JP3652872B2 - プラズマ表示装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高精度かつ安価な薄型軽量の大型画面用カラー表示装置等の発光素子として用いられるプラズマ表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から画像表示装置として多用されてきたCRTは、容積及び重量が大で高電圧が必要であるとういう欠点から、近年のマルチメデイ アの浸透に伴い情報のインターフェースとして発光ダイオード(LED)や液晶表示素子(LCD)、あるいはプラズマ表示装置等の大型画面で高画質、その上、薄型軽量で設置場所を選ばない等の特徴を有する平面画像表示装置が開発され、これらの利用範囲が拡大しつつある。
【0003】
かかる平面画像表示装置として、とりわけプラズマ発光を利用したプラズマ表示装置が大型画面用カラー画像表示装置の発光素子として将来性が注目されている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記問題点に鑑みて本発明は、一定空間を隔てて対向する基板間に、上記空間を仕切る複数の隔壁を有し、該隔壁間に構成される放電表示セル内に放電電極とアドレス電極を備えるとともに、上記放電表示セルの内壁に蛍光体を塗布してなるプラズマ表示装置の製造方法において、上記隔壁の表面にB2O3を20重量%以上、SiO2を18重量%以上、Al2O3を12重量%以上含有し、硬度が7.0GPa以上のガラス成分からなる気孔率が0.8%以下の緻密な被膜を溶射法により形成したことを特徴とする。
さらに、上記被膜が波長300〜450nmの光の透過率を30%以下にするように、B2O3を20重量%以上、SiO2を18重量%以上、Al2O3を12重量%以上含有し、硬度が7.0GPa以上のガラス成分からなるようにしたことを特徴とする。
さらに、上記被膜が、CeO2、TiO2、ZnOのうち少なくとも一種を含有するガラス成分からなることを特徴とする。
【0005】
前記隔壁2は放電によって発生したプラズマの漏洩による放電表示セル5の表示色の混合を防ぐためにガラス基板からなる背面板1上に設けられるものであるが、一般に、かかる隔壁2の形成方法としては、印刷積層法やフォトリソグラフィ法等が知られている。
【0006】
前記印刷積層法は、隔壁材料の低融点ガラスペーストを用いて厚膜印刷法により放電表示セルの所定形状をパターンとして絶縁基板上に印刷して形成するもので、一回の印刷で形成できる膜の厚さは約10〜15μm程度であることから、印刷、乾燥を繰り返しながら約100〜200μm程度の高さを必要とする放電表示セル5の隔壁2を形成するものである。
【0007】
また、前記フォトリソグラフィ法は、絶縁基板上に設けた感光性ガラスペーストをパターンマスクを介して、光や紫外線等を用いて露光、現像して必要とする放電表示セル5の隔壁2を形成するものである。
【0008】
かかる方法で形成した隔壁2は、放電表示セル5の位置精度を確保するため、絶縁基板をなすガラスの歪点以下の温度で焼成される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、通常隔壁材料として用いられる低融点ガラスでは、機械的強度が不十分であるために、正面板6の封着の際に隔壁2が挫屈するなどの欠陥を生じたり、表面の緻密さに欠けるために、放電ガスを置換封入する際に隔壁2の表面から不純物を放出したり、耐プラズマ性に優れず、パネルの長寿命化に問題があった。
【0010】
【発明の目的】
本発明は前記課題に鑑み成されたもので、その目的は、隔壁に十分な機械的強度と緻密さを具備させることで、高強度、長寿命なプラズマ表示装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は前記課題に鑑み鋭意検討した結果、プラズマ表示装置の隔壁表面に、機械的強度が高く、表面を緻密化できる材料を、溶射することで、緻密な被膜を形成できることを見いだし、本発明に至った。
【0012】
即ち、本発明のプラズマ表示装置は、一定空間を隔てて対向する基板間に、上記空間を仕切る複数の隔壁を有し、該隔壁間に構成される放電表示セル内に放電電極とアドレス電極を備えるとともに、上記放電表示セルの内壁に蛍光体を塗布してなるプラズマ表示装置において、上記隔壁表面に、緻密な被膜を有することを特徴とするものである。
【0013】
上記被膜としては、B2 O3 を20重量%以上、SiO2 を18重量%以上、Al2 O3 を12重量%以上含有し、硬度が7.0GPa以上のガラス成分からなることを特徴とするものである。 さらに、上記被膜が、CeO2 、TiO2 、ZnOのうち少なくとも一種を含有するガラス成分からなることを特徴とするものである。
【0014】
また、上記被膜を形成する方法としては、ガス燃焼炎等を使用して、3000℃の高温で溶融した粉末状の原料を、燃焼炎や圧縮空気を用いて、ノズルから噴射させ、被加工物表面に高速で衝突させて被膜を形成すればよい。
【0015】
【作用】
本発明によれば、隔壁の表面に緻密な被膜を形成することによって、強度を向上し、表面を緻密にすることができる。したがって、隔壁材料は、機械的強度や緻密さは問題にならず、絶縁基板に所定の寸法精度で形成できるものであれば何を用いてもよい。また、本発明によれば、ガラス成分として、B2 O3 、SiO2 、Al2 O3 をそれぞれ20量%以上、18重量%以上、12重量%以上含有することにより、機械的強度が高く、表面の緻密な隔壁を得ることができるため、欠陥や隔壁表面から放出される不純物をなくし、耐プラズマ性に優れ、パネルを長寿命化することができる。また、該隔壁上に、CeO2 、TiO2 、ZnOのうち少なくとも一種を含有する被膜を形成することによって、紫外線を遮蔽することができ、紫外線による劣化のない隔壁を得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明のプラズマ表示装置の要部を示す断面図であり、背面板1に平行に設けた隔壁2と、隔壁2表面に緻密に形成された被膜8と、隔壁2によって仕切られた放電表示セル5と、放電表示セル5内に設けたアドレス電極3とから成るプラズマ表示装置用基板である。そして、図2に示す従来例と同様に、放電電極を有する正面板6を隔壁2に接合することによってプラズマ表示装置とすることができる。
【0018】
隔壁2の表面には緻密な被膜8が形成されている為に、隔壁2の機械的強度が高く、また、隔壁2表面の空孔が埋められ、不純物の放出が抑えられる。
【0019】
ここで、被膜8の材質としては、B2 O3 を20重量%以上、SiO2 を18重量%以上、Al2 O3 を12重量%以上のものが好ましい。B2 O3 はガラス溶融剤として働き緻密性を向上さる作用がある。その効果を期待するには含有量を20重量%以上とすることが望ましいが、50%を越えると強度低下をもたらす。SiO2 に関しては、表面硬度向上の作用があり、効果を期待するには18重量%以上が望ましいが、40%を越えると緻密性が乏しくなる。Al2 O3 はガラスの分相を防ぎ化学的耐久性させる作用があり、効果を期待するには12重量%以上とすることが望ましいが、40%を越えると緻密性が乏しくなる。さらに、被膜8をなすガラスにCeO2 、TiO2 、ZnO等の酸化物を0.3〜10%の範囲で含有さることにより、紫外線遮蔽作用を付加させ、紫外線による劣化の少ない隔壁を得ることができる。
【0020】
その他の成分としては、PbO、MgO、CaO、ZrO2 、Na2 O、K2 O、Li2 O等を合計50重量%以下の範囲で含んでも良い。
【0021】
なお、被膜8の厚みとしては、強度、化学耐久性、紫外線遮蔽作用の面から3μm以上とすることが望ましく、放電表示セル空間の確保の点から50μm以下とする。
【0022】
また、被膜の構造としては、用途に応じて性質の異なるものを多層としても何ら問題ない。例えば、被膜8上に、CeO2 、TiO2 、ZnO等を含むガラスからなる紫外線吸収層を積層して多層とすることもできる。
【0023】
なお、上記隔壁の材質としては鉛ホウケイ酸ガラス等の低融点ガラスを用い、背面板1の材質としてはソーダライムガラスや各種セラミックス等を用いる。
【0024】
本発明のプラズマ表示装置用基板の製造方法に関しては、予め隔壁2の形成された基板に、溶射法で被膜8を形成すれば良い。具体的には、ガス燃焼炎を用いて、3000℃で瞬間的に被膜3をなす組成物を融解し、ノズル等により、大気中でその溶融物を隔壁2に吹き付け所望厚みの被膜8を形成するものである。
【0025】
このような溶射法を用いれば、緻密な被膜8を所定の厚みで形成することができる。なお、本発明において被膜8が緻密であるとは、被膜8の気孔率が隔壁よりも小さいことを言い、さらに、被膜8の気孔率は0.8%以下が好ましい。
【0026】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示す。
【0027】
先ず、厚さ2mmの40インチサイズのソーダライムガラスからなる背面板1上に、PbOを主成分とする低融点ガラスからなる隔壁2を、高さ150μm、幅50μm、ピッチ360μmで形成した。
【0028】
次に、被膜8をなすガラス粉末原料とその他の無機成分として表1に示す割合でそれぞれ秤量し、それらを有機溶剤を溶媒としてそれぞれ18時間、ボールミルにて湿式混合した。
【0029】
次いで、前記混合物を乾燥後、900℃の温度で2時間焼成してガラスを作製し、乳鉢で粗く粉砕した後、再びIPAを溶媒としてそれぞれ18時間、ボールミルにて湿式で粉砕した。 その後、ガス燃焼炎を使用し、3000℃で瞬間的に融解し、予め背面板1上に形成した隔壁2に、大気中で吹き付け、厚さ7〜8μmの被膜8を形成し評価用の試料とした。
【0030】
また、比較例として、一般の印刷積層法で使用する隔壁材料を用いて、スプレー法にて被膜8の形成を行った試料を作製し評価を行った(No.25)。
【0031】
さらに、前記ガラス被膜上から、CeO2 、TiO2 、ZnOを含有する膜を、同様の方法を用いて、所定の厚みで形成し、被膜を2層としたものを準備した(No.7〜25)。
【0032】
【表1】
【0033】
かくして得られた評価用の試料をダイヤルゲージを用いて、クロスヘッドスピード5mm/minの条件で隔壁の挫屈強度を測定した。この強度は50kgf/cm2 以上であることが好ましい。 次に、前記評価用試料の緻密さは、断面のSEM写真を観察し、表面層に残るガラス粒の有無から判断し、隔壁の気孔率よりも小さいものを○、大きいものを×とした。
【0034】
また、ビッカース硬度に関しては、各組成のガラスをφ10mm板状ペレットにして、それを用いて室温にてビッカース硬度計で測定した。紫外線遮蔽については、300〜450nmの波長域で光の透過率を測定した。この透過率は30%以下になるものが好ましい。
【0035】
【表2】
【0036】
これらの結果、比較例であるNo.25は強度が低く、緻密になっておらず、紫外線遮蔽効果も乏しかった。
【0037】
これに対し、本発明の、被膜を形成した実施例(No.1〜No.24)では強度を向上させることができた。特に、被膜組成を本発明の範囲内としたもの(No.2、4、6、10〜12、15〜24)は緻密で高強度とすることができた。
【0038】
また、CeO2 、TiO2 、ZnOの少なくとも1種を含む組成物からなる被膜を加えたもの(No.7〜24)では紫外線を遮蔽できることも確認できた。
【0039】
尚、本発明は前記詳述した実施例に何等限定されるものではない。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、一定空間を隔てて対向する基板間に、上記空間を仕切る複数の隔壁を有し、該隔壁間に構成される放電表示セル内に放電電極とアドレス電極を備えるとともに、上記放電表示セルの内壁に蛍光体を塗布してなるプラズマ表示装置において、あらかじめ形成されている隔壁表面に、緻密な被膜層を有することによって、隔壁の機械的強度や隔壁表面の緻密さを改善し、放電ガスや蛍光体の劣化のない耐久性に優れたプラズマ表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプラズマ表示装置用基板の部分断面図である。
【図2】従来のプラズマ表示装置の部分断面図である。
【符号の説明】
1:背面板
2:隔壁
3:アドレス電極
4:蛍光体
5:放電表示セル
6:正面板
7:放電電極
8:被膜
Claims (3)
- 一定空間を隔てて対向する基板間に、上記空間を仕切る複数の隔壁を有し、該隔壁間に構成される放電表示セル内に放電電極とアドレス電極を備えるとともに、上記放電表示セルの内壁に蛍光体を塗布してなるプラズマ表示装置の製造方法において、上記隔壁の表面にB 2 O 3 を20重量%以上、SiO 2 を18重量%以上、Al 2 O 3 を12重量%以上含有し、硬度が7.0GPa以上のガラス成分からなる気孔率が0.8%以下の緻密な被膜を溶射法により形成したことを特徴とするプラズマ表示装置の製造方法。
- 上記被膜が波長300〜450nmの光の透過率を30%以下にするように、B2O3を20重量%以上、SiO2を18重量%以上、Al2O3を12重量%以上含有し、硬度が7.0GPa以上のガラス成分からなるようにしたことを特徴とする請求項1記載のプラズマ表示装置の製造方法。
- 上記被膜が、CeO2、TiO2、ZnOのうち少なくとも一種を含有するガラス成分からなることを特徴とする請求項1記載のプラズマ表示装置の製造方法。
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