JP3651680B2 - 多糖類グラフトポリビニルアルコール系重合体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なポリビニルアルコール系重合体およびその製造方法に関する。本発明の多糖類グラフトポリビニルアルコール系重合体は、たとえば、化粧品用および工業用の増粘剤、ゲル化剤、製膜強化剤および接着剤として有用である。
【0002】
【従来の技術】
ポリビニルアルコールのヒドロキシル基はポリ酢酸ビニルをケン化することにより生成することは公知である。ポリビニルアルコールのヒドロキシル基と多糖類のヒドロキシル基が仮に脱水縮合するとポリビニルアルコールに多糖類がグラフトされる。しかし、多糖類とポリビニルアルコールを、たとえばジメチルスルホキシド(DMSO)のような非水系溶媒に溶解させ、単純に加熱することにより、このような縮合反応を生起させようとしても実用的には進行しない。
【0003】
DMSO中で、多糖類のヒドロキシル基に、予めシュウ酸などのジカルボン酸を反応させ、次にDMSOに溶解したポリビニルアルコールと反応させることにより、ポリビニルアルコールに多糖類をグラフトさせることができる。しかし、反応後DMSO溶液から多糖類グラフトポリビニルアルコールを分離抽出するためには多大な経費を必要とし、実用的には実施することが困難である。
【0004】
一方、デンプンを炭酸ガス・水系の超臨界状態でタンク内で分解する方法は既に数多く報告されている。たとえば、特許文献1には「高密度化流体中での多糖類の変性」が提案されている。しかし、この提案はデンプンの巨大高分子をオリゴマー以下の低分子に分解する方法が開示されているのみで、如何に低分子化合物に効率よく分解できるか、化学修飾できるかが主要な課題である。したがって、高分子(ポリビニルアルコール)に多糖類をグラフト反応させる方法は記載されていない。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−92501号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、多糖類がグラフトし、生分解性に優れた新規なポリビニルアルコール系重合体およびその製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明の目的は、廉価であり、化粧品用および工業用の増粘剤、ゲル化剤、製膜強化剤および接着剤の原料として有用なポリビニルアルコール系重合体およびその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリビニルアルコール系重合体のヒドロキシル基またはエステル基と多糖類とを、縮合反応させることまたは/および炭酸ガスを介して縮合反応させることにより、グラフト反応させる多糖類グラフトポリビニルアルコール系重合体の製造方法にかかわる。本発明の多糖類グラフトポリビニルアルコール系重合体の製造方法においては、水および炭酸ガスの存在下、炭酸ガスが超臨界状態または亜臨界状態となる条件下で、ポリビニルアルコール系重合体と、多糖類としてデンプンの加水分解物とを反応させることが好ましい。
【0010】
本発明の多糖類グラフトポリビニルアルコール系重合体は、たとえば、化粧品用および工業用の増粘剤、ゲル化剤、製膜強化剤および接着剤の原料として有用である。
【0011】
本発明の多糖類グラフトポリビニルアルコール系重合体は、たとえば、ポリビニルアルコール系重合体と多糖類との混合組成物を、水の存在下、水のエントロピーが著しく大きい高温高圧状態から薄膜状で急激に常圧に解放することにより、爆発的な脱水縮合反応を生起させ、通常では生起しない多糖類とポリビニルアルコール系重合体のヒドロキシル基(またはエステル基)との脱水反応を生起させることにより製造することができる。たとえば、水と炭酸ガスの存在下、炭酸ガスが超臨界状態または亜臨界状態で、水と炭酸ガスのエントロピーが著しく大きい高温高圧状態から、薄膜状で急激に常圧に解放することにより、爆発的な脱水縮合反応を生起させ、多糖類とポリビニルアルコール系重合体のヒドロキシル基(またはエステル基)とのグラフト反応を生起させることができる。
【0012】
本発明の多糖類グラフトポリビニルアルコール系重合体は、好ましくは、温度20℃、相対湿度60%の条件下で24時間放置することにより、実質的に恒量平衡に達した水分率が3〜12重量%である。本発明の多糖類グラフトポリビニルアルコール系重合体は、好ましくは、温度25℃の水中に1時間浸漬した後の膨潤率が100〜500%である。本発明の多糖類グラフトポリビニルアルコール系重合体は常温(たとえば、25℃)の水中に24時間浸漬した後にゲル状態を示し、MI値が0.1以上でチクソトロピー性を示す。MI値は150℃、10kgの加重下、長さ1cm、内径2mmのオリフィスを10分間に流下した質量をグラム数で表わす。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の多糖類グラフトポリビニルアルコール系重合体は、ポリ酢酸ビニルまたは酢酸ビニルとコモノマーとのコポリマーのケン化物であるポリビニルアルコールまたはそのコポリマー(ポリビニルアルコール系重合体)を原料として製造することができる。コモノマーは不飽和結合を有する化合物であり、好ましくは容易にラジカル重合する廉価なコモノマーである。コモノマーとしては、たとえば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、マレイン酸などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0014】
ポリビニルアルコール系重合体の酢酸エステル基のケン化度は水溶性などに影響するため、最終的な用途に合わせ、適宜選択すべきである。また、ポリビニルアルコールコポリマーのコモノマーの共重合モル比は特に限定しない。最終的な用途に合わせて、適宜選択すべきである。最終的な用途に生分解性を必要とする場合には、ポリビニルアルコール系重合体が水溶性であるか、親水性が大きいことが好ましい。親水性が大きくなるために好ましいケン化度、コモノマーの種類の選択を行なうべきである。
【0015】
ポリビニルアルコール系重合体が、分子量2000未満で縮合されたブロックポリマーである場合には、親水性が低いケン化度、コモノマーの種類および共重合モル比を選択することができる。縮合にはエステル結合、アミド結合、ウレタン結合などがあり、適宜選択することができる。
【0016】
本発明に使用する多糖類は、反応性に富んだ状態で、ポリビニルアルコール系重合体との反応に供給されることが好ましい。たとえば、デンプンが機械的に切断され、ラジカル状態で存在する多糖類は反応性に富んでいるため特に好ましい。機械的に多糖類(たとえば、デンプン)を切断する具体的な方法として、高粘度状態でせん断力を利用することが好ましく、高せん断力を与える押出し機を反応機として使用することが好ましい。反応機としては、脱水用ベント付き押出し機形式の連続反応機を使用することが好ましい。たとえば、2ベント付き押出し機、または3ベント付き押出し機を使用することが好ましい。使用するスクリューは、好ましくは、供給部のみ食い込みをよくするため2軸とし、この後からダイまでは1軸で構成される。たとえば、3ベント付き押出し機は、好ましくは、スクリュー供給部、せん断混練り圧縮部、解放ベント部、混練り圧縮部、真空ポンプ吸引ベント部、混練り圧縮部、真空ポンプ吸引ベント部、混練り圧縮部から構成される。
【0017】
反応機として押出し機を使用する場合、たとえば、100〜250kg/cm2(=9.8〜24.5MPa)のノズル前圧力で押出すことが好ましい。
【0018】
炭酸ガスは、温度31.1℃以上、圧力7.48MPa以上の条件下で超臨界状態となり、温度31.1℃以上、圧力7.48MPa未満の条件下および温度31.1℃未満、圧力7.48MPa以上の条件下で亜臨界状態となる。超臨界状態または亜臨界状態の炭酸ガスは、多糖類(たとえば、デンプン)の加水分解反応を促進するとともに、多糖類(たとえば、デンプン)の加水分解物とポリビニルアルコール系重合体との脱水反応に寄与し、また、グラフト反応にも寄与する。炭酸ガスの使用量は、水を基準として、たとえば、0.01〜3重量%とすることができる。炭酸ガスは、多糖類(たとえば、デンプン)の分解反応の際、触媒的に作用するので、微量でもその効果を発揮する。また、ポリビニルアルコール系重合体のヒドロキシル基またはエステル基と多糖類とを、炭酸ガスを介して縮合反応させることができる。
【0019】
多糖類によるポリビニルアルコール系重合体のヒドロキシル基またはエステル基とのグラフト反応に、炭酸ガスと同様に補助的に作用する副原料として、たとえば、リン酸類、多価カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、エポキシ、酸無水物、イソシアネート、シラン化物などを使用することができる。具体的には、トリリン酸ナトリウムなどのリン酸塩;シュウ酸、マレイン酸、アジピン酸、フタル酸、コハク酸などの多価カルボン酸;アジピン酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、マレイン酸カルシウム、フタル酸カルシウム、コハク酸カルシウムなどの多価カルボン酸塩;乳酸などのヒドロキシカルボン酸;乳酸カルシウムなどのヒドロキシカルボン酸塩;重炭酸ナトリウム、重炭酸カルシウムなどの重炭酸塩;モノグリシジルエーテルなどのエポキシ;無水コハク酸、無水マレイン酸などの酸無水物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエン2,4−ジイソシアネートなどのイソシアネート;ビニルトリメチルシランなどのシラン化物;ヘキサヒドロ−1,3,5−トリスアクリロイル−s−トリアジンがある。副原料は最終製品に悪影響をおよぼさない範囲で、1種を単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。中では炭酸ガスを加熱により発生する副原料(炭酸ガス;重炭酸ナトリウム、重炭酸カルシウムなどの重炭酸塩)が廉価で取り扱いやすく、安全性の面から好ましい。
【0020】
グラフト反応する前の反応最高圧力は、たとえば、76〜300kg/cm2(=7.5〜29.4MPa)、好ましくは160〜240kg/cm2(=15.7〜23.5MPa)とすることができる。多糖類(たとえば、デンプン)は水の存在下で、高圧かつ高せん断力下、加熱することによりより有効に加水分解させることができる。
【0021】
低圧すぎると、グラフト反応率が低下する。高圧すぎると、得られる多糖類グラフトポリビニルアルコール系重合体が変色し、最終的な用途において、成膜性が低下する場合がある。反応時間は、たとえば1〜10分間、好ましくは3〜5分間とすることができる。長時間すぎると、得られる多糖類グラフトポリビニルアルコール系重合体が変色し、最終的な用途において、成膜性が低下する場合がある。短時間すぎるとグラフト反応率が低下する。
【0022】
ポリビニルアルコール系重合体と多糖類とが反応したことは、ポリビニルアルコール系重合体の分子量変化により確認できる。すなわち、ポリビニルアルコール系重合体およびその他の原料のDMSO溶液について、反応前後の分子量分布を高速ゲルパーミエーションクロマトグラフにより測定し、ポリビニルアルコールの分子量分布の平均値が大きくなることで確認できる。また、ポリビニルアルコール系重合体と多糖類(たとえば、デンプン)とのDMSOに対する溶解性または分子量が大きく異なり、ポリビニルアルコール系重合体が結晶性の場合はカラムクロマトグラフによりポリビニルアルコール系重合体を分取し、結晶を析出させ、その電子線回折からポリビニルアルコール系重合体と多糖類(たとえば、デンプン)の結晶が隣り合わせに存在することで確認することができる。
【0023】
水の使用量は、たとえばポリビニルアルコール系重合体10重量部(水分を除く)に対し、30〜100重量部、好ましくは50〜80重量部とする。水の使用量が少ないと水溶性に優れたポリビニルアルコール系重合体を使用する場合、粘度が大きすぎ、多糖類(たとえば、デンプン)の反応率が低下する。水の使用量が多すぎるとグラフト反応率が低下し、得られる多糖類グラフトポリビニルアルコール系重合体の反応量が低下する傾向がある。また、多糖類グラフトポリビニルアルコール系重合体を回収するための脱水に必要なエネルギーが大きくなり経済的に好ましくない。
【0024】
多糖類としては、たとえば、デンプン、デンプンの加水分解物を使用することができる。本発明に使用するデンプンは特に限定はしない。一般に使用されるデンプンを使用することができる。たとえば、大麦、ライ麦、カラス麦、小麦、米およびとうもろこしのような穀類、じゃがいもならびにタピオカなどのいも類から生産されている。しかし、とうもろこしデンプンは経済性に優れる点で好ましい。デンプンの分子量は、たとえば約20,000,000と非常に巨大で、種類により異なる。
【0025】
本発明の多糖類グラフトポリビニルアルコール系重合体には、一般に使用されるポリマー用添加剤を添加することができる。これらの添加剤としては、たとえば、増量剤、香料、着色剤(顔料、染料)、抗菌剤、防臭剤、防腐剤、防虫剤、静電防止剤、耐光剤、耐熱剤、ブロッキング防止剤などの添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、単独で使用することができ、または、2種以上を併用することもできる。これらの添加剤の使用は、用途により、たとえば、最終的な用途において求められる特性、廃棄時の生分解性などに悪影響のないように配慮すべきである。
【0026】
また、多糖類(たとえば、デンプン)の加水分解に、触媒として、酵素、酵母および酵素含有有機物からなる群から選択される1種以上を、不活性温度以下で使用することができる。たとえば、α−D−グルコシダーゼ、β−D−グルコシダーゼ、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、Exo−1,4−α−D−グルコシダーゼ、Exo−マルトテトラヒドロラーゼ、Exo−マルトヘキサノヒドロラーゼ、プルラナーゼ、オリゴ−1,6−グルコシダーゼ、アミロ−1,6−グルコシダーゼ、イソプルラナーゼ、デクストラナーゼ、Exo−1,6−α−D−グルコシダーゼ、Exo−イソマルトヒドロラーゼ、Exo−イソマルトトリオヒドロラーゼ、Exo−1,3−α−グルカナーゼ、Exo−1,3−α−D−グルカナーゼ、ミコデクストラナーゼ、Endo−1,2−β−D−グルカナーゼ、Exo−1,3−β−D−グルカナーゼ、Exo−1,3−β−D−グルコシダーゼ、Endo−1,3−β−D−グルカナーゼ、Endo−1,3(4)−β−D−グルカナーゼ、リケナーゼ、Exo−1,4−β−D−グルコシダーゼ、Exo−セロビオヒドロラーゼ、セルラーゼ、Endo−1,6−β−D−グルカナーゼ、ジアスターゼなどの酵素を使用することができる。併せて酸またはアルカリ触媒を使用することもできる。酵素により加水分解物が異なるので最終的な用途に応じ、適宜選択するとよい。
【0027】
本発明の多糖類グラフトポリビニルアルコール系重合体に、グリセリン、油脂、脂肪、脂肪族有機酸およびそのグリセリドなどの可塑剤を加えることにより、熱可塑性を向上させることができる。可塑剤の配合量を増加させることにより、さらに熱可塑性を向上させることができる。
【0028】
本発明の多糖類グラフトポリビニルアルコール系重合体は単独でまたは他の生分解性樹脂と混合した混合物(以下「生分解混合物」と言う。)として、フィルム、シート、パイプなどの押出成形品、モールド成形品、ブロー成形品および射出成形品の原料として使用することができる。生分解性樹脂としては、たとえば、ポリ乳酸、ポリブチルサクシネート、ポリブチルサクシネートアジペート、ポリブチルアジペートコテレフタレート、ポリカプロラクトンなどがあるが、これらのみに限定するものではない。
【0029】
本発明の多糖類グラフトポリビニルアルコール系重合体および生分解混合物をTダイ法により押出し成形することにより、フィルムおよびシートを製造することができる。Tダイ法でフィルムまたはシートを製造する場合、得られるフィルムまたはシートの厚さは、押出し量と引き取り速度とを調節することにより、制御することができる。本発明の多糖類グラフトポリビニルアルコール系重合体および生分解混合物のフィルムおよびシートは、インフレーション法によっても製造することができる。インフレーション法によってフィルムまたはシートを製造する場合には、操業上、粘度が、MI値で1〜10、とりわけ1〜5の多糖類グラフトポリビニルアルコール系重合体または生分解混合物を用いることが好ましい。
【0030】
本発明の多糖類グラフトポリビニルアルコール系重合体または生分解混合物のフィルムまたはシートを製造する場合、押出し温度は140〜180℃とすることが好ましい。
【0031】
Tダイ法またはインフレーション法で得られた本発明の多糖類グラフトポリビニルアルコール系重合体または生分解混合物のフィルムまたはシートを、延伸することにより、延伸フィルムまたは延伸シートを製造することができる。生分解混合物のフィルムおよびシートを延伸する際の温度は、ガラス転移点以上、その30℃上までの範囲とすることが好ましい。
【0032】
本発明の多糖類グラフトポリビニルアルコール系重合体または生分解混合物の未延伸シートを、たとえば、真空モールド成形することにより、モールド成形品を製造することができる。たとえば、厚さ0.2〜2mmのシートを赤外線ヒーターなどでガラス転移点以上に加熱し、真空モールド成形金型の上に移動し、金型から吸引することによりシートを金型の形に成形することができる。
【0033】
広く知られている生分解性樹脂であるポリ乳酸は、未延伸状態における引張破断伸度が常温で2〜3%と非常に小さく脆弱で実用に耐えず、また、真空モールド成形しても、変形の大きい部分は延伸されるが、金型の縁の部分は殆ど延伸されないため、未延伸部分が残り、この部分が脆弱で実用に耐えない。これに対して、本発明の多糖類グラフトポリビニルアルコールまたは生分解混合物の未延伸シートは、引張破断伸度が常温(たとえば25℃)で20%以上あり、未延伸部分も実用に供しても問題のない機械的物性を有する。
【0034】
【実施例】
以下、本発明の詳細を実施例にて説明する。
【0035】
実施例1
ケン化度20モル%、重合度380のポリビニルアルコール100重量部、とうもろこしデンプン(重量平均分子量約20000000、アミロース含有率74重量%、アミロペクチン含有率26重量%)100重量部、イオン交換水300重量部、グリセリン10重量部、触媒としてα−アミラーゼ0.5重量部、重炭酸ナトリウム10重量部を60℃で攪拌混合し、45mmトリプルベント付き1軸押出し機に供給した。ベント口から開放、水封ポンプ、油拡散ポンプで脱水した。押出し機のスクリューは、供給、混練り、圧縮、ベントからの脱水、混練り、ベントからの脱水、混練り、ベントからの脱水、圧縮の過程を経るように設計し、通常の2軸押出し機に劣らない混練り効果を得られるようにした。
【0036】
スクリューの混練り効果は、無色透明ポリプロピレン100重量部にカーボンブラック含有ポリエチレン2重量部を混合し、混練り後、顕微鏡観察によりカーボンブラックの存在部分を比較することにより確認した。ポリエチレンはポリプロピレン中に約30ミクロン程度の大きさでほぼ均一に分散されていることが光学顕微鏡による切片観察により確認された。
【0037】
入り口温度60℃、加熱最高温度150℃、圧力12.5MPaで1分間反応後、引き続き、急激に開放し、脱水縮合させた。全滞留時間を3分、原料の供給速度を50kg/時間とした。生成した多糖類により分岐したポリビニルアルコールを100メッシュのフィルターで濾過後、直径1mmのノズルから押出し、ホットカッターでペレットに成形した。このペレットのDMSO希薄溶液を高速ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した結果、ポリビニルアルコールの平均重合度は470に増加し、ピーク幅は大きくなった。デンプンのピークは小さくなり、低分子サイドに分布が広がった。ポリビニルアルコールの平均重合度が大きくなったことから、デンプンが加水分解した多糖類が分岐としてグラフトされたことが推測された。
【0038】
常温水中浸漬後、ペレットはゲル状態を示し、MI値は13であった。
【0039】
実施例2および3
反応時間を3分(実施例2)および5分(実施例3)としたほかは実施例1と同様にして、ペレットを成形したところ、実施例1と同様に、反応時間が大きくなるにしたがって逆相関したが、ポリビニルアルコールの平均重合度が大きくなったことから、デンプンが加水分解した多糖類が分岐としてグラフトされたことが推測された。常温水中浸漬後、多糖類がグラフトしたポリビニルアルコールのペレットはゲル状態を示し、MI値は、それぞれ18および21.25であった。
【0040】
実施例4
ポリビニルアルコールをポリビニルアルコールとアクリル酸メチルとのコポリマー(アクリル酸メチルの共重合モル比:5モル%)に変更したほかは実施例1と同様にしてペレットを成形したところ、実施例1と同様に、ポリビニルアルコールコポリマーの平均重合度が大きくなったことから、デンプンが加水分解した多糖類がグラフトして分岐が形成されたことが推測された。常温水中に浸漬後、多糖類グラフトポリビニルアルコールコポリマーのペレットはゲル状態を示し、MI値は9であった。
【0041】
<生分解性>
実施例1、2、3および5で得られた本発明の多糖類グラフトポリビニルアルコールペレットを、市販の家庭用生ゴミ処理コンポスト機に投入し、12時間毎に定期的に一部サンプリングし、サンプルの減量速度でペレットの生分解性を評価した。コンポスト処理に際しては運転時の温度を40〜50℃に保持し、コンポストの種菌用栄養分として、とうもろこしデンプンを加えた。いずれのサンプルについても、48時間後には、多糖類グラフトポリビニルアルコールの70重量%以上が生分解され、良好な生分解性を示した。
【0042】
【発明の効果】
本発明の多糖類グラフトポリビニルアルコール系重合体は、デンプンと異なり、熱可塑性を有するので、従来の熱可塑性樹脂の代替材料として、たとえば、汎用の製造法にて各種成形品を製造するための材料として、使用することができ、成形法として、モールド成形法や射出成形法を採用することができる。本発明の多糖類グラフトポリビニルアルコール系重合体は、デンプン同様に、生分解性を有するので、コンポスト中で容易に生分解させることができる。
Claims (1)
- ポリビニルアルコール系重合体のヒドロキシル基またはエステル基と多糖類とを、縮合反応させることまたは/および炭酸ガスを介して縮重合反応させることにより、グラフト反応させる多糖類グラフトポリビニルアルコール系重合体の製造方法であって、水および炭酸ガスの存在下、炭酸ガスが超臨界状態または亜臨界状態となる条件下で、ポリビニルアルコール系重合体と、多糖類としてデンプンの加水分解物を反応させる多糖類グラフトポリビニルアルコール系重合体の製造方法。
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