JP3649896B2 - スラスト部材およびその使用方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転軸端を支持するピポット型スラスト軸受などのスラスト部材に関し、さらに詳しくは、電気および電子機器、すなわち、ビデオテープレコーダやオーディオカセットテープレコーダなどの映像、音響機器、およびコンパクトディスクプレーヤ、ハードディスク装置、フロッピーディスク装置のような各種データ装置などに使用されるモータの回転軸端を支持するスラスト部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
図1は、回転体の回転軸端を支持するスラスト部材を採用したモータの側断面図である。同図において、第1の平面部2に複数の所定の極に着磁された円環状の永久磁石3と、上記第1の平面部2と所定の間隙を有して対向し、電気配線部を有するところの磁性材料製の固定子平板4上に施された複数相の固定子巻線5とを具備している。また永久磁石3は磁性材料からなるバックヨーク6に永久磁石3の第2の平面部7を当接して固着されている。
【0003】
一方、モータの回転軸8にはボス9を介してバックヨーク6が固着され、永久磁石3と一体的に回転するように構成されている。回転軸8は、固定子平板4に取り付けられた軸受ハウジング10の下部に設けられた軸受11ならびに上部に設けられた軸受12に嵌合し、回転自在に軸承されている。回転軸8をスラスト支持するスラスト部材13は、スラスト保持部材14により保持される。軸受ハウジング10に螺合したスラスト部材保持部材14を治工具等を用いて回転させると、これとともにスラスト部材13は軸方向に移動するので、スラスト部材13の平坦面13aは回転軸端部8aに当接し、上方に付勢された回転軸8もそれに追従して移動する。したがって、永久磁石3の第1の平面部2と固定子平板4の空隙距離を容易にかつ適正に調整することができる。また図1に示すように、回転軸8の先端部8a形状は凸球面状であり、この先端部8aがスラスト部材13の平坦面13aに摺動自在に当接し、スラスト支持する。なお、ピンチローラ1が回転軸8に近接して設けられている。
【0004】
従来、このスラスト部材は、摺動性および強度を兼ね備えた樹脂であるピロメリット酸と4,4′−ジアミノジフェニールエーテルの重縮合物であるポリイミド樹脂や、ポリフェニレンサルファイド樹脂などにより成形されていた。
【0005】
一方、新規なポリイミド樹脂として、特表平6−501738号に、従来のポリイミド樹脂が有する良好な物性を有するとともに、従来のポリイミド樹脂と比較して極めて改良された加水分解および酸化安定性を示すポリイミド樹脂として、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸無水物と少なくとも約60%がメタフェニレンジアミンである芳香族ジアミンとから製造したポリイミド樹脂が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように構成された従来例のモータにおいて、例えば永久磁石3がストロンチウムフェライト(SrO・6Fe2 O3 )製であり、外径が55mm、厚みが4. 5mm、永久磁石3と軟鉄材からなる固定子平板4の空隙距離が2mmであるモータにおいては、永久磁石3の磁力による吸引力は1.5kg以上にも達する。このような、永久磁石の磁力による吸引力が非常に大きい径の大きなモータや、高速で回転するモータにおいては、回転軸8とスラスト部材13の接触部におけるPV値(Pはスラスト部材の接触部における圧縮応力であり、Vは接触部の摺動速度である。)が非常に大きくなることにより、接触部の温度も上昇するため、従来の樹脂から成るスラスト部材13は容易に摩耗する。この摩耗によって回転軸8は軸受方向の上方に移動し、永久磁石3の第1の平面部2と固定子巻線5が接触し、モータの回転不良を招くという問題点があった。
【0007】
また、回転軸8とスラスト部材13は、略々点接触である。接触部の摩擦係数を下げることによって発熱を抑えるために、接触部に鉱油、合成油等からなる潤滑剤を適量点滴していた。しかしながら、使用条件により潤滑油が無くなった場合、摩耗が著しく増加するという問題点もあった。
【0008】
本発明は上記した問題点に鑑み、高PV値の条件下で耐摩耗特性に優れた特性を有するスラスト部材を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のスラスト部材は、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸無水物と1,3−フェニレンジアミンとから成るポリイミド樹脂と、黒鉛とを含有したポリイミド樹脂組成物から成形され、圧縮破壊強度が50kg以上であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に基づくスラスト部材は、前記黒鉛の(1)黒鉛化度(p価)が0.25以上であり、平均粒子径が5μm以下であり、固定炭素量が97%以上であるか、または(2)黒鉛化度(p価)が0.25未満である、上記のポリイミド樹脂組成物から成形され、圧縮破壊強度が50kg以上であるスラスト部材である。この場合は回転軸端の支持体として潤滑剤とともに用いられる。
【0011】
さらにまた、本発明に基づくスラスト部材は、前記黒鉛の固定炭素量が97%以上である上記のポリイミド樹脂組成物から成形され、圧縮破壊強度が50kg以上であるスラスト部材である。この場合回転軸端の支持体として潤滑剤なしで用いられる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のスラスト軸受のポリイミド樹脂は、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸無水物と、1,3−フェニレンジアミンとからなるものであり、1g当たりの表面積が15平方メートル以上であることが好ましい。
【0013】
本発明で用いるポリイミド樹脂は、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸無水物と1,3−フェニレンジアミンとを本質的に等モル量で反応させることにより製造することができる。これらの反応体を、これらの反応体のどちらかと感知できる程反応する官能基を有しておらず、かつ約8から10のpHを示す有機溶媒中で一緒にする。最終粒子状生成物で高い表面積を達成するために有機溶媒としては、ジメチルアセトアミドまたはピリジンが好ましい。溶媒は、ジアミンとカルボン酸無水物とのポリマー状反応生成物の濃度がこの溶液の約1から50重量%、好ましくは約1から20重量%となるような量で使用される。次に得られるポリアミド酸を沈殿させると同時に、これを少なくとも部分的にポリイミドに変換するために、非溶媒を用いる。この非溶媒としてはポリイミドの製造で使用される公知の如何なるものも使用することができるが、最終生成物に高い表面積を与えるとともに、優れた機械的強度を提供することができるアセトンを用いることが好ましい。非溶媒は、非溶媒と反応溶媒の全量の少なくとも約40%、好ましくは約60から80%で用いられる。
【0014】
本発明において用いられる黒鉛は、天然黒鉛、人造黒鉛のいずれでもよい。
【0015】
天然黒鉛は、天然に地熱と地下の高圧、および永い時間の間にほぼ完全に黒鉛化したものが地中より産出したものなので、黒鉛化度が高く摺動時の劈開性に優れ、したがって良好な潤滑性を示すものであり、潤滑性に優れている。また、一般的に天然黒鉛は、アスペクト比も大きいことにより、層状平面が摺動面になる。従って、潤滑油が金属表面と層状表面の凝着のみならず、不純物の凝着をも阻止することにより、表面の摩耗は生じにくい。
【0016】
人造黒鉛は、例えばピッチ由来のコークスをタールやピッチで固めて約1200℃で焼成してから黒鉛化炉に入れ、約2300℃の高温で炭素の結晶を成長させたものが好ましい。
【0017】
耐摩耗性に優れ、結晶化処理前後の成形品の収縮率の少ないスラスト部材を得るためには、好ましくは、固定炭素量が97%以上の黒鉛を用いる。ここで黒鉛化成分中の固定炭素とは、石炭試験法の工業分析において、水分、灰分、揮発分を定量して除いた残りの成分であって、炭素を主成分として少量の水素、酸素、窒素を含むものである。
【0018】
また、黒鉛に含有される灰分の量が少ないことにより研磨性が小さくなる。さらに、相手材表面において黒鉛微細粒子の黒鉛の転移層が形成されるため、摺動面においては3元摩耗(相手材とスラスト部材と転移層を形成できない摩耗粉との三者によって生ずる摩耗のこと)の状態が生じにくく、無潤滑時においても研磨性を低下させることができる。したがって、本発明のスラスト部材を、無潤滑で回転軸端の支持体として用いる場合には、固定炭素量は97%以上でなければならない。
【0019】
黒鉛の黒鉛化度(p価)も摺動性に影響を及ぼす。ここでの黒鉛化度(p価)とは、乱層構造の存在する確率であり、黒鉛構造の存在する確率は、(1−p)で表される。具体的には、平行な層面よりなる結晶子からのX線散乱強度の和により炭素の構造モデルを導きだしたFranklinの理論式から求められる。
【0020】
黒鉛の形状は特に限定されるものではないが、好ましくは鱗片状のものである。
【0021】
本発明のスラスト部材を潤滑剤とともに回転軸端の支持体として用いる場合には、後述の実施例に示すとおり、黒鉛の黒鉛化度(p価)が0.25以上であれば、平均粒子径が5μm以下であり、固定炭素量が97%以上でなければならない。また、黒鉛化度(p価)が0.25未満であるならば、平均粒子径および固定炭素量は特に制限されない。
【0022】
回転軸端の支持体として当初は潤滑剤とともに用い、潤滑剤が切れた後にも良好な摺動性を得ることができるスラスト部材は、黒鉛化度(p価)、平均粒径、および固定炭素量と、潤滑または無潤滑との関係より、黒鉛化度(p価)が0.25以上、平均粒子径が5μm以下であり、固定炭素量が97%以上の黒鉛を用いるか、黒鉛化度(p価)が0.25未満、固定炭素量が97%以上の黒鉛を用いることにより提供される。
【0023】
ポリイミド樹脂の粉末と、黒鉛とは、後述の実施例で示すとおりその成形品の圧縮破壊強度が50kg以上であるような配合割合で混合されなければならない。ここでの圧縮破壊強度とは、室温23℃下で、外径2.8mm、厚さ2mmの円柱状試験片に外径方向より1mm/分で圧縮荷重を加える試験において得られる実破壊荷重であり、圧縮破壊強度50kg以上とは、このような試験法により測定された実破壊荷重が50kg以上であることをいう(本明細書中の圧縮破壊強度は同様の定義である)。
【0024】
本発明で用いたポリイミド樹脂組成物は具体的な成形条件により多少異なる強度を提供するため、ポリイミド樹脂粉末と黒鉛との具体的な配合割合によってポリイミド樹脂組成物を特定することはできないが、ポリイミド樹脂と黒鉛との配合割合を、重量に基づき90〜50:10〜50を目安とし、圧縮破壊強度が50kg以上になるように決定する。
【0025】
黒鉛とポリイミド樹脂の粉末とを混合し、金型に充填し、圧縮成形により所望の形状とし、通常130℃から400℃の温度で更に熱硬化させることにより、ポリマーからポリイミドへの実質的に完全な変換を生じさせる。
【0026】
本発明で用いたポリイミド樹脂組成物は、スラスト部材の圧縮破壊強度および摺動性に影響を及ぼさない範囲で、公知の固体潤滑剤、たとえば、フッ素樹脂、炭素繊維、アラミド繊維、無機繊維、球状無機物、雲母、ケイ酸アルミニウム粉、ケイ酸マグネシウム粉、ケイ酸カルシウム粉、窒化ホウ素粉、二硫化モリブデンなどを添加することができる。
【0027】
以下本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0028】
(実施の形態1)
図1において、本発明が従来例のモータと異なる点は、回転軸8をスラスト支持するスラスト部材13に、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸無水物と1,3−フェニレンジアミンとから成るポリイミド樹脂と、黒鉛とを含有し、その圧縮強度が50kg以上であるポリイミド樹脂組成物から成形したスラスト部材を用いたことにある。
【0029】
(実施例1〜5、比較例1〜3)
3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸無水物と1,3−フェニレンジアミンとから成るポリイミド樹脂70重量%と、p価0.24、固定炭素量97%、平均粒径3〜5μmの燐片状の黒鉛を30重量%とを混合し、その混合物を金型に充填し、圧縮面圧40,000psi以上で圧縮し、350℃以上の温度にて焼成し、実破壊荷重が50kg以上のスラスト部材を成形した。得られたスラスト部材を用いて、回転軸8の先端凸部8aとスラスト部材13との接触部に、鉱油、合成油等からなる潤滑剤を点滴し、摩耗試験を実施した。摩耗試験においては、スラスト部材13に、ステンレス鋼からなる回転軸8の先端凸部8a(先端シャフトR径3.5mm)を通じて永久磁石3の吸引力(1.75kg)を付加し、回転軸8の回転数を2500rpmとし、1000時間経過後に摩耗量を測定した。これを実施例1とした。
【0030】
p価0.24、固定炭素量89%、平均粒径3〜5μmの燐片状の黒鉛を用いた以外は実施例1と同様にスラスト部材を成形し、同一条件下で摩耗試験を実施した。これを実施例2とした。
【0031】
実施例1と同一のスラスト部材を用いて、無潤滑である以外は、実施例1と同様に摩耗試験を行った。これを実施例3とした。
【0032】
実施例2と同一のスラスト部材を用いて、無潤滑である以外は、実施例1と同様に摩耗試験を行った。これを実施例4とした。
【0033】
p価0.26、固定炭素量97%、平均粒径3〜5μmの燐片状の黒鉛を用いた以外は実施例1と同様にスラスト部材を成形し、無潤滑である以外は、実施例1と同様に摩耗試験を行った。これを実施例5とした。
【0034】
次に、ピロメリット酸と4,4′−ジアミノジフェニルエーテルの重縮合物であるポリイミド樹脂85重量%と、実施例1で用いたものと同一の黒鉛15重量%とを混合し、その混合物を金型に充填し、圧縮面圧40,000psi以上で圧縮し、350℃以上の温度で焼成し、スラスト部材を成形した。実施例1と同様に摩耗試験を行った。これを比較例1とした。
【0035】
また、ポリフェニレンサルファイドに炭素繊維を充填した材料で、スラスト部材を成形した。実施例1と同様に摩耗試験を行った。これを比較例2とした。
【0036】
さらに、比較例2と同一のスラスト部材を用いて、無潤滑である以外は、実施例1と同様に摩耗試験を行った。これを比較例3とした。
【0037】
摩耗量の測定結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
ここで、測定不可とは、スラスト部材が摩滅するか、または原形をとどめない程摩耗してしまい、摩耗量を測定することができないことをいう(以下、同様の定義である)。
【0040】
実施例1と比較例1とを比較すると、ピロメリット酸と4,4′−ジアミノジフェニールエーテルの重縮合物であるポリイミド樹脂に対して、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸無水物と1,3−フェニレンジアミンとから成るポリイミド樹脂を用いる方が耐摩耗性に優れていることがわかる。
【0041】
また、実施例1と比較例2とを比較すると、本発明のスラスト部材は、ポリフェニレンサルファイドに炭素繊維を充填した材料からなるスラスト部材と摩耗量が同等であることがわかる。実施例1と同一のスラスト部材を無潤滑で用いた実施例3と、比較例2と同一のスラスト部材を無潤滑で用いた比較例3とを比較すると、無潤滑では、本発明のスラスト部材の耐摩耗性が非常に優れていることがわかる。
【0042】
さらに、実施例1と実施例2とを比較すると、潤滑剤とともに用いる場合は、p価が0.25未満であり、平均粒径が5μm以下の黒鉛を用いた場合には、固定炭素量に関係なく耐摩耗性に優れることがわかる。実施例1と実施例3とを比較すると、p価が0.25未満であり、平均粒径が5μm以下、固定炭素量が97%以上であれば、潤滑剤とともに用いても、無潤滑で用いても耐摩耗性は同等であることがわかる。実施例2と実施例4とを比較すると、p価が0.25未満であり、平均粒径が5μm以下であり、固定炭素量が97%より少ない場合には、潤滑剤とともに用いた方がよいことがわかる。実施例3と実施例4とを比較すると、p価が0.25未満であり、平均粒径が5μm以下の黒鉛であれば、無潤滑で使用する場合には、固定炭素量が高い方がよいことがわかる。実施例3と実施例5とを比較すると、平均粒径5μm以下で、固定炭素量が97%以上であれば、無潤滑で用いる場合にはp価の値に影響されることなく耐摩耗性に優れることがわかる。
【0043】
(実施例6〜9、比較例4〜6)
3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸無水物と1,3−フェニレンジアミンとから成るポリイミド樹脂70重量%と、p価0.24、固定炭素量97%以上、平均粒径3〜5μmの燐片状の黒鉛30重量%とを混合し、その混合物を金型に充填し、圧縮面圧40,000psi以上で圧縮し、350℃以上の温度にて焼成し、実施例6から実施例9、および比較例4から比較例6までのそれぞれ実破壊荷重が異なるスラスト部材を成形した。摩耗試験は、回転軸8の先端凸部8aとスラスト部材13との接触部に、鉱油、合成油等からなる潤滑剤を点滴し、スラスト部材13に、ステンレス鋼からなる回転軸8の先端凸部8a(先端シャフトR径3.5mm)を通じて永久磁石3の吸引力(2.0kg)を付加し、回転軸8の回転数を3000rpmとして、100時間行った。100時間経過後の結果を表2に示す。
【0044】
さらに、摩耗試験を行った後、室温23℃のもとで、試験片に外径方向より1mm/分で圧縮荷重を加え、実破壊荷重を測定した。その結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
表2より、実破壊荷重が50kg以上である場合と50kg未満である場合とでの摩耗量に著しい差で生じることがわかる。
【0047】
(実施の形態2)
(実施例10〜13、比較例7)
3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸無水物と1,3−フェニレンジアミンとから成るポリイミド樹脂70重量%と、p価0.24、平均粒子径3〜5μm、固定炭素量97%の黒鉛30重量%とを混合し、その混合物を金型に充填し、圧縮面圧40,000psi以上で圧縮し、350℃以上の温度にて焼成し、実破壊荷重50kg以上のスラスト部材を成形した。得られたスラスト部材を用いて、回転軸8の先端凸部8aとスラスト部材13との接触部に、鉱油、合成油等からなる潤滑剤を点滴し、スラスト部材13に、ステンレス鋼からなる回転軸8の先端凸部8a(先端シャフトR径3.5mm)を通じて永久磁石3の吸引力(1.5kg)を付加し、回転軸8の回転数を2500rpmとして、摩耗試験を実施した。300時間経過後に摩耗量を測定した。これを実施例10とした。
【0048】
実施例10の黒鉛に代えて、p価0.24、平均粒子径7〜10μm、固定炭素量97%の黒鉛を用いた以外は実施例10と同様にスラスト部材を成形し、摩耗試験を行った。これを実施例11とした。
【0049】
実施例10の黒鉛に代えて、p価0.24、平均粒子径7〜10μm、固定炭素量89%の黒鉛を用いた以外は実施例10と同様にスラスト部材を成形し、摩耗試験を行った。これを実施例12とした。
【0050】
実施例10の黒鉛に代えて、p価0.26、平均粒子径3μm、固定炭素量99%の黒鉛を用いた以外は実施例10と同様にスラスト部材を成形し、摩耗試験を行った。これを実施例13とした。
【0051】
実施例10の黒鉛に代えて、p価0.26、平均粒子径10μm、固定炭素量99%の黒鉛を用いた以外は実施例10と同様にスラスト部材を成形し、摩耗試験を行った。これを比較例7とした。
【0052】
結果を表3に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
実施例10と実施例11とを比較すると、潤滑剤とともに用いる場合には、p価が0.25未満であり、固定炭素量が97%以上であれば、平均粒径に関係なく耐摩耗性に優れることがわかる。実施例11と実施例12とを比較すると、潤滑剤とともに用いる場合には、p価が0.25未満であり、平均粒径が7〜10μmであれば、固定炭素量に関係なく耐摩耗性に優れることがわかる。実施例2と実施例10〜12とから、潤滑剤とともに用いる場合には、p価が0.25未満であれば、平均粒径および固定炭素量に関係なく優れた耐摩耗性が得られることがわかる。
【0055】
実施例10と実施例13とを比較すると、潤滑剤とともに用いる場合には、平均粒径が5μm以下であり、固定炭素量が97%以上であれば、p価に関係なく耐摩耗性に優れることがわかる。
【0056】
実施例13と比較例7とを比較すると、潤滑剤とともに用いる場合には、p価が0.25以上で、固定炭素量が97%以上であれば、粒径が小さい方が耐摩耗性に優れることがわかる。
【0057】
(実施の形態3)
(実施例14〜19)
3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸無水物と1,3−フェニレンジアミンとから成るポリイミド樹脂70重量%と、p価0.24、固定炭素量97%、平均粒径3〜5μmの黒鉛30重量%とを混合し、その混合物を金型に充填し、圧縮面圧40,000psi以上で圧縮し、350℃以上の温度にて焼成し、実破壊荷重が50kg以上のスラスト部材を成形した。得られたスラスト部材を用いて、無潤滑で、摩耗試験を実施した。摩耗試験においては、スラスト部材13に、ステンレス鋼からなる回転軸8の先端凸部8a(先端シャフトR径3.5mm)を通じて永久磁石3の吸引力(1.75kg)を付加し、回転軸8の回転数を2500rpmとし、300時間経過後の摩耗量を測定した。これを実施例14とした。
【0058】
実施例14の黒鉛に代えて、平均粒子径7〜10μmの黒鉛を用いた以外は実施例14と同様にスラスト部材を成形し、摩耗試験を行った。これを実施例15とした。
【0059】
実施例14の黒鉛に代えて、p価0.26、平均粒子径3μm、固定炭素量99%の黒鉛を用いた以外は実施例14と同様にスラスト部材を成形し、摩耗試験を行った。これを実施例16とした。
【0060】
実施例14の黒鉛に代えて、p価0.26、平均粒子径10μm、固定炭素量99%の黒鉛を用いた以外は実施例14と同様にスラスト部材を成形し、摩耗試験を行った。これを実施例17とした。
【0061】
実施例14の黒鉛に代えて、p価0.26、平均粒子径38μm、固定炭素量99%の黒鉛を用いた以外は実施例14と同様にスラスト部材を成形し、摩耗試験を行った。これを実施例18とした。
【0062】
実施例14の黒鉛に代えて、p価0.26、平均粒子径54μm、固定炭素量99%の黒鉛を用いた以外は実施例14と同様にスラスト部材を成形し、摩耗試験を行った。これを実施例19とした。
【0063】
測定結果を表4に示す。
【0064】
【表4】
【0065】
実施例14および実施例15から、無潤滑で用いる場合には、p価が0.25未満であり、固定炭素量が97%以上であれば、平均粒径に関係なく、優れた耐摩耗性が得られることがわかる。実施例17〜19より、無潤滑で用いる場合には、p価が0.25以上であり、固定炭素量が97%以上であれば、平均粒径に関係なく、優れた耐摩耗性が得られることがわかる。実施例14と実施例16とを比較すると、無潤滑で用いる場合には、平均粒径が5μm以下であり、固定炭素量が97%以上であれば、p価に関係なく、優れた耐摩耗性が得られることがわかる。実施例16と実施例17とを比較すると、無潤滑で用いる場合には、p価が0.25以上であり、固定炭素量が97%以上であれば、平均粒径に関係なく、優れた耐摩耗性が得られることがわかる。以上の考察より、無潤滑で使用する場合には、固定炭素量が97%以上であれば、平均粒径およびp価に関係なく優れた耐摩耗性が得られることがわかる。
【0066】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸無水物と1,3−フェニレンジアミンとから成るポリイミド樹脂と、黒鉛とを含有したポリイミド樹脂組成物から成形し、圧縮破壊強度が50kg以上である組成物をスラスト部材として用いることにより、高PV値の条件下でも耐摩耗性に優れた特性を有するスラスト部材を提供することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】回転体の回転軸端を支持するスラスト部材を用いたモータの側断面図である。
【符号の説明】
1 ピンチローラ
2 第1の平面
3 永久磁石
4 固定子平板
5 固定巻線
6 バックヨーク
7 第2の平面部
8 回転軸
8a 回転軸端部
9 ボス
10 軸受ハウジング
11 下部軸受
12 上部軸受
13 スラスト部材
13a スラスト部材13の平坦面
14 スラスト保持部材
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転軸端を支持するピポット型スラスト軸受などのスラスト部材に関し、さらに詳しくは、電気および電子機器、すなわち、ビデオテープレコーダやオーディオカセットテープレコーダなどの映像、音響機器、およびコンパクトディスクプレーヤ、ハードディスク装置、フロッピーディスク装置のような各種データ装置などに使用されるモータの回転軸端を支持するスラスト部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
図1は、回転体の回転軸端を支持するスラスト部材を採用したモータの側断面図である。同図において、第1の平面部2に複数の所定の極に着磁された円環状の永久磁石3と、上記第1の平面部2と所定の間隙を有して対向し、電気配線部を有するところの磁性材料製の固定子平板4上に施された複数相の固定子巻線5とを具備している。また永久磁石3は磁性材料からなるバックヨーク6に永久磁石3の第2の平面部7を当接して固着されている。
【0003】
一方、モータの回転軸8にはボス9を介してバックヨーク6が固着され、永久磁石3と一体的に回転するように構成されている。回転軸8は、固定子平板4に取り付けられた軸受ハウジング10の下部に設けられた軸受11ならびに上部に設けられた軸受12に嵌合し、回転自在に軸承されている。回転軸8をスラスト支持するスラスト部材13は、スラスト保持部材14により保持される。軸受ハウジング10に螺合したスラスト部材保持部材14を治工具等を用いて回転させると、これとともにスラスト部材13は軸方向に移動するので、スラスト部材13の平坦面13aは回転軸端部8aに当接し、上方に付勢された回転軸8もそれに追従して移動する。したがって、永久磁石3の第1の平面部2と固定子平板4の空隙距離を容易にかつ適正に調整することができる。また図1に示すように、回転軸8の先端部8a形状は凸球面状であり、この先端部8aがスラスト部材13の平坦面13aに摺動自在に当接し、スラスト支持する。なお、ピンチローラ1が回転軸8に近接して設けられている。
【0004】
従来、このスラスト部材は、摺動性および強度を兼ね備えた樹脂であるピロメリット酸と4,4′−ジアミノジフェニールエーテルの重縮合物であるポリイミド樹脂や、ポリフェニレンサルファイド樹脂などにより成形されていた。
【0005】
一方、新規なポリイミド樹脂として、特表平6−501738号に、従来のポリイミド樹脂が有する良好な物性を有するとともに、従来のポリイミド樹脂と比較して極めて改良された加水分解および酸化安定性を示すポリイミド樹脂として、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸無水物と少なくとも約60%がメタフェニレンジアミンである芳香族ジアミンとから製造したポリイミド樹脂が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように構成された従来例のモータにおいて、例えば永久磁石3がストロンチウムフェライト(SrO・6Fe2 O3 )製であり、外径が55mm、厚みが4. 5mm、永久磁石3と軟鉄材からなる固定子平板4の空隙距離が2mmであるモータにおいては、永久磁石3の磁力による吸引力は1.5kg以上にも達する。このような、永久磁石の磁力による吸引力が非常に大きい径の大きなモータや、高速で回転するモータにおいては、回転軸8とスラスト部材13の接触部におけるPV値(Pはスラスト部材の接触部における圧縮応力であり、Vは接触部の摺動速度である。)が非常に大きくなることにより、接触部の温度も上昇するため、従来の樹脂から成るスラスト部材13は容易に摩耗する。この摩耗によって回転軸8は軸受方向の上方に移動し、永久磁石3の第1の平面部2と固定子巻線5が接触し、モータの回転不良を招くという問題点があった。
【0007】
また、回転軸8とスラスト部材13は、略々点接触である。接触部の摩擦係数を下げることによって発熱を抑えるために、接触部に鉱油、合成油等からなる潤滑剤を適量点滴していた。しかしながら、使用条件により潤滑油が無くなった場合、摩耗が著しく増加するという問題点もあった。
【0008】
本発明は上記した問題点に鑑み、高PV値の条件下で耐摩耗特性に優れた特性を有するスラスト部材を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のスラスト部材は、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸無水物と1,3−フェニレンジアミンとから成るポリイミド樹脂と、黒鉛とを含有したポリイミド樹脂組成物から成形され、圧縮破壊強度が50kg以上であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に基づくスラスト部材は、前記黒鉛の(1)黒鉛化度(p価)が0.25以上であり、平均粒子径が5μm以下であり、固定炭素量が97%以上であるか、または(2)黒鉛化度(p価)が0.25未満である、上記のポリイミド樹脂組成物から成形され、圧縮破壊強度が50kg以上であるスラスト部材である。この場合は回転軸端の支持体として潤滑剤とともに用いられる。
【0011】
さらにまた、本発明に基づくスラスト部材は、前記黒鉛の固定炭素量が97%以上である上記のポリイミド樹脂組成物から成形され、圧縮破壊強度が50kg以上であるスラスト部材である。この場合回転軸端の支持体として潤滑剤なしで用いられる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のスラスト軸受のポリイミド樹脂は、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸無水物と、1,3−フェニレンジアミンとからなるものであり、1g当たりの表面積が15平方メートル以上であることが好ましい。
【0013】
本発明で用いるポリイミド樹脂は、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸無水物と1,3−フェニレンジアミンとを本質的に等モル量で反応させることにより製造することができる。これらの反応体を、これらの反応体のどちらかと感知できる程反応する官能基を有しておらず、かつ約8から10のpHを示す有機溶媒中で一緒にする。最終粒子状生成物で高い表面積を達成するために有機溶媒としては、ジメチルアセトアミドまたはピリジンが好ましい。溶媒は、ジアミンとカルボン酸無水物とのポリマー状反応生成物の濃度がこの溶液の約1から50重量%、好ましくは約1から20重量%となるような量で使用される。次に得られるポリアミド酸を沈殿させると同時に、これを少なくとも部分的にポリイミドに変換するために、非溶媒を用いる。この非溶媒としてはポリイミドの製造で使用される公知の如何なるものも使用することができるが、最終生成物に高い表面積を与えるとともに、優れた機械的強度を提供することができるアセトンを用いることが好ましい。非溶媒は、非溶媒と反応溶媒の全量の少なくとも約40%、好ましくは約60から80%で用いられる。
【0014】
本発明において用いられる黒鉛は、天然黒鉛、人造黒鉛のいずれでもよい。
【0015】
天然黒鉛は、天然に地熱と地下の高圧、および永い時間の間にほぼ完全に黒鉛化したものが地中より産出したものなので、黒鉛化度が高く摺動時の劈開性に優れ、したがって良好な潤滑性を示すものであり、潤滑性に優れている。また、一般的に天然黒鉛は、アスペクト比も大きいことにより、層状平面が摺動面になる。従って、潤滑油が金属表面と層状表面の凝着のみならず、不純物の凝着をも阻止することにより、表面の摩耗は生じにくい。
【0016】
人造黒鉛は、例えばピッチ由来のコークスをタールやピッチで固めて約1200℃で焼成してから黒鉛化炉に入れ、約2300℃の高温で炭素の結晶を成長させたものが好ましい。
【0017】
耐摩耗性に優れ、結晶化処理前後の成形品の収縮率の少ないスラスト部材を得るためには、好ましくは、固定炭素量が97%以上の黒鉛を用いる。ここで黒鉛化成分中の固定炭素とは、石炭試験法の工業分析において、水分、灰分、揮発分を定量して除いた残りの成分であって、炭素を主成分として少量の水素、酸素、窒素を含むものである。
【0018】
また、黒鉛に含有される灰分の量が少ないことにより研磨性が小さくなる。さらに、相手材表面において黒鉛微細粒子の黒鉛の転移層が形成されるため、摺動面においては3元摩耗(相手材とスラスト部材と転移層を形成できない摩耗粉との三者によって生ずる摩耗のこと)の状態が生じにくく、無潤滑時においても研磨性を低下させることができる。したがって、本発明のスラスト部材を、無潤滑で回転軸端の支持体として用いる場合には、固定炭素量は97%以上でなければならない。
【0019】
黒鉛の黒鉛化度(p価)も摺動性に影響を及ぼす。ここでの黒鉛化度(p価)とは、乱層構造の存在する確率であり、黒鉛構造の存在する確率は、(1−p)で表される。具体的には、平行な層面よりなる結晶子からのX線散乱強度の和により炭素の構造モデルを導きだしたFranklinの理論式から求められる。
【0020】
黒鉛の形状は特に限定されるものではないが、好ましくは鱗片状のものである。
【0021】
本発明のスラスト部材を潤滑剤とともに回転軸端の支持体として用いる場合には、後述の実施例に示すとおり、黒鉛の黒鉛化度(p価)が0.25以上であれば、平均粒子径が5μm以下であり、固定炭素量が97%以上でなければならない。また、黒鉛化度(p価)が0.25未満であるならば、平均粒子径および固定炭素量は特に制限されない。
【0022】
回転軸端の支持体として当初は潤滑剤とともに用い、潤滑剤が切れた後にも良好な摺動性を得ることができるスラスト部材は、黒鉛化度(p価)、平均粒径、および固定炭素量と、潤滑または無潤滑との関係より、黒鉛化度(p価)が0.25以上、平均粒子径が5μm以下であり、固定炭素量が97%以上の黒鉛を用いるか、黒鉛化度(p価)が0.25未満、固定炭素量が97%以上の黒鉛を用いることにより提供される。
【0023】
ポリイミド樹脂の粉末と、黒鉛とは、後述の実施例で示すとおりその成形品の圧縮破壊強度が50kg以上であるような配合割合で混合されなければならない。ここでの圧縮破壊強度とは、室温23℃下で、外径2.8mm、厚さ2mmの円柱状試験片に外径方向より1mm/分で圧縮荷重を加える試験において得られる実破壊荷重であり、圧縮破壊強度50kg以上とは、このような試験法により測定された実破壊荷重が50kg以上であることをいう(本明細書中の圧縮破壊強度は同様の定義である)。
【0024】
本発明で用いたポリイミド樹脂組成物は具体的な成形条件により多少異なる強度を提供するため、ポリイミド樹脂粉末と黒鉛との具体的な配合割合によってポリイミド樹脂組成物を特定することはできないが、ポリイミド樹脂と黒鉛との配合割合を、重量に基づき90〜50:10〜50を目安とし、圧縮破壊強度が50kg以上になるように決定する。
【0025】
黒鉛とポリイミド樹脂の粉末とを混合し、金型に充填し、圧縮成形により所望の形状とし、通常130℃から400℃の温度で更に熱硬化させることにより、ポリマーからポリイミドへの実質的に完全な変換を生じさせる。
【0026】
本発明で用いたポリイミド樹脂組成物は、スラスト部材の圧縮破壊強度および摺動性に影響を及ぼさない範囲で、公知の固体潤滑剤、たとえば、フッ素樹脂、炭素繊維、アラミド繊維、無機繊維、球状無機物、雲母、ケイ酸アルミニウム粉、ケイ酸マグネシウム粉、ケイ酸カルシウム粉、窒化ホウ素粉、二硫化モリブデンなどを添加することができる。
【0027】
以下本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0028】
(実施の形態1)
図1において、本発明が従来例のモータと異なる点は、回転軸8をスラスト支持するスラスト部材13に、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸無水物と1,3−フェニレンジアミンとから成るポリイミド樹脂と、黒鉛とを含有し、その圧縮強度が50kg以上であるポリイミド樹脂組成物から成形したスラスト部材を用いたことにある。
【0029】
(実施例1〜5、比較例1〜3)
3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸無水物と1,3−フェニレンジアミンとから成るポリイミド樹脂70重量%と、p価0.24、固定炭素量97%、平均粒径3〜5μmの燐片状の黒鉛を30重量%とを混合し、その混合物を金型に充填し、圧縮面圧40,000psi以上で圧縮し、350℃以上の温度にて焼成し、実破壊荷重が50kg以上のスラスト部材を成形した。得られたスラスト部材を用いて、回転軸8の先端凸部8aとスラスト部材13との接触部に、鉱油、合成油等からなる潤滑剤を点滴し、摩耗試験を実施した。摩耗試験においては、スラスト部材13に、ステンレス鋼からなる回転軸8の先端凸部8a(先端シャフトR径3.5mm)を通じて永久磁石3の吸引力(1.75kg)を付加し、回転軸8の回転数を2500rpmとし、1000時間経過後に摩耗量を測定した。これを実施例1とした。
【0030】
p価0.24、固定炭素量89%、平均粒径3〜5μmの燐片状の黒鉛を用いた以外は実施例1と同様にスラスト部材を成形し、同一条件下で摩耗試験を実施した。これを実施例2とした。
【0031】
実施例1と同一のスラスト部材を用いて、無潤滑である以外は、実施例1と同様に摩耗試験を行った。これを実施例3とした。
【0032】
実施例2と同一のスラスト部材を用いて、無潤滑である以外は、実施例1と同様に摩耗試験を行った。これを実施例4とした。
【0033】
p価0.26、固定炭素量97%、平均粒径3〜5μmの燐片状の黒鉛を用いた以外は実施例1と同様にスラスト部材を成形し、無潤滑である以外は、実施例1と同様に摩耗試験を行った。これを実施例5とした。
【0034】
次に、ピロメリット酸と4,4′−ジアミノジフェニルエーテルの重縮合物であるポリイミド樹脂85重量%と、実施例1で用いたものと同一の黒鉛15重量%とを混合し、その混合物を金型に充填し、圧縮面圧40,000psi以上で圧縮し、350℃以上の温度で焼成し、スラスト部材を成形した。実施例1と同様に摩耗試験を行った。これを比較例1とした。
【0035】
また、ポリフェニレンサルファイドに炭素繊維を充填した材料で、スラスト部材を成形した。実施例1と同様に摩耗試験を行った。これを比較例2とした。
【0036】
さらに、比較例2と同一のスラスト部材を用いて、無潤滑である以外は、実施例1と同様に摩耗試験を行った。これを比較例3とした。
【0037】
摩耗量の測定結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
ここで、測定不可とは、スラスト部材が摩滅するか、または原形をとどめない程摩耗してしまい、摩耗量を測定することができないことをいう(以下、同様の定義である)。
【0040】
実施例1と比較例1とを比較すると、ピロメリット酸と4,4′−ジアミノジフェニールエーテルの重縮合物であるポリイミド樹脂に対して、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸無水物と1,3−フェニレンジアミンとから成るポリイミド樹脂を用いる方が耐摩耗性に優れていることがわかる。
【0041】
また、実施例1と比較例2とを比較すると、本発明のスラスト部材は、ポリフェニレンサルファイドに炭素繊維を充填した材料からなるスラスト部材と摩耗量が同等であることがわかる。実施例1と同一のスラスト部材を無潤滑で用いた実施例3と、比較例2と同一のスラスト部材を無潤滑で用いた比較例3とを比較すると、無潤滑では、本発明のスラスト部材の耐摩耗性が非常に優れていることがわかる。
【0042】
さらに、実施例1と実施例2とを比較すると、潤滑剤とともに用いる場合は、p価が0.25未満であり、平均粒径が5μm以下の黒鉛を用いた場合には、固定炭素量に関係なく耐摩耗性に優れることがわかる。実施例1と実施例3とを比較すると、p価が0.25未満であり、平均粒径が5μm以下、固定炭素量が97%以上であれば、潤滑剤とともに用いても、無潤滑で用いても耐摩耗性は同等であることがわかる。実施例2と実施例4とを比較すると、p価が0.25未満であり、平均粒径が5μm以下であり、固定炭素量が97%より少ない場合には、潤滑剤とともに用いた方がよいことがわかる。実施例3と実施例4とを比較すると、p価が0.25未満であり、平均粒径が5μm以下の黒鉛であれば、無潤滑で使用する場合には、固定炭素量が高い方がよいことがわかる。実施例3と実施例5とを比較すると、平均粒径5μm以下で、固定炭素量が97%以上であれば、無潤滑で用いる場合にはp価の値に影響されることなく耐摩耗性に優れることがわかる。
【0043】
(実施例6〜9、比較例4〜6)
3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸無水物と1,3−フェニレンジアミンとから成るポリイミド樹脂70重量%と、p価0.24、固定炭素量97%以上、平均粒径3〜5μmの燐片状の黒鉛30重量%とを混合し、その混合物を金型に充填し、圧縮面圧40,000psi以上で圧縮し、350℃以上の温度にて焼成し、実施例6から実施例9、および比較例4から比較例6までのそれぞれ実破壊荷重が異なるスラスト部材を成形した。摩耗試験は、回転軸8の先端凸部8aとスラスト部材13との接触部に、鉱油、合成油等からなる潤滑剤を点滴し、スラスト部材13に、ステンレス鋼からなる回転軸8の先端凸部8a(先端シャフトR径3.5mm)を通じて永久磁石3の吸引力(2.0kg)を付加し、回転軸8の回転数を3000rpmとして、100時間行った。100時間経過後の結果を表2に示す。
【0044】
さらに、摩耗試験を行った後、室温23℃のもとで、試験片に外径方向より1mm/分で圧縮荷重を加え、実破壊荷重を測定した。その結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
表2より、実破壊荷重が50kg以上である場合と50kg未満である場合とでの摩耗量に著しい差で生じることがわかる。
【0047】
(実施の形態2)
(実施例10〜13、比較例7)
3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸無水物と1,3−フェニレンジアミンとから成るポリイミド樹脂70重量%と、p価0.24、平均粒子径3〜5μm、固定炭素量97%の黒鉛30重量%とを混合し、その混合物を金型に充填し、圧縮面圧40,000psi以上で圧縮し、350℃以上の温度にて焼成し、実破壊荷重50kg以上のスラスト部材を成形した。得られたスラスト部材を用いて、回転軸8の先端凸部8aとスラスト部材13との接触部に、鉱油、合成油等からなる潤滑剤を点滴し、スラスト部材13に、ステンレス鋼からなる回転軸8の先端凸部8a(先端シャフトR径3.5mm)を通じて永久磁石3の吸引力(1.5kg)を付加し、回転軸8の回転数を2500rpmとして、摩耗試験を実施した。300時間経過後に摩耗量を測定した。これを実施例10とした。
【0048】
実施例10の黒鉛に代えて、p価0.24、平均粒子径7〜10μm、固定炭素量97%の黒鉛を用いた以外は実施例10と同様にスラスト部材を成形し、摩耗試験を行った。これを実施例11とした。
【0049】
実施例10の黒鉛に代えて、p価0.24、平均粒子径7〜10μm、固定炭素量89%の黒鉛を用いた以外は実施例10と同様にスラスト部材を成形し、摩耗試験を行った。これを実施例12とした。
【0050】
実施例10の黒鉛に代えて、p価0.26、平均粒子径3μm、固定炭素量99%の黒鉛を用いた以外は実施例10と同様にスラスト部材を成形し、摩耗試験を行った。これを実施例13とした。
【0051】
実施例10の黒鉛に代えて、p価0.26、平均粒子径10μm、固定炭素量99%の黒鉛を用いた以外は実施例10と同様にスラスト部材を成形し、摩耗試験を行った。これを比較例7とした。
【0052】
結果を表3に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
実施例10と実施例11とを比較すると、潤滑剤とともに用いる場合には、p価が0.25未満であり、固定炭素量が97%以上であれば、平均粒径に関係なく耐摩耗性に優れることがわかる。実施例11と実施例12とを比較すると、潤滑剤とともに用いる場合には、p価が0.25未満であり、平均粒径が7〜10μmであれば、固定炭素量に関係なく耐摩耗性に優れることがわかる。実施例2と実施例10〜12とから、潤滑剤とともに用いる場合には、p価が0.25未満であれば、平均粒径および固定炭素量に関係なく優れた耐摩耗性が得られることがわかる。
【0055】
実施例10と実施例13とを比較すると、潤滑剤とともに用いる場合には、平均粒径が5μm以下であり、固定炭素量が97%以上であれば、p価に関係なく耐摩耗性に優れることがわかる。
【0056】
実施例13と比較例7とを比較すると、潤滑剤とともに用いる場合には、p価が0.25以上で、固定炭素量が97%以上であれば、粒径が小さい方が耐摩耗性に優れることがわかる。
【0057】
(実施の形態3)
(実施例14〜19)
3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸無水物と1,3−フェニレンジアミンとから成るポリイミド樹脂70重量%と、p価0.24、固定炭素量97%、平均粒径3〜5μmの黒鉛30重量%とを混合し、その混合物を金型に充填し、圧縮面圧40,000psi以上で圧縮し、350℃以上の温度にて焼成し、実破壊荷重が50kg以上のスラスト部材を成形した。得られたスラスト部材を用いて、無潤滑で、摩耗試験を実施した。摩耗試験においては、スラスト部材13に、ステンレス鋼からなる回転軸8の先端凸部8a(先端シャフトR径3.5mm)を通じて永久磁石3の吸引力(1.75kg)を付加し、回転軸8の回転数を2500rpmとし、300時間経過後の摩耗量を測定した。これを実施例14とした。
【0058】
実施例14の黒鉛に代えて、平均粒子径7〜10μmの黒鉛を用いた以外は実施例14と同様にスラスト部材を成形し、摩耗試験を行った。これを実施例15とした。
【0059】
実施例14の黒鉛に代えて、p価0.26、平均粒子径3μm、固定炭素量99%の黒鉛を用いた以外は実施例14と同様にスラスト部材を成形し、摩耗試験を行った。これを実施例16とした。
【0060】
実施例14の黒鉛に代えて、p価0.26、平均粒子径10μm、固定炭素量99%の黒鉛を用いた以外は実施例14と同様にスラスト部材を成形し、摩耗試験を行った。これを実施例17とした。
【0061】
実施例14の黒鉛に代えて、p価0.26、平均粒子径38μm、固定炭素量99%の黒鉛を用いた以外は実施例14と同様にスラスト部材を成形し、摩耗試験を行った。これを実施例18とした。
【0062】
実施例14の黒鉛に代えて、p価0.26、平均粒子径54μm、固定炭素量99%の黒鉛を用いた以外は実施例14と同様にスラスト部材を成形し、摩耗試験を行った。これを実施例19とした。
【0063】
測定結果を表4に示す。
【0064】
【表4】
【0065】
実施例14および実施例15から、無潤滑で用いる場合には、p価が0.25未満であり、固定炭素量が97%以上であれば、平均粒径に関係なく、優れた耐摩耗性が得られることがわかる。実施例17〜19より、無潤滑で用いる場合には、p価が0.25以上であり、固定炭素量が97%以上であれば、平均粒径に関係なく、優れた耐摩耗性が得られることがわかる。実施例14と実施例16とを比較すると、無潤滑で用いる場合には、平均粒径が5μm以下であり、固定炭素量が97%以上であれば、p価に関係なく、優れた耐摩耗性が得られることがわかる。実施例16と実施例17とを比較すると、無潤滑で用いる場合には、p価が0.25以上であり、固定炭素量が97%以上であれば、平均粒径に関係なく、優れた耐摩耗性が得られることがわかる。以上の考察より、無潤滑で使用する場合には、固定炭素量が97%以上であれば、平均粒径およびp価に関係なく優れた耐摩耗性が得られることがわかる。
【0066】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸無水物と1,3−フェニレンジアミンとから成るポリイミド樹脂と、黒鉛とを含有したポリイミド樹脂組成物から成形し、圧縮破壊強度が50kg以上である組成物をスラスト部材として用いることにより、高PV値の条件下でも耐摩耗性に優れた特性を有するスラスト部材を提供することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】回転体の回転軸端を支持するスラスト部材を用いたモータの側断面図である。
【符号の説明】
1 ピンチローラ
2 第1の平面
3 永久磁石
4 固定子平板
5 固定巻線
6 バックヨーク
7 第2の平面部
8 回転軸
8a 回転軸端部
9 ボス
10 軸受ハウジング
11 下部軸受
12 上部軸受
13 スラスト部材
13a スラスト部材13の平坦面
14 スラスト保持部材
Claims (6)
- 回転軸端を支持するスラスト部材において、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸無水物と1,3−フェニレンジアミンとから成るポリイミド樹脂と、黒鉛とを含有したポリイミド樹脂組成物から成形され、圧縮破壊強度が50kg以上であることを特徴とするスラスト部材。
- 回転軸を支持するスラスト部材において、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸無水物と1、3−フェニレンジアミンとから成るポリイミド樹脂と、固定炭素量が97%以上である黒鉛とを含有したポリイミド樹脂組成物から成形され、圧縮破壊強度が50kg以上であることを特徴とするスラスト部材。
- 回転軸を支持するスラスト部材において、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸無水物と1、3−フェニレンジアミンとから成るポリイミド樹脂と、黒鉛化度が0.25未満である黒鉛とを含有したポリイミド樹脂組成物から成形され、圧縮破壊強度が50kg以上であることを特徴とするスラスト部材。
- 回転軸を支持するスラスト部材において、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸無水物と1、3−フェニレンジアミンとから成るポリイミド樹脂と、黒鉛化度が0.25以上、平均粒子径が5μm以下、および固定炭素量が97%以上である黒鉛とを含有したポリイミド樹脂組成物から成形され、圧縮破壊強度が50kg以上であることを特徴とするスラスト部材。
- 潤滑剤を使用しないことを特徴とする請求項2に記載のスラスト部材の使用方法。
- 潤滑剤とともに用いることを特徴とする請求項3または4に記載のスラスト部材の使用方法。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP04980198A JP3649896B2 (ja) | 1998-03-02 | 1998-03-02 | スラスト部材およびその使用方法 |
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|---|---|---|---|
| JP04980198A JP3649896B2 (ja) | 1998-03-02 | 1998-03-02 | スラスト部材およびその使用方法 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
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