JP3655525B2 - 送信装置、受信装置及び送受信装置、伝送方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、多項式剰余演算に基づく移動局用の送信装置、受信装置及び送受信装置に係る。本発明は、特に、上り方向の通信(移動機から基地局)でのユーザ(移動局)用送信装置及び基地局用受信装置、下り方向の通信(基地局から移動機)でのユーザ用受信装置及び基地局用送信装置、及び、これらのユーザ用又は基地局用送受信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、CDMA(Code division multiple access;符号分割多重アクセス)は、ユーザ信号を広い範囲の周波数領域に拡散して送信する方式で、携帯電話などの移動通信用の多重化方式としてその有用性が確認されている。CDMAでは、各ユーザに固有な符号系列が割り当てられていて、各ユーザは送信信号を生成する際にその符号を組み込みながら送信信号のスペクトルを拡散させて送信信号が広い周波数帯域を持つようにする。受信側では符号との相関を取りながら、受信信号を逆拡散し、ユーザ信号を狭い周波数帯域に集めその狭い帯域だけを通すフィルタによって、元のユーザ信号を再生する。このように、各ユーザに対して特定の符号を組み込むことにより、同じ周波数帯域に複数のユーザ信号成分を混在させることを可能にしている。
【0003】
CDMA方式の有利な特徴として、主に以下の3つが指摘されている。第一は妨害や干渉に対して強い事である。受信側で逆拡散を行った後では、妨害信号が広帯域あるは狭帯域でも妨害信号成分は広い周波数帯域に拡散されたままなので、フィルタにより妨害信号エネルギーはほとんどが除かれる。第二の特徴としては、秘話性を高めることができる事である。使われている符号を秘密にしておくことにより、傍受者がユーザ信号成分を取り出すことができないようにすることが可能である。第三に、情報を広い範囲の周波数領域に拡散することは周波数選択特性のある伝送路に対してその歪みを平均化する効果があり、結果的に伝送のビット誤り率を減少させることができる。
【0004】
CDMAと関連した通信方式としてマルチキャリア変調がある[安達]、[山内](なお、[ ]は、後述の関連資料を示す。以下同様)。マルチキャリア変調は信号を送信するのに周波数の違う複数個の搬送波を用いて変調を行う。すなわち、ユーザ信号の情報を複数の搬送波で分担して担うようにして送信する。ユーザ局が歩行者などのように低速で移動している場合には、伝送路は線形フィルタ(周波数選択特性)と加算的雑音から成る歪みとしてモデル化される。ユーザ信号の情報を搬送波に分担させる際に、歪みの少ない周波数帯域に対応する搬送波には多くの情報を、歪みの大きな周波数帯域に対応する搬送波には少ない情報を担うようにして、平均ビット誤り率を下げている[Kalet]。
また、マルチキャリア変調の一種としてOFDM(Orthogonal frequency division multiplexing;直交周波数分割多重)と呼ばれる方式が注目されている[安達]。この方式では、ユーザ情報から長さNの信号を生成し、その信号に長さNのIDFT(離散的逆フーリエ変換)を取り、それを送信する。長さNのIDFTはN個の搬送波を生成し、その搬送波に与えられた信号のサンプル値をそれぞれ掛け算して変換を行っていると考えることができる。ユーザ情報から長さNの信号を生成する所で各搬送波に分担させる情報量を決めている。受信側では、受信した信号のDFT(離散的フーリエ変換)を取ることで、元の長さNの信号を復元する。IDFTやDFTはFFT(高速フーリエ変換)アルゴリズムを用いて計算できるので、OFDMはマルチキャリア変調の中でも特に重要視されている。
【0005】
将来の移動通信用の多重化方式として、OFDMにCDMAの機能を付加した、MC-CDMA (multicarrier CDMA)が有望視されている[安達、pp.370], [Fazel and Fettweis]。この方式では、まず、アダマール行列などによってユーザの数だけの互いに直交する要素が1と−1から成るN次元のベクトルを用意し、ユーザごとに一つのベクトルを割り当る。ユーザの送信機では、送信すべき1ビットの情報を送るのに、割り当てられたベクトルに1ビットの値を掛け算して得られたベクトルに長さNのIDFTを取り、それを送信する。受信側では、まず、長さNのDFTを取り、次にその得られた系列と対応するベクトルとの内積を取って元の1ビットの情報を再生する。送信側でIDFTを計算する所と受信側でのDFTを計算する所はOFDMと同じであるが、搬送波への情報の配分は、伝送路の特性ではなく、割り当てられたベクトルで決まる。ベクトルと送信情報の1ビットの掛け算とIDFTによってスペクトル拡散を行っている。したがって、CDMAと同じように、妨害信号に強く、周波数選択特性のある伝送路でもビット誤り率が低い。また、IDFTやDFTを計算する所にFFTアルゴリズムを適用できるので通常のCDMAより経済的に実現できる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
最近、多項式演算に基づく多重化方式が提案された[村上、特許出願]。この多重化を用いると、加算的雑音を含む周波数選択特性のある伝送路はユーザ信号間の干渉が発生しないような互いに独立なサブチャネル伝送路に分解される。この特許出願では、この多項式剰余演算に基づく多重化方式を移動通信に応用し、それに適したユーザ用の送信機および受信機を提案する。これらの装置は、ユーザ送信機や受信機にIDFTやDFTなどの変換が不要で、MC-CDMAよりも効率的である。また、CDMAやMC-CDMAと同様に、ユーザ信号は情報は広い範囲の周波数帯域に拡散され、MC-CDMAと同じような利点を持つ。
【0007】
ユーザの数をMとして、[村上、特許出願]での多項式剰余演算に基づく多重化方式を簡単に説明する。M個の互いに素な多項式Pm(z), m=0, 1, …, M-1,があるとすると、中国人剰余定理により、これらの多項式に対しQm(z)≡1mod(Pi(z)), i=m, Qm(z)≡0mod(Pi(z)), i≠mの関係を満足する別の多項式の集合Qm(z), m=0, 1, ..., M-1,が存在する。ここで、最初に、多項式の剰余演算について簡単に説明する。 A(z), B(z), C(z)をある多項式とすると、
A(z)≡B(z)mod(C(z))
の式の意味はA(z)をC(z)で割った余りの多項式とB(z)をC(z)で割った余りの多項式が同じであることを意味する。たとえば、z3をz2+1で割った時の余りは-z、あるいは
z3=z(z2+1)−z
なので
z3≡−z mod(z2+1)
と書くことができる。また、単にA(z)mod(B(z))と書くときは、A(z)をB(z)で割ったときの余りを意味する。B(z)がD(z)を次数N以下の多項式としてB(z)=zN-D(z)と書けるとすると、zN≡D(z)mod(B(z))なので、A(z)mod(B(z))はA(z)にzN=D(z)の関係を代入して求めることもできる。
送信すべきユーザ信号をXm(z),m=0, 1, …, M-1,とし、P(z)をPm(z), m=0, 1,…, M-1,の積としたとき、多重化信号X(z)をQm(z)Xm(z)mod(P(z)), m=0, 1, …, M-1,の和として求め、それを送信する。受信側では、受信された多重化信号をY(z)としたとき、Ym(z)≡Y(z)mod(Pm(z)),m=0, 1, …, M-1,によってユーザ信号を再生する。上記のPm(z)とQm(z)の関係より、受信信号Y(z)が多重化信号X(z)に等しいとき、再生されたユーザ信号が送信されたユーザ信号に一致することが確認できる。
【0008】
本発明では、上記の多項式剰余演算に基づく多重化方式を移動通信に応用する。上りではユーザmの送信機はQm(z)Xm(z)mod(P(z))を計算し、それを送信する。受信側の基地局では、受信された信号をY(z)としたとき、Ym(z)≡Y(z)mod(Pm(z))を計算してユーザ信号を再生する。一方、下りでは、基地局は与えられたユーザ信号から多重化信号X(z)を計算しそれを送信する。ユーザmの受信機では受信した多重信号Y(z)からYm(z)≡Y(z)mod(Pm(z))を計算することで、ユーザ信号を再生する。本発明のひとつの特徴としては、上りでのQm(z)Xm(z)mod(P(z))を計算し、それを通過帯域信号に変換して送信するユーザ用送信機と、下りでの受信した通過帯域信号から多重信号Y(z)を求め、Ym(z)≡Y(z)mod(Pm(z))を計算するユーザ用受信機を対象にしている。また、本発明の他の特徴としては、上りでのユーザ用送信機から受信したユーザ信号を再生する基地局と、下りでのユーザ信号から多重化信号X(z)を計算して送信する基地局を対象にすることもできる。
【0009】
文献[村上、特許出願]で提案されている多重化の実現方式では周波数分割多重方式(FDM)や時分割多重方式(TDM)などが使われているような通常の多重化の利用形態を想定している。すなわち、すべてのユーザ信号が手許にあるものとして多重化や分離化装置を実現している。しかし、移動通信の場合には各ユーザは、上りでは他のユーザ信号と多重化する前に自分のユーザ信号を送信しなければないし、また下りでは自分に向けられたユーザ信号のみを再生すればよい。従って、移動通信の場合には各ユーザは多重化を行わずに信号を送信しなければないので、多重化は不要でユーザ送信機は既出願の装置とは全く異なった構成となる。既出願では送信機にFFTを必要としているが、本発明の場合には単一の搬送波から演算を必要としないアップサンプラのみで複数の搬送波を生成している。また、信号を受信する場合にも自分に向けられた信号のみを分離すればよいので受信機の構成も異なったものとなっている。送信の場合と同様に既出願ではFFTを必要としているが、本発明の場合には簡単な掛け算と加算のみでユーザ信号を取り出している。
【0010】
送信機や受信機の具体的な構成は多項式の集合Pm(z), m=0, 1, …, M-1,の選びかたに依存する。この本発明では特に、送信すべきユーザ信号の長さをK、すなわち、Xm(z)の次数はK-1以下とし、Pm(z)として1-ej2 π m/Mz-Kを用いた場合のユーザ用送信機および受信機を扱っている。この場合にはPm(z), m=0, 1, …, M-1,の積はP(z)=1-z-MKとなり、Qm(z)Xm(z)mod(P(z))や多重信号は長さMKとなる。このようにPm(z)を選ぶと、ユーザ信号の情報はK個の搬送波に分担されて伝送される。したがって、機能的には長さがKのDFTを用いたMC-CDMAと同等の効果が得られる。
【0011】
本発明は、第一に、MC-CDMAと比較してMC-CDMAで必要とされるIDFTやDFTの計算を不要としMC-CDMAよりも安価に実現することを目的とする。本発明は、第二に、一度に伝送できる情報量を比較的容易に増やすことができ、伝送効率を上げることができる装置を提供することを目的とする。
本発明は、第三に、サブチャネル伝送路の雑音はこれらの線形和で与えられる殆どの種類に伝送路雑音に対してガウス雑音に近づき、ガウス雑音を含む伝送路はよく研究されているため、移動通信装置の設計や解析を有利とすることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
携帯電話などの移動通信に、妨害信号に強いなどの特徴から、CDMA技術が応用されるようになってきている。この方式では、各ユーザに固有の符号を割り当て、その符号を組み込みながらユーザ信号を広い周波数帯域の信号に変換して送信する。このように、各ユーザに対して特定の符号を組み込みながら多重化することで、同じ周波数帯域に複数のユーザ信号成分を混在させることを可能にしている。移動通信にはユーザ(移動局)から基地局への「上り」と呼ばれている通信形態と、逆に基地局からユーザ局への「下り」と呼ばれている通信形態がある。本発明では、特に、CDMAと類似の効果をもちながら、従来のCDMA方式より格段に安価に実現できる上りでのユーザ用送信装置および下りでのユーザ用受信装置を提供する。
【0013】
以下の説明では、ユーザの数をMとする。M個の互いに素な多項式Pm(z), m=0, 1, …, M-1,があるとすると、中国人剰余定理により、これらの多項式に対しQm(z)≡1mod(Pi (z)), i=m, Qm(z)≡0mod(Pi (z)), i≠mの関係を満足する別の多項式の集合Qm(z), m=0, 1, ..., M-1,が存在する。送信すべきユーザ信号をXm(z),m=0, 1, …, M-1,とし、P(z)をPm(z), m=0, 1, …, M-1,の積としたとき、多重化信号X(z)をQm(z)Xm(z)mod(P(z)), m=0, 1, …, M-1,の和で与えるものとする。すなわち、上りではユーザはそれぞれQm(z)Xm(z)mod(P(z))を計算し、それを送信する。受信側の基地局では、受信された信号をY(z)としたとき、Ym(z)≡Y(z)mod(Pm(z))を計算してユーザ信号を再生する。上記のPm(z)とQm(z)の関係より、受信信号Y(z)が多重化信号X(z)に等しいとき、再生されたユーザ信号Ym(z)が送信されたユーザ信号Xm(z)に一致することが確認できる。一方、下りでは、基地局は与えられたユーザ信号Xm(z)からQm(z)Xm(z)mod(P(z)), m=0, 1, …, M-1,の和を求め、その得られた和の信号を送信する。ユーザ受信機は、受信された信号をY(z)としたとき、それぞれYm(z)≡Y(z)mod(Pm(z))を計算することで、ユーザ信号を再生する。
【0014】
本発明は、特に、上りで多項式の積Qm(z)Xm(z)mod(P(z))を計算し、それを送信するユーザ用送信機と、下りでYm(z)≡Y(z)mod(Pm(z))を計算し、ユーザ信号を再生するユーザ用受信機を提供することができる。具体的な送信機や受信機の構成は多項式の集合Pm(z)の選びかたに依存する。特に、Pm(z)=1-ej2 π m/Mz-Kを用いた具体的な送信機や受信機の構成を提供している。このようにPm(z)を選ぶと、送信機でQm(z)Xm(z)mod(P(z))を計算する場合にも、受信機でY(z)からYm(z)を求める場合にもそれぞれM-1回の掛け算で求まり、従来の方式よりも容易に実現できるなどの特徴を持つ。また、ユーザ信号の情報を広い範囲の周波数帯域に拡散され、CDMAの有利な特徴を持つことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
移動通信にはユーザ(移動局)から基地局へ信号を伝える「上り」方向の通信形態と、逆に基地局から移動局へ信号を伝える「下り」方向の通信形態がある。図1に、上り方向と下り方向の移動通信の形態を表す図を示す。ユーザ数がMの場合の上りの通信形態を図1(a)に、下りの通信形態を図1(b)に示す。上りでは、ユーザ送信機10は各自ユーザ信号を通過帯域信号に変換し、それを基地局に向けて送信する。図1(a)に於いて、伝送路20(m)はユーザ送信機10(m)から基地局受信機30までの伝送経路の歪みを示す。基地局受信機30では受け取った多重信号からユーザ信号を分離する。分離されたユーザ信号は行き先に応じて、他の基地局あるいは同じ基地局内の送信側に転送される。
下りでは、基地局で他の基地局送信機50あるいは同じ基地局内の受信側30から受け取ったユーザ信号を多重化し、その多重化した信号を通過帯域信号に変換し、それをユーザ受信機70に向けて送信する。各ユーザ受信機は受け取った多重信号から自分に向けられたユーザ信号を分離する。図1(b)で、伝送路60(m)は基地局送信機からユーザ受信機70(m)までの伝送経路の歪みを示す。
【0016】
本発明で扱う多重化方式は多項式に対する中国人剰余定理が基礎となっている。この定理によると、あるM個の互いに素な多項式,Pm(z), m=0, 1, ..., M-1,が与えられ、それらの積を式(1)と置くと、式(2)を満足する次数がP(z)の次数以下である多項式Qm(z), m=0, 1, ..., M-1,が存在する[Nussbaumer著、佐川雅彦、本間仁志共訳の本]。また、ユーザm(m=0, 1, …, M-1)は一度にK個のサンプル値xm(n), n=0, 1, …, K-1,を送るものとし、そのサンプル系列をz-変換として表現する(式(3))。z-変換は信号処理の分野で広く用いられている表現形式でここでも信号の記述に使うことにする。式(3)から明らかなように、z-変換はz-1についての多項式であり、信号の操作に中国人剰余定理を適用できる。以降の説明では、(2)式の関係を満たす二つの多項式の集合、Pm(z)およびQm(z), m=0, 1, …, M-1,は前もって求められているものとする。
【数2】
ここで、中国人剰余定理の(1)式と(2)式の意味を具体的な例で示す。この定理では、例えば、
P(z)=z4−1=(z2−1)(z2+1)=P0(z)P1(z)
とすると(P0(z)とP1(z)は同じ因数多項式を持たないので、互いに素である。)
で、
となる、次数が4以下の多項式Q0(z)とQ1(z)が存在すると言っている。実際にQ0(z)=(z2+1)/2とQ1(z)=-(z2-1)/2とすれば上の2つの式を満足することが分かる。
【0017】
図2に、上りの通信形態での(a)ユーザmの送信機10、(b)基地局受信機30の構成図を示す。
上りでは、ユーザは各自基地局に向けて信号を送出するのであるが、実際には図2(a)に示してあるような方法で信号を送信する。すなわち、ユーザmはまず、ブロック101、102により式(4)を計算する。次に、この信号Um(z)を低域通過フィルタ103に通して帯域の制限されたアナログ信号に変換し、変調器104により、それをQAM(quadrature amplitide modulation)などの通常の変調方法によって通過帯域信号に変換してから送信する。基地局受信機30では、図2(b)に示すように、ユーザから送られてきた通過帯域信号を復調器301により復調し、サンプラ302によりその得られた波形をある時間間隔Tでサンプルし、離散時間信号に変換する。そこで得られた離散時間信号をY(z)とすると、ブロック303によりユーザ信号を式(5)によって再生する。
【0018】
【数3】
【0019】
図3に、下りの通信形態での(a)基地側送信機50、(b)ユーザmの受信機70の構成図を示す。
下りでは、基地局送信機50で、他の基地局あるいは同じ基地局内の受信側から受け取ったユーザ信号を多重化し、その多重化した信号をユーザに向けて送信する。基地局送信機では、まず、ブロック501、503により式(6)によって多重化信号X(z)を計算し、その多重化信号を上りのユーザ送信機10と同様に低域通過フィルタ504と変調器505を使って通過帯域信号に変換して送信する。ユーザ側受信機では、図3(b)に示すように、上りでの基地局受信機30と同じように、受けた信号を復調器701により復調した後、その復調された信号をサンプラ702により時間間隔Tでサンプルする。次にその得られた信号からブロック703により(5)式に従ってユーザ信号Ym(z)を再生する。
【数4】
【0020】
ここで、伝送路に歪みがないとき受信側の多重信号が送信側の多重信号と一致する為に、送信機で使用される低域通過フィルタと受信側で使用されるサンプラのサンプリング間隔をどのように設定すべきかを考える。通常、通信に使える周波数帯域幅は制限されている。その使える帯域幅をBとすると、その帯域内に通過帯域信号の帯域幅をおさめる為には低域通過フィルタの通過帯域はB/2として設計する必要がある。このように低域通過フィルタを設計しておけば変調後の通過帯域信号の周波数帯域は所望の帯域内におさまる。伝送路も含めて変調器から復調器までの間に全く歪みがなく、受信側の復調器の後の信号は送信側での変調前の送信信号に等しいものとする。
【0021】
このような条件で、復調器の後の信号をサンプリング間隔Tでサンプルした後の離散時間信号が送信側の低域通過フィルタを通す前の信号に一致するための条件はサンプリングの定理により求まっている。その定理によると、サンプリング間隔TがT≦1/Bであれば、低域通過フィルタを通す前の信号とサンプリングを行った後の信号は同じになる。言い換えると、サンプリング周波数1/Tを、通信に使える周波数帯域幅B以上にしておけばよい。このように設定しておけば、低域通過フィルタが理想的な低域通過特性を持ち、変調器から復調器までの過程でも歪みがないものとすれば、受信側のサンプラの出力信号は送信側の低域通過フィルタの入力信号と一致する。
【0022】
通信の分野では、一般に、変調を行う前の信号をベースバンド信号、変調の後の信号を通過帯域信号と呼んでいる。ここで、上述のように低域通過フィルタの特性とサンプラのサンプリング間隔を設定したものとする。すると、通過帯域信号に対する伝送路をそれと等価なベースバンド信号に対する歪みに置き換えれば、通信の形態を離散時間信号のベースバンド通信としてモデル化できる。例えば、ユーザ局が歩行者や低速の自動車等の場合には、伝送路は線形フィルタと加算的雑音との直列として近似できる。
【0023】
図4に、上りのベースバンド通信モデル、(a)伝送路が線形フィルタと加算的雑音の場合の通信モデル、(b)等価なサブチャネル通信モデルを表す図を示す。
伝送路がこのような場合の上りのベースバンド通信モデルを図4(a)に示す。この図において、ブロック211で示されるHm(z)は伝送路mの線形フィルタ特性と送信機で使われている低域通過フィルタの両者の歪みをベースバンド通信に置き換えた影響を表している。また、Wm(z)は伝送路mで発生する雑音の等価的なベースバンド雑音を表している。図から明らかなように基地局受信機で受け取られるベースバンド信号は、(7−1)式で与えられる。ユーザ信号を分離するために、このベースバンド信号に対して、ブロック312によりmod(Pm(z))を取る。Pm(z)はP(z)の因数なので、Xi(z)Qi(z)mod(P(z))で与えられる多項式に対してmod(Pm(z))を取った多項式はXi(z)Qi(z)mod(Pm(z))と等しくなる。従って、再生されたユーザ信号Ym(z)はXi(z)Qi(z)Hi(z)+Wi(z), i=0, 1, …, M-1,の和にmod(Pm(z))を取った多項式として与えられる。(2)式の関係から、Qi(z)mod(Pm(z))はiがmに等しいとき1で、それ以外の時は零なので、Ym(z)は(7−2)式で表せることがわかる。この式には他のユーザ信号は関与せず、受信側で再生されたユーザ信号には他のユーザ信号との干渉は発生しない。すなわち、図4(a)の通信形態は図4(b)に示すような独立した並列のサブチャネル通信に書き換えることができる。
【数5】
【0024】
図5に、下りのベースバンド通信モデル、(a)伝送路が線形フィルタと加算的雑音の場合の通信モデル、(b)等価なサブチャネル通信モデルを表す図を示す。
下りの通信形態を上りの場合と同様にベースバンド通信モデルで表現すると図5(a)のようになる。この場合には、ユーザmで受け取られるベースバンド信号は、(8−1)式で与えられる。このベースバンド信号にmod(Pm(z))を取り、(2)式の関係を利用すると、受信側のユーザ信号は、(8−2)式として求まる。この式には他の伝送路からの雑音が含まれないことが上りのときとは違っているが、この場合にも出力側のサブチャネル信号には他のユーザ信号との干渉は発生しない。下りの図5(a)と等価な並列サブチャネル通信モデルを図5(b)に示す。
【数6】
【0025】
これまで説明してきたように提案する多重化方式は上りあるいは下りの移動通信においてもユーザ信号間の干渉は発生しない。本発明の特徴のひとつとしては、図2(a)で示すような上りのユーザ用送信機と、図3(b)で示すユーザ用受信機を対象とする。
【0026】
具体的な実施の形態はPm(z), m=0, 1, …, M-1,としてどのような多項式を使うかに依存する。Pm(z)を決めればQm(z)は従属的に定まる。ここでは、文献[Murakami]で紹介された多項式の因数分解((9)式)を利用して具体的な実施の形態を求める。すなわち、Pm(z)として1-ej2 π m/Mz-Kを使うことにする。このように定めると、上式から1-z-MKがP(z)に対応する。Qm(z)に対応する多項式と決めるのに、別の多項式((10)式)を導入し、Qm(z)=ψm(zK)とする(即ち、Qm(z)がψm(z)のzにzKを代入した多項式とする。)このようにして、Qm(z)の周波数特性の特徴を明確にすることができる。すると、mod(1-ej2 π m/Mz-K)を取ることがzK=ej2 π m/Mを代入することを意味することから、Pm(z)とQm(z)は(2)の関係を満足することが確認できる。上記のようにPm(z)とQm(z)を選び、ユーザ信号がすべて与えられているものと想定したときの、多重化と分離化装置は文献 [村上、特許出願]ですでに提案されている。移動通信に於いても、基地局での多重化および分離化にはそこで提案されている実現方式が適用できるので、この発明では移動局の送信機と受信機の構成を考える。
【数7】
【0027】
上りでのユーザでの送信機はベースバンド送信信号Um(z)≡Qm(z)Xm(z)mod(P(z))を計算し、Um(z)を低域通過フィルタと変調器を用いて送信する。低域通過フィルタと変調器は通常の実現方式を適用できるので、Um(z)を計算する部分に議論を絞る。Qm(z)=ψm(zK)なので、ユーザmのベースバンド送信信号Um(z)は、Xm(z)とψm(zK)の積を取ることにより(11)式で与えられることが分かる。
【数8】
図6に、実施の形態で用いられたようにPm(z)=1-ej2 π m/Mz-K, m=0, 1, …, M-1,としたときの、ユーザ用の送信機と受信機での処理、(a)上りでのユーザmに於いて、ユーザ信号Xm(z)からベースバンド送信信号Um(z)を求める処理、(b) 下りでのユーザmに於いて、ベースバンド受信信号Y(z)からユーザ信号Ym(z)を求める処理を表す図を示す。この(11)式の右辺の多項式の次数はMK以下なので、(4)式でのmod(P(z))を取る操作は不要である。その理由は、P(z)は(9)式で与えられ、次数はMKである。そして、mod(P(z))を取る操作はP(z)で割った余りを求めることなので、次数がMK以下の多項式に対してはP(z)で割った余りを求めても元の多項式となるからである。信号系列 u m とその z- 変換 U m の関係は(3)式と同様に与えられるが、(11)式からUm(z)のz-(k+nK)に対応する係数はxm(k)ej2 π mn/M, k=0, 1, …, K-1, n=0, 1, …, M-1,で与えられるので、図6(a)に示す方法でユーザ信号からベースバンド送信信号Um(z)を得ることができる。図6(a)から明らかなようにユーザ信号の各サンプル値xm(k)につきM-1回の掛け算でユーザ信号をベースバンド送信信号に変換できる。
【数9】
【0028】
つぎに、下りでのユーザ受信機を考える。ユーザmでは、基地局から送られてきた通過帯域信号を復調し、その得られた波形を時間間隔Tでサンプルし、離散時間信号に変換する。その離散時間信号をY(z)とすると、ユーザ信号はYm(z)≡Y(z)mod(1-ej2 π m/Mz-K)で与えられる。mod(1-ej2 π m/Mz-K)を取ることは、Y(z)に於いてzK=ej2 π m/Mを代入することに対応する。他の説明をすると、Y(z)に対する信号系列をy(n), n=0, 1, …, MK-1,とすれば、z-変換の定義より、(12−1)式と書くことができる。Pm(z)=1-ej2 π m/Mz-1なので、Ym(z)はY(z)にzK=ej2 π m/Mを代入して求まる。したがって、この代入を行うと、ユーザ信号は(12−2)式として求まる。Y m (z) の z -k に対応する係数 y m (k) は(12−2)式の右辺の()括弧内の式で与えられる。ここでy(n)は受信された信号Y(z)のz-nの対する係数である。この式から、図6(b)に示すような操作でY(z)からYm(z)が得られることが分かる。
【数10】
つぎに、上り通信の形態で、ユーザ信号の情報がどのように時間および周波数に拡散されるかを調べてみる。図6(a)から分かるように、時間的にはユーザ信号の各サンプル値はUm(z)に於けるKTの間隔ごとのM個のサンプル値に拡散される。
【0029】
一方周波数的には、ユーザ信号の各サンプル値は(4)式の関係からψm(zK)の振幅特性で定まる周波数帯域に拡散されることになる。(3)と(4)式より、ユーザmの送信ベースバンド信号は(13−1)式で与えられる。ユーザ信号のサンプル値xm(n)は送信ベースバンドとして、xm(n)z-nQm(z)に変形されている。すなわち、xm(n)はz-nψm(zK)のフィルタを通して送信ベースバンド信号として使われる。ある任意のフィルタH(z)の周波数特性はH(ej ω)で与えられ、振幅特性はその絶対値|H(ej ω)|で与えられる。z-nの部分の振幅特性は|e-j ω n|=1なので、ユーザ信号の各サンプル値はψm(zK)の振幅特性で定まる周波数帯域に拡散されることになる。
この周波数特性は、(13−2)式で与えられ、この絶対値を取ったものが振幅特性になる。この式に周波数fを-1/(2T)≦f<1/(2T)の範囲で変化させると、振幅特性はこの範囲でK個のピーク値を持つ。
【数11】
図7に、M=3でK=4の場合の、ψm(zK)の振幅特性を示す。いずれのm=0, 1, 2,についても、-1/(2T)≦f<1/(2T)の周波数範囲で、ψm(zK)の振幅特性は4個のピーク値を持っている。
図8に、M=3でK=4とした場合の、ユーザ信号の時間−周波数拡散状況をまとめたものを示す。時間についてはKTの間隔で、周波数については1/(TK)の間隔で均等に分布している。
【0030】
ユーザ信号を広い範囲の周波数帯域あるいは時間領域に拡散する技術はダイバシティと呼ばれていて、通常のCDMAやMC-CDMAに活用されている。このように拡散させることによって、周波数あるいは時間に局在する歪みを平均化し、ビット誤り率を減少させることが出来る。以下に、ダイバシティによってどのようにビット誤り率が減少するかを具体的な場合について確認する。
【0031】
まず、時間領域に分散させることによる改善を調べてみる。ここでは、伝送路の周波数選択性による歪みはないもの、すなわちHm(z)=1とし、伝送路の歪みは加算的雑音のみであるとする。(7)式より、加算雑音はWm(z), m=0, 1, …, M-1,の和で与えられるが、それをW(z)とすると、受信側のユーザ信号はYm(z)≡Xm(z)+W(z)mod(Pm(z))となる。(12)式を求めたのと同様な方法で、ユーザ信号での加算雑音成分を求める。(12)式を求めた場合と同じように、W(z)は(14−1)式となるので、再生されたユーザ信号に含まれる雑音はW(z)にzK=ej2 π m/Mを代入して(14−2)式となるので、再生されたユーザ信号のサンプル値ym(k)=xm(k)+dm(k)に含まれる加算雑音dm(k)は上式のz-kに対する係数となる。すなわち、再生されたユーザ信号のサンプル値ym(k)に含まれる加算雑音dm(k)は、(14−3)式として求まる。ベースバンド伝送路の加算的雑音W(z)に対する自己相関関数は、iを任意の整数として、RW(n)=(1/2)E{w*(i)w(i+n)}で定義される。ここで、上付きの記号*は複素数の共役を取る操作で、Eは期待値を取る操作を示す。加算雑音dm(k)の分散は(14−3)式とW(z)の自己相関関数の定義から求めることができる。ある任意の複素数aの絶対値の2乗|a|2はaとその複素共役a*との積a*aで与えられるので、(15−1)式となる。上式の右辺で確率的に変化するのはw(k+nK)とw*(k+n’K)なので、(15−2)式になる。ここでn’-n=lと置くと、(15−3)式となる。一方、任意のiについて、RW(n)=(1/2)E{w*(i)w(i+n)}と定義されているので、(15−4)式となる。よって(15−5)式が求まる。
一般にRW(n)の値は大きなnに対しては零になるので、Kの値を増やすにしたがって、dm(k)の分散はmに依存しなくなり、MRW(0)に等しくなる。
【数12】
【0032】
このように、Kを増やすにしたがって雑音の電力は各ユーザ間に均等に配分されるようになり、ビット誤り率が減少する。この様子をユーザ信号の各サンプル値が{ε1/2, -ε1/2}のいずれかの値を取るものとした場合に確認してみる。また、加算雑音はアナログ自己相関関数として(N0/2)e-| τ |/D(N0およびDは実定数)で与えられるガウス雑音と仮定する。
図9に、ユーザ数Mを32と固定し、Kの値を色々変えて、平均ビット誤り率(BER; Bit Error Rate)をベースバンド上のSNR(signal-to-noise ratio),ε/(MN0),の関数として求めたものを示す。ここではユーザ信号の各サンプル値が{ε1/2, -ε1/2}のいずれかの値を同じ確率で取るものと仮定した。図9(a)はD/T=1の場合、図9(b)はD/T=5の場合を示す。これらの図から明らかなようにKを増すごとに平均ビット誤り率が減少している。
【0033】
次に、伝送路が、加算的雑音に加え、周波数選択性も持つ場合を考える。すなわち、Hm(z)=1でないものとする。受信側に等価器を設置し、この伝送路の線形フィルタによる歪みを完全に補正した場合の性能の評価する。すなわち、受信側でmod(Pm(z))を取る前に、Hm(z)の逆フィルタを通すものとする。また、上の例と同じように、ユーザ信号のサンプル値は{ε1/2, -ε1/2}を取るものとしてその効果を確認してみる。例として、伝送路フィルタHm(z)はその自己相関関数としてRm(τ)=e-| τ |/Dで与えられるものとし、加算雑音は平均がゼロで分散がN0/2の白色ガウス雑音であるとする。図10に、M=32と固定し、ユーザ信号の各サンプル値が{ε1/2, -ε1/2}のいずれかの値を同じ確率で取るものと仮定したときの平均ビット誤り率をベースバンド上のSNR,ε/(MN0),の関数として求めたものを示す。図10(a)はD/T=1の場合、図10(b)はD/T=5の場合を示す。この場合にもKが増す、すなわちダイバシティを増すごとに平均ビット誤り率が減少していることが確認できる。
【0034】
文献[安達], [Fazel and Fettweis]で見られるように、MC-CDMAがこれからの移動通信の多重化として有望視されているので、この方式と提案している方式の違いをまとめる。本発明で提案する多重化では、ユーザ信号をK個のピーク値を持つフィルタに通すので、機能的には長さがKのDFTを用いたMC-CDMAと同等の効果が得られる。MC-CDMAでは、K個の搬送波に拡散するために、まずユーザ信号のサンプル値ごとに長さKの符号を掛けて長さがKの信号を得る。その信号に対し長さKのIDFTを取ってベースバンド送信信号を得ている。一方、提案する方式では、IDFTを使わずに、単一の複素sin波形、ψm(z)、をK倍にアップサンプル(サンプル値の間にK-1個のゼロ値サンプルを挿入する)してK個の搬送波を生成している。このような違いに加えて、提案する方式にはMC-CDMAに比べて以下のような有利な特徴がある。
【0035】
関連資料
[1] 特許出願公開番号: 特開平10−215237
「離散時間信号に対する多重化装置および多重化システム」村上秀男
[2] I. Kalet, “The multitone channel,” IEEE Trans. Commun., vol. 37, pp. 119-124, Feb. 1989.
[3] 「CDMA移動体通信システム」Ramjee Prasad著、安達文幸訳、科学技術出版社、1997
[4] 「ディジタル移動通信」山内雪路著、東京電気大学出版局、1993
[5] K. Fazel and G. P. Fettweis, Multi-carrier spread-spectrum, Kluwer Academic Publishers, 1997.
[6] 「高速フーリエ変換のアルゴリズム」H. J. Nussbaumer著、佐川雅彦、本間仁志共訳、科学技術出版社
[7] H. Murakami, “Sampling rate conversion systems using a new generalized form of the discrete Fourier transform, “ IEEE Trans. Signal Processing, vol. 43, pp. 2095-2102, Sept. 1995.
[8] J. G. Proakis, Digital Communications, 3rd edition, McGrawHill, NY, 1996
(訳)ディジタルコミュニケーション(改訂3版)坂庭好一他訳(科学技術出版社、1997)
【発明の効果】
(1)本発明によると、MC-CDMAよりも安価に移動局用送信装置又は受信装置を実現できる。本発明では、サンプル値一つについてユーザ信号をベースバンド送信信号に変換するのに必要な演算はM-1回の掛け算なのに対し、MC-CDMAでは、符号の掛け算を無視しても、長さKのIDFTの計算量が必要である。このIDFTの計算には、FFTを用いたとしても、約(K/2)log2K回の掛け算とK log2K回の加算が必要である。また、MC-CDMAでは、直交ベクトルの数はベクトル空間の次元で制限されているので、ユーザの数Mは搬送波の数K以下でなければならない、すなわちM≦Kでなければならない。この条件のもとでは、本発明がMC-CDMAよりも格段に演算量が少なく、安価に実現できる。
【0036】
(2)本発明によると、比較的容易に伝送効率を上げる事ができる。一度信号を送信すると、干渉をさけるために、次の信号を送信する前に一定の時間間隔をあけなければならない。この時間間隔は伝送路フィルタのインパルス応答の長さによって定まる。したがって、一度に伝送するサンプル数を増やせば増やすほど伝送効率が上がる。本発明ではKをふやすことで一度に送信する信号の長さをふやすことができる。Kを増やしてもサンプル値一つについての演算量は変わらない。一方、MC-CDMAでは一度に送信できる信号長はIDFTの長さで決まる。IDFTの長さを増やすことは演算量を増大することを意味するので、一度に送信するサンプル値を増やすことは容易でない。
【0037】
(3)本発明によると、受信されたユーザ信号に含まれる加算雑音は殆どの種類に伝送路雑音に対してガウス雑音となり、サブチャネル通信の設計や解析に有利である。式(14)から分かるように、受信側ユーザ信号のサンプル値に含まれる加算雑音はw(k+nK), n=0, 1, …, M-1,の線形和で与えられる。Kの値が十分大きいと、w(k+nK), n=0, 1, …, M-1,は確率的に互いに独立となるので、ユーザ信号に含まれる加算雑音は殆どの種類に伝送路雑音に対してガウス雑音に近づく。一方、MC-CDMAでは連続するサンプルのDFTを取っているので、受信側ユーザ信号のサンプル値に含まれる加算雑音はガウス雑音に近付かない。
【0038】
【図面の簡単な説明】
【図1】上り方向の移動局から基地局と下り方向の基地局から移動局の移動通信の形態で(a)上り、(b)下りを表す図。
【図2】上りの通信形態での(a)ユーザmの送信機(b)基地局の受信機の構成図。
【図3】下りの通信形態での(a) 基地側での送信機(b)ユーザmの受信機の構成図。
【図4】上りのベースバンド通信モデル、(a)伝送路が線形フィルタと加算的雑音の場合の通信モデル、(b)等価なサブチャネル通信モデルを表す図。
【図5】下りのベースバンド通信モデル、(a)伝送路が線形フィルタと加算的雑音の場合の通信モデル、(b)等価なサブチャネル通信モデルを表す図。
【図6】実施の形態で用いられたようにPm(z)=1-ej2 π m/Mz-K, m=0, 1, …, M-1,としたときの、ユーザ用の送信機と受信機での処理、(a)上りでのユーザmに於いて、ユーザ信号Xm(z)からベースバンド送信信号Um(z)を求める処理、(b) 下りでのユーザmに於いて、ベースバンド受信信号Y(z)からユーザ信号Ym(z)を求める処理を表す図。
【図7】実施の形態で用いられたようにPm(z)=1-ej2 π m/Mz-K, m=0, 1, …, M-1,とし、K=4でM=3とした場合のQm(z) の振幅特性を表す図。
【図8】実施の形態で用いられたようにPm(z)=1-ej2 π m/Mz-K, m=0, 1, …, M-1,とし、K=4でM=3とした場合のユーザ信号情報の周波数と時間領域分布状況を表す図。
【図9】ユーザ信号の各サンプル値が{ε1/2, -ε1/2}のいずれかの値を取るものとし、加算雑音はアナログ自己相関関数として(N0/2)e-| τ |/Dで与えられるガウス雑音とする。M=32としたときの平均ビット誤り率(BER)、(a)D/T=1の場合、(b)D/T=5の場合を表す図。
【図10】ユーザ信号のサンプル値は{ε1/2, -ε1/2}を取るものとして、伝送路のインパルス応答のアナログ自己相関関数はR(τ)=e-| τ |/Dで、加算雑音は平均がゼロの白色ガウス雑音であるとする。M=32としたときの平均ビット誤り率、(a)D/T=1の場合、(b)はD/T=5の場合を表す図。
【符号の説明】
10 ユーザ送信機
20、60 伝送路
30 基地局受信機
50 基地局送信機
70 ユーザ受信機
Claims (8)
- 移動通信でユーザの移動局から基地局へ信号を伝える上り方向の通信のための移動局用送信装置において、
各ユーザm(m=0,1,…,M−1)がK個のサンプル値x m (n), n=0,1,…,K−1,を送るとき、各ユーザmが送信すべきユーザ信号Xm(z)(ここで、X m (z)は、x m (n)のz−変換)について、
Pm(z)=1−e j2πm/M z −K , m=0,1,…,M−1,
及び
剰余多項式 Um(z)≡Qm(z)Xm(z)mod(P(z))
(ここで、P(z)は、P m (z), m=0,1,…,M−1,の積)
に基づきベースバンド送信信号U m (z)を計算する手段と、
計算されたベースバンド送信信号Um(z)を周波数帯域の制限されたアナログ信号に変換する低域通過フィルタ手段と、
変換されたアナログ信号を変調して送信する手段と
を備え、
前記ベースバンド送信信号U m (z)を計算する手段は、
前記剰余多項式による次式(11)に基づき、
前記移動局用送信装置。 - 移動通信で基地局からユーザの移動局へ信号を伝える下り方向の通信のための移動局用受信装置において、
請求項1に記載の移動局用送信装置から、ユーザmの各サンプル値x m (k)が変換された送信信号を受信し、ベースバンド信号Y(z)を得る復調手段と、
得られたベースバンド信号Y(z)から、
Ym(z)≡Y(z)mod(Pm(z))
によってユーザ信号を再生する手段と
を備えた前記移動局用受信装置。 - 前記ユーザ信号を再生する手段は、
前記復調手段により復調して得られた波形を時間間隔Tでサンプルし、ベースバンド信号Y(z)に対する信号系列y(n), n=0,1,…,MK−1,に変換し、
P m (z)=1−e j2πm/M z −K
として、次式の右辺の括弧内の式に基づき、
時間間隔KTごとにM個のサンプル値に拡散された各サンプル値y(k+nK), k=0,1,…,K−1,につき、y(k)の値と、y(k+nK)にe j2πmn/M , n=1,…,M−1,をそれぞれ掛け算したM−1個の値とを求め、これらM個の値の総和をとることで、受信信号のサンプル値y m (k) ,k=0,1,…,K−1,を求めてユーザmが送信した各サンプル値を再生する
請求項2に記載の移動局用受信装置。 - 請求項1に記載の移動局用送信装置と、
請求項2又は3に記載の移動局用受信装置と
を備えた移動局用送受信装置。 - 移動通信でユーザの移動局から基地局へ信号を伝える上り方向の通信のための移動局用送信側の伝送方法において、
各ユーザm(m=0,1,…,M−1)がK個のサンプル値x m (n), n=0,1,…,K−1,を送るとき、各ユーザmが送信すべきユーザ信号X m (z)(ここで、X m (z)は、x m (n)のz−変換)について、
P m (z)=1−e j2πm/M z −K , m=0,1,…,M−1,
及び
剰余多項式 U m (z)≡Q m (z)X m (z)mod(P(z))
(ここで、P(z)は、P m (z), m=0,1,…,M−1,の積)
に基づきベースバンド送信信号U m (z)を計算することと、
計算されたベースバンド送信信号U m (z)を周波数帯域の制限されたアナログ信号に変換する低域通過フィルタを行うこと、
変換されたアナログ信号を変調して送信すること
を含み、
前記ベースバンド送信信号U m (z)を計算することは、
前記剰余多項式による次式(11)に基づき、
前記移動局用送信側の伝送方法。 - 移動通信で基地局からユーザの移動局へ信号を伝える下り方向の通信のための移動局用受信側の伝送方法において、
請求項1に記載の移動局用送信側の伝送方法によりユーザmの各サンプル値x m (k)が変換された送信信号を受信し、ベースバンド信号Y(z)を得る復調すること、
得られたベースバンド信号Y(z)から、
Y m (z)≡Y(z)mod(P m (z))
によってユーザ信号を再生することと
を含む前記移動局用受信側の伝送方法。 - 前記ユーザ信号を再生することは、
前記復調手段により復調して得られた波形を時間間隔Tでサンプルし、ベースバンド信号Y(z)に対する信号系列y(n), n=0,1,…,MK−1,に変換し、
P m (z)=1−e j2πm/M z −K
として、次式の右辺の括弧内の式に基づき、
時間間隔KTごとにM個のサンプル値に拡散された各サンプル値y(k+nK), k=0,1,…,K−1,につき、y(k)の値と、y(k+nK)にe j2πmn/M , n=1,…,M−1,をそれぞれ掛け算したM−1個の値とを求め、これらM個の値の総和をとることで、受信信号のサンプル値y m (k) ,k=0,1,…,K−1,を求めてユーザmが送信した各サンプル値を再生する
請求項6に記載の移動局用受信側の伝送方法。 - 請求項5に記載の移動局用送信側の伝送方法と、
請求項6又は7に記載の移動局用受信側の伝送方法と
を含む移動局用伝送方法。
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