JP3651875B2 - データ伝送装置 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplex)変調方式を用いたディジタル伝送装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ヨーロッパやアメリカおよび日本でディジタル放送が検討されており、その変調方式としてOFDM変調方式の採用が有力視されている。
このOFDM変調方式とは、マルチキャリア変調方式の一種で、多数のディジタル変調波を加え合わせたものである。 このときの各キャリアの変調方式にはQPSK(Quadrature Phase Shift Keying:4相位相偏移変調)方式等が用いられ、合成波であるOFDM信号を得ることができる。
ここで、このOFDM信号を数式で表すと、以下のようになる。
まず、各キャリアのQPSK信号をαk(t)とすると、これは式(1)で表せる。
αk(t)=ak(t)・cos(2πkft)+bk(t)・sin(2πkft) ・・・・・(1)
ここで、kはキャリアの番号を示し、ak(t)、bk(t)は、k番目のキャリアのデータで、[−1]または[1]の値をとる。
次に、キャリアの本数をNとすると、OFDM信号はN本のキャリアの合成であり、これをβk(t)とすると、これは次の式(2)で表すことができる。
βk(t)=Σαk(t) (但し、k=1〜N) ・・・・・・(2)
ところで、OFDM変調方式では、マルチパスの影響を低減するため、信号にガードインターバルを付加するのが一般的である。
即ち、図8に示すように、有効シンボル期間Tsにおいて、その有効シンボルの開始部分の波形と終了部分の少なくとも一方の波形をガードインターバルTgとして用いる。 ここで、図8の(a)は、k=1のとき、有効シンボル期間Tsの終了部分にガードインターバルTgを付加した場合のOFDM信号を示したもので、同図(b)は、k=1〜544のとき、有効シンボル期間Tsの終了部分にガードインターバルTgを付加した場合のOFDM信号を示したものである。
このOFDM信号は、上記信号単位から構成され、この信号単位シンボルは、例えば有効サンプル1024サンプルにガードインターバルデータ32サンプルを付加した1056サンプルのシンボル396組に、4組の同期シンボルを付加した、全400シンボルからなるフレームと呼ぶストリーム単位の繰返しで構成される。
【0003】
次に、図9は、従来技術によるOFDM伝送装置における変復調部の基本構成を示すブロック図で、処理部AとIFFT(Inverse Fast Fourier Transform:逆フーリエ変換)部3A、ガード付加部3B、それに処理部Cの各ブロックからなる送信側Txと、処理部Dと処理部Eの各ブロックからなる受信側Rxで構成され、これら送信側Txと受信側Rxは、例えば、電波を用いた無線の伝送路Lにより結ばれている。
以下、図9と図10を用いてOFDM信号の変復調処理について説明する。
送信側Txのレート変換部1に連続的に入力されるデータDinは、例えば400シンボルからなるフレーム毎に処理され、このフレーム期間内で同期シンボルの4シンボル期間を除く396個の情報シンボル毎に、1から400番と、625から1024番までの計800サンプル期間に、間欠状態のレート変換済データDiiとして出力される。
また、レート変換部1は、フレーム周期である400シンボル毎に、送信側のフレーム制御パルスFSTを発生し、同期シンボル期間の開始を表わすフレームパルス信号として、他のブロックに供給する。
符号化部2Tは、入力されたデータDiiを符号化し、I軸とQ軸の2軸にマッピングしたデータRfとIfを出力する。
IFFT部3Aは、これらデータRfとIfを周波数成分と見なし、1024サンプルからなる時間軸信号R(実数成分)とI(虚数成分)に変換する。
ガード付加部3Bは、1024サンプルからなる時間軸信号RとIの開始期間における波形の中で、例えば最初の32サンプルの波形を1024サンプル後に付加し、合計1056サンプルの時間軸波形からなる情報シンボルRgとIgを出力する。
【0004】
同期シンボル挿入部5は、これら情報シンボルRg,Igに対して、それらの396サンプル毎に、予めメモリ等に記憶された、4シンボルからなる同期波形を挿入し、フレーム構成のデータRsgとIsgを作成する。
これらのデータRsg,Isgは直交変調処理部8に供給され、ここでD/A変換器81と直交変調器82、ローカル発振器83により、周波数FcのキャリアによるOFDM変調波信号RFとして生成され、高周波増幅されて伝送路Lに送出されことになる。
なお、送信側Txにおける処理に必要なクロックCKは、クロック発振器11から各ブロックに送信側クロックCKdとして供給される。
上記の様にして送信されたOFDM変調波信号RFは、受信側Rxの直交復調処理部9に入力され、ここで、直交復調器91により、電圧制御発振器93から供給される周波数Fc'の局発信号と乗算され、ベースバンド信号に直交復調された後に、A/D変換器92によってディジタル化され、データR'sgとI'sgに変換される。
これらのデータR'sg,I'sgは、FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)部3Cに供給され、時間軸波形信号から周波数成分信号R'fとI'fに変換される。
そして、これら周波数成分信号R'f,I'fは、復号化部2Rにて識別、復号化されて、データD'oになり、レート逆変換部7にて連続した信号Doutとして出力される。
一方、上記データR'sgとI'sgは、同期検出器4にも入力され、ここで、同期シンボル群が検出され、これによりフレームパルスとなるパルスFSTrが取り出される。 このパルスFSTrは、受信側Rxのフレーム制御パルスとなり、受信側Rxの各ブロックに供給される。
また、この同期検出器4は、電圧制御クロック発振器10から発生されるクロックCKrとデータR'sgとI'sgの同期成分を比較し、比較結果に応じた制御電圧VCを生成し、これにより電圧制御クロック発振器10を制御し、正しい周期のクロックCKrが発生され、受信側の各ブロックに供給される。
【0005】
次に、図9に示した各ブロックの詳細について説明する。
まず、図11は、レート変化部1の一例で、ここに入力されたシリアルデータDinは、シリアルパラレル変換器1−1でパラレル信号となり、FIFOメモリ1−3に書き込まれ、Dout端子からデータDiiとして読み出される。 また、クロックCKは、PLL&VCO1−4に入力され、PLL&VCO1−4は、N/G倍の周波数のCKmを出力する。 また、クロックCKは、FSTカウンタ1−5にも入力され、ここで送信側処理のフレーム基準となるFSTパルスを発生、出力する。なお、このパルスFSTは、FIFOメモリ1−3のWRST端子とRRST端子に入力され、リセットの基準になる。
ここで、FIFOメモリ1−3のデータ読み出しは、RCK端子のクロックに同期してRE端子のレベルに応じて行われる。 RE端子へのパルスはデコーダ1−6から出力される。
次に、符号化部2Tの一例を図12に示す。 レート変化部1から出力されたデータDiiは、マッピングROM2−1,2−2に入力され、ここで、I,Q軸の所定点に変換される。 この時、不要キャリアに相当する期間の信号はSEL(選択器)2−3,2−4にて0に置換され、データRfとIfが作成される。
このため、SEL2−3,2−4は、クロックCKとパルスFSTにより発生のタイミングが定められたコントローラ2−5のパルスPselで制御される。
【0006】
次に、IFFT部3Aの一例を図13に示す。 これはクロックCKとパルスFSTとでタイミングを決められたコントローラ3A−2によりガード期間を含めたシンボル周期の信号を基準にして、入力信号Rf,Ifを、時間軸信号R,Iに変換するものである。 具体的には、このIFFT変換部3Aとしては、例えばプレッシー社のPDSP16510等のICを用いれば実現できる。
次に、ガード付加部3Bの一例を図14に示す。 ここに入力された時間軸信号R,Iは、1024サンプルの遅延時間を持つ遅延器3B−1,3B−2と、1025サンプル目から1056サンプル目のときだけ切り替わるSEL3B−3,3B−4に入力される。
ここで、SEL3B−3,3B−4は、クロックCKとパルスFSTによってタイミングが決められたコントローラ3B−5によって制御される。
その結果、出力されるべき全1056サンプルからなるシンボルは、1025サンプル目から1056サンプル目に、1サンプルから32サンプル間の時間軸波形がガードとして付加され、情報シンボルRg,Igとなる。
【0007】
次に、同期シンボル挿入部5の一例を図15に示す。 まず、ROM5−1,5−2は、クロックCKとパルスFSTでタイミングが決められたコントローラ5−5によって制御され、これにより、パルスFSTに応じたタイミングで同期シンボル信号を発生する。
同様にSEL5−3,5−4は、クロックCKとパルスFSTでタイミングが決められたコントローラ5−6によって制御され、ガード付の時間情報シンボル信号Rg,Igの、現段階では無信号期間である1シンボルから4シンボルまでの期間だけを、ROM5−1,5−2から読み出した同期シンボル信号に切り替えて出力する。
ここで詳しい説明は省略するが、この同期シンボル信号は、NULLと呼ばれる部分とSWEEPと呼ばれる部分が挿入されている。
そして、NULLとは無信号部分のことであり、これを挿入した目的は、同期シンボル群の存在を大まかに見つけるためであり、このNULLシンボル期間は信号を一切出力しないようになっている。
また、SWEEPとは1シンボル期間に伝送帯域の下限周波数から上限周波数に変化する信号のことで、このSWEEPを挿入した目的は、シンボル切り替わり点が正確に求められるようにすることである。
【0008】
次に、図9により、直交変調処理部8について説明を補足すると、D/A変換器81により実数部の信号Rsgと虚数部の信号Isgに対してD/A変換を行い、直交変調器82では、まず実数部信号に対しては発振器83からの周波数fcのキャリア信号のままで変調し、虚数部信号に対しては、発振器83の周波数fcのキャリア信号を90°移相した信号で変調することによって直交変調を施し、これらの信号を合成してOFDM変調波信号を得る。
次に、受信側の構成動作について説明する。
受信側では、伝送されたフレーム構成の信号は、まず直交復調処理部9に入力される。
ここでの処理は、送信側とは逆に、直交復調器91によって、電圧制御発振器93から出力される周波数Fc'のキャリア信号により復調した出力を実数部信号として取り出し、キャリア信号を90°移相して復調した出力を虚数部信号として取り出すものである。 そして、これら実数部と虚数部の各復調アナログ信号を、A/D変換器92によりディジタル信号に変換する。
図16はタイミング再生部の一例で、図9の同期検出器4から制御電圧VCを発生する部分を除いたものに相当する。
直交復調したディジタル信号である時間軸信号R'sg,I'sgは、NULL終了検出器4−1とSWEEP演算部4−2に入力される。
NULL終了検出器4−1は、フレーム構成のシンボル群から同期シンボル中で無信号状態にあるNULLを検出し、同期シンボルの大まかな位置(タイミング)を検出し、NULL終了時点からタイマ回路によりSWEEPシンボル開始時点を推定して、SWEEP期間指示パルスSTを出力する。
【0009】
SWEEP演算部4−2は、SWEEP期間指示パルスSTを参照しNULLシンボルの後に存在するSWEEPシンボルを検出し、各シンボルの正確な切り替わりタイミングを捜索する。
具体的には、予めSWEEPシンボルのパターンが格納してあるメモリ4−3を用い、入力されたOFDM信号とこのメモリ4−3から読み出したパターンを例えば相関演算し、両者の信号パターンが一致した時点で、一致パルスHを出力するように構成してあり、発生した一致パルスHは、フレームカウンタ4−4のリセット端子Reに入力される。
このフレームカウンタ4−4は、リセット端子Reに一致パルスHが入力されリセットされた後、クロックCKのカウントを開始し、該カウント数がフレーム周期に相当する値(例えば、1056×400)に到達する毎に、パルスFSTrを出力するとともに、カウント値を0に戻してから再びクロックCKのカウントを開始する。
従って、以後は、一定カウント毎に、即ちフレーム開始点毎にパルスFSTrが出力されることになり、受信側ではこのパルスFSTrを高速フーリエ変換、復号、逆レート変換の開始タイミングとする。
そして、FFT部3Cは、このパルスFSTrに基づいてシンボルを区切り、前述のようにフーリエ変換を行うことでOFDM復調を行い、データR'fとI'fを出力する。
次に、復号化部2Rは、例えばROMテーブル手法にて、データR'fとI'fを識別し、データD'oを算出するもので、図18に示す様に、ROM2R−1を備え、データR'fとI'fによりROM2R−1を検索し、データD'oを算出する。そしてこの時、差分検出器2R−2、積和回路2R−3、それにコントローラ2R−4を用い、クロックCKrとパルスFSTrによって動作タイミングをとり、直交復調処理部9の電圧制御発振器93を制御するための制御電圧VC2を生成するように構成されている。
【0010】
図19はレート逆変換部7の一例で、レート変換部1を反転した構成である。即ち、FIFOメモリ7−2とパラレルシリアル変換器7−1、デコーダ7−3、PLL&VCO7−4、それにFSTカウンタ7−5を備えている。 そして、クロックCKrとパルスFSTrにより動作タイミングをとり、データD'oをFIFOメモリ7−2に書き込み、その後、読み出して、パラレルシリアル変換器7−1により、パラレル信号からシリアル信号に変換する。
ところで、該OFDM変調波信号RFに必要な周波数帯域幅は、ベースバンドにおける時間情報信号Rsg,Isgの帯域の2倍となる。 そして、ベースバンドの信号Rsg,Isgの帯域は、IFFT部3Aに入力されるデータに依存して決定される。
そこで、このIFFT部3Aの動作について、図17により、更に詳しく説明すると、このIFFT部3Aは、周期1/SのクロックCKに同期して順次入力されてくるN個(N=1024)の周波数成分を、IFFT変換によって、N個の周波数成分を持つ時間波形Rfに変換する。 ここで、SはIFFT部3Aの読み出しクロックの周波数であり、従って、該IFFT部3Aの書き込みクロックの周波数は、S×N/Gとなる。
このとき、1番目のデータf0は、直流成分であるキャリア0の振幅レベルを決定し、2番目のデータf1は、周期1024/Sのキャリア1の振幅レベルを決定する。 そして3番目のデータf2は、周期512/Sのキャリア2の振幅レベルを決定する。
このように、入力されるN個目の周波数成分は、周期1024/(N×S)のキャリアNの振幅を決定することになり、従って、入力したデータ成分の個数が最高周波数、すなわち帯域幅を決定することになる。
なお、こうして個別に振幅が決定され、変換作成された計N本のキャリアは、キャリア毎に独立して出力されるのではなく、総加算されて一つの時間軸波形Rとなる。 ただし、この時間軸波形Rは、総計で1024サンプルのデータから構成され、各サンプルデータは周期1/SのクロックCKに同期して出力され、即ち、入力クロックCK周期の1024倍の周波数となる。
また、このときのキャリア間隔は、IFFTサンプル数とIFFTクロックによって決まる。 即ち、以下のようになる。
キャリア間隔=(IFFTサンプル数)/(FFTクロック周波数)
帯域幅は、以下のように、キャリア間隔とキャリア本数によって決定される。
帯域幅=(キャリア間隔)×(キャリア本数)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、IFFT処理は、それぞれ割り当てられたデータで変調された各キャリアを全て加算して得られる時間軸波形の作成を、実時間で演算するものである。
つまり、基本的処理は、割り当てデータで各キャリアを変調し、これら変調済キャリアの全てを加算するものである。
以下、例えば、キャリア64本の場合で、変調済みキャリアをROMから発生する例により説明する。
1シンボル期間分のサンプルポイント数を1024とすると、1024サンプルのデータ作成に10ビット、1次変調のDQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying:4相差動位相偏移変調)に割り当てるマッピングのI軸データを1ビットとすると、キャリア1本分の波形発生に、11ビットアドレスのROMが必要であり、全キャリア数64本分のビットとしては64ビット、合計74ビットのアドレスを持つROMが必要である。 昨今の半導体技術の進歩をしても、この様な大容量のROMは実現不可能である。 従って、1個のROMでなく複数個のROMを用いることとなる。
つまり、キャリア64本の場合、64個のROMと、これら64の波形を加算する必要がある。 ROM出力を8ビットとすると、8×64(本)=512(本)の入力信号を処理することになり、現実性にやや欠ける。
以上説明した様に、従来技術の構成では、IFFT部において膨大な演算処理が必要となる。 現在、このようなIFFT処理を行うLSIを入手することができる。 ただし、動作速度が20MHz以上の高速になる場合には、演算処理時間の都合から、このLSIを複数個用い、並列運転する必要がある。
しかし、このLSIは非常に高価な素子であり、さらに、このLSIを複数個使用するため、装置全体の価格は非常に高価なものとなる。
従って、マルチキャリア変調による伝送性能の向上は評価されるものの、高価な装置価格がネックとなり、この装置の普及の障害となっている。
本発明は、これらの欠点を除去し、マルチキャリア変調を簡易な方法、安価な方法にて実現することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するため、データを複数の異なる周波数のキャリアに割り当て伝送するマルチキャリア変調方式を用いた伝送装置において、1シンボル内の全キャリアに割り当てられるデータをn組に分割し、当該分割した各組の対応データによりそれぞれ変調したキャリア時間軸波形の加算結果を生成するn組の部分IFFT部を有し、少なくとも上記部分IFFT部の1組は、1シンボル期間の内の所定期間の時間軸波形のみ生成し、当該所定期間の時間軸波形を繰り返して出力するものとし、上記n組の部分IFFT部からのn系統の時間軸波形出力を1系統に統合して全キャリアにより定まる時間軸波形を生成するようにしたものである。
また、上記n組の部分IFFT部を、それぞれ対応するキャリア時間軸波形の加算結果を予め記憶するメモリテーブル構成としたものである。
さらに、上記の時間軸波形発生に際し、1シンボル期間の終端部分に対応する所定期間の時間軸波形を出力後、正味の1シンボル期間の時間軸波形を出力するガードインターバル付加制御、または1シンボル期間の終端部分に対応する所定期間の時間軸波形を出力し、正味の1シンボル期間の時間軸波形を出力した後、1シンボル期間の開始部分に対応する所定期間の時間軸波形を出力するガードインターバル付加制御を行うようにしたものである。
【0013】
即ち、本発明は、全ての時間軸波形加算処理を外部で行わず、一部加算を予め行った時間軸波形をテーブル化することで、後段の統合処理部の構成規模を簡略化することができる。
また、本発明は、発生する時間軸波形に繰り返し特性のあるキャリアについては、所定期間の時間軸波形を繰り返し出力しているため、波形記憶のテーブルの容量を低減することができる。
つまり、図2に示すように、キャリア2,4,6,…等、偶数番目のキャリア波形は、1シンボル期間の前半期間である0/4から2/4と、後半期間である2/4から4/4とで、同一の波形形状となる。
そのため、この特性を利用し、発生する時間軸波形を前半期間の分だけとし、後半期間部分は前半期間部分の時間軸波形を繰り返し用いることができる。
また、さらに4番目、8番目、16番目、24番目、32番目、…のように、4と4の偶数倍番目のキャリアの場合は、シンボル期間の0/4から1/4部分のみの時間軸波形を、1/4から2/4、2/4から3/4、3/4から4/4の期間においても繰り返し用いることができる。
同様の繰り返しは、8と8の偶数倍番目等にも当てはまり、この場合シンボル期間の0/8から1/8の時間軸波形を、以後7回繰り返して用いる。
本発明では、前述のようにキャリアをグループ分けし、一部波形を繰り返して利用し、各キャリア時間軸波形を少ないROM容量、すなわちROM個数で発生することができ、例えば、偶数キャリアの発生データが半分で済むため、ROM容量は少なくとも、3/4に低減できる。
以上の様に、ROMを各キャリア個別に用意せず、予め変調したキャリア複数本を集めて、それを加算した時間軸波形を記憶させることにより、ROM容量のさらなる低減を図ることができる。 また複数の割り当てデータを指定すれば、変調された各キャリアを加算した時間軸波形が出力されるため、キャリア総数よりも出力系統数は減少し、後段のキャリア加算を行う処理部が簡略化される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明によるOFDM伝送装置について、図を用い詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例の全体構成を示すブロック図で、送信側Txに、図9の従来技術におけるIFFT部3Aとガード付加部3Bに代えて変調処理部3R,3Iを設けたものであり、その他の処理部A、処理部C、及び受信側Rxに、処理部Dと処理部Eを備えている点は、図9の従来技術によるOFDM伝送装置と同じであり、それらの構成についても同じである。
まず、処理部AからのデータRf,IfのIFFT処理とガード付加処理を行う変調処理部3R,3Iの構成、動作について説明するが、同じ構成、動作のためここでは、変調処理部3Rについて詳細に説明する。
変調処理部3Rは、後述のシリアルパラレル変換部3R−1、繰り返し無し用の部分IFFT部3R−2、1/2繰り返し用部分IFFT部3R−3、1/4繰り返し用部分IFFT部3R−4、統合部3R−5、コントローラ3R−6から構成されている。
処理部Aにおいてレート変換、符号化されたデータRfは、変調処理部3Rのシリアルパラレル変換部3R−1に入力され、パラレルデータに変換される。
そして、これらのパラレル変換された各キャリアへ割り当てられるデータは、奇数番目のキャリアに割り当てられるデータは繰り返し無し用部分IFFT部3R−2へ、4及び4の偶数倍番目を除く偶数番目のキャリアに割り当てられるデータは1/2繰り返し用の部分IFFT部3R−3に、4及び4の偶数倍番目のキャリアに割り当てられるデータは1/4繰り返し用の部分IFFT部3R−4に、それぞれアドレス入力として入力される。
【0015】
これら部分IFFT部3R−2,3R−3,3R−4には、コントローラ3R−6からデータ発生期間の長さに応じた制御信号が入力される。
そして、これらの部分IFFT部3R−2,3R−3,3R−4の各出力は、統合部3R−5に入力され、ここで、加算統合された後、データRgとして出力される。
シリアルパラレル変換部3R−1は、前述のように、必要キャリアに割り当てられ入力される全てのデータ列Rfを、ガードインターバル期間+シンボル期間の間ホールドし、時分割してシーケンシャル状態のデータを並列に並べ直して、それぞれの部分IFFT部3R−2,3R−3,3R−4に、次に示す様な信号を出力する。
即ち、繰り返し無し用の部分IFFT部3R−2には、シンボル期間の全てのアドレス値(0から1023)が10ビット信号として印加され、ここで、後述のようにして、図3の(a)に示すような、シンボル期間全体に相当する1024サンプル分の時間軸波形が生成される。
1/2繰り返し用の部分IFFT部3R−3には、シンボル期間の前半部分のアドレス値(0から511)が9ビット信号として印加され、ここで、後述のようにして、図3の(b)に示すような、シンボル期間の前半部分に相当する512サンプル分の時間軸波形が生成される。
1/4繰り返し用の部分IFFT部3R−4には、シンボル期間の1/4部分のアドレス値(0から255)が8ビット信号として印加され、ここで、後述の様にして、図3の(c)に示す様な、シンボル期間の1/4部分に相当する256サンプル分の時間軸波形が生成される。
【0016】
次に、本発明の部分IFFT部3R−2,3R−3,3R−4として、メモリテーブル方式を採用した構成を、図4、図5、図6に示し、説明する。 なお、ここでは、キャリア本数を64とした場合について説明する。
図4は、繰り返し無し用の部分IFFT部3R−2として用いる場合のROMテーブル構成を示すものである。
これは、アドレス18ビットのROMを用い、キャリア1,3,5,7,9,11,13,15に対応するそれぞれの時間軸波形を作成するものである。
つまり、データRfを例として説明すると、ROMアドレス18ビットには、各キャリアに割り当てられるデータRfの8ビットと、時系列データ1024サンプルの10ビットが割り当てられる。
そして、このROMには、各アドレスに対応する1024サンプル分の変調済時間軸波形256種類が記憶されており、ここに入力される上記データアドレス、サンプルアドレスに基づき、対応する記憶された時間軸波形が読み出される。
なお、アドレス18ビットのROMの代わりに、アドレス17ビットのROMを2個用いた構成としてもよい。 この場合、1から512サンプルと、513から1024サンプルでのROMの切り替えを行う。
ここで、キャリア17,19,21,23,25,27,29,31に対応する時間軸波形作成用のROM、キャリア33,35,37,39,41,43,45,47に対応する時間軸波形作成用のROM、キャリア49,51,53,55,57,59,61,63に対応する時間軸波形作成用のROMを、同様の構成とすることによって、部分IFFT部3R−2は、合計4個(アドレス17ビットのROMの場合、合計8個)のROMによって実現できる。
【0017】
次に、図5に、1/2繰り返し用の部分IFFT部3R−3として用いる場合のROMテーブル構成を示す。
これは、アドレス17ビットのROMを用いてキャリア2,6,10,12,14,18,20に対応するそれぞれの時間軸波形を作成するものである。
つまり、ROMアドレス17ビットには、各キャリアに割り当てられるデータRfの8ビットと、時系列データ1024サンプルの半分の512サンプル分の9ビットが割り当てられる。
そして、このROMには、各アドレスに対応する512サンプル分の変調済み時間軸波形256種類が記憶されており、ここに入力される上記データアドレス、サンプルアドレスに基づき、対応する記憶された時間軸波形が読み出される。
ここで、キャリア26,28,30,34,36,38,42,44に対応する時間軸波形作成用のROM、キャリア46,50,52,54,58,60,62に対応する時間軸波形作成用のROMを、同様の構成とすることによって、部分IFFT部3R−3は、合計3個のROMにより実現できる。
【0018】
次に、図6に、1/4繰り返し用の部分IFFT部3R−4として用いる場合のROMテーブル構成を示す。
これは、アドレス17ビットのROMを用いてキャリア4,8,16,24,32,40,48,56,64に対応するそれぞれの時間軸波形を作成するものである。
つまり、ROMアドレス17ビットには、各キャリアに割り当てられるデータRfの9ビットと、時系列データ1024サンプルの1/4の256サンプル分の8ビットが振り当てられる。
そして、このROMには、上記各アドレスに対応する256サンプル分の変調済時間軸波形512種類が記憶されており、ここに入力されるデータアドレスとサンプルアドレスに基づき、対応する記憶された時間軸波形が読み出される。
以上のように、部分IFFT部3R−2,3R−3,3R−4としては、4個+3個+1個、合計8個(全てアドレス17ビットのROMの場合、合計12個)のROMによって、図1に示す8系統の時間軸波形を出力する部分IFFT部を構成することができる。
【0019】
次に、ガード付加処理について、有効シンボル波形期間(正味シンボル期間)の1/8に相当するガードインターバル波形を、各正味シンボルの前後に設ける例を用いて説明する。
まず、図7に、コントローラ3R−6から出力される、サンプルアドレス値を示す。
図7に示すように、発生するアドレスは、正味シンボル期間の0から1023ではなく、まず、正味シンボルの後部(1/8)の895から1023までを発生し、そこで0に戻り、そこから1023まで発生し、そして0に戻り、そこから正味シンボルの前部(1/8)の127までを発生する。
つまり、付加されるガードインターバル波形は、正味シンボルの前部(1/8)の波形を正味シンボルの最後部に、そして正味シンボルの後部(1/8)の波形を正味シンボルの最前部につなげた波形である。
そのため、コントローラ3R−6は、正味シンボルの後部(1/8)のアドレス859から1023を、正味シンボルのアドレス発生開始前に出力する。
また、正味シンボルの前部(1/8)のアドレス0から127を、正味シンボルのアドレス発生終了後に出力する。
【0020】
そして、これらのアドレスが入力される部分IFFT部3R−2,3R−3,3R−4では、それぞれ、まず、正味シンボルの後部(1/8)のアドレスに対応する記憶された時間軸波形が読み出され、次に正味シンボル期間に対応する記憶された時間軸波形が読み出され、最後に正味シンボルの後部(1/8)のアドレスに対応する記憶された時間軸波形が読み出される。
これにより、部分IFFT部3R−2,3R−3,3R−4において、ガードインターバル波形を伴った8系統の時間軸シンボル波形が作成できる。
そして、これら8系統の時間軸波形は、統合部3R−5で加算処理され、加算統合された後、データRgとして出力される。
以上、変調処理部3Rによって、ガードインターバル波形を伴った時間軸信号Rgの生成について説明をしたが、ガードインターバル波形を伴った時間軸信号Igも、同様の構成の変調処理部3Iにより、生成することができる。
なお、上記の説明では、各キャリアに割り当てられるデータは、DQPSKで変調された1ビットデータとしたが、D8PSK(Differential 8 Phase Shift Keying:8相差動位相偏移変調)等の場合は、2ビットを割り当てれば良い。
また、通常、発生する時間軸波形は、ランダム波形となるため、各キャリアは最終的には2〜3ビットの精度を持てば十分であり、複数本のキャリアを加算した時間軸波形は、8ビット程度で十分な精度で記憶できる。
なお、キャリア本数を64本とした例で説明したが、この本数に限定されるものではなく、またサンプル数として1024サンプルの例を示したが、キャリア本数が少なければ、512サンプルもしくは256サンプルであっても良い。
【0021】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、IFFT処理、ガード付加処理を簡易な構成で実現でき、安価な伝送システムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による伝送装置の一実施例の構成を示すブロック図
【図2】本発明による伝送装置の原理を説明するための波形図
【図3】本発明による伝送装置の原理を説明するためのキャリア時間軸波形図
【図4】本発明の繰り返し無し用部分IFFT部のROMテーブル構成を示す模式図
【図5】本発明の1/2繰り返し用部分IFFT部のROMテーブル構成の模式図
【図6】本発明の1/4繰り返し用部分IFFT部のROMテーブル構成の模式図
【図7】本発明におけるガード付加処理の動作を説明するための波形図
【図8】直交周波数分割多重変調信号の一例を示す波形図
【図9】従来技術による伝送装置の一実施例の構成を示すブロック図
【図10】直交周波数分割多重変調信号伝送装置の動作を説明するタイムチャート
【図11】従来のレート変換部の構成を示すブロック図
【図12】従来の符号化部の構成を示すブロック図
【図13】従来のIFFT部の構成を示すブロック図
【図14】従来のガード付加部の構成を示すブロック図
【図15】従来の同期シンボル挿入部の構成を示すブロック図
【図16】従来のタイミング再生部の構成を示すブロック図
【図17】IFFT部の動作を説明するための波形図
【図18】従来の復号化部の構成を示すブロック図
【図19】従来のレート逆変換部の構成を示すブロック図
【符号の説明】
3R,3I:変調処理部、3R−1:シリアルパラレル変換部、3R−2:繰り返し無し用部分IFFT部、3R−3:1/2繰り返し用部分IFFT部、3R−4:1/4繰り返し用部分IFFT部、3R−5:統合部、3R−6:コントローラ、1:レート変換部、2T:符号化部、2R:復号化部、3C:FFT部、4:同期検出器、5:同期シンボル挿入部、7:レート逆変換部、8:直交変調処理部、9:直交復調処理部。

Claims (4)

  1. データを複数の異なる周波数のキャリアに割り当て伝送するマルチキャリア変調方式を用いた伝送装置において、1シンボル内の全キャリアに割り当てられるデータをn組に分割し、当該分割した各組の対応データによりそれぞれ変調したキャリア時間軸波形の加算結果を生成するn組の部分IFFT(Inverse Fast Fourier Transform:逆フーリエ変換)部を有し、少なくとも上記部分IFFT部の1組は、1シンボル期間の内の所定期間の時間軸波形のみ生成し、当該所定期間の時間軸波形を繰り返して出力するものとし、上記n組の部分IFFT部からのn系統の時間軸波形出力を1系統に統合して全キャリアにより定まる時間軸波形を生成することを特徴とするデータ伝送装置。
  2. 請求項1に記載のデータ伝送装置において、上記n組の部分IFFT部を、それぞれ対応するキャリア時間軸波形の加算結果を予め記憶するメモリテーブル構成としたことを特徴とするデータ伝送装置。
  3. 請求項1または2に記載のデータ伝送装置において、上記の時間軸波形発生に際し、1シンボル期間の終端部分に対応する所定期間の時間軸波形を出力後、正味の1シンボル期間の時間軸波形を出力するガードインターバル付加制御を行うことを特徴とするデータ伝送装置。
  4. 請求項1または2に記載のデータ伝送装置において、上記の時間軸波形発生に際し、1シンボル期間の終端部分に対応する所定期間の時間軸波形を出力し、正味の1シンボル期間の時間軸波形を出力した後、1シンボル期間の開始部分に対応する所定期間の時間軸波形を出力するガードインターバル付加制御を行うことを特徴とするデータ伝送装置。
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