JP3651460B2 - Dc−dc変換器 - Google Patents

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Description

【発明の属する技術分野】
この発明は、DC−DC変換器に関し、特に電源投入時の特性を容易に変更することができるDC−DC変換器に関するものである。
【0001】
【従来の技術】
出願人は特許第3063961号において、電源投入時の突入電流を制御できるDC−DC変換器の発明を提案した。
【0002】
【特許文献1】
特許第3063961号
【0003】
図4は特許文献1に記載されている先願発明(以下単に先願発明という)のDC−DC変換器の構成図であり、いわゆるプッシュプル形式になっている。スイッチング素子Q1,Q2は周期的にオンオフされ、そのためトランス6の1次側巻き線N11およびN12にはパルス状の電流が流れる。この電流によりトランス6の2次側巻き線N21,N22に電力が誘起される。この電力はダイオードD1,D2およびコンデンサCで整流、平滑される。スイッチング素子Q1,Q2は制御回路5によってそのオンオフが制御される。
【0004】
このようなDC−DC変換器は、電源を投入したときにコンデンサCが急激に充電されるので、大きな突入電流が流れて他の機器に悪影響を及ぼす。そのため、徐々に出力電圧を増加させる、いわゆるソフトスタートの機能が必要になる。制御回路5によってこのソフトスタートの機能を持たせている。
【0005】
CNTは4ビットのカウンタであり、クロック信号CLKが入力される。比較器CMP1はカウンタCNTのカウント値が0になるとフリップフロップFF1をセットする。そのため、スイッチング素子Q1はオンになる。同様に、比較器CMP2はカウンタCNTのカウント値が8になるとフリップフロップFF2をセットし、そのため、スイッチング素子Q2はオンになる。
【0006】
比較器CMP3にはドライブパターン設定値0〜7が入力される。比較器CMP3はこのドライブパターン設定値とカウンタCNTのカウント値の下位3ビットを比較し、一致するとフリップフロップFF1およびFF2をクリアする。そのため、スイッチング素子Q1,Q2はオフになる。
【0007】
電源投入時に、比較器CMP3にはドライブパターン設定値として0〜7の値がこの順番に設定される。カウンタCNTのカウント値が0になるとスイッチング素子Q1がオンになり、下位3ビットがドライブパターン設定値になるとオフになる。次に、カウント値が8になるとスイッチング素子Q2がオンになり、下位3ビットがドライブパターン設定値になるとオフになる。
【0008】
カウンタCNTがオーバーフローする毎にドライブパターン設定値を増加させていくと、スイッチング素子Q1,Q2がオンする時間のデューティ比が徐々に増加し、コンデンサCの両端電圧も徐々に大きくなる。
【0009】
図5は電源を投入したときの、出力電圧の変化を表したものである。ドライブパターン設定値を0から7まで順番に増加させていくと、電圧は階段状に増加する。そのため、大きな突入電流が流れることはなくなる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようなDC−DC変換器の突入電流制御回路には次のような課題があった。
【0011】
カウンタCNTのカウント値とドライブパターン設定値を比較してスイッチング素子Q1,Q2のオン時間を制御する構成であるために、図5に示すように電圧変化が階段状になってしまうという課題があった。カウンタCNTのビット数を増加させて、クロックCLKの周波数を上げるとステップ幅を小さくすることができるが、構成が複雑になり、かつEMI対策が難しくなる。
【0012】
また、電源投入時の電圧変化のパターン(突入特性)を変えるためにはハードウエアの変更が必要になるので、簡単に変えることができないという課題があった。さらに、カウンタや比較器などの部品が必要になるために、コストアップになってしまうという課題もあった。
【0013】
従って本発明が解決しようとする課題は、構成が簡単で任意の突入特性が得られ、かつ簡単に特性を変えることができるDC−DC変換器を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
電源投入時に、出力電圧が徐々に増加するようにインダクタンスに流す電流を制御するスイッチング素子のオンオフを操作して、電源投入時の突入電流を制御するようにしたDC−DC変換器において、
前記スイッチング素子を内蔵したDC−DC電源部と、マイクロコンピュータを内蔵し、前記スイッチング素子を制御するパルス信号を出力する制御装置部とを有し、
前記マイクロコンピュータはファームウェアにより前記パルス信号を生成し、このファームウェアにより、電源が投入されたときに前記DC−DC電源部の出力電圧が徐々に増加するように、前記パルス信号のデューティ比または周波数を制御するようにしたものである。電源投入時の特性を容易に変更できる。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記DC−DC変換器は入力電圧を昇圧して出力する昇圧型のDC−DC変換器であることを特徴としたものである。よく用いられるDC−DC変換器に用いて好適である。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の発明において、制御装置部2は電源が投入されたときに一定期間リセット信号を出力し、このリセット信号が出力されている間、パルス信号をスイッチング素子13に出力しないようにしたものである。電源投入直後にスイッチング素子13がオフであることを保証できる。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、制御装置部2は論理積回路22を有し、この論理積回路によって前記リセット信号と前記パルス信号の論理積を演算してスイッチング素子13に出力するようにしたものである。電源投入直後にスイッチング素子13がオフであることを保証できる。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の発明において、前記マイクロコンピュータのファームウエアは、電源が投入されたときに前記DC−DC変換器の出力電圧が非直線的に増加するように、前記パルス信号のデューティ比または周波数を制御するようにしたものである。突入電流の特性に合わせた特性を実現できる。
【0019】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記マイクロコンピュータのファームウエアは、電源が投入されたときに所定期間は前記DC−DC変換器の出力電圧を緩やかに増加させ、所定期間後は急峻に増加させるようにしたものである。突入電流が大きいときに用いて好適である。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の発明において、複数のDC−DC電源部1を有し、単一の制御装置部2から前記パルス信号を複数のDC−DC電源部1に出力するようにしたものである。構成が簡単になる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、図に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1は本発明に係るDC−DC変換器の一実施例を示す。図1において、1はDC−DC電源部であり、インダクタ11,ダイオード12,FET13およびコンデンサ14で構成されている。
【0022】
インダクタ11の一端とダイオード12のアノード、およびFET13のドレインは共通接続されている。インダクタ11の他端は電源4に接続され、ダイオード12のカソードは負荷3に接続される。コンデンサ14の一端はダイオード12のカソードに接続される。コンデンサ14、負荷、電源の他端およびFET13のソースは共通電位点に接続される。この構成は昇圧型のDC−DC変換器の構成である。
【0023】
2は制御装置部であり、制御装置21およびAND回路22で構成されている。制御装置21はFET13を制御するパルス信号およびリセット信号をAND回路22に出力する。このAND回路22の出力はFET13のゲートに入力される。
【0024】
リセット信号が出力されている(低レベルになる)とAND回路22の出力は低レベルになり、FET13はオフ状態を維持する。リセット信号が解除されるとパルス信号がFET13のゲートに印可され、FET13はこのパルス信号によってオンオフ動作を行う。
【0025】
FET13がオンになるとエネルギーがインダクタンス11に蓄えられ、オフになると蓄えられたエネルギーはダイオード12を介して負荷3に供給される。FET13を所定の周期でオンオフすることにより、負荷3に印可する電圧を変えることができる。
【0026】
制御装置21はマイクロコンピュータを内蔵し、このマイクロコンピュータはファームウエアで動作する。ファームウエアは予めROMなどの不揮発性メモリに記憶されており、電源投入直後に実行されるプログラムである。このファームウエアによってパルス信号が生成される。ファームウエアを書き換えることによって任意の周波数およびデューティ比のパルスを生成することができる。
【0027】
制御装置21は電源が投入されてから一定期間低レベルのリセット信号を出力する。このリセット信号とFET13をオンオフするパルス信号はAND回路22で論理積が取られる。従って、リセット信号が出力されている間はAND回路22の出力は低レベルになり、FET13はオフになる。すなわち、電源投入から所定の期間はFET13がオフであることが保証される。
【0028】
図2に電源が投入されてから出力電圧が安定するまでの、出力電圧の値の推移の一例を示す。横軸は時間、縦軸は出力電圧であり、時刻0で電源が投入される。電源投入から時刻t1まではリセット信号が出力されているので、出力電圧は低い値を保持する。
【0029】
時刻t1から出力電圧は上昇を始め、時刻t2で一定値になる。ファームウエアによって、この間はパルス信号のデューティ比あるいは周波数を少しずつ大きくしていく。
【0030】
図4の従来例ではカウンタCNTのビット数によってステップ幅が制限されるので、出力電圧は階段状に変化した。しかし、本実施例ではファームウエアによってパルス信号を生成しておりそのデューティ比は細かく制御できるので、出力電圧を滑らかに変化させることができる。また、ファームウエアを変更するだけで、出力電圧が到達点に至る時刻t2を任意に変えることができる。
【0031】
ファームウエアによってパルス信号を生成しているので、デューティ比あるいは周波数を非直線的に変化させることによって、出力電圧を非直線的に推移させることが簡単にできる。図3にこのような例を示す。なお、図2と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0032】
図3の直線aは図2と同じく時刻t1とt2との間で出力電圧が直線的に変化するようにパルス信号を生成した例である。同bは時刻t1近辺での出力電圧の変化が少なくなるようにパルス信号の生成を制御した例であり、起動時の突入電流が大きい場合に使用する。
【0033】
同cは時刻t1近辺での出力電圧の変化を大きくし、その後緩やかに到達点に至るようにした例である。突入電流が比較的小さく、かつ出力電圧を早く立ち上げなければならない場合に好適である。この他、ファームウエアを変えるだけで、任意のパターンを生成することができる。また、出力電圧が上昇を始める時刻t1、あるいは出力電圧が変化する時間tstart(=t2−t1)も、ファームウエアを変えるだけで任意の値にすることができる。
【0034】
なお、DC−DC電源部2が複数ある場合でも、1つの制御装置部1からこれら複数のDC−DC電源部2内のFET23にパルス信号を印加することができる。このようにすると、1つの制御装置部1で複数のDC−DC電源部の突入電流の制御ができるので、構成を簡単にすることができる。
【0035】
また、図1の実施例では入力と出力が絶縁されていないDC−DC変換器について説明したが、図4のように入力と出力が絶縁されたDC−DC変換器、あるいはプッシュプル方式のDC−DC変換器にも応用することができる。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば、次の効果が期待できる。
請求項1記載の発明によれば、電源投入時に、出力電圧が徐々に増加するようにインダクタンスに流す電流を制御するスイッチング素子のオンオフを操作して、電源投入時の突入電流を制御するようにしたDC−DC変換器において、
前記スイッチング素子を内蔵したDC−DC電源部と、マイクロコンピュータを内蔵し、前記スイッチング素子を制御するパルス信号を出力する制御装置部とを有し、
前記マイクロコンピュータはファームウェアにより前記パルス信号を生成し、このファームウェアにより、電源が投入されたときに前記DC−DC電源部の出力電圧が徐々に増加するように、前記パルス信号のデューティ比または周波数を制御するようにした。
【0037】
マイクロコンピュータによって電源投入時の突入電流の制御特性を得るようにしたので、任意の制御特性を作ることができるという効果がある。また、出力電圧のステップ幅を細かくすることができるので、滑らかな特性が得られるという効果もある。さらに、マイクロコンピュータのファームウエアを変更するだけで制御特性を変えることができ、かつファームウエアでパルス信号を作成しているので、ハードウエアの構成が簡単になるという効果もある。
【0038】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明において、前記DC−DC変換器は入力電圧を昇圧して出力する昇圧型のDC−DC変換器であることを特徴とした。よく用いられるDC−DC変換器に用いることにより、より大きな効果が得られる。
【0039】
請求項3記載の発明によれば、請求項1または請求項2記載の発明において、制御装置部は電源が投入されたときに一定期間リセット信号を出力し、このリセット信号が出力されている間、パルス信号をスイッチング素子に出力しないようにした。電源投入時にスイッチング素子がオンになると過大電流が流れる危険性があるが、オフであることを保証できるので、信頼性を高くすることができるという効果がある。
【0040】
請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の発明において、制御装置部は論理積回路を有し、この論理積回路によって前記リセット信号と前記パルス信号の論理積を演算してスイッチング素子に出力するようにした。電源投入時にスイッチング素子がオフであることを保証でき、かつ構成が簡単なるという効果がある。
【0041】
請求項5記載の発明によれば、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の発明において、前記マイクロコンピュータのファームウエアは、電源が投入されたときに前記DC−DC変換器の出力電圧が非直線的に増加するように、前記パルス信号のデューティ比または周波数を制御するようにした。突入電流の特性に合わせた特性を実現できるという効果がある。
【0042】
請求項6記載の発明によれば、請求項5記載の発明において、前記マイクロコンピュータのファームウエアは、電源が投入されたときに最初は前記DC−DC変換器の出力電圧を緩やかに増加させ、その後比較的急峻に増加させるようにした。突入電流が大きいときに、ソフトスタートの時間を短縮することができるという効果がある。
【0043】
請求項7記載の発明によれば、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の発明において、複数のDC−DC電源部を有し、単一の制御部から前記パルス信号を複数のDC−DC電源部に出力するようにした。1つの制御装置部で複数のDC−DC電源部を制御できるので、構成が簡単になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す構成図である。
【図2】出力電圧の変化を示す特性図である。
【図3】出力電圧の変化を示す特性図である。
【図4】従来のDC−DC変換器の構成図である。
【図5】従来のDC−DC変換器の出力電圧の特性図である。
【符号の説明】
1 DC−DC電源部
11 インダクタ
12 ダイオード
13 FET
14 コンデンサ
2 制御装置部
21 制御装置
22 AND回路
3 負荷

Claims (7)

  1. 電源投入時に、出力電圧が徐々に増加するようにインダクタンスに流す電流を制御するスイッチング素子のオンオフを操作して、電源投入時の突入電流を制御するようにしたDC−DC変換器において、
    前記スイッチング素子を内蔵したDC−DC電源部と、マイクロコンピュータを内蔵し、前記スイッチング素子を制御するパルス信号を出力する制御装置部とを有し、
    前記マイクロコンピュータはファームウェアにより前記パルス信号を生成し、このファームウェアにより、電源が投入されたときに前記DC−DC電源部の出力電圧が徐々に増加するように、前記パルス信号のデューティ比または周波数を制御するようにしたことを特徴とするDC−DC変換器。
  2. 前記DC−DC変換器は入力電圧を昇圧して出力する昇圧型のDC−DC変換器であることを特徴とする請求項1記載のDC−DC変換器。
  3. 前記制御装置部は電源が投入されたときに一定期間リセット信号を出力し、このリセット信号が出力されている間、前記パルス信号を前記スイッチング素子に出力しないようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のDC−DC変換器。
  4. 前記制御装置部は論理積回路を有し、この論理積回路によって前記リセット信号と前記パルス信号の論理積を演算して前記スイッチング素子に出力するようにしたことを特徴とする請求項3記載のDC−DC変換器。
  5. 前記マイクロコンピュータのファームウエアは、電源が投入されたときに前記DC−DC変換器の出力電圧が非直線的に増加するように、前記パルス信号のデューティ比または周波数を制御するようにしたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のDC−DC変換器。
  6. 前記マイクロコンピュータのファームウエアは、電源が投入されたときに所定期間は前記DC−DC変換器の出力電圧を緩やかに増加させ、所定期間後は急峻に増加させるようにしたことを特徴とする請求項5記載のDC−DC変換器。
  7. 複数の前記DC−DC電源部を有し、単一の前記制御装置部から前記パルス信号を前記複数のDC−DC電源部に出力するようにしたことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のDC−DC変換器。
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