JP3655445B2 - 光半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、レーザーや双安定素子など様々な光半導体装置の高性能化および新規開発の要求が高まっているが、以下に示すようにそれぞれ問題がある。
例えば、ディスプレイや次世代DVDでの応用を目指した青色光源の開発が盛んに行なわれている。特に、GaN系半導体は紫外光までの短波長化が可能であるため、注目されている。しかし、この材料系では電子の有効質量が大きく、反転分布が生じにくいため、従来の材料系に比べて本質的にしきい値が高いという欠点がある。このため、青色レーザーの実用化は遅れている。
【0003】
半導体レーザーの高性能化が期待できる技術として、従来から利用されているバンド間遷移ではなく、伝導帯中でのサブバンド間遷移を用いる半導体レーザーが注目を集めている。しかし、この素子構造ではLOフォノンによるキャリヤーの緩和が非常に速い速度で起きるため、反転分布が生じにくい。このため、サブバンド間遷移レーザーの実用化は遅れている。
【0004】
伝送情報量の大容量化に伴い、情報処理用の各種光デバイスの開発が盛んである。特に双安定素子などの光演算素子の開発が重要であるが、従来は特性の優れた双安定素子は実現していなかった。
【0005】
光通信においては、マルチモード光ファイバーを用いた直接強度変調方式が主流であったが、最近ではシングルモード光ファイバーを用いたコヒーレント光伝送が盛んに研究されている。コヒーレント光伝送では直接強度変調方式に代わり、周波数変調方式(FSK)または位相変調方式(PSK)が適用される。これらの変調方式のうち最も良好なS/N比を示すのはPSKであることが知られている。しかし、一般にレーザー光の位相制御に用いられる磁気光学素子、液晶または電気光学素子は、スイッチング速度が遅い。このため、広帯域バンド幅をもった位相変調方式の通信システムを実用化することは困難である。この観点から、高速なスイッチング速度で直線偏光や円偏光を得ることが必要になる。
【0006】
光通信以外の分野でも、直線偏光や円偏光が利用されるようになってきている。例えば、走査型トンネル顕微鏡(STM)にGaAs探針を用い、このGaAs探針に円偏光を照射して、ある特定の方向にスピンを持った伝導電子をポンピングし、物質のスピン状態を調べる方法が提案されている。この他にも、スピン偏極電子を利用する半導体デバイスがさかんに提案されている。こうした半導体中へのスピン・ポンピングのための光源としても、円偏光レーザーが注目されている。
【0007】
以上のように円偏光レーザーおよび直線偏光レーザーの重要性が増大している。しかし、従来はいったん無偏光レーザー光を発生させた後、これをポッケルスセルを通したりフィルターを通すことにより偏光を得ていた。このため、装置構成が大型になり、さらに偏光方向を変調しようとするとデバイスが複雑かつ大型になるという問題があった。したがって、装置の小型化およびコスト低減が困難であった。
【0008】
これに対して、ヘテロ接合を形成する半導体層に、磁性体層を通してスピン偏極電子を注入し、スピン偏極キャリヤーを再結合させて円偏光を発振する光半導体装置が提案されている(国際公開WO95/00975)。この装置では、外部磁場による磁性体の磁化反転によって円偏光を変調している。しかし、磁性体における磁化反転は外部磁場に対して迅速に応答しないため、円偏光の高速な変調は困難である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、反転分布を生じやすくすることにより低しきい値でのレーザー発振が得られるGaN系半導体レーザーを提供することにある。本発明の他の目的は、特性の優れた光双安定素子を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、構成が単純で小型化が可能であり、しかも位相変調方式の光通信に適用できる高速な円偏光スイッチング特性を示す半導体レーザーを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の光半導体装置は、半導体活性層がp型半導体クラッド層とn型半導体クラッド層とで挟まれた構造を有し、p型半導体クラッド層側にp型コンタクト層が、n型半導体クラッド層側にn型コンタクト層がそれぞれ形成されており、前記半導体活性層は少なくとも1つのGaN層を含む引っ張り歪み量子井戸層からなり、少なくとも一方のコンタクト層に接合する強磁性層が形成されている。この構造では、キャリヤーの反転分布状態が生じやすくなり、レーザー発振のしきい値が低いGaN系半導体レーザーを実現できる。
【0011】
本発明の他の光半導体装置は、半導体活性層が同一導電型を有する2つの半導体クラッド層で挟まれたサブバンド間遷移構造を有し、2つの半導体クラッド層側にそれぞれコンタクト層が形成されており、少なくとも一方のコンタクト層に接合する強磁性層が形成されている。この構造でも、キャリヤーの反転分布状態が生じやすくなり、レーザー発振のしきい値が低いサブバンド間遷移レーザーを実現できる。
【0012】
本発明の他の光半導体装置は、半導体活性層を2つのクラッド層で挟み、共振器を設けた構造を有するものであって、前記半導体活性層に円偏光のポンプ光を入射する手段が設けられている。この構造では、高性能の光双安定素子を提供できる。
【0013】
本発明のさらに他の光半導体装置は、半導体活性層がp型半導体クラッド層とn型半導体クラッド層とで挟まれた構造を有し、p型半導体クラッド層側にp型コンタクト層が、n型半導体クラッド層側にn型コンタクト層がそれぞれ形成されており、p型コンタクト層に接合する2つ以上の強磁性層と、n型コンタクト層に接合する2つ以上の強磁性層とを有する。この光半導体装置では、p型コンタクト層に接合する強磁性層およびn型コンタクト層に接合する強磁性層をそれぞれ2つずつ設け、上下で対向して対をなす強磁性層の磁化の向きを平行にし、隣接する強磁性層の磁化の向きを互いに反転させることが好ましい。この構造では、高速な円偏光スイッチング特性を示す半導体レーザーを提供できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の光半導体装置の原理を説明する。
本発明の第1の実施形態に係るGaN層を含む半導体レーザーは、半導体活性層がp型半導体クラッド層とn型半導体クラッド層とで挟まれた構造を有し、p型半導体クラッド層側にp型コンタクト層が、n型半導体クラッド層側にn型コンタクト層がそれぞれ形成されており、少なくとも一方のコンタクト層に接合する強磁性層が形成されている。なお、本発明でいうコンタクト層は半導体基板である場合もあるし、クラッド層がコンタクト層を兼ねている場合もある。
【0015】
上記のように半導体層に接合する強磁性層を設け、強磁性層を通して半導体層へキャリヤーを注入すると、キャリヤーのスピンの向きが揃えられることが知られている。図1(A)および1(B)にそれぞれ、スピン制御された本発明の半導体レーザおよび従来の半導体レーザーに注入されたキャリヤーのスピンの向きを示す。
【0016】
図1(B)に示すように、従来の半導体レーザーでは注入されたキャリヤーのスピンの向きがばらばらであるため、1つの状態にアップとダウンの2つのキャリヤーが入る。一方、図1(A)に示すように、本発明の半導体レーザーではスピンの向きが揃っているので、パウリの排他律にしたがって、より高いエネルギーの状態にキャリヤーが詰まっていく。このため、フェルミ準位が変化しやすくなる。このことは、伝導帯と価電子帯のそれぞれに当てはまる。ただし、どちらか一方のフェルミ準位の変化が大きければ、反転分布が生じやすくなる。したがって、強磁性層はp型およびn型のいずれかのコンタクト層に接合して設ければ十分な効果が得られる。例えば、基板と反対側の、活性層上にエピタキシャル成長させたクラッド層側のコンタクト層上に強磁性層を設ければよい。
【0017】
図2にキャリヤー注入密度に対するフェルミ準位の変化のしやすさを、従来技術と本発明とで比較した結果を示す。この図では、縦軸が0になるキャリヤー密度で発振が得られるようにプロットしている。この図から、本発明では従来の半分のキャリヤー密度で発振に至ることがわかる。したがって、本発明の構成により、従来は反転分布を生じさせることが困難であったGaN系半導体を用いても、発振しきい値の低い高性能な半導体レーザーが得られる。
【0018】
この発光は、通常、円偏光成分を含む。ただし、スラブ型または横長の矩形形の光導波路ではTE直線偏光またはTM直線偏光の伝播モードが安定であるため、円偏光成分は少ないほうが望ましい。そこで、本発明では活性層に引っ張り歪み量子井戸構造を用いることが有効となる。通常の活性層ではヘビーホール発光が支配的であるのに対し、引っ張り歪み量子井戸構造の活性層では歪みが導入されたことによりライトホール発光が支配的になる。ライトホール発光では、一般にTM直線偏光成分が増加する。さらに、活性層に対して両側のコンタクト層にそれぞれ強磁性層を接合して電子および正孔の両方のスピンを制御した場合には、完全なTM直線偏光が得られる。このため発光した光は光導波路を安定に導波する。したがって、さらに低しきい値での発振が可能となる。
【0019】
本発明の第2の実施形態は、量子井戸構造の半導体活性層が同一導電型を有する2つの半導体クラッド層で挟まれたサブバンド間遷移構造を有し、2つの半導体クラッド層側にそれぞれコンタクト層が形成されており、少なくとも一方のコンタクト層に接合する強磁性層が形成された、サブバンド間遷移レーザーである。
【0020】
図3にサブバンド間遷移レーザーのバンド構造図を示す。図3に示すように、伝導帯中に複数の量子準位が形成されており、このうちエネルギー的に高い準位にキャリヤーを注入する。本発明では強磁性層を通して半導体層へ注入されたキャリヤーのスピンの向きが揃えられ、より高い準位にキャリヤーが多くたまるため、発振しやすくなる。このため、発振しきい値の低い高性能なサブバンド間遷移半導体レーザーが得られる。
【0021】
以上で説明した半導体レーザーから発光する光は、直線偏光または円偏光となる。ただし、用途によっては、等方的なレーザー光が望ましい場合もある。等方的なレーザー光を得るには、互いに反平行に磁化した2つ以上の領域からなる強磁性層を設ければよい。例えば、コンタクト層に対して1つの強磁性層を設け、磁化の反平行ないくつかの磁区構造を形成してもよい。コンタクト層に対して2つ以上の強磁性層を設け、磁化が反平行になるように着磁してもよい。このとき、1つの磁区または強磁性層の大きさは、スピンの拡散長さよりも大きくすることが望ましい。
【0022】
本発明の第3の実施形態は、半導体活性層を2つのクラッド層で挟み、共振器を設け、円偏光のポンプ光を入射する手段を設けた光双安定素子である。この実施形態では、電気的にキャリヤーを注入する代わりに、円偏光の形でスピンの向きの揃ったキャリヤーを注入する。図4に、注入されたキャリヤー密度と誘導放出キャリヤー寿命との関係を示す。この図に示されるように、キャリヤー密度が低い発振前の状態では、キャリヤーの寿命はスピン緩和時間に比べて長い。このため、注入されたキャリヤーのスピンはばらばらになる。励起強度を増大させると、キャリヤー密度が高くなって発振に至る。そして、図4からもわかるように、いったん発振すると誘導放出の効果によりキャリヤーの実効的な寿命はピコ秒以下になる。
【0023】
本発明では、上記のような原理による光双安定素子を提供できる。図5(A)に本発明の素子における注入キャリヤー密度と光出力との関係、図5(B)に従来の素子におけるそれを示す。これらの図に示されるように、従来の素子および本発明の素子のいずれも注入キャリヤー密度がB点に達するまで発振しない。いったん発振すると誘導放出の効果によりキャリヤーの実効的な寿命は短くなる。そして本発明の素子では、注入キャリヤーを減少させても、スピンの向きが揃っている効果が顕著に現れ、注入キャリヤー密度が少なくともA点以上であれば発振を維持することができ、高い光出力を得ることができる。したがって、図5 (A)に示す光双安定状態を実現できる。なお、本発明における強磁性層を設けた素子においても、電流注入による双安定を実現できる。
【0024】
次に、本発明の第4の実施形態に係る半導体レーザーの原理についてより詳細に説明する。
金属強磁性体中においては電子のバンド構造がスピンアップ電子(スピン1/2)とスピンダウン電子(スピン−1/2)では異なるため伝導電子はスピン分極しており、スピンアップ電子とスピンダウン電子の状態密度は大きく異なっている。例えば、CoFe合金中では1/2スピンと−1/2スピンの電子数の比は約1:3であることが知られている。このため、半導体層に強磁性層を接合し、強磁性層を通して半導体中へ電子またはホールを注入すると、どちらか一方のスピンを持つ電子またはホールが大量に注入され、半導体層中の伝導電子、ホールにスピン分極状態を作り出すことができる。
【0025】
また、レーザーダイオードのように半導体中での電子とホールとの再結合現象を利用して発光させる場合、同じ方向のスピンを持った電子とホールとを再結合させると、円偏光を生じることが知られている。例えば、スピン1/2の電子とスピン1/2のホールとが再結合した場合には右円偏光σ+が生じ、スピン−1/2の電子とスピン−1/2のホールとが再結合した場合には左円偏光σ−が生じる。
【0026】
本発明の第4の実施形態の半導体レーザーでは、n型コンタクト層に接合する強磁性層と、p型コンタクト層に接合する強磁性層とを設け、一方の強磁性層を通してスピン分極した電子を注入するとともに、他方の強磁性層を通してスピン分極したホールを注入する。この場合、両方の強磁性層の磁化の向きを一方向に向けて平行とし、スピン1/2のスピン分極電子とスピン1/2のスピン分極ホールとを注入すると、再結合現象により右円偏光σ+が発生する。一方、両方の強磁性層の磁化の向きをそれぞれ反対向きに反転させ上記の場合と逆方向に向けて平行とし、スピン−1/2のスピン分極電子とスピン−1/2のスピン分極ホールとを注入すると、再結合現象により左円偏光σ−が発生する。
【0027】
本発明の第4の実施形態の半導体レーザーにおいては、n型コンタクト層に接合する強磁性層およびp型コンタクト層に接合する強磁性層をそれぞれ2つずつ設け、予め上下で対向して対をなす強磁性層の磁化の向きを平行とし、隣接する強磁性層の磁化の向きを互いに反転させた構成とすることが好ましい。このような構成では、2対の強磁性層のうちどちらを通して電子およびホールを注入するかによって円偏光の向きを制御できる。したがって、位相変調方式の光通信に適用できる高速な円偏光スイッチング特性を示す半導体レーザーを提供できる。なお、第4の実施形態の半導体レーザーでは、光の出射面にポーラライザーを設けることにより、直線偏光を得ることもできる。また、この実施形態では、半導体層の材料として直接遷移型のGaAs系、GaN系またはInP系の材料を用いることが好ましい。強磁性層の材料としては、Ni系、Fe系またはCo系の合金を用いると大きな円偏光度を得ることができるので好ましい。さらに、強磁性層にハーフメタルを用いると、非常に大きな円偏光度を得ることができるのでより好ましい。
【0028】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
実施例1
図6に本実施例における半導体レーザーの断面図を示す。図6において、サファイア基板101上に、アンドープGaN層102、n型GaNコンタクト層103、n型AlGaNクラッド層104、アンドープのGaN光ガイド層105、InGaN/InGaNからなる量子井戸層106、p型GaN光ガイド層107、p型AlGaNクラッド層108、p型GaNコンタクト層109が順次形成されている。量子井戸層106には1%の引っ張り歪みが導入されている。なお、10μm幅のメサ構造を形成して電流を狭窄するようにしている。また、p型GaNコンタクト層109上にはCoFe強磁性層110が形成されている。さらに、露出したn型GaNコンタクト層103上に電極111が、CoFe強磁性層110上に電極112がそれぞれ形成されている。
【0029】
この半導体レーザーのしきい電流密度は1.5kA/cm2 であり、強磁性層を持たない従来の半導体レーザーの3kA/cm2 に比べて格段に減少する。
図には示していないが、n型GaNコンタクト層103とn型AlGaNクラッド層104との間にもCoFe強磁性層を挿入した場合、しきい電流密度が1kA/cm2 まで低減する。
【0030】
実施例2
図7に本実施例におけるサブバンド間遷移型半導体レーザーの断面図を示す。図7において、n型InP基板201上に、n型InPクラッド層202、InGaAs/InGaAsP量子井戸層203、InGaAsP導波路層204、n型InPクラッド層205が順次形成されている。n型InPクラッド層205上にはn型コンタクト層206およびCoFe強磁性層207が形成されている。さらに、CoFe強磁性層207上には電極208が形成され、n型InP基板201の裏面には電極209が形成されている。
【0031】
この半導体レーザーは簡単な構成であるにもかかわらず、しきい電流密度5kA/cm2 で発振が得られる。従来は複雑な構造でなければ発振が得られなかった。このことから判断して、図7の半導体レーザーではしきい値を大幅に低減できていることがわかる。
【0032】
実施例3
図8に本実施例における光ポンプ双安定半導体レーザーの断面図を示す。この半導体レーザーは図6のものと同様な構造を有し、サファイア基板101上に、アンドープGaN層102、n型GaNコンタクト層103、n型AlGaNクラッド層104、アンドープのGaN光ガイド層105、InGaN/InGaNからなる量子井戸層106、p型GaN光ガイド層107、p型AlGaNクラッド層108、p型GaNコンタクト層109が順次形成されている。量子井戸層106には1%の引っ張り歪みが導入されている。なお、10μm幅のメサ構造を形成して発生したキャリヤーを狭窄するようにしている。ただし、コンタクト層に磁性体層や電極を形成していない点が図6とは異なる。
【0033】
このレーザーに、光源120から円偏光のポンプ光を入力すると、キャリヤー密度換算で3kA/cm2 に相当する光出力で発振が始まる。この時点で、ポンプ光の出力を低減していっても発振が維持され、キャリヤー密度換算で1kA/cm2 に相当する光出力以下になったときに発振が停止する。このように光双安定動作する。
【0034】
実施例4
図9に本実施例における半導体レーザーの断面図を示す。図9において、p+ 型AlGaAs基板11上に、p型AlGaAs層12、p型GaAs層13およびn型AlGaAs層14が順次形成され、ダブルヘテロ接合構造のレーザーダイオードが構成されている。また、p+ 型AlGaAs基板11の裏面にはCoFe層15a、15bおよび電極16a、16bが形成され、n型AlGaAs層14上にはCoFe層17a、17bおよび電極18a、18bが形成されている。
【0035】
この半導体レーザーを作製した後、磁界中処理により、上下で対をなすCoFe層15a、17aの磁化方向をともに右向きにし、CoFe層15b、17bの磁化方向をともに左向きにする。この状態で、電極18aから右向きに磁化したCoFe層17aを通してn型AlGaAs層14へスピン1/2の電子を、電極16aから右向きに磁化したCoFe層15aを通してp+ 型AlGaAs基板11へスピン1/2のホールをそれぞれ注入すると、p型GaAs層13において再結合が起こり、右円偏光が得られる。一方、電極18bから左向きに磁化したCoFe層17bを通してn型AlGaAs層14へスピン−1/2の電子を、電極16bから左向きに磁化したCoFe層15bを通してp+ 型AlGaAs基板11へスピン−1/2のホールをそれぞれ注入すると、p型GaAs層13において再結合が起こり、左円偏光が得られる。したがって、左右の電極対への電流の供給を切り替えることにより、高速なスイッチング特性が得られる。
【0036】
実施例5
図10に本実施例における半導体レーザーの断面図を示す。図10において、p+ 型AlGaAs基板21上には、多重量子井戸を形成するAl0.2 Ga0.8 As/GaAs層22、およびn型AlGaAs層23が積層され、多重量子井戸構造のレーザーダイオードが構成されている。p+ 型AlGaAs基板21の裏面には強磁性層であるPtMnSb層24a、24bおよび電極25a、25bが形成され、n型AlGaAs層23上には強磁性層であるPtMnSb層26a、26bおよび電極27a、27bが形成されている。この半導体レーザーは図10の右方向にレーザー光を出射するように加工されている。
【0037】
この半導体レーザーを作製した後、磁界中処理により、上下で対をなすPtMnSb層24a、26aの磁化方向をともに右向きにし、PtMnSb層24b、26bの磁化方向をともに左向きにする。この状態で、電極27aから右向きに磁化したPtMnSb層26aを通してn型AlGaAs層23へスピン1/2の電子を、電極25aから右向きに磁化したPtMnSb層24aを通してp+ 型AlGaAs基板21へスピン1/2のホールをそれぞれ注入すると、Al0.2 Ga0.8 As/GaAs層22において再結合が起こり、右円偏光が得られる。一方、電極27bから左向きに磁化したPtMnSb層26bを通してn型AlGaAs層23へスピン−1/2の電子を、電極25bから左向きに磁化したPtMnSb層24bを通してp+ 型AlGaAs基板21へスピン−1/2のホールをそれぞれ注入すると、Al0.2 Ga0.8 As/GaAs層22において再結合が起こり、左円偏光が得られる。したがって、左右の電極対への電流の供給を切り替えることにより、高速なスイッチング特性が得られる。
【0038】
なお、本発明を面発光レーザーに適用した場合にも、低しきい値特性が得られるだけでなく、安定な偏光動作が得られる。
実施例6
図11に本実施例における半導体レーザーの断面図を示す。図11において、n型GaN層301、n型AlGaNクラッド層302、アンドープのGaN光ガイド層303、InGaN/InGaNからなる量子井戸層304、p型GaN光ガイド層305、p型AlGaNクラッド層306、p型GaNコンタクト層307が順次形成されている。量子井戸層304には1%の引っ張り歪みが導入されている。n型GaN層301の裏面には磁区が形成された強磁性層308および電極309が形成されている。同様に、p型GaNコンタクト層307上には磁区が形成された強磁性層310および電極311が形成されている。
【0039】
強磁性体中に磁区構造を形成するには、強磁性体にNiFeのような軟磁性材料を用い、形状に起因する反磁界から自然に発生する磁区を用いてもよい。また、強磁性体としてCoPtのような高い保磁力を有する材料を用い、磁極により磁区を書き込んでもよい。また、強磁性体をいくつかに分割して、それぞれの強磁性体を異なる方向に着磁してもよい。
【0040】
この半導体レーザーのしきい値電流密度は1.5kA/cm2 であり、強磁性層を持たない従来の半導体レーザーの3kA/cm2 に比べて格段に低下する。また、実施例1と異なり、強磁性層に磁区構造を形成したことにより2つの偏光状態が混合されるので、非偏光レーザー光を発光することができる。
【0041】
なお、図11に示すように、強磁性層308、310に形成された各々の磁区は一体的に電極309、311に接続する。このとき、スピンの混合を抑制するために、各磁区の幅(図11の横方向の幅)は、スピン拡散長さよりも大きくすることが好ましい。
【0042】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、反転分布を生じやすくすることにより低しきい値でのレーザー発振が得られるGaN系半導体レーザーを提供することができる。また、特性の優れた光双安定素子を提供することができる。さらに、構成が単純で小型化が可能であり、しかも位相変調方式の光通信に適用できる高速な円偏光スイッチング特性を示す半導体レーザーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明および従来のの半導体レーザに注入されたキャリヤーのスピンの向きを示す説明図。
【図2】本発明および従来の半導体レーザについて、キャリヤー注入密度に対するフェルミ準位の変化量を示す図。
【図3】サブバンド間遷移レーザーのバンド構造を示す図。
【図4】キャリヤー密度と誘導放出キャリヤー寿命との関係を示す図。
【図5】本発明および従来の光双安定素子における注入キャリヤーと光出力との関係を示す図。
【図6】本発明の実施例1における半導体レーザーの断面図。
【図7】本発明の実施例2における半導体レーザーの断面図。
【図8】本発明の実施例3における光双安定素子の断面図。
【図9】本発明の実施例4における半導体レーザーの断面図。
【図10】本発明の実施例5における半導体レーザーの断面図。
【図11】本発明の実施例6における半導体レーザーの断面図。
【符号の説明】
101…サファイア基板
102…アンドープGaN層
103…n型GaNコンタクト層
104…n型AlGaNクラッド層
105…GaN光ガイド層
106…InGaN/InGaN量子井戸層
107…p型GaN光ガイド層
108…p型AlGaNクラッド層
109…p型GaNコンタクト層
110…CoFe強磁性層
111、112…電極
120…光源
201…n型InP基板
202…n型InPクラッド層
203…InGaAs/InGaAsP量子井戸層
204…InGaAsP導波路層
205…n型InPクラッド層
206…n型コンタクト層
207…CoFe強磁性層
208、209…電極
11…p+ 型AlGaAs基板
12…p型AlGaAs層
13…p型GaAs層
14…n型AlGaAs層
15a、15b、17a、17b…CoFe層
16a、16b、18a、18b…電極
21…p+ 型AlGaAs基板
22…Al0.2 Ga0.8 As/GaAs層
23…n型AlGaAs層
24a、24b、26a、26b…PtMnSb層
25a、25b、27a、27b…電極
301…n型GaN層
302…n型AlGaNクラッド層
303…GaN光ガイド層
304…InGaN/InGaN量子井戸層
305…p型GaN光ガイド層
306…p型AlGaNクラッド層
307…p型GaNコンタクト層
308、310…強磁性層
309、311…電極
Claims (3)
- 半導体活性層がp型半導体クラッド層とn型半導体クラッド層とで挟まれた構造を有し、p型半導体クラッド層側にp型コンタクト層が、n型半導体クラッド層側にn型コンタクト層がそれぞれ形成されており、p型コンタクト層に接合する2つ以上の強磁性層と、n型コンタクト層に接合する2つ以上の強磁性層とを有することを特徴とする光半導体装置。
- p型コンタクト層に接合する強磁性層およびn型コンタクト層に接合する強磁性層がそれぞれ2つずつ設けられ、上下で対向して対をなす強磁性層の磁化の向きが平行であり、隣接する強磁性層の磁化の向きが互いに反転していることを特徴とする請求項1記載の光半導体装置。
- 半導体層が、GaAs系、GaN系またはInP系の半導体からなることを特徴とする請求項1または2記載の光半導体装置。
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