JP3651108B2 - 排気ガス浄化装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は,ディーゼルエンジンから排出される排気ガスに含まれるパティキュレートを捕集し,パティキュレートを加熱焼却して処理する排気ガス浄化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来,排気ガス浄化装置として,フィルタをセラミックス繊維から成る不織布を円筒状又はプリーツ状に形成したフィルタ筒体と,フィルタ筒体の両面に重ね合わせた金網とで構成し,該フィルタによってディーゼルエンジンの排気系に組み込まれて排気ガス中に含まれるパティキュレートを捕集し,フィルタに捕集された前記パティキュレートを金網に通電することによってパティキュレートを加熱焼却し,フィルタを再生したものが知られている。
【0003】
また,ディーゼルパティキュレートフィルタとして,特開平7−317527号公報に開示されたものがある。該ディーゼルパティキュレートフィルタは,不織布と織布を組み合わせ,排気ガス中に含まれるパティキュレートを三次元的に捕集し,捕集効率を向上するものであり,ディーゼルエンジンの排気系に配置されたフィルタを,炭化ケイ素系繊維から成る不織布,不織布の排気ガス流れの下流側に隣接して配置されたセラミックス長繊維から作製された織布,不織布の排気ガス流れの上流側に隣接して配置された金網ヒータ,並びに不織布,織布及び金網ヒータを互いに保持する係止部材から構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,従来の排気ガス浄化装置では,円筒状又はプリーツ状に形成したフィルタ筒体に接触して配置されている通電金網の抵抗値は軸方向全面にわたって均一に形成されている。このような排気ガス浄化装置では,フィルタ筒体に接触して配置された通電金網の円周方向に通電してフィルタを加熱する場合,フィルタ筒体の端部に設けた封止部品,或いはフィルタ筒体の放熱や熱伝導等の理由によってフィルタ筒体の軸方向両端部が軸方向中央部より温度が低くなり,フィルタを完全に再生させるため,軸方向両端部の低温部をより加熱するだけ,余分な消費電力を必要とする。或いは,従来の排気ガス浄化装置では,フィルタ筒体の軸方向中央部がパティキュレートを加熱焼却する再生開始温度に到達したときに,フィルタに再生補助用の空気又は排気ガスを導入しているが,再生燃焼用空気をフィルタに導入すると,導入した空気又は排気ガスによって,軸方向低温部が更に冷却され,フィルタに捕集されたパティキュレートを加熱焼却できず,フィルタの再生状態が不均一になるという問題がある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明の目的は,上記の課題を解決することであり,フィルタに設けた通電金網を軸方向両端部と軸方向中央部と抵抗値を変更し,通電金網の通電によるフィルタの温度上昇を軸方向全領域にわたって均一温度にすることができ,フィルタの再生のための消費電力を低減することができる排気ガス浄化装置を提供することである。
【0006】
この発明は,ディーゼルエンジンの排気系に組み込まれて排気ガス中に含まれるパティキュレートをフィルタで捕集し,捕集された前記パティキュレートを加熱焼却する排気ガス浄化装置において,
前記フィルタはセラミックス不織布から作製された円筒状又はプリーツ状のフィルタ筒体と前記フィルタ筒体の内外面を接触して挟んだ金網から成り,少なくとも一方の前記金網を周方向に通電可能な通電金網に構成し,前記通電金網の単位面積あたりの抵抗値が軸方向両端部と軸方向中央部とで不均一に設定されており,前記通電金網の軸方向のメッシュ数が前記軸方向両端部で多く,前記軸方向中央部で少なく構成されていることを特徴とする排気ガス浄化装置に関する。
【0007】
また,この排気ガス浄化装置は,前記通電金網の前記軸方向両端部から前記軸方向中央部になるに従って前記メッシュ数が漸次減少しているものである。
【0008
この発明による排気ガス浄化装置は,上記のように,捕集されたパティキュレートを加熱焼却するために使用するヒータとして通電金網を使用し,該通電金網をフィルタ筒体の内外両面に配置し,通電金網への通電を周方向に流し,通電金網の抵抗値を,例えば,通電金網のメッシュ数が軸方向両端部で多く,軸方向中央部でメッシュ数が少なくなるように構成構成し,言い換えれば,通電金網のピッチが軸方向両端部で小さく,軸方向中央部でピッチが大きくなるように構成したので,フィルタ筒体の軸方向両端部と軸方向中央部との温度上昇が均一温度に加熱され,局部加熱や局部冷却が発生せず,パティキュレートの加熱焼却が均一になって再生が均一に達成され,電力消費が無駄になることがない。
【0009
【発明の実施の形態】
以下,図面を参照して,この発明による排気ガス浄化装置の実施例を説明する。図1はこの発明による排気ガス浄化装置の一実施例を示す正面図,図2は図1の線D−Dにおける断面図,図3は図2の符号E部分の一部拡大断面図,図4はこの発明による排気ガス浄化装置に組み込まれるフィルタにおける通電金網の構造を示す説明図,及び図5は図4の通電金網の一実施例を示す平面図である。
【0010
この排気ガス浄化装置は,例えば,ディーゼルエンジンの排気ガスを排気する排気管で構成される排気系の途中に組み込まれたケースにフィルタを配設し,フィルタを通過する排気ガスに含まれるカーボン,煤,HC等のパティキュレートを捕集し,フィルタに捕集されたパティキュレートを加熱焼却してフィルタを再生するものである。フィルタは,セラミックス不織布から作製された円筒状又はプリーツ状のフィルタ筒体1と,フィルタ筒体1の内外面を接触して挟んだ金網2,3から構成されている。フィルタ筒体1の両端には封止部品4が取り付けられている。フィルタ筒体1は,図2に示すように,プリーツ状に成形されて全体として筒状に形成されている。フィルタ筒体1を構成する材料は,上記のように,耐熱性で耐酸化性に富んだSiC,Al2 3 等から成るセラミックス不織布を使用できるが,セラミックス不織布の均等物として,セラミックス繊維,セラミックス織布,セラミックスフェルト等の繊維材料を使用することができる。
【0011
また,金網2,3のうちフィルタ筒体1の排気ガス流れの上流側に位置する金網は,周方向に通電可能な通電金網2に構成されている。更に,通電金網2には,通電のため周方向の両端に電極端子5が設けられている。ここでは,通電金網2は,一方の金網のみであり,金網3はフィルタ筒体1の排気ガス流れの下流側に位置し,金網3は通電しないので軸方向全領域において均一なピッチ即ちメッシュ数に構成したものが使用されている。
【0012
この発明による排気ガス浄化装置において,特に,通電金網2の単位面積あたりの抵抗値は,軸方向両端部16,18で低く且つ軸方向中央部17で高くなるように不均一に設定されていることである。通電金網2の抵抗値の不均一構造は,種々の形態で構成できる。例えば,通電金網2の抵抗値の不均一構造については,通電金網2の軸方向両端部16,18に取り付けられた封止部品4に接触する部分を除く領域において,通電金網2のメッシュ数,通電金網2を構成する素線の線径,或いは通電金網2を作製する素材をコントロールすることによって達成できる。
【0013
まず,通電金網2の抵抗値の不均一構造について,通電金網2は,メッシュ数が軸方向両端部16,18で多く,軸方向中央部17で少なくなるように構成されている。図4及び図5に示す通電金網2は,軸方向両端部16,18の全長Lの1/3の長さの領域でメッシュ数が多くなるように構成され,また,軸方向中央部17の全長Lの1/3の長さの領域でメッシュ数が少なくなるように構成されている。言い換えれば,通電金網2は,軸方向両端部16,18の全長Lの1/3の長さの領域でピッチが小さく即ち密に構成され,また,軸方向中央部17の全長Lの1/3の長さの領域でピッチが大きく即ち粗になるように構成されている。この場合には,通電金網2の軸方向両端部16,18から軸方向中央部17になるに従ってメッシュ数が漸次減少する(即ち,ピッチが密から粗になる)ように構成することもできる。
【0014
又は,通電金網2を不均一な抵抗値の構造に構成するには,通電金網2の別の構造としては,通電金網2の素線の抵抗値が,軸方向両端部16,18で小さく,軸方向中央部17で大きくなるように構成することもできる。この場合には,通電金網2は,軸方向両端部16,18から軸方向中央部17になるに従って素線の抵抗値が増加するように素線の径が異なった構造に構成することができる。或いは,通電金網2は,その両端部16,18から軸方向中央部17になるに従って素線の抵抗値が増加するように素線の体積抵抗率が異なる構造に構成することができる。
【0015
この発明による排気ガス浄化装置について,フィルタの加熱状態を図7に示す試験装置を使用して測定した。排気ガス浄化装置の試験装置は,ディーゼルエンジンから排出される排気ガスの排気ガス通路11に組み込んで使用した。フィルタを排気ガス通路11に組み込んだケース20内に外周側に流入通路14を形成するように配置した。排気ガス通路11において,フィルタを組み込んだ排気ガス処理通路21とフィルタをバイパスするバイパス通路13を設けると共に,フィルタの再生のための空気を供給するため,排気ガスの一部をケース20内に送り込む再生制御用排気ガス通路12を設けた。排気ガス通路11において,排気ガス処理通路21とバイパス通路13との分岐点に切換バルブ8を設置した。また,再生制御用排気ガス通路12には,再生制御用電磁弁9を設置した。フィルタの上流側端面には遮蔽プレート6を取り付け,フィルタの下流側端面には中空通路15を除いて遮蔽プレート7を取り付けた。更に,フィルタの通電金網2に設けた電極端子5をコントローラ10における電源19に接続した。コントローラ10によって,通電金網2への通電制御,及び再生制御用電磁弁9と切換バルブ8との切換制御を行うように構成した。図中,矢印は排気ガスの流れ方向を示している。
【0016
この発明による排気ガス浄化装置におけるフィルタを上記試験装置に設置して,通電金網2によるフィルタの加熱状態を試験した。フィルタの測定位置は,図4に示すように,フィルタの全長をLとすると,軸方向両端部16,18としてフィルタ端面から全長Lの1/6の測定点A,Cで温度測定し,また,軸方向中央部17としてフィルタ端面から全長Lの1/2の中間点の測定点Bで温度測定した。通電金網2への通電方向は周方向に電流を流した。また,燃焼補助用として,パティキュレートの燃焼開始温度の600℃で導入した。この排気ガス浄化装置におけるフィルタ(以下,本発明品という)の試験結果を図6に示す。図6から分かるように,本発明品のフィルタについて,測定点Bで測定温度が600℃の時に,測定点Aでは測定温度が585℃であり,測定点Cでは測定温度が590℃であった。即ち,フィルタの軸方向全領域16,17,18にわたって,加熱温度がほぼ均一温度に上昇していることが分かる。
【0017
従来のフィルタとして,図8に示すような金網のメッシュ数が均一なフィルタ(以下,比較例という)を作製した。比較例のフィルタは,フィルタ筒体1の両面を金網22,23で挟み込み,排気ガス流れの上流側の金網を通電金網22に構成した。通電金網22として,抵抗値が軸方向全領域で均等になるように,均一メッシュ数,即ち,均等なピッチの金網を使用した。フィルタに対する測定点A,B,Cは,上記と同一の地点とした。比較例の試験結果を図9に示す。図9から分かるように,測定点Bで測定温度が600℃の時に,測定点Aでは測定温度が530℃であり,測定点Cでは測定温度が540℃であった。即ち,フィルタの軸方向全長即ち全領域にわたって,加熱温度が不均一な上昇温度になっていることが分かる。
【0018
更に,本発明品のフィルタと比較例のフィルタとを図7に示す試験装置に配置し,通電金網2を通電してフィルタに捕集されているパティキュレートを加熱燃焼させる処理を行った。そこで,本発明品のフィルタと比較例のフィルタとに対して,捕集されたパティキュレートの燃焼開始温度が600℃であるとして,フィルタ温度が測定点Bでほぼ600℃になった時点で,切換バルブ8を切り換えると共に再生制御用電磁弁9を開放し,ディーゼルエンジンからの排気ガスをバイパス通路13に流すと共に,排気ガスの一部をパティキュレートを加熱焼却するための燃焼補助用空気として,再生制御用排気ガス通路12を通って流入通路14へ送り込んだ。
【0019
その結果,本発明品のフィルタでは,測定点A,測定点B及び測定点Cにおいて,温度上昇があり,いずれの測定点でも燃焼ピーク(最高温度点)が見られ,フィルタに捕集されているパティキュレートが加熱焼却されていることが分かった。しかしながら,比較例のフィルタでは,測定点Bにおいて,燃焼ピークの温度上昇があり,フィルタに捕集されているパティキュレートが加熱焼却されていたが,測定点A及び測定点Cでは熱が奪われて温度が低下し,フィルタに捕集されているパティキュレートが十分に加熱焼却できず,フィルタの再生が良好にできなかったことが観察できた。
【0020
【発明の効果】
この発明による排気ガス浄化装置は,上記のように構成されており,排気ガス中のパティキュレートをフィルタで捕集し,捕集されたパティキュレートを加熱焼却するため,通電金網を通電してフィルタを加熱する場合,フィルタを軸方向全領域にわたってほぼ均一温度に加熱上昇でき,フィルタには捕集されたパティキュレートの燃え残りがなく,完全に再生でき,従って,フィルタに局部加熱等が発生することがなく,フィルタの耐久性を向上でき長寿命となり,しかも,パティキュレートの加熱焼却に必要な消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明による排気ガス浄化装置の一実施例を示す説明図である。
【図2】 図1の線D−Dにおける断面図である。
【図3】 図2の符号E部分の一部拡大断面図である。
【図4】 この発明による排気ガス浄化装置に組み込まれるフィルタにおける通電金網の構造を示す説明図である。
【図5】 図4の通電金網の一実施例を示す平面図である
【図6】 この発明による排気ガス浄化装置におけるフィルタの加熱状態を時間経過と加熱温度との関係を示すグラフである。
【図7】 フィルタの加熱状態を試験するため,排気ガス通路にフィルタを配設した試験装置を示す説明図である。
【図8】 比較例のフィルタを示す説明図である。
【図9】 比較例におけるフィルタの加熱状態を時間経過と加熱温度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 フィルタ筒体
2 通電金網
3 金網
4 封止部品
5 電極端子
11 排気ガス通路
16 端部
17 中央部
18 端部
A,B,C 測定点

Claims (2)

  1. ディーゼルエンジンの排気系に組み込まれて排気ガス中に含まれるパティキュレートをフィルタで捕集し,捕集された前記パティキュレートを加熱焼却する排気ガス浄化装置において,
    前記フィルタはセラミックス不織布から作製された円筒状又はプリーツ状のフィルタ筒体と前記フィルタ筒体の内外面を接触して挟んだ金網から成り,少なくとも一方の前記金網を周方向に通電可能な通電金網に構成し,前記通電金網の単位面積あたりの抵抗値が軸方向両端部と軸方向中央部とで不均一に設定されており,前記通電金網の軸方向のメッシュ数が前記軸方向両端部で多く,前記軸方向中央部で少なく構成されていることを特徴とする排気ガス浄化装置。
  2. 前記通電金網の前記軸方向両端部から前記軸方向中央部になるに従って前記メッシュ数が漸次減少していることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
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