JP3649398B2 - 波形処理方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、波形処理方法および装置に関し、例えば電子楽器などの楽音を発生する装置に適用する楽音波形の分析・合成技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、楽音信号を生成するための、いわゆる波形メモリ音源が知られている。波形メモリ音源では、楽音発生指示に応じて波形メモリから所定の波形データを読み出すことにより楽音信号を生成し出力する。波形メモリから読み出した波形データの音色はディジタルフィルタなどを用いて調整することができる。
【0003】
また、波形メモリ音源には、自然楽器の楽音を入力して波形データを波形メモリに記録し、その波形データを読み出して楽音生成するものが知られている。例えば、特開2001−265350に記載の楽音信号分析・合成方法では、入力した楽音波形を分析して時間軸上で連続している周波数成分(決定論的周波数成分)を分離し、この決定論的周波数成分のみに基づいて決定論的波形データを生成し、原波形データから決定論的波形データを減算してノイズ成分を取り出し、このノイズ成分からノイズ成分波形データを作成する。決定論的波形データからは、アタック部およびループ部の波形データ(周期成分波形データ)を作成する。楽音合成時には、この周期成分波形データとノイズ成分波形データを用いて楽音を合成・出力する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述のディジタルフィルタなどを用いて音色を調整する方法では、所望の音色を得るのに不十分な場合がある。例えば、ピアノ波形などで、中域が速く減衰しすぎてやせて聞こえる場合にその減衰を遅らせたい場合があるが、ディジタルフィルタだけではそのような調整はできない。
【0005】
また、特開2001−265350に記載の方法では、自然なノイズ成分の付与は可能だが、記録した波形データを加工できるわけではないので、所望の通りの音色に調整することはできない。
【0006】
この発明は、上述の従来技術における問題点に鑑み、ユーザが微妙なニュアンスも含めて音色を所望の通りに調整することができるような波形処理方法および装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、原波形データを入力するステップと、入力した原波形データを周波数分析することにより、該原波形データの有する複数の周波数成分の各成分ごとの位相変化データまたは周波数変化データと振幅変化データとを取得するステップと、ユーザの操作に応じて、前記複数の周波数成分のうちの1ないし複数を指定する成分指定データ、処理すべき振幅データの範囲を指定する範囲指定データ、および時間軸方向の伸縮を制御する伸縮制御データを入力するステップと、前記複数の周波数成分のうちの前記成分指定データにより指定された成分の位相変化データまたは周波数変化データと振幅変化データから、前記範囲指定データの指定する範囲を処理対象範囲として抽出するステップと、抽出された処理対象範囲の位相変化データまたは周波数変化データと振幅変化データとを、それぞれ、前記伸縮制御データに基づいて伸縮して出力するとともに、該処理対象範囲外の位相データまたは周波数変化データと振幅変化データについては伸縮せずに出力する波形処理ステップと、前記波形処理ステップから出力された複数の周波数成分の位相変化データまたは周波数変化データと振幅変化データとから、新たな波形データを合成する波形合成ステップとを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、原波形データを入力する手段と、入力した原波形データを周波数分析することにより、該原波形データの有する複数の周波数成分の各成分ごとの位相変化データまたは周波数変化データと振幅変化データとを取得する手段と、ユーザの操作に応じて、前記複数の周波数成分のうちの1ないし複数を指定する成分指定データ、処理すべき振幅データの範囲を指定する範囲指定データ、および時間軸方向の伸縮を制御する伸縮制御データを入力する手段と、前記複数の周波数成分のうちの前記成分指定データにより指定された成分の位相変化データまたは周波数変化データと振幅変化データから、前記範囲指定データの指定する範囲を処理対象範囲として抽出する手段と、抽出された処理対象範囲の位相変化データまたは周波数変化データと振幅変化データとを、それぞれ、前記伸縮制御データに基づいて伸縮して出力するとともに、該処理対象範囲外の位相データまたは周波数変化データと振幅変化データについては伸縮せずに出力する波形処理手段と、前記波形処理手段から出力された複数の周波数成分の位相変化データまたは周波数変化データと振幅変化データとから、新たな波形データを合成する波形合成手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いてこの発明の実施の形態を説明する。
【0010】
図1は、この発明の実施の形態に係る波形分析・合成システムの全体構成を示す。このシステムは、中央処理装置(CPU)101、リードオンリメモリ(ROM)102、ランダムアクセスメモリ(RAM)103、ドライブ装置104、MIDIインターフェース106、パネルスイッチ107、パネル表示器108、書込回路111、アクセス管理部112、波形メモリ113、音源114、サウンドシステム115、およびバスライン120を備える。
【0011】
CPU101は、このシステムの全体の動作を制御する処理装置である。ROM102は、CPU101が実行する各種の制御プログラムおよび定数データなどを格納した不揮発性メモリである。RAM103は、CPU101が実行するプログラムのロード領域やワーク領域に使用する揮発性メモリである。ドライブ装置104は、CD−ROMあるいはハードディスク(HD)などの外部記憶装置を接続する装置である。MIDIインターフェース106は、外部のMIDI機器と接続するためのインターフェースである。パネルスイッチ107は、このシステムの外部パネル上に設けられた各種の操作子である。パネル表示器108は、このシステムの外部パネル上に設けられた各種の情報を表示するためのディスプレイである。
【0012】
書込回路111は、外部から入力した波形データを波形メモリ113に書き込む処理を行なう回路である。アクセス管理部112は、書込回路111、CPU101、および音源114からの波形メモリ113に対するアクセス要求を調停する制御を行なう。波形メモリ113は、外部から入力した波形データを記憶する記憶装置である。音源114は、CPU101の指示に応じて波形メモリ113にアクセスし所定の波形データを読み出して楽音信号を生成する。サウンドシステム115は、音源114から出力される楽音信号に基づいて放音する。
【0013】
図1のシステムは、鍵盤などを備えた電子楽器として構成してもよいし、汎用のパーソナルコンピュータに音源ボードなどを接続して構成することもできる。
【0014】
図1のシステムにおいて、パネルスイッチ107は、録音スイッチ、分析スイッチ、編集スイッチ、および演奏スイッチなどを含む。ユーザは、これらのスイッチを操作することで、以下のような処理を行なうことができる。
【0015】
図2は、図1のシステムにおける操作の手順の概要を示す。ステップ201で、波形データを用意する。これは、ユーザが録音スイッチなどを操作して指示を与えることにより、外部から入力した楽音の波形データを、書込回路111およびアクセス管理部112によって波形メモリ113に記録する処理である。ステップ202で、記録した波形データを分析する。これは、分析スイッチなどを操作することにより、当該波形データを周波数分析する処理である。ステップ203で、分析結果に基づいて音源波形を合成する。これは、編集スイッチなどを操作することにより、分析結果を編集し、音源波形を合成して再び波形メモリに書き込む処理である。次にステップ204で、合成した音源波形を使用して演奏を行なう。これは、演奏スイッチなどを操作することにより、該音源波形を選択し、入力するMIDIデータなどに基づいて該音源波形を使用した楽音を生成して放音する処理である。
【0016】
図3は、図1のシステムによる波形データ合成までの流れを示す。これは図2のステップ202および203におけるシステムの処理の流れを示す図である。301は、ステップ201で波形メモリ113に記録された波形データを示す。306は、合成された新波形データを示す。周波数分析部302、加工処理部303、ユーザ指示入力部304、および波形合成部305は、図1のROM102あるいはRAM103上の所定のプログラムをCPU101が実行することで実現している。
【0017】
周波数分析部302は、原波形データ301を入力して、周波数分析を行なう。この周波数分析は、原波形データ301に対して、その基音のピッチ周期のほぼ8倍程度の長さの窓関数を用いてFFT解析を行なうことにより周波数成分を解析するものである。窓関数の位置を時間軸上で少しずつシフトしながら同様の周波数成分の解析を繰り返す。これにより、原波形データ301全体に対して時間軸上の周波数成分の変化が得られる。このようにして得られた一連の周波数成分は、時間軸上で連続している成分(決定論的周波数成分)と、それ以外の切れ切れの成分とに分類される。これらの周波数成分のうち決定論的周波数成分のみに基づいて作成した決定論的波形データ(STF成分)は加工処理部303に入力する。決定論的周波数成分以外の切れ切れの成分に基づく波形データはResidual成分(残留波形)として波形合成部305に入力する。なお、実際の処理では、Residual成分(残留波形)は、原波形データ301から上述の決定論的波形データを減算した残余波形から作成する。加工処理部303に入力するSTF成分の波形データは、時間軸上で連続している周波数成分であるから、基音、2倍音、3倍音、…というように基音と各倍音のデータに分かれている。
【0018】
図8は、自然楽器のピアノの楽音を周波数分析部302で分析して取得した分析例を示す。基音と各倍音についての振幅変化データ、すなわち基音と各倍音のエンベロープが得られている。それぞれの倍音のエンベロープのグラフにおいて縦軸は振幅の強さを表す。なお、周波数分析部302から加工処理部303に入力するのは、図8のような振幅変化データのほか、位相変化データ(周波数変化データと見ることもできる)がある。位相変化データも、基音と各倍音のそれぞれの位相変化データからなる。
【0019】
図3に戻って、加工処理部303は、入力したSTF成分の波形データをユーザ指示に応じて加工する処理を行なう。ユーザ指示入力部304は、ユーザの指示を入力し加工処理部303に渡す。特に、この実施形態の加工処理では、周波数成分ごとに振幅変化データと位相変化データの加工を行なうことができる。これにより、例えば「高い倍音ほど早く減衰するような波形にしたい」というような要求にも応えることができ、微妙な音色の調整を行なえる。加工処理部303とユーザ指示入力部304については、図4で詳述する。
【0020】
波形合成部305は、加工処理部303から入力した加工処理後のSTF成分の波形データと周波数分析部302から入力したResidual成分の波形データを合成し、新波形データ306を生成する。この合成処理は、加工処理を経た周波数成分ごとの振幅変化データと位相変化データを合成して、演奏時に利用できる形式の波形データとする処理である。新波形データ306は、再び波形メモリに格納され、演奏時にはユーザの指示に応じて読み出され楽音生成に利用される。なお、新波形データ306の形式は、演奏時に利用できるものであればどのようなものでもよい。例えば、STF成分の波形データとResidual成分の波形データとを別データとして波形メモリに保持しておき、演奏時に混合してもよい。
【0021】
図4に、ユーザ指示入力部304と加工処理部303の詳細な構成を示す。ユーザ指示入力部304は、処理範囲指定部401および伸縮指定部402を備える。加工処理部303は、処理範囲検出部411、振幅変化データ伸縮部412、位相変化データ伸縮部413を備える。
【0022】
処理範囲指定部401は、加工処理部303に入力したSTF成分の波形データのうち、基音あるいはどの倍音成分の加工を行なうかの指定、およびその成分のどの範囲を加工するかの指定を行なう。伸縮指定部402は、処理範囲指定部401で指定した処理範囲に対しどの程度の伸縮を行なうかその伸縮比を指定する。
【0023】
これらの指定部401,402による指定の仕方は任意の方式でよい。例えば、加工制御する対象の基音あるいは倍音成分の指定は、▲1▼3倍音上といった倍音番号で指定する方法、▲2▼この時間に消えてしまっている倍音といった時間で指定する方法などがある。また、処理範囲(時間的な範囲または位置の範囲)の指定は、▲1▼時間で指定する方法(図9で後述)、▲2▼レベルで指定する方法(図10で後述)、▲3▼アタックの最大値から倍音が消えるまでというように指定する方法(図11で後述)などがある。また、これらを指定する際のユーザインターフェースも任意である。処理範囲の指定では、(本システムがマウスなどのポインティングデバイスを備えているのであれば)波形を表示し、マウスなどで処理範囲を指定するようにしてもよい。
【0024】
処理範囲検出部411は、入力したSTF成分の波形データのうちから処理範囲指定部401で指定された成分の指定された処理範囲を検出する。振幅変化データ伸縮部412は、入力したSTF成分の波形データのうち振幅変化データを入力し、処理範囲検出部411で検出された処理範囲に対し、伸縮指定部402で指定された伸縮比の伸縮加工を実行する。位相変化データ伸縮部413は、入力したSTF成分の波形データのうち位相変化データを入力し、処理範囲検出部411で検出された処理範囲に対し、伸縮指定部402で指定された伸縮比の伸縮処理を実行する。振幅変化データ伸縮部412および位相変化データ伸縮部413の出力は、加工後の波形データを示すものとして波形合成部305に入力する。
【0025】
次に、加工処理部303およびユーザ指示入力部304による加工処理の具体例を説明する。
【0026】
図9は、処理対象の範囲を時間の範囲で指定する例を示す。901は、加工処理を行なう対象としてユーザが指定した周波数成分の波形データ(例えば3倍音の波形データ)を示す。この波形データ901に対し、時間位置911から912というように時間で処理範囲を指定できる。さらに、この処理範囲913に対して、伸縮指定部402で伸縮比が指定される。
【0027】
図10は、処理対象の範囲をレベルの範囲で指定する例を示す。1001は、加工処理を行なう対象としてユーザが指定した周波数成分の波形データを示す。この波形データ1001に対し、レベル位置1011から1012というようにレベルの範囲で処理範囲を指定できる。さらに、この処理範囲1013に対して、伸縮指定部402で伸縮比が指定される。
【0028】
図11は、処理対象の範囲をアタック最大値からこの倍音成分が消えるまでというように指定する例を示す。1101は、加工処理を行なう対象としてユーザが指定した周波数成分の波形データを示す。この波形データ1101に対し、アタック最大値の位置は1111である。また、レベルが0(あるいは所定値以下になった位置でもよい)になる位置は1112である。これにより処理範囲1113が指定できる。さらに、この処理範囲1113に対して、伸縮指定部402で伸縮比が指定される。
【0029】
図12〜図14は、図9のように処理範囲を指定した後、加工処理を行なった結果の例を示す。これらの図において、図9と同じ番号は同じものを示す。
【0030】
図12は、指定された処理範囲913内をリサンプリングすることにより伸縮した例である。1203は処理範囲913を伸長する範囲を示し、1201はその終端位置を示す。原波形901のうち処理範囲913の部分1204は、伸長範囲1203まで伸長され、結果として太線で示す波形1205のようになる。
【0031】
図5は、加工処理部303の振幅変化データ伸縮部412による処理例を示し、特に図12のようなリサンプリングにより伸縮する処理例を示す。501は振幅変化データのサンプル間隔を伸縮する処理である。これにより図12の処理範囲913内の原波形データ1204の各サンプルの間隔が伸長され、全体の長さが範囲1203に伸長される。502はサンプル間隔を伸長した各サンプルを一定間隔でリサンプリング(補間処理)する処理である。このような補間処理を行なうことにより、図12の原波形1204が加工後波形1205のように伸長される。
【0032】
図13は、伸縮処理を行なった後、所定のオフセットを加算した例を示す。図12のように伸長を行なった後、オフセット分1305を加算し波形データ1306のような結果を得ている。
【0033】
図14は、さらにディケイを付与した例を示す。加算するオフセット分1405は、ディケイ部が付与できるように途中から減衰する曲線としている。これにより、加工後波形1406にはディケイ部が付与されている。
【0034】
図6は、ディケイ付与の処理例を示す。図14では、ディケイが付与できるような変化カーブを持つオフセット1405を加算することによりディケイを付与したが、図6のようにディケイ付与部603を設けてもよい。オフセット発生部602により発生したオフセットが加算器601で入力波形に加算され、その後ディケイ付与部603でディケイ部が付与され、図14の1406に示すようなディケイが付与された加工後波形を得る。
【0035】
図15は、図4の位相変化データ伸縮部413による位相の伸縮の例を示す。1501は、原波形データ301を分析した結果、ある周波数成分における波形の位相変化データを示す。この位相変化データ1501は、原波形の時間長さに応じた時間位置1512までのデータである。周波数分析部302におけるFFT分析は基本波のほぼ8周期ほどの長さの時間窓関数を用いて行なうので、原波形にビブラートなどの周波数の変化が含まれる場合は、その周波数の変化が「ゆらぎ」として検出される。そのため、位相変化データ1501のようにグラフには「ゆらぎ」が現れている。
【0036】
いま、図9や図12で説明したように、指定した周波数成分の指定した処理範囲の波形を時間軸方向に伸長するとする。このとき、その処理範囲の波形の位相変化データが図15の1501であるとする。この位相変化データ1501は、時間位置1512までしかないので、この波形を伸長する場合には、位相変化データについても伸長した時間位置まで伸長する必要がある。太線1522は、処理対象の範囲である時間位置1511から1512までの位相変化データを、時間位置1513まで、伸長したデータを示す。
【0037】
図7に、リサンプリングによる位相の伸縮の手順の例を示す。ステップ701では、元の処理対象範囲の位相変化データ(図15の位置1511から1512の範囲の位相変化データ1501)を微分する。これは周波数に変換することに相当する。次にステップ702で、ステップ701で求めた周波数データをリサンプリングにより補間して目的の長さ(図15の位置1513までの長さ)に伸長する。次にステップ703で、元の位相の基点(図15の1521)からリサンプルした周波数で積分する。ステップ704で、伸長した位相変化データ(図15の1522)を得る。
【0038】
図16は、位相変化データの伸縮の別の例を示す。位相変化データ1601が、位置1602までしかない場合、その直前の所定範囲の位相変化データの傾きを求め、それを延長することにより位置1602以降の位相変化データを作成する。原点から位置1602までの位相変化データ1601の傾きの平均で延長してもよい。
【0039】
図17は、ピアノの4倍音のエンベロープをアタックの最大値から倍音が消えるまでの範囲を処理範囲として指定し、伸長した例である。1701が原波形、1702が伸長した波形である。図18は、これにディケイ部を付加したものである。1801が原波形、1802が付与したいディケイ部の基準となるカーブである。このディケイ部のカーブ1802にしたがって、伸長したエンベロープを補正した結果が波形1803である。
【0040】
上記実施の形態によれば、記録した楽音波形の周波数成分ごとに、処理範囲を指定して時間軸方向に伸縮する加工を行なうことができるので、微妙な音色の調整を行なうことができる。例えば、ピアノなどの自然楽器の楽音から記録した波形データについて複数の倍音を同じように伸長すると不自然なことが多い。これに対し、高い倍音ほど早く減衰するように加工してやると自然な楽音が得られる。上記実施形態のシステムによれば、倍音の番号に応じて、あるいは周波数が高ければ高いほど、伸長の割合を小さくするように加工することができる。
【0041】
また、エンベロープを時間軸方向に伸長するとそのディケイが長くなり、それが不自然な場合もある。上記実施形態のシステムでは、ディケイ部を付与することもできるので、ある減衰にしたがって伸長したのち、ディケイ部を付与して、自然な楽音になるようにできる。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、記録した楽音波形の周波数成分を指定し、その処理範囲を指定して時間軸方向に伸縮する加工を行なうようにしているので、任意の周波数成分の任意の範囲の時間軸方向に波形を伸縮することができる。これにより、ユーザは、微妙なニュアンスも含めて音色を所望の通りに調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態に係る波形分析・合成システムの全体構成図
【図2】図1のシステムにおける操作の手順の概要図
【図3】波形データ合成までの流れを示す図
【図4】ユーザ指示入力部と加工処理部の詳細な構成図
【図5】リサンプリングにより伸縮する処理例を示す図
【図6】ディケイ付与の処理例を示す図
【図7】リサンプリングによる位相の伸縮の手順の例を示す図
【図8】自然楽器のピアノの楽音を周波数分析部で分析して取得した分析例を示す図
【図9】処理対象の範囲を時間の範囲で指定する例を示す図
【図10】処理対象の範囲をレベルの範囲で指定する例を示す図
【図11】処理対象の範囲をアタック最大値からこの倍音成分が消えるまでというように指定する例を示す図
【図12】指定された処理範囲内をリサンプリングすることにより伸縮した例を示す図
【図13】伸縮処理を行なった後、所定のオフセットを加算した例を示す図
【図14】ディケイを付与した例を示す図
【図15】位相変化データ伸縮部による位相の伸縮の例を示す図
【図16】位相変化データの伸縮の別の例を示す図
【図17】ピアノの4倍音のエンベロープをアタックの最大値から倍音が消えるまでの範囲を処理範囲として指定し伸長した例を示す図
【図18】ディケイ部を付加した例を示す図
【符号の説明】
101…中央処理装置(CPU)、102…リードオンリメモリ(ROM)、103…ランダムアクセスメモリ(RAM)、104…ドライブ装置、106…MIDIインターフェース、107…パネルスイッチ、108…パネル表示器、111…書込回路、112…アクセス管理部、113…波形メモリ、114…音源、115…サウンドシステム、120…バスライン。
Claims (2)
- 原波形データを入力するステップと、
入力した原波形データを周波数分析することにより、該原波形データの有する複数の周波数成分の各成分ごとの位相変化データまたは周波数変化データと振幅変化データとを取得するステップと、
ユーザの操作に応じて、前記複数の周波数成分のうちの1ないし複数を指定する成分指定データ、処理すべき振幅データの範囲を指定する範囲指定データ、および時間軸方向の伸縮を制御する伸縮制御データを入力するステップと、
前記複数の周波数成分のうちの前記成分指定データにより指定された成分の位相変化データまたは周波数変化データと振幅変化データから、前記範囲指定データの指定する範囲を処理対象範囲として抽出するステップと、
抽出された処理対象範囲の位相変化データまたは周波数変化データと振幅変化データとを、それぞれ、前記伸縮制御データに基づいて伸縮して出力するとともに、該処理対象範囲外の位相データまたは周波数変化データと振幅変化データについては伸縮せずに出力する波形処理ステップと、
前記波形処理ステップから出力された複数の周波数成分の位相変化データまたは周波数変化データと振幅変化データとから、新たな波形データを合成する波形合成ステップと
を備えたことを特徴とする波形処理方法。 - 原波形データを入力する手段と、
入力した原波形データを周波数分析することにより、該原波形データの有する複数の周波数成分の各成分ごとの位相変化データまたは周波数変化データと振幅変化データとを取得する手段と、
ユーザの操作に応じて、前記複数の周波数成分のうちの1ないし複数を指定する成分指定データ、処理すべき振幅データの範囲を指定する範囲指定データ、および時間軸方向の伸縮を制御する伸縮制御データを入力する手段と、
前記複数の周波数成分のうちの前記成分指定データにより指定された成分の位相変化データまたは周波数変化データと振幅変化データから、前記範囲指定データの指定する範囲を処理対象範囲として抽出する手段と、
抽出された処理対象範囲の位相変化データまたは周波数変化データと振幅変化データとを、それぞれ、前記伸縮制御データに基づいて伸縮して出力するとともに、該処理対象範囲外の位相データまたは周波数変化データと振幅変化データについては伸縮せずに出力する波形処理手段と、
前記波形処理手段から出力された複数の周波数成分の位相変化データまたは周波数変化データと振幅変化データとから、新たな波形データを合成する波形合成手段と
を備えたことを特徴とする波形処理装置。
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