JP3656773B2 - エアスプレーガンの空気キャップ - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、エアスプレーガンの噴霧流を偏平にし、飛散の少ない、平吹きスプレーパターンを作るための空気キャップの穿孔構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
外部混合式エアスプレーガンは、日本工業規格のJIS B9809の”スプレーガン”に定められ、一般塗装用として広く使用されている塗装機械である。該スプレーガンは、標準吹付空気圧力300〜350kPaで、噴霧化の主体がスプレーガン先端部の塗料ノズルと空気キャップで形成され、スプレーガン本体に螺着される空気キャップによって形成される塗料ノズル先端外周のリング状スリットからの圧縮空気の中心噴流によって、塗料を噴霧化し、円錐状に噴射される中心噴霧流を、空気キャップの角部に穿孔される側面空気孔からの圧縮空気の噴流を、前記円錐状に噴射される中心噴霧流に衝突させて、中心噴霧流を偏平にし、スプレーパターンが楕円形となる平吹きパターンを作っている。
【0003】
図5は吹付空気圧力100kPa以下でスプレーする低圧スプレーガンの先端構造の断面図である。図5によって先端構造、特に空気キャップ構造を従来例として説明する。スプレーガン本体20に塗料ノズル21が塗料ノズル下部テーパーで接合して気密に螺設されっている。塗料ノズルの塗料流路にニードル弁23が嵌入し、塗料ノズル先端テーパー21aで塗料がシートされ、ニードル弁23の摺動によって塗料の噴射停止が行われる。塗料ノズル21を囲繞する形で空気キャップ22が塗料ノズル21にテーパー接合し、空気キャップカバー22bによってスプレーガン本体20に装着されている。スプレーガン本体20の空気流路20aからの空気は、パターン調節弁24で空気キャップ22の中心部への空気と角部22aへの流路に気密に分岐されている。該空気キャップ中心部への空気は、塗料ノズル21に穿孔される空気流路21bを介して中心部へ供給される。パターン調節弁24を介した空気は、塗料ノズル21の外周より空気キャップ角部流路22aに流れ側面空気孔22gより噴射される。そして、角部への空気は、パターン調節弁24の開度によって空気量が調節できるようになっている。
【0004】
上記で構成される空気キャップ22は、空気キャップ中心孔22dと塗料ノズル先端外周との間に比較的広いリング状スリット22eが形成され、吹付空気圧力100kPa以下の空気圧で大風量が噴射される隙間となっている。前記300〜350kPaの一般的スプレーガンではこの隙間が0.4mm前後の狭い隙間となっている。該リング状スリット22eから噴射される空気噴流が塗料と混合して円錐状の中心噴霧流が形成される。該中心噴霧流を偏平にするために、空気キャップに一対の角部22fが形成され、角部に供給された空気が側面空気孔22gより前記中心噴霧流の中心軸に向けて噴射され、該中心噴霧流に互いに両面より衝突して、噴霧流を偏平にしている。この両面より噴射する噴流角度θは通常120°〜140°で穿孔されている。そして、この噴流のバランスを取るためと、空気キャップ前面への塗料付着を防止するための補助空気孔22cが一個または複数個明けられている。側面空気孔22gおよび、補助空気孔22cは、塗料ノズル21の中心を通る一直線上に相対して穿孔されている。
【0005】
前記空気キャップに穿孔される空気孔において、塗料ノズル口を中心に一直線上に相対して穿孔される空気孔が非常に高精度の孔明けが要求される。この孔明け位置および、角度が僅かでもずれると適正なパターン形状が得られない。特に低圧スプレーガンでは、中心空気孔,側面空気孔の孔径も大きく一旦穿孔された孔を修正して適正化することは殆ど不可能である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
エアスプレーガンの空気キャップにおいて、一対の角部の側面空気孔からの噴流を中心噴霧流に衝突させて偏平な平吹パターンを作るとき、側面空気孔からの噴流が中心噴霧流を拡散させ、この拡散がスプレー塗装の塗着効率を悪くする主原因となっていること、また、塗料ノズルを中心に一直線上に相対して穿孔される側面空気孔および、補助空気孔の位置および角度が非常に高精度が要求される製作上のネック点となっていることから、空気キャップの平吹パターンを作るための側面空気孔の穿孔構造を改善して、飛散が少なく、孔構造によって安定度の高い平吹パターンとなり、塗着効率の高いエアスプレーガンの空気キャップを得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、エアスプレーガンの塗料ノズル先端外周に形成されるリング状スリットより噴射される圧縮空気によって、塗付材料を噴霧化する中心噴霧流に対して、一対の角部をもち、該角部に穿孔される側面空気孔からの噴流を、前記中心噴霧流に衝突させて偏平パターンを作るエアスプレーガンの空気キャップにおいて、前記中心噴霧流に略平行に形成される一対の角部に、中心噴霧流に略直角に衝突させるための、主側面空気孔を鈍角な角度で穿孔し、角部基部に前記主側面空気孔からの噴流を挟むように鋭角な角度で二個の補助側面空気孔を前記主側面空気孔が連通する空気流路に連通するように穿孔した空気キャップである。そして、中心噴霧流に略直角に衝突させるための主側面空気孔の角度は180°〜150°の範囲で穿孔され、角部基部に主側面空気孔を挟むように噴流を作る補助側面空気孔の角度は、60°〜120°の範囲で穿孔されるエアスプレーガンの空気キャップである。
【0008】
また、前記一対の角部基部に、主側面空気孔の噴流を挟むように二個の補助側面空気孔を穿孔するとき、該二個の補助側面空気孔の相互角度は、僅か中心噴霧流の中心側に向けるかまたは、外側に広がる噴流となるように穿孔される補助側面空気孔であるのエアスプレーガンの空気キャップである。
【0009】
また、一対の角部に、中心噴霧流に略直角に衝突させるための主側面空気孔の空気キャップ面側に、該主側面空気孔と略平行に、空気キャップ面への塗付材料付着を防止するための、付着防止孔を穿孔したのエアスプレーガンの空気キャップである。
【0010】
【作用】
図1ないし図3の本発明の空気キャップ断面図および、図4の上面図を参照して作用を説明する。
空気キャップの中心孔(4)からの中心噴霧流に略平行に形成される一対の角部(1)に主側面空気孔(2)が、中心噴霧流に対して直角または、直角に近い角度(α)で明けられる。主側面空気孔(2)の噴流が中心噴霧流に対して略直角に衝突させることによって、最小空気量で最も効果的に中心噴霧流を偏平にすることができる。しかし略直角に衝突させることは、中心噴霧流の拡散をより多くする結果となり空気キャップ面(4a)への塗料付着を多くする。この拡散を抑えるために角部基部(1b)より鋭角な角度(β)で主側面空気孔(2)からの噴流を挟むように噴流を形成する二個の補助側面空気孔(3a)(3b)が角部基部(1b)に穿孔される。この鋭角な噴流によって主側面空気孔(2)で拡散する中心噴霧流を噴射方向に回収随伴してパターンをまとめて拡散を抑える役目を果たす。
【0011】
主側面空気孔(2)と略平行に空気キャップ面側に明けられる付着防止孔(6)は、主側面空気孔(2)の噴流が中心噴霧流に衝突拡散し、拡散した噴霧流が二本の補助側面空気噴流の間より逆流して、空気キャップ面(4a)へ塗料等の塗付材料が付着する。この塗料付着を抑えるために前記付着防止孔(6)が穿孔される。逆流を抑えるための付着防止孔(6)は、主側面空気孔(2)の直径の1/4〜1/5の直径で穿孔される。
【0012】
角部基部(1b)に穿孔される補助側面空気孔(3a)(3b)の噴流は、主側面空気孔(2)の噴流を挟んで形成するように明けられる。該補助側面空気孔(3a)(3b)の鋭角な噴流角度(β)は、主側面空気孔噴流と中心噴霧流の交点位置の距離に合致するか、または該交点よりやや先に交差するように穿孔される。
また、主側面空気噴流を挟むように形成される二本の補助側面空気孔(3a)(3b)からの噴流の相互角度(γ)は、平行かまたは、中心噴霧流の中心側か外側に向けて噴流を作っている。該相互角度(γ)を中心側かまたは外側に向けるのは、主側面空気噴流の強さによって中心噴霧流の偏平になる形状が異なるので、最も適切な箇所に補助側面空気孔(3a)(3b)の噴流を導き、適正な楕円形のスプレーパターンを形成するように穿孔される。
【0013】
上記構造によって、エアスプレーガンの霧の飛散を最も大きくする主側面空気孔(2)の噴流強さを中心噴霧流に略直角に衝突させることによって最小限の風量で最大の偏平パターンを作らせ、略直角に衝突させることによって生じる霧の飛散を鋭角な二個の補助側面空気孔(3a)(3b)によって飛散粒子を回収し、随伴気流にのせてパターンをまとめるようにしたことによって、従来空気キャップ中心を通る一直線上に相対して穿孔されていた側面空気孔、補助空気孔に対して、補助側面空気孔(3a)(3b)を主側面空気孔(2)の噴流を挟むように二個に分けて穿孔したことによって、加工誤差等によるスプレーパターンの不安定性が緩和され、中心噴霧流の偏平化で形成される楕円パターンのまとまりがよくなり、霧の飛散が少なく、スプレー塗装の塗着効率の向上が得られる効果がある。
【0014】
【実施例】
本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の空気キャップの断面図を示し、図2および、図3は部分矢視図を示す。図4は図1の上面図を示したものである。尚図において作用の項で説明した重複する部分は一部省略する。
【0015】
図1ないし図3において、スプレーガン本体で分岐された空気は、角部1の空気流路1aに供給される。空気流路1aは、主側面空気孔2および補助側面空気孔3a,3bから噴射する空気量が抵抗を受けない十分な径で、下部が太く先端がやや細い二段の径で穿孔されている。角部1の孔明け側は、主側面空気孔2の噴射角度αに対応してドリル孔が垂直に明けられる角部面に形成されている。例えば主側面空気孔2の角度αが180°の場合は角部面は空気キャップ面に対して垂直で、角度αが150°の場合は角部面は空気キャップ中心軸に対して15°の角度で形成される。主側面空気孔2の噴流角度αを180°〜150°の範囲に限定するのは、できるだけ少ない空気量で効果的に中心噴霧流のを偏平にするための角度の範囲を示すものである。主側面空気孔2の孔径および、180°〜150°の範囲で設定する孔角度αは、中心噴霧流の強さ、すなわち、塗料ノズルからの塗料噴出量と塗料ノズル先端外周のリング状スリットからの空気噴流の量によって適正なパターン開きを作る値に設定される。
【0016】
角部基部1bに明けられる補助側面空気孔3a,3bは主側面空気孔2と同じく、噴射角度βに対応してドリル孔が略垂直に明けられる角部基部面1bで形成される。そして、主側面空気孔2の噴流を挟むように穿孔される二個の補助側面空気孔3a,3bは、図2の部分図で示すように角部1の空気流路1aに交差して流路が連通するように穿孔される。したがって、その二個の穿孔の内側の間隔5は、補助側面空気孔3a,3bが平行に明けられる場合は空気流路1aより狭くし、また相互角度γが中心噴霧流の内側または、外側に向けて噴流を作る場合は、空気流路が連通する範囲でそれに応じた間隔5で穿孔される。
【0017】
補助側面空気孔3a,3bの噴流角度βは、中心噴霧流の中心軸と主側面空気孔の噴流中心軸の交点位置と同距離に合致させるかまたは、僅か角部先端側に交点を結ぶ角度で設定される。そして、補助側面空気孔3a,3bの孔径および、60°〜120°の範囲で設定される角度βは、中心噴霧流と主側面空気孔2からの噴流で形成される偏平噴流の拡散度合によって適正な径および角度が選択される。
【0018】
図1および図3で示される付着防止孔6は、主側面空気孔2の空気キャップ面4a側に平行に明けられている。但し、この小径孔の付着防止孔6は、必ずしも主側面空気孔2に平行に明けられる必要はなく、空気キャップ中心を通る主側面空気孔2の中心と一直線上にあれば、僅か主側面空気孔2の噴流側または、空気キャップ面4a側に傾いた角度であっても空気キャップ表面への付着防止効果のあることが実験的に確認されている。
【0019】
図4は空気キャップ図1の上面図で一対の角部形状と補助側面空気孔3a,3bの穿孔位置を示したものである。また、空気キャップ内面構造および、スプレーガン先端部の上記以外の構造は、従来例で説明した構造で構成される先端部である。
【0020】
【発明の効果】
以上説明した空気キャップの構造によって、以下に記載するような効果を奏する。
【0021】
主側面空気孔の噴流を、中心噴霧流に略直角に衝突させるようにしたことによって、最小空気量でパターン開きの大きい、偏平スプレーパターンが得られる。
【0022】
補助側面空気孔を主側面空気孔からの噴流を挟む二個の鋭角な孔としたことによって、主側面空気孔の噴流で拡散する中心噴霧流を噴射方向に回収随伴させ、飛散の少ない、まとまりの良い楕円パターンとなり、スプレー塗装の塗着効率を向上させる。
【0023】
また、前記補助側面空気孔を二個としたことによって、微妙な加工精度に影響されない安定したスプレーパターンが得られ、量産生産におけるバラツキの少ないエアスプレーガンの空気キャップが得られる。
【0024】
付着防止孔を設けたことによって、長時間のスプレー塗装作業時にも空気キャップ面への塗料付着の少ない空気キャップとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の空気キャップの断面図である。
【図2】図1のA−A部分断面矢視図である。
【図3】図1のF矢視図である。
【図4】図1の上面図である。
【図5】従来例を示すエアスプレーガンの先端部構成断面図である。
【符号の説明】
1 角部
2 主側面空気孔
3a,3b 補助側面空気孔
4 空気キャップ中心孔
4a 空気キャップ面
5 補助側面空気孔間隔
α 主側面空気孔の角度
β 補助側面空気孔の角度
γ 補助側面空気孔の相互角度
Claims (4)
- エアスプレーガンの塗料ノズル先端外周に形成されるリング状スリットより噴射される圧縮空気によって、塗付材料を噴霧化する中心噴霧流に対して、一対の角部をもち、該角部に穿孔される側面空気孔からの噴流を、前記中心噴霧流に衝突させて偏平パターンを作るエアスプレーガンの空気キャップにおいて、前記中心噴霧流に略平行に形成される一対の角部(1)に、中心噴霧流に略直角に衝突させるための、主側面空気孔(2)を鈍角な角度(α)で穿孔し、角部基部(1b)に前記主側面空気孔(2)からの噴流を挟むように鋭角な角度(β)で二個の補助側面空気孔(3a)(3b)を前記主側面空気孔(2)が連通する空気流路(1a)に連通するように穿孔したエアスプレーガンの空気キャップ。
- 中心噴霧流に略直角に衝突させるための主側面空気孔(2)の角度(α)は180°〜150°の範囲で穿孔され、角部基部(1b)に主側面空気孔(2)を挟むように噴流を作る補助側面空気孔(3a)(3b)の角度(β)は、60°〜120°の範囲で穿孔される請求項1記載のエアスプレーガンの空気キャップ。
- 一対の角部基部(1b)に、主側面空気孔(2)の噴流を挟むように二個の補助側面空気孔(3a)(3b)を穿孔するとき、該二個の補助側面空気孔(3a)(3b)の相互角度(γ)は、僅か中心噴霧流の中心側に向けるかまたは、外側に広がる噴流となるように穿孔される補助側面空気孔(3a)(3b)である請求項1記載のエアスプレーガンの空気キャップ。
- 一対の角部に、中心噴霧流に略直角に衝突させるための主側面空気孔(2)の空気キャップ面側に、該主側面空気孔(2)と略平行に、空気キャップ面への塗付材料付着を防止するための、付着防止孔(6)を穿孔した請求項1記載のエアスプレーガンの空気キャップ。
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