JP3658059B2 - マグネット加圧機構および該マグネット加圧機構を用いた装置 - Google Patents

マグネット加圧機構および該マグネット加圧機構を用いた装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、マグネットの磁気吸引力によるマグネット加圧機構および該マグネット加圧機構を用いた超音波モータその他の装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
加圧機構の主なものを列挙すると以下のものがある。即ち、
(1)ゴム、スプリング等物質のばね性を利用したばね加圧、
(2)マグネットの吸引、反発を利用したマグネット加圧、または
(3)重力を利用した重力加圧
である。
【0003】
以上の内、重力加圧は加圧方向に制約を受けることや、重くなる等の理由から携帯用の機器等に利用することが困難である。一般にコストの観点から、広く加圧機構として採用されているのがばね加圧である。
【0004】
図31に従来の加圧機構の第1例としてばね加圧による超音波モータの断面図を示す。図31において、120はステータであり、該ステータ120は振動子121、圧電素子122、フレキシブルプリント基板(以下FPCと略す)123、摩擦材料124から構成されている。超音波モータのモータケースは後蓋125と外筒128の2つから成っている。ステータ120はねじ127によりモータケースの後蓋125に固定されている。また、後蓋125にはオイルレスメタル126も固定されている。
【0005】
一方のモータケースの外筒128にはボールベアリング130の外輪131を保持したハウジング129が固定されており、該オイルレスメタル126と、該ボールベアリング130とにより軸134を支持している。軸134にはロータ135が固定され、ステータ120上を循環する超音波振動の進行波の波頭に該ロータ135を圧接し、ロータ135と共に回転する軸134により回転力を取り出すものである。
【0006】
このステータ120とロータ135とを圧接する加圧機構としてばね136が用いられている。ばね136はボールベアリング130の内輪133に当接したばね受137とロータ135とに挟まれた場所に配置され、ロータ135と一緒にばね136、ばね受137、ボールベアリング130の内輪133、ボール132が回転する。ロータ135を押すばね136の加圧反力はばね受137、ボールベアリング130の内輪133を経由して、ボール132により外輪131へと伝えられる。ボールベアリング130の外輪131に伝達された加圧反力は、ハウジング129を介して外筒128で受ける。
【0007】
さて、外部の離れた場所から非接触で加圧する方法として、マグネット加圧があるが、永久磁石を用いて磁気反発力を利用した加圧機構は時間と共に減磁し、次第に加圧力が弱まってしまうため、一般に閉ループの磁気回路を構成し、減磁しにくい、磁気吸引力を利用した加圧機構をとる。
【0008】
図32に従来の加圧機構の第2例としてマグネット加圧による超音波モータの断面図を示す。図32に示す超音波モータの構成要素の符号は図31のものを流用している。ステータ120と共に、マグネット138を保持したマグネット取付板139がねじ127により後蓋125に固定されている。モータケースである後蓋125、外筒128と共にオイルレスメタル126、140が固定され、該2つのオイルレスメタル126、140で軸134を支持している。軸134にはロータ135が固定され、該ロータ135にはヨーク141が固定されている。図32の超音波モータの例では、ステータ120をロータ135に圧接する機構として、マグネット138とヨーク141との吸引力を用いている。
【0009】
図33は従来のマグネット加圧の第1例の試料寸法を示す破断斜視図である。142、143、144は磁性体であるが、図33の例では、磁性体142、143として図5に示す特性を持つ高透磁率材料である鉄系のS15Cを用いたヨークと、磁性体144として図4に示すB−H曲線を持つNd−Fe−B系希土類磁石のマグネットを用いた場合を示す。マグネット144の着磁形態は一点鎖線で示す中性線145より上面側をN極、下面側をS極になるようにしている。そして、マグネット144とヨーク143とは接着によって一体になっている。なお、ヨーク142とマグネット144の間の距離をギャップと呼ぶ。
【0010】
図34は図33の例に示した寸法、材質におけるギャップと吸引力との関係を示す特性図である。図34から明らかなように、ヨーク142とマグネット144の間に働く吸引力は、ギャップの大きさに対して逆2乗的な関係を持つ。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従来の加圧機構の内、ばねによる加圧機構の場合は次のような問題があった。
(1)ばねの変位に比例して発生する力が変化してしまう。図31の例ではステータ上の摩擦材124が摩耗していくと、その分、ばね136が伸びてしまい、ロータ135を押すばね136の力が弱まり、加圧ぬけを引き起こす。特に、ばね定数が大きい皿ばね等を用いた加圧機構の場合、わずかの変位で加圧力が大きく変化してしまう。
(2)ばね加圧は、ばねを加圧する物体と加圧反力を受ける物体とに当接させねばならないので、加圧反力を受ける物体を固定した状態で、加圧する物体を回転できない。
(3)図31に示す超音波モータの例のように、固定している外筒128で、ばね136の加圧反力を受け、回転するロータ135をステータ120に圧接する場合、ボールベアリング130を用いる構造にせざるを得ない。ボールベアリング130は部品コストが高く、かつボールベアリング130を取付ける際、高い寸法精度のハウジング129等の相手部品を用意する必要があり、接着による組み立て作業も困難である。さらに、軸134とボールベアリング130の内輪133とは接着固定であるため、組み立て後の分解、再組み立てが不可能である。
【0012】
次に、従来のマグネット加圧の場合は次のような問題があった。
(1)図34の特性図からキャップを限りなく零に近づければ、大きな力が得られるが、実際には、図32の例ではギャップを0.2(mm)程度以上に設定しないと、部品精度や組み立て誤差の積み重ね等が加わり、ヨーク141とマグネット138とが接触してしまう。また、量産時における上記寸法精度のバラツキに鑑み、ギャップをかなり大きくとらねばならず、大きな力が得られない。
(2)従来のマグネット加圧では、図34から明らかなように、わずかなギャップの変動で力が大きく変化する。図32に示す超音波モータのように、部品精度や組み立て誤差が構造上ギャップ方向に積み重なる場合や、摩擦材124の摩耗によりギャップが刻々と変化する場合、ロータの加圧力が大きく変動してしまう。
【0013】
図35でロータの加圧力の変化が超音波モータに与える影響を説明する。図35は超音波モータのロータとステータとの接触状態を示す断面図である。図35(a)はロータに加圧を加えていない状態、図35(b)はロータに加圧を加えた状態を示す。図35(a)において、ステータ表面に進行波を発生させると、ステータ120の表面上の点146は一点鎖線で示した楕円軌道147を描いて振動しロータ135はステータ120の波頭のみで接する。
【0014】
図35(a)では加圧してないため、摩擦力が働かず、ロータ135は回転しない。ロータ135を動かすためにはロータ135をステータ120に加圧接触させる必要があり、その時の様子を示したのが図35(b)である。加圧によりロータ135はステータ120に沈み込み、図中に示す接触幅をもって接するようになる。
【0015】
一方、ステータ120も、加圧により進行波の波頭がつぶされステータ120の表面上の点148の軌道149も歪んだ楕円となる。加圧により、ロータ135は摩擦を受け、図35(b)に示す矢印の方向に移動するが、移動の速度は接触幅の部分で受ける摩擦力とロータ135に加わる負荷との釣合いで決まる。接触部の部分において、ロータ135の移動速度が一致するステータ120の表面上の点では、軌道149上の2点の固着点150のみで、接触幅中の他の場所ではロータ135とステータ120とが互いにすべりや剪断変形を起こしている。
【0016】
ロータをステータに圧接することにより回転力を得る超音波モータでは、ロータへのへこみによる歪みエネルギーの他、すべりや剪断変形といったエネルギーの損失があり、これが熱エネルギーとしてモータ温度を上昇させるため、温度に対し共振周波数が大きい圧電素子に影響を与える。共振周波数が変動すると、ロータ135の移動速度も変化する。以上説明したように、超音波モータにおいて、単なる加圧力の変動が回転数、出力トルク、効率、寿命といった特性の他、鳴きや異常摩擦等さまざまな問題に波及する。
【0017】
(3)超音波モータに従来のマグネット加圧を採用した場合、摩擦材の摩耗により、ギャップが小さくなる方向に変化していくので、急激な加圧力の増大により、自己破壊を引き起こす。このように、従来のマグネット加圧は、加圧している物体が、万一加圧方向に少しでも移動してしまった場合、さらに加圧が増大してしまうことに起因する問題を起こす恐れがある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本願請求項1に記載の発明は、一方の面をN極とし他方の面をS極とするマグネット、前記マグネットの一方の極に固定されたヨーク、および、前記マグネットの他方の極に固定され外周部に半径方向に張り出したつば部を設けたヨークからなる第1磁性体と、前記第1磁性体の外周面および前記つば部と対向する第2磁性体とを有し、前記つば部が設けられたヨークは、前記マグネットと前記つば部との間に段差を有することを特徴とするマグネット加圧機構とするものである。
【0019】
同様に、上記課題を解決するため、本願請求項2に記載の発明は、一方の面をN極とし他方の面をS極とする中空形状のマグネット、前記マグネットの一方の極に固定された中空形状のヨーク、および、前記マグネットの他方の極に固定され内周部に半径方向に張り出したつば部を設けたヨークからなる第1磁性体と、前記第1磁性体の内周面および前記つば部と対向する第2磁性体とを有し、前記つば部が設けられたヨークは、前記マグネットと前記つば部との間に段差を有することを特徴とするマグネット加圧機構とするものである。
【0020】
また、上記した本願請求項1または3に記載のマグネット加圧機構は、つば部、ヨーク部、第2磁性体が高透磁性材料を成分として含んでいる。
【0021】
また、本発明のマグネット加圧機構は、従来のばね加圧の場合のばね定数やマグネット加圧の場合のギャップの逆2乗則というような加圧方向の位置変動に対する加圧力変化の問題を解決すると共に、用途に合わせた距離−吸引力特性を発生できるものである。
【0022】
例えば、本発明に従って発生される種々の距離−吸引力特性を持つものの内では、特に従来のマグネット加圧機構の距離−吸引力特性にない特殊な領域を有するものとして以下のようなものがある。
(1)加圧方向の位置変動に対して加圧力がほどんど変化しない領域を持つもの
(2)加圧方向に移動すると加圧力が減ずる領域を持つもの
(3)加圧方向の反対方向に移動すると加圧力が増す領域を持つもの
【0023】
本発明では、上記したような特殊な特性部分を用いて以下に記載のような装置や構造を製作できるものである。例えば、前述の(1)に記載の特性領域を持つものを利用して、加圧方向に移動して互いの磁性体が接触するまでの空隙を1(mm)程度に離れた位置をとったマグネット加圧構造が得られる。
また、(2)に記載の特性領域を持つものを利用して、万一加圧方向に被加圧物体が移動しても一時加圧力が減ずる安全機能も持つマグネット加圧装置が得られる。
さらにまた、(3)に記載の特性領域を持つものを利用して、万一加圧方向の逆方向に被加圧物体が移動してもより大きな力が働き元の位置の方向へ戻ろうとする機能を持つマグネット加圧装置が得られる。
【0024】
【実施例】
次に、本発明のマグネット加圧機構および該マグネット加圧機構を利用した超音波モータ、その他の実施例を説明する。
【0025】
最初にマグネット加圧機構について説明する。図1、図2は本発明のマグネット加圧機構の代表的な形態を示し、図3乃至図24は本発明の加圧原理を説明するための図であり、図25乃至図30は本発明の加圧機構を用いた装置の実施例を示す図である。
【0026】
図1、図2は、本発明の代表的な2つの形態を示す破断斜視図である。本発明のマグネット加圧機構は、同軸上の内周および外周に配置された2つの同心円状の磁性体1および磁性体2から成り、少なくとも一方が互いに向き合う方向に張り出したつば部を有するものである。
【0027】
本発明の加圧機構の原理を説明する便宜上、マグネット加圧機構を各要素に分解する。最初に、図1に示すように、符号2を付してある磁性体につば部が設けられており、符号1が付してある磁性体を単純化して、該磁性体1と磁性体2との間に作用する磁気吸引力の原理を説明する。さらに、つば部を有する磁性体の形状に関して、円筒部3とつば部4の2つの部位に分ける。
【0028】
図3は、図1に示す形態の本発明のマグネット加圧機構の第1例の試料寸法(単位:mm)を示す破断斜視図である。この試料は、磁性体1として鉄系のS15Cを用いたヨーク5と、磁性体2としてNd−Fe−B系希土類磁石のマグネット7の両極に鉄系のS15Cのヨーク8、9を固定した構造のマグネットユニット6とで構成したものである。10は中性線であり、マグネット7は、上面側がN極に、下面側がS極に着磁してある。
【0029】
マグネットユニット6において、マグネット7の体積は、部品コストに大きな影響を与える。そこで、ヨーク8、9をマグネット7の両極に付加することにより使用するマグネットの体積を少なくし、高価なマグネットに要する部品コストを抑えつつ強力な吸引力を得ている。また、マグネット7に比べ、ヨーク5、8、9は、製造上高い寸法精度が出せるため、磁束は上記ヨークによって高い寸法精度で束ねられ、加圧特性がより安定した加圧機構ができる。
【0030】
マグネット7の幅をW、高さをHとして、以下の数式(1)の寸法関係にすると、マグネット7の体積に対する吸引力が大きくとれるほか、加圧機構自体も薄型化できる。
H≦W ・・・・・ (1)
【0031】
ヨークの製造の際、注意すべきことは、ヨーク5の外径寸法とヨーク8、9の内径寸法で決まるエアギャップαの寸法精度である。また、ヨーク5の下面側の外周面の稜のR面、C面、エッジ精度も重要である。
【0032】
マグネットユニット6を構成するマグネット7、ヨーク8、9の円筒部3の内径は20(mm)であり、ヨーク5の外径は19.6(mm)である。ヨーク5の外周とマグネットユニット6の円筒部3の内周とは接しないように、エアギャップα=0.2(mm)をもって同軸上に配置する。
【0033】
図3の試料でマグネットユニット6を固定し、ヨーク5を上方へ移動してスラスト方向の変位と発生する吸引力との関係を見る際、円板つば部4とヨーク5との距離xでとらえると把握し易い。
【0034】
図4は、マグネット7の材料として用いたNd−Fe−B系希土類磁石の減磁特性を示す図であり、B−H曲線を示す。
【0035】
図5は、ヨーク5、8、9の材料として用いたS15Cの磁化特性を示す図であり、磁束密度Bと磁界の強さHとの関係を示すB−H曲線である。
【0036】
図3に示す寸法で、図4の特性を持つマグネット7と、図5の特性を持つヨーク5、8、9を用いた試料の距離xと吸引力Fとの関係を求めた結果を図6に示す。また、この試料と同一マグネットによる従来の加圧機構による図34の特性を同一スケールで破線で示す。ここで、図33の従来例のマグネット144は本発明の試料と同一材質、同一寸法である。
【0037】
図6の特性図から明らかなように、本発明のマグネット加圧機構は従来の加圧機構に比べてはるかに大きな力が得られる。マグネット加圧機構を作る際、コストを抑えるため、高価なマグネットの体積をなるべく小さくしようとするが、本発明では、所望の力を確保すると共にコスト的にも有利な加圧機構が得られる。また、距離xと吸引力Fとの関係で距離xに対して吸引力Fがほとんど変動しない独特な特性を持つ。このような独特な特性を持つマグネット加圧機構が得られることが本発明の最大の特徴である。この特性を持つものでは、加圧している物体が加圧方向にずれても加圧力がほとんど変動しない。以下の説明の便宜上、この変動しない部分を「特異領域」と呼ぶことにする。
【0038】
図7は、コンピュータによる3次元磁場解析の結果の一例として、図3に示す本発明の第1例の試料の12分の1のモデルにおける距離xが0.8(mm)の状態の磁束のシミュレーションを示したものである。マグネット7の上面側をN極、下面側をS極としているので、矢印で示す磁束はマグネット7の上面からヨーク8を出てヨーク5を通り、ヨーク9からマグネット7の下面側へ循環する磁気回路を形成する。
【0039】
図8は、図3で示した本発明の第1例の試料のマグネットユニットの断面図である。マグネットユニット6のヨークの円筒部3には引き下がり段差11の部分を設けてある。この引き下がり段差11は、図8に示すように、ヨーク9とマグネット7との境界面と円板つば部4の上面との間の段差であり、この引き下がり段差11を設けないと、距離x−吸引力Fの特性に前述した特異領域が発生しないので、特異領域を発生させるために設けたものである。
【0040】
図9は本発明のマグネット加圧機構の第2例の試料寸法を示す破断斜視図である。この試料は、引き下がり段差を設けていない点で、図8の第1例の試料と異なっている。なお、図9において、図3で用いた符号と同一符号を付した構成要素は図3の構成要素と同一または同様な機能を持つ部分または部材を表すものである。マグネットユニット12のヨーク13には引き下がり段差を設けていない。
【0041】
ここでも、ヨーク5およびヨーク8、ヨーク13の材料として図5のB−H曲線に示す特性のS15C、マグネット7の材料として、図4のB−H曲線に示す特性のNd−Fe−B系希土類磁石を用い、マグネット7の一点鎖線で示す中性線10より上面側がN極、下面側がS極になるように着磁する。
【0042】
図10に、図9に示した本発明のマグネット加圧機構の第2例の試料における距離x−吸引力F特性を示す。図33に示す同一材質、同一寸法のマグネットを用いた従来の加圧機構に比べはるかに大きな力を得られるが、図6に示すような顕著な特異領域は現れない。
【0043】
次に、図11〜図19を参照して、図3におけるヨーク5とマグネットユニット6のユニット8の形状に対する3つの変形例(第3例〜第5例)を説明する。
【0044】
最初に、図11〜図14にその最初の変形例(第3例)を示す。図11は本発明のマグネット加圧機構の第3例の試料寸法を示す破断斜視図である。図11において、図3で示した符号と同一の符号を用いた構成要素は第1例の試料で説明した構成要素と同じものを表す。
【0045】
ヨーク14の外周とマグネットユニット15の内周とは接しないように、エアギャップ0.2(mm)をもって同軸上に配置する。ここで、ヨーク14およびヨーク16、ヨーク9の材料として図5のB−H曲線に示す特性のS15C、マグネット7の材料として、図4のB−H曲線に示す特性のNd−Fe−B系希土類磁石を用い、マグネット7の一点鎖線で示す中性線10より上面側がN極、下面側がS極になるように着磁する。図3の試料と図11の試料の違いは2点あり、第1点は図3のヨーク5の高さ4(mm)を図11のヨーク14では3(mm)にしたことで、第2点は図3のヨーク8の高さ2(mm)を図11のヨーク16では1(mm)にしたことである。
【0046】
図12に図11に示した本発明のマグネット加圧機構の第3例の試料における距離x−吸引力F特性を示す。この図12の特性図からわかる様に、距離xが0.3(mm)付近に吸引力の極小値、距離xが1.0(mm)付近に吸引力の極大値となる独特な特異領域が出現する。これも従来のマグネット加圧機構に無い特性である。また、図34に示した同一マグネットを用いた従来のマグネット加圧機構の特性に比べ、例えば3(kgf)近傍の大きな力を広い距離xの範囲で安定して得られることがわかる。
【0047】
図12の特性の中で距離xの0.3(mm)から1.0(mm)の部分に着目すると、従来のマグネット加圧機構では出来なかった用途が創造できる。例えば、距離xが0.3(mm)で加圧している被加圧物体が、加圧方向の反対方向(距離x>0.3(mm)の位置方向)に移動した場合、より大きな力が働き該物体を元の位置の方向へ向かって戻そうとする機能を有する加圧機構や、距離xが1.0(mm)で加圧している被加圧物体が、加圧方向(距離x<1.0(mm)の位置方向)に移動してしまった場合、加圧力がぬける機能を有する加圧機構が実現できる。
【0048】
図13、図14は図11に示す本発明のマグネット加圧機構の第3例の試料の12分の1のモデルをコンピュータにより3次元磁場解析を行った例で、図12の特性図で示した吸引力の極小値付近の距離xが0.3(mm)での磁束のシミュレーションを図13に、吸引力の極大値付近の距離xが1.0(mm)での磁束シミュレーションを図14に示す。
【0049】
図13の距離xが,0.3(mm)の場合では、ヨーク14の外周面がヨーク16の円筒部3内周と対向する部分が少なく、ヨーク16を出た磁束がヨーク14の外をはずれてしまっている様子が示されている。空気中はS15Cに比べ比較にならないほど大きな磁気抵抗を有する為、磁束が通りにくく、その結果としてヨーク14とマグネットユニット15との間に働く吸引力も小さい。
【0050】
図14の距離xが1.0(mm)の場合では、ヨーク14の外周面がヨーク16の円筒部3の内周面の全面で対向し、ヨーク16を出た磁束は0.2(mm)のエアギャップを通りヨーク14へと入っていく様子が示されている。このため、ヨーク16とヨーク14との間の磁気抵抗が図13の場合に比べ低く、磁束が通りやすくなり、その結果として図13の場合より大きな力が得られるわけである。
【0051】
図11乃至図14の事例により、図1及び図2の代表形態において、磁性体2の円板つば部4と磁性体1との距離xが、磁性体2の円筒部3と磁性体1とのエアギャップαより大きい領域(x≧α)では磁性体1と磁性体2の円筒部3との対向位置関係が距離xー吸引力F特性の特異領域の特性に大きく影響することがわかる。
【0052】
図15乃至図19は本発明におけるコストダウンや軽量化を主眼としてヨークの材料を削減した形状を検討した中の2例である。まず、図15乃至図17でその1つを示す。図15は本発明のマグネット加圧機構の第4例の試料寸法を示す破断斜視図である。図15において図3で示した符号と同一符号を用いた構成要素は第1例の試料で説明した構成要素と同じものを表す。
【0053】
ヨーク5の外周とマグネットユニット17の内周とは接しない様に、エアギャップα=0.2(mm)をもって同軸上に配置する。ここでヨーク5及びヨーク18、ヨーク9の材料として図5のB−H曲線に示す特性のS15C、マグネット7の材料として、図4のB−H曲線に示す特性のNd−Fe−B系希土類磁石を用い、マグネット7の一点鎖線で示す中性線10より上面側がN極、下面側がS極になる様に着磁する。
【0054】
図3の試料と図11の試料には1つの違いがあり、図3のマグネットユニット6のヨーク8を図15のマグネットユニット17では円筒つば部19を有したヨーク18にしたことである。
【0055】
ヨーク18は、図11の第3例の試料のヨーク16と同じ1(mm)の厚みの板材を用いながら板金プレス加工により、円筒つば部19を形成し、図3の第1例の試料に示す厚さ2(mm)の板材を用いるヨーク8と同等の性能を出そうとしたものである。
【0056】
図16に図15に示す本発明のマグネット加圧機構の第4例の試料の12分の1で図7の例と同じ距離xが0.8(mm)の場合のモデルをコンピュータにより3次元磁場解析して得られた磁束のシミュレーションを示した。ヨーク5の円筒外周とエアギャップ0.2(mm)で対向するヨーク18の円筒つば部19が、図7のヨーク8と同様に、マグネット7の上面側のN極から出た矢印で示す磁束をヨーク5へと渡す磁気回路としての機能を持つ様子が示されている。
【0057】
図17は図15に示した本発明のマグネット加圧機構の第4例の試料における距離xー吸引力F特性を示す。図6の特性図と比較して見ると、図17の特性は全体的に吸引力が百数十(gf)ほど低いだけで、特異領域を含む特性曲線の様子はほとんど同じ特性が得られることがわかる。
【0058】
図18は、本発明のマグネット加圧機構の第5例の試料寸法を示す破断斜視図である。図18において図3や図15で示した符号と同一符号を用いた構成要素は第1例の試料や第4例の試料で説明した構成要素と同じものを表す。ヨーク5の外周マグネットユニット20の内周とは接しない様に、エアギャップα=0.2(mm)をもって同軸上に配置する。ここでヨーク5及びヨーク21、ヨーク9の材料として図5のB−H曲線に示す特性のS15C、マグネット7の材料として、図4のB−H曲線に示す特性のNd−Fe−B系希土類磁石を用い、マグネット7の一点鎖線で示す中性線10より上面側がN極、下面側がS極になる様に着磁する。
【0059】
図15の試料と図18の試料には1つの違いがあり、図15のマグネットユニット17のヨーク18の円筒つば部19の円筒つば厚が1(mm)であるのに対し、図17のマグネットユニット20のヨーク21の円筒つば部22の円筒つば厚が2(mm)であることである。
【0060】
図18のヨーク21は軽量化や体積の削減を目的とした形状で図3のヨーク8に比べて32.4%の重量削減を行っている。また板厚より厚い円筒つば厚を有するヨーク21は鍛造や焼結で製造するのが望ましい。図19は図18に示した本発明のマグネット加圧機構の第5例の試料に於ける距離xー吸引力F特性を示す。図18の第5例の試料はヨーク21の円筒つば部22の円筒つば厚を1(mm)から2(mm)に増やすことにより、図3の第1例の試料に対して見られた図15の第4例の試料のわずかな吸引力の不足を無くし、図6に示す特性とほとんど遜色の無い特性が得られる。
【0061】
図20は本発明のマグネット加圧機構の第6例の試料寸法を示す破断斜視図である。図20における3は円筒部、4は円板つば部で図2と同じ符号を用いた。図20は図2に示す磁性体1として図5のB−H曲線に示す鉄系のS15Cを用いたヨーク23、磁性体2として図4のB−H曲線に示すNd−Fe−B系希土類磁石のマグネット25の両端に鉄系のS15Cのヨーク26、27を固定した構造のマグネットユニット24で構成したものである。28は中性線で、マグネット25は上面側がN極、下面側がS極に着磁してある。
【0062】
マグネットユニット24のヨーク26には図15の第4例の試料と同様に円筒つば部29を設けている。ヨーク23の内周とマグネットユニット24の円筒部3の外周とは接しない様に、エアギャップα=0.2(mm)をもって同軸上に配置する。また、マグネットユニット24とヨーク23との間に発生する磁気吸引力によるスラスト方向の加圧力と変位との関係を見る場合も、円板つば部30とヨーク23との距離xでとらえる方法を取る。
【0063】
図21はコンピュータによる3次元磁場解析の結果の一例で図20に示す本発明のマグネット加圧機構の第6例の試料の12分の1のモデルにおける距離xが1.5(mm)の状態の磁束のシミュレーションを示したものである。マグネット25の上面側をN極、下面側をS極としているので、矢印で示す磁束はマグネット25の上面側から出て、ヨーク26からヨーク23へと通っている。
【0064】
図21の様に距離1.5(mm)の位置関係の場合においては、ヨーク26に形成した円筒つば部29からヨーク23へと磁束が通っている様子を見ることが出来る。また、ヨーク23を出た磁束は、ヨーク27の円板つば部30よりも引き下がり段差31の円筒外周面を通り、マグネット25の下面側へと循環する磁気回路を形成している様子がわかる。
【0065】
図22に図20に示した本発明のマグネット加圧機構の第6例の試料に於ける距離xー吸引力F特性を示す。図6において、「特異領域」と名付けた、距離xが変化しても吸引力Fの値があまり変動しない領域が広いのが見て取れる。さて、この特性図において、距離xの値の小さい部分、特に距離xがエアギャップαより小さい部分(x≦α)では距離xに対する吸引力Fの変化が大きい。ここで、x≦αの領域において円板つば部形状が与える距離xー吸引力F特性への影響について図23乃至図24を参照して述べる。
【0066】
図23は図2に示す代表形態を基本にして円板つば部の径を変化させた試料例とその寸法を示す破断斜視図である。図2の磁性体1に相当するものとして図20のヨーク23を用い、図2の磁性体2に相当するものとして、図23の(a)、(b)、(c)に示すマグネットユニット32、37、40をそれぞれヨーク23の内周に接しない様に、エアギャップ0.2(mm)をもって同軸上に組付けた場合について述べる。
【0067】
図20のマグネットユニット24と図23のマグネットユニット32には2つの違いがあり、第1点は図20の円筒つば部29の高さ寸法3(mm)を図23の円筒つば部35では2(mm)としたこと、第2点は図20の円板つば部30の直径φ26(mm)を図23の円板つば部36ではφ22(mm)としたことである。他の部分は図20と同様にマグネット25は図4のB−H曲線に示すNd−Fe−B系希土類磁石で上面側がN極、下面側をS極に着磁したものである。28は中性線である。ヨーク33、34は図5のB−H曲線で示す鉄径のS15Cを用い、これをマグネット25の両端に固定した構成にしている。
【0068】
さて、図23の(a)、(b)、(c)の違いはそれぞれのマグネットユニット32、37、40のヨーク34、38、41における円板つば部36、39、42の直径をφ22(mm)、φ24(mm)、φ26(mm)と変えたものであり、他の部分は全て同一にしている。図20のヨーク23と、図23の円板つば部の径の違いの試料(a)、(b)、(c)とを組合わせた場合の距離xと吸引力Fとの関係を図24に示す。ここで距離xとは図20の場合と同様に、ヨーク23と円板つば部との距離を示す。
【0069】
図24は図23に示す(a)、(b)、(c)の3つの試料による距離xー吸引力F特性である。図24では、図23(a)のマグネットユニット32による距離xー吸引力F特性を破線(a)、図23(b)のマグネットユニット37による特性を一点鎖線(b)、図23(c)のマグネットユニット40による特性を実線(c)で示し、比較できる様に示した。図24により円板つば部の径を小さくすると、距離xの小さい部分、特に距離xがエアギャップαより小さい部分(x≦α)では、距離xに対する吸引力Fの変化が著しく大きくなる様子が見て取れる。
【0070】
また、円板つば部の径は相手側の磁性体であるヨーク23の外径φ26(mm)より大きくしても加圧機構として特筆すべきほどの効果は見られなかった。部品コスト、小型化、軽量化の観点から言えば、図1に於ける磁性体2の円板つば部4の内径は磁性体1の内径より大きく、図2における磁性体2の円板つば部4の外径は磁性体1の外径よりも小さくする方が望ましい。
【0071】
次に、前述した本発明のマグネット加圧機構を用いた装置の実施例を以下に説明する。
(実施例1)
最初に、図25乃至図26を参照して本発明のマグネット加圧機構を用いた実施例1の超音波モータを説明する。図25は本発明のマグネット加圧機構を用いた実施例1の超音波モータの断面図である。また、図26は図25の超音波モータの分解斜視図である。図25、図26において、43はステータユニットであり、該ステータユニット43は振動子44、圧電素子45、FPC46、摩擦材47、マグネット51、ヨーク52とから構成されている。このステータユニット43は、スペーサ48と共にオイルレスメタル49で外筒50に固定されている。
【0072】
スペーサ48は振動するステータユニット43の振動を妨げない様にしながらステータユニット43が外筒50に接しない様にすきまを設け、ステータユニット43の高さ位置出しを行うべく、外筒50とステータユニット43との間にはさまれて設置される。さてこの振動子44は鉄の切削品、焼結品又は鍛造品といった高透磁率材料で製造されており、この振動子44をヨークの一部として用いこの振動子44とマグネット51、ヨーク52とで図1に示す磁性体2を構成する。
【0073】
ここでは、振動子44に形成されたつば部53を図1に示す磁性体2の円板つば部4として利用している。本来このつば部53は図26に示す様に、オイルレスメタル49のつば部54によりステータユニット43を外筒50に固定するためのものである。ロータ55には軸56が取り付けられ、またヨーク57も固定されている。このヨーク57が図1の磁性体1に相当する。ここでのロータ55は軽量で耐磨耗性があるシリコン入りアルミやアルマイト処理を施したアルミ材といった非磁性材料のアルミ系材料を用いている。軸56はオイルレスメタル49と後蓋58に固定されたオイルレスメタル59とで支持される。図26に示す様に実施例1の超音波モータの組み立ては持ち替えてひっくり返すことなく、一方向から順次組付けて製造することが可能な構造である。
【0074】
(実施例2)
図27は、本発明のマグネット加圧機構を用いた実施例2の超音波モータの断面図である。図27において、60はステータユニットであり、該ステータユニット60は、振動子61、圧電素子62、FPC63、摩擦材64、ヨーク65、オイルレスメタル66、67から構成される。
【0075】
一方、ロータユニット68は、ロータ69、軸70、マグネット71、ヨーク72、73とから構成されている。
ここでの振動子61は、リン青銅の切削品といった非磁性材料で、そこに高透磁率材料のヨーク65を固定する。このヨーク65が図1の磁性体1に相当する。
【0076】
一方、マグネット71、ヨーク72、73が図1の磁性体2に相当し、これによりロータユニット68をステータユニット60に圧接する。振動子61にはねじ穴74が設けられ、本発明の実施例2の超音波モータを取り付ける装置の取付板75にねじ76で固定する。軸70にはカム、プーリといった被回転物を取り付ける。図27では、歯車77をねじ78で固定している例を示した。ロータ及びステータの外側を囲う大型部品であるモータケースの無い実施例2の超音波モータは、従来のモータケースを有する超音波モータに比べ小型化できる。
【0077】
(実施例3)
図28は、本発明のマグネット加圧機構を用いた実施例3の超音波モータの断面図である。図28において、79はステータユニットであり、該ステータユニット79は、振動子80、圧電素子81、FPC82、摩擦材83、オイルレスメタル84、85から構成される。振動子80には嵌合部93とねじ部94が形成され、本発明の超音波モータを取り付ける装置の取付板95の取付穴96にねじ部94と嵌合部93とを挿入し、ナット97で締め付けることにより固定する。ここで振動子80は鉄系の切削品や焼結品といった高透磁率材料で筒部92が図1の磁性体1に相当する。
【0078】
一方、ロータユニット86はロータ87、軸88、マグネット89、ヨーク90、91とから構成され、マグネット89、ヨーク90、91が図1の磁性体2に相当し、これでロータユニット86とステータユニット79とを圧接する働きをする。ロータ87には歯車98を一体に形成し、装置の歯車99へ動力の伝達を行っている。
【0079】
実施例3の超音波モータにはモータケースが無く、ロータに一体に形成された歯車、カムといった伝動装置により直接出力を取り出している。さらに軸にも伝動装置を装着する構造にすれば、複数の種類の出力を同時に得られる機構が可能である。またこの超音波モータは、ナット97だけで装置への取付けが可能である。
【0080】
図25乃至図28に示す様に超音波モータに本発明のマグネット加圧機構を用いた効果としては以下のことが挙げられる。
(1)ステータに対するロータの位置が多少変化しても従来の加圧機構に比べ加圧力の変動が少ないため、回転数、出力トルク、効率、寿命等の特性が安定した超音波モータが得られる。
(2)ロータとステータの空間に設置でき、且つロータやステータをヨークの一部として流用できる加圧機構である。
(3)ロータ組立てが著しく容易になる他、ロータとステータの脱着が可能で何度でも再組立て出来るため、メンテナンスも容易である。
【0081】
(実施例4)
図29は、本発明のマグネット加圧機構を用いた実施例4のディスクチャッキング装置の破断斜視図である。図29のディスクチャッキング装置は、ディスク受部100とチャッキング部104の2つに大別でき、チャッキング部104が図2の磁性体1、ディスク受部100が図2の磁性体2に相当する図2の形態を用いたマグネット加圧機構である。ディスク受部100はマグネット101、鉄系の高透磁率材料によるヨーク102、103とから成る。ヨーク103には円板つば部106、円筒部107、穴108が形成されている。円板つば部106は、ディスク105を受ける面になっているばかりでなく、図2の円板つば部4に相当する磁気回路としての機能も有する。円筒部107の外径は高精度に製造され、ディスク105の芯出し機能を有すると共に、図8で説明した引き下がり段差11としての機能も有する。穴108は、ディスク受部100をスピンドル軸109に固定する為のもので、ヨーク103に円筒部107と穴108を一体に形成する事により、高い同軸精度で製造しやすくしている。
【0082】
(実施例5)
図30は、本発明のマグネット加圧機構を用いた実施例5のディスクチャッキング装置の破断斜視図である。図30において図29と同じ符号で表示されている構成要素は、実施例4で説明した構成要素と同じものを示す。図30のディスクチャッキング装置は、ディスク受部116とチャッキング部110の2つに大別でき、ディスク受部116が図1の磁性体1、チャッキング部110が図1の磁性体2に相当する図1の形態を用いたマグネット加圧機構である。
【0083】
ディスク受部116は、ディスク受118とヨーク117とから成る。ここでのディスク受118では樹脂材を用い、ディスク105を傷めないようにしていると共に、穴119にスピンドル軸109を差し込んで本ディスクチャッキング装置を容易に取り付けられる様にしている。図30におけるスピンドル軸109は非磁性のステンレス材を用い、ヨーク117の同軸度の芯出し、及びチャッキング部110の装着時における穴115による芯出しにも用いる。チャッキング部110はマグネット111、ヨーク112、113、ダンパ114とから成る。ダンパ114はディスク受部116とチャッキング部110とではさんで固定するディスク105を傷めないようにするためと、ディスク105を回転させる際、チャッキング部110のすべり防止の防振機能を有している。
【0084】
図29、図30に示す様にディスクチャッキング装置に本発明のマグネット加圧機構を用いた効果としては、以下のことが挙げられる。
(1)ばねの場合、ディスクチャッキング装置を取付けるスピンドル軸のスラスト軸受にディスクチャッキング装置の重量にばねによる加圧力が加わった大きなスラスト荷重がかかる。このため、スラスト軸受の摩耗が激しくスラスト軸受がえぐられ、ディスクの位置精度が出ない。本発明によるディスクチャッキング装置はスラスト軸受にかかる負担が小さく、スラスト軸受の長寿命化、ディスク位置の高精度化、摩耗による損失エネルギーの低減が図れる。
(2)ディスクの厚みがバラついていても、加圧力がほとんど変わらずディスクを傷めない他、安定して所定の加圧力が得られる為、ディスクのガタつきやはずれ事故が起こりにくい信頼性の高い加圧機構である。
(3)ディスクがはずれにくいにもかかわらず、ディスクの脱着が容易である。
【0085】
【発明の効果】
本発明による効果をまとめると次の様になる。
まず、発明者が「特異領域」と名付けた本発明のマグネット加圧機構が有する独特な距離x−吸引力F特性を創出できる効果として以下のことが挙げられる。
(1)広い距離範囲にわたり、強力で安定した力を発生する加圧機構で、多少の距離のバラつきがあってもほぼ一定の加圧力が得られるようにできる。
(2)万一加圧方向に被加圧物体が移動しても、一時加圧力が減ずる領域を設け、安全機能を有する加圧機構が得られる。
(3)万一加圧方向の逆方向に被加圧物体が移動しても、より大きな力を発生し、元の位置の方向へ戻そうとする機能を有する加圧機構が得られる。
【0086】
設定した力の大きさにより大きな力のひっぱりを受けた時、分離する構造にすることで、力学的ツェナダイオード機能を有する効果として以下のことが挙げられる。
(1)脱着や組立が容易であり、ばねの様にへたりや破損がなく、何度でも再組立ができる。
(2)常に一定の力で分離し、力に対する動作精度が高い。
【0087】
回転する物体に対し、固定側から非接触で加圧できる効果として以下のことが挙げられる。
(1)ボールベアリングを使用する必要性が無いため、部品費の大幅なコストダウンが図れる他、組立についてもボールベアリングの接着に比較し、オイルレスメタルの圧入は自動化しやすく、簡単な装置で、短時間に大量の生産が可能となる。
(2)加圧力の大小にかかわらず、軸受寿命に直接影響が無い。
(3)非接触のため、加圧機構に関して摩耗が無く信頼性が高い。
(4)重力加圧に比べ回転体のイナーシャーを小さくする事が出来る。
【0088】
構造面における効果として以下の事が挙げられる。
(1)重力の方向とは関係なく、任意の方向に対して加圧でき、しかも小型で強力であるため、汎用性が高い。
(2)構成部品が同心円状であるため、加工しやすく、寸法精度が出しやすい形状である。
(3)組立において、同心円状に部品を配置していくため、芯出し等による組立精度が出しやすく、部品精度誤差をも相殺しながら組立誤差が入り難い構造である。
(4)閉ループの磁気回路を構成するため、減磁しにくく、へたりが少ない。
(5)金属疲労による破損が無く、信頼性が高い。
(6)ヨーク形状により、距離に対する吸引力の特性を様々に変化することが出来る。
(7)マグネットユニットを用いることにより、マグネットに比べ寸法精度が高いヨークが磁束の流れを支配するので、加圧特性精度が高く、バラつきが少ない。
(8)中空形状を取ることが出来るため、中空部分を利用し、光軸を通したり、パイプや軸等の構造物を設置することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明のマグネット加圧機構の第1の代表形態を示す破断斜視図である。
【図2】図2は、本発明のマグネット加圧機構の第2の代表形態を示す破断斜視図である。
【図3】図3は、本発明のマグネット加圧機構の第1実施例の試料寸法を示す破断斜視図である。
【図4】図4は、Nd−Fe−B系希±類磁石のB−H曲線である。
【図5】図5は、鉄系のS15CのB−H曲線である。
【図6】図6は、図3の試料による距離x−吸引力F特性である。
【図7】図7は、図3の試料の距離x=0.8(mm)の状態における12分の1モデルの磁束シミュレーションである。
【図8】図8は、図3の試料のマグネットユニットの断面図である。
【図9】図9は、本発明のマグネット加圧機構の第2例の試料寸法を示す破断斜視図である。
【図10】図10は、図9の試料による距離x−吸引力F特性である。
【図11】図11は、本発明のマグネット加圧機構の第3例の試料寸法を示す破断斜視図である。
【図12】図12は、図11の試料による距離x−吸引力F特性である。
【図13】図13は、図11の試料の距離x=0.3(mm)の状態における12分の1モデルの磁束シミュレーションである。
【図14】図14は、図11の試料の距離x=1.0(mm)の状態における12分の1モデルの磁束シミュレーションである。
【図15】図15は、本発明のマグネット加圧機構の第4例の試料寸法を示す破断斜視図である。
【図16】図16は、図15の試料の距離x=0.8(mm)の状態における12分の1モデルの磁束シミュレーションである。
【図17】図17は、図15の試料による距離x−吸引力F特性である。
【図18】図18は、本発明のマグネット加圧機構の第5例の試料寸法を示す破断斜視図である。
【図19】図19は、図18の試料による距離x−吸引力F特性である。
【図20】図20は、本発明のマグネット加圧機構の第6例の試料寸法を示す破断斜視図である。
【図21】図21は、図20の試料の距離x=1.5(mm)の状態における12分の1モデルの磁束シミュレーションである。
【図22】図22は、図20の試料による距離x−吸引力F特性である。
【図23】図23は、円板つば部の径を変えた(a)、(b)、(c)の3つの試料寸法を示す破断斜視図である。
【図24】図24は、図23の(a)、(b)、(c)の3つの試料による距離x−吸引力F特性である。
【図25】図25は、本発明の実施例1の超音波モータの断面図である。
【図26】図26は、図25の超音波モータの分解斜視図である。
【図27】図27は、本発明の実施例2の超音波モータの断面図である。
【図28】図28は、本発明の実施例3の超音波モータの断面図である。
【図29】図29は、本発明の実施例4のディスクチャッキング装置の破断斜視図である。
【図30】図30は、本発明の実施例のディスクチャッキング装置の破断斜視図である。
【図31】図31は、従来の加圧機構の第1例を示すばね加圧による超音波モータの断面図である。
【図32】図32は、従来の加圧機構の第2例を示すマグネット加圧による超音波モータの断面図である。
【図33】図33は、従来のマグネット加圧の第1例の試料寸法を示す破断斜視図である。
【図34】図34は、図33の試料によるギャップ−吸引力特性である。
【図35】図35は、超音波モータのロータとステータとの接触状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1、2 磁性体
3、107 円筒部
4、30、36、106 円板つば部
5、8、9、13、14、16、18、21、23、26、27、33、34、38、41、52、57、65、72、73、90、91、102、103、112、113、117、141 ヨーク
6、12、17、20、32、37、40、51、144 マグネットユニット
7、25、71、89、111、138 マグネット
10、28、145 中性線
11、31 引き下がり段差
19、22、29、35、39、42 円板つば部
120 ステータ
44、61、80、121 振動子
45、62、81、122 圧電素子
46、63、82、123 FPC
47、64、83、124 摩擦材
48 スペーサ
76、78、127 ねじ
77、98、99 歯車
93 嵌合部
94 ねじ部
49、59、66、67、84、85、126、140、142、143
オイルレスメタル
50、128 外筒
53、54 つば部
55、69、87、135 ロータ
56、70、88、134 軸
58、125 後蓋
43、60、79 ステータユニット
68、86 ロータユニット
74 ねじ穴
75、95 取付板
92 筒部
96 取付穴
97 ナット
100、116 ディスク受部
104、110 チャッキング部
105 ディスク
108、115、119 穴
109 スピンドル軸
118 ディスク受
130 ボールベアリング
131 外輪
129 ハウジング
136 ばね
137 ばね受
133 内輪
139 マグネット取付板
146、148 点
147、149 楕円軌道
150 固着点

Claims (12)

  1. 一方の面をN極とし他方の面をS極とするマグネット、前記マグネットの一方の極に固定されたヨーク、および、前記マグネットの他方の極に固定され外周部に半径方向に張り出したつば部を設けたヨークからなる第1磁性体と、
    前記第1磁性体の外周面および前記つば部と対向する第2磁性体とを有し、
    前記つば部が設けられたヨークは、前記マグネットと前記つば部との間に段差を有することを特徴とするマグネット加圧機構。
  2. 前記第1磁性体は中空形状であることを特徴とする請求項1に記載のマグネット加圧機構。
  3. 一方の面をN極とし他方の面をS極とする中空形状のマグネット、前記マグネットの一方の極に固定された中空形状のヨーク、および、前記マグネットの他方の極に固定され内周部に半径方向に張り出したつば部を設けたヨークからなる第1磁性体と、
    前記第1磁性体の内周面および前記つば部と対向する第2磁性体とを有し、
    前記つば部が設けられたヨークは、前記マグネットと前記つば部との間に段差を有することを特徴とするマグネット加圧機構。
  4. 前記つば部は高透磁性材料を成分として含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマグネット加圧機構。
  5. 前記ヨークは高透磁性材料を成分として含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のマグネット加圧機構。
  6. 前記第2磁性体は高透磁性材料を成分として含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のマグネット加圧機構。
  7. 前記第1磁性体と前記第2磁性体とは同心円形状であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のマグネット加圧機構。
  8. 前記第1磁性体と前記第2磁性体とは同軸の略円筒形状であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のマグネット加圧機構。
  9. 一方の面をN極とし他方の面をS極とするマグネット、前記マグネットの一方の極に固定されたヨーク、および、前記マグネットの他方の極に固定され外周部に半径方向に張り出したつば部を設けたヨークからなる第1磁性体と、
    前記第1磁性体の外周面および前記つば部と対向する第2磁性体とを有し、
    前記つば部が設けられたヨークは、前記第1磁性体または前記第2磁性体がこれらの間に作用する加圧方向に移動した場合に加圧力が減ずるように、前記マグネットと前記つば部との間に段差を有することを特徴とするマグネット加圧機構。
  10. 一方の面をN極とし他方の面をS極とする中空形状のマグネット、前記マグネットの一方の極に固定されたヨーク、および、前記マグネットの他方の極に固定され内周部に半径方向に張り出したつば部を設けたヨークからなる第1磁性体と、
    前記第1磁性体の内周面および前記つば部と対向する第2磁性体とを有し、
    前記つば部が設けられたヨークは、前記第1磁性体または前記第2磁性体がこれらの間に作用する加圧方向に移動した場合に加圧力が減ずるように、前記マグネットと前記つば部との間に段差を有することを特徴とするマグネット加圧機構。
  11. 請求項1から10のいずれかに記載のマグネット加圧機構の前記第1磁性体または前記第2磁性体の一方をロータ側に設け、他方をステータ側に設けたことを特徴とする超音波モータ。
  12. 請求項1から10のいずれかに記載のマグネット加圧機構の前記第1磁性体または前記第2磁性体の一方をディスク受部側に設け、他方をチャッキング部側に設けたことを特徴とするディスクチャッキング装置。
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