JP3655213B2 - マスター情報担体、磁気ディスクの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マスター情報担体、磁気ディスクの製造方法、スパッタターゲットおよびマスター情報担体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一方のディスクをマスター情報担体としそれに記録されている情報を、他方のディスクを磁気記録媒体としてそれに磁気転写により面状に一括して記録させて、前記情報が記録された磁気ディスクを製造する方法が知られている。
【0003】
例えば、特開平10−40544号公報には、基体の表面に、情報に対応するパターン形状で強磁性材料からなる磁性部を形成してマスター情報担体とし、このマスター情報担体の表面を、強磁性薄膜が形成された磁気ディスクなどの磁気記録媒体の表面に接触させ、磁界印加により、マスター情報担体に形成した情報に対応するパターン形状の磁化パターンを磁気記録媒体に磁気転写する技術が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、マスター情報担体に設けられた前記情報に対応する配列パターンを、磁化パターンとして磁気記録媒体に磁気転写するにあたっては、磁気記録媒体全面に亘って均一に安定して高密度の情報が記録されることが重要である。
【0005】
ところが、本発明者が、情報が磁気転写された磁気ディスクを用いて磁気記録再生装置で情報に対する再生を行ったところ、その再生信号の品質が劣化したり、あるいは、磁気ディスク上の位置により再生信号が不安定に変化するなど、原因不明の現象が認められた。
【0006】
このような再生信号品質の劣化を生じたのでは、磁気記録再生装置のサーボトラッキングを行うことが、もはや困難となる場合がある。
【0007】
そのため、本発明者は、鋭意研究を進め、種々の実験と検討を繰り返し行った結果、上記現象は、以下の作用によるものであることを見出した。
【0008】
すなわち、マスター情報担体上の個々の強磁性薄膜パターンの周方向長さは、磁気転写された情報を磁気ヘッドを用いて再生した際の再生信号において、時間軸上で所定のパルス間隔を得るよう設計されている。ところが、磁気記録再生装置において磁気ディスクの回転速度は一定であるから、磁気ディスク上の一点における周速度は、その内周よりも外周の方が大きくなる。
【0009】
したがって、ある磁気転写された信号を磁気ヘッドで再生した際の信号波形において内周から外周に渡って一定のパルス間隔を得るためには、強磁性薄膜パターンの周方向長さを外周ほど長くすることが必要である。これに対して、強磁性薄膜の膜厚は、内周、外周に関わらず一定となっていた。
【0010】
そこで、本発明者が、マスター情報担体上に備えられた強磁性薄膜の飽和磁束密度に対して研究を加えた結果、磁気記録媒体に対して均一に安定して高密度の情報を磁気転写できるマスター情報担体およびこれを用いた磁気ディスクの製造方法の発明を完成できるに至った。
【0011】
【課題を解決するための手段】
(1)本発明のマスター情報担体は、磁気ディスクに対して情報を磁気転写するための転写面に対して前記情報に対応したパターンで強磁性薄膜からなる磁性部が設けられているマスター情報担体であって、
前記強磁性薄膜に関して前記磁気ディスクの外周側に対応する部分における飽和磁束密度が、内周側に対応する部分における飽和磁束密度よりも大きくされていることを特徴とする。
【0012】
本発明のマスター情報担体によると、磁気記録媒体を重ね合わせた状態で、そのディスク半径位置に関わらず一様な直流励磁磁界を印加した場合、磁気記録媒体の内周側で十分な磁化反転を得るとともに、磁気記録媒体の外周側では、マスター情報担体2の強磁性薄膜上の逆極性の漏れ磁束の発生を許容範囲以下に抑制して、磁気記録媒体のディスク半径位置に関わらず、当該磁気記録媒体に対して均一に安定して高密度の情報を良好に転写できる。
【0013】
本発明は、好ましくは、前記強磁性薄膜の周方向長さと膜厚との比率(=周方向長さ/膜厚)が外周になる程大きくなる。
【0014】
(2)本発明の磁気ディスクの製造方法第1は、前記(1)のマスター情報担体と、磁性膜が形成されている被転写面を有する磁気記録媒体とを転写状態に重ね合わせる工程と、前記重ね合わせ後、前記マスター情報担体に直流励磁磁界を印加して前記強磁性薄膜を励磁するとともに、前記強磁性薄膜間における漏れ磁束で前記磁気記録媒体の磁性膜を磁化する工程とを含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の磁気ディスクの製造方法第2は、磁性膜が形成されている被転写面を有する磁気記録媒体における前記磁性膜に対して直流消去磁界を印加して一定方向の磁化をもたせる工程と、前記(1)のマスター情報担体と、磁性膜が形成されている被転写面を有する磁気記録媒体とを転写状態に重ね合わせる工程と、前記重ね合わせ後、前記マスター情報担体に前記直流消去磁界と逆極性の直流励磁磁界を印加して前記強磁性薄膜を励磁するとともに、前記強磁性薄膜間における漏れ磁束で前記磁気記録媒体の磁性膜の磁化を反転させる工程とを含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の磁気ディスクの製造方法第1および第2によると、前記(1)のマスター情報担体を用いるから、磁気記録媒体に対して磁気記録媒体のディスク半径位置に関わらず均一に安定して高密度の情報を良好に転写できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細を図面に示される実施形態に基づいて説明する。
【0022】
図1に、本実施の形態における磁気転写装置の概要を示す。図1において、円盤状の磁気記録媒体は、中心孔1aを有するドーナツ円盤状の非磁性基板の表面を被転写面とし、その被転写面にCo等を主成分とする強磁性薄膜をスパッタリング法によって成膜することにより構成されている。
【0023】
2は、上記磁気記録媒体1の被転写面に接触するように重ね合わされて配置された円盤状のマスター情報担体で、このマスター情報担体2は、一般的には上記磁気記録媒体1より径が大きい形状で、その転写面には、磁気記録媒体1の被転写面に磁気転写すべき情報に対応した微細な配列パターン形状の強磁性薄膜からなる領域2aが設けられている。
【0024】
3は、磁気記録媒体1を保持するディスク保持体であり、このディスク保持体3の先端部には磁気記録媒体1を位置決め保持する保持部3aが設けられている。また、ディスク保持体3内部には、磁気記録媒体の中心孔1aに連通しかつ一端が排気ダクト4に接続される吸引孔3bが設けられている。
【0025】
また、排気ダクト4の端部には排気装置5が装着されており、この排気装置5を始動させることにより、排気ダクト4、ディスク保持体3の吸引孔3bを通して、磁気記録媒体1とマスター情報担体2との間の空間が大気圧に対して負圧状態となり、この結果、マスター情報担体2が磁気記録媒体1の方向に吸引され、マスター情報担体2に磁気記録媒体1が位置決めされた状態で互いの転写面と被転写面とが重ね合わされる。この場合、マスター情報担体2の転写面には領域2aを除く領域において若干の隙間溝を形成し、その隙間溝を通して、磁気記録媒体1とマスター情報担体2との間の空気を吸引することもできる。
【0026】
着磁用ヘッド6は、マスター情報担体2から磁気記録媒体1に磁気転写による記録をするためのもので、この着磁用ヘッド6から印加される磁界によりマスター情報担体2に形成された情報に対応した強磁性薄膜パターンが磁化され、これらから発生する漏れ磁束によって磁気記録媒体に情報が記録される。
【0027】
この着磁用ヘッド6は、例えば図2に示すように、巻線6aを具備した強磁性材料からなる磁気コア半体6bと、同じく強磁性材料からなる磁気コア半体6cとを対向させて、ギャップ6dを有する環状の磁気回路を形成したものであり、巻線6aに励磁電流を印加することによって、ギャップ6dには、矢印LFで示すように磁気コア半体6bから磁気コア半体6cに向かう漏れ磁束が発生し、また印加する電流の向きを変えることによってギャップ6dに発生する漏れ磁束の向きを変えることができる。
【0028】
矢印IFは、図2に示す向きの漏れ磁束LFが発生している時に磁気コア半体6b、6cに発生する内部磁束の向きを示している。
また、図3に示すように、着磁用ヘッド6のギャップ6dの形状は、マスター情報担体2に対向する面において、記録再生用磁気ヘッドのトラッキング走査軌道と同じ円弧状になっている。従って、ギャップ6dに発生する磁界の方向は、トラッキング走査軌道と常に垂直となり、マスター情報担体2の強磁性薄膜は、全てのトラックにおいて、記録再生用磁気ヘッドのトラッキング走査方向と垂直な方向に磁化される。すなわち、記録再生用磁気ヘッドのヘッドギャップ長方向と同じ方向に磁化されるのである。
【0029】
次に、図4を参照してマスター情報担体2の一例について説明する。
【0030】
マスター情報担体2の転写面には、複数の領域2aが略放射状に形成されている。
【0031】
図4の一点鎖線で囲んだ部分の拡大図を、図5に模式的に示す。図5に示すように、領域2aには、磁気記録媒体に記録されるディジタル情報、例えばプリフォーマット記録に対応する位置に、上記情報に対応したパターン形状で強磁性薄膜からなる磁性部による情報パターンが形成されている。
【0032】
図5において、ハッチングを施した部分が強磁性薄膜によって構成された磁性部である。この図5に示す情報パターンは、クロック信号、トラッキング用サーボ信号、アドレス情報等の各々の領域をトラック長さ方向に順次配列したものである。なお、図5に示す情報パターンは一例であり、磁気記録媒体1に記録されるディジタル情報に応じて、情報パターンの構成や配置等を適宜決定することとなる。
【0033】
例えば、磁気ディスクドライブ装置において、磁気ディスクの磁性膜に、まずリファレンス信号を記録し、そのリファレンス信号に基づいてトラッキング用サーボ信号などのプリフォーマット記録を行う場合には、本発明によるマスター情報担体を用いて磁気ディスクの磁性膜に、あらかじめプリフォーマット記録に用いるリファレンス信号のみを磁気転写し、そしてその磁気ディスクをドライブ装置の筐体内に組み込み、トラッキング用サーボ信号などのプリフォーマット記録は、磁気ディスクドライブ装置の磁気ヘッドを使用して行うようにしてもよい。この場合、最終的なプリフォーマット記録は、従来の方法と同様にドライブ装置内に搭載された磁気ヘッドによって行われる。しかしながら、高価な専用のサーボ記録装置を用いることなく、ドライブ装置自体が磁気転写されたリファレンス信号を参照して最終的なプリフォーマット記録を自己完結することができるので、最終的なプリフォーマット情報を直接磁気転写する場合と同様に、従来の方法に比べてコストメリットが大きい。
【0034】
図4、図5に示した領域の一部断面を図6に示す。
【0035】
図6に示すように、マスター情報担体2は、Si基板、ガラス基板、プラスチック基板などの非磁性材料からなる円盤状の基体10の転写面10bに、情報に対応する複数の微細な配列パターン形状で凹部10aを形成し、その基体10の凹部10aに磁性部である強磁性薄膜11を埋め込む形態で形成することにより構成されている。
【0036】
ここで、図1の磁気転写装置を用いて磁気記録媒体1とマスター情報担体2とを均一に密着させ良好な転写特性を得るためには、強磁性薄膜11の表面11aができる限り平坦で、かつ基体10の一主面10bに対して、突出した構成とすることが好ましい。
【0037】
強磁性薄膜11としては、硬質磁性材料、半硬質磁性材料、軟質磁性材料を問わず、多くの種類の磁性材料を用いることができ、磁気記録媒体にディジタル情報を磁気転写できるものであればよい。例えば、Fe、Co、Fe−Co合金などを用いることができる。なお、磁気記録媒体1の種類によらずに十分な記録磁界を発生させるためには、磁性材料の飽和磁束密度が大きいほどよい。特に、2000エルステッド(159kA/m)を超える高保磁力の磁気ディスクや磁性層の厚みの大きいフレキシブルな磁気ディスクに対しては、飽和磁束密度が0.8テスラ以下になると十分な記録を行うことができない場合があるので、一般的には、0.8テスラ以上、好ましくは1.0テスラ以上の飽和磁束密度を有する磁性材料が用いられる。
【0038】
また、強磁性薄膜11の厚さは、ビット長や磁気記録媒体1の飽和磁化や磁性層の膜厚によるが、例えばビット長約1μm、磁気記録媒体の飽和磁化約500emu/cc(500kA/m)、磁気記録媒体の磁性層の厚さが約20nmの場合では、50nm〜500nm程度あれば良い。
【0039】
ここで、このような磁気転写を良好に行うためには、マスター情報担体2に設けた強磁性薄膜としての軟質磁性薄膜もしくは半硬質磁性薄膜の配列パターン形状に基づき、これらを励磁して一様に磁化することが望ましく、また、磁気転写に先立って、磁気記録媒体1を一様に直流消去しておくことが望ましい。
【0040】
次に、磁気転写の手順について説明する。
【0041】
まず、図7に示すように、着磁用ヘッド6を磁気記録媒体1に近づけた状態で、磁気記録媒体1の中心軸を回転軸として磁気記録媒体と平行に回転させることにより、図8の矢印で示すように磁気記録媒体1を予め一方向に磁化する(初期磁化)。
【0042】
次に、図1に示すように、磁気記録媒体1にマスター情報担体2を位置決めして重ね合わせた状態で、排気装置5を始動させることにより、磁気記録媒体の中心孔1aを通してマスター情報担体2が吸引され、マスター情報担体2の転写面と磁気記録媒体1の被転写面とが均一に密着するように重ね合わされる。
【0043】
その後、図9に示すように、着磁用ヘッド6により印加される磁界が初期磁化とは逆極性となるようにし、かつディスク保持体3に保持されている磁気記録媒体1の中心を回転中心として、マスター情報担体2と平行に回転させることにより、マスター情報担体2に直流励磁磁界14を印加する。これにより、マスター情報担体2の強磁性薄膜11が磁化され、そしてマスター情報担体2に重ね合わせた磁気記録媒体1の所定の領域1bに、図10に示すように強磁性薄膜11による磁性部のパターン形状に対応した情報が記録される。なお、図10に示す矢印は、この時磁気記録媒体1の情報が記録される領域1b外において残留する磁化の方向を示している。
【0044】
図11には、情報記録時の磁化の様子を詳細に示している。図11に示すように、マスター情報担体2を磁気記録媒体1に密着させた状態で、マスター情報担体2に外部から磁界を印加して強磁性薄膜11を磁化することによって、磁気記録媒体1の強磁性薄膜からなる磁気記録層1cに情報を記録することができる。すなわち、非磁性の基体10に所定のパターン形状で強磁性薄膜11を形成して構成したマスター情報担体2を用いることにより、ディジタル情報を磁気記録媒体1に磁気的に磁気転写することができる。
【0045】
ここで、磁気転写方法について、図12を参照してより詳しく説明する。図12(a)は磁気記録媒体1の直流消去過程、同図(b)は磁気転写過程、および同図(c)は磁気記録媒体1の残留磁化状態を、それぞれ情報トラック長さ方向における断面で示している。
【0046】
この情報トラック長さ方向は、磁気記録媒体1およびマスター情報担体2の円周方向に一致する。
【0047】
図12(a)に示すように、磁気記録媒体1上の磁気記録層1cは、マスター情報担体2を用いた信号の磁気転写に先立って直流消去磁界12により、一定方向の磁化13を有するよう一様に直流消去される。
【0048】
次に、図12(b)に示すように、マスター情報担体2の転写面を磁気記録媒体1上の被転写面における磁気記録層1cの表面に密着させ、直流励磁磁界14によってマスター情報担体2の強磁性薄膜11を励磁する。
【0049】
この際、直流励磁磁界14の極性は、直流消去磁界12と逆極性とする。これにより、強磁性薄膜11間の部分においてのみ、漏れ磁束15により磁気記録媒体1上の磁化13が反転される。この結果、マスター情報担体2を取り除いた後、磁気記録媒体1上にはマスター情報担体2上に形成された強磁性薄膜11の配列パターン形状に対応する磁化13のパターンを記録することができる。
【0050】
以上の磁気転写においては、マスター情報担体2に、磁気記録媒体1に記録させるべき所定のディジタル情報信号に対応する配列パターン形状で、強磁性薄膜11からなる磁性部をあらかじめ形成しておき、そのマスター情報担体2に磁気記録媒体1を接触させ、マスター情報担体2に形成された配列パターン形状を磁化パターンとして転写記録する。
【0051】
このような磁気転写の場合、マスター情報担体2に形成した磁性部の配列パターンを、対応する磁化パターンとして磁気記録媒体1に信頼性良く正確に転写することが重要である。
【0052】
ところで、マスター情報担体2上の個々の強磁性薄膜11のディスク周方向における長さは、転写記録された情報を磁気ヘッドを用いて再生した際の再生信号において、時間軸上で所定のパルス間隔を得るよう設計されている。一方、ディスクドライブ装置において転写記録された磁気ディスクの回転速度は一定であるから、磁気ディスク上の一点における周速度は、その内周よりも外周の方が大きくなる。
【0053】
したがって、磁気ヘッドによる情報信号の再生波形において内周から外周に渡って一定のパルス間隔を得るため、個々の強磁性薄膜のディスク周方向における長さAは半径方向外周ほど大きくされている。これに対して、強磁性薄膜11はマスター情報担体2の内周、外周に関わらず一定の膜厚tとなっている。
【0054】
したがって、マスター情報担体2における強磁性薄膜11は、半径方向内周ほど長さAと膜厚tの比(A/t)が小さいつまり断面積が小さく、半径方向外周ほど長さAと膜厚tの比が大きいつまり断面積が大きくなる。
【0055】
このようなマスター情報担体2に対して一様な直流励磁磁界14を印加した場合、磁気特性がその内外周の全面において一様な磁気記録媒体1への転写特性は、当該磁気記録媒体1の半径方向に依存して異なってくる。
【0056】
以上の知見に基づき、本実施の形態は、マスター情報担体2上に備えられた強磁性薄膜11の飽和磁束密度を、磁気記録媒体1の外周側に対応する位置において内周側に対応する位置よりも大きくなるように構成したことに特徴を有する。
【0057】
本実施の形態では、マスター情報担体2を上記のように構成したことにより、マスター情報担体2のディスク半径位置に関わらず一様な直流励磁磁界14を印加した場合においても、磁気記録媒体1の内周側で十分な磁化反転を得るとともに、磁気記録媒体1の外周側では、マスター情報担体2の強磁性薄膜11上の逆極性の漏れ磁束15の発生を許容範囲以下に抑制して、磁気記録媒体1のディスク半径位置に関わらず良好な転写品質を得ることができる。
【0058】
このようなマスター情報担体2の転写面に対しての強磁性薄膜11の成膜について図13を参照して説明する。
【0059】
図13は、スパッタ法によって強磁性薄膜を成膜する際に用いられるスパッタターゲットの構成の一例を示す平面図である。
【0060】
このスパッタターゲット19は、円形の金属板18の上に一定の組成を有する第1強磁性層として円形の強磁性板16を設け、さらに強磁性板16の上に強磁性板16とは組成が異なりかつ高い飽和磁束密度を有する第2強磁性層として強磁性細片17を設けて構成されている。
【0061】
この場合、強磁性細片17は、磁気記録媒体1の外周側に対応する半径位置ほど、高い面密度で配列される。このようなターゲット19を用いてスパッタ成膜することにより、マスター情報担体2上の強磁性薄膜11の飽和磁束密度が磁気記録媒体1の外周側に対応する位置において内周側に対応する位置よりも大きい構成を容易に実現することが可能である。
【0062】
スパッタターゲット19において、強磁性板16の材料としてコバルト、強磁性細片17の材料として鉄がある。このスパッタターゲット19により、マスター情報担体2に成膜される強磁性薄膜11は、鉄−コバルトの合金膜となり、かつ、その外周側に対応する位置ほど鉄組成が多くなる。これによって、マスター情報担体2における内周側の飽和磁束密度を1.7テスラ、外周側の飽和磁束密度を2.1テスラとすることができる。
【0063】
一方、図13に示した構成とは逆に、図14で示すように、強磁性板16よりも低い飽和磁束密度を有する強磁性細片17を用い、この強磁性細片17を、磁気記録媒体の内周側に対応する半径位置ほど高い面密度で配列することによっても同様に、磁気記録媒体の外周側に対応する位置において内周側に対応する位置よりも飽和磁束密度が大きい構成を実現することができる。
【0064】
この場合、強磁性細片17は、強磁性材料が好ましいが、これに限定されるものではなく、非磁性の材料としても構わない。
【0065】
強磁性細片17は、強磁性板16上に並置する形態、接着固定する形態、埋設する形態、などその設置形態はなんでもよい。
【0066】
また、スパッタターゲットの他の例として半径方向において組成勾配を有する合金製のものでもよい。
【0067】
図15を参照して上記スパッタターゲット19を用いたスパッタ成膜装置20について説明する。
【0068】
真空容器21内には基板22とスパッタターゲット19とが対向して配されている。真空容器21内に導入管23を介してArなどの不活性ガスを導入して、スパッタターゲット19にRF(高周波)電圧を印加する。スパッタ成膜装置によってはDC電圧を用いるものもある。これにより、スパッタターゲット19と基板22との間にプラズマが放電する。これによって、発生したArイオンをスパッタターゲット19に衝突させることで原子がはじき飛ばされる。
【0069】
はじき飛ばされた原子は、基板22上に付着、堆積することによってスパッタターゲット19の組成に応じた薄膜が成膜される。ここで、酸素、窒素などの活性ガスをArに加えてスパッタ成膜することにより、酸化物薄膜や窒化物薄膜を形成することも可能である。
【0070】
なお、スパッタターゲット19の裏側に、永久磁石24が所定の配置で置かれている。これは、プラズマを適切な密度分布で閉じ込めるためにスパッタターゲット19の表面に磁束分布を与えるためのものである。これにより、スパッタ速度のスパッタターゲット19の面内分布を制御したり、プラズマをスパッタターゲット19の表面近傍に高密度に閉じ込めることによりスパッタ速度そのものを向上したりすることができる。
【0071】
25は、バッキングプレートであって、図13に示した18の金属プレート板18のことである。26は、冷却水配管、27は、整合器、28は、RF電源、29は、真空ポンプである。
【0072】
以上の構成を有するスパッタターゲット19を用いてマスター情報担体2に強磁性板16を成膜することで、強磁性薄膜11の飽和磁束密度が、外周側に対応する位置において内周側に対応する位置よりも大きなマスター情報担体2を得られる。
【0073】
そして、このようなマスター情報担体2を用いることにより、マスター情報担体2の周方向半径位置に関わらず一様な直流励磁磁界14を印加した場合においても、磁気記録媒体1の内周側で十分な磁化反転を得るとともに、磁気記録媒体1の外周側では強磁性薄膜11上の逆極性の漏れ磁束の発生を許容範囲以下に抑制して、磁気記録媒体1に対してその半径方向内外周に関わらず良好に情報信号を転写できる。
【0074】
なお、上述の実施形態では、、ディスクドライブ装置等に搭載されるハードな磁気ディスクに応用することに主眼をおいて記述を行ったが、本発明はこれに限られるものではなく、フレキシブル磁気ディスク、磁気カードおよび磁気テープ等の磁気記録媒体においても応用可能である。
【0075】
また、磁気記録媒体1に転写される情報信号に関しては、トラッキング用サーボ信号やアドレス情報信号、再生クロック信号等のプリフォーマット信号に主眼をおいて記述を行ったが、本発明の構成が応用可能な情報信号も、上記に限られたものではない。例えば、本発明の構成を用いて様々なデータ信号やオーディオ、ビデオ信号の記録を行うことも原理的に可能である。この場合には、本発明のマスター情報担体とこれを用いた磁気記録媒体への記録技術によって、ソフトディスク媒体の大量複写生産を行うことができる。
【0076】
以下に、本実施の形態による具体的な効果を説明する。
【0077】
飽和磁束密度が半径位置に依らず一定である従来構成のマスター情報担体と、飽和磁束密度が外周側ほど大きい本実施の形態のマスター情報担体を用いて、保磁力が3800エルステッドの3.5インチの磁気記録媒体上に周期信号の転写実験を行った。
【0078】
マスター情報担体上のパターンを形成する強磁性薄膜は、膜厚0.3ミクロンのFeCo膜とした。ここで、従来のマスター情報担体におけるFeCo膜の飽和磁束密度は、半径位置に依らず1.8テスラ一定とした。一方、本実施の形態のマスター情報担体のFeCo膜は、磁気記録媒体の内周側である半径20mm位置で1.8テスラ、磁気記録媒体の外周側である半径45mm位置で2.1テスラとし、その間の飽和磁束密度は半径位置に応じて内周から外周まで単調増加するようFeとCoの組成比を変化させる構成とした。また、転写記録した信号周期(波長)は、半径20mm位置で2.0ミクロン、半径45mm位置で4.5ミクロンとし、その間の信号波長は時間軸上で一定のパルス間隔を得るよう半径位置に比例して増加させた。なお、転写記録時にマスター情報担体に印加される直流励磁磁界は、ディスク内周側の転写信号品質に対して最適となるように設定した。
【0079】
転写記録された信号を磁気ヘッドで再生した際の信号S/Nを表1に示す。
ディスク内周側では、従来と本実施の形態におけるS/N値はほぼ同等である。しかし、従来の場合、外周側で大きくS/Nが劣化していることが分かる。これは、ディスク内周側において最適化された直流励磁磁界が、ディスク外周側に対しては大きすぎるためにFeCo膜の飽和を生じたものである。
【0080】
本実施の形態の場合、外周側でのS/N劣化はほとんどない。
【0081】
【表1】
【0082】
【発明の効果】
以上のように本発明のマスター情報担体によれば、磁気記録媒体に対して均一に安定して高密度の情報を磁気転写できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による磁気記録媒体への磁気転写を実施するための磁気転写装置の一例の概要を示す断面図
【図2】着磁用ヘッドの概略を示す斜視図
【図3】着磁用ヘッドのマスター情報担体に対向する一主面を示す平面図
【図4】マスター情報担体の一例を示す平面図
【図5】マスター情報担体に形成される情報の配列パターンの一例を説明するための説明図
【図6】マスター情報担体の一例を示す断面図
【図7】磁気記録媒体に一方向磁界を印加している状況を示す斜視図
【図8】図7に示す工程により一方向に着磁された磁気記録媒体の状況を模式的に示す斜視図
【図9】磁気記録媒体に情報を磁気転写している状況を示す斜視図
【図10】図10に示す工程により情報が記録された磁気記録媒体の状況を模式的に示す斜視図
【図11】図9に示す工程により磁気記録媒体に情報を磁気転写した場合の磁化パターンの様子を説明するための説明図
【図12】マスター情報担体を用いたプリフォーマット記録の好ましい記録状態を示す模式図
【図13】本発明の実施形態に係るマスター情報担体の製造過程におけるスパッタターゲットの構成の一例を示す平面図
【図14】図13に対応しスパッタターゲットの他の例を示す平面図
【図15】スパッタ成膜装置の概略構成を示す図
【符号の説明】
1 磁気記録媒体
2 マスター情報担体
2a 信号領域
6 着磁用ヘッド
6a 巻線
6b 第1の磁気コア半体
6c 第2の磁気コア半体
6d ギャップ
6e 永久磁石
6f 永久磁石
10 基体
11 強磁性薄膜
16 強磁性板
17 強磁性細片17
18 金属板
Claims (4)
- 磁気ディスクに対して情報を磁気転写するための転写面に対して前記情報に対応したパターンで強磁性薄膜からなる磁性部が設けられているマスター情報担体であって、
前記強磁性薄膜に関して前記磁気ディスクの外周側に対応する部分における飽和磁束密度が、内周側に対応する部分における飽和磁束密度よりも大きくされている、ことを特徴とするマスター情報担体。 - 請求項1に記載のマスター情報担体において、
前記強磁性薄膜の前記磁気ディスク周方向における長さと膜厚との比率(=周方向長さ/膜厚)が前記磁気ディスク外周になるほど大きく構成されている、ことを特徴とするマスター情報担体。 - 請求項1または2に記載のマスター情報担体と、磁性膜が形成されている被転写面を有する磁気記録媒体とを転写状態に重ね合わせる工程と、
前記重ね合わせ後、前記マスター情報担体に直流励磁磁界を印加して前記強磁性薄膜を励磁するとともに、前記強磁性薄膜間における漏れ磁束で前記磁気記録媒体の磁性膜を磁化する工程と、
を含むことを特徴とする磁気ディスクの製造方法。 - 磁性膜が形成されている被転写面を有する磁気記録媒体における前記磁性膜に対して直流消去磁界を印加して一定方向の磁化、をもたせる工程と、
請求項1または2に記載のマスター情報担体と、磁性膜が形成されている被転写面を有する磁気記録媒体とを転写状態に重ね合わせる工程と、
前記重ね合わせた後、前記マスター情報担体に前記直流消去磁界と逆極性の直流励磁磁界を印加して前記強磁性薄膜を励磁するとともに、前記強磁性薄膜間における漏れ磁束で前記磁気記録媒体の磁性膜の磁化を反転させる工程と、
を含むことを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
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