JP3648620B2 - せん孔針のめっき方法及びその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、せん孔針のめっき方法及びその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、機械器具などの小さい部品の量産的な金属片のめっきは、図1に示すように、水平型バレルめっき装置(以下、バレルめっきと呼ぶ)を使用するのが一般的である。この装置は、めっき槽Bにめっき液Cを入れ、めっき液Cに浸積させたバレルD内に多数の金属片Aを投入し、回転させながら陽極のアノードEからバレルD内の陰極となる通電バーFに接する金属片Aに通電され、メッキが行われる。
【0003】
この時、図2に示すように、バレルD内の回転に伴い、金属片Aの挙動は、バレルD内の上方に運ばれ、ある位置から下降に転じ、一定のすべり層を成して動く間に金属片A同士が共摺りされ滑り落ち、その間に表層部分Iでめっきされる。また、表層部分Iの下降状態は、金属片AがバレルD内の回転中に、順序よく転倒しながら滑り落ちるように移動し、それを繰り返すことにより、金属片Aの表面にめっきを施し、硬度の向上や錆の防止を付与している。
【0004】
しかし、細長く軽量のせん孔針のような金属片は、図3に示すように、バレルめっきによりめっきした場合、バレルD内の回転に伴うせん孔針A’の挙動は、バレル回転J方向の上方に運ばれ、下降に転じる時に、せん孔針A’は絡み合い凝集してしまうため、すべり層は形成されず、個々のせん孔針A’は滑り落ちながら移動不可能であり、一群Kとなって移動してしまう。この結果、断続的なめっきになり、更に、凝集された一群Kの中央部のせん孔針A’は表層部分に露出しないため、めっき不良となる。
【0005】
また、せん孔針A’同士が絡み合い、接触している部分は表層部分として、露出しないため、めっきがのらない部分もあり、めっきムラが発生してしまう。この結果、せん孔針A’表面には凹凸が生じ、このせん孔針A’で切手用印刷用紙に目打ちをした場合、用紙にバリが発生したり、抜けが悪く、理想の状態でのせん断が行われない場合が多い。しかし、せん孔針A’で前記切手用印刷用紙を目打ちした場合、平滑性の高いせん断精度が要求されるため、より平滑性の高く均一なめっきの付与方法が必要とされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、前記従来の技術において述べた未解決な点を克服して、せん孔針のような細く軽い形状の金属体においても、容易にめっきが付与できるということを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、本発明のめっき装置は、めっき槽と、動力部と、せん孔針を投入するためのバスケットと、前記バスケットを回転させるための回転軸とからなり、前記バスケットは、1個以上で通電手段を備えており、前記回転軸に固定され、前記回転軸は、メッキ液の液面に対して90度より小さな角度に保持し回転させる回転手段と、めっきの通電経路を兼ねる通電手段を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のせん孔針のめっき方法は、前記めっき装置の前記回転軸に固定された1個以上のバスケットそれぞれに複数のせん孔針を投入し、前記バスケットをめっき液の液面に対して90度より小さな角度に保持し、回転させながらめっきすることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
この発明の実施例を以下の図面に基づき説明する。せん孔針の専用のめっき装置として、傾斜型バレルめっき装置を作製した。めっき方法として、クロムめっき方法を例として挙げるが、ニッケルめっきや銅めっきなどの他の方法でも可能である。この傾斜型バレルめっき装置は、図4に示すように、めっき槽B’、動力部L、陽極E’、バスケットMから構成される。めっき槽B’はFRP製で作製し、めっき液C’中の添加剤による腐食を防止するために、内側にテフロンコーチィングを施す。また、動力部Lは回転軸F‘の上方先端に配置し、バスケット部Mを回転させると同時に陰極としても作用される。
【0010】
この回転軸F’の下方先端にはバスケットMを設ける。このバスケットMの構成は、せん孔針を投入するバスケットm、各バスケットmに通電を付与する通電板O及び各バスケットの裏面方表面に通電させるためのボルトNが設けてある。また、図5に示すように、陽極E’となる鉛板のアノードE’が、各バスケットmに平行にめっき槽B’の外部から取り付け、固定され通電する。一方、回転軸F’は、黄銅製の通電バーPを中心に配置して、表面を塩化ビニールQで被覆する。
【0011】
バスケットMは、図6に示すように、4個の同形な八角柱のバスケットmを回転軸F’に固定し、回転軸F’から各バスケットの裏面を通して、ボルトNにより表面に通電される。表面に通電されたボルトNを通して、通電用の銅板Rを放射状に取り設ける。各バスケットmの側面と底面は、多数の小孔をつけた塩化ビニール板で作製する。
【0012】
この各バスケットm内に50本程度のせん孔針を投入し、回転軸F’の回転と共に、各バスケットmも回転し、めっきされる。なお、バスケットMの傾斜角は45度、回転速度は2〜4rpmとする。この方法、装置による各バスケットm内のせん孔針の挙動は、低速でしかも少量で移動するため、せん孔針同士の絡み合いが無くなり、1本1本が滑り落ちながら移動することにより、断続的なめっきにはならずめっきムラ等が無くなり、良好なめっきが実現できる。
【0013】
また、バレルめっき液の組成は、通常無水クロム酸230〜250g/l、硫酸1.5〜2.2g/l、3価クロム2.2g/lのサージェント浴を用いている。しかし、傾斜型バレルめっき装置のめっき液組成は、無水クロム酸300g/lに対して、添加剤として硫酸ストロンチウム9g/l、ケイ弗化カリ20g/lの弗化浴とする。添加剤を入れる理由として、硬度、平滑製及び光沢性を向上させ、更に、仮に断続めっきが生じた場合でも、めっき不良を起こしにくい液組成とした。これにより、よい光沢性と平滑性のあるめっきが付与できる。
【0014】
【発明の効果】
本発明により、せん孔針のような細く軽量な形状の金属体でも、めっきムラが発生せず、せん孔針表面が、より平滑でしかも光沢性の高いめっきが付与できる。この結果、このせん孔針で用紙をせん断した場合、切り口が先鋭なせん断面が得られ、より用紙のせん孔仕上りが良好となる。また、めっきムラや金属表面の荒れが無くなったため、めっき後の歩留りも、一段と向上した。
【0015】
更に、表1はめっきを施してないせん孔針、焼入針、本発明の方法でめっきを施した場合のせん孔持続回数を調査したものである。本発明によるめっき方法としては、めっき時間を30分、1時間、2時間、3時間で行ったが、2時間でめっきした場合のせん孔持続回数は、170,000〜200,000回と飛躍的に向上した。
【表1】
Figure 0003648620

【図面の簡単な説明】
【図1】バレルめっき装置の側面図である。
【図2】バレルめっき装置の正面図である。
【図3】バレルめっき装置の正面図である。
【図4】傾斜型めっき装置の側面図である。
【図5】傾斜型めっき装置の陽極部の説明図である。
【図6】傾斜型めっき装置のバスケット部の説明図である。
【符号の説明】
A 金属片
A’ せん孔針
B めっき槽
B’ めっき槽
C めっき液
C’ めっき液
D バレル
E 陽極及びアノード
E’ 陽極及びアノード
F 陰極及び通電バー
F’ 陰極及び通電バー
G すべり層
I 表層部分
J バレル回転方向
K せん孔針の一群
L 動力
M バスケット部
m バスケット
N ボルト
O 通電板
P 黄銅バー
Q 塩化ビニール
R 銅板

Claims (2)

  1. せん孔針をめっきするめっき装置であって、
    前記めっき装置は、めっき槽と、動力部と、せん孔針を投入するためのバスケットと、前記バスケットを回転させるための回転軸とからなり、
    前記バスケットは、1個以上で通電手段を備えており、前記回転軸に固定され、
    前記回転軸は、メッキ液の液面に対して90度より小さな角度に保持し回転させる回転手段と、めっきの通電経路を兼ねる通電手段を備えることを特徴とするめっき装置。
  2. 請求項1記載のめっき装置において、前記回転軸に固定された1個以上のバスケットそれぞれに複数のせん孔針を投入し、前記バスケットをめっき液の液面に対して90度より小さな角度に保持し、回転させながらめっきすることを特徴とするせん孔針のめっき方法。
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