JP3651468B2 - 動力出力装置およびその制御方法 - Google Patents

動力出力装置およびその制御方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、動力源としてエンジンと電動機とを備える動力出力装置およびその制御方法に関し、詳しくは、上記電動機を上記エンジンの出力軸と駆動軸とに切り換えて結合可能な結合手段を有する動力出力装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、エンジンと電動機とを動力源とする動力出力装置を搭載したハイブリッド車両が提案されている(例えば特開平9−47094に記載の技術等)。ハイブリッド車両の一種としていわゆるパラレルハイブリッド車両がある。パラレルハイブリッド車両では、搭載した動力出力装置によって、エンジンから出力された動力は、一部が動力調整装置により駆動軸に伝達され、残余の動力が電力として回生される。この電力はバッテリに蓄電されたり、エンジン以外の動力源としての電動機を駆動するのに用いられる。このような動力出力装置は、上述の動力の伝達過程において、動力調整装置および電動機を制御することによって、エンジンから出力された動力を任意の回転数およびトルクで駆動軸に出力することができる。駆動軸から出力すべき要求出力に関わらずエンジンは運転効率の高い運転ポイントを選択して運転することができるため、ハイブリッド車両はエンジンのみを駆動源とする従来の車両に比べて省資源性および排気浄化性に優れている。
【0003】
上記の動力出力装置おける電動機の結合先は、駆動軸とエンジンの出力軸の2通りが可能である。これらの結合について、電動機を駆動軸に結合した構成では、エンジンの回転数よりも駆動軸の回転数が低いアンダードライブ動作時(アンダードライブ走行時)に運転効率が高くなる特性がある。電動機をエンジンの出力軸に結合した構成は、逆に、エンジンの回転数よりも駆動軸の回転数が高いオーバードライブ動作時(オーバードライブ走行時)に運転効率が高くなる特性がある。これらの特性は、以下に示す動力の循環の発生に基づくものである。
【0004】
最初に電動機を駆動軸に結合した場合について動力の伝達の様子を図13および図14に基づいて説明する。ここでは、動力調整装置としての対ロータ電動機CMを介してエンジンEGの出力軸CSと駆動軸DSとを結合し、駆動軸DSにはアシストモータAMが結合されている場合を例にとって説明する。図13に、クランクシャフトCSの回転を低減するとともにトルクを増大して駆動軸DSから出力するアンダードライブ時の動力の流れを模式的に示した。エンジンEGから出力された動力PU1は、対ロータ電動機CMによって回転数が低減された動力PU2として伝達される。この際、対ロータ電動機では、2つのロータ間に相対的な滑りが生じるから、両ロータ間の回転数差に基づいて発電が行われ、エンジンEGから出力された動力の一部が電力EU1として回生される。この電力によってアシストモータAMを力行し、不足分のトルクを調整することによって、要求された回転数およびトルクからなる動力PU3が駆動軸DSに出力される。
【0005】
クランクシャフトCSの回転を増大するとともにトルクを低減して駆動軸DSから出力するオーバードライブ時の動力の流れを図14に模式的に示した。このときは、エンジンEGから出力された動力PU1は、対ロータ電動機CMを力行することによって回転数が増速された動力PU4として伝達される。次に、アシストモータAMで負荷を与えることにより、余剰のトルクを調整することによって、要求された回転数およびトルクからなる動力PU5が駆動軸DSに出力される。アシストモータAMでは動力PU4の一部を電力EU2として回生することによって負荷を与える。この電力は対ロータ電動機CMに供給される。
【0006】
両者を比較すると、アンダードライブ時には、エンジンEGから出力された動力が駆動軸DSに伝達される経路において、上流側に位置する対ロータ電動機CMで回生された電力が下流側に位置するアシストモータAMに供給される。オーバードライブ時には、逆に、下流側に位置するアシストモータAMで回生された電力が上流側に位置する対ロータ電動機CMに供給される。対ロータ電動機CMに供給された電力は、再び機械的な動力として下流側に位置するアシストモータAMに供給される。こうしてオーバードライブ時には、図示する動力の循環γ1が生じる。かかる循環γ1が生じると、エンジンEGから出力された動力のうち、有効に駆動軸DSに伝達される動力が低減するため、ハイブリッド車両の運転効率は低下する。
【0007】
電動機をエンジンの出力軸に結合した場合の動力の伝達の様子を図15および図16に示す。図15はアンダードライブ時の動力の伝達の様子を示し、図16はオーバードライブ時の動力の伝達の様子を示している。かかる構成では、電動機を駆動軸に結合した場合とは逆の現象が起きる。アンダードライブ時には、下流側に位置する対ロータ電動機CMで回生された電力EO1が上流側に位置するアシストモータAMに供給される。オーバードライブ時には、上流側に位置するアシストモータAMにより回生されたEO2が下流側に位置する対ロータ電動機CMに供給される。従って、電動機をエンジンの出力軸に結合した状態では、アンダードライブ時に図15に示す動力の循環γ2が生じ、ハイブリッド車両の運転効率は低下する。
【0008】
かかる特性に鑑み、電動機の結合状態を、駆動軸側とエンジンの出力軸側とで切り替え可能に構成した動力出力装置を搭載するハイブリッド車両が提案されている(例えば、特開平10−75501記載のハイブリッド車両)。かかる動力出力装置では、電動機とエンジンの出力軸との結合および解放を行う第1のクラッチ、およびこの電動機と駆動軸との結合および解放を行う第2のクラッチを設けている。エンジンの回転数が駆動軸の回転数よりも大きくなった場合には、第1のクラッチを解放するとともに、第2のクラッチを結合することによって、電動機を駆動軸側に結合する。逆の場合には、第1のクラッチを結合するとともに、第2のクラッチを解放することによって、電動機をエンジンの出力軸側に結合する。こうすることによってアンダードライブ動作、オーバードライブ動作の双方において、効率の高い運転を実現している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記したような電動機の結合状態を切り換え可能な動力出力装置においては、従来、運転効率をさらに向上させるために、エンジンの動作点を、アンダードライブ動作時,オーバードライブ動作時に関わらず、常に、エンジンの効率が最高となる動作線(即ち、エンジンの燃費が最適となる動作線)に沿うように設定していた。
【0010】
このため、アンダードライブ動作時においては、駆動軸から出力され得る最大トルクとして或る程度のトルクを確保するために、上記した電動機の最大負荷容量を大きくすると共に、その電動機を駆動するためのインバータ回路の最大電流値も大きくする必要があった。
【0011】
従って、本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を解決し、電動機の最大負荷容量を軽減すると共に、その電動機を駆動するためのインバータ回路の最大電流値も低減することの可能な動力出力装置およびその制御方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上記した目的の少なくとも一部を達成するために、本発明の動力出力装置は、出力軸を有するエンジンと、動力を出力するための駆動軸と、前記出力軸及び駆動軸に結合され電力のやりとりによって前記エンジンから出力された動力を増減して前記駆動軸に伝達可能な動力調整装置と、回転軸を有する電動機と、該電動機の回転軸を前記出力軸または前記駆動軸に選択的に結合させることが可能な結合手段と、を備えた動力出力装置であって、
トルクと回転数との関係で表される動作領域において、前記エンジンの動作点を決定する際に用いるエンジン動作線として、第1の動作線、及び、前記第1の動作線よりも所定の回転数範囲においてトルクが高い第2の動作線のうち、何れか一方を選択する動作線選択手段と、
前記動作領域を前記第1及び第2の動作線によって分割して得られる、前記第1の動作線に主として隣接する第1の領域と、前記第1及び第2の動作線に挟まれた第2の領域と、前記第2の動作線に主として隣接する第3の領域のうち、前記駆動軸の動作点の存在する領域が前記第1の領域である場合には、前記動作線選択手段によって、前記エンジン動作線として前記第1の動作線を選択させ、前記駆動軸の動作点の存在する領域が前記第3の領域である場合には、前記動作線選択手段によって、前記エンジン動作線として前記第2の動作線を選択させる制御手段と、
をさらに備えることを要旨とする。
【0013】
また、本発明の動力出力装置の制御方法は、出力軸を有するエンジンと、動力を出力するための駆動軸と、前記出力軸及び駆動軸に結合され電力のやりとりによって前記エンジンから出力された動力を増減して前記駆動軸に伝達可能な動力調整装置と、回転軸を有する電動機と、該電動機の回転軸を前記出力軸または前記駆動軸に選択的に結合させることが可能な結合手段と、を備えた動力出力装置の制御方法であって、
(a)トルクと回転数との関係で表される動作領域において、前記エンジンの動作点を決定する際に用いるエンジン動作線として、第1の動作線、及び、前記第1の動作線よりも所定の回転数範囲においてトルクが高い第2の動作線を用意する工程と、
(b)前記動作領域を前記第1及び第2の動作線によって分割して得られる、前記第1の動作線に主として隣接する第1の領域と、前記第1及び第2の動作線に挟まれた第2の領域と、前記第2の動作線に主として隣接する第3の領域のうち、前記駆動軸の動作点の存在する領域が前記第1の領域である場合には、前記エンジン動作線として前記第1の動作線を選択し、前記駆動軸の動作点の存在する領域が前記第3の領域である場合には、前記エンジン動作線として前記第2の動作線を選択する工程と、
を備えることを要旨とする。
【0014】
このように、本発明の動力出力装置またはその制御方法では、トルクと回転数との関係で表される動作領域において、エンジンの動作点を決定する際に用いるエンジン動作線として、第1の動作線、及び、第1の動作線よりも所定の回転数範囲においてトルクが高い第2の動作線のうち、何れか一方を選択する。そして、動作領域を第1及び第2の動作線によって分割して得られる第1ないし第3のうち、駆動軸の動作点の存在する領域が第1の領域である場合には、エンジン動作線として第1の動作線を選択させ、駆動軸の動作点の存在する領域が第3の領域である場合には、エンジン動作線として第2の動作線を選択させる。ここで、第1の領域はオーバードライブ動作領域に含まれ、第3の領域はアンダードライブ動作領域に含まれるので、駆動軸の動作点が第3の領域に存在する場合は、アンダードライブ動作となる。従って、アンダードライブ動作時には、エンジン動作線として第2の動作線を用いて、エンジンの動作点が決定されることになる。一方、アンダードライブ動作時においては、駆動軸から出力されるトルクは、電動機から出力されるトルクとエンジンから出力されるトルクとの和に相当する。従って、エンジンの動作線として、第1の動作線よりも所定の回転数範囲においてトルクが高い第2の動作線を用いることにより、エンジンから出力されるトルクは大きくなるため、その分、電動機から出力されるトルクを小さくしても、駆動軸から出力されるトルク(特に、最大トルク)としては、従来と同様の値を確保することができる。
【0015】
従って、本発明の動力出力装置またはその制御方法によれば、アンダードライブ動作時において、駆動軸から出力され得る最大トルクとして或る程度のトルクを確保しながら、電動機の最大負荷容量を軽減することができると共に、その電動機を駆動するためのインバータ回路の最大電流値も低減することができる。従って、電動機の大きさを小さくしたり、インバータ回路のコストを低減したりすることができる。
【0016】
本発明の動力出力装置において、前記動力調整装置は、前記出力軸に結合された第1のロータと、前記駆動軸に結合された第2のロータとを有する対ロータ電動機を備えるようにしても良いし、ロータ軸を有する発電機と、3つの回転軸を有し、各回転軸が前記出力軸、駆動軸、及びロータ軸にそれぞれ結合されたプラネタリギヤと、を備えるようにしても良い。
【0017】
このように、動力調整装置としては、対ロータ電動機を用いて電気分配型の構成を採ることもできるし、プラネタリギヤなどを用いて機械分配型の構成を採ることもできる。
【0018】
以上で説明した本発明は、直接には、動力出力装置およびその制御方法に適用されている。その他、そのような動力出力装置を搭載した種々の装置、例えば、ハイブリッド車両として本発明を構成することも可能である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
(1)実施例の構成:
はじめに、実施例の構成について図1を用いて説明する。図1は本発明の一実施例としての動力出力装置を搭載したハイブリッド車両の概略構成を示す構成図である。
【0020】
本実施例の動力出力装置10は、動力系統であるエンジン50およびハイブリッドユニット20と、制御系統である燃料噴射制御ユニット(以下、EFIECUと言う)および制御ユニット90と、を主として備えている。
【0021】
これらのうち、動力系統であるエンジン50は、通常のガソリンエンジンであり、出力軸であるクランクシャフト56を回転させる。
【0022】
エンジン50の運転は、制御系統であるEFIECU70により制御されている。EFIECU70は内部にCPU、ROM、RAM等を有するワンチップ・マイクロコンピュータであり、CPUがROMに記録されたプログラムに従い、主に、エンジン50の燃料噴射量、吸排気バルブの進角制御、その他の制御を実行する。これらの制御を可能とするために、EFIECU70には、燃料噴射弁51,スロットルバルブ53の開度を制御するスロットルバルブモータ54,あるいは吸排気バルブ(図示せず)の開閉タイミングを制御するVVT57などが設けられている。また、EFIECU70には、これらの制御を行なうために必要なセンサであって、エンジン50の運転状態を示す種々のセンサが接続されている。その一つとしてクランクシャフト56の回転数を検出する回転数センサ52がある。その他のセンサおよびスイッチなどの図示は省略した。
【0023】
エンジン50のクランクシャフト56と、車輪26を駆動するための動力を出力する伝達軸22との間には、ハイブリッドユニット20が配設されている。ハイブリッドユニット20内には、主として、対ロータ電動機であるクラッチモータ30と、電動機であるアシストモータ40と、そのアシストモータ40のロータ軸43の結合先を選択的に切り換える切換装置80と、が設けられている。
【0024】
これらのうち、クラッチモータ30は、基本的には永久磁石を用いた同期電動機として構成されているが、磁界を発生させる三相コイルが巻回された部材が、ケースに固定されたいわゆるステータではなく、回転可能なロータとして構成されている点で通常の電動機と異なる。即ち、クラッチモータ30では、通常の電動機におけるロータに相当するインナロータ32のみならず、三相コイル36が巻回されたアウタロータ34も、自由に回転することができる。このように構成された電動機を前述したように対ロータ電動機と呼ぶ。このような対ロータ電動機では、三相コイル36が設けられたアウタロータ34も回転するから、回転するコイル36に対して電力を供給するための機構が必要になる。本実施例では、この機構としてスリップリング38を設けて、三相コイル36への電力を供給しているが、スリップリング38に代えて、差動トランスなど、他の構成を用いることも可能である。クラッチモータ30では、インナロータ32に備えられた永久磁石による磁界とアウタロータ34に備えられた三相コイル36によって形成される磁界との相互作用により、両者は相対的に回転する。なお、かかる作用は、可逆的なものなので、クラッチモータ30を発電機として動作させ、両ロータの回転数差に応じた電力を、クラッチモータ30から回生することもできる。
【0025】
クラッチモータ30のインナロータ32には、インナロータ軸33が結合されており、アウタロータ34には、駆動軸であるアウタロータ軸35が結合されている。インナロータ軸33は、図示しないダンパを介してクランクシャフト56に結合されている。アウタロータ軸35は、出力用ギヤ21,チェーン23を介して伝達軸22に結合されている。この伝達軸22は、更に減速機24およびディファレンシャルギヤ25を介して、駆動輪26R,26Lを備えた車軸26に結合されている。
【0026】
クラッチモータ30はインナロータ32とアウタロータ34の双方が回転可能であるため、インナロータ軸33およびアウタロータ軸35の一方から入力された動力を他方に伝達することができる。クラッチモータ30自体では、トルクは作用・反作用の関係にあるため変えられないが、クラッチモータ30を電動機として力行運転すれば他方の軸の回転数は高くなり、結果的に他方の軸から出力する動力(=回転数×トルク)は高くなる。クラッチモータ30を発電機として回生運転すれば他方の軸の回転数は低くなり、回転数差に対応した電力(=回転数差×トルク)が取り出される。即ち、クラッチモータ30を用いることで、動力の一部を電力の形で取り出しつつ残余の動力を伝達することができる。また、力行運転も回生運転も行なわなければ、動力が伝達されない状態となる。この状態は機械的なクラッチを解放にした状態に相当することから、この対ロータ電動機を、クラッチモータと呼ぶのである。
【0027】
一方、ハイブリッドユニット20内に設けられているアシストモータ40も、クラッチモータ30と同様に、永久磁石を用いた同期電動機として構成されており、本実施例では、ロータ42側に永久磁石が、ステータ44側に三相コイル46が、それぞれ設けられている。アシストモータ40のステータ44はケースに固定され、ロータ42は中空のロータ軸43に結合されている。中空のロータ軸43の軸中心は、クランクシャフト56に結合されたインナロータ軸33が貫通している。
【0028】
上述したクラッチモータ30およびアシストモータ40を駆動するために、バッテリ94に接続された第1の駆動回路91および第2の駆動回路92が設けられている。第1の駆動回路91は、内部にスイッチング素子としてのトランジスタを複数備えたトランジスタインバータであり、制御ユニット90と電気的に接続されている。制御ユニット90が第1の駆動回路91のトランジスタのオン・オフの時間をPWM制御すると、バッテリ94とクラッチモータ30のアウタロータ34に巻回された三相コイル36との間には、両者に接続された第1の駆動回路91およびスリップリング38を介して、三相交流が流れる。この三相交流によりアウタロータ34には回転磁界が形成され、クラッチモータ30の回転は制御される。この結果、バッテリ94の電力を用いてクラッチモータ30を力行する動作や、あるいはクラッチモータ30から回生する電力をバッテリ94に蓄える動作などを行なうことができる。
【0029】
他方、アシストモータ40は、第2の駆動回路92を介してバッテリ94に接続されている。第2の駆動回路92もトランジスタインバータにより構成されており、制御ユニット90に接続されて、その制御を受けて動作する。制御ユニット90の制御信号により駆動回路92のトランジスタをスイッチングすると、ステータ44に巻回された三相コイル46に三相交流が流れて回転磁界を生じ、アシストモータ40は回転する。アシストモータ40も、回生動作を行なうことができることは勿論である。
【0030】
また、ハイブリッドユニット20内に設けられている切換装置80は、アシストモータ40のロータ軸43を、クラッチモータ30のアウタロータ軸35およびインナロータ軸33のうち、何れか一方の軸に結合させるか、あるいは何れの軸にも結合させない状態にするかを切り換えるものである。
【0031】
この切換装置80の構成について説明する。切換装置80は、クラッチモータ30のアウタロータ軸35に結合された第1ギヤ81と、インナロータ軸33に結合された第2ギヤ82と、何れの軸にも結合されていない第3ギヤ83と、可動部材87と、で構成されている。可動部材87の片側には、第1ないし第3ギヤ81〜83に噛合し得る可動ギヤ84が設けられおり、他の片側はスプライン85を介してアシストモータ40のロータ軸43に摺動自在に結合されている。したがって、可動ギヤ84は、ロータ軸43と回転を共にしながら、ロータ軸43に対してその軸方向に移動することができる。切換装置80には、可動部材87を駆動して、可動ギヤ84の位置を切り換えるアクチュエータ86が設けられている。アクチュエータ86は、モータあるいはソレノイドなどにより実現可能であり、制御ユニット90により制御される。
【0032】
可動ギヤ84が、図1中の位置aにあるときは、第1ギヤ81と可動ギヤ84とが噛合し、アシストモータ40のロータ軸43は、駆動軸であるクラッチモータ30のアウタロータ軸35に結合されることになる。この結果、エンジン50から出力された動力は、クラッチモータ30を経て、駆動軸であるアウタロータ軸35に出力されるが、このアウタロータ軸35に対して、アシストモータ40が動力をやり取りすることが可能となる。この構成を模式的に示したのが図2である。切換装置80が、可動ギヤ84を位置aに切り換えたときは、図2の構成と等価である。以下、この結合状態をアンダードライブ結合と呼ぶ。
【0033】
他方、切換装置80が可動ギヤ84を、図1中の位置cに切り換えたときは、第2ギヤ82と可動ギヤ84とが噛合し、アシストモータ40のロータ軸43はクラッチモータ30のインナロータ軸33に結合され、延いてはエンジン50のクランクシャフト56に結合されることになる。この結果、エンジン50からクラッチモータ30を経て駆動軸であるアウタロータ軸35に出力される動力の出力系統に対して、アシストモータ40はインナロータ軸33やクランクシャフト56との間で動力のやり取りを行なうことが可能となる。この構成を模式的に示したのが図3である。切換装置80が可動ギヤ84を位置cに切り換えたときは、図3の構成と等価である。以下、この結合状態をオーバードライブ結合と呼ぶ。
【0034】
切換装置80は、可動ギヤ84を、第3ギヤ83と噛合する位置bに切り換えることも可能である。この位置では、可動ギヤ84は、第1ギヤ81および第2ギヤ82のいずれとも噛合してない中立状態になる。このときエンジン50から出力された動力は、クラッチモータ30を経てそのまま駆動軸であるアウタロータ軸35に出力される。
【0035】
制御ユニット90は、ハイブリッド車両の走行状態に応じて、後述するように、切換装置80を制御して、アシストモータ40のロータ軸43の結合先を切り換える。
【0036】
なお、本実施例において用いられる切換装置80は、複数のクラッチにより構成することも可能である。つまり、第1ないし第3ギヤ81〜83と可動ギヤ84との組み合わせに代えて、アウタロータ軸35とロータ軸43の結合および解放を行う第1のクラッチを設け、またインナロータ軸33とロータ軸43の結合および解放を行う第2のクラッチを設けるものとしてもよい。この場合、スプライン85を設ける必要はない。
【0037】
本実施例において、ハイブリッド車両の運転状態は制御ユニット90により制御されている。制御ユニット90もEFIECU70と同様、内部にCPU、ROM、RAM等を有するワンチップ・マイクロコンピュータであり、CPUがROMに記録されたプログラムに従い、後述する種々の制御処理を行うよう構成されている。これらの制御を可能とするために、制御ユニット90には、各種のセンサおよびスイッチが電気的に接続されている。制御ユニット90に接続されているセンサおよびスイッチとしては、アクセルペダル65の踏み込み量を検出するためのアクセルペダルポジションセンサ65a、シフトレバー66のポジションを検出するためのシフトポジションセンサ66a等がある。
【0038】
制御ユニット90は、EFIECU70とも通信回線により接続されており、EFIECU70との間で種々の情報を、通信によってやりとりしている。制御ユニット90からエンジン50の制御に必要な情報をEFIECU70に出力することにより、エンジン50を間接的に制御することができる。逆にエンジン50の回転数などの情報をEFIECU70から入力することもできる。
【0039】
図1に示す動力出力装置10は、エンジン150から出力された動力を電力のやりとりによって増減して伝達する動力調整装置として、クラッチモータ30を適用しており、動力の分配をそのクラッチモータ30のインナロータ32とアウタロータ34との滑りにより実現する。エンジン50からの動力の一部は、クラッチモータ30を介して駆動軸であるアウタロータ軸35に機械的な形態で直接出力され、一部は、二つのロータ32,34の滑り回転によりクラッチモータ30から電力の形態で取り出される。電気的に取り出されたエネルギは、バッテリ94に蓄積することもできるし、もう一つのモータであるアシストモータ40に出力し、駆動軸であるアウタロータ軸35のトルクアップに用いることもできる。即ち、この動力出力装置10は、動力を出力するエンジン50、滑り回転により動力をやり取りするクラッチモータ30、力行・回生可能なアシストモータ40の三者により、アウタロータ軸35に出力する動力を自由に制御することができるのである。
【0040】
(2)一般的動作:
次に、本実施例の動力出力装置の一般的動作として、エンジン50から出力された動力を要求された回転数およびトルクに変換して駆動軸であるアウタロータ軸35に出力する動作について説明する。本実施例の動力出力装置10では、エンジン50の回転数Neとアウタロータ軸35の回転数Ndとの大小関係、およびアシストモータ40のロータ軸43の結合状態に応じて、上記変換の経路が異なる。
【0041】
最初にアンダードライブ結合状態(図2)において、アウタロータ軸35の回転数Ndがエンジン50の回転数Neよりも小さい場合について説明する。かかる場合のトルクの変換の様子を図4に示す。図4は、横軸に回転数N、縦軸にトルクTを採り、エンジン50の動作点Peとアウタロータ軸35の動作点Pdを示した図である。図4中の曲線Pは動力、つまり回転数とトルクの積が一定の曲線である。回転数Ne、トルクTeでエンジン50から出力された動力Peを、Neよりも低い回転数Nd、Teよりも高いトルクTdの動力Pdに変換してアウタロータ軸35から出力する場合を考える。
【0042】
図4に示した変換を行う場合、アウタロータ軸35の回転数Ndはエンジン50の回転数Neよりも小さい。クラッチモータ40はアウタロータが回転数Ndで回転し、インナロータがそれよりも高い回転数Neで回転するから、クラッチモータ30は、相対的に逆転することになり、クラッチモータ30の回転数Ncは負の値となる。クラッチモータ30のトルクTcは作用・反作用の原理からエンジン50の出力トルクTeと等しく、正の値である。つまり、クラッチモータ30はエンジン50から出力された動力の一部を駆動軸であるアウタロータ軸35に伝達しつつ、残りを電力として回生する状態で運転される。このとき、回生される電力はクラッチモータ130の回転数NcとトルクTcの積に等しく、図4中のハッチングを施した領域GU1の面積に等しい。
【0043】
一方、アウタロータ軸35のトルクTdはエンジン50のトルクTeよりも大きい。従って、アシストモータ40は正のトルク、正の回転数で運転される。つまり、アシストモータ40は電力の供給を受け力行される。このとき供給される電力はアシストモータ40の回転数とトルクの積に等しく、図4中のハッチングを施した領域AU1の面積に等しい。両モータでの運転効率を100%と仮定すれば、クラッチモータ30で回生される電力とアシストモータ40に供給される電力とは等しくなる。つまり、クラッチモータ30で領域GU1に相当する分のエネルギを電力の形で取り出し、領域AU1に相当する分のエネルギとして供給することによりエンジン50の動作点Peで表される動力を、動作点Pdの状態に変換する。実際には運転効率が100%になることはないため、バッテリ94からの電力の持ち出しを伴ったり、損失に相当する動力をエンジン50から余分に出力したりして、上記変換を実現する。かかる変換では、先に図13で述べたとおり、上流側に位置するクラッチモータ30で回生された電力が下流側に位置するアシストモータ40に供給される。
【0044】
次に、アンダードライブ結合において、アウタロータ軸35の回転数Ndがエンジン50の回転数Neよりも高い場合について説明する。かかる場合のトルクの変換の様子を図5に示した。図5に示した変換を行う場合、アウタロータ軸35の回転数Ndはエンジン50の回転数Neよりも大きい。従って、クラッチモータ30は、正の回転数Nc、正のトルクTcで回転する。つまり、クラッチモータ30は電力の供給を受けて力行される。このとき、供給される電力はクラッチモータ30の回転数とトルクの積に等しく、図5中のハッチングを施した領域「GU2+GU3」の面積に等しい。一方、アウタロータ軸35のトルクTdはエンジン50のトルクTeよりも小さい。従って、アシストモータ40は負のトルク、正の回転数で運転される。つまり、アシストモータ40は回生運転される。このとき回生される電力はアシストモータ40の回転数とトルクの積に等しく、図5中のハッチングを施した領域「AU2+GU3」の面積に等しい。両モータでの運転効率を100%と仮定すれば、アシストモータ40で回生される電力とクラッチモータ30に供給される電力とが等しくなる。かかる変換では、先に図14において述べたとおり、下流側に位置するアシストモータ40から上流側に位置するクラッチモータ30に電力が供給されるため、動力の循環が生じる。
【0045】
アンダードライブ結合において、上述の変換を実現するための、アシストモータ40およびクラッチモータ30の動作点は、それぞれ以下の通りとなる。
【0046】
クラッチモータ30の回転数Nc=Nd−Ne;
トルクTc=Te;
アシストモータ40の回転数Na=Nd;
トルクTa=Td−Te;・・・(1)
【0047】
次に、オーバードライブ結合の場合(図3)において、アウタロータ軸35の回転数Ndがエンジン50の回転数Neよりも小さい場合について説明する。かかる場合のトルクの変換の様子を図6に示した。図6に示した変換を行う場合、アウタロータ軸35の回転数Ndはエンジン50の回転数Neよりも小さい。従って、クラッチモータ30は、負の回転数Nc、正のトルクTcで回転する。つまり、クラッチモータ30は回生運転される。このとき、回生される電力はクラッチモータ30の回転数とトルクの積に等しく、図6中のハッチングを施した領域「GO1+GO2」の面積に等しい。一方、アウタロータ軸35のトルクTdはエンジン50のトルクTeよりも大きい。従って、アシストモータ40は正のトルク、正の回転数で運転される。このとき、供給される電力はクラッチモータ30の回転数とトルクの積に等しく、図5中のハッチングを施した領域「GU2+GU3」の面積に等しい。一方、アウタロータ軸35のトルクTdはエンジン50のトルクTeよりも小さい。従って、アシストモータ40は負のトルク、正の回転数で運転される。つまり、アシストモータ40は電力の供給を受けて力行される。このとき、供給される電力はアシストモータ40の回転数とトルクの積に等しく、図6中のハッチングを施した領域「AU1+GU2」の面積に等しい。両モータでの運転効率を100%と仮定すれば、クラッチモータ30で回生される電力とアシストモータ40に供給される電力とが等しくなる。かかる変換では、先に図15において述べたとおり、下流側に位置するクラッチモータ30から上流側に位置するアシストモータ40に電力が供給されるため、動力の循環が生じる。
【0048】
次に、オーバードライブ結合の場合において、アウタロータ軸35の回転数Ndがエンジン50の回転数Neよりも高い場合について説明する。かかる場合におけるトルクの変換の様子を図7に示す。図7に示した変換を行う場合、アウタロータ軸35の回転数Ndはエンジン50の回転数Neよりも大きい。従って、クラッチモータ30は、正の回転数Nc、正のトルクTcで回転する。つまり、クラッチモータ30は電力の供給を受けて力行される。このとき、供給される電力はクラッチモータ30の回転数とトルクの積に等しく、図7中のハッチングを施した領域「GO3」の面積に等しい。一方、アウタロータ軸35のトルクTdはエンジン50のトルクTeよりも小さい。従って、アシストモータ40は負のトルク、正の回転数で運転される。つまり、アシストモータ40は回生運転される。このとき回生される電力はアシストモータ40の回転数とトルクの積に等しく、図7中のハッチングを施した領域「AO2」の面積に等しい。両モータでの運転効率を100%と仮定すれば、アシストモータ40で回生される電力とクラッチモータ30に供給される電力とが等しくなる。かかる変換では、先に図16で述べたとおり、上流側に位置するアシストモータ40で回生された電力が下流側に位置するクラッチモータ30に供給される。
【0049】
オーバードライブ結合において、上述の変換を実現するための、アシストモータ40およびクラッチモータ30の運転ポイントは、次の通りとなる。
【0050】
クラッチモータ30の回転数Nc=Nd−Ne;
トルクTc=Td;
アシストモータ40の回転数Na=Ne;
トルクTa=Td−Te; ・・・(2)
【0051】
以上で説明した通り、本実施例の動力出力装置10は、アシストモータ40のロータ軸43の結合状態、およびアウタロータ軸35の回転数Ndとエンジン50の回転数Neとの大小関係に応じて、エンジン50から出力された動力を要求された回転数およびトルクからなる動力に変換して、駆動軸であるアウタロータ軸35から出力することができる。
【0052】
しかし、アウタロータ軸35の回転数Ndがエンジン50の回転数Neよりも大きいオーバードライブ動作時に、アンダードライブ結合で動作させると、動力の循環が生じ、車両の運転効率が低下する。また、アウタロータ軸35の回転数Ndがエンジン50の回転数Neよりも小さいアンダードライブ動作時に、オーバードライブ結合で動作させると、同様に、動力の循環が生じ、車両の運転効率が低下する。従って、運転効率を向上させるためには、アウタロータ軸35の回転数Ndがエンジン50の回転数Neよりも大きいオーバードライブ動作時には、オーバードライブ結合となるように、アウタロータ軸35の回転数Ndがエンジン50の回転数Neよりも小さいアンダードライブ動作時には、アンダードライブ結合となるように、アシストモータ40のロータ軸43の結合状態を制御した方がよい。ここで、エンジン50の回転数Neとアウタロータ軸35の回転数Ndが等しくなる境界は、エンジン50の動作点を決定する際に用いるエンジン50の動作線である。
【0053】
(3)動作線選択および結合状態切り換え制御:
図8は駆動軸であるアウタロータ軸35の動作点とエンジン50の動作線との関係を示す説明図である。図8において、縦軸はトルクであり、横軸は回転数である。図8はいわば本実施例の動力出力装置10の動作特性を示している。
【0054】
図8において、曲線L1,L2は、何れも、エンジン50の動作点を決定する際に用いる動作線である。エンジン50の動作点は、エンジン50のトルクと回転数の組み合わせとして表される。制御ユニット90は、後述するように、アシストモータ40のロータ軸43の結合状態やアウタロータ軸35の動作点の位置などに応じて、動作線L1,L2の何れかに沿うように、エンジン50の動作点を決定する。2つの動作線L1,L2のうち、動作線L1は、エンジン50の効率が最高となる動作線であり、この動作線L1に従ってエンジン50の動作点を決定すると、エンジン50の燃費は最適となるため、この動作線L1を、以下、燃費最適ラインと呼ぶ。他方の動作線L2は、エンジン50から出力されるトルクが最大となる動作線であり、エンジン50におけるスロットルバルブ53を全開にした場合の動作線に相当するため、この動作線L2を、以下、WOT(Wide Open Throttle)ラインと呼ぶ。なお、これら2つの動作線L1,L2は、予め、実験的に求めて、制御ユニット90内のROMにマップとして記憶しておく。
【0055】
また、図8において、曲線LIMは、本実施例の動力出力装置10の最大出力線である。従って、トルク軸である縦軸と回転数軸である横軸とこの曲線LIMとで囲まれる領域が、駆動軸であるアウタロータ軸35の動作点の採り得る範囲、即ち、動力出力装置10の動作可能領域である。また、曲線DDは、走行抵抗0%を表す曲線である。
【0056】
本実施例では、上記したように、エンジン50の動作線として、燃費最適ラインL1とWOTラインL2の2つの動作線を用いている。そして、原則として、燃費最適ラインL1よりもトルクが低い側の領域では、アシストモータ40のロータ軸43の結合状態をオーバードライブ結合にして動作させ、WOTラインL2よりもトルクが高い側の領域では、アンダードライブ結合にして動作させるようにしている。なお、燃費最適ラインL1よりもトルクが高くWOTラインL2よりもトルクが低い領域(即ち、燃費最適ラインL1とWOTラインL2とに挟まれた領域;図8中の斜線部)では、後述するように、オーバードライブ結合にして動作させる場合と、アンダードライブ結合にして動作させる場合と、がある。
【0057】
また、図8において、曲線DU,DOは駆動軸であるアウタロータ軸35の動作点の軌跡である。アウタロータ軸35の動作点は、アウタロータ軸35のトルクと回転数の組み合わせとして表される。言うなれば、動力出力装置10の出力動作点である。これらのうち、曲線DUは、駆動軸であるアウタロータ軸35から0%走行抵抗DDよりも大きなトルクを出力して、車両を加速させ、その後、加速とともに、アウタロータ軸35の出力トルクが低下し、アウタロータ軸35からの出力トルクと0%走行抵抗DDとが釣り合った速度で、車両を定常走行させる場合の軌跡である。また、曲線DOは、車両を定常走行させている場合に、運転者がアクセルを踏み込み、アウタロータ軸35からの出力トルクを増加して、車両を加速させる場合の軌跡である。
【0058】
それでは、本実施例の動作について、アウタロータ軸35の動作点が曲線DOに沿って移動する場合と曲線DUに沿って移動する場合とを例として、それぞれ、説明する。
【0059】
図9は本実施例におけるエンジン,アシストモータおよびクラッチモータの動作制御処理の処理手順を示すフローチャート、図10は本実施例におけるアシストモータ40のロータ軸43の結合状態切り換え処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、これらの処理ルーチンは、制御ユニット90のCPUが、ROM内に記憶されている処理プログラムに従って動作することによって、各々別個に、所定の時間間隔毎に繰り返し実行される。
【0060】
まず、アウタロータ軸35の動作点が曲線DOに沿って移動している場合について説明する。アウタロータ軸35の動作点は、今、曲線DO上の点b1にあるものとする。従って、アウタロータ軸35の動作点は、燃費最適ラインL1よりもトルクが低い側の領域にあるため、アシストモータ40のロータ軸43の結合状態はオーバードライブ結合状態にある。
【0061】
そこで、図9に示す処理ルーチンが開始されると、まず、制御ユニット90は、アシストモータ40のロータ軸43の結合状態がオーバードライブ結合状態であるか、アンダードライブ結合状態であるかを判定する(ステップS102)。前述したように、制御ユニット90は、アクチュエータ86を駆動して、アシストモータ40のロータ軸43の結合先を切り換え得るので、アシストモータ40のロータ軸43の結合状態が今どのような状態であるを常に把握している。従って、制御ユニット90は、その把握している状態に応じて、上記判定を下す。
【0062】
アウタロータ軸35の動作点が点b1にある状態では、上述したように、結合状態はオーバードライブ結合状態であるので、制御ユニット90は、ステップS102においてオーバードライブ結合状態であると判定を下し、続いて、制御ユニット90は、上記したWOTラインL2をオーバードライブ領域とアンダードライブ領域の境界として設定する(ステップS104)。
【0063】
ここで、オーバードライブ領域とは、図8に示した動力出力装置10の動作可能領域のうち、アシストモータ40のロータ軸43の結合状態をオーバードライブ結合状態にすべき領域のことであり、アンダードライブ領域とは、アンダードライブ結合状態にすべき領域のことである。前述したように、燃費最適ラインL1よりもトルクが低い領域はオーバードライブ結合状態にするため、オーバードライブ領域に含まれることは確実であり、また、WOTラインL2よりもトルクが高い側の領域は、アンダードライブ結合状態にするため、アンダードライブ領域に含まれることは確実である。しかし、燃費最適ラインL1よりもトルクが高くWOTラインL2よりもトルクが低い領域は、オーバードライブ結合状態にも、アンダードライブ結合状態にも成り得る不定領域であるため、この領域をオーバードライブ領域に含めるか、アンダードライブ領域に含めるかを決定する必要がある。そこで、ステップS104や後述するステップS120では、オーバードライブ領域とアンダードライブ領域の境界を設定して、上記不定領域がオーバードライブ領域に属するか、アンダードライブ領域に属するかを決定するである。
【0064】
ステップS104では、WOTラインL2をオーバードライブ領域とアンダードライブ領域の境界として設定して、上記不定領域がオーバードライブ領域に含まれるものと決定する。
【0065】
次に、制御ユニット90は、アクセルペダルポジションセンサ65aにより検出されたアクセルペダル65の踏み込み量に基づいて、運転者から要求された要求出力を求め、その要求出力からさらに駆動軸であるアウタロータ軸35の目標動作点を決定する(ステップS106)。要求出力は、アウタロータ軸35から出力すべき動力に相当し、アウタロータ軸35の目標回転数と目標トルクの積で表される。従って、アウタロータ軸35の目標動作点は、アウタロータ軸35の目標回転数と目標トルクの組み合わせとして決定される。
【0066】
次に、制御ユニット90は、駆動軸であるアウタロータ軸35の目標動作点がアンダードライブ領域にあるか否かを判定する(ステップS108)。
【0067】
今、アウタロータ軸35の動作点が点b1にあって、決定したアウタロータ軸35の目標動作点が、例えば、点b2や点b3であるすると、点b2や点b3はオーバードライブ領域内であるので、ステップS110に進み、制御ユニット90は、エンジン50の動作線として、2つの動作線L1,L2のうち、燃費最適ラインL1を選択する(ステップS110)。このように、現在のアシストモータ40の結合状態がオーバードライブ結合状態であって、かつ、アウタロータ軸35の目標動作点もオーバードライブ領域にある場合には、エンジン50の動作線として、従来の場合と同様に、エンジン50の効率が最も高い燃費最適ラインL1を用いる。
【0068】
こうして、エンジン50の動作線を選択すると、次に、制御ユニット90は、そのエンジン50の動作線に基づいてエンジン50の目標動作点を決定し、さらに、その決定したエンジン50の目標動作点を基にして、アシストモータ40およびクラッチモータ30の目標動作点を決定する(ステップS112)。具体的には、次のようにして決定する。
【0069】
即ち、制御ユニット90は、まず、充放電電力および補機駆動電力をそれぞれ算出し、各々の算出結果を、ステップS106で求めた運転者からの要求出力に加算して、その総和をエンジン50に対する要求動力として求める。ここで、充放電電力とは、バッテリ94の充放電に要するエネルギであり、バッテリ94を充電する必要がある場合には正の値、放電する必要がある場合には負の値を採る。また、補機駆動電力とは、エアコンなどの補機を駆動するために必要となるエネルギである。なお、本明細書でエネルギという場合は、全て単位時間当たりのエネルギを意味するものとする。この意味で、本明細書においては、機械的なエネルギは動力と同義であり、電気的なエネルギは電力と同義である。
【0070】
次に、制御ユニット90は、こうして求めたエンジン50に対する要求動力が、先に選択したエンジン50の動作線上のどこに当たるかを求めて、エンジン50の目標動作点を決定する。即ち、エンジン50に対する要求動力はエンジン50の目標回転数と目標トルクとの積として表されるため、回転数とトルクとの積が要求動力の値と等しくなるエンジン50の動作線上の点を求めれば、それがエンジン50の目標動作点となる。具体的には、制御ユニット90内のROMに記憶された2つのマップのうち、選択された動作線(この例の場合、燃費最適ラインL1)に対応するマップから、要求動力に応じた動作点を読み込むことで、エンジン50の目標動作点を決定する。
【0071】
次に、制御ユニット90は、その決定したエンジン50の目標動作点を基にして、前述した式(1)または(2)に従って、アシストモータ40およびクラッチモータ30の目標動作点、即ち、アシストモータ40の目標回転数および目標トルク、並びにクラッチモータ30の目標回転数および目標トルクを決定する。なお、式(1)を用いるか、式(2)を用いるかは、現在のアシストモータ40の結合状態に従って決定する。即ち、結合状態がアンダードライブ結合状態である場合には、式(1)を用い、オーバードライブ結合状態である場合には、式(2)を用いる。従って、この例の場合、前述したように結合状態はオーバードライブ結合状態であるので、式(2)を用いることになる。
【0072】
以上のようにして決定したエンジン50,アシストモータ40およびクラッチモータ30の各目標動作点に基づいて、制御ユニット90は、エンジン50、アシストモータ40およびクラッチモータ30の動作を制御する(ステップS114)。各モータ30,40の動作制御処理は、同期モータの制御として周知の処理を適用することができる。本実施例では、いわゆる比例積分制御による制御を実行している。つまり、各モータの現在のトルクを検出し、目標トルクとの偏差および目標回転数に基づいて、各相に印加する電圧指令値を設定する。印加される電圧値は上記偏差の比例項、積分項、累積項によって設定される。それぞれの項にかかる比例係数は実験などにより適切な値が設定される。こうして設定された電圧は、駆動回路91,92を構成するトランジスタインバータのスイッチングのデューティに置換され、いわゆるPWM制御により各モータに印加される。
【0073】
制御ユニット90は、駆動回路91,92のスイッチングを制御することによって、上述の通り、クラッチモータ30およびアシストモータ40の動作を直接制御する。これに対し、エンジン150の動作は現実にはEFIECU70が実施する処理である。従って、制御ユニット90はEFIECU70に対してエンジン50の動作点の情報を出力することで、間接的にエンジン50の動作を制御する。
【0074】
一方、アウタロータ軸35の動作点が点b1にあって、ステップS106で決定したアウタロータ軸35の目標動作点が、例えば、点b5であるとすると、点b5はアンダードライブ領域内であるので、制御ユニット90は、ステップS108において、アウタロータ軸35の目標動作点はアンダードライブ領域にあると判定し、エンジン50の動作線として、2つの動作線L1,L2のうち、WOTラインL2を選択する(ステップS116)。このように、現在のアシストモータ40の結合状態がオーバードライブ結合状態であって、かつ、アウタロータ軸35の目標動作点がアンダードライブ領域にある場合には、エンジン50の動作線として、従来の場合と異なり、エンジン50の出力が最大となるWOTラインL2を用いる。
【0075】
そして、制御ユニット90は、アシストモータ40のロータ軸43の結合状態を、オーバードライブ結合からアンダードライブ結合に切り換えるべく、切換指令フラグを立てる(ステップS118)。この切換指令フラグは、後述するアシストモータ40のロータ軸43の結合状態切り換え処理において用いる。
【0076】
次に、制御ユニット90は、エンジン50の動作線として選択したWOTラインL2を用いて、エンジン50の目標動作点を決定し、さらに、その決定したエンジン50の目標動作点を基にして、アシストモータ40およびクラッチモータ30の目標動作点を決定する(ステップS112)。そして、その決定したエンジン50,アシストモータ40およびクラッチモータ30の各目標動作点に基づいて、エンジン50,アシストモータ40およびクラッチモータ30の動作を制御する(ステップS114)。なお、ステップS112およびS114の処理については、先に詳細に述べたので、説明は省略する。
【0077】
一方、図9に示す処理ルーチンに並行して、図10に示す処理ルーチンが開始されると、まず、制御ユニット90は、切換指令フラグが立っているか否かを判定する(ステップS202)。判定の結果、切換指令フラグが立っていなければ、図10に示す処理ルーチンを終了し、切換指令フラグが立っていれば、ステップS204以降の処理を実行する。
【0078】
上記した例の場合、制御ユニット90は、ステップS118において、切換指令フラグを立てたので、ステップS204に進み、まず、クラッチモータ30のインナロータ軸33の回転数とアウタロータ軸35の回転数との偏差dを求める(ステップS204)。次に、制御ユニット90は、その求めた回転数偏差dが所定の範囲内(即ち、−Nlim<d<Nlim)にあるか否かを判定する(ステップS206)。
【0079】
切換装置80において、アシストモータ40のロータ軸43の結合状態を、例えば、オーバードライブ結合状態(即ち、クラッチモータ30のインナロータ軸33に結合されている状態)からアンダードライブ結合状態(即ち、クラッチモータ30のアウタロータ軸35に結合されている状態)に切り換える際、クラッチモータ30のインナロータ軸33の回転数とアウタロータ軸35の回転数との偏差dがゼロに近いほど、スムーズに切り換えることができる。そこで、本実施例では、上記の所定の範囲(−Nlim<d<Nlim)が、そのスムーズに切り換え得る範囲となるように、予め、所定値Nlimを決定しておく。
【0080】
従って、制御ユニット90は、判定の結果、クラッチモータ30のインナロータ軸33とアウタロータ軸35との間の回転数偏差dが上記範囲(−Nlim<d<Nlim)内にない場合には、そのまま待機する。
【0081】
なお、このとき、エンジン50の動作線としては、前述したようにステップS116においてWOTラインL2を選択しているので、エンジン50の動作点は、WOTラインL2上を徐々に移動している。一方、アウタロータ軸35の動作点も、点b1から点b5(目標動作点)に向かって曲線DO上を徐々に移動している。その後、アウタロータ軸35の動作点が、エンジン50の動作線であるWOTラインL2とアウタロータ軸35の動作点の軌跡である曲線DOとの交点b4に来たときに、エンジン50の動作点も、その交点b4に来て、両者の動作点は一致する。従って、このとき、エンジン50の回転数とアウタロータ軸35の回転数は一致し、クラッチモータ30のインナロータ軸33の回転数とアウタロータ軸35の回転数は一致するため、両者の回転数偏差dはゼロになる。
【0082】
よって、エンジン50の動作点がWOTラインL2に沿って交点b4に近づき、アウタロータ軸35の動作点も曲線DOに沿って交点b4に近づいたときに、クラッチモータ30のインナロータ軸33とアウタロータ軸35との間の回転数偏差dは上記範囲(−Nlim<d<Nlim)内に入ることになる。このように、回転数偏差dが上記範囲(−Nlim<d<Nlim)内に入ると、制御ユニット90は、アクチュエータ86を駆動して、アシストモータ40のロータ軸43の結合状態を、オーバードライブ結合状態からアンダードライブ結合状態に切り換える(ステップS208)。その後、制御ユニット90は、切換指令フラグを降ろし(ステップS210)、図10の処理ルーチンを終了する。
【0083】
こうして、アウタロータ軸35の動作点が点b1から曲線DOに沿って交点b4に至ると、アシストモータ40のロータ軸43の結合状態は、オーバードライブ結合状態からアンダードライブ結合状態に切り換わる。
【0084】
その後、アウタロータ軸35の動作点が交点b4から、例えば、点b5に移動し、改めて、図9に示す処理ルーチンが開始されると、次のような処理となる。制御ユニット90は、まず、前述したとおり、アシストモータ40のロータ軸43の結合状態がオーバードライブ結合状態であるか、アンダードライブ結合状態であるかを判定するが(ステップS102)、結合状態はオーバードライブ状態からアンダードライブ結合状態に切り換わったので、制御ユニット90は、アンダードライブ結合状態であると判定を下し、今度は、燃費最適ラインL1をオーバードライブ領域とアンダードライブ領域の境界として設定する(ステップS120)。
【0085】
次に、制御ユニット90は、ステップS106の処理と同様に、運転者から要求された要求出力を求めて、その要求出力から駆動軸であるアウタロータ軸35の目標動作点を決定する(ステップS122)。そして、制御ユニット90は、その決定したアウタロータ軸35の目標動作点がオーバードライブ領域にあるか否かを判定する(ステップS124)。今、アウタロータ軸35の動作点が点b5にあって、決定したアウタロータ軸35の目標動作点が、例えば、点b6であるすると、点b6はアンダードライブ領域内であるので、ステップS126に進み、制御ユニット90は、エンジン50の動作線としてWOTラインL2を選択する(ステップS126)。このように、現在のアシストモータ40の結合状態がアンダードライブ結合状態であって、かつ、アウタロータ軸35の目標動作点もアンダードライブ領域にある場合には、エンジン50の動作線として、引き続きWOTラインL2を用いる。
【0086】
こうして、エンジン50の動作線として引き続きWOTラインL2を選択すると、制御ユニット90は、そのWOTラインL2を用いてエンジン50の目標動作点を決定し、さらに、その決定したエンジン50の目標動作点を基にして、アシストモータ40およびクラッチモータ30の目標動作点を決定する(ステップS112)。そして、その決定したエンジン50,アシストモータ40およびクラッチモータ30の各目標動作点に基づいて、エンジン50,アシストモータ40およびクラッチモータ30の動作を制御する(ステップS114)。
【0087】
以上、アウタロータ軸35の動作点が曲線DOに沿って移動している場合について説明したが、次に、アウタロータ軸35の動作点が曲線DUに沿って移動している場合について説明する。アウタロータ軸35の動作点は、今、曲線DU上の点a1にあるものとする。よって、アウタロータ軸35の動作点は、WOTラインL2よりもトルクが高い側の領域にあるため、アシストモータ40のロータ軸43の結合状態はアンダードライブ結合状態にある。
【0088】
そこで、図9に示す処理ルーチンが開始されると、制御ユニット90は、まず、前述したとおり、アシストモータ40のロータ軸43の結合状態がオーバードライブ結合状態であるか、アンダードライブ結合状態であるかを判定するが(ステップS102)、この場合、結合状態はアンダードライブ結合状態であるので、制御ユニット90は、アンダードライブ結合状態であると判定を下し、燃費最適ラインL1をオーバードライブ領域とアンダードライブ領域の境界として設定する(ステップS120)。従って、上記した不定領域(即ち、燃費最適ラインL1よりもトルクが高くWOTラインL2よりもトルクが低い領域)は、今度は、アンダードライブ領域に含まれるものと決定することになる。
【0089】
次に、制御ユニット90は、前述したとおり、運転者から要求された要求出力を求めて、その要求出力から駆動軸であるアウタロータ軸35の目標動作点を決定し(ステップS122)。さらに、その決定したアウタロータ軸35の目標動作点がオーバードライブ領域にあるか否かを判定する(ステップS124)。
【0090】
今、アウタロータ軸35の動作点が点a1にあって、決定したアウタロータ軸35の目標動作点が、例えば、点a2や点a3であるすると、点a2や点a3はアンダードライブ領域内であるので、ステップS126に進むことになる。従って、この場合の処理は、前述した、アウタロータ軸35の動作点が点b5にあり、目標動作点が点b6にある場合の処理と同様となるので、以降の説明は省略する。
【0091】
一方、アウタロータ軸35の動作点が点a1にあって、ステップS122で決定したアウタロータ軸35の目標動作点が、例えば、点a5であるとすると、点a5はオーバードライブ領域内であるので、制御ユニット90は、ステップS124において、アウタロータ軸35の目標動作点はオーバードライブ領域にあると判定し、エンジン50の動作線として、今度は、燃費最適ラインL1を選択する(ステップS128)。このように、現在のアシストモータ40の結合状態がアンダードライブ結合状態であって、かつ、アウタロータ軸35の目標動作点がオーバードライブ領域にある場合には、エンジン50の動作線として燃費最適ラインL1を用いる。
【0092】
そして、制御ユニット90は、アシストモータ40のロータ軸43の結合状態を、アンダードライブ結合からオーバードライブ結合に切り換えるべく、切換指令フラグを立てる(ステップS130)。
【0093】
次に、制御ユニット90は、エンジン50の動作線として選択した燃費最適ラインL1を用いて、エンジン50の目標動作点を決定し、さらに、その決定したエンジン50の目標動作点を基にして、アシストモータ40およびクラッチモータ30の目標動作点を決定する(ステップS112)。そして、その決定したエンジン50,アシストモータ40およびクラッチモータ30の各目標動作点に基づいて、エンジン50,アシストモータ40およびクラッチモータ30の動作を制御する(ステップS114)。
【0094】
一方、図9に示す処理ルーチンに並行して、図10に示す処理ルーチンが開始されると、まず、制御ユニット90は、前述したとおり、切換指令フラグが立っているか否かを判定する(ステップS202)。上記した例の場合、制御ユニット90は、ステップS130において、切換指令フラグを立てたので、ステップS204に進み、前述したとおり、クラッチモータ30のインナロータ軸33の回転数とアウタロータ軸35の回転数との偏差dを求めて(ステップS204)、その回転数偏差dが所定の範囲内(−Nlim<d<Nlim)にあるか否かを判定する(ステップS206)。
【0095】
なお、このとき、エンジン50の動作線としては、前述したようにステップS128において燃費最適ラインL1を選択しているので、エンジン50の動作点は、燃費最適ラインL1上を徐々に移動している。一方、アウタロータ軸35の動作点は、点a1から点a5(目標動作点)に向かって曲線DU上を徐々に移動している。
【0096】
その後、アウタロータ軸35の動作点が燃費最適ラインL1と曲線DUとの交点a4に来たときに、エンジン50の動作点も、その交点a4に来るため、両者の動作点は一致する。従って、このとき、エンジン50の回転数とアウタロータ軸35の回転数は一致するため、クラッチモータ30のインナロータ軸33の回転数とアウタロータ軸35の回転数も一致して、両者の回転数偏差dはゼロになる。
【0097】
よって、エンジン50の動作点が燃費最適ラインL1に沿って交点a4に近づき、アウタロータ軸35の動作点も曲線DUに沿って交点a4に近づいたときに、クラッチモータ30のインナロータ軸33とアウタロータ軸35との間の回転数偏差dは上記範囲(−Nlim<d<Nlim)内に入り、それによって、制御ユニット90は、アクチュエータ86を駆動して、アシストモータ40のロータ軸43の結合状態を、アンダードライブ結合状態からオーバードライブ結合状態に切り換える(ステップS208)。その後、制御ユニット90は、切換指令フラグを降ろし(ステップS210)、図10の処理ルーチンを終了する。
【0098】
こうして、アウタロータ軸35の動作点が点a1から曲線DUに沿って交点a4に至ると、アシストモータ40のロータ軸43の結合状態は、アンダードライブ結合状態からオーバードライブ結合状態に切り換わる。
【0099】
その後、アウタロータ軸35の動作点が交点a4から、例えば、点a5に移動し、改めて、図9に示す処理ルーチンが開始されると、制御ユニット90は、まず、前述したとおり、アシストモータ40のロータ軸43の結合状態がオーバードライブ結合状態であるか、アンダードライブ結合状態であるかを判定するが(ステップS102)、結合状態はアンダードライブ状態からオーバードライブ結合状態に切り換わったので、制御ユニット90は、オーバードライブ結合状態であると判定を下し、今度は、WOTラインL2をオーバードライブ領域とアンダードライブ領域の境界として設定する(ステップS104)。
【0100】
次に、制御ユニット90は、運転者から要求された要求出力を求めて、その要求出力から駆動軸であるアウタロータ軸35の目標動作点を決定し(ステップS106)、その決定したアウタロータ軸35の目標動作点がアンダードライブ領域にあるか否かを判定する(ステップS108)。今、アウタロータ軸35の動作点が点a5にあって、決定したアウタロータ軸35の目標動作点が、例えば、点a6であるすると、点a6はオーバードライブ領域内であるので、ステップS110に進み、制御ユニット90は、エンジン50の動作線として燃費最適ラインL1を選択する(ステップS110)。このように、現在のアシストモータ40の結合状態がオーバードライブ結合状態であって、かつ、アウタロータ軸35の目標動作点もオーバードライブ領域にある場合には、エンジン50の動作線として、引き続き燃費最適ラインL1を用いる。
【0101】
こうして、エンジン50の動作線として引き続き燃費最適ラインL1を選択すると、制御ユニット90は、そのWOTラインL2を用いてエンジン50の目標動作点を決定し、さらに、その決定したエンジン50の目標動作点を基にして、アシストモータ40およびクラッチモータ30の目標動作点を決定する(ステップS112)。そして、その決定したエンジン50,アシストモータ40およびクラッチモータ30の各目標動作点に基づいて、エンジン50,アシストモータ40およびクラッチモータ30の動作を制御する(ステップS114)。
【0102】
(4)実施例の効果:
以上説明したように、本実施例においては、駆動軸であるアウタロータ軸35の動作点がアンダードライブ領域にある場合には、エンジン50の動作点を決定する際に用いる動作線として、エンジン50のトルクが最大となるWOTラインL2を主として用いている。従って、アウタロータ軸35の動作点がアンダードライブ領域にある場合には、エンジン50から出力されるトルクは、従来に比較して、より大きなものとなる。
【0103】
また、アウタロータ軸35の動作点がアンダードライブ領域にある場合には、アシストモータ40のトルクTaは、アウタロータ軸35のトルクをTd、エンジン50のトルクをTeとすると、式(1)で示したとおり、Ta=Td−Teとなる。従って、この式を変形すると、Td=Ta+Teとなるため、アウタロータ軸35から出力されるトルクTdは、アシストモータ40から出力されるトルクTaとエンジン50から出力されるトルクTeとの和に等しくなる。なお、ちなみに、式(1)から明らかなように、エンジン50のトルクTeはクラッチモータのトルクTcと等しい。
【0104】
よって、アウタロータ軸35の動作点がアンダードライブ領域にある場合には、従来に比較して、エンジン50から出力されるトルクTaが大きくなった分、アシストモータ40から出力されるトルクTaを小さくしても、アウタロータ軸35から出力されるトルクTd(特に、最大トルク)としては、従来と同様の値を確保することができる。
【0105】
従って、本実施例によれば、駆動軸であるアウタロータ軸35の動作点がアンダードライブ領域にある場合に、アウタロータ軸35から出力され得る最大トルクとして或る程度のトルクを確保しながら、アシストモータ40の最大負荷容量を軽減することができると共に、そのアシストモータ40を駆動するためのインバータ回路(即ち、駆動回路91)の最大電流値も低減することができる。従って、アシストモータ40の大きさを小さくしたり、インバータ回路のコストを低減したりすることができる。
【0106】
図11はアシストモータなどの特性を本発明と従来例とで比較して示した説明図である。図11において、(a)は図8と同様に動力出力装置の動作特性を示し、(b)はアシストモータの出力特性を示し、(c)はアシストモータの電流−トルク特性を示している。また、(a),(b)において、縦軸はトルクであり、横軸は回転数である。(c)において、縦軸はトルクであり、横軸は電流である。さらにまた、(a)〜(c)の図中において、Invは本発明の場合を、Priは従来例の場合をそれぞれ示している。
【0107】
図11(a)に示すように、駆動軸の動作点がアンダードライブ領域にあり、かつ、駆動軸から出力されるトルクが最大トルクである場合に、本発明と従来例とを比較すると、従来例ではエンジンの動作線として燃費最適ラインL1を用いているのに対し、本発明ではWOTラインL2を用いているため、エンジンから出力されるトルクTeを大きくすることができる。従って、本発明では、エンジンから出力されるトルクTe(言い換えれば、クラッチモータから出力されるトルクTc)が大きくなった分、アシストモータから出力すべきトルクTaは、従来例に比較して、小さくすることができる。
【0108】
従って、図11(b)に示すように、アシストモータの出力特性としても、本発明では、アシストモータの最大トルクTamaxを、従来例に比較して小さくすることができ、アシストモータの最大負荷容量を軽減することができる。また、図11(c)に示すように、アシストモータの電流特性としても、本発明では、アシストモータの最大トルクTamaxが小さくなった分、従来例に比較して、アシストモータに供給する最大電流Iamaxも少なくて済むため、アシストモータを駆動するためのインバータ回路の最大電流値を低減することができる。
【0109】
また、本実施例においては、駆動軸であるアウタロータ軸35の動作点がオーバードライブ領域にある場合には、アシストモータ40の最大負荷容量やインバータ回路の最大電流値等を考慮しなくて良いため、エンジン50の動作点を決定する際に用いる動作線として、エンジン50の効率が最高となる燃費最適ラインL1を主として用いている。従って、アウタロータ軸35の動作点がオーバードライブ領域にある場合には、エンジン50を効率が最大となるように動作させることができるため、動力出力装置10全体の運転効率を向上させることができる。
【0110】
また、本実施例では、エンジン50の動作線の切り換えおよびアシストモータ40のロータ軸43の結合状態の切り換えを、オーバードライブ領域とアンダードライブ領域との境界を基準として行なっている。しかし、本実施例では、その境界を、アシストモータ40のロータ軸43の結合状態がオーバードライブ結合状態である場合には、WOTラインL2とし、アンダードライブ結合状態である場合には、燃費最適ラインL1としており、オーバードライブ結合状態からアンダードライブ結合状態へ移行する場合とアンダードライブ結合状態からオーバードライブ結合状態へと移行する場合とで、上記境界を違えている。これは、エンジン50の動作線の切り換え処理およびアシストモータ40のロータ軸43の結合状態の切り換え処理に、それぞれ、ヒステリシスを持たせるためである。つまり、オーバードライブ結合状態からアンダードライブ結合状態へ移行する場合とアンダードライブ結合状態からオーバードライブ結合状態へと移行する場合とで、エンジン50の動作線の切り換え処理およびアシストモータ40のロータ軸43の結合状態の切り換え処理の基準となる上記境界を何れか一方に統一すると、アウタロータ軸35の動作点がその境界近傍に留まるような動作状態が持続する場合、上記切り換え処理が頻繁に行なわれる可能性がある。そこで、本実施例では、このような上記切り換え処理が頻繁に行なわれるのを回避するために、オーバードライブ結合状態からアンダードライブ結合状態へ移行する場合とアンダードライブ結合状態からオーバードライブ結合状態へと移行する場合とで上記境界を違えて、上記切り換え処理にヒステリシスを持たせているのである。
【0111】
さて、図1に示した動力出力装置10では、エンジン150から出力された動力を電力のやりとりによって増減して伝達する動力調整装置として、クラッチモータ30を適用していた。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、動力調整装置として、クラッチモータ30の代わりに、図12に示すように、プラネタリギヤ200と電動発電機210を適用するようにしても良い。
【0112】
図12は図1の動力出力装置の変形例を示す構成図である。この変形例の構成は、動力調整装置としてプラネタリギヤ200と電動発電機210を用いた以外は、図1に示した動力出力装置の構成と基本的に同じである。なお、図12においては、切換装置80に代えて、切換装置80と基本構成が同じな切換装置180を用いている。また、図1では図示しなかったが、図12ではダンパ58が図示されている。
【0113】
さて、プラネタリギヤ200は、中心で回転するサンギヤ201、サンギヤ201の外周を自転しながら公転するプラネタリピニオンギヤを備えるプラネタリキャリア203と、更にその外周で回転するリングギヤ202とから構成されている。サンギヤ201、プラネタリキャリア203,およびリングギヤ202はそれぞれ別々の回転軸を有している。サンギヤ201の回転軸であるサンギヤ軸204は中空になっており、電動発電機210のロータ212に結合されている。プラネタリキャリア203の回転軸であるプラネタリキャリア軸206はダンパ58を介してエンジン50のクランクシャフト56と結合されている。リングギヤ202の回転軸であるリングギヤ軸205は、駆動軸であって、出力用ギヤ21,チェーン23を介して伝達軸22に結合されている。この伝達軸22は、更に減速機24およびディファレンシャルギヤ25を介して、駆動輪26R,26Lを備えた車軸26に結合されている。
【0114】
プラネタリギヤ200は、サンギヤ軸204,プラネタリキャリア軸206およびリングギヤ軸205の3軸の回転数およびトルクに以下の関係が成立することが機構学上よく知られている。即ち、上記3つの回転軸のうち2つの回転軸の動力状態が決定されると、以下の関係式に基づいて残余の一つの回転軸の動力状態が決定される。
【0115】
Ns=(1+ρ)/ρ×Nc−Nr/ρ;
Nc=ρ/(1+ρ)×Ns+Nr/(1+ρ);
Nr=(1+ρ)Nc−ρNs;
Ts=Tc×ρ/(1+ρ)=ρTr;
Tr=Tc/(1+ρ);
ρ=サンギヤ201の歯数/リングギヤ202の歯数; ・・・(3)
【0116】
ここで、
Nsはサンギヤ軸204の回転数;
Tsはサンギヤ軸204のトルク;
Ncはプラネタリキャリア軸206の回転数(即ちNe);
Tcはプラネタリキャリア軸206のトルク(即ちTe);
Nrはリングギヤ軸205の回転数(即ちNd);
Trはリングギヤ軸205のトルク(即ちTd);
である。
【0117】
電動発電機210は、アシストモータ40と同様の構成をしている。つまり、電動発電機210はステータ214にコイルが巻回され、ロータ212に永久磁石が貼付された三相同期モータとして構成されている。ステータ214はケースに固定されている。ステータ214に巻回されたコイルに三相交流を流すと回転磁界が生じ、ロータ212に貼付された永久磁石との相互作用によってロータ212が回転する。電動発電機210は、ロータ212が外力によって回転されると、その動力を電力として回生する発電機としての機能も奏する。なお、電動発電機210のステータ214に巻回されたコイルは、図1のクラッチモータ30と同様に、駆動回路91と電気的に接続されている。制御ユニット90が駆動回路91のトラジスタをオン・オフすることにより電動発電機210の運転を制御することができる。
【0118】
この変形例では、プラネタリギヤ200と電動発電機210の組み合わせにより、図1に示したクラッチモータ30と同等の機能を奏することができる。クラッチモータ30のインナロータ軸33に相当するのがプラネタリキャリア軸206であり、駆動軸であったアウタロータ軸35に相当するのがリングギヤ軸205である。この変形例では、これらの組み合わせにより、以下に示す通り、動力調整装置としての機能を奏する。
【0119】
エンジン50からプラネタリキャリア軸206に動力が入力されると、上式(3)に従い、リングギヤ202およびサンギヤ201が回転する。リングギヤ202およびサンギヤ201のいずれか一方の回転を止めることも可能である。リングギヤ202が回転することにより、エンジン50から出力された動力の一部を駆動軸であるリングギヤ軸205に機械的な形で伝達することができる。また、サンギヤ201が回転することにより、エンジン50から出力された動力の一部を電動発電機210により電力として回生することができる。一方、電動発電機210を力行すれば、電動発電機210から出力されたトルクは、サンギヤ201、プラネタリキャリア203およびリングギヤ202を介して駆動軸であるリングギヤ軸205に機械的に伝達することができる。従って、電動発電機210を力行することにより、エンジン50から出力されたトルクを増大して駆動軸であるリングギヤ軸205に出力することも可能である。このように、この変形例では、プラネタリギヤ200と電動発電機210の組み合わせにより、図1に示したクラッチモータ30と同様の機能を奏することができるのである。
【0120】
この変形例においても、アシストモータ40のロータ軸43をプラネタリギヤ200のリングギヤ軸205に結合させるか、プラネタリキャリア軸206に結合させるかを、第1ギヤ111,第2ギヤ112,第3ギヤ113を備えた切換装置180により切り換えている。切換装置180には、図1に示した切換装置80と同様、切り換え用のアクチュエータが設けられており、制御ユニット90に接続されているが、図示は省略した。
【0121】
この変形例でも、これらギヤの噛合状態に応じて種々の構成を採ることができる。例えば、第1ギヤ111と第3ギヤ113とを噛合すると、アシストモータ40のロータ軸43はプラネタリギヤ200のリングギヤ軸205と結合する。従って、エンジン50から出力された動力は、プラネタリギヤ200、アシストモータ40を経て駆動軸であるリングギヤ軸205に伝達される。これは、図1の構成におけるアンダードライブ結合(図2)に相当する結合状態である。
【0122】
他方、切換装置180を制御して、第2ギヤ112と第3ギヤ113とを噛合すると、アシストモータ40のロータ軸43はプラネタリギヤ200のプラネタリキャリア軸206と結合する。従って、エンジン50から出力された動力は、アシストモータ40、プラネタリギヤ200を経て駆動軸であるリングギヤ軸205に伝達される。これは、図1の構成におけるオーバードライブ結合(図3)に相当する結合状態である。
【0123】
従って、以上のような構成において、図9に示したエンジン,アシストモータおよびクラッチモータの動作制御処理や図10に示したアシストモータ40のロータ軸43の結合状態切り換え処理をそのまま実行することによって、この変形例においても、図1に示した実施例と同様の効果を奏することは可能である。但し、図9において、クラッチモータの代わりに、電動発電機210の動作制御を行なう必要がある。
【0124】
また、本発明は4輪駆動車に適用することもできる。実施例(図1)または変形例(図12)の構成による動力系統を車両の前輪に適用し、後輪の車軸に別途駆動用の電動機を設けることによって4輪駆動可能なハイブリッド車両を構成することができる。かかる車両でも、駆動軸の回転数とエンジン50の回転数の大小関係に応じて、結合状態を切り換えることにより効率の高い運転を行うことができる。従って、かかる切り換えの制御に本発明を適用するものとすれば、先に実施例で説明した種々の効果を得ることができる。
【0125】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、更に種々なる形態で実施し得ることは勿論である。例えば、上述した実施例においては、エンジン50としてガソリンにより運転されるガソリンエンジンを用いていたが、その他にも、ディーゼルエンジン等のレシプロエンジンの他、タービンエンジンや、ジェットエンジン、ロータリエンジンなど各種内燃或いは外燃機関を用いることができる。
【0126】
また、モータとしては、PM形(永久磁石形;Permanent Magnet type)同期電動機を用いたが、回生動作及び力行動作を行なわせるのであれば、その他にも、VR形(可変リラクタンス形;Variable Reluctance type)同期電動機や、バーニアモータや、直流電動機や、誘導電動機や、超電導モータなどを用いることができる。また、力行動作のみ行なわせるのであれば、直流モータやステップモータなどを用いることもできる。
【0127】
クラッチモータ30における、インナロータ,アウタロータと外部の回転軸との関係は、逆にすることも可能である。また、アウタロータとインナロータの代わりに、互いに対向する円盤状のロータを用いるようにしても良い。
【0128】
第1及び第2の駆動回路91,92としては、トランジスタインバータを用いていたが、その他にも、IGBT(絶縁ゲートバイポーラモードトランジスタ;Insulated Gate Bipolar mode Transistor)インバータや、サイリスタインバータや、電圧PWM(パルス幅変調;Pulse Width Modulation)インバータや、方形波インバータ(電圧形インバータ,電流形インバータ)や、共振インバータなどが用いることができる。
【0129】
二次電池であるバッテリ94としてはPbバッテリ,NiMHバッテリ,Liバッテリなどを用いることができるが、バッテリ94に代えてキャパシタを用いることもできる。また、本実施例では、種々の制御処理をCPUがソフトウェアを実行することにより実現しているが、かかる制御処理をハード的に実現することもできる。
【0130】
以上の実施例では、動力出力装置をハイブリッド車両に搭載する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、2つの出力軸を有するものであれば、船舶,航空機などの交通手段や、工作機械などの各種産業機械などに搭載することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例としての動力出力装置を搭載したハイブリッド車両の概略構成を示す構成図である。
【図2】 図1における動力出力装置において、アンダードライブ結合時の動力系統の概略構成を示す説明図である。
【図3】 図1における動力出力装置において、オーバードライブ結合時の動力系統の概略構成を示す説明図である。
【図4】 アンダードライブ結合状態において、エンジンから出力された動力を回転数が低い側に変換する場合の様子を示す説明図である。
【図5】 アンダードライブ結合状態において、エンジンから出力された動力を回転数が高い側に変換する場合の様子を示す説明図である。
【図6】 オーバードライブ結合状態において、エンジンから出力された動力を回転数が低い側に変換する場合の様子を示す説明図である。
【図7】 オーバードライブ結合状態において、エンジンから出力された動力を回転数が高い側に変換する場合の様子を示す説明図である。
【図8】 図1における動力出力装置において、駆動軸であるアウタロータ軸35の動作点とエンジン50の動作線との関係を示す説明図である。
【図9】 図1の動力出力装置におけるエンジン,アシストモータおよびクラッチモータの動作制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】 図1の動力出力装置におけるアシストモータ40のロータ軸43の結合状態切り換え処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】 アシストモータなどの特性を本発明と従来例とで比較して示した説明図である。
【図12】 図1の動力出力装置の変形例を示す構成図である。
【図13】 従来の動力出力装置について、アシストモータを駆動軸に結合した場合における、アンダードライブ動作時の動力の伝達の様子を示す説明図である。
【図14】 従来の動力出力装置について、アシストモータを駆動軸に結合した場合における、オーバードライブ動作時の動力の伝達の様子を示す説明図である。
【図15】 従来の動力出力装置について、アシストモータを出力軸に結合した場合における、アンダードライブ動作時の動力の伝達の様子を示す説明図である。
【図16】 従来の動力出力装置について、アシストモータを出力軸に結合した場合における、オーバードライブ動作時の動力の伝達の様子を示す説明図である。
【符号の説明】
10…動力出力装置
20…ハイブリッドユニット
21…出力用ギヤ
22…伝達軸
23…チェーン
24…減速機
25…ディファレンシャルギヤ
26…車軸
26R,26L…駆動輪
30…クラッチモータ
32…インナロータ
33…インナロータ軸
34…アウタロータ
35…アウタロータ軸
36…三相コイル
38…スリップリング
40…アシストモータ
42…ロータ
43…ロータ軸
44…ステータ
46…三相コイル
50…エンジン
51…燃料噴射弁
52…回転数センサ
53…スロットルバルブ
54…スロットルバルブモータ
56…クランクシャフト
57…VVT
58…ダンパ
65…アクセルペダル
65a…アクセルペダルポジションセンサ
66…シフトレバー
66a…シフトポジションセンサ
70…EFIECU
80…切換装置
81…第1ギヤ
82…第2ギヤ
83…第3ギヤ
84…可動ギヤ
85…スプライン
86…アクチュエータ
87…可動部材
90…制御ユニット
91…第1の駆動回路
92…第2の駆動回路
94…バッテリ
111…第1ギヤ
112…第2ギヤ
113…第3ギヤ
180…切換装置
200…プラネタリギヤ
201…サンギヤ
202…リングギヤ
203…プラネタリキャリア
204…サンギヤ軸
205…リングギヤ軸
206…プラネタリキャリア軸
210…電動発電機
212…ロータ
214…ステータ

Claims (4)

  1. 出力軸を有するエンジンと、動力を出力するための駆動軸と、前記出力軸及び駆動軸に結合され電力のやりとりによって前記エンジンから出力された動力を増減して前記駆動軸に伝達可能な動力調整装置と、回転軸を有する電動機と、該電動機の回転軸を前記出力軸または前記駆動軸に選択的に結合させることが可能な結合手段と、を備えた動力出力装置であって、
    トルクと回転数との関係で表される動作領域において、前記エンジンの動作点を決定する際に用いるエンジン動作線として、第1の動作線、及び、前記第1の動作線よりも所定の回転数範囲においてトルクが高い第2の動作線のうち、何れか一方を選択する動作線選択手段と、
    前記動作領域を前記第1及び第2の動作線によって分割して得られる、前記第1の動作線に主として隣接する第1の領域と、前記第1及び第2の動作線に挟まれた第2の領域と、前記第2の動作線に主として隣接する第3の領域のうち、前記駆動軸の動作点の存在する領域が前記第1の領域である場合には、前記動作線選択手段によって、前記エンジン動作線として前記第1の動作線を選択させ、前記駆動軸の動作点の存在する領域が前記第3の領域である場合には、前記動作線選択手段によって、前記エンジン動作線として前記第2の動作線を選択させる制御手段と、
    をさらに備える動力出力装置。
  2. 請求項1に記載の動力出力装置において、
    前記動力調整装置は、前記出力軸に結合された第1のロータと、前記駆動軸に結合された第2のロータとを有する対ロータ電動機を備えることを特徴とする動力出力装置。
  3. 請求項1に記載の動力出力装置において、
    前記動力調整装置は、
    ロータ軸を有する発電機と、
    3つの回転軸を有し、各回転軸が前記出力軸、駆動軸、及びロータ軸にそれぞれ結合されたプラネタリギヤと、
    を備えることを特徴とする動力出力装置。
  4. 出力軸を有するエンジンと、動力を出力するための駆動軸と、前記出力軸及び駆動軸に結合され電力のやりとりによって前記エンジンから出力された動力を増減して前記駆動軸に伝達可能な動力調整装置と、回転軸を有する電動機と、該電動機の回転軸を前記出力軸または前記駆動軸に選択的に結合させることが可能な結合手段と、を備えた動力出力装置の制御方法であって、
    (a)トルクと回転数との関係で表される動作領域において、前記エンジンの動作点を決定する際に用いるエンジン動作線として、第1の動作線、及び、前記第1の動作線よりも所定の回転数範囲においてトルクが高い第2の動作線を用意する工程と、
    (b)前記動作領域を前記第1及び第2の動作線によって分割して得られる、前記第1の動作線に主として隣接する第1の領域と、前記第1及び第2の動作線に挟まれた第2の領域と、前記第2の動作線に主として隣接する第3の領域のうち、前記駆動軸の動作点の存在する領域が前記第1の領域である場合には、前記エンジン動作線として前記第1の動作線を選択し、前記駆動軸の動作点の存在する領域が前記第3の領域である場合には、前記エンジン動作線として前記第2の動作線を選択する工程と、
    を備える動力出力装置の制御方法。
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