JP3648103B2 - 極細平型ケーブル - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、極めて細い外径を有する極細のケーブル、特に極細の同軸ケーブルを、複数本、平面状に並置して、フラット状に成形した極細平型ケーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、例えば、医療機器である超音波診断装置のプローブケーブルに用いられるような同軸ケーブル、あるいは小型の測定装置、通信装置もしくは小型に作製されたロボットのマイクロマシン等に用いられる同軸ケーブルは、これら装置の小型化、高性能化にともなう高密度化に対応して、かなり外径の細い同軸ケーブルが得られているが、これら装置のいっそうの小型化、高性能化にともない一層細径化された同軸ケーブルが求められており、この一層細径化された同軸ケーブルを高密度にアッセンブリする高密度化がさらに希求されている。
【0003】
これに対応して、これまで、細径化された同軸ケーブルとして、例えば、外径が0.03mm(AWG#48に相当、AWGはアメリカン・ワイヤ・ゲージ)の銀メッキ錫入り銅合金線の中心導体の外周に、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)を約0.025mmの厚さで押出し被覆して誘電体を形成し、さらにこの外周に外径が0.02mm(AWG#52に相当)の銀メッキ錫入り銅合金線の導体を横巻きして外部導体層を形成し、この外部導体層の外周に、外皮としてPFAを約0.02mm程度の厚さで押出し被覆して形成した、外径が0.16mm程度の極めて外径の細い極細同軸ケーブルが提案されている。
【0004】
このような極めて外径の細い極細同軸ケーブルは、その外径が約0.16mm乃至0.5mm程度の極細同軸ケーブルとされているが、このような極細同軸ケーブルを小型化、高性能化にともなう高密度化のために集合、すなわちアッセンブリする際、例えば、これらの極細同軸ケーブルを複数本、平面状に並置して、フラット状に成形して平型ケーブルを作成しようとする場合には、極細径の導体、薄い被覆層の絶縁体および外皮からなる極細同軸ケーブルであるがゆえに、機械的強度なども充分ではなく、粘着テープを用いたテープラミネート法によるフラット化、熱融着もしくは化学融着によるフラット化、あるいは溶融押出しによるフラット化のような従来のフラットケーブル化手段では、製造上、融着処理あるいは温度コントロール等が難しく、絶縁体あるいは外皮が溶融、変形を生じ、機械的特性あるいは特性インピーダンス等の電気的特性の点から実用に供しえなかった。
【0005】
また、実用に供しえずとも、上記したような手段によりフラット化された平型ケーブルでは、このケーブルの長手方向に屈曲あるいは可撓自在であるがケーブルの幅方向に対する屈曲性あるいは可撓性は充分とは言えず、自由度の多い屈曲あるいは可撓方向が求められる場合に問題点を有している。
【0006】
上記したような屈曲あるいは可撓性に対する問題点を改善する手段として、上記した極細同軸ケーブルを複数本、平面状に並置して縦糸とし、横糸を用いてフラット状に製織した製織ケーブルを試みたが、このような従来技術の延長上で作成された製織ケーブルでは、縦糸と横糸の交差点において、縦糸である極細同軸ケーブルが横糸を跨ぐために凹凸状に配設されることになり、その結果、直線状の極細同軸ケーブルではなく、変形した極細同軸ケーブルとなって、電気的特性に悪影響を及ぼすことが見出された。特に、横糸の太さがそれ程小さくない場合には極細同軸ケーブルの凹凸状が顕著となり、その結果、特性インピーダンス等の電気的特性にも悪影響を与えることが見出された。
【0007】
さらに上記した製織ケーブルにおいては、高密度にコネクタ等へ接続するために端末処理等を行う上では好都合であるが、この端末処理後、極細同軸ケーブルの取り扱い性あるいはその収容性の観点から、所望領域において、極細同軸ケーブルを相互に分離して、ばらけさせる必要のある場合があり、その場合には、横糸をカッター等により切断して、極細同軸ケーブルを分離してばらけさせていた。
【0008】
その際、極細同軸ケーブルは極細径の導体、極めて薄い誘電体および外被から成るため、カッター等により導体、誘電体および外被を傷つけたり、極細同軸ケーブルを折り曲げて座屈させて、電気特性に悪影響をおよぼすことがある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、その目的は、極めて細い外径を有する極細同軸ケーブルの複数本を、フラット状に成形する際、容易に製造することができると共に、屈曲性あるいは可撓性方向の自由度が大きく、しかもフラット状に成形した際にも特性インピーダンス等の電気的特性の悪影響を除去することができる極細平型ケーブルを提供することにある。さらに本発明の他の目的は、前記極細平型ケーブルにおいて、各極細同軸ケーブルを損傷することなく所望領域で容易にばらけさせることができる極細平型ケーブルを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、本発明に係わる極細平型ケーブルによって達成される。すなわち、要約すれば、本発明は、極細径の中心導体の外周に極めて薄い誘電体を被覆し、この誘電体の外周に極細径の導体よりなる外部導体層を形成し、さらにこの外部導体層の外周に極めて薄い外皮を設けて、外径を0.086mm乃至0.5mmと成した極細同軸ケーブルを、複数本、平面状に並置して、フラット状に成形した極細平型ケーブルであって、これら並置されて隣接する極細同軸ケーブルを、変形を与えることなく、所定本数毎に、伸縮性を有する細い多数本のフィラメントで織って集合したことを特徴とする極細平型ケーブルである。また、本発明は上記した極細平型ケーブルにおいて、フィラメントが溶剤に可溶であることを特徴とする極細平型ケーブルである。
【0011】
【作用】
本発明の極細平型ケーブルによれば、極めて細い外径を有する極細同軸ケーブルを並置し、これら隣接する複数本の極細同軸ケーブルを、変形を与えることなく、所定本数毎に、伸縮性を有する細い多数本のフィラメントで織って集合したので、屈曲性あるいは可撓性方向の自由度が大きく、しかもフラット状に成形した際にも特性インピーダンス等の電気的特性の悪影響を受けることがない極細平型ケーブルを得ることができる。また、前記極細平型ケーブルにおいて、前記フィラメントをしなやかで、かつ、溶剤に可溶なものとしたので、この極細平型ケーブルの所望領域を溶剤に漬けるだけでフィラメントを溶解除去し、各極細同軸ケーブルを損傷させたり座屈させることなく、容易に、例えば1本1本の各極細同軸ケーブルにばらけさせることができる。
【0012】
【実施例】
以下、本発明を、その実施例に基づいて添付図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明による極細平型ケーブルの一実施例の平面図であり、図2は、図1に示す極細平型ケーブルに用いられる極細同軸ケーブルの断面図である。
【0013】
図1を参照すると、本発明による極細平型ケーブル1が示されており、この極細平型ケーブル1は、平面状に並置された、外径が極めて細い複数本の極細同軸ケーブル2(図1では、簡単化のために10本のみが示されているが、これに限定されるものではない)を備えており、これらの隣接する極細同軸ケーブル2を、伸縮性のあるポリエステル製の横糸3が交互に跨ぐように、すなわち縦糸としての極細同軸ケーブル2を、横糸3が所望に応じて所定本数毎に織るように設けられ、複数本の隣接した極細同軸ケーブル2の幅方向の両端ではターン、すなわち折り返され、これが繰り返されて製織状のフラット状ケーブルが成形されている。その際、横糸3は、図1から理解されるように、極細平型ケーブル1の長手方向に対してジグザグ状に設けられ、この横糸3のジグザグのピッチAは、所望に応じて設定され、本発明では極細平型ケーブル1のフラット状の形状が保持できる程度のピッチに設定されている。なお、複数本の隣接した極細同軸ケーブル2の幅方向の最両端にダミー線を追加、挿入して、このダミー線で横糸3を折り返すようにすると、極細同軸ケーブル2に直接、横糸3の張力の影響を与えることなく、フラット状ケーブルを成形することができる。
【0014】
ここで、上記した極細同軸ケーブル2は、図2にその断面図で示すように、押出機(図示せず)を用いて、極細径である外径0.025mm(AWG#50に相当)の銀メッキ錫入り銅合金線の中心導体4の外周に、極めて薄い誘電体5としてPFAを約0.022mmの厚さで押出し被覆し、さらにこの誘電体5の外周に極細径である外径が0.02mm(AWG#52に相当)の銀メッキ錫入り銅合金線の導体6を、例えば13本、横巻きして外部導体層7を形成し、さらにこの外部導体層7の外周に、極めて薄い外皮8としてPFAを約0.006mmの厚さで押出し被覆して形成した、外径が約0.121mm、長さが1mとした極めて外径の細い極細同軸ケーブル2が用いられている。
【0015】
このような外径が極めて細い同軸ケーブル2を、上述したように、横糸3が交互に跨ぐように、すなわち縦糸としての極細同軸ケーブル2を伸縮性のあるポリエステル製の横糸3が所定本数毎に織るように設けられているが、この横糸3は、極細同軸ケーブル2を織る際に、極細同軸ケーブル2に凹凸状の変形を与えないよう、(20デニール/72フィラメント)の太さのものが用いられている。この(20デニール/72フィラメント)の横糸3によって、上記極細同軸ケーブル2を織る際に、各フィラメントが極細同軸ケーブル2と交わるとき、偏平にばらけ、上記極細同軸ケーブル2に対して、特性インピーダンスなどの電気的特性に影響を与えることのない、しなやかな横糸3とすることができる。この明細書で述べる、例えば上記の(20デニール/72フィラメント)は、72本の均一な径を有する素線すなわちフィラメントの全体で20デニールになるということを意味する。これは、すなわち、20デニールという小さいデニール数に対して72本のフィラメント数という多数本のフィラメントで構成されるので、各フィラメントの径が細いということを意味するものである。これに対し、後述する(75デニール/12フィラメント)あるいは(150デニール/36フィラメント)のようなデニール数とフィラメント数の数値が逆転している場合には、大きいデニール数に対し、少ない本数のフィラメント数で構成しているので、フィラメントの径が太い。
【0016】
このように作成した極細平型ケーブル1の各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスを測定したところ、フラット化する前の各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスとフラット化した後の極細平型ケーブル1の各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスにはほとんど変化は見られなかった(図3及び図4参照)。
また、このように作成された極細平型ケーブル1のあらゆる方向への屈曲性あるいは可撓性も充分であり、そのフラット状の形状維持および強度も充分に実用に耐えられるものであった。
【0017】
比較例として、上記実施例に用いた横糸3の代わりに(75デニール/12フィラメント)の太さのものを用いて、上記実施例と同様に極細平型ケーブル1を作成し、その各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスを測定したところ、フラット化する前の各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスと比べてフラット化した後の極細平型ケーブル1の各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスは大きく変化していた。
【0018】
これは、極細平型ケーブル1に用いられている極細同軸ケーブル2が、極めて外径の細い極細同軸ケーブル2であるがゆえに、フラット化される際に用いられる横糸3の太さによって、極細平型ケーブル1の各極細同軸ケーブル2が変形し、その結果、上記した特性インピーダンスに悪影響を与えたものと思われる。
また、作成された極細平型ケーブル1のフラット状の形状維持および強度は充分であったが、屈曲性あるいは可撓性には、やや硬さがあった。
【0019】
次に、第2実施例について述べると、上述した極細平型ケーブル1を作成する際に、縦糸たる極細同軸ケーブル2として、同じく、押出機(図示せず)を用い、極細径である外径0.03mmの銀メッキ錫入り銅合金線の中心導体4の外周に、PFAを約0.025mmの厚さで押出し被覆して極めて薄い誘電体5を成形し、この誘電体5の外周に極細径である外径が0.02mmの銀メッキ錫入り銅合金線の導体6を13本、横巻きして外部導体層7を形成し、さらにこの外部導体層7の外周に、極めて薄い外皮8としてPFAを約0.01mmの厚さで押出し被覆して形成した、外径が約0.14mm、長さが1mとした極めて外径の細い極細同軸ケーブル2が用いられている。
【0020】
この極細同軸ケーブル2を織る伸縮性のポリエステル製の横糸3は、極細同軸ケーブル2を所定本数毎に織る際に極細同軸ケーブル2に凹凸状の変形を与えないように、(20デニール/72フィラメント)の太さのものを用い、極細平型ケーブル1を作成した。この(20デニール/72フィラメント)の横糸3によっても、上記極細同軸ケーブル2を織る際に、各フィラメントが極細同軸ケーブル2と交わるとき、偏平にばらけ、上記極細同軸ケーブル2に対して、しなやかな横糸3とすることができる。
このように作成した極細平型ケーブル1の各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスを測定したところ、フラット化する前の各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスとフラット化した後の極細平型ケーブル1の各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスにはほとんど変化は見られなかった(図5及び図6参照)。
また、このように作成された極細平型ケーブル1のあらゆる方向への屈曲性あるいは可撓性も充分であり、そのフラット状の形状維持および強度も充分に実用に耐えられるものであった。
【0021】
比較例として、上記実施例に用いた横糸3の代わりに(75デニール/12フィラメント)の太さのものを用いて、上記実施例と同様に極細平型ケーブル1を作成し、その各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスを測定したところ、フラット化する前の各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスと比べてフラット化した後の極細平型ケーブル1の各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスは大きく変化していた。
【0022】
これは、外径が極めて細い極細同軸ケーブル2であるがゆえに、フラット化される際に用いられる横糸3の太さによって、極細平型ケーブル1の各極細同軸ケーブル2が変形し、その結果、上記した特性インピーダンスに悪影響を与えたものと思われる。
また、作成された極細平型ケーブル1のフラット状の形状維持および強度は充分であったが、屈曲性あるいは可撓性には、やや硬さがあった。
【0023】
次に、第3実施例について述べると、上述した極細平型ケーブル1を作成する際に、縦糸たる極細同軸ケーブル2として、同じく、押出機(図示せず)を用い、極細径である外径0.016mmの銀メッキ銅合金線を7本撚って形成した中心導体4の外周に、PFAを約0.025mmの厚さで押出し被覆して極めて薄い誘電体5を成形し、この誘電体5の外周に極細径である外径が0.021mmの錫メッキ錫入り銅合金線の導体6を17本、横巻きして外部導体層7を形成し、さらにこの外部導体層7の外周に、極めて薄い外皮8としてPFAを約0.02mmの厚さで押出し被覆して形成した、外径が約0.18mm、長さが1mとした極めて外径の細い極細同軸ケーブル2が用いられている。
【0024】
この極細同軸ケーブル2を織る伸縮性のポリエステル製の横糸3は、極細同軸ケーブル2を所望に応じて所定本数毎に織る際に、極細同軸ケーブル2に凹凸状の変形を与えないよに、(50デニール/72フィラメント)の太さのものを用い、極細平型ケーブル1を作成した。この(50デニール/72フィラメント)の横糸3によっても、上記極細同軸ケーブル2を織る際に、各フィラメントが極細同軸ケーブル2と交わるとき、偏平にばらけ、上記極細同軸ケーブル2に対して、しなやかな横糸3とすることができる。
このように作成した極細平型ケーブル1の各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスを測定したところ、フラット化する前の各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスとフラット化した後の極細平型ケーブル1の各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスにはほとんど変化は見られなかった(図7及び図8参照)。
また、このように作成された極細平型ケーブル1のあらゆる方向への屈曲性あるいは可撓性も充分であり、そのフラット状の形状維持および強度も充分に実用に耐えられるものであった。
【0025】
比較例として、上記実施例に用いた横糸3の代わりに(75デニール/12フィラメント)の太さのものを用いて、上記実施例と同様に極細平型ケーブル1を作成し、その各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスを測定したところ、フラット化する前の各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスと比べてフラット化した後の極細平型ケーブル1の各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスは大きく変化していた。
【0026】
これは、外径が極めて細い極細同軸ケーブル2であるがゆえに、フラット化される際に用いられる横糸3の太さによって、極細平型ケーブル1の各極細同軸ケーブル2が変形し、その結果、上記した特性インピーダンスに悪影響を与えたものと思われる。
また、作成された極細平型ケーブル1のフラット状の形状維持および強度は充分であったが、屈曲性あるいは可撓性には、やや硬さがあった。
【0027】
次に、第4実施例について述べると、上述した極細平型ケーブル1を作成する際に、縦糸たる極細同軸ケーブル2として、同じく、押出機(図示せず)を用い、極細径である外径0.03mmの錫メッキ錫入り銅合金線を7本撚って形成した中心導体4の外周に、PFAを約0.06mmの厚さで押出し被覆して極めて薄い誘電体5を成形し、この誘電体5の外周に極細径である外径が0.04mmの錫メッキ無酸素軟銅線の導体6を18本、横巻きして外部導体層7を形成し、さらにこの外部導体層7の外周に、極めて薄い外皮8としてポリエステルテープを約0.02mmの厚さになるよう巻回して形成した、外径が約0.33mm、長さが1mとした極めて外径の細い極細同軸ケーブル2が用いられている。
【0028】
この極細同軸ケーブル2を織る伸縮性のポリエステル製の横糸3は、極細同軸ケーブル2を所定本数毎に織る際に極細同軸ケーブル2に凹凸状の変形を与えないように、(50デニール/72フィラメント)の太さのものを用い、極細平型ケーブル1を作成した。この(50デニール/72フィラメント)の横糸3によっても、上記極細同軸ケーブル2を織る際に、各フィラメントが極細同軸ケーブル2と交わるとき、偏平にばらけ、上記極細同軸ケーブル2に対して、しなやかな横糸3とすることができる。
このように作成した極細平型ケーブル1の各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスを測定したところ、フラット化する前の各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスとフラット化した後の極細平型ケーブル1の各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスにはほとんど変化は見られなかった(図9及び図10参照)。
また、このように作成された極細平型ケーブル1のあらゆる方向への屈曲性あるいは可撓性も充分であり、そのフラット状の形状維持および強度も充分に実用に耐えられるものであった。
【0029】
比較例として、上記実施例に用いた横糸3の代わりに(150デニール/36フィラメント)の太さのものを用いて、上記実施例と同様に極細平型ケーブル1を作成し、その各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスを測定したところ、フラット化する前の各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスと比べてフラット化した後の極細平型ケーブル1の各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスは大きく変化していた。
【0030】
これは、外径が極めて細い極細同軸ケーブル2であるがゆえに、フラット化される際に用いられる横糸3の太さによって、極細平型ケーブル1の各極細同軸ケーブル2が変形し、その結果、上記した特性インピーダンスに悪影響を与えたものと思われる。
また、作成された極細平型ケーブル1のフラット状の形状維持および強度は充分であったが、屈曲性および可撓性には、やや硬さがあった。
【0031】
次に、第5実施例について述べると、上述した極細平型ケーブル1を作成する際に、縦糸たる極細同軸ケーブル2として、同じく、押出機(図示せず)を用い、極細径である外径0.04mmの錫メッキ錫入り銅合金線を7本撚って形成した中心導体4の外周に、PFAを約0.085mmの厚さで押出し被覆して極めて薄い誘電体5を成形し、この誘電体5の外周に極細径である外径が0.04mmの錫メッキ錫入り銅合金線の導体6を23本、横巻きして外部導体層7を形成し、さらにこの外部導体層7の外周に、極めて薄い外皮8としてFEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)を約0.065mmの厚さで押出し被覆して形成した、外径が約0.50mm、長さが1mとした極めて外径の細い極細同軸ケーブル2が用いられている。
【0032】
この極細同軸ケーブル2を織る伸縮性のポリエステル製の横糸3は、極細同軸ケーブル2を所望に応じて所定本数毎に織る際に、極細同軸ケーブル2に凹凸状の変形を与えないよに、(50デニール/72フィラメント)の太さのものを用い、極細平型ケーブル1を作成した。この(50デニール/72フィラメント)によっても、上記極細同軸ケーブル2を織る際に、各フィラメントが極細同軸ケーブル2と交わるとき、偏平にばらけ、上記極細同軸ケーブル2に対して、しなやかな横糸3とすることができる。
このように作成した極細平型ケーブル1の各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスを測定したところ、フラット化する前の各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスとフラット化した後の極細平型ケーブル1の各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスにはほとんど変化は見られなかった(図11および図12参照)。
また、このように作成された極細平型ケーブル1のあらゆる方向への屈曲性あるいは可撓性も充分であり、そのフラット状の形状維持および強度も充分に実用に耐えられるものであった。
【0033】
比較例として、上記実施例に用いた横糸3の代わりに(150デニール/36フィラメント)の太さのものを用いて、上記実施例と同様に極細平型ケーブル1を作成し、その各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスを測定したところ、フラット化する前の各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスと比べてフラット化した後の極細平型ケーブル1の各極細同軸ケーブル2の特性インピーダンスは大きく変化していた。
【0034】
これは、外径が極めて細い極細同軸ケーブル2であるがゆえに、フラット化される際に用いられる横糸3の太さによって、極細平型ケーブル1の各極細同軸ケーブル2が変形し、その結果、上記した特性インピーダンスに悪影響を与えたものと思われる。
また、作成された極細平型ケーブル1のフラット状の形状維持および強度は充分であったが、屈曲性あるいは可撓性には、やや硬さがあった。
【0035】
さらに、前記第1実施例よりさらに細い同軸ケーブルとして、押出機(図示せず)により、極細径である外径0.016mmの銀メッキ銅合金線の中心導体4の外周に、極めて薄い誘電体5としてPFAを約0.01mmの厚さで押出し被覆し、さらにこの誘電体5の外周に極細径である外径0.015の銀メッキ銅合金線の導体6を、例えば10本、横巻きして外部導体層7を形成し、さらにこの外部導体層7の外周に、極めて薄い外皮8としてPFAを約0.01mmの厚さで押出し被覆して形成した、外径が約0.086mm、長さが1mとした極めて外径の細い極細同軸ケーブル2が製造可能である。この外径が約0.086mmの極細同軸ケーブル2を用いて極細平型ケーブル1を作成する場合においても、第1実施例と同様に(20デニール/72フィラメント)の横糸3で織り成すことにより、極細同軸ケーブル2に対して、しなやか横糸3とすることができ、特性インピーダンスに影響を与えることなくフラット化することができる。
【0036】
以上に述べた実施例においては、横糸3を構成するフィラメントとしてポリエステル製のものを用いたが、これを溶剤に可溶なフィラメントからなる横糸3に置き換えることによって、各極細同軸ケーブルを、損傷させたり座屈させることなく、容易にばらけさせることができる極細平型ケーブル1を作成することができる。
【0037】
その一実施例(実施例6)として、実施例4の極細平型ケーブルの横糸3を水に可溶なポリビニルアルコール製のフィラメントから成る横糸3として極細平型ケーブル1を作成した。この極細平型ケーブル1の所望領域を水および各種アルコール類または水とアルコール類の混合溶液に浸漬させたところ、水に浸漬した場合で約1秒から5秒、水50容量部とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールの内いずれか1つのアルコールを50容量部混合した溶液に浸漬した場合で約2分から3分で、ポリビニルアルコール製の横糸3は完全に溶解し除去され(表1参照)、その結果、極細同軸ケーブル1はまったく損傷されることなく所望領域で相互に分離してばらけた状態となった。
【表1】
実施例5の極細平型ケーブル1を各種溶剤に漬けた場合における横糸3の溶解時間
Figure 0003648103
【0038】
なお、上記した溶剤は、横糸3以外の極細平型ケーブルの構成要素を侵すことなく、横糸3としてのフィラメントの材料を溶解するものであれば良く、例えば水または有機溶剤、あるいは水と有機溶剤の混合溶液、さらには酸性溶液、アルカリ性溶液等が含まれる。
【0039】
なお、これまでに述べてきた実施例では、縦糸として極細同軸ケーブル2を用いた場合について述べたが、縦糸として極細同軸ケーブル2を用いる場合に限らず、導体の外周に絶縁体を被覆して形成した、外径の極めて細い極細絶縁ケーブルを縦糸に用いた場合にも同様なことが言えるのは勿論のことである。さらに、上述した実施例では、横糸として、例えばポリエステル製、あるいは溶剤に可溶なポリビニルアルコール製の糸を用い、縦糸として極細同軸ケーブルあるいは極細絶縁ケーブルを用いる場合について述べているが、極細同軸ケーブルあるいは極細絶縁ケーブルを横糸に用い、ポリエステル製、あるいは溶剤に可溶なポリビニルアルコール製の糸を縦糸に用いることも勿論可能である。
【0040】
さらに、上述した実施例では、横糸3の材質として伸縮性のポリエステルおよび溶剤に可溶なポリビニルアルコールを用いたが、本発明における横糸は、この材質に限定されることなく、その他の材質として、ポリエステル、ナイロン、フッ素樹脂、レーヨン、綿等、あるいは溶剤に可溶な任意の材質を選択することができるのは言うまでもない。
【0041】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明の極細平型ケーブルによれば、極めて細い外径を有する極細同軸ケーブルを並置し、これら隣接する複数本の極細同軸ケーブルを、変形を与えることなく、所定本数毎に、伸縮性を有する細い多数本のフィラメントで織って集合したので、屈曲性あるいは可撓性方向の自由度が大きく、しかもフラット状に成形した際に特性インピーダンス等の電気的特性の悪影響を受けることがない極細平型ケーブルを提供することができるという効果を奏する。さらには、前記フィラメントが溶剤に可溶な材質からなるもので作成した本発明の極細平型ケーブルによれば、極細同軸ケーブルの所望領域を相互に分離する場合、溶剤によってフィラメントを溶解することにより容易にばらけさせ分離することができるため、極細同軸ケーブルを損傷させたり、座屈させて、電気特性に悪影響をおよぼすことがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による極細平型ケーブルの一実施例の平面図である。
【図2】図1に示す極細平型ケーブルに用いられる本発明による極細同軸ケーブルの断面図である。
【図3】第1実施例においてフラット化する前の極細同軸ケーブル2の特性インピーダンス波形図である。
【図4】第1実施例においてフラット化した後の極細同軸ケーブル2の特性インピーダンス波形図である。
【図5】実施例2においてフラット化する前の極細同軸ケーブル2の特性インピーダンス波形図である。
【図6】実施例2においてフラット化した後の極細同軸ケーブル2の特性インピーダンス波形図である。
【図7】実施例3においてフラット化する前の極細同軸ケーブル2の特性インピーダンス波形図である。
【図8】実施例3においてフラット化した後の極細同軸ケーブル2の特性インピーダンス波形図である。
【図9】実施例4においてフラット化する前の極細同軸ケーブル2の特性インピーダンス波形図である。
【図10】実施例4においてフラット化した後の極細同軸ケーブル2の特性インピーダンス波形図である。
【図11】実施例5においてフラット化する前の極細同軸ケーブル2の特性インピーダンス波形図である。
【図12】実施例5においてフラット化した後の極細同軸ケーブル2の特性インピーダンス波形図である。
【符号の説明】
1…極細平型ケーブル
2…極細同軸ケーブル
3…横糸
4…中心導体
5…誘電体
6…導体
7…外部導体層
8…外皮

Claims (2)

  1. 極細径の中心導体の外周に極めて薄い誘電体を被覆し、この誘電体の外周に極細径の導体よりなる外部導体層を形成し、さらにこの外部導体層の外周に極めて薄い外皮を設けて、外径を0.086mm乃至0.5mmと成した極細同軸ケーブルを、複数本、平面状に並置して、フラット状に成形した極細平型ケーブルであって、これら並置されて隣接する極細同軸ケーブルを、変形を与えることなく、所定本数毎に、伸縮性を有する細い多数本のフィラメントで織って集合したことを特徴とする極細平型ケーブル。
  2. 前記フィラメントが溶剤に可溶であることを特徴とした請求項1に記載の極細平型ケーブル。
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