JP3654720B2 - ポリプロピレン積層フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリプロピレン積層フィルムに関し、詳しくは製膜性、透明性、柔軟性、アンチブロッキング性が良好なフィルムであり、製膜後、良好な経時の帯電防止性を有し、かつ、コロナ放電処理後の臭気も良好で、特に、繊維包装用途で好適に利用できるポリプロピレン積層フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、柔軟性、帯電防止性を要する用途には、塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが使用されている。特に繊維包装フィルム分野では、ビニロンフィルムが多く使用されている。しかし、ビニロンフィルムは、湿度の影響を大きく受け、例えば梅雨時には柔らかくなり過ぎ、冬場では硬くなるといったように季節によってフィルム物性が大幅に変動すること、さらには高価なことなどの欠点がある。それにより現在市場では、比較的安価でしかも季節的な影響をほとんど受けず、透明性、柔軟性、アンチブロッキング性、帯電防止性、臭気のバランスが良好であるポリオレフィンフィルムが求められ開発が盛んに行われている。
【0003】
一般にアイソタクチックポリプロピレンは、比較的安価で剛性、耐熱性、成形品の外観及び成形性に優れていることから広汎な用途に使用されている。例えば、フィルム分野においても食品包装や繊維、薬液、日用雑貨、紙製品、レジ袋等の非食品包装に広く使用され、特に、フィルムの透明性、柔軟性が重要視される繊維包装の分野においては、プロピレン−エチレンランダム共重合体フィルムが好ましく用いられ、エチレンを6wt%以上共重合したエチレン−プロピレン共重合体やプロピレン−ブテン−1ランダム共重合体(特開昭53−79984号、同54−85293号、同60−152516号)が提案されている。また、他の方法として結晶性ポリプロピレンとエチレン−プロピレン共重合体ゴムよりなる組成物が用いられている。
【0004】
一方、シンジオタクチックポリプロピレンについては、古くよりその存在は知られていたが、従来のバナジウム化合物とエーテル及び有機アルミニウムからなる触媒で低温重合する方法はシンジオタクティシティーが悪く、シンジオタクチックなポリプロピレンの特徴を表わしているとは言い難いものであった。
【0005】
これに対して、J.A.EWENらにより非対称な配位子を有する遷移金属触媒成分とアルミノキサンからなる触媒によってシンジオタクチックペンタッド分率が0.7を越えるようなタクティシティーの良好なポリプロピレンも得られることが発見された(J,Am.Chem.Soc.,1988,110,6255-6256) 。
【0006】
このシンジオタクチックポリプロピレンよりなる透明性に優れた押出しシート、フィルム及びインフレーションフィルムも提案され(特開平3−81128号公報、同3−81130号)、透明性、柔軟性に優れたポリプロピレンとしてその用途が期待されている。
【0007】
また、一般にポリプロピレン樹脂組成物の押出フィルムは、フィルム同士の密着いわゆるブロッキングが起こり易い。その改良方法としては、アンチブロッキング剤としてゼオライト、シリカ等の無機粒子を添加する方法が公知である。また、ポリプロピレン樹脂組成物の押出フィルムは電気絶縁抵抗が大きく、そのため摩擦により静電気が発生し蓄積しやすく、ほこり等の付着が問題となる。その改良方法として、帯電防止剤としてグリセリン脂肪酸エステルやアミン、アミド等を成形加工時に添加することも公知である。
【0008】
さらに、通常のポリプロピレン樹脂組成物は無極性プラスチックであり、印刷の際の印刷インキとの親和性を向上させるため、コロナ放電処理を行うことも公知である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の方法で得られたシンジオタクティックポリプロピレンをT−ダイ押出成形法、チューブラー押出成形法により成形加工して得られるフィルムは、アイソタクチックポリプロピレンから得られるフィルムに比べ、製膜時に冷却ロール及び巻取りロールにフィルムが粘着したり、巻き取られたフィルム同志がくっついて剥れ難くなったりするため実用的な成形速度でフィルム成形をすることが困難であるという問題があった。
【0010】
成形性の改良のため、種々の核剤を添加したり(特開平3−54238号)、また、製膜性改良のためアイソタクティックポリプロピレンとシンジオタクティックポリプロピレンを2層に積層する検討(特開平5−200957)がなされているが、製膜性、耐熱性の点で不十分であった。
【0011】
本発明の課題は、上記問題点を解決し、比較的安価でなお且つ製膜性、透明性、柔軟性、アンチブロッキング性の良好なフィルムであり、製膜後、良好な経時の帯電防止性を有し、かつ、コロナ放電処理後の臭気も良好で、特に、繊維包装用途で好適なポリプロピレン積層フィルムを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、シンジオタクティックポリプロピレンとエチレン−オクテン共重合体、帯電防止剤よりなる基材層の両表面にアイソタクティックポリプロピレンと球形の無機不活性粒子からなる層を積層することにより比較的安価でなお且つ製膜性、透明性、柔軟性、アンチブロッキング性が良好で、かつ、コロナ放電処理後の臭気も良好なフィルムとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は、シンジオタクティックペンタッド分率が0.6以上であるプロピレンの単独重合体あるいはプロピレンと少量の他のオレフィンとの共重合体である結晶性ポリプロピレン100重量部とエチレン−オクテン共重合体25〜100重量部、帯電防止剤0.05〜0.5重量部からなるポリプロピレン樹脂組成物(A)を基材層とし、両表面にアイソタクティックポリプロピレン100重量部と平均粒子径1〜10μの球形の無機不活性粒子0.4〜1.5重量部からなるポリプロピレン樹脂組成物を積層してなるポリプロピレン積層フィルムであって、全体層の厚みに対して基材層の厚みが50〜95%である繊維包装用ポリプロピレン積層フィルムである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明において結晶性ポリプロピレンとしては、13C−NMRで測定したシンジオタクティックペンタッド分率が0.60以上の高立体規則性のものが好ましく利用できる。また、アイソタクティックポリプロピレンとシンジオタクティックポリプロピレンの混合物であってもよい。その場合、好ましい結晶性ポリプロピレンとしては、シンジオタクティックポリプロピレンまたはシンジオタクティックポリプロピレンの共重合体、あるいは、それらのポリマー100重量部に対し0〜200重量部のアイソタクティックポリプロピレンまたはアイソタクティックなポリプロピレンの共重合体を混合したものが例示される。
【0015】
また、結晶性ポリプロピレンとしては、シンジオタクティックポリプロピレン構造のプロピレン単独重合体のみならず、プロピレンとエチレンまたは炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合体も利用できる。共重合体中の他のオレフィンとしてのエチレンまたは炭素数4以上のα−オレフィンの含量としては6重量部以下のものが好ましく利用される。
【0016】
シンジオタクティックポリプロピレンまたは共重合体を製造するに用いる触媒としては、前述の文献に記載された化合物の他に特開平2−41303号公報、特開平2−41305号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平4−69394号公報に記載されているような互いに非対称な配位子を有する架橋型遷移金属化合物、およびアルミノキサン或いは有機金属と安定アニオンとなり得る化合物からなる助触媒からなるような触媒を挙げることができるが、異なる構造の触媒であっても13C−NMRによって測定されるシンジオタクティックペンタッド分率が0.6以上のポリプロピレンを製造できるものであれば利用できる。
【0017】
遷移金属触媒に対するアルミノキサンの使用割合としては10〜1000000モル倍、通常50〜5000モル倍である。
【0018】
また重合条件については特に制限はなく不活性媒体を用いる溶媒重合法、あるいは実質的に不活性媒体の存在しない塊状重合法、気相重合法も利用できる。重合温度としては−100〜200℃、重合圧力としては常圧〜100kg/cm2 −Gで行うのが一般的である。好ましくは0〜100℃、常圧〜50kg/cm2 −Gである。
【0019】
これら結晶性ポリプロピレンの分子量としては230℃で測定したメルトフローインデックス(以下、MIと略す。)が0.01〜100g/10min、好ましくは0.05〜50g/10minの範囲の比較的分子量の高いものを利用すると押出成形物の物性の点で好ましい。
【0020】
本発明におけるエチレン−オクテン共重合体としては、エチレンとオクテンを共重合して得られた共重合体が利用でき、好ましくは、オクテンの含有率が15〜40wt%である。
【0021】
本発明におけるエチレン−オクテン共重合体の分子量としては、230℃で測定したMIが0.05〜70g/10minのものが好ましく、さらに好ましくは0.5〜30g/10minである。また、その密度としては0.81〜0.96g/cm3 のものが好ましく、さらに好ましくは0.85〜0.93g/cm3 である。
【0022】
本発明におけるエチレン−オクテン共重合体を製造する触媒としては、US5,278,272号公報に記載されているようなメタロセンを主成分としたものが利用できる。
【0023】
本発明におけるエチレン−オクテン共重合体のシンジオタクティックポリプロピレンを主成分とする結晶性ポリプロピレン100重量部に対しての添加割合は25〜100重量部であり、好ましくは35〜90重量部、さらに好ましくは40〜80重量部である。エチレン−オクテン共重合体の添加量が100重量部を越えると透明性が悪化し、25重量部未満であると柔軟性の改良効果が不十分である。
【0024】
本発明における帯電防止剤としては一般にポリオレフィンフィルムに使用されるものが使用できる。例えば、(1)第一級アミン塩、第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、ピリジン誘導体等のカチオン系のもの、(2)硫酸化油、石ケン、硫酸化エステル油、硫酸化アミド油、オレフィンの硫酸エステル塩類、脂肪アルコール硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、脂肪酸エチルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、コハク酸エステルスルホン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン系のもの、(3)多価アルコールの部分的脂肪酸エステル、脂肪アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの部分的脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール等の非イオン系のもの、(4)カルボン酸誘導体、イミダゾリン誘導体等の両性系のものが一般に使用可能であるが、特に非イオン系、中でもポリオキシエチレンアルキルアミンまたはポリオキシエチレンアルキルアミドないしそれらの脂肪酸エステル、グリセリンの脂肪酸エステル等が好ましい。また、アミン系帯電防止剤あるいはアミド系帯電防止剤とグリセリン脂肪酸エステルを併用するとさらに好ましい。
【0025】
上記帯電防止剤の結晶性ポリプロピレン100重量部に対する添加割合としては0.05〜0.5重量部である。これより少ないと帯電防止性の改良効果がなく、多くても特により改良されるわけでなく、むしろアンチブロッキング性、冷却ロールへの付着、経時後のフィルムの透明性が失われ好ましくない。特に好ましいのは0.15〜0.40重量部である。
【0026】
本発明で使用されるポリプロピレン樹脂組成物(A)には、必要に応じて公知の添加剤、例えば滑剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐候安定剤、耐放射線剤、顔料、染料等を添加してもよい。
【0027】
本発明において表面層として使用されるアイソタクティックポリプロピレンとしては市場で入手できるような公知のプロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、及び結晶性エチレン−プロピレンランダム共重合体のいずれも使用できるが、そのうち、特に結晶性エチレン−プロピレンランダム共重合体、あるいはプロピレン単独共重合体を用いることにより透明性に優れたポリプロピレン積層体を得ることができ、これらの重合体は、種々の銘柄として市場で入手可能であるが、好ましくは、熱減成等により分子量分布を狭くしたアイソタクティックポリプロピレンや例えば特開昭61−130314号公報、特開平3−13406号公報等に記載されているような、いわゆるメタロセン化合物を主成分とする触媒を用いて製造されるアイソタクティックポリプロピレンが利用される。このようなポリプロピレンを用いると、フィルムの透明性や光沢が特に優れたポリプロピレン積層フィルムを得ることができる。
【0028】
本発明において球形の無機系不活性粒子はアンチブロッキング剤であり、平均粒子径は1〜10μmであり、例えば、シリカ、ゼオライト系の無機化合物粒子が好ましく利用できる。
【0029】
このようなものとしては、BET法で測定した比表面積が20m2 /g以下で、吸油量が50ml/100g以下のものが帯電防止剤の経時の浮き出しの点で好ましい。このような球形のアンチブロッキング剤を使用せず、不定形のものを使用すると、コロナ放電処理後の臭気は球形のものと変わらないが、透明性が不良となったり、スクラッチ性が悪化する。
【0030】
上記、球形の無機不活性粒子であるアンチブロッキング剤のアイソタクティックポリプロピレン100重量部に対する使用割合としては0.4〜1.5重量部である。これより少ないとブロッキングの改良効果が少なく、多くても特に改良されるわけでなく、むしろ透明性が失われ好ましくない。特に好ましいのは、0.5〜1.4重量部である。
【0031】
本発明で使用されるポリプロピレン樹脂組成物(B)には、必要に応じて公知の添加剤、例えばアンチブロッキング剤、帯電防止剤、滑剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐候安定剤、耐放射線剤、顔料、染料等を添加してもよい。
【0032】
上記ポリプロピレン樹脂組成物(A)、(B)を得る方法として、公知の任意の方法で均一分散させて得ることができる。例えば、押出溶融ブレンド法、バンバリーブレンド法などである。また、帯電防止剤および球形の無機不活性粒子においては、予め結晶性ポリプロピレン等との混合物として得たマスターバッチとして添加しても良い。
【0033】
本発明のポリプロピレン積層フィルムは、Tダイ法、またはチューブラー法などの公知のフィルムの製造法で得ることができ、積層の方法として以下が可能である。
【0034】
(1)シンジオタクティックポリプロピレンを含むポリプロピレン樹脂組成物(A)を基材層、アイソタクティックポリプロピレンを含むポリプロピレン樹脂組成物(B)を表面層として、ダイ内あるいはダイ外接着型の二種三層同時共押出しダイにより二種三層フィルムとし、必要であれば少なくとも一軸延伸もしくは二軸延伸する方法。
【0035】
(2)まず基材層であるシンジオタクティックポリプロピレンを含むポリプロピレン樹脂組成物(A)のフィルムの片側表面にアイソタクティックポリプロピレンを含むポリプロピレン樹脂組成物(B)を溶融状態で押出して積層し、さらに反対側表面にポリプロピレン樹脂組成物(B)を溶融状態で押出して積層し、二種三層フィルムとする方法。
【0036】
(3)基材層であるシンジオタクティックポリプロピレンを含むポリプロピレン樹脂組成物(A)のフィルムの両側表面にアイソタクティックポリプロピレンを含むポリプロピレン樹脂組成物(B)のフィルムを接着剤により積層し、二種三層フィルムとする方法。
【0037】
特に、(1)の方法は製膜時に冷却ロールや巻き取りロールにフィルムが粘着したり、巻き取られたフィルム同志がくっついて剥れ難くなったり、また、しわ取りロールによりロールマークが発生する問題を解決でき、成形性においても優れており好ましい。
【0038】
本発明の積層フィルムの厚みは、一般的なシートおよびフィルムの厚みの範囲であり、2〜0.001mmの範囲であるのが一般的であり、ポリプロピレン樹脂組成物(A)からなる基材層の厚みは、全体層の厚みに対して50%以上〜95%以下、好ましくは60%以上〜95%以下であり、さらに好ましくは70%以上〜95%以下である。
【0039】
全体層に対するポリプロピレン樹脂組成物(A)からなる基材層の厚みの割合が50%より小さいと、柔軟性の改良効果がない。
【0040】
全体層に対するポリプロピレン樹脂組成物(A)からなる基材層の厚みの割合の上限は、製膜後のアンチブロッキング性や製膜性、要求される柔軟性により決まるが、アンチブロッキング性や製膜性が失われない範囲であれば柔軟性の点で大きければ大きい程よいが、本発明においては95%以下である。具体的には、三層の積層フィルムにおけるアイソタクティックポリプロピレン層の厚みがトータルで3μm以上であれば、成形性、アンチブロッキング性の点で好ましい。
【0041】
本発明のポリプロピレン積層フィルムは、シンジオタクティックポリプロピレンに特定量のエチレン−オクテン共重合体、帯電防止剤を添加したポリプロピレン樹脂組成物(A)をある特定の厚みの中心層に用い、アイソタクティックポリプロピレンに特定形状の無機不活性粒子を添加したポリプロピレン樹脂組成物(B)を両表面に用いることにより、製膜性、透明性、柔軟性、アンチブロッキング性が良好であり、繊維包装用途として使用した時、製膜後から経時において良好な帯電防止性が得られ、かつ、コロナ放電処理後も臭気が良好であるという特徴を有する。また、好ましい態様として製造された場合は、ヤング率が50kg/cm2 以下、製膜して10日後の表面固有抵抗率が1×1012Ω以下であるような優れた特性を有する。また、フィルム表面での表面張力が42dyne/cm以上になるようにコロナ放電処理を行った後も臭気が良好である。
【0042】
本発明の積層フィルムは、特に、フィルムの透明性や柔軟性、帯電防止性が重要視される繊維包装に好適である。
【0043】
本発明の積層フィルムは、通常工業的に採用されているコロナ放電処理以外の火炎処理等の表面処理を施すこともできる。
【0044】
【実施例】
本発明をさらに詳細に説明するため、以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例において各測定項目は次の方法に基づいて測定した。
【0045】
(1)メルトフローインデックス:ASTM−D1238に準拠した。
(2)製膜性:製膜時、冷却ロールへの粘着、製膜後のブロッキング、後収縮がない場合には○、ある場合には×とした。
(3)ヘイズ:ASTM−D1003に準拠した。
(4)視覚透明性:東洋精機(株)製LIGHT SCATTERING METERを使用し、LS値(狭角透過値)を測定した。
(5)表面光沢:ASTM−D523−62Tに準拠した。
(6)ヤング率:ASTM−D882に準拠した。
(7)降伏点応力(YS):ASTM−D882に準拠した。
(8)帯電防止性:製膜後、23℃、相対湿度60%の状態で1日間、10日間状態調節を行った後、東亜電波工業(株)製SM−10E型極超絶縁計を使用し、JIS−K6911に準拠し表面固有抵抗率を測定した。
(9)摩擦係数(tanθ):東洋整機(株)製、摩擦測定機を用い、製膜後35℃に加熱された循環式恒温槽中で1日間加熱処理を行い、室温に取り出し、1時間後に滑り性を下記条件で測定し、ブロック荷重の滑り始める角度(θ)を読み取り、tanθで表示する。(測定条件:傾斜スピード2.7°/sec、ブロック面積6.3cm×6.3cm、荷重200g)
【0046】
(10)浮き出し:製膜後、35℃に加熱された循環式恒温槽中で20日間処理を行った後のヘイズを測定した。
(11)アンチブロッキング性:所定の大きさに切り取ったフィルムを2枚重ね合わせ、加重を20g/cm2 かけ、50℃の恒温室に24時間放置した後、恒温室から取り出し、フィルムの密着面積比率を目視で求めた。
(12)臭気性:フィルムのロール面側の表面張力が42dyne/cmとなるようにコロナ放電処理を行い、処理を行ったフィルムを30cm×20cmに切り取る。切り取ったフィルム5枚を500ml広口ビンの中に入れて、50℃に加熱された循環式恒温槽中で1時間経時させ、その後の官能試験によりビンの中の臭気を判定した。判定(試験官5人の過半数)は、臭気が問題なければ○、若干臭気があれば△、非常に臭気がある場合×とした。
【0047】
〔参考例〕
内容積200リットルのオートクレーブをプロピレンで置換した後、常法にしたがって合成したイソプロピルペンタジエニル−1−フルオレンをリチウム化し、四塩化ジルコニウムと反応し再結晶することで得たイソプロピル(シクロペンタジエニル−1−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド0.2gと東ソー・アクゾ(株)社製メチルアミノキサン(重合度16.1)30gを装入し、次いで液状プロピレンを40kg裝入し、次いで60℃に昇温し該温度で1時間重合し、次いでメタノールを1kg裝入して脱灰し、次いで未反応のプロピレンをパージして濾過して20.0kgのシンジオタクティックポリプロピレンを得た。このポリプロピレンは13C−NMRによればシンジオタクティックペンタッド分率は0.793であり、MIは4.5g/10min、1,2,4−トリクロロベンゼンで測定した重量平均分子量と数平均分子量の比(以下、Mw/Mnと記す。)は2.4であった。
【0048】
実施例1
参考例で得たシンジオタクティックポリプロピレン(以下、SPPと略記する。)100重量部に対してエチレン−オクテン共重合体(ダウ・デュポンケミカル(株)社製、エンゲージ8452、MI=3.0(190℃)、密度0.875g/cm3 、オクテン含有率22.0wt%、)50重量部、リン系酸化防止剤0.08重量部、フェノール系酸化防止剤0.04重量部、帯電防止剤としてアミン系のアーモスタットTM310(ライオンアクゾ(株)社製)0.05重量部、グリセリン脂肪酸エステル系のリケマールS−100A(理研ビタミン(株)社製)0.10重量部を含むペレット(以下、SPP−Pと略記する。)を50mmφの押出機で溶融し、樹脂温度240℃でダイ内接着型二種三層同時押出しダイに供給した。
【0049】
一方、別の40mmφ押出機でエチレン−プロピレン共重合体(MI=7.3、エチレン含有率=4.2wt%、Mw/Mn=5.3、以下、IPPと略記する)100重量部、リン系酸化防止剤0.08重量部、フェノール系酸化防止剤0.11重量部、アンチブロッキング剤として球形シリカ(アドマテックス(株)社製、SO−C5、平均粒径1.8μm、BET法比表面積2〜4m2 /g、吸油量16ml/100g)0.5重量部を含むペレット(以下、IPP−Pと略記する。)を溶融し、樹脂温度240℃で前記ダイに供給した。
【0050】
製膜には鏡面ロールを用いたが、製膜上何の問題もなくIPP−P層/SPP−P層/IPP−P層の厚み比が1/8/1の厚さ50μmの積層フィルムを得た。そのフィルム物性を表1に示す。
【0051】
実施例2
実施例1中のIPP−P層/SPP−P層/IPP−P層の厚み比を0.5/9/0.5とした以外は実施例1と同様に行い、製膜上何の問題もなく積層フィルムを得た。そのフィルム物性を表1に示す。
【0052】
実施例3
実施例1中のIPP−P層/SPP−P層/IPP−P層の厚み比を1.5/7/1.5とした以外は実施例1と同様に行い、製膜上何の問題もなく積層フィルムを得た。そのフィルム物性を表1に示す。
【0053】
比較例1
実施例1〜3と製膜性を比較するため、実施例1中で用いたSPP−Pを溶融し、樹脂温度240℃で50mmφ単層フィルム用ダイに供給して製膜しようとしたが、鏡面ロールではロールにフィルムが密着し、製膜できなかった。
【0054】
比較例2
実施例1中で用いたIPP100重量部に対して、エチレン−プロピレン共重合体(三井石油化学(株)社製、P280、MI=5.4、エチレン含有率74wt%)50重量部、リン系酸化防止剤0.08重量部、フェノール系酸化防止剤0.04重量部、帯電防止剤としてアミン系のアーモスタットTM310(ライオンアクゾ(株)社製)0.05重量部、グリセリン脂肪酸エステル系のリケマールS−100A(理研ビタミン(株)社製)0.10重量部、アンチブロッキング剤として不定形シリカ(富士シリシア化学(株)社製、サイリシア350、粒径1.8μm、BET法比表面積300m2 /g、吸油量310ml/100g)0.5重量部を含むペレットを溶融し、樹脂温度240℃で50mmφ単層フィルム用ダイに供給し、製膜上何の問題もなく50μmの単層フィルムが得られたが、光学特性、コロナ放電処理後の臭気がよくなかった。そのフィルム物性を表1に示す。
【0055】
比較例3
実施例1中のIPP−P層/SPP−P層/IPP−P層の厚み比を3.5/3/3.5とした以外は実施例1と同様に行い、製膜上何の問題もなく積層フィルムを得たが、経時の帯電防止性が不良であった。そのフィルム物性を表1に示す。
【0056】
実施例4
実施例1中の球形シリカSO−C5の添加量を1.3重量部とした以外は実施例1と同様に行い、製膜上何の問題もなく積層フィルムを得た。そのフィルム物性を表2に示す。
【0057】
比較例4
実施例1中の球形シリカSO−C5の添加量を0.3重量部とした以外は実施例1と同様に行い、製膜上何の問題もなく積層フィルムが得られたが、製膜後のアンチブロッキング性が不良であった。そのフィルム物性を表2に示す。
【0058】
比較例5
実施例1中の球形シリカSO−C5の添加量を1.8重量部とした以外は実施例1と同様に行い、製膜上何の問題もなく積層フィルムが得られたが、光学特性が不良であった。そのフィルム物性を表2に示す。
【0059】
比較例6
実施例1中の球形シリカの代わりに比較例2で用いた不定形シリカ サイリシア350を用いた以外は実施例1と同様に行い、製膜上何の問題もなく積層フィルムが得られたが、光学特性、帯電防止性が悪化した。そのフィルム物性を表2に示す。
【0060】
実施例5
実施例1中のエチレン−オクテン共重合体エンゲージ8452の添加量を30重量部とした以外は実施例1と同様に行い、製膜上何の問題もなく積層フィルムを得た。そのフィルム物性を表2に示す。
【0061】
実施例6
実施例1中のエチレン−オクテン共重合体エンゲージ8452の添加量を80重量部とした以外は実施例1と同様に行い、製膜上何の問題もなく積層フィルムを得た。そのフィルム物性を表2に示す。
【0062】
比較例7
実施例1中のエチレン−オクテン共重合体エンゲージ8452の添加量を0重量部とした以外は実施例1と同様に行い、製膜上何の問題もなく積層フィルムが得られたが、若干ヤング率が高めであった。そのフィルム物性を表2に示す。
【0063】
比較例8
実施例1中のエチレン−オクテン共重合体エンゲージ8452の添加量を150重量部とした以外は実施例1と同様に行い、製膜上何の問題もなく積層フィルムが得られたが、光学特性が不良であった。そのフィルム物性を表2に示す。
【0064】
実施例7
実施例1中の帯電防止剤をグリセリン脂肪酸エステル系のリケマールS−100A 0.3重量部を用いた以外は実施例1と同様に行い、製膜上何の問題もなく積層フィルムを得た。そのフィルム物性を表3に示す。
【0065】
比較例9
実施例1中の基材層に帯電防止剤を添加せず、表面層に帯電防止剤としてグリセリン脂肪酸エステル系のリケマールS−100Aを0.5重量部添加した以外は実施例1と同様に行い、製膜上何の問題もなく積層フィルムが得られたが、帯電防止性が不良であった。そのフィルム物性を表3に示す。
【0066】
比較例10
実施例1中の表面層に帯電防止剤としてアミン系のアーモスタットTM3100.05重量部、グリセリン脂肪酸エステル系のリケマールS−100Aを0.1重量部添加した以外は実施例1と同様に行い、製膜上何の問題もなく積層フィルムが得られたが、コロナ放電処理後の臭気がよくなかった。そのフィルム物性を表3に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
【発明の効果】
本発明のポリプロピレン積層フィルムは、製膜性、透明性、柔軟性、アンチブロッキング性が極めて良好であり、しかも帯電防止性、コロナ放電処理後の臭気に優れており、工業的に極めて価値がある。
Claims (3)
- シンジオタクティックペンタッド分率が0.6以上であるプロピレンの単独重合体あるいはプロピレンと少量の他のオレフィンとの共重合体である結晶性ポリプロピレン100重量部とエチレン−オクテン共重合体25〜100重量部、帯電防止剤0.05〜0.5重量部からなるポリプロピレン樹脂組成物(A)を基材層とし、両表面にアイソタクティックポリプロピレン100重量部と平均粒子径1〜10μmの球形の無機不活性粒子0.4〜1.5重量部からなるポリプロピレン樹脂組成物(B)を積層してなるポリプロピレン積層フィルムであって、全体層の厚みに対して基材層の厚みが50〜95%である繊維包装用ポリプロピレン積層フィルム。
- 球形の無機不活性粒子がシリカ、ゼオライト系の球形の無機不活性粒子である請求項1に記載の繊維包装用ポリプロピレン積層フィルム。
- ヤング率が50kg/cm2 以下、製膜して10日後の表面固有抵抗率が1×1012Ω以下である請求項1に記載の繊維包装用ポリプロピレン積層フィルム。
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