JP3652819B2 - 成形品のウェルドライン長さ予測方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は流動解析により、成形品におけるウェルドライン長さを予測する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂の射出成形等により得られるプラスチック成形品は、家電製品、OA機器等に広く使用されているが、これらの製品には高い外観性を要求される場合が多い。この外観性を損ねるものの1つにウェルドラインがあり、意匠面とのかねあいで、その発生位置が問題となる。
【0003】
ウェルドラインは、2つの異なる方向から樹脂が流れてきた場合その合流部に発生するが、合流部の全域がウェルドラインとなるわけではない。樹脂流動方向に対して十分下流側であれば、合流部であっても外観上問題となるようなウェルドとならない場合がある。合流部でウェルドラインが発生するか否かは、樹脂が合流する時の互いの流動先端のなす角度すなわち流動会合角により決定される。樹脂が実際に金型キャビティ内を流動する時の流動会合角がウェルドライン生成の有無に関係することは、東京大学生産技術研究所の横井等によって実験的に確かめられており、例えば1990年度プラスチック成形加工学会年次大会予稿集に記載されている。流動会合角は下流に行くに従って大きくなるため、この値はウェルドライン長さの指標となる。
【0004】
一方、ウェルドライン長さを予測する方法としては、従来よりコンピュータを利用した射出成形CAEの流動解析がある。これは各要素または各節点において算出された流動ベクトルを元にした例えば流動会合角を使用し、それをウェルドライン長さあるいは強弱予測の判断基準とする方法で、例えば特開平7−1529号公報に開示されている。
【0005】
しかしながら、流動解析ソフトでは、通常は樹脂のフローパターンを示す計算項の一部を簡略化した形で使用していることもあり、流動解析により算出される流動ベクトルすなわちフローパターンは、実際に樹脂が金型キャビティ内を流動する時のフローパターンと多少異なり、この傾向は特に樹脂合流部近傍において強い。したがって、算出される流動ベクトルのみを元にした例えば流動会合角を判断基準とする方法は、これまでウェルドラインの予測に対して不十分な場合があった。例えば、樹脂材料あるいは成形条件の違いにより実際の成形品では明らかにウェルドラインの長さが異なるような時でも、流動解析上ではその差が明確には現れない。
【0006】
計算式を簡略化せずに、解析上で実際の樹脂のフローパターンをより正確に再現させようとすると、流動解析ソフト自体を根本から作り直すことになり、時間や費用の面から見て好ましくない。またプログラム自体が膨大なものとなり、計算速度や計算の安定性という点で実用的ではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような事情に鑑み、成形品のウェルドライン長さについて、樹脂材料あるいは成形条件による違いを容易かつ確実に予測する方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、樹脂、剪断速度および温度により変化する“べき指数”の値と、ウェルドラインが消失する条件との間に相関関係があることを実験的に見い出し、これを利用することによりウェルドライン長さの正確な予測を可能とし、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち本発明は、成形品形状について溶融樹脂の流動解析を行い、溶融樹脂の流動会合角または流動合流角を算出する流動解析工程と、前記算出された流動会合角が設定値より小さいか、または前記算出された流動合流角が設定値より大きい成形品の領域を選択するウェルドライン発生予想部選択工程と、前記選択された領域において剪断粘度の剪断速度に対する“べき指数”を算出する“べき指数”算出工程と、前記算出された“べき指数”が予め樹脂ごとに計測された基準値以上のところをウェルドラインと定義するウェルドライン決定工程よりなることを特徴とする成形品のウェルドライン長さ予測方法に関する。
【0010】
また本発明は、前述の流動解析工程、ウェルドライン発生予想部選択工程および“べき指数”算出工程を経て、算出された“べき指数”を予め求めておいた関数を用いて補正消失基準角に置き換える補正消失基準角置換工程と、流動解析工程で算出された流動会合角または流動合流角と補正消失基準角置換工程で算出された補正消失基準角とを比較することによりウェルドラインの位置を決定するウェルドライン決定工程よりなることを特徴とする成形品のウェルドライン長さ予測方法に関する。
【0011】
以下に本発明を詳細に説明する。
一般に流動解析工程では成形品形状データ、樹脂注入点、注入樹脂温度、金型温度、射出流量、射出時間、樹脂の溶融粘度等の初期データを予め入力し、コンピュータを用いて樹脂流動状態を計算する。解析における離散化の手法としては、FEM(有限要素法)、FDM(差分法)、BEM(境界要素法)等の公知の手法を利用することができるが、適用範囲の広さからFEM(有限要素法)が最も好ましい。成形品形状を各要素に分割する手段としては、一般に市販されているメッシュジェネレーターを使用することができる。またこの流動解析工程は公知のシミュレーションプログラムを用いて行うことができる。
【0012】
本発明における流動合流角の概念図を図1に、流動会合角の概念図を図2に示す。流動合流角は、図1のαで示されるように2つの異なる方向から樹脂が流れてきて合流する時の、2つの流れ方向によってできる角度である。また流動会合角は図2のθで示されるように2つの異なる方向から樹脂が流れてきて合流する時の互いの流動先端のなす角度であり、一般に流動合流角の補角となる。
【0013】
本発明では、成形品形状について溶融樹脂の流動解析を行い、溶融樹脂の流動会合角または流動合流角を算出する。次いで、算出された流動会合角が任意に設定した設定値より小さいか、または算出された流動合流角が設定値より大きい成形品の領域を選択し、これをウェルドライン発生予想部とする。
【0014】
本発明における“べき指数”について説明する。
いま剪断速度をγ、剪断速度の対数値をγL、剪断粘度をη、剪断粘度の対数値をηL、温度をT、“べき指数”をnとすると、nはηLのγLに対する傾きとして定義される。すなわちη=C×γn であり、Cの対数値をCLとすると、CLはγLにおけるηL切片である。ただしこの場合、通常nは−1から0の間の値を取るために負の数となる。したがって本発明においてはnに1を加算した値、すなわちN=n+1であるところのNを“べき指数”として利用することもできる。この場合Nは通常0から1の間の正の数となり、より扱いやすくなる。Nおよびnは上記のような定義のため、樹脂毎にη、γ、Tの関数の形、すなわちN(またはn+1)=f(η、γ、T)で表すことができる。
以下の説明においては、Nを使用して説明する。
【0015】
本発明者らは鋭意検討した結果、樹脂、剪断速度および温度により変化する“べき指数”の値と、ウェルドラインが消失する位置すなわちウェルドライン長さとの間に相関関係があることを実験的に見い出した。このことから樹脂毎にウェルドラインが消失するときの“べき指数”、すなわちウェルド消失“べき指数”の設定が可能である。ウェルドライン長さとウェルド消失“べき指数”との関係の一例を図3に示す。
一方、前記“べき指数”算出工程により得られた、ウェルド発生予想部の各要素または各節点における“べき指数”は、合流した樹脂が併走して下流方向に流れていく場合、下流に行くほど小さくなる傾向にあることが本発明者らが行った検証解析により確かめられている。したがって算出された各“べき指数”とウェルド消失“べき指数”とを比較することによって、ウェルド消失“べき指数”より大きいところをウェルドライン位置と定義することができる。
前述のように“べき指数”は樹脂種類、剪断速度、温度等で変化する値であるため、“べき指数”の導入により、樹脂種類や成形条件の違いによるウェルドライン長さの評価が可能となる。
【0016】
本発明における補正消失基準角について説明する。
補正消失基準角は「計算上での流動会合角(または流動合流角)を“べき指数”を使用して補正した角度」という意味合いを持っている。したがって補正消失基準角の導入により、樹脂種類や成形条件の違いによるウェルドライン長さを、より正確に予測することが可能となる。この補正消失基準角と“べき指数”との間に相関関係があることを本発明者らは検証実験で確かめ、下記の方法で関数化できることを見出した。したがってこの関数を利用して、前行程で算出された“べき指数”分布を補正消失基準角分布に変換することができる。
【0017】
補正消失基準角の関数化方法について説明する。
手順を以下に示す。
▲1▼実際に射出成形を行い、ウェルドラインのある成形品を得る。
▲2▼実際に射出成形した時と同一のキャビティ形状、樹脂種類および成形条件で流動解析によるシミュレーションを行い、流動会合角(または流動合流角)分布および“べき指数”分布を得る。
▲3▼実際の成形品のウェルドライン消失点と同一点での解析上の流動会合角(または流動合流角)および“べき指数”を抽出する。この値をそれぞれ補正消失基準角および消失“べき指数”と称することとする。
▲4▼▲1▼〜▲3▼と同様のことを様々な製品形状、樹脂種類および成形条件で行い、補正消失基準角を消失“べき指数”について関数化する。
上記手順で抽出した補正消失基準角と消失“べき指数”の関係を図4に示す。補正消失基準角と消失“べき指数”との間には相関関係があり、関数化できることがわかる。
【0018】
“べき指数”算出工程で得られたウェルドライン発生予想部における“べき指数”分布は、この関数を利用して補正消失基準角分布に置き換えることができる。置き換えられた補正消失基準角分布と、流動解析工程で算出された流動会合角分布または流動合流角分布とを比較することにより、流動会合角が補正消失基準角より小さいところ、または流動合流角が補正消失基準角より大きいところをウェルドラインと定義することができる。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示した図5、図6および図7、比較例を示した図8の流れ図を使用して、本発明をより具体的に説明する。
なお以下の実施例は、図9に示すような形状(長辺220mm×短辺120mm×厚さ2.5mmの角板に、フィルムゲートより、溶融樹脂の流れ方向の後方30mmの位置に30mm×30mmの開口部を設けてある)の射出成形品に対して本発明の予測方法を適用したものであり、開口部より溶融樹脂の流れ方向に対して後方にウェルドラインが発生する。
【0020】
また本発明の予測方法の妥当性を示すため、実施例と同一条件で実際に射出成形を行うことにより成形品を得、そのウェルドライン長さを測定して予測値と比較した。射出成形に用いた成形機、および得られた成形品のウェルドライン長さ測定方法は以下の通りである。
1)射出成形機
アーブルグ社製オールラウンダー320−210−750を使用した。
2)ウェルドライン長さ測定方法
得られた成形品のウェルドラインの深さを、接触式表面粗さ計(東京精密社製サーフコム570A、触針1μmR)にてウェルドライン直交方向に針を走査させることにより測定した。このウェルドラインの深さ測定は図9に示す開口部から樹脂流動方向に対して後方に0.5mm間隔でその深さが1μm以下となるまで繰り返し行った。深さが1μm以下になった時の開口部からの距離をその成形品のウェルドライン長さとした。
【0021】
実施例1
使用樹脂は電気化学工業(株)製デンカスチロールのHRM−2とし、成形条件は樹脂温度210℃、射出率42cm3 /秒、金型温度40℃として、予測値および実測値を求めた。
【0022】
図5に示した流れ図を使用し、まず流動解析工程について説明する。
流動解析工程では、公知のシミュレーションプログラムを用いて成形品形状データ、樹脂注入点、注入樹脂温度、金型温度、射出流量、射出時間、樹脂の溶融粘度等の初期データを予め入力し、コンピュータを用いて流動解析を行う。この流動解析工程により各要素または各節点における、温度T、剪断速度γ、粘度η、流動ベクトル等が算出され、さらに流動ベクトルより流動会合角θまたは流動合流角αが算出される。
【0023】
次にウェルドライン発生予想部選択工程について説明する。
この工程では、前記流動解析工程により算出された流動会合角θが設定値θsより小さいか、または算出された流動合流角αが設定値αsより大きい要素または節点を選択する。θsおよびαsは選択された要素または節点が過少または過大にならない範囲で任意に設定することができる。本実施例では、θsを165度に設定したところ、図9に示す●および○部分の節点が選択された。このように、本工程でおおまかに合流部の要素または節点が選択されることになるが、これがそのままウェルドラインとなるわけではない。すなわち、●部分は後述のように本発明により最終的に決定されたウェルドラインであり、これと○部分の両方からなる部分がウェルドライン発生予想部として選択される。
この工程を省くと、明らかに合流部とは異なる部分についてもウェルドラインと判定されてしまうことがある。またこの工程で計算範囲を絞り込んでおくことにより、以降の工程での計算コストが抑えられる。
【0024】
次に“べき指数”算出工程について説明する。
この工程では、前記ウェルドライン発生予想部選択工程により選択された各要素または各節点における“べき指数”Nを算出する。このNは、前記流動解析工程で得られる各要素または各節点におけるη、γ、TをN=f(η、γ、T)の関数に当てはめることにより、前記ウェルドライン発生予想部選択工程により選択された各要素または各節点において算出することができる。
この際に使用されるN=f(η、γ、T)の関数は、市販されている公知のキャピラリーレオメーター等で、剪断速度および温度を変化させた際の使用樹脂の剪断粘度を測定し、そのデータを数学的に処理することにより予め求めておき、データベースに格納しておく。
【0025】
本実施例では、使用樹脂である電気化学工業(株)製のデンカスチロールHRM−2で、市販のROSAND社製ツインキャピラリーレオメーターRH7−2を使用し、190℃、210℃および230℃の各温度において剪断速度1500、750、375、180、90、30、15および6/秒における剪断粘度を測定した。
各測定点での剪断速度の対数値γL、剪断粘度の対数値ηLおよび温度Tを数学的に3元2次関数に近似した結果、下記の式を得た。
【0026】
【数1】
Figure 0003652819
【0027】
これをγLについて偏微分し1を加算することにより、下記の数2なる関数を得た。
【0028】
【数2】
Figure 0003652819
【0029】
“べき指数”としてnを使用する場合には、数3なる関数を使用する。
【0030】
【数3】
Figure 0003652819
【0031】
上記の数2の関数を“べき指数”算出工程に使用した。その結果図11に示すような“べき指数”N分布が得られた。
【0032】
次にウェルドライン決定工程について説明する。
この工程で、前記“べき指数”算出工程により得られた、ウェルドライン発生予想部の各要素または各節点における“べき指数”がある基準値以上のところをウェルドラインと定義する。この基準値であるウェルド消失“べき指数”NLは、本発明者らが検証実験により予め求めておいたものであり、ウェルドラインが消失する条件、具体的にはウェルド長さとの間に相関関係がある。したがって算出された各“べき指数”とウェルド消失“べき指数”を比較することによって、ウェルド消失“べき指数”より大きいところをウェルドラインと定義することができる。
本実施例の使用樹脂HRM−2におけるウェルド消失“べき指数”NL=0.20を、本実施例に当てはめた結果、図10に示す●部分の節点が選択された。したがってこの部分がウェルドラインと予測することができる。
●部分を直線で結んだときの長さを予測長さとし、その値を表1に示す。
また、実際の射出成形品のウェルドライン長さを実測値とし、表1に併せて示す。予測値が良好であることがわかる。
【0033】
【表1】
Figure 0003652819
【0034】
表1に示すように、上記において使用樹脂を電気化学工業(株)製デンカABSのQFとした場合、および使用樹脂をHRM−2とし成形条件の射出率を63cm3 /秒とした場合について上記と同様にウェルドライン長さの予測値および実測値を求めた。結果を表1に示す。樹脂あるいは成形条件を変えても予測値が良好であることがわかる。
【0035】
実施例2
使用樹脂は電気化学工業(株)製デンカスチロールのHRM−2とし、成形条件は樹脂温度210℃、射出率42cm3/秒、金型温度40℃として、予測値および実測値を求めた。
【0036】
図6に示した流れ図を使用する。
流動解析工程、ウェルドライン発生予想部選択工程および“べき指数”算出工程は実施例1と同様に行った。
【0037】
補正消失基準角置換工程について説明する。
この工程では“べき指数”算出工程で得られたウェルドライン発生予想部における“べき指数”分布を、補正消失基準角分布に置き換える。この置き換えには、検証実験により予め求めた関数を使用する。
【0038】
次にウェルドライン決定工程について説明する。
この工程で、前記補正消失基準角置換工程で得られたウェルドライン発生予想部での補正消失基準角分布と、前記流動解析工程で得られた流動会合角分布または流動合流角分布とを比較することによりウェルドライン長さが決定される。流動会合角が補正消失基準角より小さいところ、または流動合流角が補正消失基準角より大きいところをウェルドライン位置と定義する。図12に本実施例における補正消失基準角分布および流動会合角分布を併せて示す。この場合、流動会合角が補正消失基準角より小さいところまでがウェルドライン位置と予測することができる。
流動会合角が補正消失基準角より小さいところまでの開口部からの距離を予測長さとし、その値を表1に示す。また、実際の射出成形品のウェルドライン長さを実測値とし、表1に併せて示す。予測値が良好であることがわかる。
【0039】
表1に示すように、使用樹脂を電気化学工業(株)製デンカスチロールのHRM−3、HRM−5、HI−SQ、デンカABSのQFとした場合、またデンカスチロールのHRM−2を使用し成形条件の射出率を63cm3 /秒とした場合について上記と同様にウェルドライン長さの予測値および実測値を求めた。結果を表1に示す。樹脂あるいは成形条件を変えても予測値が良好であることがわかる。
【0040】
実施例3
使用樹脂は電気化学工業(株)製デンカスチロールのHRM−2とし、成形条件は樹脂温度210℃、射出率42cm3 /秒、金型温度40℃として、予測値および実測値を求めた。
【0041】
図7に示した流れ図を使用する。
流動解析工程は、実施例2において流動ベクトルから流動会合角θを算出する代わりに流動合流角αを算出した以外は実施例2と同様に行った。
ウェルドライン発生予想部選択工程では本実施例の場合、前記流動解析工程により算出された流動合流角αが基準値αsより大きい要素または節点を選択する。αsは選択された要素または節点が過少または過大にならない範囲で任意に設定することができる。本実施例では、αsを15度に設定した。
“べき指数”算出工程は実施例2と同様に行った。
補正消失基準角置換工程は実施例2と同様に行った。ただし本実施例における補正消失基準角は、流動合流角について関数化されたものである。
ウェルドライン決定工程は、本実施例の場合、ウェルドライン発生予想部における各流動合流角と補正消失基準角との比較によりウェルドライン長さを決定する。
流動合流角が補正消失基準角より大きいところまでの開口部からの距離を予測長さとし、その値を表1に示す。また、実際の射出成形品のウェルドライン長さを実測値とし、表1に併せて示す。予測値が良好であることがわかる。
【0042】
比較例1
比較例として図8に示した流れ図のような方法がある。図8の場合、計算結果で使用している値は流動ベクトルのみであるため、樹脂種類や成形条件によるウェルドライン長さの違いは明確には評価できない。これは、実際に溶融樹脂が金型内を流動する際は、特に合流部近傍において樹脂種類や成形条件によりフローパターンが変化するのに対して、流動解析上で算出される流動ベクトルひいてはフローパターンにはその差が明確には現れないためである。
【0043】
【発明の効果】
本発明のウェルドライン長さ予測方法は、射出成形品等のウェルドライン発生位置について、樹脂材料あるいは成形条件による違いを容易かつ確実に予測することができる。したがって金型試作回数の低減やそれに伴う開発期間の短縮によるコストの低減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】流動合流角の説明図である。
【図2】流動会合角の説明図である。
【図3】ウェルド消失“べき指数”とウェルドライン長さの関係例を示すグラフである。
【図4】ウェルド消失“べき指数”と補正消失基準角の関係を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例1における予測方法の流れ図である。
【図6】本発明の実施例2における予測方法の流れ図である。
【図7】本発明の実施例3における予測方法の流れ図である。
【図8】本発明の比較例1を示す予測方法の流れ図である。
【図9】本発明の実施例に用いた成形品形状を示す平面図である。
【図10】本発明の実施例におけるウェルドライン発生予想部選択結果およびウェルドライン予測結果の説明図である。
【図11】本発明の実施例における“べき指数”分布を示すグラフである。
【図12】本発明の実施例における流動会合角分布および補正消失基準角分布を示すグラフである。
【符号の説明】
α 流動合流角
θ 流動会合角
N “べき指数”
β 補正消失基準角

Claims (2)

  1. 成形品形状について溶融樹脂の流動解析を行い、溶融樹脂の流動会合角または流動合流角を算出する流動解析工程と、前記算出された流動会合角が設定値より小さいか、または前記算出された流動合流角が設定値より大きい成形品の領域を選択するウェルドライン発生予想部選択工程と、前記選択された領域において剪断粘度の剪断速度に対する“べき指数”を算出する“べき指数”算出工程と、前記算出された“べき指数”が予め樹脂ごとに計測された基準値以上のところをウェルドラインと定義するウェルドライン決定工程よりなることを特徴とする成形品のウェルドライン長さ予測方法。
  2. 請求項1記載の流動解析工程、発生予想部選択工程および“べき指数”算出工程を経て、算出された“べき指数”を予め求めておいた関数を用いて補正消失基準角に置き換える補正消失基準角置換工程と、流動解析工程で算出された流動会合角または流動合流角と前記補正消失基準角置換工程で算出された補正消失基準角を比較することによりウェルドラインの位置を決定するウェルドライン決定工程よりなることを特徴とする成形品のウェルドライン長さ予測方法。
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