JP3656462B2 - ケーブル状圧力センサおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はケーブル状圧力センサおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のケーブル状圧力センサは以下のようなものであった。
【0003】
特開昭62−230071号公報では、図3に示すように、線状導電材1と導電ゴム2とから構成された芯電極3の周囲に可撓性圧電体4を配置し、その周囲に可撓性外電極5を配置し、さらにその周囲に熱収縮チューブから成る外皮6を被覆して成るケーブル状圧力センサが開示されている。可撓性圧電体4として、合成ゴムや合成樹脂の中にチタン酸鉛などのセラミック圧電体粉末を添加した複合体が用いられる。また、可撓性外電極5として、アルミニウム箔や塗装法による銀系導電性塗膜が用いられる。
【0004】
上記ケーブル状圧力センサの一部あるいは全面に圧力が印加されたとき、その部分の圧力センサが歪む結果、芯電極3と外電極5間に電圧が誘起される。上記圧力センサは、この誘起電圧を利用して圧力を検出している。
【0005】
類似のケーブル状圧力センサが特開平3−259577号公報にも開示されている。この公報では、可撓性圧電体4として、ポリエチレン、ポリプロピレンや塩化ビニルなどの樹脂の中にチタン酸鉛などのセラミック圧電体粉末を添加した複合体が開示されている。可撓性外電極5として、無電解メッキ法によるニッケル膜や銅膜、および蒸着法によるアルミニウム膜や銀膜が開示されている。
【0006】
また可撓性圧電体4として、ゴムとカーボン粉末とから構成された導電体も実用に供されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のケーブル状圧力センサでは、可撓性外電極5として、アルミニウム箔を用いた場合、アルミニウム箔は引っ張り強度が弱いので、可撓性圧電体4にアルミニウム箔を巻き付けるとき充分な張力で巻き付けることができないという課題を有していた。充分な張力で巻き付けると、アルミニウム箔は切断され易く、また、低い張力でまきつけると、アルミニウム箔は可撓性圧電体4に密着しない。
【0008】
また可撓性外電極5として、塗装法、メッキ法、蒸着法による金属膜を用いた場合、可撓性圧電体4に密着し易いという利点はあるが、製造工程が複雑になり、10m以上の長いケーブル状圧力センサの製造に不適であるという課題を有していた。
【0009】
また可撓性外電極5として、樹脂と導電性粉末から成る導電体を用いた場合、可撓性圧電体4と異なる材料であるので、両者の密着に劣るという課題を有していた。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、芯電極と、前記芯電極の周囲に配置された可撓性複合圧電体と、前記可撓性複合圧電体の表面に配置された可撓性外電極とから成り、前記可撓性複合圧電体が樹脂とセラミック圧電体粉末から成り、且つ、前記可撓性外電極が樹脂と導電性粉末からケーブル状圧力センサを構成したものである。
【0011】
上記発明によれば、樹脂および導電性粉末から可撓性外電極が構成されているので、可撓性複合圧電体との密着性に優れる。また可撓性複合圧電体と同じ製造方法で可撓性外電極を形成できるので、製造工程が簡素化されると共にアルミニウム箔を巻き付ける工程も不要になる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1にかかるケーブル状圧力センサは、芯電極と、芯電極の周囲に配置された可撓性複合圧電体と、可撓性複合圧電体の表面に配置された可撓性外電極とから成り、可撓性複合圧電体が樹脂とセラミック圧電体粉末から成り、且つ、可撓性外電極が樹脂と導電性粉末から構成されたものである。そして、可撓性外電極は可撓性複合圧電体の構成要素の樹脂と同じ樹脂及び導電性粉末から構成したものである。
【0013】
そして、樹脂および導電性粉末から可撓性外電極が構成されているので、可撓性複合圧電体との密着性に優れる。また可撓性複合圧電体と同じ製造方法で可撓性外電極を形成できるので、製造工程が簡素化されると共に、アルミニウム箔を巻き付ける工程も不要になる。また、可撓性複合圧電体の構成要素の一つである樹脂と同じ樹脂および導電性粉末から可撓性外電極が構成されているので、可撓性複合圧電体との密着性に優れる。また可撓性複合圧電体と同じ製造方法で可撓性外電極を形成できるので、製造工程が簡素化されると共に、アルミニウム箔を巻き付ける工程も不要になる。
【0014】
本発明の請求項2にかかるケーブル状圧力センサは、請求項1記載の発明に加えて、導電性粉末を銀粉末で構成したものである。
【0015】
導電性粉末としては、金粉末、銀粉末、銀ーパラジウム粉末などの貴金属系粉末が、導電性厚膜用として多量に工業的に利用されている点で優れている。これらの貴金属系粉末の中でも銀粉末は比較的低価格である。また銀の比抵抗は他の金属と比べても小さいので、樹脂と銀粉末から成る可撓性外電極の抵抗を小さくできる。
【0016】
本発明の請求項3にかかるケーブル状圧力センサは、請求項1記載の発明に加えて、導電性粉末をカーボン粉末で構成したものである。
【0017】
貴金属系粉末以外にも導電性粉末として、カーボン粉末がある。金属に比べ、その比抵抗は一桁以上大きいので、樹脂とカーボン粉末から成る可撓性外電極の抵抗は、樹脂と貴金属粉末から成る可撓性外電極のそれに比べ、大きくなるが、低価格である点で優れている。
【0018】
本発明の請求項4にかかるケーブル状圧力センサは、請求項3記載の発明に加えて、可撓性外電極の周囲を導電性編組で被覆した構成としたものである。
【0019】
樹脂とカーボン粉末で構成した可撓性外電極の比抵抗は大きいので、例えば、10m以上の長いケーブル状圧力センサにこの可撓性外電極を形成した場合、可撓性外電極の電極抵抗が無視できない場合が生じる。このような場合、可撓性外電極の周囲を導電性編組で被覆することにより、実質的に電極抵抗を低減できる。
【0020】
本発明の請求項5にかかるケーブル状圧力センサでは、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発明に加えて、樹脂を塩素化ポリエチレンで構成したものである。
【0021】
そして可撓性圧電体は、塩素化ポリエチレンとセラミック圧電体粉末とで構成されるので、120℃の高耐熱性を有する。また可撓性外電極も塩素化ポリエチレンと導電性粉末で構成されるので、可撓性複合圧電体との密着性に優れると共に120℃の高耐熱性を有する。
【0022】
本発明の請求項6にかかるケーブル状圧力センサの製造方法は、芯電極の周囲に、樹脂とセラミック圧電体粉末から成る可撓性複合圧電体を同軸状に形成した後、樹脂と導電性粉末の混合物を樹脂の軟化温度で前記可撓性複合圧電体の周囲に同軸状に押出して、可撓性外電極を形成するものである。そして、可撓性外電極は可撓性複合圧電体の構成要素の樹脂と同じ樹脂及び導電性粉末から構成したものである。
【0023】
可撓性複合圧電体と可撓性外電極は、共に同軸状に押出す製造方法で形成できるので、可撓性外電極を形成するための巻付け工程や蒸着工程などの特別なプロセスを必要としなくなり、製造工程が簡素になる。また可撓性外電極を樹脂の軟化温度で押出すことにより、部分的に融解した樹脂を介して可撓性外電極は可撓性複合圧電体に密着して形成できる。また、可撓性複合圧電体の構成要素の一つである樹脂と同じ樹脂および導電性粉末から可撓性外電極が構成されているので、可撓性複合圧電体との密着性に優れる。また可撓性複合圧電体と同じ製造方法で可撓性外電極を形成できるので、製造工程が簡素化されると共に、アルミニウム箔を巻き付ける工程も不要になる。
【0024】
本発明の請求項7にかかるケーブル状圧力センサの製造方法は、請求項6記載の可撓性外電極は樹脂として塩素化ポリエチレンを用い、120℃〜180℃で可撓性複合圧電体の周囲に同軸状に押出してを形成するものである。
【0025】
そして樹脂として塩素化ポリエチレンを用いているので、高耐熱性を付与できる。
【0026】
【実施例】
以下、本本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0027】
(実施例1)
図1は本発明の実施例1におけるケーブル状圧力センサの斜視図である。尚、従来例と同一のものは同一番号を付与して、詳細な説明を省略する。
【0028】
芯電極3の周囲に可撓性複合圧電体7を形成した後、可撓性外電極5が可撓性複合圧電体7の周囲に形成される。芯電極3として、従来例で示した構成の芯電極や複数の金属細線だけから成る芯電極などが用いられる。可撓性複合圧電体7は、樹脂とチタン酸鉛、チタン酸鉛ジルコン酸鉛などのセラミック圧電体粉末から構成された混合物である。また可撓性外電極5は、可撓性複合圧電体7で用いられる樹脂と同じ樹脂と導電性粉末から構成された混合物である。この樹脂として、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂あるいはクロロプレン・ゴムなどが用いられる。
【0029】
可撓性複合圧電体7は、40vol%〜60vol%の樹脂成分を含み、また可撓性外電極5も50vol%〜80vol%の樹脂成分を含む。更に、可撓性複合圧電体7で用いられる樹脂と可撓性外電極5で用いられる樹脂は、同じ樹脂を用いているので、この樹脂の軟化する温度領域で両者を接触させることにより、両者を優れた密着性で容易に接続できる。
【0030】
また後述するように、可撓性複合圧電体7も可撓性外電極5も所定の温度で押出し法により形成できる。従って、可撓性外電極5を形成するために、巻付け工程、塗装法、メッキ法や蒸着法などの複雑な製造工程を特に必要としないので、製造工程が簡単になる。
【0031】
可撓性外電極5に用いられる導電性粉末として、金粉末、銀粉末、銀ーパラジウム粉末などの貴金属系粉末は、導電性厚膜用として多量に工業的に利用されている点で優れている。これらの貴金属系粉末の中でも銀粉末は比較的低価格である。また銀の比抵抗は他の金属と比べても小さいので、樹脂と銀粉末から成る可撓性外電極5の抵抗を小さくできる。例えば、エポキシ樹脂に60wt%〜80wt%程度添加することにより、比抵抗値が10−4〜10−5Ω・cmの低抵抗の可撓性外電極5が得られる。
【0032】
また可撓性外電極5に用いられる他の導電性粉末としては、カーボン粉末がある。
【0033】
上記貴金属系に比べ、その比抵抗は一桁以上大きいので、樹脂とカーボン粉末から成る可撓性外電極5の抵抗は、樹脂とカーボン粉末から成る可撓性外電極5のそれに比べ、大きくなるが、低価格である点で優れている。例えば、エポキシ樹脂に〜20wt%程度添加した可撓性外電極5の比抵抗値は〜10−2Ω・cmであり、上記貴金属系を添加した可撓性外電極5の比抵抗値に比べ二桁以上大きい。可撓性複合圧電体7は電気的絶縁体でもあるので、ケーブル状圧力センサの長さが短い場合、例えば10m以下の場合、カーボンを添加した可撓性外電極5の比抵抗が大きくても問題にならない。
【0034】
(実施例2)
図2は本発明の実施例2におけるケーブル状圧力センサの斜視図である。尚、従来例または実施例1と同一のものは同一番号を付与して、詳細な説明を省略する。
【0035】
可撓性複合圧電体7が電気的絶縁体であっても、ケーブル状圧力センサの芯電極3と可撓性外電極5間の抵抗は、その長さに逆比例して小さくなる。他方、可撓性外電極5の両端の抵抗は、その長さに比例して大きくなる。従って、樹脂とカーボン粉末から成る可撓性外電極5を用いて長いケーブル状圧力センサを形成した場合、例えば長さ50m程度で、可撓性外電極5の両端の抵抗値が100kΩ以上になり、電極として不適になる場合がある。このような場合、図2に示すように、可撓性外電極5の周囲を導電性編組8で被覆することが好ましい。
【0036】
導電性編組8としては、金属線編組が用いられる。この導電性編組8は多くの接触点を介して可撓性外電極5と電気的に接触している。従って、可撓性外電極5の抵抗が高くても、その周囲に導電性編組8が被覆され、この導電性編組8は多くの接触点を介して可撓性外電極5と電気的に接触しているので、ケーブル状圧力センサの両端間の抵抗は、ほぼ導電性編組8の低い抵抗に近くなる。このことは、両端間の抵抗が高い可撓性外電極5を可撓性複合圧電体7に密着して形成しても、可撓性外電極5の周囲に導電性編組8を被覆することにより、可撓性複合圧電体7に対する可撓性外電極5の優れた密着性を保持したままで、実質的に電極抵抗を低くできることを示す。
【0037】
またこの可撓性外電極5にリード線を接続するとき、可撓性外電極5にリード線をハンダ付けできない。しかし、導電性編組8にリード線をハンダ付けすることが容易である点でもこの構成は好ましい。
【0038】
なお、可撓性複合圧電体7の周囲に直接的に導電性編組8を被覆することもできるが、可撓性複合圧電体7に対する導電性編組8の接触面積が小さくなるので、可撓性複合圧電体7の分極が不充分になる点で好ましくない。
【0039】
可撓性複合圧電体7を構成する樹脂として、前述したように、従来種々の樹脂が用いられ、その形成過程で樹脂は架橋され、可撓性複合圧電体7の耐熱性(約80℃)を得ている。他方、樹脂として塩素化ポリエチレンを用いてケーブル状圧力センサを構成した場合、架橋しなくても約120℃の高耐熱性が得られる。
【0040】
この詳細な理由は不明であるが、塩素化ポリエチレンはゴムとしての性質を有し、可撓性に優れる。この性質は酸化により劣化するが、ケーブル状圧力センサ構成の場合、可撓性外電極5や外皮が酸素を遮断するので、酸化による劣化を防止できる。また塩素化ポリエチレンは熱的に約120℃まで安定である。従って、上記の高耐熱性が得られる。
【0041】
本発明のケーブル状圧力センサを製造する場合、芯電極3の周囲に、樹脂とセラミック圧電体粉末から成る可撓性複合圧電体7を同軸状に形成した後、樹脂と導電性粉末の混合物を樹脂の軟化温度で可撓性複合圧電体7の周囲に同軸状に押出して、可撓性外電極5を形成する方法が望ましい。可撓性複合圧電体7と可撓性外電極5は、共に同軸状に押出す製造方法で形成できる。従って、可撓性外電極5を形成するために巻付け工程や蒸着工程などの特別なプロセスを必要としないので、製造工程が簡素になる。
【0042】
また樹脂の分子量や分子構造は単一でなく、ある程度分布しているので、一定の温度で融解せず、ある温度範囲にわたり部分的に融解する。この温度範囲で樹脂は軟化する。可撓性複合圧電体7を構成する樹脂と可撓性外電極5を構成する樹脂は同じであるので、両者の樹脂は軟化温度で部分的に融解している。この結果、可撓性複合圧電体7と可撓性外電極5は融解した樹脂を介して密着する。樹脂として、塩素化ポリエチレンを用いた場合、この軟化温度は120℃〜180℃であり、可撓性複合圧電体7の周囲に同軸状に押出すことにより、可撓性複合圧電体7と可撓性外電極5は優れた密着性を示すと共に、樹脂として塩素化ポリエチレンを用いているので、可撓性複合圧電体7にも可撓性外電極5にも高耐熱性を付与できる。
【0043】
なお、上記実施例では図3に示した従来例の外皮6について特に触れていないが、保護などの必要に応じて用いてもよいことは明らかである。
【0044】
また外皮6として、熱収縮チューブ以外にも塩化ビニールやウレタン樹脂などを用いても、もちろんよいものである。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように本発明にかかるケーブル状圧力センサは、可撓性複合圧電体が樹脂とセラミック圧電体粉末から成り、且つ、可撓性外電極が樹脂および導電性粉末から構成されているので、可撓性複合圧電体との密着性に優れる。
【0046】
また可撓性複合圧電体と同じ製造方法で可撓性外電極を形成できるので、製造工程が簡素化できると共にアルミニウム箔を巻き付ける工程も不要になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1におけるケーブル状圧力センサの斜視図
【図2】 本発明の実施例2におけるケーブル状圧力センサの斜視図
【図3】 従来のケーブル状圧力センサの斜視図
【符号の説明】
3 芯電極
5 可撓性外電極
7 可撓性複合圧電体
8 導電性編祖
Claims (7)
- 芯電極と、前記芯電極の周囲に配置された可撓性複合圧電体と、前記可撓性複合圧電体の表面に配置された可撓性外電極とから成り、前記可撓性複合圧電体が樹脂とセラミック圧電体粉末から成り、且つ、前記可撓性外電極が樹脂と導電性粉末から成り、前記可撓性外電極は可撓性複合圧電体の構成要素の樹脂と同じ樹脂及び導電性粉末から構成したケーブル状圧力センサ。
- 導電性粉末が銀粉末である請求項1記載のケーブル状圧力センサ。
- 導電性粉末がカーボン粉末である請求項1記載のケーブル状圧力センサ。
- 可撓性外電極の周囲を導電性編組で被覆した請求項3記載のケーブル状圧力センサ。
- 樹脂が塩素化ポリエチレンである請求項1乃至4いずれか1項に記載のケーブル状圧力センサ。
- 芯電極の周囲に、樹脂とセラミック圧電体粉末から成る可撓性複合圧電体を同軸状に形成した後、樹脂と導電性粉末の混合物を樹脂の軟化温度で前記可撓性複合圧電体の周囲に同軸状に押出して、可撓性外電極を形成し、前記可撓性外電極は可撓性複合圧電体の構成要素の樹脂と同じ樹脂及び導電性粉末から構成したことを特徴とするケーブル状圧力センサの製造方法。
- 請求項6記載の可撓性外電極は、樹脂として塩素化ポリエチレンを用い、120℃〜180℃で可撓性複合圧電体の周囲に同軸状に押出して形成するケーブル状圧力センサの製造方法。
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