JP3650855B2 - 銀塩拡散転写法による画像形成方法 - Google Patents

銀塩拡散転写法による画像形成方法 Download PDF

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  • Silver Salt Photography Or Processing Solution Therefor (AREA)
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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は銀塩拡散転写法による画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、銀塩拡散転写は、支持体上にハロゲン化銀乳剤層を有する感光材料と、支持体上に物理現像核を含む受像層を有する受像材料と、現像剤とアルカリとハロゲン化銀溶剤を含む処理液を用いて行われる方法であり、露光した感光材料を、現像剤(還元剤)及びハロゲン化銀溶剤の存在下受像材料と接触させ、溶剤によって溶出したハロゲン化銀をハロゲン化銀乳剤層から受像層へ像様に拡散せしめ、物理現像核で銀像に変換させ、30秒〜1分後に両材料を剥離して写真像を得るものである。銀塩拡散転写法の詳細は、Andre Rott,Edith Weyde著“Photographic Silver Halide Diffusion Processes”Forcal Press,1972、Neblette’s Handbook of Photographyand Reprography 7th.ed.1977、G.Haist編“Modern Photographic Processing Vol.2”John Wiley and Sons 1979,Chapter8,Diffusion Transfer等が参照できる。
【0003】
従来の、医療フィルムの複写や印刷の版下作成に広く使用されている銀塩拡散転写法は強アルカリが必須の湿式処理であるが、定着が不要で現像のみの一浴処理であり、更に、画像形成後不要物を剥離して除去するため、水洗や乾燥を要せず、簡単な処理機で迅速にリスフィルムやレントゲンフィルム並の高画質な画像が得られる利点を有する。
【0004】
しかしながら、ハロゲン化銀の現像と拡散を行うにあたり、強アルカリと現像剤とハロゲン化銀溶剤を含む処理液を用いる。この強アルカリは、皮膚を腐食する、保存中に空気中の炭酸ガスを吸収してpHを低下させ処理能力を劣化させる、現像剤の空気酸化を促進する、等の欠点を有する。
【0005】
これに対して、C.B.Neblette,“ Handbook of Photography and Reprography”、Van Norstrand Reinhold第7版(1977),Chapter 12 One−Step Photography、Andre Rott,EdithWeyde 著“ Photographic Silver HalideDiffusion Processes”Forcal Press,1972等に、処理の際に強アルカリを用いない方法として、受像材料に予め現像液を吸収させておいて、水を供給してから露光した感光材料と重ね合わせて現像と定着を行うセミドライ方式、所謂ウェッブ処理方式の銀塩拡散転写法が記載されている。しかしこの方式は、受像材料が現像剤と強アルカリを含むため、現像剤が酸化されやすく、親水性バインダーが分解されやすく、保存性に欠ける欠点がある。
【0006】
この保存性を改良することを目的として、強アルカリの代わりに、水と反応してアルカリを発生する、中性のアルカリプレカーサーを使用して、処理時に水を供給してフィルム内でアルカリを発生させる方法、具体的には、水に難溶性の金属水酸化物 Z(OH)n〔ZはAl、Cd、Zn、Ti、Pb等〕を、水に易溶性の錯化剤 XY〔XはNa又はCa、Yはクエン酸基、フェロシアナイド基、フッ素イオン、酒石酸基、エチレンジニトロ4酢酸基、トリメチルアミントリカルボン酸基、ジ−ω,ω−メチルアミノジエチルアミンジカルボン酸基又はジ−ω,ω−メチルアミノジエチルアミンテトラカルボン酸基〕と反応させる方法が米国特許第3,260,598号に記載されている。しかしこの方法は、アルカリの発生効率、発生速度や到達pH等が十分でなく、画像濃度がやや低い欠点がある。
【0007】
特開昭62−187847号公報にはピコリン酸グアニジンに代表される特定の構造の複素環カルボン酸塩等と、水酸化亜鉛等の難溶性金属化合物との錯形成反応を利用したアルカリ発生方法が提案されているが、ここで用いられるピコリン酸グアニジンに代表される特定の複素環カルボン酸塩は、親水性バインダーからなる皮膜中に添加した場合、高湿下でべとつき易く、皮膜物性上大きな問題がある。
【0008】
特開昭62−174745号公報には難溶性金属化合物と、この難溶性金属化合物を構成する金属イオンと反応して更に難溶性な金属化合物を形成する中性の水溶性化合物を反応させてアルカリを発生させることが記載されているが、この方式によれば難溶性塩としての炭酸銀、水酸化カルシウム等及び中性の水溶性化合物としての水溶性弗化物、水溶性ヨウ化物等写真性能に大きく影響する化合物が用いられることになる。又、炭酸バリウムの場合はスルホン酸との難溶性塩形成能が大きい為に、pH調整剤としての硫酸やスルホン酸基を有する写真用素材と共に用いることができない等の制約がある。
【0009】
特開昭62−283332号には、水に難溶な塩基性金属化合物及び還元剤を感光材料に、該金属化合物を構成する金属イオンと水を媒体として錯形成反応し得る化合物及びハロゲン化銀溶剤を受像材料に含有せしめ、水のみを供給して前記金属化合物と錯形成反応し得る化合物を反応させ、pHを上昇させて画像形成することが記載されている。しかしこの方法では、前記2種の化合物をそれぞれ感光材料及び受像材料に含有させるため、両材料の膜物性が脆弱になってしまう問題がある。
【0010】
特開平4−301842号には、受像材料に▲1▼水溶性亜硫酸塩或いはそのプレカーサー、▲2▼4硼酸ナトリウム及び4硼酸カリウムから選ばれる少なくとも一方、▲3▼有機モノ或いはポリカルボン酸のナトリウム塩及びカリウム塩から選ばれる少なくとも1種の3者を含有させ、露光済みの感光材料及び受像材料の少なくとも一方を中性の水性液体で、湿潤して重ね合わせ、現像・拡散転写処理する銀像の製造方法が記載されている。しかしこの方法も、アルカリの発生効率が悪く、又、大量のアルカリ発生剤を受像材料に添加せねばならないため、塗膜の物性が悪く良好な画像が得られない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、還元剤を内蔵した感光層を現像するにあたり、多孔性隔膜を用いる電解により生成するアルカリを用いることが、R.W.F.Conway,“An Electolytic Processing Machine”Photographic Science and Engineering.Volume8,Number3,p.162〜164(1964)に記載されている。
【0012】
本発明者は還元剤を感光材料に、ハロゲン化銀溶剤を受像材料に含有せしめ、多孔性隔膜を用いる電解で生成するアルカリを用いて銀塩拡散転写法を行うことを検討したが、この方法では高い画像濃度が得られず、更に画像ヌケが発生してしまうことが判明した。
【0013】
本発明は上記の事情によりなされたものであり、その目的は、第1に高濃度の銀塩拡散転写画像を得ることにあり、第2にはアルカリ性現像液の取り扱い及び管理の繁雑さを解消し、銀塩拡散転写材料の皮膜に影響を与えない銀塩拡散転写法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、
感光性ハロゲン化銀を有する感光要素を画像露光し、還元剤、ハロゲン化銀溶剤及びイオン交換膜を用いる電解で生成するアルカリ水の存在下で現像し、物理現像核を有する受像要素へ銀錯塩を拡散せしめて、受像要素に銀画像を形成する銀塩拡散転写法による画像形成方法、還元剤を感光要素に含有せしめること、ハロゲン化銀溶剤を受像要素に含有せしめること、及び、前記アルカリ水のpHが12以上であること、
により達成される。
【0015】
即ち本発明者は、高濃度の画像を得るためにはpHが12以上、好ましくは13以上であることが必要だという知見を得、多孔性隔膜を用いてpHを上昇させたが、あまり高pHが得られないにも拘わらずそれに伴って画像ヌケも増大したことから、多孔性隔膜に用いられている石綿やクリソタイル石綿の成分がアルカリ水に溶出して画像ヌケを招くと考え、多孔性隔膜に代わる種々の電解手法を検討した結果、イオン交換膜を用いる電解で生成するアルカリ水が有効であることを見いだし本発明に至ったものである。
【0016】
以下、本発明を詳述する。
【0017】
本発明はpHを上昇させる手段としてアルカリ剤ではなく、イオン交換膜を用いる電解で生成するアルカリ水を用いることを特徴とする。イオン交換膜としては、高pH下での耐久性に優れるテフロン系素材の膜を好ましく採用できる。又、電解の際好ましく採用できるのは、電界槽としては、SUS304、同316、同316L、同317等のステンレス鋼であり、陰極としては、前記ステンレス鋼、チタン、チタン合金、ハステロイ鋼であり、陽極としては、同じくステンレス鋼及びグラファイト、白金、金等である。
【0018】
電解質溶液はアルカリ金属塩から選択すればよいが、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム等の炭酸塩はアルカリと同時に生成する酸が炭酸であり空気中に放出されるため酸の処分が不必要となり好ましい。電解質濃度は1〜20重量%程度とする。印加電圧は3.6V〜4.0VあればpH11以上が得られる。
【0019】
本発明の銀塩拡散転写法は、還元剤を感光材料に、ハロゲン化銀溶剤と必要に応じて中和剤を受像材料に、それぞれ含有せしめ、感光材料を露光して、アルカリ水で濡らしてから受像材料と重ね、一定時間後、両者を剥離するように構成するのが好ましい。高解像度を得るために密着性を上げるには、アルカリ水を供給して重ね合わせ、スクイズローラーを通して、過剰の水を除去すると同時に両者を完全に密着すればよい。
【0020】
中和剤は、処理後に残留するアルカリを中和して画像pHを低下させ、保存性を得る機能を有するものならば、いずれも採用できるが、重合体酸等が挙げられる。
【0021】
本発明の画像形成方法に用いる感光要素及び受像要素の構成層にはバインダーが用いられる。該バインダーとしては、親水性のものが好ましく、例えばエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、フタル化ゼラチン等のゼラチン誘導体、セルロース誘導体、タンパク質、澱粉、アラビアゴム、プルラン、デキストラン等の合成又は天然の高分子物質を挙げることができ、単独又は併用で用いられる。合成高分子物質の場合、特に平均分子量が2,000〜1,000,000のものが好ましく用いられる。
【0022】
これらの高分子物質のなかでも特にゼラチンが好ましく、通常のアルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、フェニルカルバモイル化ゼラチンやフタル化ゼラチン等のゼラチン誘導体が用いられ、2種以上併用することもでき、特にゼラチンとゼラチン以外の水溶性高分子物質との併用が好ましい。
【0023】
バインダーの使用量は支持体1m2当たり0.1〜50g程度であり、好ましくは1〜20gである。
【0024】
バインダーは写真用硬膜剤で硬膜されることが好ましい。硬膜剤としては、ビニルスルホン系、アルデヒド系、エポキシ系、N−メチロール系、ハロゲン置換−s−トリアジン系のものや高分子硬膜剤等が挙げられる。
【0025】
水洗無しで保存性の良い銀画像を得るために、中和層と中和タイミング層を、感光要素、受像要素、処理要素のいずれかに設けることが好ましい。中和層の中和剤は、画像層のpH値を13〜14から、たかだか11まで、好ましくは5〜8まで低下させるものが好ましく、アクリル酸ブチルとアクリル酸の共重合体(重量比70:30)や置換されたアクリル酸の共重合体等の重合体酸が挙げられ、リサーチ・ディスクロージャー 12331 を参照できる。
【0026】
中和タイミング層に採用できる素材としては、塩化ビニリデンとエチレン系不飽和単量体とエチレン系不飽和カルボン酸からなる共重合体等があり、リサーチ・ディスクロージャー 18452 を参照できる。
【0027】
本発明の感光要素に用いる感光性ハロゲン化銀乳剤としては、沃化銀含有率及び臭化銀含有率の総和が0.1〜10モル%、好ましくは0.5〜5モル%のものである。乳剤の塗布量としては、0.5〜2.0g/m2程度、好ましくは0.8〜2.0g/m2である。
【0028】
受像要素の受像層は物理現像核を含有する。物理現像核については、A.Rott,E.Weyde著“Photographic Silver Halide Diffusion Processes”の第54〜57頁の記載を参照できる。非感光性の物理現像核の具体例としては、硫化銀、パラジウム、ニッケル、鉛、その他の金属が挙げられる。物理現像核の平均粒子サイズは300nm以下が好ましく、より好ましくは5〜10nmである。受像層への物理現像核の添加量は、0.1〜30mg/m2程度、好ましくは1〜10mg/m2である。
【0029】
受像層は黒色調色剤を含有してもよく、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールが好ましく用いられる。
【0030】
受像層に使用する結合剤は、ゼラチンが好ましいが、ゼラチンより吸水性の小さいカルボキシメチルセルロース(CMC)等の水溶性高分子を含ませて、剥離直後、受像層の表面が乾いている様にすることが好ましい。又、ゼラチン中に含まれるカルシウムイオンは、物理現像核の粒子等を凝集させる恐れがあり、その含有量を1000ppm以下とするのが好ましく、より好ましくは500ppm以下である。
【0031】
還元剤としては、主現像剤としてハイドロキノン、2次現像剤として1−フェニル−3−ピラゾリドン等のフェニドンを併用するのが好ましい。フェニドンとしては、1−フェニル−4−置換−3−ピラゾリドンの様な置換基をもつものは保存安定性がよい。ハイドロキノンの代わりに、アスコルビン酸とフェニドンとの組み合わせでもよい。アスコルビン酸は画像にステインを与える傾向が小で好都合である。
【0032】
ハロゲン化銀溶剤としては、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム等のチオ硫酸アルカリ金属塩、ウラシル、チオシアン酸ナトリウム、環状イミド化合物等の従来より知られるものを採用できる。
【0033】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0034】
実施例1
厚さ100μのポリエチレンテレフタレート(PET)支持体上に以下の組成の層を順次重層して感光材料を作製した。
【0035】
Figure 0003650855
同様のPET支持体上に以下の組成の層を順次重層して受像材料を作製した。
【0036】
Figure 0003650855
三)受像層
硫化パラジウム分散液(硫化パラジウム濃度 0.55g/l、ゼラチン濃度0.16g/l) 54.8ml、ゼラチン20g、1%1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールのメタノール溶液50ml、5%デモールN(アルキルナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物)溶液4ml、4%グリオキザール10ml、錯化剤(A−1)46g、チオ硫酸ソーダ25gを混合して1lに仕上げる。この液を、ゼラチン1.5g/m2、硫化パラジウム50ミリモル/m2、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール100mg/m2、錯化剤(A−1)4.0g/m2、チオ硫酸ナトリウム1.7g/m2になるように塗布する。
【0037】
未露光の感光材料を、20μの厚みで下記に示す電解で生成したアルカリ水を塗布し、受像材料と重ねて、回転ローラー間を通過させて両材料を密着させ、1分後に剥離した。
【0038】
電解は下記の条件で行った。
【0039】
電解槽 ;SUS304
電極 ;SUS304(陰極)、白金(陽極)
印加電圧;3.6V
電解質溶液;炭酸ナトリウムの10%水溶液
イオン交換膜;下記に示す。
【0040】
得られた画像の透過濃度をX−RiTE社製濃度計;X−RiTE 310を用いて測定した。又、画像ヌケについては任意の10点の1cm2当たりの数をルーペで拡大しながら数え、平均の個数を取った。
【0041】
結果を以下に示す。
【0042】
Figure 0003650855
尚、実験No.4は実験No.3において印加電圧を4.6Vに変更したものである。
【0043】
【発明の効果】
実施例にて実証した如く、本発明の銀塩拡散転写法により、材料の被膜に問題を生ぜずに、転写濃度が高く、画像ヌケの無い画像を簡便な処理により得ることができる。

Claims (4)

  1. 感光性ハロゲン化銀を有する感光要素を画像露光し、還元剤、ハロゲン化銀溶剤及びイオン交換膜を用いる電解で生成するアルカリ水の存在下で現像し、物理現像核を有する受像要素へ銀錯塩を拡散せしめて、受像要素に銀画像を形成することを特徴とする銀塩拡散転写法による画像形成方法。
  2. 還元剤を感光要素に含有せしめることを特徴とする請求項1に記載の銀塩拡散転写法による画像形成方法。
  3. ハロゲン化銀溶剤を受像要素に含有せしめることを特徴とする請求項1又は2に記載の銀塩拡散転写法による画像形成方法。
  4. 前記アルカリ水のpHが12以上であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の銀塩拡散転写法による画像形成方法。
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