JP3652444B2 - 応力測定装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、荷重が作用する対象物に生じる応力の大きさ、あるいはその時間的変化量を測定する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば車両等、各種対象物の荷重試験や、衝撃試験、衝突試験等においては、対象物に付与される荷重によって該対象物に生じる応力の大きさ、あるいはその時間的変化量(応力の大きさの時間微分値)を測定することが一般に行われている。また、自動車の電子制御サスペンション等の機械装置にあっては、その特定部位(例えばサスペンションのダンパーと車体との連結箇所等)に作用する荷重に応じた機械装置の作動制御を行う場合には、上記特定部位の対象物に荷重によって生じる応力の大きさ、あるいはその時間的変化量を測定することが必要となる。
【0003】
そして、このような応力測定を行うための装置としては、従来、対象物あるいはそれと一体化した起歪体に例えば歪ゲージを固着し、その歪ゲージの出力信号に基づき、対象物に生じた応力を測定するものが一般に知られている。この場合、該歪ゲージは、対象物に生じた応力の大きさに応じたレベルの信号を生成するもので、その信号レベルにより応力の大きさが測定される。さらに、対象物に生じた応力の時間的変化量を測定する場合には、歪ゲージの出力信号を微分することで、応力の時間的変化量を示す信号データを生成し、それにより応力の時間的変化量が測定される。
【0004】
しかしながら、このような従来の応力測定装置にあっては、前記歪ゲージが一般にノイズや温度変化等の影響を受けやすく、応力測定を安定して精度よく行うことが困難なものとなっていた。
【0005】
また、特に、対象物に生じる応力の時間的変化量を測定する場合には、歪ゲージの出力信号を微分することとなるが、この場合、歪ゲージの出力信号に含まれるノイズ成分は一般に、応力の大きさに応じた信号成分よりも高周波であるため、それを微分してなる信号データにあっては、ノイズ成分のパワー(これはノイズ成分の周波数に比例する)が大きくなる。従って、そのような信号データから応力の時間的変化量を安定して精度よく測定することはより一層困難なものとなっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる背景に鑑み、対象物に生じる応力の大きさ、あるいはその時間的変化量を簡単な構成で精度よく安定して測定することができる応力測定装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本願発明者等は、各種検討を行った結果、応力に応じた透磁率変化を生じる磁歪体を用いることで、上記の目的を達成することが可能であることを知見した。
【0008】
すなわち、磁歪体にあっては、それを通る磁束をφ、該磁歪体に生じる応力をσとしたとき、磁束φの時間的変化量(dφ/dt)と、応力σの時間的変化量(dσ/dt)との間には、次の関係式(1)が成り立つ。
【0009】
【数1】
Figure 0003652444
【0010】
ここで、式(1)において、Bは磁歪体内の磁束密度(∝φ)、Hは磁歪体に付与される磁界、μは磁歪体の透磁率である。
【0011】
この場合、磁歪体では、dμ/dσは略一定であるので、磁歪体に付与する磁界Hをその大きさ及び方向が時間的に変化しない直流磁界(≠0)とすれば、式(1)の右辺におけるH・dμ/dσは定数(≠0)となり、従って、磁束φの時間的変化量(dφ/dt)と、応力σの時間的変化量(dσ/dt)との間には次式(2)に示すように比例関係が成り立つ。
【0012】
【数2】
Figure 0003652444
【0013】
よって、磁歪体に直流磁界を付与した状態で、磁束φの時間的変化量(dφ/dt)を検出すれば、それにより直ちに応力σの時間的変化量(dσ/dt)を測定できる。
【0014】
また、検出した磁束φの時間的変化量(dφ/dt)を積分すれば、その積分値が次式(3)に示すように応力σの大きさに比例するので、その積分値により応力σの大きさを測定できる。
【0015】
【数3】
Figure 0003652444
【0016】
尚、磁束φの時間的変化量(dφ/dt)は、ファラデー及びレンツの法則に従って、磁束φと鎖交するコイルにより該時間的変化量(dφ/dt)に比例した起電力信号を生成することで、検出できる。
【0017】
以上の知見の基で、本発明の応力測定装置の第1の態様は、前記の目的を達成するために、荷重を付与される対象物に生じる応力の時間的変化量を測定する応力測定装置であって、前記対象物に固着され、該対象物に生じる応力に応じた透磁率変化を生じる磁歪体と、該磁歪体に直流磁界を付与する直流磁界付与手段と、該直流磁界の付与状態で前記対象物に生じる応力による前記磁歪体の透磁率変化に伴う該磁歪体の磁束の時間的変化量に応じた信号を生成する磁束変化検出手段とを備え、前記直流磁界付与手段は、あらかじめ磁気極性をもって着磁された前記対象物自身により構成されており、前記磁束変化検出手段により生成された信号を前記対象物に生じた応力の時間的変化量を示すものとして該信号に基づき前記対象物に生じた応力の時間的変化量を測定することを特徴とする。
【0018】
あるいは、本発明の応力測定装置の第2の態様は、前記の目的を達成するために、荷重を付与される対象物に生じる応力の時間的変化量を測定する応力測定装置であって、前記対象物が自身に生じる応力に応じた透磁率変化を生じる磁歪体から成り、該対象物に直流磁界を付与する直流磁界付与手段と、該直流磁界の付与状態で前記対象物に生じる応力による該対象物の透磁率変化に伴う該対象物の磁束の時間的変化量に応じた信号を生成する磁束変化検出手段とを備え、前記直流磁界付与手段は、あらかじめ磁気極性をもって着磁された前記対象物自身により構成されており、前記磁束変化検出手段により生成された信号を前記対象物に生じた応力の時間的変化量を示すものとして該信号に基づき前記対象物に生じた応力の時間的変化量を測定することを特徴とする。
【0019】
かかる本発明の第1または第2の態様によれば、前記対象物に固着した前記磁歪体、または磁歪体からなる前記対象物に、前記直流磁界付与手段により直流磁界を付与した状態で、対象物に荷重が付与されると、該対象物に生じる応力によって、該対象物に固着した磁歪体または磁歪体からなる対象物の透磁率が変化し、それらの磁歪体または対象物を通る磁束が変化する。そして、この磁束の時間的変化量に応じた信号が前記磁束変化検出手段により生成される。このとき、対象物に固着した磁歪体または磁歪体からなる対象物における磁束の時間的変化量は前述したことから明らかなように、対象物に生じた応力の時間的変化量に略比例したものとなるので、前記磁束変化検出手段により生成される信号から直接的に対象物に生じた応力の時間的変化量が測定される。
【0021】
この場合、磁束の時間的変化量の応じた信号を生成する前記磁束変化検出手段は、例えば対象物に固着した磁歪体または磁歪体からなる対象物を通る磁束と鎖交するコイルにより簡単に構成することができる。
【0022】
よって、本発明の第1または第2の態様によれば、磁束変化検出手段により生成される信号を微分したりすることなく、その信号から直接的に対象物に生じた応力の時間的変化量を測定できるので、その応力時間的変化量を簡単な構成で精度よく安定して測定することができる
また、本発明の第1または第2の態様によれば、前記直流磁界付与手段は、あらかじめ磁気極性をもって着磁された前記対象物自身により構成され、換言すれば、対象物自身を磁石化して構成されているので、前記直流磁界付与手段を構成するための専用の磁石やコイルが不要となって、応力測定装置の構成をより一層簡略なものとすることができる。
【0023】
次に、本発明の応力測定装置の第3の態様は、前記の目的を達成するために、荷重を付与される対象物に生じる応力の大きさを測定する応力測定装置であって、前記対象物に固着され、該対象物に生じる応力に応じた透磁率変化を生じる磁歪体と、該磁歪体に直流磁界を付与する直流磁界付与手段と、該直流磁界の付与状態で前記対象物に生じる応力による前記磁歪体の透磁率変化に伴う該磁歪体の磁束の時間的変化量に応じた信号を生成する磁束変化検出手段と、該磁束変化検出手段により生成された信号を前記対象物に生じた応力の時間的変化量を示すものとして該信号により示される前記対象物に生じた応力の時間的変化量を積分する積分手段とを備え、前記直流磁界付与手段は、あらかじめ磁気極性をもって着磁された前記対象物自身により構成されており、前記積分手段により得られた積分値により前記対象物に生じた応力の大きさを測定することを特徴とする。
【0024】
あるいは、本発明の応力測定装置の第4の態様は、前記の目的を達成するために、荷重を付与される対象物に生じる応力の大きさを測定する応力測定装置であって、前記対象物が自身に生じる応力に応じた透磁率変化を生じる磁歪体から成り、該対象物に直流磁界を付与する直流磁界付与手段と、該直流磁界の付与状態で前記対象物に生じる応力による該対象物の透磁率変化に伴う該対象物の磁束の時間的変化量に応じた信号を生成する磁束変化検出手段と、該磁束変化検出手段により生成された信号を前記対象物に生じた応力の時間的変化量を示すものとして該信号により示される前記対象物に生じた応力の時間的変化量を積分する積分手段とを備え、前記直流磁界付与手段は、あらかじめ磁気極性をもって着磁された前記対象物自身により構成されており、前記積分手段により得られた積分値により前記対象物に生じた応力の大きさを測定することを特徴とする。
【0025】
かかる本発明の第3または第4の態様によれば、前記第1または第2の態様と同様に、対象物に荷重が付与されて応力が生じたとき、前記磁束変化検出手段によって、前記対象物に固着した磁歪体または磁歪体からなる対象物の磁束の時間的変化量に応じた信号が生成され、この信号は対象物に生じた応力の時間的変化量を示すものとなる。従って、その信号により示される応力の時間的変化量を前記積分手段により成分してなる積分値は該応力の大きさを示すものとなり、該積分値により応力の大きさが測定される。この場合、磁束変化検出手段により生成される信号に高周波のノイズ成分が含まれていても、それが前記積分手段によってを積分されることで、そのノイズ成分のパワーがその周波数に反比例して小さくなるため、前記積分手段によって得られる積分値にあっては、ノイズ成分が低減する。
【0026】
そして、前記第1または第2の態様と同様に、前記磁束変化検出手段は、例えば対象物に固着した磁歪体または磁歪体からなる対象物を通る磁束と鎖交するコイルにより簡単に構成することができる。
【0027】
よって、本発明の第3または第4の態様によれば、磁束変化検出手段により生成される信号により示される応力の時間的変化量を積分してなる積分値により対象物に生じた応力の大きさを測定することで、その応力の大きさを簡単な構成で精度よく安定して測定することができる
また、本発明の第3または第4の態様によれば、前記直流磁界付与手段は、あらかじめ磁気極性をもって着磁された前記対象物自身により構成され、換言すれば、対象物自身を磁石化して構成されているので、前記直流磁界付与手段を構成するための専用の磁石やコイルが不要となって、応力測定装置の構成をより一層簡略なものとすることができる。
【0030】
また、本発明の各態様にあっては、前記対象物に固着した磁歪体、直流磁界付与手段及び磁束変化検出手段の周囲に磁気シールド部材を設け、あるいは、磁歪体から成る対象物、直流磁界付与手段及び磁束変化検出手段の周囲に磁気シールド部材を設けることが好ましい。
【0031】
このようにすることで、外部磁界の影響を排除することができ、対象物に生じる応力の時間的変化量や応力の大きさの測定精度を高めることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を説明する前に、本発明の実施形態に関連した参考例を説明する。まず、第1の参考例を図1を参照して説明する。図1は本参考例の応力測定装置の一部を斜視図で示したシステム構成図である。尚、本参考例は本発明の第1及び第3の態様に対応する実施形態に関連したものである。
【0033】
同図1において、本参考例の応力測定装置は、長手方向で圧縮または引っ張り荷重Fを付与される棒状の対象物1に生じる応力の大きさ及びその時間的変化量(応力の大きさの時間微分値)を測定するものであり、対象物1の長手方向の略中央箇所で該対象物1の外周面に接着剤等により一体的に固着された例えば純鉄や鉄系アモルファス合金等からなる磁歪体2と、対象物1の下部の外周に固着された直流磁界付与手段としての磁石3と、磁歪体2の箇所で対象物1の周囲を包囲するようにして配置された磁束変化検出手段としてのコイル4と、コイル4の出力信号を処理する測定用回路5とを具備し、磁歪体2、磁石3及びコイル4の周囲が例えば純鉄等からなる磁気シールド部材である略筒状のカバー体6により覆われている。磁石3は、例えばフェライト磁石等により構成され、図示のように対象物1の長手方向に沿って直流磁界H(大きさ及び方向が一定の磁界)を発生し、それを磁歪体2に付与する。
【0034】
カバー体6は、その上面部及び下面部にそれぞれ形成された孔部6a,6bから対象物1の上端部及び下端部を突出させた状態で磁歪体2、磁石3及びコイル4の周囲を覆い、その上面部及び下面部が孔部6a,6bの箇所で対象物1の外周に固着されている。そして、このカバー体6の内周面にコイル4が固着されている。尚、磁石3は、このカバー体6の内周面に固着してもよい。
【0035】
測定用回路5は、コイル4からカバー体6の外部に導出されたリード線4aを介してコイル4の出力信号を入力するローパスフィルタ7と、このローパスフィルタ7の出力を増幅するアンプ8と、このアンプ8の出力をそれと同じ二つの信号に二分するスプリッタ9とを具備し、スプリッタ9の一方の出力をそのまま第1出力端子10から外部に出力すると共に、スプリッタ9の他方の出力を積分器11(積分手段)により積分してなる信号を第2出力端子12から外部に出力する構成としている。
【0036】
次に、かかる応力測定装置の作動を説明する。
【0037】
対象物1に、その長手方向で時間的な変動を生じる荷重を付与すると、その荷重に応じた応力が対象物1及びこれに固着した磁歪体2に生じ、このとき、該磁歪体2の透磁率がその応力に応じて変化する。このため、磁石3から付与される直流磁界Hによって磁歪体2に生じる磁束(≒μ・H・S、但し、μは磁歪体2の透磁率、Sは磁歪体2の断面積)が時間的変化を生じる。これにより、コイル4を貫通する磁束(コイル4と鎖交する磁束)が時間的変化を生じるため、該コイル4には、ファラデー及びレンツの法則に従って磁歪体2の磁束の時間的変化量(磁束の時間微分値)に比例したレベルの起電力信号(∝dφ/dt、φは磁束)が生成される。そして、この場合、前記式(2)に示したように、磁歪体2の磁束の時間的変化量は該磁歪体2の一体の対象物1に生じた応力の時間的変化量(応力の時間微分値)に比例するので、上記のようにコイル4に生成される起電力信号のレベルは、対象物1に生じた応力の時間的変化量に比例したものとなる。
【0038】
このようにして、コイル4に生成された起電力信号は、測定用回路5においてローパスフィルタ7により高周波のノイズ成分が概ね除去された後、アンプ8により増幅され、それがスプリッタ9を介して前記第1出力端子10に出力される。また、アンプ8により増幅されたコイル4の起電力信号は、スプリッタ9を介して積分器11に入力され、この積分器11により積分してなる信号が第2出力端子12に出力される。
【0039】
この場合、第1出力端子10に得られる信号は、基本的には、コイル4に生成された起電力信号をそのままアンプ8により増幅したもので、また、該起電力信号のレベルは上記のように対象物1に生じた応力の時間的変化量に比例したものであるので、第1出力端子10に得られる信号のレベルは、対象物1に生じた応力の時間的変化量を示すものとなる。従って、第1出力端子10に得られる信号により直接的に対象物1に生じた応力の時間的変化量を測定することができる。
【0040】
また、第1出力端子10に得られる信号は、コイル4の起電力信号を微分したりすることなく得られたものであるため、ローパスフィルタ7により除去しきれなかった高周波のノイズ成分のパワーが増大化して含まれてしまうようなことがなく、第1出力端子10に得られる信号により対象物1に生じた応力の時間的変化量を比較的精度よく安定して測定することができる。
【0041】
また、前記第2出力端子12に得られる信号は、対象物1に生じた応力の時間的変化量に比例してコイル4に生成される起電力信号を積分器11により積分したものであるので、第2出力端子12の信号レベルは、対象物1に生じた応力の大きさに比例したものとなる(前記式(3)参照)。従って、第2出力端子12に得られる信号レベルにより対象物1に生じた応力の大きさを測定することができる。そして、この場合、コイル4に生成される起電力信号を積分器11により積分することで、ローパスフィルタ7により除去しきれなかった高周波のノイズ成分のパワーは、その周波数に反比例して減少するため、第2出力端子12に得られる信号により対象物1に生じた応力の大きさを精度よく安定して測定することができる。
【0042】
また、上記のように対象物1に生じた応力の時間的変化量を示す信号を生成するための前記磁歪体2や磁石3、コイル4は、その周囲が磁気シールド部材であるカバー対6により覆われているため、これらに外部磁場が作用するのが防止される。従って、コイル4により生成される起電力信号は、正しく対象物1に生じた応力の時間的変化量を示すものとなり、該応力の時間的変化量や大きさを精度よく測定できる。
【0043】
次に、応力測定装置の第2の参考例を図2を参照して説明する。図2は本参考例の応力測定装置の一部を斜視図で示したシステム構成図である。尚、本参考例は前記第1の参考例の一部のみを変更したものであるので、第1の参考例と同一構成部分については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0044】
同図2を参照して、本参考例は、対象物1に固着した磁歪体2に直流磁界Hを付与する直流磁界付与手段として、前記図1に示した磁石3に代えて、カバー体6内で対象物1の下部に外挿したコイル13を具備し、このコイル13に、カバー体6の外部に設けた直流電源14から抵抗15を介して直流電流を通電することで、前記磁石3と同様に直流磁界Hを生ぜしめる構成としている。他の構成は、前記第1の参考例のものと全く同一である。
【0045】
かかる本参考例の応力測定装置にあっては、直流磁界付与手段の構成のみが前記第1の参考例のものと異なるだけなので、前記第1の参考例のものと全く同様に、対象物1に荷重Fを付与したときに、測定用回路5の第1出力端子10に得られる信号によって、対象物1に生じた応力の時間的変化量を比較的精度よく安定して測定することができ、また、第2出力端子12に得られる信号によって、該応力の大きさを精度よく測定できる。
【0046】
次に、前記第1及び第2の参考例を参照して、本発明の第1の実施形態を説明する。前記第1及び第2の参考例において、直流磁界付与手段を磁石3やコイル13により構成したが、本実施形態においては、対象物1が磁性材料からなり、それをあらかじめ着磁して磁石化しておき、その対象物1自身により磁歪体2に直流磁界Hを付与するようにする。このようにすれば、磁石3やコイル13が不要になる。
【0047】
次に、第3の参考例を図3を参照して説明する。図3は本参考例の応力測定装置の一部を斜視図で示したシステム構成図である。尚、本参考例は、本発明の第2及び第4の態様に対応する実施形態に関連したものであるが、前記第1の参考例と基本構成は同一であるので、同一構成部分については、同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0048】
同図3を参照して、本参考例では、長手方向で圧縮または引っ張り荷重Fを付与される棒状の対象物16が例えば炭素鋼等の磁歪体により構成されている。そして、前記第1の参考例と同様に、この対象物16の下部の外周に、該対象物16に直流磁界Hを付与する磁石3(直流磁界付与手段)が固着されると共に、該対象物16の長手方向の略中央箇所の周囲に磁束変化検出手段であるコイル4が配置され、このコイル4に測定用回路5が接続されている。さらに、第1の参考例と同様に、磁石3及びコイル4、並びに対象物6の中間部の周囲を覆うカバー体6が備えられ、このカバー体6の上面部及び下面部から対象物6の上端部及び下端部が突出されている。
【0049】
従って、本参考例の応力測定装置は、前記第1の参考例のものにおいて、対象物1を磁歪体により構成し、磁歪体2を除去した構成としている。
【0050】
かかる本参考例の応力測定装置では、対象物16に、その長手方向で時間的な変動を生じる荷重を付与すると、その荷重に応じた応力が対象物16に生じ、このとき、該対象物16の透磁率がその応力に応じて変化する。このため、磁石3から付与される直流磁界Hによって対象物16に生じる磁束(≒μ’・H・S’、但し、μ’は対象物16の透磁率、S’は対象物16の断面積)が時間的変化を生じる。これにより、前記第1の参考例のものと全く同様に、コイル4を貫通する磁束(コイル4と鎖交する磁束)が時間的変化を生じるため、該コイル4には、対象物16の磁束の時間的変化量(磁束の時間微分値)に比例したレベルの起電力信号が生成され、また、該コイル4の起電力信号のレベルは対象物1に生じた応力の時間的変化量に比例したものとなる。
【0051】
従って、前記第1の参考例のものと全く同様に、対象物1に荷重Fを付与したときに、測定用回路5の第1出力端子10に得られる信号によって、対象物1に生じた応力の時間的変化量を比較的精度よく安定して測定することができ、また、第2出力端子12に得られる信号によって、該応力の大きさを精度よく測定できる。
【0052】
尚、本参考例では、直流磁界付与手段として磁石3を用いたが、前記第2の参考例と同様にコイルを用いて直流磁界付与手段を構成してもよい。
【0053】
次に、本発明の第2の実施形態を図4を参照して説明する。図4は本実施形態の応力測定装置の一部を斜視図で示したシステム構成図である。尚、本実施形態は、前記第3の参考例の一部のみを変更したものであるので、第3の参考例と同一構成部分については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0054】
同図4を参照して本実施形態の応力測定装置では、前記第3の参考例のものの磁歪体からなる対象物16を、例えばその上端側がN極、下端側がS極となるようにあらかじめ着磁し、前記第3の参考例のものに備えた磁石3を除去した構成としている。すなわち、本実施形態の応力測定装置では、対象物16をあらかじめ着磁しておく(磁石化する)ことで、第3の実施形態のものの磁石3に代えて、該対象物16自身を、該対象物16に直流磁界Hを付与する直流磁界付与手段として構成している。他の構成は、前記第3の参考例のものと全く同一である。
【0055】
かかる本実施形態の応力測定装置にあっては、対象物16自身により該対象物16に直流磁界Hを付与する点でのみ、前記第3の参考例のものと相違しているので、該第3の参考例や前記第1の参考例のものと全く同様に、対象物1に荷重Fを付与したときに、測定用回路5の第1出力端子10に得られる信号によって、対象物1に生じた応力の時間的変化量を比較的精度よく安定して測定することができ、また、第2出力端子12に得られる信号によって、該応力の大きさを精度よく測定できる。
【0056】
さらに、本実施形態では、対象物16に直流磁界を付与するための磁石やコイルが不要となるため、応力測定装置の構成を極めて簡略で安価なものとすることができる。
【0057】
尚、着磁した対象物16は、その着磁状態が経時的に、あるいは大きな荷重を付与したとき等に劣化していくことがあるので、この場合には、例えば前記第2の参考例と同様に、直流磁界を付与するためのコイルを設けておき、必要に応じて、随時、該コイルに直流電流を通電して対象物16の着磁状態を回復させるようにしてもよい。
【0058】
次に、応力測定装置の第4の参考例を図5を参照して説明する。図5は本参考例の応力測定装置の一部を断面図で示したシステム構成図である。
【0059】
参考例の応力測定装置は、荷重計として構成したものであり、荷重Fを軸心方向に付与される磁歪体からなるロッド17(対象物)が台座18上にネジ18aにより立設・固定されている。この場合、ロッド17の下端面と台座18の上面との間にはゴム等からなる防振材19が介装されている。また、台座18の下面部には防振材19と同様の防振材20が固着され、この防振材20を介して台座18が応力測定装置の設置箇所に取り付けられるようになっている。
【0060】
ロッド17の中間部には、純鉄等からなる筒状の磁気シールド部材21が外挿されて該ロッド17に固定され、この磁気シールド部材21の上端部及び下端部の中心部にそれぞれ設けられた孔部21a,21bからロッド17の上端部及び下端部がそれぞれ突出されている。
【0061】
磁気シールド部材21の内部には、その上端部の箇所と下端部の箇所とでそれぞれロッド17に同心に外挿された環状の磁石22,23が収容され、さらに、これらの磁石22,23の間でベークライトボビン24に挿着されたコイル25がロッド17に同心に外挿されて収容され、これらの磁石22,23及びコイル25は、その外周面がコーキング材26を介して磁気シールド部材21の内周面に防振的に固定されている。この場合、磁石22,23は、例えばフェライト磁石からなるもので、ロッド17の軸心部に矢印Hで示すように直流磁界を付与するようにしている。
【0062】
また、コイル25からその起電力信号を出力するためのリード線27が磁気シールド部材21の外部に導出され、このリード線27が前述の各参考例及び実施形態に備えた測定用回路と同一構成の測定用回路5に接続されている。この測定用回路5の各部の構成は、前述の通りであるので、ここでは説明を省略する。
【0063】
かかる本参考例の応力測定装置(荷重計)では、ロッド17の上端部に時間的に変動する荷重Fが該ロッド17の軸方向に作用すると、その荷重Fに応じた応力がロッド17に生じる。そして、この場合、前述した本参考例の応力測定装置の構成は、前記第3の参考例のもの(図3参照)と基本的構成は同一であるので、該第3の参考例のものと全く同様に、コイル25によりロッド17に生じた応力の時間的変化量に応じた起電力信号が生成され、換言すれば、ロッド17に作用した荷重Fの時間的変化量に応じた起電力信号が生成され、それが測定用回路5に出力される。従って、測定等回路5の第1出力端子10に得られる信号が荷重Fの時間的変化量を示すものとなり、その信号レベルにより荷重Fの時間的変量を精度よく安定して測定できる。
【0064】
また、測定用回路5の積分器11側の第2出力端子12に得られる信号が荷重Fの大きさを示すものとなり、その信号レベルにより荷重Fの大きさを精度よく安定して測定できる。
【0065】
次に、本発明の応力測定装置によって、実際に得られる信号を、例えば前記第2の実施形態のものを例にとって図6を参照しつつ説明する。
【0066】
本願発明者等は、前記第2の実施形態の応力測定装置(図4参照)において、コイル4の起電力信号により対象物16に生じた応力の時間的変化量を測定でき、また、その信号を積分器11により積分したものにより応力の大きさを測定することができることを確認するために、次のような試験を行った。
【0067】
すなわち、対象物16をあらかじめ例えば25エルステッドの磁界で着磁して磁石化した後、該対象物16に図6(a)に実線aで示すような正弦波の圧縮・引張荷重を該対象物16の軸方向に付与した。ここで、付与した圧縮・引張荷重は、±300kg(±3kg/mm2 )の振幅で周波数は20Hzである。また、対象物16の材質は炭素鋼である。
【0068】
このとき、前記測定用回路5の第1出力端子10には、図6(b)に実線bで示すようにコイル4の起電力信号が得られた。また、この起電力信号を積分器11により積分してなる信号を出力する第2出力端子12には、図6(c)に実線cで示すような信号が得られた。
【0069】
図6(b)に示すように、コイル4の起電力信号は正弦波で、対象物16に付与した圧縮・引張荷重(この荷重によって該荷重に比例した応力が対象物16に生じる)の正弦波に対して90°の位相差を有している。このことから上記の荷重の付与時にコイル4により生成される起電力信号は、該荷重によって生じる対象物16の応力の時間的変化量(応力の時間微分値)を示すものとなることが判る。
【0070】
また、図6(c)に示すように、コイル4の起電力信号を積分してなる第2出力端子12の信号は、正弦波で、対象物16に付与した圧縮・引張荷重の正弦波と同位相となっている。このことからコイル4の起電力信号を積分してなる信号は、対象物16の応力の大きさを示すものとなることが判る。
【0071】
従って、前述の如く、コイル4の起電力信号により直接的に対象物16に生じた応力の時間的変化量を測定することができ、また、それを積分することで対象物16に生じた応力の大きさを測定することができることが判る。
【0072】
尚、図示及び詳細な説明は省略するが、本願発明者等は、対象物16に付与する荷重の振幅や周波数を種々の大きさに変更したり、対象物16に付与する荷重を三角波状のものとして、上記と同様の試験を行ったがいずれの場合にも、上記の試験と同様の結果が得られた。
【0073】
以上説明した各参考例及び実施形態では、荷重の付与時に対象物に生じる応力の時間的変化量及び大きさの両者を測定するものを示したが、いずれか一方のみを測定するようにしてもよいことはもちろんである。
【0074】
また、前記各参考例及び実施形態では、単一のコイル(磁束変化検出手段)の信号により対象物に生じる応力の時間的変化量及び大きさの両者を測定するものを示したが、対象物に生じる応力の時間的変化量及び大きさをそれぞれ測定するために各別のコイルを備え、各コイルの信号により応力の時間的変化量及び大きさを各別に測定するようにしてもよい。
【0075】
また、本発明の応力測定装置は、前記第4の参考例で説明した荷重計として適用できるばかりでなく、例えば車両等の衝突試験や衝撃試験に際して車両等の生じる応力の時間的変化量や大きさを測定する場合にも適用することができ、また、例えば車両の電子制御サスペンションにおいて、そのサスペンションが路面から受ける荷重の大きさや時間的変化量を本発明の応力測定装置を用いて検出し、それに応じてサスペンションのダンパー等の減衰力を制御するような場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の応力測定装置の第1の実施形態に関連した第1の参考例の一部を斜視図で示したシステム構成図。
【図2】 本発明の応力測定装置の第1の実施形態に関連した第2の参考例の一部を斜視図で示したシステム構成図。
【図3】 本発明の応力測定装置の第2の実施形態に関連した第3の参考例の一部を斜視図で示したシステム構成図。
【図4】 本発明の応力測定装置の第2の実施形態の一部を斜視図で示したシステム構成図。
【図5】 本発明の応力測定装置に関連した第4の参考例の一部を断面図で示したシステム構成図。
【図6】 図4の応力測定装置において実際に得られる信号データを説明するための線図。
【符号の説明】
1,16…対象物(直流磁界付与手段)、2…磁歪体、4,25…コイル(磁束変化検出手段)、6,21…磁気シールド部材。

Claims (7)

  1. 荷重を付与される対象物に生じる応力の時間的変化量を測定する応力測定装置であって、前記対象物に固着され、該対象物に生じる応力に応じた透磁率変化を生じる磁歪体と、該磁歪体に直流磁界を付与する直流磁界付与手段と、該直流磁界の付与状態で前記対象物に生じる応力による前記磁歪体の透磁率変化に伴う該磁歪体の磁束の時間的変化量に応じた信号を生成する磁束変化検出手段とを備え、前記直流磁界付与手段は、あらかじめ磁気極性をもって着磁された前記対象物自身により構成されており、前記磁束変化検出手段により生成された信号を前記対象物に生じた応力の時間的変化量を示すものとして該信号に基づき前記対象物に生じた応力の時間的変化量を測定することを特徴とする応力測定装置。
  2. 荷重を付与される対象物に生じる応力の時間的変化量を測定する応力測定装置であって、前記対象物が自身に生じる応力に応じた透磁率変化を生じる磁歪体から成り、該対象物に直流磁界を付与する直流磁界付与手段と、該直流磁界の付与状態で前記対象物に生じる応力による該対象物の透磁率変化に伴う該対象物の磁束の時間的変化量に応じた信号を生成する磁束変化検出手段とを備え、前記直流磁界付与手段は、あらかじめ磁気極性をもって着磁された前記対象物自身により構成されており、前記磁束変化検出手段により生成された信号を前記対象物に生じた応力の時間的変化量を示すものとして該信号に基づき前記対象物に生じた応力の時間的変化量を測定することを特徴とする応力測定装置。
  3. 荷重を付与される対象物に生じる応力の大きさを測定する応力測定装置であって、前記対象物に固着され、該対象物に生じる応力に応じた透磁率変化を生じる磁歪体と、該磁歪体に直流磁界を付与する直流磁界付与手段と、該直流磁界の付与状態で前記対象物に生じる応力による前記磁歪体の透磁率変化に伴う該磁歪体の磁束の時間的変化量に応じた信号を生成する磁束変化検出手段と、該磁束変化検出手段により生成された信号を前記対象物に生じた応力の時間的変化量を示すものとして該信号により示される前記対象物に生じた応力の時間的変化量を積分する積分手段とを備え、前記直流磁界付与手段は、あらかじめ磁気極性をもって着磁された前記対象物自身により構成されており、前記積分手段により得られた積分値により前記対象物に生じた応力の大きさを測定することを特徴とする応力測定装置。
  4. 荷重を付与される対象物に生じる応力の大きさを測定する応力測定装置であって、前記対象物が自身に生じる応力に応じた透磁率変化を生じる磁歪体から成り、該対象物に直流磁界を付与する直流磁界付与手段と、該直流磁界の付与状態で前記対象物に生じる応力による該対象物の透磁率変化に伴う該対象物の磁束の時間的変化量に応じた信号を生成する磁束変化検出手段と、該磁束変化検出手段により生成された信号を前記対象物に生じた応力の時間的変化量を示すものとして該信号により示される前記対象物に生じた応力の時間的変化量を積分する積分手段とを備え、前記直流磁界付与手段は、あらかじめ磁気極性をもって着磁された前記対象物自身により構成されており、前記積分手段により得られた積分値により前記対象物に生じた応力の大きさを測定することを特徴とする応力測定装置。
  5. 前記磁束変化検出手段は、コイルから成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の測定装置。
  6. 前記磁歪体、直流磁界付与手段及び磁束変化検出手段の周囲に磁気シールド部材を設けたことを特徴とする請求項1または3記載の応力測定装置。
  7. 前記対象物、直流磁界付与手段及び磁束変化検出手段の周囲に磁気シールド部材を設けたことを特徴とする請求項2または4記載の応力測定装置。
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