JP3651422B2 - 積層構造体、発光素子、ランプ、及び光源 - Google Patents

積層構造体、発光素子、ランプ、及び光源 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、含硼素III−V族化合物半導体からなるバリア層を具備する量子井戸構造の活性層を備えた積層構造体を構成するための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、量子井戸(Quantum Well:QW)構造とは、障壁層である薄膜のバリア(barrier)層と、井戸(well)層とを交互に周期的に積層させた超格子構造体である(応用物理学会編著、「半導体レーザの基礎」(昭和62年5月20日、(株)オーム社発行第1版第1刷)、140〜146頁参照)。バリア層は、井戸層にキャリア(担体)を局在化させるための障壁層であり、井戸層を構成する半導体材料よりも禁止帯幅を大とする半導体から構成するのが常である(上記の「半導体レーザの基礎」、140頁参照)。井戸層を唯一とする量子井戸構造は単一量子井戸構造(Single QW:SQW)と称され、また、複数の井戸層を備えた周期的積層構造は、多重量子井戸構造(Multi QW:MQW)と呼称されている(上記の「半導体レーザの基礎」、171頁参照)。従来では、バリア層の障壁作用により、井戸層に局在化させた電子を利用して、高速な動作が可能な量子井戸構造型電界効果型トランジスタを構成する技術が開示されている(米国特許4,163,237号公報参照)。
【0003】
青色帯或いは緑色帯の発光ダイオード(LED)またはレーザダイオード(LD)等の短波長発光素子にあっても、発光をもたらす活性層(発光層)を量子井戸構造から構成する技術が知れている(「III族窒化物半導体」(1999年12月8日、(株)培風館発行初版、247〜252頁参照)。従来において、井戸(well)層とバリア(barrier)層とからなる単一または多重量子井戸構造は、窒化ガリウム・インジウム(GaXIn1-XN:0≦X≦1)を井戸層として構成するのが一般的である(米国特許6,153,894号公報参照)。また、バリア層は、窒化アルミニウム・ガリウム(AlXGa1ーXN:0≦X≦1)から構成されているのがもっぱらである(上記の米国特許6,153,894号参照)。
【0004】
単一量子井戸構造或いは多重量子井戸構造の発光層は、従来では、p形またはn形の窒化ガリウム(GaN)等のIII族窒化物半導体からなる障壁(クラッド)層上に設けられている。最近では、リン化硼素系半導体からなる障壁層上に発光層を設けてなる、珪素単結晶(Si:シリコン)を基板とする発光ダイオード(LED)が発明されている。
【0005】
従来では、窒化ガリウム・インジウム(GaXIn1-XN:0≦X≦1)(特公昭55−3834号公報参照)や含硼素III−V族化合物半導体の多元混晶から構成した発光層を利用した発光素子が開示されている(特開平10−247745号公報参照)。例えば、Ga0.25Al0.30.50.50.55元(5元素)混晶とリン化硼素(BP)との超格子構造から発光層が構成されている(上記の特開平10−247745号公報参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来例の如く、発光層を含硼素III−V族化合物半導体の多元混晶を含む超格子構造層から構成するに際しては、超格子構造の各構成層の接合界面で組成を急峻に変化させるために特別な形成装置が必要とされる難点がある(特開平2−288371号公報参照)。また、構成元素数が少ない程、より簡便に安定した組成の混晶を得るには優位であるので(寺本巖著、「半導体デバイス概論」(1995年3月30日、(株)培風館発行初版、24頁参照)、そもそも、各構成元素間の組成比を一定とする上記の如くの5元混晶を安定に得るには、例えば、構成元素原料の供給量を精密に制御する高度な形成手段を必要とし、煩雑となっている。
【0007】
また、リン化硼素系III−V族化合物半導体からなる障壁層上に窒化ガリウム・インジウム等の単一層からなる発光層を設ける従来の構成では、発光層より出射される発光の半値幅が広いため、より単色性に優れる発光が求められていた。例えば、窒化ガリウム・インジウム(GaXIn1-XN)発光層から出射される中心発光波長を約420ナノメータ(nm)とする青紫光の半値幅は、約380ミリエレクトロンボルト(meV)から約400meVと拡幅しているのが現状である。
【0008】
発光層を唯一、単一層からではなく、量子井戸構造から構成することとすれば、画一的な量子準位の創成に依り、発光の単色化が図れるのは周知である(上記の「半導体レーザの基礎」、164頁参照)。また、発光層を量子井戸構造から構成すると、レーザーダイオード(LD)の発振閾値電圧(所謂、Vth)の低減に貢献するとされる(上記の「半導体レーザの基礎」、173〜178頁参照)。しかしながら、従来において、含硼素III−V族化合物半導体層に簡便に接合させられ、且つ、単色性に優れる発光を出射できる量子井戸構造の発光層の構成については知られていない。
【0009】
本発明は、含硼素III−V族化合物半導体層からなる障壁層上に、量子井戸構造からなる発光層を構成するに際し、単色性に優れる発光をもたらすに好適となる量子井戸構造からなる発光層の構成を提示することを目的としている。また、その量子井戸構造からなる発光層を備えた積層構造体を利用して構成した発光の単色性に優れる発光素子、ランプ(lamp)乃び光源を提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、単結晶の基板上に設けられた非晶質または多結晶の硼素(B)を含むIII−V族化合物半導体(含硼素III−V族化合物半導体)からなる緩衝層と、緩衝層上に設けられた含硼素III−V族化合物半導体からなる障壁層と、障壁層上に設けられたIII−V族化合物半導体からなる活性層とを備えた積層構造体であって、特に、次の(1)乃至(6)項に記載の積層構造体である。
(1)活性層が、含硼素III−V族化合物半導体からなるバリア(barrier)層とIII族窒化物半導体からなる井戸(well)層とから構成される量子井戸構造からなることを特徴とする積層構造体。
(2)バリア層が、障壁層を構成する含硼素III−V族化合物半導体と同一の格子定数の含硼素III−V族化合物半導体からなり、障壁層に接合して設けられていることを特徴とする前記(1)に記載の積層構造体。
(3)井戸層が、障壁層を構成する含硼素III−V族化合物半導体と同一の格子定数のIII族窒化物半導体からなり、障壁層に接合して設けられていることを特徴とする前記(1)に記載の積層構造体。
(4)井戸層とバリア層とが、同一の格子定数を有することを特徴とする前記(1)乃至(3)の何れか1項に記載の積層構造体。
(5)バリア層が、リン化硼素・ガリウム(BXGa1-XP:0≦X≦1)から構成されていることを特徴とする前記(1)乃至(4)の何れか1項に記載の積層構造体。
(6)バリア層が、リン化硼素・インジウム(BXIn1-XP:0≦X≦1)から構成されていることを特徴とする前記(1)乃至(4)の何れか1項に記載の積層構造体。
【0011】
また本発明は、次の(7)乃至(9)に記載の発光素子、ランプ、及び光源を提供する。
(7)前記(1)乃至(6)の何れか1項に記載の積層構造体を用いて構成したことを特徴とする発光素子。
(8)前記(7)に記載の発光素子から構成したことを特徴とするランプ。
(9)前記(8)に記載のランプから構成したことを特徴とする光源。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1に例示するLED用途の積層構造体1Aをもって、本発明の第1の実施形態を説明する。第1の実施形態に係わる積層構造体1Aは、活性層(発光層)104を量子井戸構造としているのが特徴である。
【0013】
積層構造体1Aの基板101には、珪素単結晶(シリコン)、リン化ガリウム(GaP)または砒化ガリウム(GaAs)或いはリン化硼素(BP)(▲1▼J.Electrochem.Soc.,120(1973)、p.p.802〜806.、及び▲2▼米国特許5,042,043号公報参照)等のIII−V族化合物半導体単結晶を利用できる。基板101をなす単結晶表面の面方位は、{100}、{110}、或いは{111}等から選択できる。導電性の結晶材料を基板とすれば、基板101裏面に正負、何れかの極性のオーミック(Ohmic)電極107を敷設でき、簡便に発光素子を構成するに寄与できる。特に、抵抗率を10ミリオーム(mΩ)以下、より望ましくは1mΩ以下とする低い比抵抗(抵抗率)の導電性単結晶基板は、順方向電圧(所謂、Vf)の低いLEDをもたらすに貢献する。また、放熱性に優れるため安定した発振をもたらすLDを構成するに有効となる。
【0014】
単結晶基板101上には、連続性の有る障壁層103の形成を促進するために緩衝層102を設ける。緩衝層102を、障壁層103をなす含硼素III−V族化合物半導体を構成する元素(構成元素)を含む含硼素III−V族化合物半導体から構成すると、その構成元素の「成長核」としての作用により、連続性のある障壁層103の形成を促進できる。含硼素III−V族化合物半導体からなる緩衝層102は例えば、一般式BαAlβGaγIn1- α - β - γ1- δAsδ(0<α≦1、0≦β<1、0≦γ<1、0<α+β+γ≦1、0≦δ<1)で表記されるリン化硼素系半導体から好適に構成できる。また、例えば、一般式BαAlβGaγIn1- α - β - γ1- δδ(0<α≦1、0≦β<1、0≦γ<1、0<α+β+γ≦1、0<δ<1)で表記される窒素(N)を含むリン化硼素系半導体から構成できる。好ましくは、構成元素数が少なく、簡便に構成できる2元結晶或いは3元混晶から構成する。例えば、単量体リン化硼素(BP)、リン化アルミニウム・硼素混晶(BαAlβP:0<α≦1、α+β=1)、リン化硼素・ガリウム混晶(BαGaδP:0<α≦1、α+δ=1)、或いはリン化硼素・インジウム混晶(BαIn1- αP:0<α≦1)などから構成する。
【0015】
障壁層103と基板101の単結晶材料とが格子不整合の関係にある場合、緩衝層102を非晶質または多結晶の含硼素III−V族化合物半導体層から構成するのが好適となる。非晶質または多結晶の緩衝層102は、基板101と積層構造体1Aの構成層との格子不整合性を緩和して、ミスフィット転位等の結晶欠陥密度の小さい積層構造体1Aの構成層をもたらす作用を発揮する。例えば、緩衝層102を多結晶のリン化硼素(BP)から構成する例が挙げられる(米国特許6,069,021号参照)。緩衝層102を構成するに適する非晶質または多結晶の例えば、BαAlβGaγIn1- α - β - γ1- δAsδ層(0<α≦1、0≦β<1、0≦γ<1、0<α+β+γ≦1、0≦δ<1)は例えば、MOCVD法(Inst.Phys.Conf.Ser.,No.129(IOP Publishing Ltd.,1993)、157〜162頁参照)により成膜温度を、比較的低温の250℃〜750℃とすれば形成できる(米国特許6,194,744号参照)。約500℃以下の低温では、非晶質を主体とする含硼素III−V族化合物半導体層が得られ易い。大凡、500℃〜750℃のより高温領域では多結晶を主体とする含硼素III−V族化合物半導体層が得られる。as−grown状態で非晶質の緩衝層102は、より高温の750℃〜約1200℃の温度環境に曝されると多結晶層に変換されるのが通常である。緩衝層102が非晶質層か多結晶層であるかは、例えば、一般的なX線回折法、電子線回折法に依る回折像の解析から知ることができる。緩衝層102を構成する非晶質層または多結晶層の層厚は約1nm以上で100nm以下、好ましくは2nm以上で50nm以下とするのが望ましい。
【0016】
また、緩衝層102を、基板101を構成する単結晶材料に格子整合する材料から構成すると、単結晶基板101と積層構造体1Aの構成層、例えば障壁層103との格子不整合性が緩和され、格子のミスフィット(misfit)に起因する結晶欠陥の少ない良質の障壁層103、しいては発光層104が得られる。例えば、シリコン(格子定数≒5.431Å)に格子整合する半導体材料として、リン化硼素・ガリウム(B0.02Ga0.98P:格子定数≒5.431Å)を例示できる。また、リン化硼素・ガリウム(B0.32Ga0.68P:格子定数≒5.450Å)や砒化硼素・ガリウム(B0.23Ga0.77As:格子定数≒5.450Å)等からはGaP単結晶(格子定数≒5.450Å)基板と格子整合を果たす緩衝層102を構成できる(特開2000−22211号公報参照)。
【0017】
緩衝層102上には、含硼素III−V族化合物半導体からなる障壁層103を設ける。障壁層103は例えば、、一般式BαAlβGaγIn1- α - β - γ1- δAsδ(0<α≦1、0≦β<1、0≦γ<1、0<α+β+γ≦1、0≦δ<1)、或いは一般式BαAlβGaγIn1- α - β - γ1- δδ(0<α≦1、0≦β<1、0≦γ<1、0<α+β+γ≦1、0<δ<1)で表記される含硼素III−V族化合物半導体から構成できる。発光層104の下地層(被堆積層)となる障壁層103を、例えば、緩衝層102との接合界面で緩衝層102に格子整合し、且つ、発光層104側の表面で発光層104に格子整合する含硼素III−V族化合物半導体層から構成すると、ミスフィット(misfit)転位、積層欠陥等の結晶欠陥密度の低い良質の発光層104をもたらすに貢献できる。緩衝層102及び発光層104の双方の層に格子整合する障壁層103は、例えば、第III族若しくは第V族の構成元素の組成に勾配を付した含硼素III−V族化合物半導体層から構成できる(特開2000−22211号公報参照)。構成元素の組成勾配は、層厚の増加方向に一律に、または段階的に、或いは非直線的に増減させる何れの様式でも付すことができる。例えば、シリコン基板101に格子整合するリン化硼素・ガリウム混晶(B0.02Ga0.98P)からなる緩衝層102上に形成する障壁層103は、緩衝層102との接合面から窒化ガリウム・インジウム(Ga0.90In0.10N:格子定数≒4.557Å)からなる井戸層104aとの接合面に向けて、硼素組成比(=X)を0.02からを0.98に直線的に増加させたリン化硼素・ガリウム組成勾配層(BαGaδP:α=0.02→0.98、対応してδ=0.98→0.02)から構成できる。
【0018】
含硼素III−V族化合物半導体からなる障壁層103は、特に室温での禁止帯幅(band gap)を3.0±0.2eVとするリン化硼素(BP)を母体材料として構成されたリン化硼素(BP)系半導体層から好適に構成できる。例えば、室温での禁止帯幅を3.0eVとする単量体のリン化硼素(boron monophosphide)とリン化ガリウム(GaP:室温禁止帯幅≒2.3eV)との混晶である、室温での禁止帯幅を約2.7eVとする窒化リン化ガリウム混晶(B0.50Ga0.50P)から好適に障壁層103を構成することができる。室温で高い禁止帯幅を有するリン化硼素系半導体からなる障壁層は、特に、成長速度と原料の供給比率の双方を規定された範囲内に設定することにより形成できる。障壁層の成長速度は、好ましくは、毎分2nm以上で30nm以下とする。また、成長速度と併せて、V族元素とIII族元素の原料の供給比率(所謂、V/III比)を好ましくは15以上で60以下の範囲にすると形成できる。リン化硼素系半導体の禁止帯幅は、例えば屈折率(=n)と消衰係数(=k)から求められる複素誘電率の虚数部(ε2=2・n・k)の光エネルギー依存性から求められる。
【0019】
発光層104は、単一或いは多重量子井戸構造から構成する。量子井戸構造を構成する井戸層104aは、例えば、近紫外光や青色帯または緑色帯の短波長可視光を放射できる窒化ガリウム・インジウム(GaXIn1-XN:0≦X≦1)や窒化リン化ガリウム(GaN1-XX:0≦X≦1)等の窒素含有III−V族化合物半導体(III族窒化物半導体)層から構成する。GaN1-XX(0≦X≦1)からは、リン(P)組成比(=1−X)に依存する禁止帯幅の非直線的な変化に依り(Appl.Phys.Lett.,60(20)(1992)、2540〜2542頁参照)、近紫外帯から赤色帯の発光をもたらす井戸層104aを構成できる。
【0020】
量子井戸構造をなすバリア層104bは、本発明では、含硼素III−V族化合物半導体から構成する。例えば、リン化硼素・インジウム(BXIn1-XP:0≦X≦1)等の含硼素III−V族化合物半導体層は、井戸層104aを構成するGaXIn1-XN(0≦X≦1)またはGaN1-XX(0≦X≦1)等と略同温で形成できる。このため、井戸層104aへ与える熱的損傷を低減でき、井戸層104aの結晶性の熱的劣化を防止できる。即ち、良質の活性層を井戸層として含む量子井戸構造を構成できる利点がある。
【0021】
バリア層104bは、井戸層104aをなす半導体材料よりも禁止帯幅を大とする含硼素III−V族化合物半導体材料から構成する。望ましくは、井戸層104aよりも約0.1エレクトロンボルト(eV)以上、更に望ましくは0.2eV以上高い禁止帯幅を保有する含硼素III−V族化合物半導体から構成する。例えば、室温での禁止帯幅を約2.8eVとする立方晶の窒化ガリウム・インジウム混晶(Ga0.60In0.40N)からなる井戸層104aに対し、バリア層104bを室温での禁止帯幅を3.0eVとする単量体のリン化硼素(BP)から構成する。井戸層104aとの禁止帯幅の差異をより大とする含硼素III−V族化合物半導体からバリア層104bを構成すれば、井戸層104aにより効果的にキャリアを閉じ込められる。また、井戸層104a内に形成される量子準位をより高くすることができ、従って、発光波長をより短波長とするに貢献できる。
【0022】
本発明の量子井戸構造は、井戸層104aとバリア層104bとを直接接合させて構成するのを基本とする。加えて、井戸層104aからバリア層104bへかけての禁止帯幅を緩慢に変化させるためのGRIN−SCH構造のような積層構造から構成することもできる。例えば、井戸層104aとバリア層104bとの間に、井戸層104aとバリア層104b間の中間的な禁止帯幅の含硼素III−V族化合物半導体層を配置した構造より構成できる。この様な中間的な禁止帯幅の含硼素III−V族化合物半導体層は、特に、薄膜の井戸層104aについて、発光の閉じ込めをより充分とするに作用する。
【0023】
量子井戸構造からなる発光層104を障壁層103上に設けるに際し、バリア層104bが、障壁層を構成する含硼素III−V族化合物半導体と同一の格子定数格子を有し、格子整合する障壁層103に接合して設けられる構成すれば、結晶性に優れたバリア層104bを得ることができる。格子不整合性に起因する結晶欠陥密度の小さい結晶性に優れるバリア層104bは、良質の量子井戸構造からなる発光層を構成するに寄与する。障壁層103上に接合させるバリア層104bは、障壁層103以下で井戸層104aを越える禁止帯幅の含硼素III−V族化合物半導体から構成すれば、例えばLEDの順方向電圧を調整する際に好適となるため好ましい。本発明の第2の実施形態の好例として、障壁層103をリン化硼素・ガリウム混晶(B0.90Ga0.10P:禁止帯幅≒2.93eV)から構成し、バリア層104bをリン化ガリウム・インジウム混晶(B0.93In0.07P:禁止帯幅≒2.88eV)から構成する例を挙げられる。
【0024】
また、活性層を構成する井戸層が、障壁層を構成する含硼素III−V族化合物半導体と同一の格子定数のIII族窒化物半導体からなり、井戸層104aを、格子整合する障壁層103に接合して設ける構成とすると、結晶性に優れた井戸層104aを得ることができる。格子不整合性に起因する結晶欠陥密度の小さい結晶性に優れる井戸層104aは、良質の量子井戸構造からなる発光層を構成するに寄与する。本発明の第3の実施形態の好例として、障壁層103をリン化硼素・インジウム混晶(B0.91In0.09P:格子定数≒4.651Å)から構成し、井戸層104aを窒化ガリウム・インジウム混晶(Ga0.70In0.30N:格子定数≒4.651Å)から構成する例を挙げられる。井戸層104aまたはバリア層104bの何れかを障壁層103に接合させる構成において、障壁層103との間に障壁差を緩やかに減する役目を果たす機能層を配置する構成とすると、(日本国特許第2992933号公報参照)、例えば、発光ダイオード(LED)の順方向電圧(所謂、Vf)を低減するに効果がある。また、例えば、レーザーダイオード(LD)にあって、発振閾値電圧(Vth)を低下させるに有効となる。
【0025】
障壁層103に井戸層104aを直接接合させる構成にあって、障壁層103は、井戸層104aを越える禁止帯幅の含硼素III−V族化合物半導体から構成する。また例えば、量子ドット(dot)状の微結晶体からなる従属相と、従属相より禁止帯幅を大とし結晶層を主体的に構成する主体相との多相構造(日本国特許第3090063号公報参照)からなる井戸層104aの場合、障壁層103は主体相よりも禁止帯幅を大とする含硼素III−V族化合物半導体材料から構成するのが望ましい。
【0026】
また、障壁層103を構成する含硼素III−V族化合物半導体層は、緩衝層102の介在により、基板101の表面に略平行に配列した{110}結晶面が積重してなる{110}−結晶層となる。例えば、非晶質のリン化硼素(BP)から構成された緩衝層102上には、{110}−BP結晶層がもたらされる。単量体リン化硼素(BP)は、格子定数を約4.538Åとする閃亜鉛鉱(zinc−blend)型の立方晶結晶である(上記の「半導体デバイス概論」、28頁参照)。従って、立方晶の窒化ガリウム(GaN)の格子定数(≒4.510Å)と略同等の格子定数を有するリン化硼素から障壁層103を構成すると、障壁層103に立方晶を主体としてなる窒化ガリウム層を形成できる。また、リン化硼素の{110}結晶面間の面間隔は約3.209Åであり、六方晶ウルツ鉱(Wurtzite)結晶型の窒化ガリウムのa軸格子定数である3.180Åと略一致する。このため、リン化硼素からなる障壁層103上には、結晶性に優れる六方晶の窒化ガリウム(GaN)を形成することができる。立方晶と六方晶何れのかの結晶層が優勢に形成されるかは、GaNの形成温度に依存する。750℃を越え約1000℃以下の温度では、立方晶の窒化ガリウム層が形成され易い。より高温では、六方晶を主体としてなるGaN層が優勢的に形成される。例えば、GaNからなる井戸層104aをBP障壁層103に直接、接合させて設ける積層構成とすれば、立方晶と六方晶の何れの結晶形の井戸層104aをもたらすこともできる。
【0027】
量子井戸構造を、同一の格子定数を有する、即ち、格子整合の関係にあるIII族窒化物半導体からなる井戸層104a及び含硼素III−V族化合物半導体からなるバリア層104bから構成すると、殊更、結晶欠陥の少ない良質の量子井戸構造を得ることができる。本発明の第4の実施形態の一例として、井戸層104aを立方晶の窒化リン化ガリウム混晶(GaN0.970.03:格子定数≒4.538Å)から構成し、バリア層104bをリン化硼素(BP:格子定数≒4.538Å)から構成する例を挙げられる。第4の実施形態は、格子定数が一致さえすれば良く、立方晶閃亜鉛鉱型或いは六方晶ウルツ鉱(Wurtzite)型の何れの結晶形のIII−V族化合物半導体からも実現できる。例えば、井戸層104aを六方晶結晶層から構成し、バリア層104bを立方晶結晶層から構成できる。井戸層104a及びバリア層104bの双方を立方晶閃亜鉛鉱型の結晶層から構成すると、従来の六方晶ウルツ鉱型結晶層の接合構造とは異なり、ピエゾ(piezo)電界(上記の「III族窒化物半導体」)、289〜290頁参照)に因るバンドの曲折が抑制される。
【0028】
発光層104を、多重量子井戸構造から構成すれば、単一量子井戸構造より光の閉じ込めに効果的となる(上記の「半導体レーザの基礎」、143頁)。一井戸層104aと一バリア層104bとからなる積層単位を複数の単位で周期的に積層させれば、多重量子井戸構造を構成できる。積層周期数は3以上とするのが望ましく、更には、5以上で10以下とするのが最適である。井戸層104aの層厚は、概して数nm〜数十nmの範囲で大凡、約30nm以下とするのが適する。また、バリア層104bはトンネル(tunnnel)効果により、キャリアを透過させるに充分な大凡、50nm以下の層厚とする。井戸層104aをより薄層とする程、より高い量子準位が形成される。形成される量子準位は、クローニッヒ・ペニー(Kronig・Penny)模型を基に井戸層104aの層厚を変数として求められる(日本物理学会編著、「半導体超格子の物理と応用」(昭和61年9月30日、(株)培風館発行初版第4刷)、211〜213頁参照)。
【0029】
多重量子井戸構造は、同一の伝導形を有する井戸層104aとバリア層104bとから構成する。例えば、n形の井戸層104aとn形のバリア層104bとを交互に周期的に積層させた構造から構成する。n形バリア層104bを構成するためのn形の含硼素III−V族化合物半導体導電層を得るドーパント(dopant)としては、珪素(Si)、錫(Sn)等の第IV族元素、並びに硫黄(S)やセレン(Se)、テルル(Te)等の第VI族元素を例示できる。p形ドーパントとして、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)やベリリウム(Be)などの第II族元素を例示できる。添加するドーパントの量は、井戸層104a及びバリア層104bの各構成材料の間の混晶化(上記の「半導体超格子の物理と応用」、84頁参照)を招かない程度に抑制するのが望ましい。単一或いは多重量子井戸構造に拘わらず、井戸層104aは不純物を故意に添加していないアンドープ(undope)の高純度層から構成するのを最適とする。
【0030】
多重量子井戸構造にあって、終端をなす層は井戸層104aまたはバリア層104bの何れであっても構わない。発光層104をなす量子井戸構造の表面側の終端をなす井戸層104aまたはバリア104b上に、上部障壁層105を設ければ、ダブルヘテロ(DH)構造型の発光部を構成できる。量子井戸構造の終端をなすのが井戸層104aである場合、それに接合させて設けた上部障壁層105はバリア層104bと同じく、井戸層104aに対する障壁層として作用する。上部障壁層105は、発光層104の下方の基板101との間に配置された障壁層103と同じく含硼素III−V族化合物半導体材料から構成するのが好ましい。上部障壁層105は障壁層103とは伝導形を反対とする導電層から構成する。また、上部障壁層105の伝導形は、発光層104をなす井戸層104aとは同一であっても逆であっても構わない。
【0031】
上部障壁層105を、量子井戸構造の終端をなす井戸層104aまたはバリア層104bと格子整合する半導体材料から構成すれば、例えば、井戸層104aに印加される歪みを減少させることができ、発光層104の良好な晶質を維持するに貢献できる。また、特に、上部障壁層105を、発光層104の形成に要する温度或いはそれ以下の温度で形成できる半導体材料から構成すれば、発光層104が被る熱的損傷を低減でき、発光層104の品質を維持するにより効果を奏する。上記の如く、含硼素III−V族化合物半導体は、井戸層104aをなす例えば、窒化ガリウム・インジウム(GaXIn1-XN)と同等の温度で形成できるため、上部障壁層105を構成するに好適な材料となる。
【0032】
本発明の第5の実施形態では、バリア層104bを特に、リン化硼素・ガリウム(BXGa1-XP:0≦X≦1)から構成する。また、本発明の第6の実施形態では、バリア層104bを、特に、リン化硼素・インジウム(BXIn1-XP:0≦X≦1)から構成する。何れの含硼素III−V族化合物半導体材料も、3元混晶であり簡便に形成できる。3元混晶を形成するための手段には、上記のMOCVD法に加え、例えば、三塩化硼素(BCl3)/三塩化リン(PCl3)/水素(H2)反応系ハライド(halide)気相成長法、ジボラン(B26)/ホスフィン(PH3)/H2反応系ハイドライド(hydride)気相成長法等がある。また、発光層104と略同等の温度で形成できるため、発光層104の高温環境下での熱的劣化を防止できる利点がある。障壁層103及び上部障壁層105も同じくBXGa1-XP(0≦X≦1)またはBXIn1-XP(0≦X≦1)から構成できる。
【0033】
本発明の第7の実施形態では、上記の積層構造体1Aを母体材料として発光素子を構成する。例えば、ダブルヘテロ接合(DH)構造型のLED1Bは、積層構造体1Aをなす発光層104上の上部障壁層105上に表面オーミック電極106を設け、また、基板101の裏面に裏面オーミック電極107を配置して構成する。基板101を導電性の単結晶材料から構成すれば、その裏面にオーミック電極を設けられ、発光素子を製造するための電極形成工程を簡略となすことができる。含硼素III−V族化合物半導体からなる上部障壁層105へのp形オーミック電極は、例えば、金・亜鉛(Au・Zn)合金、金・ベリリウム(Au・Be)合金等から構成できる。また、金・ゲルマニウム(Au・Ge)合金、金・インジウム(Au・In)合金、並びに金・錫(Au・Sn)合金などの金合金等からn形オーミック電極を形成できる。良好なオーミック接触性を発揮する電極を形成するために、表面オーミック電極106を形成する良導性のコンタクト(contact)層を上部障壁層の上に設けることもできる。本発明に係わる高い禁止帯幅の含硼素III−V族化合物半導体層は、発光を取り出し方向に透過する窓層を兼用する表面オーミック電極106用途のコンタクト層を構成するに好適である。
【0034】
本発明に依る発光素子からは高輝度のランプを構成できる。例えば、本発明の第8の実施形態のランプ10は次の如くの工程をもって構成できる。図2に例示する如く、基板11上に本発明に係わる量子井戸構造の発光層12を備えたLEDを、台座15上の銀(Ag)或いはアルミニウム(Al)等の金属を鍍金した碗体16の中央部に導電性の接合材で固定する。これより、基板11の底面に設けた一極性の電極14を台座15に付属する一端子17に電気的に接続させる。また、上部障壁層上に設置した電極13を座15に付属する他の一方の端子18に結線する。一般的な半導体封止用のエポキシ樹脂19で碗体16を囲繞する様に封止すればランプ10を構成できる。また、本発明に依り、特に、{110}結晶面からなる含硼素III−V族化合物半導体層を障壁層103を備えた積層構造体では、{110}結晶方位への劈開を利用して、約200μm〜約300μm角の小型LEDを簡便に形成でき、従って、特に、設置容積を小とする表示器等として好適な小型の発光ダイオードランプ10を構成できる。
【0035】
また、LEDチップ或いは樹脂封止されたダイオードランプ10を集合させれば、光源を構成できる。例えば、複数のランプ10を電気的に並列に接続させて、定電圧駆動型の光源を構成できる。また、電気的に直列にランプ10を接続して定電流駆動型の光源を構成できる。これらのLEDを利用するランプ10からなる光源は、従来の白熱型のランプ光源とは異なり、点灯によりさほど放熱を伴わないため、冷光源として特に有用に利用できる。例えば、冷凍食品の展示用光源として利用できる。また、例えば、屋外表示器、交通信号を提示するための信号器、自動車用途の方向指示器或いは照明機器等に好適に用いられる光源を構成できる。
【0036】
【作用】
本発明に係わる含硼素III−V族化合物半導体からなる障壁層は、量子井戸構造の発光層に対してキャリア及び光の閉じ込め層として作用する。
【0037】
【実施例】
(第1実施例)
リン化硼素(BP)からなるバリア層と窒化ガリウム・インジウム(GaXIn1-XN:0≦X≦1)からなる井戸層とで構成される量子井戸構造の発光層を備えた積層構造体からLEDを構成する場合を例にして本発明を具体的に説明する。
【0038】
本実施例に係わるLED2Bの平面模式図を図3に示す。また、図3に示す破線X−X’に沿ったLED2Bの断面模式図を図4に示す。図3及び図4に示す積層構造体2Aにおいて、図1に例示した積層構造体1Aと同一の構成要素については図1と同一の符号を付してある。
【0039】
LED2B用途の積層構造体2Aは、硼素(B)ドープでp形の(111)面を有するSi単結晶を基板101として構成した。基板101上には、トリエチル硼素((C253B)/ホスフィン(PH3)/水素(H2)系常圧MOCVD法により、350℃で、as−grown状態で非晶質を主体とするリン化硼素からなる緩衝層102を堆積した。緩衝層102の層厚は5nmとした。
【0040】
緩衝層102の表面には、上記のMOCVD気相成長手段を利用して、850℃でマグネシウム(Mg)をドーピングしたp形リン化硼素(BP)層からなる障壁層103を積層した。マグネシウムのドーピング源にはビス−シクロペンタジエニルマグネシウム(bis−(C542Mg)を用いた。障壁層103をなすp形BP層のキャリア濃度は8×1018cm-3とし、また、層厚は700nmとした。障壁層103をなすp形BP層は、緩衝層102を下地層とする積層手段に依って、基板101の表面に略平行に配列した{110}結晶層からなる亀裂の無い連続膜となった。障壁層103の室温での禁止帯幅は、およそ3.0eVとなった。
【0041】
障壁層103の表面には、上記のMOCVD気相成長手段を利用して、850℃において、アンドープでn形の単量体リン化硼素(BP:格子定数≒4.538Å)からなるバリア層104bを積層させた。バリア層104bの層厚は35nmとした。バリア層104bをなすリン化硼素層は、V/III比率(=PH3/(C253B供給比率)を30とし、成長速度を毎分20nmとして形成したため、室温での禁止帯幅は、障壁層103と同じくおよそ3.0eVとなった。バリア層104bの表面には、アンドープでn形の窒化ガリウム・インジウム(Ga0.90In0.10N:格子定数≒4.538Å)からなる井戸層104aを積層した。井戸層104aの層厚は10nmとした。井戸層104aは、トリメチルガリウム((CH33Ga)/トリメチルインジウム((CH33In/アンモニア(NH3)/H2系常圧MOCVD法により、850℃で成長させた。バリア層104bと井戸層104aとからなる積層単位を繰り返し5周期に亘り積層した多重量子井戸構造から発光層104を構成した。
【0042】
発光層104の表面をなすn形井戸層104a上には、珪素(Si)ドープn形リン化硼素(BP;格子定数≒4.538Å)層を上部障壁層105として積層させた。上部障壁層105のキャリア濃度は3×1018cm-3とし、また、層厚は280nmとした。上部障壁層105は、障壁層103及びバリア層104bと同じく、室温禁止帯幅をおよそ3.0eVとする単量体のリン化硼素より構成した。障壁層103と、それに格子整合する井戸層104aとバリア層104bとからなる発光層104と、上部障壁層105とから格子整合系のダブルヘテロ接合(DH)構造型の発光部を構成した。
【0043】
上部障壁層105の表面には円形の表面オーミック電極106を配置した。n形の表面オーミック電極106は金(Au)・ゲルマニウム(Ge)合金の真空蒸着膜から構成した。表面オーミック電極106の直径は120μmとした。また、p形Si基板101の裏面の略全面には、裏面オーミック電極107を配置してLED2Bを構成した。p形の裏面オーミック電極107はアルミニウム(Al)真空蒸着膜から構成した。Si単結晶101を[211]方向に平行及び垂直な方向に裁断して、一辺を約300μmとする正方形のLED2Bとした。
【0044】
表面オーミック電極106と裏面オーミック電極107との間に順方向に20ミリアンペア(mA)の動作電流を通流した際の発光中心波長は407nmとなった。また、発光スペクトルの半値幅(FWHM)は12nmであり、単色性に優れる発光が得られた。一般的な積分球を利用して測定されるチップ(chip)状態での輝度は7ミリカンデラ(mcd)となり、高発光強度のLED2Bが提供された。また、本発明では、緩衝層102を介して積層した連続性に優れる障壁層103を下地層として発光層104を形成したため、発光層104は連続性に優れるものとなり、この連続性を反映して、発光層104の全面から略均等の強度の発光がもたらされた。I−V特性から求めた順方向電圧(所謂、Vf)は3.6V(順方向電流=20mA)となった。また、逆方向電圧は6V(逆方向電流=10μA)であり、高耐圧のLEDが提供された。
【0045】
(第2実施例)
リン化硼素・インジウム(BXIn1-XP:0≦X≦1)バリア層と、窒化リン化ガリウム(GaN1ーXX:0≦X≦1)井戸層とからなる量子井戸構造の発光層を備えた積層構造体から短波長可視LEDを構成する場合を例にして本発明を具体的に説明する。
【0046】
本実施例に係わるLED3Bの断面模式図を図5に示す。図5に示す積層構造体3Aにおいて、図1に例示した積層構造体1Aと同一の構成要素については図1と同一の符号を付してある。LED3B用途の積層構造体3Aは、アンチモン(Sb)ドープでn形の(100)面を有するSi単結晶を基板101として構成した。基板101上には、(C253B/(CH33In/PH3/H2系常圧MOCVD法により、400℃でアンドープ(undope)のn形リン化硼素・インジウム(BXIn1-XP)緩衝層102を堆積した。緩衝層102を構成するBXIn1-XP混晶の硼素組成比(=X)は、Siと同一の格子定数(≒5.431Å)を与える0.33とした。緩衝層102の層厚は12nmとした。
【0047】
緩衝層102の表面には、上記の常圧MOCVD法により850℃で形成した、硼素(B)組成比(=X)に勾配を付した珪素(Si)ドープn形BXIn1-XP組成勾配層からなる障壁層103を積層した。障壁層103は、緩衝層102との接合界面で硼素組成比(=X)を0.33とし、量子井戸構造型の発光層104をなす井戸層104aと接合する表面で0.99としたBXIn1-XP(X=0.33→0.99)組成勾配層から構成した。硼素組成比(=X)は、組成勾配層の層厚が500nmに到達する間に直線的に変化させた。障壁層103をなす組成勾配層の平均的なキャリア濃度は3×1018cm-3とした。また、BXIn1-XP組成勾配層は、成長速度を毎分30nmとし、原料供給比率(V/III比率=PH3/((CH33Ga+(CH33In))を40として形成したため、障壁層103の発光層104側の表層部での室温禁止帯幅は3.0eVとなった。
【0048】
障壁層103上には、珪素(Si)をドーピングしたn形の立方晶を主体とした窒化ガリウム・インジウム(GaXIn1-XN:0≦X≦1)からなる井戸層104aを積層した。井戸層104aは、障壁層103の表面をなすB0.99In0.01P(格子定数≒4.557Å)と同一の格子定数のGa0.90In0.10Nから構成した。井戸層104aの層厚は12nmとした。井戸層104aは、障壁層103より低温の800℃で形成したため、障壁層103の熱的変性を招かずに形成できた。井戸層104aには、井戸層104aと同一の格子定数を有する立方晶を主体とするn形B0.98Ga0.02P(格子定数=4.557Å)からなるバリア層104bを接合させて設けた。バリア層104bの層厚は45nmとした。互いに格子整合する井戸層104aとバリア層104bとを交互に3周期、積層させて量子井戸構造型の発光層104を構成した。
【0049】
発光層104の表面をなすバリア層104bには、上記の常圧MOCVD法により800℃で形成した、マグネシウム(Mg)ドープでp形のリン化硼素・インジウム混晶(B0.99In0.01P)からなる上部障壁層105を積層した。上部障壁層105のキャリア濃度は6×1018cm-3とし、層厚は250nmとした。上部障壁層105を、発光層104を構成する井戸層104a及びバリア層104bと格子整合をなす組成のB0.99In0.01P層から構成したので、発光層104へ印加される機械的、熱的歪みが低減され、発光層104の良好な結晶性を維持できた。
【0050】
上部障壁層105の表面には円形の表面オーミック電極106を配置した。p形の表面オーミック電極106は金(Au)・亜鉛(Zn)合金真空蒸着膜から構成した。表面電極106の直径は120μmとした。また、n形Si基板101の裏面の略全面には、裏面オーミック電極107を配置してLED3Bを構成した。n形裏面電極107はアルミニウム(Al)真空蒸着膜から構成した。Si単結晶101を[110]方向に平行及び垂直な方向に裁断して、一辺を約250μmとする正方形のLED3Bとした。
【0051】
表面オーミック電極106と裏面オーミック電極107との間に順方向に20ミリアンペア(mA)の動作電流を通流した際の発光中心波長は430nmとなった。また、発光スペクトルの半値幅(FWHM)は14nmであり、単色性に優れる発光となった。一般的な積分球を利用して測定されるチップ(chip)状態での輝度は8ミリカンデラ(mcd)となり、高発光強度のLED3Bが提供された。また、LED3Bは、近視野発光パターン像から、高い禁止帯幅を有する上部障壁層105の発光透過層としての作用と相俟って、発光層104の全面から略均等な強度の発光をもたらすことが示された。I−V特性から求めた順方向電圧(所謂、Vf)は3.4V(順方向電流=20mA)となった。また、逆方向電圧は7V(逆方向電流=10μA)であり、高耐圧のLED3Bが提供されることとなった。
【0052】
(第3実施例)
本実施例では、上記の第2実施例に記載のB0.98Ga0.02Pからなるバリア層に替えて、BXIn1-XP(0≦X≦1)をバリア層として構成した発光層を備えた積層構造体を利用して発光素子を構成する場合を例にして本発明を説明する。
【0053】
第2実施例と同様にして作製したn形BXIn1ーXP組成勾配層(X=0.33→0.99)からなる障壁層103の表面に、障壁層103の表面を構成するn形B0.99In0.01Pと同じB0.99In0.01Pからなるアンドープでn形のバリア層104bを接合させた。バリア層104bを構成する室温での禁止帯幅を3.0eVとするB0.99In0.01P層の層厚は50nmとした。バリア層104b上には、バリア層104bを構成するB0.99In0.01P(格子定数≒4.557Å)と格子整合するアンドープでn形のGa0.90In0.10Nからなる井戸層104aを接合させた。井戸層104aには、再びB0.99In0.01Pからなるアンドープでn形のバリア層104bを接合させて単一量子井戸構造の発光層104を構成した。
【0054】
発光層104の表面をなすバリア層104bの表面に、上記の第2実施例に記載の手段に依り、p形B0.99In0.01Pからなる上部障壁層105を積層した後、第2実施例に記載の手段を利用して、LEDを構成した。
【0055】
このLEDについて順方向電流を20mAとした際のLEDの中心発光波長は430nmであった。また、発光スペクトルの半値幅(FWHM)は16nmであった。一般的な積分球を利用して測定されるチップ(chip)状態での輝度は6ミリカンデラ(mcd)となり、高発光強度で且つ単色性のLEDが提供された。また、近視野発光パターン像は、高い禁止帯幅を有する上部障壁層105の発光透過層としての作用と相俟って、発光層104の全面から略均等な強度の発光がもたらされているのが示された。I−V特性から求めた順方向電圧(所謂、Vf)は3.6V(順方向電流=20mA)となった。また、逆方向電圧は7V(逆方向電流=10μA)であり、高耐圧のLEDとなった。
【0056】
【発明の効果】
本発明では、含硼素III−V族化合物半導体からなるバリア(barrier)層とIII族窒化物半導体からなる井戸(well)層とから構成される量子井戸構造の活性層(発光層)を備えた積層構造体を利用して発光素子を構成することとしたので、発光強度が大きく且つ単色性に優れる発光素子を提供できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるLEDの断面構造を例示する模式図である。
【図2】 本発明に係わるランプの断面構造を例示する模式図である。
【図3】第1実施例に記載のLEDの平面模式図である。
【図4】図3に示す破線X−X’に沿ったLEDの断面模式図である。
【図5】第2実施例に記載のLEDの断面模式図である。
【符号の説明】
1A、2A、3A 積層構造体
1B、2B、3B LED
10 ランプ
11 基板
12 量子井戸構造発光層
13 表面電極
14 裏面電極
15 台座
16 碗体
17、18 端子
19 封止樹脂
101 単結晶基板
102 緩衝層
103 障壁層
104 活性層(発光層)
104a 井戸層
104b バリア層
105 上部障壁層
106 表面オーミック電極
107 裏面オーミック電極

Claims (7)

  1. 単結晶の基板上に設けられた非晶質または多結晶の硼素(B)を含むIII−V族化合物半導体(含硼素III−V族化合物半導体)からなる緩衝層と、緩衝層上に設けられた含硼素III−V族化合物半導体からなる障壁層と、障壁層上に設けられたIII−V族化合物半導体からなる活性層とを備えた積層構造体において、該活性層がバリア(barrier)層と井戸(well)層とから構成される量子井戸構造からなり、バリア層をリン化硼素・ガリウム、または、リン化硼素・インジウムから構成し、井戸層を窒化ガリウム・インジウムから構成することを特徴とする積層構造体。
  2. バリア層が、障壁層を構成する含硼素III−V族化合物半導体と同一の格子定数からなり、障壁層に接合して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の積層構造体。
  3. 井戸層が、障壁層を構成する含硼素III−V族化合物半導体と同一の格子定数からなり、障壁層に接合して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の積層構造体。
  4. 井戸層とバリア層とが、同一の格子定数を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の積層構造体。
  5. 請求項1乃至4の何れか1項に記載の積層構造体を用いて構成したことを特徴とする発光素子。
  6. 請求項5に記載の発光素子から構成したことを特徴とするランプ。
  7. 請求項6に記載のランプから構成したことを特徴とする光源。
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