JP3653128B2 - スクロール式流体機械 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば空気圧縮機や真空ポンプ等に用いて好適なスクロール式流体機械に関し、特に、空冷式のスクロール式流体機械に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ケーシングと、該ケーシングに固着され、鏡板に渦巻き状のラップ部が立設された固定スクロールと、前記ケーシングに回転可能に設けられ、該ケーシング内に延びる先端側がクランクとなった駆動軸と、前記ケーシング内に位置して該駆動軸のクランクに旋回可能に取付けられ、鏡板に前記固定スクロールのラップ部と重なり合う渦巻き状のラップ部が立設された旋回スクロールと、該旋回スクロールと固定スクロールとのラップ部間に画成される複数の圧縮室と、該各圧縮室のうち最外周側の圧縮室と連通するように前記固定スクロールに形成された吸込ポートと、前記各圧縮室のうち中心側の圧縮室と連通するように前記固定スクロールに形成された吐出ポートとから構成してなるスクロール式流体機械は知られている。
【0003】
そして、この種のスクロール式流体機械を空気圧縮機として用いる場合には、駆動軸を外部から電動モータ等で回転駆動することにより旋回スクロールを旋回させ、旋回スクロールと固定スクロールとの間に画成された各圧縮室内で、吸込ポート側から吸込んだ空気を圧縮しつつ、この圧縮空気を吐出ポートから外部の空気タンク等に向けて吐出させるようにしている。
【0004】
この場合、固定スクロールには、通常ラップ部の外周端(巻終り端)からほぼ90度離間した位置に単一の吸込ポートを形成し、該吸込ポートから2方向に分流させるようにして各圧縮室内に空気等の流体を吸込ませる構成としている。
【0005】
また、スクロール式空気圧縮機の圧縮運転時には、各圧縮室のうち中心側に位置する圧縮室内でより高温の圧縮熱が発生し、固定スクロールのラップ部や旋回スクロールのラップ部等に熱膨張や温度不均一による歪み変形等が生じ易くなるため、例えばケーシングの内外等に冷却風を強制的に流通させることによって、前記固定スクロールや旋回スクロールを冷却(空冷)する等の対策が取られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術では、旋回スクロールと固定スクロールとの間に画成される各圧縮室内に空気等の流体を吸込ませるための吸込ポートを、ラップ部の外周端(巻終り端)からほぼ90度離間した位置に形成しているから、この吸込ポートから吸込まれる空気等の流体は、ラップ部の周方向で2方向に分流して各圧縮室内に流入するようになり、これらの吸込空気(吸込流体)が各圧縮室内に封じ込まれる前に温度上昇するという問題がある。
【0007】
即ち、各圧縮室で発生した圧縮熱が鏡板やラップ部の外周側に伝わり、これらの部位が高温になった状態では、吸込ポートから吸込んだ空気等の流体が2方向に分流して外周側の圧縮室に達するまでの段階で、前記鏡板やラップ部の外周側から熱伝導を受けたり、輻射熱を受けたりして吸込空気(吸込流体)の温度上昇を招くことになり、これは吸込加熱損失となって圧縮効率を低下させる原因になるという問題がある。
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明は吸込流体が圧縮室内に封じ込まれる前に温度上昇してしまうのを防止でき、吸込加熱損失を抑えて圧縮効率等を確実に向上できるようにしたスクロール式流体機械を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために本発明は、ケーシングと、該ケーシングに固着され鏡板に渦巻き状のラップ部が立設された固定スクロールと、該固定スクロールに対向して前記ケーシング内に設けられ鏡板に渦巻き状のラップ部が立設された旋回スクロールと、該旋回スクロールと固定スクロールとのラップ部間に画成される複数の圧縮室とからなるスクロール式流体機械に適用される。
【0010】
そして、請求項1に記載の発明が採用する構成の特徴は、前記固定スクロールに、該固定スクロールのラップ部外周端に近い位置で開口し前記圧縮室内に流体を吸込ませる第1の吸込ポートと、前記旋回スクロールのラップ部外周端に近い位置で開口し前記圧縮室内に流体を吸込ませる第2の吸込ポートとを設け、前記第1の吸込ポートと第2の吸込ポートとは、前記固定スクロールの鏡板と直交する方向に開口する構成としたことにある。
【0011】
また、請求項2に記載の発明によると、前記第1,第2の吸込ポートには、前記固定スクロールの鏡板から前記ラップ部が立設された側とは反対側に突出させて吸込フィルタを設ける構成としている。また、請求項3に記載の発明では、前記固定スクロールの鏡板背面側に冷却風通路を形成し、前記第1,第2の吸込ポートは、該冷却風通路を挟んで前記固定スクロールの径方向に離間した位置に配設してなる構成としている。
【0012】
さらに、請求項4に記載の発明では、前記固定スクロールのラップ部の外周端より約半巻き部分を前記冷却風通路の上流側に配設する構成としている。
【0013】
【作用】
上記構成により、請求項1に記載の発明では、固定スクロールのラップ部外周端に近い位置に第1の吸込ポートを設け、旋回スクロールのラップ部外周端に近い位置に第2の吸込ポートを設けているから、該各吸込ポートから外周側の各圧縮室までの間隔を短縮でき、各吸込ポートから吸込んだ流体が外周側の圧縮室に達するまでに温度上昇してしまうのを確実に抑えることができる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明では、第1,第2の吸込ポートに吸込フィルタを設けることにより、各吸込ポート内に吸込まれる流体を清浄化できると共に、吸気音を低減することができる。一方、請求項3に記載の発明は、前記固定スクロールの鏡板背面側に冷却風通路を形成し、前記第1,第2の吸込ポートを固定スクロールの径方向に離間させて冷却風通路を挟む構成とすることにより、該冷却風通路内を流れる冷却風で固定スクロールの鏡板を背面側から冷却できると共に、第1の吸込ポートから吸込んだ流体と第2の吸込ポートから吸込んだ流体とを完全に分離して背面側から冷却でき、吸込流体が各吸込ポートから外周側の圧縮室に達するまでに温度上昇するのをより確実に抑えることができる。
【0015】
さらに、請求項4に記載の発明では、前記固定スクロールのラップ部の外周端より約半巻き部分に相当する部位を前記冷却風通路の上流側に配設することにより、冷却風通路からの冷却風でラップ部の外周端より約半巻き部分を効率的に冷却でき、各吸込ポートから外周側の圧縮室に流入させた吸込流体の温度を比較的低い温度に抑えることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例をスクロール式流体機械を図1ないし図3に基づき、スクロール式空気圧縮機に適用した場合を例に挙げて説明する。
【0017】
図において、1はスクロール式空気圧縮機の外枠を形成するケーシングで、該ケーシング1は図1に示す如く段付き筒状に形成され、大径の筒部1Aと、該筒部1Aの一端側から径方向内向きに延設された環状部1Bと、該環状部1Bの内周側から筒部1Aとは反対側に向けて突出するように軸方向に延設された軸受筒部1Cとからなり、環状部1Bの外周側部位には、後述の各補助クランク23を取付けるため、例えば3個の取付部1D,1D,…(1個のみ図示)が周方向に所定間隔もって形成されている。
【0018】
2はケーシング1の軸受筒部1C内に軸受3,3を介して回転可能に設けられた駆動軸を示し、該駆動軸2はケーシング1の筒部1A内へと伸長する先端側がクランク2Aとなり、該クランク2Aの軸線は駆動軸2の軸線に対して所定寸法だけ偏心している。また、該駆動軸2は軸受筒部1Cの一端側から後述のファンケーシング27内へと突出し、その突出端側には後述のプーリ29が設けられている。
【0019】
4はケーシング1の筒部1Aに固着された固定スクロールを示し、該固定スクロール4は、その中心が駆動軸2の軸線と一致するように配設された円板状の鏡板5と、該鏡板5の表面(歯底)から軸方向に立設され、図2に示す如く中心側が巻始め端6Aとなり外周端が巻終り端6Bとなった渦巻き状のラップ部6と、該ラップ部6を外側から取囲むように鏡板5の径方向外側に一体形成され、ケーシング1の筒部1Aにボルト等を介して取付けられた外縁部7とから大略構成され、鏡板5の背面(ラップ部6とは反対側の裏面)側には図1に示すように多数の放熱フィン8,8,…が形成されている。
【0020】
ここで、各放熱フィン8は鏡板5の背面側に沿って互いに平行に延び、後述のダクトカバー30との間に冷却風通路8A,8A,…を形成している。そして、各放熱フィン8は後述の遠心ファン28によって発生した冷却風が、各冷却風通路8A内を図3中の矢示A方向へと直線状に流通することにより、鏡板5の背面側から後述の圧縮熱等を放熱させ、固定スクロール4を全体的に冷却する構成となっている。
【0021】
また、ラップ部6の巻終り端6B側は、該巻終り端6Bより約半巻き部分(巻終り端6Bから約150〜160度程度の巻き角に相当する部位)が図2に示す如く外縁部7の一部となる周胴部6Cとして構成され、該周胴部6Cの外周側には後述の各放熱フィン31が図2中の右方向に突出形成されている。そして、ラップ部6の周胴部6Cは各冷却風通路8A内を図3中の矢示A方向に流れる冷却風の上流側に配設され、その上端に位置する巻終り端6Bは後述する吸込ポート17の近傍位置に配設されている。
【0022】
さらに、固定スクロール4の鏡板5は、ラップ部6の巻始め端6A(最内周端)から1.5〜2巻分程度に相当する中心側部位が板厚の大きい厚肉部5Aとなり、該厚肉部5Aよりも径方向外側に位置する外周側部位が薄肉部5Bとなっている。そして、鏡板5の厚肉部5Aは薄肉部5Bに対して1.4〜1.6倍程度の板厚寸法をもって形成され、厚肉部5Aは後述する各圧縮室16からの圧縮熱が各放熱フィン8側へと熱伝導し易くなるように十分な熱容量(板厚)を有し、このときの熱に対する抵抗(熱抵抗)を低減させる構成となっている。
【0023】
一方、鏡板5の外周側寄り(ラップ部6の巻始め端6Aから約2巻目に相当する部位より外側)に位置する薄肉部5Bは、厚肉部5Aからの熱が熱伝導するときに大きな抵抗(熱抵抗)を有するように薄肉に形成され、厚肉部5Aよりも薄肉部5Bの方が低い温度状態に保たれるようになっている。そして、鏡板5の薄肉部5Bは後述する吸込ポート17,18からの吸込空気が薄肉部5Bに接触して温度上昇するのを抑える構成となっている。
【0024】
9は固定スクロール4と対向するようにケーシング1の筒部1A内に旋回可能に配設された旋回スクロールを示し、該旋回スクロール9は旋回スクロール本体10と、該旋回スクロール本体10に固着される背面プレート11とから構成され、旋回スクロール本体10は、固定スクロール4とほぼ同様に鏡板12および渦巻き状のラップ部13等から構成されている。そして、該ラップ部13は図2に示す如く、中心側の最内周端が巻始め端13Aとなり、外周端が巻終り端13Bとなって、固定スクロール4のラップ部6と所定角度(例えば180度)だけずらして重なり合うように配設されている。
【0025】
ここで、前記背面プレート11は鏡板12の背面(裏面)側にボルト等を介して固着され、その中央部には後述の旋回軸受15を保持するボス部11Aが一体形成されている。また、背面プレート11の外周側部位には、ケーシング1側の各取付部1Dとほぼ対向する位置に補助クランク23用の取付部11B,11B,…(1個のみ図示)が周方向に所定間隔をもって形成されている。
【0026】
14,14,…は旋回スクロール本体10の鏡板12と背面プレート11との間に設けられた放熱フィンを示し、該各放熱フィン14は鏡板12の背面側に直線状の凹溝からなる冷却風通路14A,14A,…を形成するように配設され、鏡板12の背面側に沿って互いに平行に延びている。そして、各放熱フィン14は遠心ファン28からの冷却風が各冷却風通路14A内を流通することにより、鏡板12の背面側およびボス部11Aからの熱を放熱させ、これらを冷却する構成となっている。
【0027】
15は背面プレート11のボス部11A内に挿着された旋回軸受を示し、該旋回軸受15の内周側には駆動軸2のクランク2Aが挿着され、駆動軸2のクランク2Aに対して旋回スクロール9を回転可能に支持する構成となっている。
【0028】
16,16,…は固定スクロール4のラップ部6と旋回スクロール9のラップ部13との間に画成される複数の圧縮室で、該各圧縮室16は図2に示すように略三ケ月形状をなし、旋回スクロール9が旋回運動するときにラップ部6,13間で連続的に縮小することによって後述の吸込ポート17,18から吸込んだ空気を漸次圧縮しつつ、圧縮空気を後述の吐出ポート20から吐出させる。
【0029】
17,18は固定スクロール4の外縁部7に形成された第1,第2の吸込ポートを示し、該吸込ポート17,18は鏡板5の径方向外側に位置し、図1に示す如く各放熱フィン8の冷却風通路8Aを上下方向から挟むように鏡板5の周方向に180度離間して配設されている。この場合、吸込ポート17,18は、図1に示す如く固定スクロール4の鏡板5と直交する方向に開口している。そして、吸込ポート17,18は図2に示す如く各圧縮室16のうち最外周側の圧縮室16A,16Bに連通し、これらの各圧縮室16内に後述の各吸込フィルタ19を介して外気(吸込空気)を吸込ませる構成となっている。
【0030】
ここで、第1の吸込ポート17は図2に示す如く、固定スクロール4のラップ部6に対しその巻終り端6Bの近傍位置に開口し、第2の吸込ポート18は旋回スクロール9のラップ部13に対しその巻終り端13Bの近傍位置で開口している。そして、吸込ポート17からの吸込空気は各圧縮室16のうち最外周側の圧縮室16A内にラップ部6の巻終り端6Bを介して取込まれ、吸込ポート18からの吸込空気は各圧縮室16のうち最外周側の圧縮室16B内にラップ部13の巻終り端13Bを介して取込まれる。
【0031】
また、吸込ポート17,18の周壁部には図2に示す如く左,右一対のねじ穴17A,17A、18A,18Aが形成され、該各ねじ穴17A,18Aには各吸込フィルタ19を吸込ポート17,18の周壁部に固定するための固定ねじ(図示せず)等が螺着される。
【0032】
19,19は吸込ポート17,18を外側から覆うように固定スクロール4に取付けられた吸込フィルタを示し、該各吸込フィルタ19は、吸込ポート17,18の周壁部に前記固定ねじ等を介して固定された保持板19Aと、基端側が該保持板19Aに固着され、先端側が固定スクロール4の外部へと軸方向に延びた取付ボルト19Bと、該取付ボルト19Bの周囲に挿通され、ナット19Cを介して保持板19A等に着脱可能に装着されたフィルタエレメント19Dとから大略構成されている。
【0033】
そして、各吸込フィルタ19は吸込ポート17,18内に吸込まれる空気をフィルタエレメント19Dを介して清浄化すると共に、このときの吸気音等を低減させる吸込サイレンサとしても機能するようになっている。
【0034】
20は固定スクロール4の鏡板5中心側に設けた吐出ポートで、該吐出ポート20は各圧縮室16のうち最内周(中心)側の圧縮室16に連通すると共に、外部の空気タンクに空気配管(いずれも図示せず)等を介して接続されている。そして、当該スクロール空気圧縮機の運転時には、旋回スクロール9の旋回動作に応じて吸込ポート17,18から吸込んだ空気を各圧縮室16内で順次圧縮しつつ、最後に中心側の圧縮室16から吐出ポート20を介して外部の空気タンク等に圧縮空気を吐出させる。
【0035】
21,22は固定スクロール4と旋回スクロール9のラップ部6,13歯先側に装着されたシール部材としてのチップシールで、該チップシール21,22は弾性樹脂材料によって長尺の紐状に形成され、ラップ部6,13の歯先に沿って渦巻き状に延びている。そして、チップシール21,22は、旋回スクロール9が旋回動作する間、相手方となる鏡板12,5の表面(歯底)に摺接することにより各圧縮室16間を気密にシールし、高圧側の圧縮室16から低圧側の圧縮室16側に向けて圧縮空気が漏洩するのを防止している。
【0036】
23,23,…はケーシング1の環状部1Bと旋回スクロール9の背面プレート11との間で周方向に所定間隔をもって配設された自転防止機構としての補助クランク(1個のみ図示)で、該各補助クランク23は、その一端側がケーシング1の各取付部1D内に軸受24を介して回転自在に支持され、他端側が背面プレート11の各取付部11Bに軸受25を介して回転自在に支持されている。そして、各補助クランク23は駆動軸2のクランク2Aと同様に所定寸法だけ偏心して形成され、旋回スクロール9の旋回動作時に該旋回スクロール9の自転を防止する構成となっている。
【0037】
26はケーシング1の環状部1Bと背面プレート11のボス部11Aとの間に位置して駆動軸2に固着されたバランスウェイトを示し、該バランスウェイト26は旋回スクロール9の旋回動作に対して駆動軸2全体の回転バランスをとるものである。
【0038】
27はケーシング1の軸受筒部1C一端側に取付けられたファンケーシングを示し、該ファンケーシング27は略渦巻き形状をなし、その内周側は冷却風の取入口27Aとなって外部に開口している。また、ファンケーシング27の外周側は後述の冷却風ダクト33連通し、この冷却風ダクト33内へと遠心ファン28からの冷却風を流通させる構成となっている。
【0039】
28はファンケーシング27内に位置して、駆動軸2の突出端側にプーリ29を介して固着された遠心ファンを示し、該遠心ファン28は駆動軸2と共に回転することにより、取入口27Aからファンケーシング27内に外気を取込むようにして冷却風を発生させ、この冷却風を冷却風ダクト33内へと強制的に流通させるものである。また、前記プーリ29は駆動源となる電動モータにベルト(いずれも図示せず)等を介して連結され、電動モータからの回転力を駆動軸2に伝えると共に、遠心ファン28にも回転力を伝える構成となっている。
【0040】
次に、30は固定スクロール4の背面側に配設したダクトカバーを示し、該ダクトカバー30は鏡板5の背面側で各放熱フィン8の先端側を覆うように、固定スクロール4に固定して設けられ、各放熱フィン8との間に各冷却風通路8Aを形成している。そして、該ダクトカバー30は図3に示すように略長方形の平板状に形成され、冷却風ダクト33からの冷却風を各冷却風通路8Aを介して図3中の矢示A方向に流通させる構成となっている。また、ダクトカバー30の中央部には吐出ポート20に接続される前記空気配管用の配管挿通穴30Aが穿設されている。
【0041】
31,31,…は固定スクロール4の外周側に一体形成された外周側の放熱フィンを示し、該各放熱フィン31はラップ部6の外周側部位となる周胴部6Cの外周面から図2中の右方向に突出形成され、該各放熱フィン31間は冷却風ダクト33に連通する冷却風の上流側通路31A,31A…となっている。そして、各上流側通路31Aはその下流側でダクトカバー30内の各冷却風通路8Aに連通し、冷却風ダクト33からの冷却風は、各上流側通路31A内へと図2中の矢示B方向に流入しつつ、その後は各冷却風通路8A内を図3中の矢示A方向に流通する。
【0042】
32,32,…は固定スクロール4の外縁部7に一体形成された他の放熱フィンを示し、該各放熱フィン31は外縁部7の外周面から図2中の左方向に突出形成され、該各放熱フィン32間は冷却風の下流側通路32A,32A…となっている。そして、冷却風ダクト33からの冷却風は各上流側通路31Aを介して前記ダクトカバー30内の各冷却風通路8A内に流入し、その後は各放熱フィン32間の下流側通路32Aを介して外部へと流出するようになっている。
【0043】
さらに、33はダクトカバー30内をファンケーシング27側に連通させる冷却風ダクトを示し、該冷却風ダクト33はファンケーシング27の外周側からケーシング1の外側を固定スクロール4側に向けて延びている。そして、冷却風ダクト33はファンケーシング27内で遠心ファン28により発生した冷却風を、ケーシング1内に導入して旋回スクロール9側の各放熱フィン14間(各冷却風通路14A内)を流通させると共に、固定スクロール4側の前記各上流側通路31Aを介してダクトカバー30内の各冷却風通路8A内へと流通させる構成となっている。
【0044】
本実施例によるスクロール式空気圧縮機は上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0045】
まず、電動モータ等の駆動源により駆動軸2を回転させ、旋回スクロール9を旋回駆動すると、固定スクロール4のラップ部6と旋回スクロール9のラップ部13間に画成された圧縮室16,16,…が連続的に縮小する。これにより、固定スクロール4の吸込ポート17,18から吸込んだ空気(外気)を各圧縮室16で順次圧縮しつつ、この圧縮空気を固定スクロール4の吐出ポート20から外部の空気タンク等に吐出させる。
【0046】
また、ファンケーシング27内では遠心ファン28がプーリ29を介して駆動軸2と共に回転駆動されるから、該遠心ファン28の回転によりファンケーシング27の取入口27Aから外気が冷却風となってファンケーシング27内に取込まれ、この冷却風はファンケーシング27内から冷却風ダクト33へと強制的に送り出される。
【0047】
そして、冷却風ダクト33内を流れる冷却風は、ケーシング1の流入口(図示せず)等を介してケーシング1内に導入され、旋回スクロール9側の各放熱フィン14間(各冷却風通路14A内)等を流通する間に旋回スクロール9や旋回軸受15等を強制冷却すると共に、固定スクロール4側の各上流側通路31A内にも図2中の矢示B方向に流入し、その後はダクトカバー30内の各冷却風通路8A内へと図3中の矢示A方向に流通する。
【0048】
この結果、冷却風ダクト33からの冷却風は各上流側通路31Aを介してダクトカバー30内の各冷却風通路8A内に流入した後に、各放熱フィン32間の下流側通路32Aを介して外部へと流出するようになり、各上流側通路31A内を図2中の矢示B方向に流れる間に固定スクロール4のラップ部6(周胴部6C)側を強制冷却すると共に、ダクトカバー30内の各冷却風通路8A内を図3中の矢示A方向に流通する間に固定スクロール4の鏡板5をその背面側から強制冷却するようになる。
【0049】
而して、本実施例によれば、固定スクロール4の外縁部7に形成した第1,第2の吸込ポート17,18を鏡板5の径方向外側で、図1に示す如く各放熱フィン8間の冷却風通路8Aを上下方向から挟むように鏡板5の周方向に180度離間させて配設し、第1の吸込ポート17を図2に示す如く、固定スクロール4のラップ部6に対してその巻終り端6Bの近傍位置に開口させ、第2の吸込ポート18を旋回スクロール9のラップ部13に対しその巻終り端13Bの近傍位置で開口させる構成としたから、下記のような作用効果を得ることができる。
【0050】
即ち、吸込ポート17からの吸込空気は図2に示す如く各圧縮室16のうち、最外周側の圧縮室16A内にラップ部6の巻終り端6Bを介して取込まれ、吸込ポート18からの吸込空気は各圧縮室16のうち最外周側の圧縮室16B内にラップ部13の巻終り端13Bを介して取込まれるようになるため、吸込ポート17からラップ部6の巻終り端6B(最外周側の圧縮室16A)までの間隔を確実に短縮できると共に、吸込ポート18からはラップ部13の巻終り端13B(最外周側の圧縮室16B)までの間隔を確実に小さくできる。
【0051】
この結果、各圧縮室16からの圧縮熱が固定スクロール4の鏡板5やラップ部6の外周側に伝わり、これらの部位が高温になった場合でも、吸込ポート17,18からそれぞれ吸込んだ空気がラップ部6の巻終り端6B(最外周側の圧縮室16A)、ラップ部13の巻終り端13B(最外周側の圧縮室16B)に達するまでの段階で、鏡板5やラップ部6の外周側から熱伝導を受けたり、輻射熱を受けたりする可能性を大幅に減じることができ、吸込空気の温度上昇を効果的に抑えることができる。
【0052】
また、固定スクロール4の鏡板5は中心側を厚肉部5Aとし、該厚肉部5Aよりも径方向外側に位置する外周側部位を薄肉部5Bとして形成しているから、鏡板5の厚肉部5A側では熱抵抗を下げて各圧縮室16からの圧縮熱を各放熱フィン8側へと効率的に熱伝導させることができ、このときの熱を各放熱フィン8を介して各冷却風通路8A側に確実に逃がし得ると共に、薄肉部5B側には大きな熱抵抗を与えて、厚肉部5A側から薄肉部5B側に圧縮熱等が伝わるのを制限でき、薄肉部5Bを厚肉部5Aよりも低い温度状態に保つことができる。
【0053】
従って、本実施例によれば、吸込ポート17,18からの吸込空気が鏡板5の薄肉部5Bに接触するような場合でも、吸込空気が温度上昇するのをより確実に制限でき、従来技術で述べたように吸込加熱損失となって圧縮効率を低下させる等の問題を効果的に解消できる。そして、ラップ部6,13の歯先側に装着したチップシール21,22等が熱影響で早期に摩耗、損傷されるのを防止でき、これらの耐久性や寿命を確実に延ばすことができる。
【0054】
また、固定スクロール4の鏡板5にはその背面側に各放熱フィン8を介して図3中の矢示A方向に冷却風を流通させる各冷却風通路8Aを形成し、第1,第2の吸込ポート17,18を固定スクロール4の径方向に離間させて各冷却風通路8Aを上下方向から挟む構成としているから、該各冷却風通路8A内を矢示A方向に流がれる冷却風によって、固定スクロール4の鏡板5を背面側から強制的に冷却できると共に、第1の吸込ポート17から吸込んだ空気と第2の吸込ポート18から吸込んだ空気とを完全に分離して鏡板5の背面側から冷却でき、吸込空気が吸込ポート17,18から外周側の圧縮室16A,16Bに達するまでに温度上昇するのをより確実に抑えることができる。
【0055】
さらに、固定スクロール4のラップ部6はその外周側部位となる周胴部6Cを図2に示す如く外縁部7の一部として構成し、該周胴部6Cの外周側に各放熱フィン31を突出形成すると共に、図3中の矢示A方向に冷却風が流れる各冷却風通路8Aの上流側にこの周胴部6Cを配設しているから、図2中の各上流側通路31Aから各冷却風通路8A内に向けて流通する比較的低い温度状態の冷却風によってラップ部6の周胴部6Cを効率的に冷却でき、これによっても吸込空気の温度上昇を効果的に抑えることができる等の効果を奏する。
【0056】
なお、前記実施例では、スクロール式空気圧縮機を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば空気以外の窒素、または種々の流体等を圧縮する圧縮機にも適用でき、また真空ポンプ等にも適用できる。
【0057】
【発明の効果】
以上詳述した通り本発明によれば、請求項1に記載のように、固定スクロールには、該固定スクロールのラップ部外周端に近い位置で第1の吸込ポートを設けると共に、旋回スクロールのラップ部外周端に近い位置に第2の吸込ポートを設け、前記第1の吸込ポートと第2の吸込ポートとは、前記固定スクロールの鏡板と直交する方向に開口する構成としたから、該各吸込ポートから外周側の各圧縮室までの間隔を確実に短縮でき、吸込流体が圧縮室内に封じ込まれる前に温度上昇してしまうのを防止できると共に、吸込加熱損失を抑えることができ、圧縮運転時の圧縮効率を向上できる等の効果を奏する。
【0058】
また、請求項2に記載の発明では、第1,第2の吸込ポートに吸込フィルタを設け、該吸込フィルタは、前記固定スクロールの鏡板から前記ラップ部が立設された側とは反対側に突出させる構成としているので、各吸込ポート内に吸込まれる流体を吸込フィルタにより清浄化できると共に、吸気音を低減することができる。一方、請求項3に記載の発明は、前記固定スクロールの鏡板背面側に冷却風通路を形成し、前記第1,第2の吸込ポートを固定スクロールの径方向に離間させて冷却風通路を挟む構成とすることにより、該冷却風通路内を流れる冷却風で固定スクロールの鏡板を背面側から冷却できると共に、第1の吸込ポートから吸込んだ流体と第2の吸込ポートから吸込んだ流体とを完全に分離して固定スクロールの背面側から冷却することができ、吸込流体が各吸込ポートから外周側の圧縮室に達するまでに温度上昇するのを効果的に防止でき、吸込加熱損失を確実に抑えることができる。
【0059】
さらに、請求項4に記載の発明では、前記固定スクロールのラップ部のうち、該ラップ部の外周端より約半巻き部分を前記冷却風通路の上流側に配設しているから、冷却風通路からの冷却風でラップ部の外周端より約半巻き部分を効率的に冷却でき、各吸込ポートから外周側の圧縮室に流入させた吸込流体の温度を比較的低い温度に抑えて、吸込加熱損失を効果的に低減できる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例によるスクロール式空気圧縮機を示す縦断面図である。
【図2】図1中の矢示II−II方向断面図である。
【図3】図1に示す固定スクロールの背面側からみたスクロール式空気圧縮機の外観図である。
【符号の説明】
1 ケーシング
2 駆動軸
2A クランク
4 固定スクロール
5,12 鏡板
6,13 ラップ部
8,14 放熱フィン
8A,14A 冷却風通路
9 旋回スクロール
10 旋回スクロール本体
11 背面プレート
16 圧縮室
17 第1の吸込ポート
18 第2の吸込ポート
19 吸込フィルタ
20 吐出ポート
21,22 チップシール(シール部材)
23 補助クランク
27 ファンケーシング
28 遠心ファン
30 ダクトカバー
33 冷却風ダクト
Claims (4)
- ケーシングと、該ケーシングに固着され鏡板に渦巻き状のラップ部が立設された固定スクロールと、該固定スクロールに対向して前記ケーシング内に設けられ鏡板に渦巻き状のラップ部が立設された旋回スクロールと、該旋回スクロールと固定スクロールとのラップ部間に画成される複数の圧縮室とからなるスクロール式流体機械において、
前記固定スクロールには、該固定スクロールのラップ部外周端に近い位置で開口し前記圧縮室内に流体を吸込ませる第1の吸込ポートと、前記旋回スクロールのラップ部外周端に近い位置で開口し前記圧縮室内に流体を吸込ませる第2の吸込ポートとを設け、
前記第1の吸込ポートと第2の吸込ポートとは、前記固定スクロールの鏡板と直交する方向に開口する構成としたことを特徴とするスクロール式流体機械。 - 前記第1,第2の吸込ポートには、前記固定スクロールの鏡板から前記ラップ部が立設された側とは反対側に突出させて吸込フィルタを設ける構成としてなる請求項1に記載のスクロール式流体機械。
- 前記固定スクロールの鏡板背面側には冷却風通路を形成し、前記第1,第2の吸込ポートは、該冷却風通路を挟んで前記固定スクロールの径方向に離間した位置に配設してなる請求項1または2に記載のスクロール式流体機械。
- 前記固定スクロールのラップ部の外周端より約半巻き部分を前記冷却風通路の上流側に配設する構成としてなる請求項3に記載のスクロール式流体機械。
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