JP3657295B2 - 船舶用プロペラ - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、船舶用プロペラに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
船舶用プロペラには、多かれ少なかれ、キャビテーションに基づくエロージョンが発生する。このエロージョンは、斜流影響によって迎え角変動が大きくなる翼根部に特に多く発生し(これをルートエロージョンという)、これが激しい場合には、航走中に折損したりして遭難事故を引き起こすことがある。このため、従来から、ルートエロージョンを防ぐ種々の方法が提唱されているが、この中でも、翼表面に、これと直角にキャビテーション防止穴と呼ばれる穴を1〜2個形成したものが効果的であると言われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この方法は、当該穴がキャビテーションを防止するという理由が明確でないこともあってその穴の位置の特定が難しい。又、穴明け加工が技術的に困難である上、穴によってかえって強度が低下するといった問題がある。
本発明は、このような問題を呈さない、ルートエロージョン防止効果に優れた船舶用プロペラを提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、請求項1に記載した、斜流影響を受ける船舶用プロペラの翼根部の断面形状を、翼弦方向の中央の最大厚み位置から前縁にかけては肉厚が徐々に減少した紡錘形にして前縁ではほとんど肉厚を有しないシャープエッジに形成し、後縁にかけては肉厚が緩やかに減少し、且つ、後端でもなお厚みを有するとともに、後端面と翼側面との交差部に丸みをもたせたブラントエッジに形成したことを特徴とするものである。
【0005】
【作用】
本発明が以上の手段をとることにより、即ち、翼根部の断面形状を上述のようにしたことにより、その迎え角の変動が減少してキャビテーションの発生が抑えられ、その結果、エロージョンが防止されるものと思われる。ここで迎え角とは、翼に作用する水流の流れの方向と、幾何学的に定まる翼断面の前縁と後縁とを結ぶ線とのなす角度であり、この迎え角の変動が小さいほど、キャビテーションの発生原因である翼面上の圧力変動幅が小さいためにエロージョンが発生し難くなる。
【0006】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。図2は船舶用プロペラの斜視図であるが、本発明に係る船舶用プロペラも、ボス10と翼(本例では5翼)12とから構成される点は従来のものと変わらない。本発明は、翼12の翼根部(具体的には翼付け根から翼端までの長さ、即ち、翼長Rの半分以下の個所)の断面形状を以下のように設定するのである。
【0007】
図1は翼付け根(ボス10の表面)からr=0.2Rの翼根部における翼12の断面図であるが、ここで、実線で示したのが本発明に係る船舶用プロペラ(以下、新型プロペラという)の断面形状であり、点線で示したのが従来のプロペラ(以下、従来型プロペラという)の断面形状である。従来型プロペラの翼12の断面は、最大厚み位置(翼弦方向の略中央)から後縁にかけては紡錘形に肉厚を減少し、後端では肉厚をほとんど有しない、所謂シャープエッジを形成しているのが通常である(前縁側も同じ)。
【0008】
これに対して新型プロペラの翼12の断面は、最大厚み位置から後縁にかけて肉厚が緩やかに減少し、且つ、後端でもなお厚みを有するとともに、後端面と翼側面との交差部に丸みをもたせた点に特徴があるものである。即ち、後端をブラント(BLUNT。鈍い、丸いといった意味をもつ)エッジにしたものということができる。具体的には、後端の肉厚tは最大厚みTの30〜60%が好ましい。又、丸みの大きさは、少なくとも後端面と翼側面との交差部に鋭い角部が形成されないものであれば十分であり、図1に見られるように、後端面と翼側面とを一つのアールで結んだようなものでもよい。
【0009】
以上の新型プロペラのエロージョン防止効果を裏付けるため、キャビテーション・トンネルで従来型プロペラとの比較の下でキャビテーション試験を行ってみた。図3は3翼のプロペラにおけるその結果を示すものであるが、従来型プロペラでは、キャビテーションを起こす範囲がジェネレータライン(GL)を基準とする翼の回転方向位置で213°と広い範囲に亘っているが、新型プロペラでは150°と約30%も減少していることが確認された。これは、新型プロペラの上記特有の形状によって翼根部の迎え角変動が減少したためと考えられる。
【0010】
更に、上記二種のプロペラを、最高速度での航走を2時間、船速0からの急加速を20回の条件の下でそれぞれ実船に使用してみた。そして、航走の前後で、翼付け根から0.35Rの翼根部における前縁から20%、50%、80%の各位置で表面粗さを測定してみた。図4はその結果であるが、航走後、従来型プロペラでは翼の前縁と中央で粗さが増加しているのに対し、新型プロペラでは粗さの進行は前縁のみに限られ、後縁では逆に粗さが低下しているのが判った。以上二つの試験結果から、新型プロペラは、ルートエロージョン防止効果に優れていることが肯是できる。
【0011】
ところで、ナイロン樹脂等を翼表面に0.5mm程度コーティングすると、キャビテーションの発生が抑えられ、その結果、エロージョンが防止されて耐久性が増すことが知られている。そこで、新型プロペラの翼表面にもこのコーティングを施すことで、エロージョン防止効果をより一層高めることも可能である。
【0012】
【発明の効果】
以上、本発明は、船舶用プロペラの翼根部の断面を上述のような特有の形状にしたものであるから、キャビテーションの発生が抑えられ、その結果、エロージョン、特にルートエロージョンの防止に大きな効果を得られたのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例を船舶用プロペラの翼根部の断面図である。
【図2】 本発明の実施例を船舶用プロペラの斜視図である。
【図3】 キャビテーション試験の結果を示す線図である。
【図4】 表面粗さ試験の結果を示す線図である。
【符号の説明】
10 ボス
12 翼
Claims (4)
- 斜流影響を受ける船舶用プロペラの翼根部の断面形状を、翼弦方向の中央の最大厚み位置から前縁にかけては肉厚が徐々に減少した紡錘形にして前縁ではほとんど肉厚を有しないシャープエッジに形成し、後縁にかけては肉厚が緩やかに減少し、且つ、後端でもなお厚みを有するとともに、後端面と翼側面との交差部に丸みをもたせたブラントエッジに形成したことを特徴とする船舶用プロペラ。
- 請求項1の翼根部とは、翼付け根から翼長の半分以下の個所である船舶用プロペラ。
- 後端縁の肉厚が、最大厚みの30〜60%である請求項1又は2の船舶用プロペラ。
- プロペラの翼表面にナイロン樹脂をコーティングした請求項1乃至3いずれかの船舶用プロペラ。
Priority Applications (1)
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JP25888594A JP3657295B2 (ja) | 1994-09-27 | 1994-09-27 | 船舶用プロペラ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP25888594A JP3657295B2 (ja) | 1994-09-27 | 1994-09-27 | 船舶用プロペラ |
Publications (2)
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JPH0891291A JPH0891291A (ja) | 1996-04-09 |
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Family Applications (1)
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JP25888594A Expired - Fee Related JP3657295B2 (ja) | 1994-09-27 | 1994-09-27 | 船舶用プロペラ |
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-
1994
- 1994-09-27 JP JP25888594A patent/JP3657295B2/ja not_active Expired - Fee Related
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