンを塩酸、硫酸などの無機酸又は、酢酸などの有機酸で中和したアルキルアミン塩及び/又はアルケニルアミン塩。
(3)次式(イ)〜(ハ)で表される第4級アンモニウム塩。
【0011】
【化1】
【0012】
(4)次式(ニ)又は(ホ)で表されるポリアミン及びその無機酸塩又は有機酸塩。
【0013】
【化2】
【0014】
(5)次式(ニ)又は(ホ)で表されるポリアミンにアルキレンオキサイドを付加したポリマー。
【0015】
【化3】
【0016】
(6)炭素数1〜18のモノ、ジアルキルアミン及び/又はモノ、ジアルケニルアミンのアルキレンオキサイド付加物。
(7)アルキレンオキサイド付加した長鎖アルキルアミンを4級化した第4級アンモニウム塩。
(8)長鎖脂肪酸アミドアミン又はその第4級アンモニウム塩。
【0017】
本発明に使用される両性界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。
(1)アルキルベタイン又はアルケニルベタイン。
【0018】
【化4】
【0019】
(2)次式で表されるアルキルアミンオキサイド又はアルケニルアミンオキサイド。
【0020】
【化5】
【0021】
(3)炭素数8〜18のモノ、ジアルキルアミンとモノクロル酢酸塩又はアクリル酸類とを反応させたアルキルアミノ酸。
【0022】
(4)アルキルイミダゾリンを加水分解したアミドアミンをカルボキシメチル化したアミドアミノ酸。
(5)長鎖脂肪酸アミドアミンを酸化したアミンオキサイドまたはカルボキシメチル化したアミドベタイン。
(6)長鎖アルキルスルホベタイン。
(7)アミノ酸をアシル化したアシル化アミノ酸。
(8)ホスファチジルコリン等のホスホベタイン。
【0023】
本発明において、これらのカチオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の1種又は2種以上を混合して用いる。なかでも、両性界面活性剤が好ましく、特にアルキルベタイン、アルケニルベタインが好ましい。
【0024】
本発明におけるカチオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の使用量は、工程1で得られるエマルション燃料に対して0.1〜0.8重量%、好ましくは0.1〜0.4重量%である。使用量が0.8重量%を超えると得られるエマルション燃料中の粒子径が小さくなりすぎる傾向があり、また、0.1重量%より少ないと逆に粒子径が大きくなりすぎると共に、界面活性剤の不足でエマルションの安定性が低下する。
【0025】
工程1における混合液の調製に際して、カチオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤に加えて、さらに非イオン界面活性剤を添加しても良い。この場合、非イオン界面活性剤を、カチオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の、1/100〜4/1重量倍、好ましくは1/20〜1/1重量倍の添加量で加えることができる。なお、上記重量比の分母をカチオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の重量とし、分子を非イオン界面活性剤の重量とする。非イオン界面活性剤の使用量は、工程1で得られるエマルション燃料に対して0.01〜2.0重量%、好ましくは0.1〜0.8重量%、特に好ましくは0.1〜0.4重量%配合することができる。
【0026】
本発明に用いられる非イオン界面活性剤としては以下のものが挙げられる。
【0027】
(i) フェノール、クレゾール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、パラクミルフェノール、ビスフェノールAなどのフェノール性水酸基を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物。ただし、アルキレンオキサイドはエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドである。
【0028】
(ii) アルキルフェノール、フェノール、メタクレゾール、スチレン化フェノール、ベンジル化フェノールなどのフェノール性水酸基を有する化合物のホルマリン縮合物のアルキレンオキサイド付加物。縮合度の平均は1.2〜100、好ましくは2〜20、アルキレンオキサイドはエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドである。
(iii) 炭素数2〜50の一端の脂肪族アルコール及び/又は脂肪族アミンのアルキレンオキサイド付加物。アルキレンオキサイドはエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドである。
【0029】
(iv) エチレンオキサイドとプロピレンオキサイド及び/又はブチレンオキサイド、スチレンオキサイドのブロック又はランダム付加重合物。
(v) グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、サッカロース、ポリグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、などの多価アルコール、又はそれら多価アルコールと炭素数8〜18の脂肪酸とのエステルのアルキレンオキサイド付加物。アルキレンオキサイドはエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドである。
(vi) エチレンジアミン、テトラエチレンジアミン、ポリエチレンイミン、(重量平均分子量600〜10000)などの複数個の活性水素を有する多価アミンのアルキレンオキサイド付加物。アルキレンオキサイドはエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドである。
(vii) トリグリセライド型油脂1モルとグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、サッカロース、エチレングリコール、重量平均分子量1000以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、重量平均分子量1000以下のポリプロピレングリコールからなる群から選ばれた1種または2種以上の多価アルコール及び/又は水0.1〜5モルとの混合物に、アルキレンオキサイドを付加反応させた生成物。アルキレンオキサイドはエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドである。
【0030】
なかでも、本発明における非イオン界面活性剤として、特にオクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール等のフェノール性水酸基を有する化合物のアルキレンオキサイド付加物、脂肪族アルコールのアルキレンオキサイド付加物などが好適に使用される。
【0031】
また、工程1における混合液の調製に際して、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤及び/又は非イオン界面活性剤に加えて、エマルションの物性を劣化させない範囲で、アニオン性分散剤を加えることができる。なお、アニオン性分散剤としては、工程2で用いられるものと同様のものを用いることができる。
【0032】
工程1で併用することができる安定剤としては次の(1)高分子化合物(天然高分子もしくは合成高分子)と、(2)水膨潤性粘土鉱物が挙げられる。すなわち、本発明において用いられる安定剤は次の(1)及び/又は(2)より選ばれるものである。
【0033】
(1)高分子化合物
<天然物に由来する親水性の天然高分子>
・微生物由来の親水性高分子(多糖類)
1)キサンタンガム
2)プルラン
3)デキストラン
・植物由来の親水性高分子(多糖類)
1)海藻由来:寒天、カラギーナン、ファーセレラン、アルギン酸とその塩
(K、Na、NH4 、Ca、Mg)
2)種由来:ローカストビーンガム、グアーガム、タラガム
3)樹木由来:アラビアガム、カラヤガム、トラガントガム
4)果実由来:ペクチン
・動物由来の親水性高分子(蛋白質)
1)ゼラチン
2)カゼイン
・天然高分子誘導体
1)セルローズ誘導体
2)加工澱粉
【0034】
<水溶性の合成高分子>
(a)次式で表されるアクリル酸及びその誘導体のホモポリマー、及び他のモノマーとのコポリマー。
【0035】
【化6】
【0036】
【化7】
【0037】
又はこのモノマーと共重合可能なモノマー或いはその塩(NH4, Na, K, Li) から誘導される2価の基、例えば、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、α−オレフィン、アクリルアミド、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、アクリルアミドメチルプロピルスルホン酸又はその塩(NH4,Na, K)、 ジアルキル(メチル又はエチル)エチルアミノメタアクリレート及びその塩(塩化物等のハロゲン化物、ジエチル硫酸、ジメチル硫酸)。
【0038】
(b)次式で表されるアクリルアミド及びその誘導体のホモポリマー、及び他の共重合可能なモノマーとのコポリマー。
【0039】
【化8】
【0040】
【化9】
【0041】
又はこのモノマーと共重合可能なモノマー或いはその塩(NH4, Na, K, Li) から誘導される2価の基、例えば、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、アクリルアミドメチルプロピルスルホン酸、ジアルキル(メチル又はエチル)エチルアミノメタアクリレート及びその塩(塩化物等のハロゲン化物、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸など)、スチレン、α−オレフィン(C2〜C18)、ビニルアリルアルコール。
(c)無水マレイン酸又は無水イタコン酸のホモポリマー、及び次式で表されるコポリマー。
【0042】
【化10】
【0043】
(d)ビニルアルコールのホモポリマー及び次式で表されるコポリマー。
【0044】
【化11】
【0045】
(e)ビニルピロリドンのホモポリマー及び次式で表されるコポリマー。
【0046】
【化12】
【0047】
(f)重量平均分子量1万〜500万のポリアルキレンオキサイド(但し、エチレンオキサイド95%以上)。5%以下のプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドの各々のブロックポリマーやアルキルアリル、アルキル基などを分子中に持つものも含まれる。
【0048】
なかでも、本発明における高分子化合物としては天然高分子誘導体であるセルローズ誘導体や微生物由来の親水性高分子(例えばキサンタンガム)等が好適に使用される。
【0049】
(2)水膨潤性粘土鉱物
本発明に用いられる水膨潤性粘土鉱物としては、以下のものが挙げられる。
【0050】
本発明に使用される粘土鉱物は、高膨潤性の微細な粘土鉱物であるが、本発明において高膨潤性とは、水中に粘土鉱物を懸濁させると水分子を多量拘束するものであり、乾燥物換算で1重量%懸濁した時の核磁気共鳴装置で測定した水分子の緩和時間(T2 )が900ミリ秒以下、好ましくは500ミリ秒以下となるような水膨潤性粘土鉱物をいう。緩和時間(T2 )が900ミリ秒を越えると水の拘束力が弱くなり本発明の効果が不十分となる。また、微細な粘土鉱物とは平均粒径が100μm以下である粘土鉱物をいう。平均粒径が100μmを越えると水分子の拘束力が弱くなるのと同時に沈降しやすくなり、本発明の効果には不十分となる。
【0051】
具体的には、例えばスメクタイト、バーミキュライト、緑泥石などの高膨潤性で水分子の拘束力の強い微細な粘土鉱物が本発明の範囲に含まれる。但し、これらの中でもT2 が900ミリ秒以上のものは本発明には含まれない。一方、ジョージア産のカオリンや一般のカオリン、タルクなどは水分子の拘束力が弱いため、本発明の範囲から除外される。
【0052】
以下、本発明に使用するスメクタイト、バーミキュライト、緑泥石などの高膨潤性の微細な粘土鉱物について説明する。
(A)スメクタイト(smectite)は2:1層の四面シートおよび八面体シートにおいて、置換が広範囲に生じ、層間に水分子を伴った種々のイオンが入るため、2枚の四面シートおよびその間に挟まれる1枚の八面体シート(すなわち、2:1層)からなる化学組成は複雑である。具体的には、次のような一般式で表される。
【0053】
Xm (Y2+, Y3+)2-3 Z4 O10(OH)2 ・nH2 O
(式中、XはK,Na,1/2Ca,1/2Mgを、Y2+はMg,Fe2+,Mn2+,Ni,Zn,Liを、Y3+はAl,Fe3+,Mn3+,Cr3+を、ZはSi,Alを示す。なおXは層間、Yは八面体、Zは四面体の陽イオンを表す。)
【0054】
スメクタイトの代表的な種類には次のものがある。
2八面体型(八面体陽イオンが主に3価)
モンモリロナイト(montmorillonite)
X0.33(Al1.67Mg0.33)Si4 O10(OH)2 ・nH2 O
バイデライト(beidellite)
X0.33(Al2 )(Al0.33Si3.67)O10(OH)2 ・nH2 O
ノントロナイト(nontronite)
X0.33(Fe2 3+)(Al0.33Si3.67)O10(OH)2 ・nH2 O
【0055】
3八面体型(八面体陽イオンが主に2価)
サポナイト(saponite)
X0.33(Mg3 )(Al0.33Si3.67)O10(OH)2 ・nH2 O
鉄サポナイト(iron saponite)
X0.33(Mg,Fe)3 (Al0.33Si3.67)O10(OH)2 ・nH2 O
ヘクトライト(hectorite)
X0.33(Mg2.67Li0.33)Si4 O10(OH)2 ・nH2 O
ソーコナイト(sauconite)
X0.33(Mg,Zn)3 (Si3.67Al0.33)O10(OH)2 ・nH2 O
スチブンサイト(stevensite)
X0.33/2(Mg2.97)Si4 O10(OH)2 ・nH2 O
このうち、モンモリロナイト−バイデライト−ノントロナイトは一連の系列をなし、同形置換を生ずる。また、スチブンサイトは他のスメクタイトの約半分の層荷電をもち、2八面体型と3八面体型の中間の性質を有している。
【0056】
(B)バーミキュライト(ひる石,Vermiculite)は、2:1型層状ケイ酸塩に属し、化学式は次式で表される。
【0057】
(Mg,Fe3+,Al)2-3 (Si4-x Alx )O10(OH)2 (M+ , M2+ 1/2 )x nH2 O
ただし、Mは層間の交換性陽イオンであるが、粗粒なバーミキュライトではMgが主である。nは水の量であるが、層間陽イオンがMgの場合は、広い温度範囲にわたって、水は2分子層をなして入り、n=3.5〜5程度である。xは層荷電であって、0.6〜0.9の範囲に入る。この化学式は層荷電が全て、四面体陽イオンの置換によって生じているとしているが、実際には八面体シートが負の荷電を持ち、層荷電がこれによっていることもある。八面体陽イオンの数は2〜3であり、2八面体型のバーミキュライトと3八面体型のバーミキュライトの両方がある。黒雲母や金雲母の風化によってできた粗粒のバーミキュライトは3八面体である。
【0058】
(C)緑泥石(chlorite)の構造はスメクタイトとバーミキュライトの構造と類似しており、それらの底面間隔は14〜15Aである。典型的な緑泥石は2:1型の含水ケイ酸塩であり、2:1層の性格によって、3八面体型緑泥石と2八面体型緑泥石に大別できる。3八面体型緑泥石は次式で表される。
【0059】
(R6-x 2+Rx 3+)(Si4-x Alx )O10(OH)8
ただし、R2+はMgとFe2+を主とするが、Mn2+、Ni2+なども含まれる。R3+はAlが主で、Fe3+、Cr3+なども含まれる。xは0.8〜1.6の値を示す。R2+がMgを主とするものをクリノクロア〔clinochlore,(Mg5 Al)(Si3 Al)O10(OH)8 〕,Feを主とするものをシャモサイト〔chamosite,(Fe5 Al)(Si3 Al)O10(OH)8 〕と呼んでいる。その他、Mnを主成分とするペナンタイト(pennantite)Niを主成分とするニマイト(nimite)がある。
【0060】
Alを主な八面体陽イオンとする2八面体緑泥石にはスドーアイト〔須藤石,Sudoite,(Mg,Al)4.6-5 (Si,Al)4 O10(OH)8 〕,クッケアイト〔cookeite,(LiAl4 )(Si3 Al)O10(OH)8 〕,ドンバサイト〔donbassite,Al4-4.2 R0.2-(Si,Al)4 O10(OH)8 〕の3種がある。
【0061】
スメクタイトは属する粘土鉱物であるモンモリロナイトを主成分とし、石英,α−クリストバライト,オパール,長石,雲母,沸石,方解石,ドロマイト,石膏,鉄酸化物などを夾雑物として含むものがベントナイトと呼ばれるものである。ベントナイトには、Naイオンに富んだナトリウムベントナイトとCaイオンに富んだカルシウムベントナイトがあるが、ナトリウムベントナイトが膨潤力に富むので、これが本発明における粘土鉱物に属し、カルシウムベントナイトは膨潤力が弱いので、本発明の範囲から除外される。
【0062】
これらの安定剤の添加量は、工程1で得られるエマルション燃料に対して0.001〜0.5重量%、好ましくは0.001〜0.1重量%、さらに好ましくは0.005〜0.1重量%である。安定剤の添加により、油滴の界面における運動が抑制され、得られるエマルション燃料が安定化する。
【0063】
また、マグネシウム、カルシウム、又は鉄などの酢酸塩、硫酸塩、又は硝酸塩を前記の安定剤の他に添加することもでき、これにより乳化安定化の効果が得られる。この場合、工程1で得られるエマルション燃料に対して0.01〜0.2重量%、好ましくは0.05〜0.1重量%となるように用いる。
【0064】
工程1において、超重質油、水、カチオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤、またはこれらに加えてさらに安定剤からなる混合液を調製するときの攪拌機はプロペラ型の攪拌など一般の攪拌機で十分であり、特に高剪断速度で攪拌する必要はない。混合液を調製した後の攪拌は高剪断型の攪拌装置が必要である。例えば、ラインミキサー、矢羽根タービン翼、フルマージン型翼、高剪断型タービンミキサー、ホモジナイザー等が使用できる。特に、高剪断型タービンミキサーを有するホモミキサーが工業的には好ましい。ここで、高剪断速度とは1000〜60000/秒、好ましくは5000〜20000/秒の剪断速度である。このような高剪断速度で攪拌することによって、油分を74〜82重量%、好ましくは77〜81重量%含む水中油滴型(O/W)のエマルション燃料が製造される。なお、水は全量が100重量%となるように、すなわち工程1で得られるエマルション燃料の約17〜25重量%となるように添加する。
【0065】
工程1で得られる水中油滴型(O/W)のエマルション燃料の油滴の50%累積粒子径が3〜30μm、好ましくは8〜20μm、150μm以上の粗粒子が0〜3重量%、好ましくは0〜2重量%、特に好ましくは0〜1重量%を示す粒子径分布をもつようにカチオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の種類や添加量、剪断速度とその時間、また攪拌時の粘度を調整することが必要である。粘度は400cp以上(25℃)好ましくは400〜3000cp(25℃)である。また、粒子径及び粗粒子量は後述の実施例に記載の方法により測定されるものと定義する。
【0066】
2.工程2について
工程2は、工程1で得られるエマルション燃料に、アニオン性分散剤、又はさらに水を添加、混合し、更に10〜10000/秒の剪断速度で攪拌して、油分を68〜79重量%含む水中油滴型(O/W)のエマルション燃料を調製する工程(但し、該アニオン性分散剤は、工程2で得られるエマルション燃料に対して0.01〜0.5重量%となるように配合する。)である。
【0067】
工程2で用いられるアニオン性分散剤としては、以下のようなアニオン界面活性剤が挙げられる。
(i)ナフタリン、アルキルナフタリン、アルキルフェノール、アルキルベンゼンなどの芳香族環化合物のスルホン酸塩又はスルホン酸塩のホルマリン縮合物。但し、ホルマリンの平均縮合は1.2〜100、好ましくは2〜20である。塩としてはアンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミンなどの低級アミン、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属類等の塩である。
【0068】
(ii)リグニンスルホン酸、リグニンスルホン酸塩、その誘導体、リグニンスルホン酸とナフタリン、アルキルナフタリンなどの芳香族化合物のスルホン酸とのホルマリン縮合物及びその塩。塩は上記のいずれの場合も、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミンなどの低級アミン、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属類等の塩である。ホルマリンの平均縮合度は1.2〜50、好ましくは2〜20である。リグニンの中では変性リグニン、例えばカルボキシル基を少し導入した方が、特に高温で優れた性能を示す。
【0069】
(iii)ポリスチレンスルホン酸又はその塩及びスチレンスルホン酸と他の共重合性モノマーとの共重合体とその塩。但し、重量平均分子量は500〜50万、好ましくは2000〜10万である。塩としてはアンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミンなどの低級アミン、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属類等の塩である。共重合性モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、オレフィン、アリルアルコール及びその酸化エチレン付加物、アクリルアミドメチルプロピルスルホン酸などがその代表例である。
【0070】
(iv) ジシクロペンタジエンスルホン酸重合物又はその塩。重合物の重量平均分子量は500〜50万、好ましくは2000〜10万である。塩としては、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミンなどの低級アミン、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属類等の塩である。
【0071】
(v)無水マレイン酸及び/又は無水イタコン酸と他の共重合性モノマーとの共重合体及びその塩。但し、重量平均分子量は500〜50万、好ましくは1500〜10万である。塩としてはアンモニウム、又はナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属類等の塩である。共重合性モノマーとしては、オレフィン(エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン)、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸、アクリル酸などである。
【0072】
(vi) 液状ポリブタジエンのマレイン化物及びその塩。但し、液状ポリブタジエンの重量平均分子量は500〜20万、好ましくは1000〜5万、マレイン化度は水に溶解するのに必要なだけでよいが、好ましくは40〜70%である。塩としては、アンモニウム、又はナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属類等の塩である。
【0073】
(vii)親水基を分子中に1個又は2個持つ、次のアニオン界面活性剤。
(a)炭素数4〜18のアルコールの硫酸エステル塩。但し、塩としては、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミンなどの低級アミン、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属類等の塩である。ドデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウムなどがその代表例である。
(b)炭素数4〜18のアルカン、アルケン及び/又はアルキルアリールスルホン酸又はその塩。但し、塩としては、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミンなどの低級アミン、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属類等の塩である。ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ブチルナフタリンスルホン酸ナトリウム、ドデカンスルホン酸ナトリウムが代表例である。
【0074】
(c)活性水素を分子中に1個以上持つ化合物のアルキレンオキサイド付加物の硫酸化物又はリン酸エステル化物及びそれらの塩。塩としては、アンモニウム、又はナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属類等の塩である。ポリオキシエチレン(3モル)ノニルフェニルエーテルの硫酸エステルナトリウム塩、ポリオキシエチレン(3モル)ドデシルエーテルのリン酸エステルナトリウム塩がその代表例である。
(d)炭素数4〜22の飽和又は不飽和脂肪酸のエステルであるスルホコハク酸塩。但し、塩としては、アンモニウム、又はナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属類等の塩である。ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩、又はアンモニウム塩、ジブチルスルホコハク酸ナトリウム塩などがその代表例である。
【0075】
(e)アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸又はその塩。アルキル基は炭素数8〜18のアルキル基であり、塩としてはアンモニウム、又はナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属類等の塩である。
(f)ロジン又はその塩。塩としてはアンモニウム、又はナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属類等の塩である。ロジンと高級脂肪酸の混合酸であるトール油混酸とその塩もこの中に含まれる。
(g)炭素数4〜18のアルカン又はアルケン脂肪酸とその塩。塩としてはアンモニウム、又はカリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属類等の塩である。
(h)α−スルホ脂肪酸エステル塩又はその誘導体。塩としてはアンモニウム、又はナトリウム、カリウム、マグネシウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属類等の塩である。
【0076】
上記のアニオン界面活性剤のうち、特にリグニンスルホン酸塩やリグニンスルホン酸とナフタリンスルホン酸のホルマリン縮合物やそれらの塩、ナフタリンスルホン酸塩ホルマリン縮合物が総合的に優れた性能を示す。
【0077】
本発明におけるアニオン性分散剤の添加量は、工程2で得られるエマルション燃料に対して0.01〜0.5重量%、好ましくは0.02〜0.2重量%となるように調整される。本発明において、アニオン性分散剤は、そのまま使用できるが、予め水に溶解し、濃度を1〜50重量%に調整して添加することができる。又、工程2で得られる超重質油エマルションにおけるカチオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤とアニオン性分散剤との重量比が、90/10〜60/40となるように調整することが好ましい。
【0078】
工程2において、工程1で得られたエマルション燃料にアニオン性分散剤、又はさらに水を添加し混合する際の攪拌は、プロペラ型の攪拌など一般の攪拌機で十分である。この場合、攪拌を容易にするため、所定量の水を適宜添加してもよい。工程2においては、この混合液を調製した後、さらに剪断速度10〜10000/秒、好ましくは100〜6000/秒で攪拌を行う。剪断速度が10000/秒を超えると、工程2で得られるエマルション燃料の油滴粒子への影響が大きく、却ってエマルションの長期保存安定性が低下する。
【0079】
また、工程1の説明の箇所にて記載した安定剤を工程2で添加することもできる。
【0080】
本発明の製造方法における、上記成分の配合量の好適な組み合わせとしては、例えば、工程1における混合液の調製に際して、カチオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の添加量が0.1〜0.4重量%、非イオン界面活性剤の添加量が0.1〜0.4重量%、安定剤の添加量が0.005〜0.1重量%、工程2におけるアニオン性分散剤の添加量が0.02〜0.2重量%である、という組み合わせが挙げられる。
【0081】
このようにして、工程2で得られる水中油滴型(O/W)のエマルション燃料は油分を68〜79重量%、好ましくは75〜79重量%含み、またその粘度は200〜1500cp(25℃)、好ましくは300〜600cp(25℃)であることが望ましい。この場合、エマルション燃料中の油分の濃度が第2工程において第1工程より1〜6重量%減少するように、水、又は水及びアニオン性分散剤を加えるのが好ましい。また、工程2で得られる水中油滴型(O/W)のエマルション燃料の油滴の50%累積粒子径は8〜30μm、好ましくは10〜20μm、特に好ましくは12〜16μm、150μm以上の粗粒子は0〜3重量%、好ましくは0〜2重量%、特に好ましくは0〜1重量%を示す粒子径分布をもつことが望ましく、本発明の超重質油エマルション燃料は、火力発電用として使用し得るものである。
【0082】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
【0083】
実施例1
800mLのステンレス製容器に所定量の水、アスファルト(コスモ石油製、JIS K-2207のストレートアスファルト、針入度80〜100)、表1〜3に示す界面活性剤や安定剤を採取し、恒温水槽にて、所定の温度(80℃)まで加熱して、予め混合(ダブルヘリカルリボン翼の攪拌機を用いて、回転数60rpmで5分間混合)し、その後、特殊機化工製ホモミキサーのタイプM型(低粘度攪拌翼付き)を使って、次の条件でエマルション燃料を製造した。この燃料を濃厚エマルション、この工程を工程1と名付ける。
【0084】
製造条件は、攪拌回転数8000rpm、操作時間2分間、温度80℃である。剪断速度は12000/秒である。水の比重は0.997(25℃)、油の比重は1.026(25℃)である。粘度の測定は25℃でハーケ製、二重円筒型回転粘度計RV−2型(センサーMV−1)を使って、100/秒で測定した。
【0085】
粒子径はグラニュロメーターHR850−B型(シーラス社製)を用い、50%累積粒子径(平均の粒子直径)を算出した。
【0086】
測定方法は、0.3重量%のカチオン界面活性剤又は両性界面活性剤水溶液中にエマルションを数滴滴下し、スターラー攪拌で均一試料とし、これを上記の粒度測定装置中に入れ、粒度を測定した。測定モードは1〜600μmを用いた。
【0087】
粗粒子量は、湿式篩(φ75)にて、150μmの成分を測定した。測定方法は、エマルションを20g秤量後、篩上に注ぎ込み、水をかけて洗浄後、真空乾燥機で乾燥した。乾燥後の篩に残った量を測定し、粗粒子量を算出した。
【0088】
次に、この濃厚エマルションに、80℃に加温した所定量の水と表1〜3に示すアニオン性分散剤を加え、予め混合(ダブルヘリカルリボン翼の攪拌機を用いて、回転数60rpmで5分間混合)し、その後、特殊機化工製ホモミキサーのタイプM型を用い、攪拌回転数3000rpm、操作時間2分間、剪断速度4500/秒、温度80℃で攪拌した。
【0089】
製造直後の平均の粒子直径と粗粒子量を前記と同様の方法で測定した。また、長期間(3ヶ月)保存し、沈降物の量、状態などで総合評価を行い、次の基準で表示した。
【0090】
◎:非常に良好
○:良好
△:若干効果あり
×:効果なし
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【0094】
実施例2
実施例1と同様な方法で、工程1の乳化剤を表4に示す混合添加剤として製造し、得られたエマルション燃料について、実施例1と同様の方法で、表4に示した物性値を測定した。
【0095】
【表4】
【0096】
実施例3
工程1は実施例1と同様の方法で濃厚なエマルションを製造し、工程2においては実施例1と同様の方法で予め混合し、その後、特殊機化工製ホモミキサーのM型を用い、表5に示した攪拌条件で、目的のエマルションを製造した。得られたエマルション燃料について、実施例1と同様の方法で、表5に示した物性値を測定した。
【0097】
【表5】
【0098】
比較例
表6に示す界面活性剤や安定剤を用いて、実施例1と同様にして番号1〜4の産物を得た。実施例1と同様にして物性値を測定し、その結果を表6に示した。
【0099】
なお、番号3、4は乳化できず、物性値は測定できなかった。
【0100】
【表6】
【0101】
本発明のエマルションは、比較試料と比較して流動性および長期保存安定性に非常に優れたものである。
【0102】
【発明の効果】
本発明により得られる油分の濃度が高い超重質油エマルション燃料は、粗粒子量が少なく、流動性があり、長期保存安定性についても良好であるため、取扱いが容易で、燃料としての価値が高いものである。
Claims (12)
- 以下の工程を有することを特徴とする超重質油エマルション燃料の製造方法、
工程1:超重質油、水、カチオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤を配合してなる、又はこれらに加えてさらに安定剤を配合してなる混合液を調製し、次いで1000〜60000/秒の高剪断速度で攪拌して油分を74〜82重量%含む水中油滴型(O/W)のエマルション燃料を調製する工程(但し、該カチオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤は、工程1で得られるエマルション燃料に対して0.1〜0.8重量%配合し、該安定剤は工程1で得られるエマルション燃料に対して0.001〜0.5重量%となるように配合する。なお、安定剤は工程2で添加することもできる。)、及び
工程2:工程1で得られるエマルション燃料に、アニオン性分散剤、又はさらに水を添加、混合し、更に10〜10000/秒の剪断速度で攪拌して、油分を68〜79重量%含む水中油滴型(O/W)のエマルション燃料を調製する工程(但し、該アニオン性分散剤は、工程2で得られるエマルション燃料に対して0.01〜0.5重量%となるように配合する。)。 - 工程1における混合液の調製に際して、非イオン界面活性剤を、カチオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の、1/100〜4/1重量倍を添加する請求項1記載の製造方法。
- 安定剤として、高分子化合物(天然高分子もしくは合成高分子)及び/又は水膨潤性粘土鉱物を用いる請求項1又は2記載の製造方法。
- 工程1で得られる水中油滴型(O/W)のエマルション燃料の油分の濃度が77〜81重量%である請求項1〜3いずれか記載の製造方法。
- 工程1における混合液の調製に際して、カチオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の添加量が0.1〜0.4重量%、非イオン界面活性剤の添加量が0.1〜0.4重量%、安定剤の添加量が0.005〜0.1重量%、工程2におけるアニオン性分散剤の添加量が0.02〜0.2重量%である請求項2〜4いずれか記載の製造方法。
- 工程2で得られる超重質油エマルションにおけるカチオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤とアニオン性分散剤との重量比が、90/10〜60/40である請求項1〜5いずれか記載の製造方法。
- 工程1における剪断速度が5000〜20000/秒、工程2における剪断速度が100〜6000/秒である請求項1〜6いずれか記載の製造方法。
- 工程1で得られる水中油滴型(O/W)のエマルション燃料の油滴の50%累積粒子径が3〜30μm、150μm以上の粗粒子が0〜3重量%を示す粒子径分布を持つものである請求項1〜7いずれか記載の製造方法。
- 工程1で得られる水中油滴型(O/W)のエマルション燃料の粘度が400〜3000cp(25℃)である請求項1〜8いずれか記載の製造方法。
- 工程1において、高剪断型タービンミキサーを有するホモミキサーを高剪断攪拌装置として用いることを特徴とする請求項1〜9いずれか記載の製造方法。
- 工程1で得られる水中油滴型(O/W)のエマルション燃料が150μm以上の粒子を0〜2重量%含むものである請求項1〜10いずれか記載の製造方法。
- 工程1における混合液の調製に際して、マグネシウム、カルシウム、又は鉄の酢酸塩、硫酸塩、又は硝酸塩を、工程1で得られるエマルション燃料に対して0.01〜0.2重量%となるようにさらに添加することを特徴とする請求項1〜11いずれか記載の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP31547797A JP3662733B2 (ja) | 1997-11-17 | 1997-11-17 | 超重質油エマルション燃料の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP31547797A JP3662733B2 (ja) | 1997-11-17 | 1997-11-17 | 超重質油エマルション燃料の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11148087A JPH11148087A (ja) | 1999-06-02 |
JP3662733B2 true JP3662733B2 (ja) | 2005-06-22 |
Family
ID=18065838
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP31547797A Expired - Fee Related JP3662733B2 (ja) | 1997-11-17 | 1997-11-17 | 超重質油エマルション燃料の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3662733B2 (ja) |
Families Citing this family (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4520101B2 (ja) * | 2003-03-28 | 2010-08-04 | 日華化学株式会社 | 廃プラスチック含有エマルジョン用乳化剤 |
KR100553548B1 (ko) * | 2003-11-06 | 2006-02-20 | 한국동서발전(주) | 가시 백연 제거용 연료 첨가제 및 이를 이용한 가시 백연 제거방법 |
JP6371687B2 (ja) * | 2014-11-21 | 2018-08-08 | 日本油化工業株式会社 | 燃料油の防カビ性および潤滑性を向上させる組成物 |
EP3365415B1 (en) * | 2015-11-06 | 2019-09-04 | Quadrise International Ltd | Oil-in-water emulsions |
-
1997
- 1997-11-17 JP JP31547797A patent/JP3662733B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH11148087A (ja) | 1999-06-02 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR100305240B1 (ko) | 초중질유 에멀션 연료의 제조 방법 | |
EP0808889B1 (en) | Method for producing superheavy oil emulsion fuel and fuel produced thereby | |
US10597570B2 (en) | Spray dried emulsifier compositions, methods for their preparation, and their use in oil-based drilling fluid compositions | |
MXPA97003829A (es) | Metodo para producir combustible en emulsion de aceite superpesado, y combustible asi producido | |
CA3045622A1 (en) | Compositions for use in drilling fluids | |
JPH06322382A (ja) | 重質油エマルジョン燃料組成物 | |
JP3662733B2 (ja) | 超重質油エマルション燃料の製造方法 | |
JP2997272B2 (ja) | 変性ブロック重合体、その製造方法およびその用途 | |
JP2858247B2 (ja) | 超重質油エマルション燃料の製造方法 | |
EP0595640B1 (en) | Heavy oil emulsion fuel | |
JP2860390B2 (ja) | 超重質油エマルション燃料の製造方法 | |
JPH0776690A (ja) | 超重質油エマルション燃料 | |
US5521235A (en) | Bitumen emulsion and its use | |
JPH0776692A (ja) | 超重質油エマルション燃料 | |
US8262385B2 (en) | Aqueous dispersions of heavy oil residues | |
JPH09279167A (ja) | 劣化した超重質油エマルション燃料の再生方法 | |
JPH06264077A (ja) | 重質油エマルジョン燃料組成物 | |
JPH0711269A (ja) | 重質油エマルジョン燃料組成物 | |
JPH083573A (ja) | 重質油エマルジョン燃料組成物 | |
PL192119B1 (pl) | Emulgator do wytwarzania kationowych emulsji asfaltowych | |
JPH06108071A (ja) | 重質油エマルジョン燃料 | |
JPH06271875A (ja) | 重質油エマルジョン燃料組成物 | |
WO2007051632A2 (en) | Surfactant precursor | |
JPH0657268A (ja) | 超重質油エマルション燃料 | |
JPH07310083A (ja) | 重質油エマルジョン燃料の貯蔵方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20050228 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20050304 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20050324 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090401 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090401 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100401 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110401 Year of fee payment: 6 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |