JP3647341B2 - キャニスタ傾動出湯装置 - Google Patents
キャニスタ傾動出湯装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3647341B2 JP3647341B2 JP36918599A JP36918599A JP3647341B2 JP 3647341 B2 JP3647341 B2 JP 3647341B2 JP 36918599 A JP36918599 A JP 36918599A JP 36918599 A JP36918599 A JP 36918599A JP 3647341 B2 JP3647341 B2 JP 3647341B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- canister
- casing
- hot water
- tilting
- disposed
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Furnace Charging Or Discharging (AREA)
- Gasification And Melting Of Waste (AREA)
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、原子力関連施設で発生する放射性不燃廃棄物を減容、安定化するための溶融プラントに設けられるインキャン式高周波溶融炉から取り出される高温の溶湯の入ったキャニスタの取扱いの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
原子力発電所などから発生する雑固体廃棄物の最終処理法として溶融処理が採用されている。このような目的の放射性廃棄物の焼却溶融装置としては、例えば、特開昭61−209399号公報には、導電性を有し誘導加熱可能なC−SiC系などのセラミック発熱体からなるキャニスタ(ルツボ)に放射性廃棄物を収容して、1300〜1600℃の高温で溶融した後、そのまま冷却して溶融物をその容器中に固化させる、いわゆるインキャン方式といわれる方法が開示されている。この場合、固化物は容器とともに、ドラム缶などに収容されて所定の廃棄処理に供される。
【0003】
ところで、このインキャン方式では、キャニスタごとに200リットルドラム缶に入れて埋設処分する必要があることから、キャニスタの大きさに制限を受けるとともに、高価なキャニスタは使い捨てとなり繰り返し使用ができないため処理コストが高額になるという問題があった。
【0004】
そこで、高温の溶融物を入れたキャニスタを外部に取り出し、このキャニスタを傾けて内容物を別途準備した受け容器に流出させるようにキャニスタを傾動させる出湯装置が検討されている。ところが、このキャニスタ傾動出湯装置の実用化には以下に示すようないろいろな問題があった。
【0005】
(1)最高1600℃のキャニスタを少なくとも数分間保持する機構が必要であるが、その輻射熱によって作動不良を生じ易い。一方、溶湯が冷却され温度が下がると粘性があがり、出湯が困難となる。
(2)キャニスタと溶湯の合計重量が重く(最大700kg)、キャニスタ自体は金属などと比較すると衝撃に弱いなど、強度上問題があるので、破損しないように、かつ確実に支持して傾動させる必要があった。とくに、高温時のキャニスタ表面は、溶融した酸化防止材で被覆された状態となっているので、把持する機材に付着しないよう形状にする必要があった。
(3)出湯時に、溶湯が飛散して周辺の装置、部材類に触れると損傷するおそれがあり、また、溶湯を受ける受け容器との位置関係を正確に設定できることが要求された。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、溶湯の入った高温度のキャニスタの保温と周辺の装置類への遮熱を図るとともに、キャニスタを正確に、かつ確実に支持しながら、傾動させ出湯させることが可能となるキャニスタ傾動出湯装置を提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の問題は、インキャン式高周波溶融炉から取り出された溶湯を入れたキャニスタを収納可能な蓋付き円筒状ケーシングが装置駆体に傾動自在に配設され、そのキャニスタを前記ケーシングとともに傾動させて内部の溶湯を出湯させるようにしたキャニスタ傾動出湯装置であって、前記ケーシングは、昇降部材である横架桁材に水平方向に移動自在に吊設されるとともに、そのケーシングには、耐火性台座円板を介して前記キャニスタを下方から支持する支持手段と、そのキャニスタの胴部に当接させて横移動を防止する把持手段を配備していて、その支持手段が、前記ケーシングの下端周縁部に配設された複数の支持体からなり、その支持体の先端部には、前記耐火性台座円板の外周部を下から支持可能に突出した爪部と、その爪部の基部に垂直面を持つ段差が形成され、かつこの複数の支持体の全ての先端部を、前記ケーシングの中心方向に同時に前進後退可能にする駆動装置を備えたものであることを特徴とする本発明のキャニスタ傾動出湯装置によって解決することができる。
【0008】
【0009】
さらに、本発明は、ケーシングに配備された前記把持手段が、前記ケーシングの胴体外周部の3か所以上に配設されたシリンダ装置であって、内部に収容したキャニスタの胴体部に当接可能な先端受け部を前記ケーシングの内部に向けて進退自在に備えたものである形態に、好ましく具体化することができる。
また、本発明では、前記ケーシングの外周表面側には冷却ジャケットを配設し、内側には耐火断熱材を配設した形態や、前記ケーシングの上部には、内部に収容したキャニスタの上端周縁部に係止して上下方向の位置ずれを防止するストッパ手段を設けた形態に具多化するのも好ましい。
【0010】
このような本発明によれば、インキャン式高周波溶融炉から取り出された、溶湯を入れた高温度のキャニスタを蓋付き円筒状ケーシングに収容し、下方から支持するとともに側方から胴部を把持しながら、傾動させて出湯できるので、キャニスタに衝撃などを与えるおそれもなく、確実に安全に傾動させ出湯させることができる。また、その輻射熱を遮断できるので、周囲の機器に悪影響を与えることがないうえ、溶湯を保温できるのでその粘性を低く保つことができるなどの利点がある。
【0011】
また、前記した、複数の支持体の先端部に、キャニスタを乗せた耐火性台座円板を支持するための爪部と、その爪部の基部に垂直面を持つ段差が形成された形態の支持装置では、キャニスタを載置した台座円板に対して以下に説明する自動調芯機能を持つという特徴がある。
すなわち、この支持装置では、耐火性台座円板に向かって支持体の先端部を前進させ爪部を台座円板の外周部を下から支持できるのであるが、この場合、台座円板がケーシングの中心に正確に位置していないときには、支持体の先端部を前進させたときに前記段差の垂直面が台座円板の外周面に一斉に当接せず、偏移した側が先に当接することとなり、ケーシング自体が台座円板から反作用による応力を受ける。そして、この場合、ケ−シングは、昇降部材に前後、左右に水平移動自在に吊設されているので、前記の偏向を解消する方向に移動させられることになるから、常に台座円板をケーシングの中心で支持できるという特有の作用を有する。
【0012】
また、前記形態のシリンダ装置からなる把持装置では、キャニスタの胴体部を3か所以上から把持するので、傾動させても横方向の移動やずれを確実に防止できる。また、前記ケーシングに冷却ジャケットと耐火断熱材を配設した形態では、遮熱性と保温性がより向上する、ケーシングの上部にストッパ手段を設けた形態では、キャニスタの保持がより確実になるなどの利点が得られるのである。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明のキャニスタ傾動出湯装置に係る実施形態について、図1〜10を参照しながら説明する。
本発明のキャニスタ傾動出湯装置は、図1、2、3に示すように、インキャン式高周波溶融炉から取り出されたキャニスタ1を収納可能な寸法に形成された、蓋21によって上面を閉鎖し下面が開放された円筒状ケーシング2が、装置駆体、例えば、後記のように昇降可能に設けられた横架桁材からなる昇降部材31、31の下方に連なるサイドフレーム61、61に設けられた軸受け62、62にその支軸22、22によって軸支される状態で、昇降部材31、31に吊設されている。
【0014】
そして、前記ケーシング2の一方の支軸22は、減速ギヤ63を介してギアヤードモータ64に接続され、図3の鎖線で表す直立状態と、実線で表す傾斜状態に示すように、支軸22、22を中心にして傾動させ、あるいは復帰させる傾動繰り返し動作を行わせ、内部に収容したキャニスタ1中の溶湯を予め準備した受容器内に出湯させることができるよう構成されている。
【0015】
また、このケーシング2の出湯側の側胴面には、溶湯が通過できる出湯開口23が出湯の障害にならないよう設けられている。この出湯開口23の形状は、図1のように長円形の他に、下方部分を開放した逆U字状の形成してもよい。
本発明ではこのように、ケーシング2は、サイドフレーム61によって両側から軸支されているので、出湯時に流下する溶湯の流れの直下および近傍には、他の機械装置は存在せず、仮に溶湯がキャニスタ表面に伝わって垂れ流れても、周辺の安全が十分に保つことができる。
【0016】
そして、本発明の次の特徴とするところは、前記ケーシング2には、図1に示すように、耐火性台座円板13を介して前記キャニスタ1を下方から支持する支持装置4と、図7に示すように、そのキャニスタ1の胴部に直接当接させて横移動を防止する把持装置5を配備した点にあるが、先ず、そのキャニスタ1を支持する支持装置4について、図4、5に基づいて説明する。
【0017】
ケーシング2の下端部に設けられた支持装置4と、台座円板13、キャニスタ1との位置関係を示す縦断面図である図5、およびそのa−a断面略図である図4において、この支持装置4は、前記ケーシングの下端周縁部24に、内方に進退可能に配設された複数の支持体40からなるものである。
この図4、5に例示した実施形態では、一対の支持体40の後部レバー41、41にはシリンダ装置42が架設され、このシリンダ装置42を伸縮駆動することで支軸43、43を中心に支持体40を回動させ、その先端部分44をケーシング2の中心方向に同時に前進または後退可能にしている。
【0018】
そして、その支持体40の先端部44には、キャニスタ1が載置される耐火性台座円板13の外周部13aを下から支承するための突出した爪部45と、その爪部45の基部に垂直面を持つ段差46が形成されている。
図示の形態では、このような一対の支持体40、40の組合せが4対(40a、40b、40c、40d)配設され、合計8個の支持体40が設けられていることになり、それら支持体の全ての先端部44はそれぞれのシリンダ装置42によって同期して、前記ケーシング2の中心方向に同時に前進、後退するものとされている。
【0019】
この場合、前記ケーシング2が、昇降部材31、31に対して前後、左右に水平移動自在に吊設されていることが重要であって、この実施形態では、図1、2に例示するように、前記ケーシング2が取り付けられたサイドフレーム41、41を、昇降部材31、31の下面に設けられた4個のフローティング機構32、32によって吊設し、ケーシング2を間接的に吊設している。
【0020】
このフローティング機構32としては、図6に示すように、直交させた上側ガイドレール32aと上側ガイドレール32bとを、スライドブロック33cで連結して、スライドブロック32cとそれぞれのガイドレール32a、32bとをベアリングなどを介在させて滑動自在に構成したメカニズムを利用すればよい。このようなフローティング機構32によって、サイドフレーム61、61と昇降部材31、31とを機械的に連結すれば、サイドフレーム61、61が昇降部材31、31に対して、水平面において前後左右に容易に移動させることができ、すなわち同時にケーシング2も同様に吊設状態で移動可能となる。
【0021】
本発明では、ケーシング2の吊設構造とキャニスタ1の支持構造とを、上記のように構成することにより、耐火性台座円板13に向かって支持体40の先端部44を前進させ爪部45を台座円板13の外周部13を下から支持できるのであるが、この場合、台座円板13がケーシング2の中心に正確に位置していないときには、全ての支持体40の先端部44を同期させて前進させたときに前記段差46の垂直面が台座円板13の外周部13aの外周面には一斉に当接しないことになり、偏移した側の部位の方が先に当接する結果、ケーシング2自体は、キャニスタ1を載置した台座円板13から反作用による応力を受ける。そして、このケ−シング2は、前記した通り、水平面内に前後および左右に移動可能に吊設されているので、前記応力により位置の偏向を解消する方向に移動させられるから、常にケ−シング2の中心にキャニスタ1を位置させ支持できるという、調芯機能を備えているのである。
【0022】
このようにキャニスタ1を載置した台座円板13を支持し、調芯操作を行う場合は、上記フローティング機構32が機能する必要があるが、調芯操作が完了した時点以降は、フローティング機構32が働いていると、ケーシング2に連なる装置全体が僅かな外力によって動いてしまうという不必要な不安定な状態が継続するので、上記フローティング機構32の機能を停止する必要がある。
この目的のために、フローティングロック33が、図2に示すように、サイドフレーム61の上部のサイドビーム61aと昇降部材31との間に設けられている。このフローティングロック33としては、サイドビーム61aと昇降部材31とを機械的に結合する機構であればよいが、図9の事例では、昇降部材31側から上下動するブレーキパッド33aが設けられ、これに対向して設けられた固定ベレーキ面33bを押し圧することにより、サイドフレーム61が昇降部材31に対してロックされ移動できなくなるよう構成されている。なお、サイドビーム61aに立設されたピン33cは、昇降部材31側の穴部33dに先端を突出させ、サイドフレーム61と昇降部材31との相対的移動距離を制限している安全機構である。
【0023】
次に、本発明の他の特徴である、ケーシング2に配備された前記把持装置5について図7、8を参照して説明する。
この把持装置5は、前記ケーシング2の胴体外周部の3か所以上に配設したシリンダ装置(本発明の装置の俯瞰図である図8の事例では4個のシリンダ装置51、51と52、52)からなり、この各シリンダ装置51、52には、断面図である図7に示すように、ケーシング2の内部に収容したキャニスタ1の胴体部に当接可能な先端受け部53、54を設けたピストンロッド55、56を前記ケーシング2の内部に向けて進退可能に備えたものである。
そして、キャニスタ1をケーシング2に収容した状態で、各シリンダ装置51、52を起動して各先端受け部53、54をキャニスタ1の胴体部に周囲から圧接させ、ケーシング2の中心に一致させてキャニスタ1が移動しないように把持する。
【0024】
以上の目的から、キャニスタ1の出湯側に設けられるシリンダ装置51、51は、ケーシング2の出湯開口23を挟んだ両側に配設するのが良く、反対側のシリンダ装置52は、図8のように2個でもよいが、把持強度があれば1個でも間に合わせることができる。また、このシリンダ装置51、52の先端受け部53、54の接触部分は、十分な高さと幅を備えるようにし、かつ、酸化防止処理を施した黒鉛材料を使用するのが適当であり、かくして、高温時の強度を保持し、キャニスタ1表面の溶融物の濡れによっても浸食されることがなく、寿命を長くできる。
【0025】
以上説明したように、本発明ではキャニスタ1をケーシング2内の中心にしっかり保持する支持装置と把持装置を備えているので、本発明が対象とするキャニスタ1の重量の大部分は、耐火性台座円板13を介して安全に支持されるから、キャニスタ1は、反復使用することで溶湯の浸食により壁厚さが減肉し、多少の強度劣化が生じても安全に使用できる利点が得られ、また、出湯時には、出湯側の胴体部を左右2個の先端受け部53、53と、反対側の先端受け部54によって挟み付けて把持するので、キャニスタに無理な力がかからない利点もある。
【0026】
ここで、サイドフレーム61、61を吊設する昇降部材31、31の昇降構造および装置の骨組み構造について説明する。
この昇降部材31は、図2に示すように、装置の外構駆体を構成する横架材71上に位置する可動フレーム35から、2本のクロスロッド34a、34bに連結され吊設されている。この可動フレーム35は、前後の車輪38、38を備え、横架材71上のガイドレール72上を左右に移動可能に配設されている。さらに、前記横架材71は図2に示す通り左右の柱73、73によって、図1に示す正面からみて左右に一対配置されている。
【0027】
そして、前記2本のクロスロッド34a、34bは、中央の結合軸34cによって連結され、かつクロスロッド34a、34bの一方端は、可動フレーム35の固定軸受35a、および昇降部材31の固定軸受31aに固定連結されるとともに、他方端は、可動フレーム35の可動軸受35b、および昇降部材31の固定軸受31bに左右に移動自在に連結されている。従って、昇降部材31は、可動フレーム35に対して並行状態を維持しながら上下に昇降させることができる。なお、この2本のクロスロッド34a、34bは、図1に示す正面からみて左右に一対配置されているのは言うまでもない。
【0028】
このように構成された昇降部材31の昇降機構を説明すると、図2において、この昇降部材31の後端部分に設けられたモータ付きジャッキ装置37が、前記可動フレーム35から垂下されたネジ付きロッド36に螺合して組付けられ、このジャッキ装置37を作動させて昇降部材31をネジ付きロッド36に沿って昇降駆動させることができる。この実施形態では、前記クロスロッド34a、34bにより吊設構造と1本のネジ付きロッド36によるジャッキ構造との組合せが用いられているが、昇降部材31を水平に維持しながら昇降させ得る機構であれば、他の方式も採用可能である。
【0029】
次に、本発明の他の実施形態について述べると、本発明の主要構成部品であるケーシング2は適宜な金属材から形成されるが、その壁構造として、外周表面側には内部からの高温の放熱を遮断するよう冷却手段を設けるのが好ましく、例えば、冷却用水を流通させる水冷ジャケットを用いるのが適当である。また、この場合には、その内側にはセラミックファイバなどからなる耐火断熱材をライニングして収容するキャニスタ1を保温するようにすることが特に重要である。かくして、そのキャニスタ1を保温しかつ外周を冷却できるので、周辺の装置類に対する遮熱性に優れ、確実に過熱を防止できるうえ、ケーシング内面の保温断熱材により、キャニスタ1内の溶湯の流動性を十分に保つことができる利点が得られる。
【0030】
さらに、本発明の好ましい実施形態について述べると、図10に例示するように、前記ケーシング2の上部には、内部に収容したキャニスタ1の上端周縁部12を直接、押圧して上下方向の位置ずれを防止するずれ止め手段8を設けるのが好ましい。このずれ止め手段8は、ケーシング2側にレバー81とこのレバー81の先端を上下に動作させうるシリンダ装置82からなり、シリンダ装置82を駆動してレバー81の先端を内部に収容したキャニスタ1の上端周縁部12に直接押しつけて、上方へずれるのを防止できる。従って、ケーシング2を傾動させてキャニスタ1から出湯させるときに、前記胴体部の把持装置5とあいまって、キャニスタ1を確実に保持するという、安全上の装置として機能する。
【0031】
次に、本発明のキャニスタ傾動出湯装置の操作手順について説明する。
本発明のキャニスタ傾動出湯装置は、以下の操作手順によって運転されることにより、前述の作用効果を奏して所期の目的を達することができるのである。
(1)溶融前の準備操作
台座円板13とこれに載置した新品の空キャニスタ1を対象にして、以下操作を行う(空なので出湯は行われない)。この操作は、最初に台座円板3に空キャニスタ1を載置したとき、台座円板13とキャニスタ1の中心がずれていたとしても、下記(5)(6)の操作によって、ずれを矯正するためである。
【0032】
(2)キャニスタの受け入れ
インキャン式高周波溶融炉から取り出したキャニスタをコンベヤ上の所定の操作位置に停止させる。
(3)ケーシングの位置決め
ジャッキ装置を駆動し、ケーシングを降下させ、キャニスタを収容する。
(4)フロ−ティング・ロックのオフ
フロ−ティング・ロックを解除する。
【0033】
(5)台座円板のチャック
支持装置によって、台座円板を基準にして調芯操作を行うとともに、台座円板ごとキャニスタを支持する。
(6)キャニスタの胴体把持
把持装置を作動し、キャニスタをその胴体部で把持する。
(7)キャニスタの上端抑え
キャニスタの上端縁をストッパ装置で上から押さえる。
(8)フロ−ティング・ロックのオン
フロ−ティング・ロックを作動させ、動かないように固定する。
【0034】
(9)可動フレーム(キャニスタ)の移動
可動フレームを前進させ、キャニスタの出湯位置を溶湯の受容器の位置に合わせる。
(10)キャニスタの傾動、出湯
ケーシングを傾動させ、溶湯をキャニスタから出湯させる。
(11)キャニスタの取り出し、搬出
出湯終了後、前記操作を逆に行い、空になったキャニスタを溶融炉に戻す準備を終える。
【0035】
【発明の効果】
本発明のキャニスタ傾動出湯装置は、以上に説明したように構成されているので、高温度のキャニスタから溶湯の流動性を保ちながら、安全に出湯させることができ、周辺の装置類に対する伝熱を抑制できるから悪影響を与えない。また、キャニスタ自体を損傷することもないので、高価なキャニスタを繰り返し使用でき、処理コストの削減に大いに寄与できるという優れた効果がある。よって本発明は従来の問題点を解消したキャニスタ傾動出湯装置として、その工業的価値は極めて大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のキャニスタ傾動出湯装置の正面図。
【図2】本発明のキャニスタ傾動出湯装置の側面図。
【図3】本発明のケーシングの傾動操作を説明するための要部側面断面図。
【図4】図5のa−a方向の断面略図。
【図5】本発明の支持装置、台座円板、キャニスタの関係を示す縦断面図。
【図6】本発明のフローティング機構を示す要部斜視図。
【図7】本発明の把持装置(出湯側A、反対側B)の要部断面図。
【図8】本発明のキャニスタ傾動出湯装置の俯瞰図。
【図9】本発明のフロ−ティング・ロックを示す要部斜視図。
【図10】本発明のストッパ装置を示す要部断面図。
【符号の説明】
1 キャニスタ、13 台座円板、13a 外周部、2 ケーシング、21 蓋、22 支軸、23 出湯開口、24 下端周縁部、31 昇降部材、32 フローティング機構、32a 上側ガイドレール、32b 下側ガイドレール、32c スライドブロック、33 フローティングロック、33a ブレーキパッド、33b 固定ベレーキ面、33c ピン、33d 穴部、4 支持装置、40 支持体、42 シリンダ装置、44 先端部、45 爪部、46 段差、5 把持装置、51、52 シリンダ装置、53、54 先端受け部、55、56 ピストンロッド、61 サイドフレーム、61a サイドビーム、62 軸受け、63 減速ギヤ、64 ギアヤードモータ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、原子力関連施設で発生する放射性不燃廃棄物を減容、安定化するための溶融プラントに設けられるインキャン式高周波溶融炉から取り出される高温の溶湯の入ったキャニスタの取扱いの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
原子力発電所などから発生する雑固体廃棄物の最終処理法として溶融処理が採用されている。このような目的の放射性廃棄物の焼却溶融装置としては、例えば、特開昭61−209399号公報には、導電性を有し誘導加熱可能なC−SiC系などのセラミック発熱体からなるキャニスタ(ルツボ)に放射性廃棄物を収容して、1300〜1600℃の高温で溶融した後、そのまま冷却して溶融物をその容器中に固化させる、いわゆるインキャン方式といわれる方法が開示されている。この場合、固化物は容器とともに、ドラム缶などに収容されて所定の廃棄処理に供される。
【0003】
ところで、このインキャン方式では、キャニスタごとに200リットルドラム缶に入れて埋設処分する必要があることから、キャニスタの大きさに制限を受けるとともに、高価なキャニスタは使い捨てとなり繰り返し使用ができないため処理コストが高額になるという問題があった。
【0004】
そこで、高温の溶融物を入れたキャニスタを外部に取り出し、このキャニスタを傾けて内容物を別途準備した受け容器に流出させるようにキャニスタを傾動させる出湯装置が検討されている。ところが、このキャニスタ傾動出湯装置の実用化には以下に示すようないろいろな問題があった。
【0005】
(1)最高1600℃のキャニスタを少なくとも数分間保持する機構が必要であるが、その輻射熱によって作動不良を生じ易い。一方、溶湯が冷却され温度が下がると粘性があがり、出湯が困難となる。
(2)キャニスタと溶湯の合計重量が重く(最大700kg)、キャニスタ自体は金属などと比較すると衝撃に弱いなど、強度上問題があるので、破損しないように、かつ確実に支持して傾動させる必要があった。とくに、高温時のキャニスタ表面は、溶融した酸化防止材で被覆された状態となっているので、把持する機材に付着しないよう形状にする必要があった。
(3)出湯時に、溶湯が飛散して周辺の装置、部材類に触れると損傷するおそれがあり、また、溶湯を受ける受け容器との位置関係を正確に設定できることが要求された。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、溶湯の入った高温度のキャニスタの保温と周辺の装置類への遮熱を図るとともに、キャニスタを正確に、かつ確実に支持しながら、傾動させ出湯させることが可能となるキャニスタ傾動出湯装置を提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の問題は、インキャン式高周波溶融炉から取り出された溶湯を入れたキャニスタを収納可能な蓋付き円筒状ケーシングが装置駆体に傾動自在に配設され、そのキャニスタを前記ケーシングとともに傾動させて内部の溶湯を出湯させるようにしたキャニスタ傾動出湯装置であって、前記ケーシングは、昇降部材である横架桁材に水平方向に移動自在に吊設されるとともに、そのケーシングには、耐火性台座円板を介して前記キャニスタを下方から支持する支持手段と、そのキャニスタの胴部に当接させて横移動を防止する把持手段を配備していて、その支持手段が、前記ケーシングの下端周縁部に配設された複数の支持体からなり、その支持体の先端部には、前記耐火性台座円板の外周部を下から支持可能に突出した爪部と、その爪部の基部に垂直面を持つ段差が形成され、かつこの複数の支持体の全ての先端部を、前記ケーシングの中心方向に同時に前進後退可能にする駆動装置を備えたものであることを特徴とする本発明のキャニスタ傾動出湯装置によって解決することができる。
【0008】
【0009】
さらに、本発明は、ケーシングに配備された前記把持手段が、前記ケーシングの胴体外周部の3か所以上に配設されたシリンダ装置であって、内部に収容したキャニスタの胴体部に当接可能な先端受け部を前記ケーシングの内部に向けて進退自在に備えたものである形態に、好ましく具体化することができる。
また、本発明では、前記ケーシングの外周表面側には冷却ジャケットを配設し、内側には耐火断熱材を配設した形態や、前記ケーシングの上部には、内部に収容したキャニスタの上端周縁部に係止して上下方向の位置ずれを防止するストッパ手段を設けた形態に具多化するのも好ましい。
【0010】
このような本発明によれば、インキャン式高周波溶融炉から取り出された、溶湯を入れた高温度のキャニスタを蓋付き円筒状ケーシングに収容し、下方から支持するとともに側方から胴部を把持しながら、傾動させて出湯できるので、キャニスタに衝撃などを与えるおそれもなく、確実に安全に傾動させ出湯させることができる。また、その輻射熱を遮断できるので、周囲の機器に悪影響を与えることがないうえ、溶湯を保温できるのでその粘性を低く保つことができるなどの利点がある。
【0011】
また、前記した、複数の支持体の先端部に、キャニスタを乗せた耐火性台座円板を支持するための爪部と、その爪部の基部に垂直面を持つ段差が形成された形態の支持装置では、キャニスタを載置した台座円板に対して以下に説明する自動調芯機能を持つという特徴がある。
すなわち、この支持装置では、耐火性台座円板に向かって支持体の先端部を前進させ爪部を台座円板の外周部を下から支持できるのであるが、この場合、台座円板がケーシングの中心に正確に位置していないときには、支持体の先端部を前進させたときに前記段差の垂直面が台座円板の外周面に一斉に当接せず、偏移した側が先に当接することとなり、ケーシング自体が台座円板から反作用による応力を受ける。そして、この場合、ケ−シングは、昇降部材に前後、左右に水平移動自在に吊設されているので、前記の偏向を解消する方向に移動させられることになるから、常に台座円板をケーシングの中心で支持できるという特有の作用を有する。
【0012】
また、前記形態のシリンダ装置からなる把持装置では、キャニスタの胴体部を3か所以上から把持するので、傾動させても横方向の移動やずれを確実に防止できる。また、前記ケーシングに冷却ジャケットと耐火断熱材を配設した形態では、遮熱性と保温性がより向上する、ケーシングの上部にストッパ手段を設けた形態では、キャニスタの保持がより確実になるなどの利点が得られるのである。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明のキャニスタ傾動出湯装置に係る実施形態について、図1〜10を参照しながら説明する。
本発明のキャニスタ傾動出湯装置は、図1、2、3に示すように、インキャン式高周波溶融炉から取り出されたキャニスタ1を収納可能な寸法に形成された、蓋21によって上面を閉鎖し下面が開放された円筒状ケーシング2が、装置駆体、例えば、後記のように昇降可能に設けられた横架桁材からなる昇降部材31、31の下方に連なるサイドフレーム61、61に設けられた軸受け62、62にその支軸22、22によって軸支される状態で、昇降部材31、31に吊設されている。
【0014】
そして、前記ケーシング2の一方の支軸22は、減速ギヤ63を介してギアヤードモータ64に接続され、図3の鎖線で表す直立状態と、実線で表す傾斜状態に示すように、支軸22、22を中心にして傾動させ、あるいは復帰させる傾動繰り返し動作を行わせ、内部に収容したキャニスタ1中の溶湯を予め準備した受容器内に出湯させることができるよう構成されている。
【0015】
また、このケーシング2の出湯側の側胴面には、溶湯が通過できる出湯開口23が出湯の障害にならないよう設けられている。この出湯開口23の形状は、図1のように長円形の他に、下方部分を開放した逆U字状の形成してもよい。
本発明ではこのように、ケーシング2は、サイドフレーム61によって両側から軸支されているので、出湯時に流下する溶湯の流れの直下および近傍には、他の機械装置は存在せず、仮に溶湯がキャニスタ表面に伝わって垂れ流れても、周辺の安全が十分に保つことができる。
【0016】
そして、本発明の次の特徴とするところは、前記ケーシング2には、図1に示すように、耐火性台座円板13を介して前記キャニスタ1を下方から支持する支持装置4と、図7に示すように、そのキャニスタ1の胴部に直接当接させて横移動を防止する把持装置5を配備した点にあるが、先ず、そのキャニスタ1を支持する支持装置4について、図4、5に基づいて説明する。
【0017】
ケーシング2の下端部に設けられた支持装置4と、台座円板13、キャニスタ1との位置関係を示す縦断面図である図5、およびそのa−a断面略図である図4において、この支持装置4は、前記ケーシングの下端周縁部24に、内方に進退可能に配設された複数の支持体40からなるものである。
この図4、5に例示した実施形態では、一対の支持体40の後部レバー41、41にはシリンダ装置42が架設され、このシリンダ装置42を伸縮駆動することで支軸43、43を中心に支持体40を回動させ、その先端部分44をケーシング2の中心方向に同時に前進または後退可能にしている。
【0018】
そして、その支持体40の先端部44には、キャニスタ1が載置される耐火性台座円板13の外周部13aを下から支承するための突出した爪部45と、その爪部45の基部に垂直面を持つ段差46が形成されている。
図示の形態では、このような一対の支持体40、40の組合せが4対(40a、40b、40c、40d)配設され、合計8個の支持体40が設けられていることになり、それら支持体の全ての先端部44はそれぞれのシリンダ装置42によって同期して、前記ケーシング2の中心方向に同時に前進、後退するものとされている。
【0019】
この場合、前記ケーシング2が、昇降部材31、31に対して前後、左右に水平移動自在に吊設されていることが重要であって、この実施形態では、図1、2に例示するように、前記ケーシング2が取り付けられたサイドフレーム41、41を、昇降部材31、31の下面に設けられた4個のフローティング機構32、32によって吊設し、ケーシング2を間接的に吊設している。
【0020】
このフローティング機構32としては、図6に示すように、直交させた上側ガイドレール32aと上側ガイドレール32bとを、スライドブロック33cで連結して、スライドブロック32cとそれぞれのガイドレール32a、32bとをベアリングなどを介在させて滑動自在に構成したメカニズムを利用すればよい。このようなフローティング機構32によって、サイドフレーム61、61と昇降部材31、31とを機械的に連結すれば、サイドフレーム61、61が昇降部材31、31に対して、水平面において前後左右に容易に移動させることができ、すなわち同時にケーシング2も同様に吊設状態で移動可能となる。
【0021】
本発明では、ケーシング2の吊設構造とキャニスタ1の支持構造とを、上記のように構成することにより、耐火性台座円板13に向かって支持体40の先端部44を前進させ爪部45を台座円板13の外周部13を下から支持できるのであるが、この場合、台座円板13がケーシング2の中心に正確に位置していないときには、全ての支持体40の先端部44を同期させて前進させたときに前記段差46の垂直面が台座円板13の外周部13aの外周面には一斉に当接しないことになり、偏移した側の部位の方が先に当接する結果、ケーシング2自体は、キャニスタ1を載置した台座円板13から反作用による応力を受ける。そして、このケ−シング2は、前記した通り、水平面内に前後および左右に移動可能に吊設されているので、前記応力により位置の偏向を解消する方向に移動させられるから、常にケ−シング2の中心にキャニスタ1を位置させ支持できるという、調芯機能を備えているのである。
【0022】
このようにキャニスタ1を載置した台座円板13を支持し、調芯操作を行う場合は、上記フローティング機構32が機能する必要があるが、調芯操作が完了した時点以降は、フローティング機構32が働いていると、ケーシング2に連なる装置全体が僅かな外力によって動いてしまうという不必要な不安定な状態が継続するので、上記フローティング機構32の機能を停止する必要がある。
この目的のために、フローティングロック33が、図2に示すように、サイドフレーム61の上部のサイドビーム61aと昇降部材31との間に設けられている。このフローティングロック33としては、サイドビーム61aと昇降部材31とを機械的に結合する機構であればよいが、図9の事例では、昇降部材31側から上下動するブレーキパッド33aが設けられ、これに対向して設けられた固定ベレーキ面33bを押し圧することにより、サイドフレーム61が昇降部材31に対してロックされ移動できなくなるよう構成されている。なお、サイドビーム61aに立設されたピン33cは、昇降部材31側の穴部33dに先端を突出させ、サイドフレーム61と昇降部材31との相対的移動距離を制限している安全機構である。
【0023】
次に、本発明の他の特徴である、ケーシング2に配備された前記把持装置5について図7、8を参照して説明する。
この把持装置5は、前記ケーシング2の胴体外周部の3か所以上に配設したシリンダ装置(本発明の装置の俯瞰図である図8の事例では4個のシリンダ装置51、51と52、52)からなり、この各シリンダ装置51、52には、断面図である図7に示すように、ケーシング2の内部に収容したキャニスタ1の胴体部に当接可能な先端受け部53、54を設けたピストンロッド55、56を前記ケーシング2の内部に向けて進退可能に備えたものである。
そして、キャニスタ1をケーシング2に収容した状態で、各シリンダ装置51、52を起動して各先端受け部53、54をキャニスタ1の胴体部に周囲から圧接させ、ケーシング2の中心に一致させてキャニスタ1が移動しないように把持する。
【0024】
以上の目的から、キャニスタ1の出湯側に設けられるシリンダ装置51、51は、ケーシング2の出湯開口23を挟んだ両側に配設するのが良く、反対側のシリンダ装置52は、図8のように2個でもよいが、把持強度があれば1個でも間に合わせることができる。また、このシリンダ装置51、52の先端受け部53、54の接触部分は、十分な高さと幅を備えるようにし、かつ、酸化防止処理を施した黒鉛材料を使用するのが適当であり、かくして、高温時の強度を保持し、キャニスタ1表面の溶融物の濡れによっても浸食されることがなく、寿命を長くできる。
【0025】
以上説明したように、本発明ではキャニスタ1をケーシング2内の中心にしっかり保持する支持装置と把持装置を備えているので、本発明が対象とするキャニスタ1の重量の大部分は、耐火性台座円板13を介して安全に支持されるから、キャニスタ1は、反復使用することで溶湯の浸食により壁厚さが減肉し、多少の強度劣化が生じても安全に使用できる利点が得られ、また、出湯時には、出湯側の胴体部を左右2個の先端受け部53、53と、反対側の先端受け部54によって挟み付けて把持するので、キャニスタに無理な力がかからない利点もある。
【0026】
ここで、サイドフレーム61、61を吊設する昇降部材31、31の昇降構造および装置の骨組み構造について説明する。
この昇降部材31は、図2に示すように、装置の外構駆体を構成する横架材71上に位置する可動フレーム35から、2本のクロスロッド34a、34bに連結され吊設されている。この可動フレーム35は、前後の車輪38、38を備え、横架材71上のガイドレール72上を左右に移動可能に配設されている。さらに、前記横架材71は図2に示す通り左右の柱73、73によって、図1に示す正面からみて左右に一対配置されている。
【0027】
そして、前記2本のクロスロッド34a、34bは、中央の結合軸34cによって連結され、かつクロスロッド34a、34bの一方端は、可動フレーム35の固定軸受35a、および昇降部材31の固定軸受31aに固定連結されるとともに、他方端は、可動フレーム35の可動軸受35b、および昇降部材31の固定軸受31bに左右に移動自在に連結されている。従って、昇降部材31は、可動フレーム35に対して並行状態を維持しながら上下に昇降させることができる。なお、この2本のクロスロッド34a、34bは、図1に示す正面からみて左右に一対配置されているのは言うまでもない。
【0028】
このように構成された昇降部材31の昇降機構を説明すると、図2において、この昇降部材31の後端部分に設けられたモータ付きジャッキ装置37が、前記可動フレーム35から垂下されたネジ付きロッド36に螺合して組付けられ、このジャッキ装置37を作動させて昇降部材31をネジ付きロッド36に沿って昇降駆動させることができる。この実施形態では、前記クロスロッド34a、34bにより吊設構造と1本のネジ付きロッド36によるジャッキ構造との組合せが用いられているが、昇降部材31を水平に維持しながら昇降させ得る機構であれば、他の方式も採用可能である。
【0029】
次に、本発明の他の実施形態について述べると、本発明の主要構成部品であるケーシング2は適宜な金属材から形成されるが、その壁構造として、外周表面側には内部からの高温の放熱を遮断するよう冷却手段を設けるのが好ましく、例えば、冷却用水を流通させる水冷ジャケットを用いるのが適当である。また、この場合には、その内側にはセラミックファイバなどからなる耐火断熱材をライニングして収容するキャニスタ1を保温するようにすることが特に重要である。かくして、そのキャニスタ1を保温しかつ外周を冷却できるので、周辺の装置類に対する遮熱性に優れ、確実に過熱を防止できるうえ、ケーシング内面の保温断熱材により、キャニスタ1内の溶湯の流動性を十分に保つことができる利点が得られる。
【0030】
さらに、本発明の好ましい実施形態について述べると、図10に例示するように、前記ケーシング2の上部には、内部に収容したキャニスタ1の上端周縁部12を直接、押圧して上下方向の位置ずれを防止するずれ止め手段8を設けるのが好ましい。このずれ止め手段8は、ケーシング2側にレバー81とこのレバー81の先端を上下に動作させうるシリンダ装置82からなり、シリンダ装置82を駆動してレバー81の先端を内部に収容したキャニスタ1の上端周縁部12に直接押しつけて、上方へずれるのを防止できる。従って、ケーシング2を傾動させてキャニスタ1から出湯させるときに、前記胴体部の把持装置5とあいまって、キャニスタ1を確実に保持するという、安全上の装置として機能する。
【0031】
次に、本発明のキャニスタ傾動出湯装置の操作手順について説明する。
本発明のキャニスタ傾動出湯装置は、以下の操作手順によって運転されることにより、前述の作用効果を奏して所期の目的を達することができるのである。
(1)溶融前の準備操作
台座円板13とこれに載置した新品の空キャニスタ1を対象にして、以下操作を行う(空なので出湯は行われない)。この操作は、最初に台座円板3に空キャニスタ1を載置したとき、台座円板13とキャニスタ1の中心がずれていたとしても、下記(5)(6)の操作によって、ずれを矯正するためである。
【0032】
(2)キャニスタの受け入れ
インキャン式高周波溶融炉から取り出したキャニスタをコンベヤ上の所定の操作位置に停止させる。
(3)ケーシングの位置決め
ジャッキ装置を駆動し、ケーシングを降下させ、キャニスタを収容する。
(4)フロ−ティング・ロックのオフ
フロ−ティング・ロックを解除する。
【0033】
(5)台座円板のチャック
支持装置によって、台座円板を基準にして調芯操作を行うとともに、台座円板ごとキャニスタを支持する。
(6)キャニスタの胴体把持
把持装置を作動し、キャニスタをその胴体部で把持する。
(7)キャニスタの上端抑え
キャニスタの上端縁をストッパ装置で上から押さえる。
(8)フロ−ティング・ロックのオン
フロ−ティング・ロックを作動させ、動かないように固定する。
【0034】
(9)可動フレーム(キャニスタ)の移動
可動フレームを前進させ、キャニスタの出湯位置を溶湯の受容器の位置に合わせる。
(10)キャニスタの傾動、出湯
ケーシングを傾動させ、溶湯をキャニスタから出湯させる。
(11)キャニスタの取り出し、搬出
出湯終了後、前記操作を逆に行い、空になったキャニスタを溶融炉に戻す準備を終える。
【0035】
【発明の効果】
本発明のキャニスタ傾動出湯装置は、以上に説明したように構成されているので、高温度のキャニスタから溶湯の流動性を保ちながら、安全に出湯させることができ、周辺の装置類に対する伝熱を抑制できるから悪影響を与えない。また、キャニスタ自体を損傷することもないので、高価なキャニスタを繰り返し使用でき、処理コストの削減に大いに寄与できるという優れた効果がある。よって本発明は従来の問題点を解消したキャニスタ傾動出湯装置として、その工業的価値は極めて大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のキャニスタ傾動出湯装置の正面図。
【図2】本発明のキャニスタ傾動出湯装置の側面図。
【図3】本発明のケーシングの傾動操作を説明するための要部側面断面図。
【図4】図5のa−a方向の断面略図。
【図5】本発明の支持装置、台座円板、キャニスタの関係を示す縦断面図。
【図6】本発明のフローティング機構を示す要部斜視図。
【図7】本発明の把持装置(出湯側A、反対側B)の要部断面図。
【図8】本発明のキャニスタ傾動出湯装置の俯瞰図。
【図9】本発明のフロ−ティング・ロックを示す要部斜視図。
【図10】本発明のストッパ装置を示す要部断面図。
【符号の説明】
1 キャニスタ、13 台座円板、13a 外周部、2 ケーシング、21 蓋、22 支軸、23 出湯開口、24 下端周縁部、31 昇降部材、32 フローティング機構、32a 上側ガイドレール、32b 下側ガイドレール、32c スライドブロック、33 フローティングロック、33a ブレーキパッド、33b 固定ベレーキ面、33c ピン、33d 穴部、4 支持装置、40 支持体、42 シリンダ装置、44 先端部、45 爪部、46 段差、5 把持装置、51、52 シリンダ装置、53、54 先端受け部、55、56 ピストンロッド、61 サイドフレーム、61a サイドビーム、62 軸受け、63 減速ギヤ、64 ギアヤードモータ。
Claims (4)
- インキャン式高周波溶融炉から取り出された溶湯を入れたキャニスタを収納可能な蓋付き円筒状ケーシングが装置駆体に傾動自在に配設され、そのキャニスタを前記ケーシングとともに傾動させて内部の溶湯を出湯させるようにしたキャニスタ傾動出湯装置であって、前記ケーシングは、昇降部材である横架桁材に水平方向に移動自在に吊設されるとともに、そのケーシングには、耐火性台座円板を介して前記キャニスタを下方から支持する支持手段と、そのキャニスタの胴部に当接させて横移動を防止する把持手段を配備していて、その支持手段が、前記ケーシングの下端周縁部に配設された複数の支持体からなり、その支持体の先端部には、前記耐火性台座円板の外周部を下から支持可能に突出した爪部と、その爪部の基部に垂直面を持つ段差が形成され、かつこの複数の支持体の全ての先端部を、前記ケーシングの中心方向に同時に前進後退可能にする駆動装置を備えたものであることを特徴とするキャニスタ傾動出湯装置。
- ケーシングに配備された前記把持手段が、前記ケーシングの胴体外周部の3か所以上に配設されたシリンダ装置であって、内部に収容したキャニスタの胴体部に当接可能な先端受け部を前記ケーシングの内部に向けて進退自在に備えたものである請求項1に記載のキャニスタ傾動出湯装置。
- 前記ケーシングの外周表面側には冷却ジャケットを配設し、内側には耐火断熱材を配設した請求項1または2に記載のキャニスタ傾動出湯装置。
- 前記ケーシングの上部には、内部に収容したキャニスタの上端周縁部に押圧して上下方向の位置ずれを防止するずれ止め手段を設けた請求項2または3に記載のキャニスタ傾動出湯装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP36918599A JP3647341B2 (ja) | 1999-12-27 | 1999-12-27 | キャニスタ傾動出湯装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP36918599A JP3647341B2 (ja) | 1999-12-27 | 1999-12-27 | キャニスタ傾動出湯装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2001183497A JP2001183497A (ja) | 2001-07-06 |
JP3647341B2 true JP3647341B2 (ja) | 2005-05-11 |
Family
ID=18493785
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP36918599A Expired - Fee Related JP3647341B2 (ja) | 1999-12-27 | 1999-12-27 | キャニスタ傾動出湯装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3647341B2 (ja) |
-
1999
- 1999-12-27 JP JP36918599A patent/JP3647341B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2001183497A (ja) | 2001-07-06 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JPH03505625A (ja) | シャフト状装填材料予熱装置付き溶解プラント | |
US4037828A (en) | Automatic tapping machine | |
CA1071676A (en) | Electric furnace with tiltable and removable hearth | |
ES2891318T3 (es) | Dispositivo para la colada | |
JP3647341B2 (ja) | キャニスタ傾動出湯装置 | |
KR101756457B1 (ko) | 턴디쉬 스컬 제거 및 클램핑 장치 | |
JPS6237752B2 (ja) | ||
US3799527A (en) | Suspension assembly for metal treating vessel | |
JP2005016812A (ja) | 溶融メタルの処理装置 | |
KR100530326B1 (ko) | 쉬라우드노즐 상부버너 예열장치 | |
JPH10120486A (ja) | 大口径ルツボ反転装置 | |
US3723631A (en) | Skull melting furnace with removable bottom and process for furnace operation | |
KR0117596Y1 (ko) | 침지노즐 예열용 오븐 | |
KR20050045880A (ko) | 경사가능한 금속 용기 | |
JPH06182525A (ja) | 活性金属の溶解・注入方法及びその装置 | |
US20230175779A1 (en) | Side-supported cantilever furnace roof | |
US4061318A (en) | Metallurgical vessel | |
EP0393792A2 (en) | Improvements in casting systems | |
US4217997A (en) | Arrangement at a continuous casting plant | |
JP4987464B2 (ja) | 浸漬管のスラグ除去装置および浸漬管のスラグ除去方法 | |
JP3719034B2 (ja) | 電気炉の出鋼口異物除去装置 | |
SU1104167A1 (ru) | Установка дл внепечной обработки жидкого металла | |
US3063699A (en) | Mobile apparatus for lancing molten mixtures | |
JPH11193412A (ja) | 精錬炉から発生するスラグの処理方法及び装置 | |
JP4189990B2 (ja) | インゴット取出治具 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20040203 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20040224 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20050204 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20050208 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |