JP3646448B2 - 無方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、無方向性電磁鋼板の製造方法に関し、とくに熱間圧延工程に工夫を加えることによって、コイル幅方向における磁気特性の均一化を図ろうとするものである。
【0002】
【従来の技術】
無方向性電磁鋼板は、モーターや発電機等の鉄心材料として使用され、これらの機器のエネルギー効率を高めるため、材料特性として、鉄損が小さく磁束密度が大きいことが要求される。さらに最近では、コイル内で磁気特性に変動のない製品が要求されている。
【0003】
近年、コイル内の長手方向の特性変動に結びつく熱間圧延時における温度低下をなくすために、熱間粗圧延後のシートバーを巻取った後巻戻して(以下、シートバーコイリングと称する)仕上げ圧延を行うことにより、後端部の温度低下を防止する方法が開発された(例えば特開昭57−109504号公報, 特開昭61-38703号公報, 特開昭62−248501号公報)。
【0004】
上記の方法により、確かに温度低下を防止することができる。
しかしながら、幅方向の温度分布に注目すると、幅方向中央部は温度低下抑制効果が顕著ではあるけれども、幅方向端部近傍では当然のことながら抜熱が大きいので温度低下抑制効果は小さい。その結果、シートバーコイリングを行って仕上げ圧延に供する方法では、シートバーを巻取らない通常の方法に比べ、幅方向中央部と幅方向端部近傍の温度差が助長され、かえって大きくなる。
このような幅方向の大きな温度差により、無方向性電磁鋼板においては、端部の温度降下部では磁性劣化が顕著になるという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上記の実情に鑑み開発されたもので、電磁鋼板の熱間圧延工程において、熱間粗圧延後のシートバーを巻取った後巻戻して仕上げ圧延を行う際に懸念されたコイル幅方向にわたる温度分布の不均一を効果的に解消し、コイル幅方向にわたり均一な磁気特性を得ることができる無方向性電磁鋼板の製造方法を提案することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
さて、発明者らは、上記の問題を解決すべく、シートバーコイリングを実施した際に顕著になる幅方向温度分布の不均一について調査した結果、幅方向の温度分布はシートバーの形状と深い相関があることが判明した。
そこで、この関係についてさらに詳細な研究を重ねた結果、シートバーの幅方向端部の板厚tE と幅方向中央部の板厚tC とがある特定の関係を満足するときにコイルの幅方向中央部と幅方向端部との温度差が極めて小さくなって、最終製品における磁気特性の劣化を効果的に抑制できることの知見を得た。
この発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0007】
すなわち、この発明は、C:0.01wt%以下、Si:4.5 wt%以下およびMn:2.5 wt%以下を含有する電磁鋼板用スラブを、熱間粗圧延後、得られたシートバーをコイルに巻取り、ついで巻戻しつつ仕上げ圧延を施す熱間圧延工程、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延によって最終板厚とする冷間圧延工程、および仕上げ焼鈍によって製品に最終磁気特性を発現させる磁性処理工程からなる一連の工程によって無方向性電磁鋼板を製造するに際し、
上記熱間圧延工程の粗圧延段階において、シートバーの幅方向端部の板厚(tE )と幅方向中央部の板厚(tC )とが、次式(1)
50 ≧tE −tC ≧1(mm) --- (1)
の関係を満足するような幅方向板厚制御を行い、しかるのちシートバー巻取りを行うことを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法である。
【0008】
この発明の実施に際しては、上掲式(1) の条件を満たすシートバーの幅方向端部領域からシートバーの幅方向最端部までの距離dを
0≦d≦5 (mm)
の範囲内に抑制することが有利である。
また、上掲式(1) の条件を満たすシートバーの幅方向端部領域の長さLおよび幅方向中央部のシートバー厚さtC について、次式
L≧1/4 tC
の関係を満足させることが、実施に当たり有利である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を導くに至った実験結果について具体的に説明する。
C:0.002 wt%, Si:0.35wt%, Mn:0.25wt%, Al:0.01wt%およびP:0.05wt%を含有し、残部は実質的にFeの組成になる無方向性電磁鋼板用の連続鋳造スラブ(厚み:220 mm)を、通常のガス燃焼型加熱炉にて1200℃に加熱後、熱間粗圧延によりシートバーとした後、コイルに巻取り、保熱後再び巻戻しつつ仕上げ圧延を施して板厚:2.0 mm、幅:1200mmの熱延板コイルとした。
上記の熱間粗圧延において、シートバーの幅方向中央部の厚さは40mmと一定にする一方、幅方向端部については厚さを35〜50mmの範囲で変化させた。
その後、熱延板は冷間圧延を施して厚さ:0.5 mmの冷延板とした後、 780℃,10秒間の仕上げ焼鈍を施した。
【0010】
かくして得られた製品板の幅方向中央部および端部(幅方向最端部より100 mmの位置)からL方向のエプスタインサンプルを採取し、磁気特性を測定した。
得られた結果を図1に示す。
同図より明らかなように、シートバーの幅方向端部の板厚(tE )と幅方向中央部の板厚(tC )の差が、tE −tC ≧1の関係を満足する領域では幅方向中央部と端部との磁気特性差は格段に小さくなることが判明した。
【0011】
以上の実験結果より、電磁鋼板の熱間圧延工程において、熱間粗圧延後にシートバーコイリングを行う際、幅方向にわたる温度差を抑制するためには、シートバーの幅方向中央部の板厚tC と幅方向端部の板厚tE とが、次式
tE −tC ≧1 (単位:mm)
の関係を満足すれば良いことが判る。
【0012】
しかしながら、幅方向端部の板厚が幅方向中央部の板厚に比べてあまりに大きくなると、シートバーコイリングの際に巻取りが困難となるだけでなく、仕上げ圧延後の形状制御が困難となることから、(tE −tC )の上限は50mm(好ましくは20mm)程度とすることが望ましい。
そこで、この発明では、シートバーの幅方向端部と幅方向中央部の板厚差につき、
50 ≧tE −tC ≧1 (単位:mm)
の範囲に限定したのである。
【0013】
この発明に従い、シートバー幅方向中央部の板厚tC と幅方向端部の板厚tEとを上記の範囲に制御することによって、上述のような効果が得られる理由については、必ずしも明確にされてはないが、次のとおりと考えられる。
図2に、シートバーの断面形状を、また図3には、これらのシートバーをコイリングしたときの断面形状を、それぞれ模式で示す。
図3から明らかなように、tE −tC <0の場合は端部において外気に曝される表面積が大きく、従って抜熱も大きい。また、tE −tC =0の場合はtE −tC <0の場合に比べると端部からの抜熱は幾分緩和されるとはいうものの、この場合も端部からの抜熱は避けられないので、やはり端部における磁性劣化を招く。
これに対して、tE −tC >0の場合は、端部で密閉するような形状となることおよび端部の熱容量が大きくことの2つの理由から抜熱が抑制されると考えられ、このような効果が顕著になるのが、前述したtE −tC ≧1(mm) の範囲であると考えられる。
【0014】
なお、図2,3では、tE −tC >0の場合として、幅方向最端部が最大厚みとなる場合について示したが、この発明における幅方向端部厚みとはこれだけに限るものではなく、図4に示すような場合も含まれる。
すなわち、この発明における幅方向端部厚みとは、幅方向端部付近における最大厚みを意味するものである。
また、この発明において、幅方向端部付近とは幅方向最端部からの距離が100mm程度の範囲を指すが、図5に示すように、tE −tC ≧1を満たすのが、幅方向端部付近における最大厚みの1点ではなく、幅方向にある長さを持った領域となる場合もある。
【0015】
いずれの場合においても、実施に際しては、シートバー最端部よりtE −tC≧1を満たす領域までの距離(図5におけるd)を、0≦d≦5(mm)の範囲内に抑制することが、有利である。
また、tE −tC ≧1を満たす領域の長さ(図5におけるL)についても、L≧1/4 tc を満たすようにすることが、実施に当たり有利である。
なお、このtE −tC ≧1を満たす領域は必ずしも連続している必要はなく、離散的に存在している場合はその長さの和が 1/4tc 以上となるようにすればこの発明の効果は得られる。
【0016】
また、かような端部形状に成形する手段としては、粗圧延時に被圧延材の端部をプッシャーや垂直ロールで圧下する方法、さらにはバックアップロールのベンディングを大きくして圧延ロールの撓みを制御する方法等が有利に適合する。
【0017】
以下、この発明において素材の成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。
C:0.01wt%以下
無方向性電磁鋼板の製造に関しては、製品の時効劣化を防止する意味で0.01wt%以下とする必要がある。なお、下限は経済上な理由から0.0001wt%とするのが望ましい。
【0018】
Si:4.5 wt%以下
Siは、電気抵抗を高め鉄損を改善するのに有用な元素であるが、4.5 wt%を超えて添加されると冷間圧延性を劣化させるので、4.5 wt%を上限とする。
なお、鉄損を改善する意味では0.05wt%以上とするのが好ましい。
【0019】
Mn:2.5 wt%以下
Mnは、熱間加工性を向上させるのに有用な元素であるが、2.5 wt%を超えると変態量が増加して磁気特性の劣化を招くので、2.5 wt%以下で含有させるものとした。
【0020】
以上、必須成分について説明したが、その他にも各種の公知元素を添加することが可能である。
たとえば、磁気特性改善成分としてAl, B, Ni, Cu,Sn, Sb、Bi, CaおよびREM 等を添加することができる。
【0021】
次に、製造方法について述べる。
上記の好適成分組成に調整された鋼スラブは、必要に応じて圧延処理を加え、スラブ加熱を施すかまたは鋳造後そのまま直接に粗圧延に供される。
この発明では、かかる粗圧延後にシートバーを一旦コイルに巻取り、保熱後、巻戻して仕上げ圧延に供するわけであるが、かかるシートバー巻取り時に、
50 ≧tE −tC ≧1(単位:mm) --- (1)
ここでtE :シートバーの幅方向端部の板厚
tC :シートバーの幅方向中央部の板厚
の関係を満足させることが重要である。
【0022】
また、実施に際しては、上掲(1) 式を満足する端部領域からシートバーの最端部までの距離dが
0≦d≦5 (mm)
の範囲内にすることが有利である。
さらに、上掲(1) 式を満たす領域の幅方向長さLと幅方向中央部のシートバー厚さtc とが
L≧1/4 tC
の関係を満たすことが、実施に当たり有利である。
【0023】
なお、巻戻したシートバーを仕上げ圧延に供するに際しては、先行シートバーの後端部に後行シートバーの先端部を接合して連続的に処理することは有利である。
ここに、先行するシートバーの後端部と後行するシートバーの先端部との接合には、公知の接合技術が適用できる。また、仕上げ圧延後の巻取りに関しても公知の技術の適用が可能である。
【0024】
熱間圧延後、常法に従い、1回または2回以上の冷間圧延を施した後、仕上げ焼鈍を施すことによって、製品板とする。
【0025】
【実施例】
実施例1
C:0.004 wt%、Si:3.1 wt%、Mn:0.15wt%、Al:0.3 wt%およびP:0.01wt%を含有し、残部は実質的にFeの組成になる無方向性電磁鋼板用スラブ(鋼A;厚み 220mm)ならびにC:0.003 wt%、Si:1.4 wt%、Mn:0.30wt%、Al:0.3 wt%およびP:0.02wt%を含有し、残部は実質的にFeの組成になる無方向性電磁鋼板用スラブ(鋼B;厚み 220mm)をそれぞれ、通常のガス燃焼型加熱炉にて1200℃に加熱後、熱間粗圧延を行いシートバーとした。この時、シートバーの幅方向中央部と端部の板厚を種々に変化させた。ついで、このシートバーをコイルに巻取り、再び巻戻して仕上げ圧延によって 2.5mm厚の熱延板コイルとした。
ついで、鋼Aは熱延板焼鈍後、また鋼Bは熱延板焼鈍を施さずに、冷間圧延により0.50mmに仕上げたのち、 850℃, 30秒の連続焼鈍を施した。
かくして得られた製品板の幅方向中央部および端部(幅方向最端部より100 mmの位置)のL方向磁性を測定した結果を、表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
同表から明らかなように、(tE −tC )がこの発明の適正範囲を満足する場合はいずれも、幅方向にわたる磁気特性が均一な製品板を得ることができた。
【0028】
実施例2
C:0.002 wt%、Si:0.67wt%、Mn:0.21wt%、Al:0.81wt%およびP:0.07wt%を含有し、残部は実質的にFeの組成になる無方向性電磁鋼板用スラブ(鋼C;厚み 220mm)ならびにC:0.003 wt%、Si:0.30wt%、Mn:0.24wt%、Al:0.24wt%およびP:0.04wt%を含有し、残部は実質的にFeの組成になる無方向性電磁鋼板用スラブ(鋼D;厚み 220mm)をそれぞれ、通常のガス燃焼型加熱炉にて1100℃に加熱後、熱間粗圧延を行ってシートバーとした。この時、シートバーの幅方向中央部と端部の板厚を種々に変化させた。ついで、このシートバーをコイルに巻取り、再び巻戻して仕上げ圧延により 2.3mm厚の熱延板コイルとした。
ついで、鋼Cは熱延板焼鈍後、また鋼Dは熱延板焼鈍を施さずに、冷間圧延により0.52mmに仕上げたのち、 850℃で30秒の連続焼鈍を施した。その後、スキンパス圧延により、0.50mmの最終板厚に仕上げた。
かくして得られた製品板に 750℃、2時間の歪取り焼鈍を施した後に幅方向中央部および端部(幅方向最端部より100 mmの位置)のL方向磁性を測定した。
得られた結果を表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
同表より明らかなように、(tE −tc ) がこの発明の適正範囲を満足する場合はいずれも、幅方向にわたる磁気特性が均一な製品板を得ることかできた。
【0031】
【発明の効果】
かくして、この発明によれば、熱間圧延工程においてシートバーコイリングを適用した場合であっても、コイルの幅方向にわたる磁気特性が均一な無方向性電磁鋼板を安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】シートバーの幅方向端部と中央部との板厚差(tE −tC )と磁束密度B50との関係を示したグラフである。
【図2】シートバーの断面形状を示す模式図である。
【図3】シートバーをコイリングしたときの断面形状を示す模式図である。
【図4】シートバーの端部形状の別例を示す模式図である。
【図5】シートバー最端部よりtE −tC ≧1を満たす領域までの距離dおよびtE −tC ≧1を満たす領域の長さLの説明図である。
【発明の属する技術分野】
この発明は、無方向性電磁鋼板の製造方法に関し、とくに熱間圧延工程に工夫を加えることによって、コイル幅方向における磁気特性の均一化を図ろうとするものである。
【0002】
【従来の技術】
無方向性電磁鋼板は、モーターや発電機等の鉄心材料として使用され、これらの機器のエネルギー効率を高めるため、材料特性として、鉄損が小さく磁束密度が大きいことが要求される。さらに最近では、コイル内で磁気特性に変動のない製品が要求されている。
【0003】
近年、コイル内の長手方向の特性変動に結びつく熱間圧延時における温度低下をなくすために、熱間粗圧延後のシートバーを巻取った後巻戻して(以下、シートバーコイリングと称する)仕上げ圧延を行うことにより、後端部の温度低下を防止する方法が開発された(例えば特開昭57−109504号公報, 特開昭61-38703号公報, 特開昭62−248501号公報)。
【0004】
上記の方法により、確かに温度低下を防止することができる。
しかしながら、幅方向の温度分布に注目すると、幅方向中央部は温度低下抑制効果が顕著ではあるけれども、幅方向端部近傍では当然のことながら抜熱が大きいので温度低下抑制効果は小さい。その結果、シートバーコイリングを行って仕上げ圧延に供する方法では、シートバーを巻取らない通常の方法に比べ、幅方向中央部と幅方向端部近傍の温度差が助長され、かえって大きくなる。
このような幅方向の大きな温度差により、無方向性電磁鋼板においては、端部の温度降下部では磁性劣化が顕著になるという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上記の実情に鑑み開発されたもので、電磁鋼板の熱間圧延工程において、熱間粗圧延後のシートバーを巻取った後巻戻して仕上げ圧延を行う際に懸念されたコイル幅方向にわたる温度分布の不均一を効果的に解消し、コイル幅方向にわたり均一な磁気特性を得ることができる無方向性電磁鋼板の製造方法を提案することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
さて、発明者らは、上記の問題を解決すべく、シートバーコイリングを実施した際に顕著になる幅方向温度分布の不均一について調査した結果、幅方向の温度分布はシートバーの形状と深い相関があることが判明した。
そこで、この関係についてさらに詳細な研究を重ねた結果、シートバーの幅方向端部の板厚tE と幅方向中央部の板厚tC とがある特定の関係を満足するときにコイルの幅方向中央部と幅方向端部との温度差が極めて小さくなって、最終製品における磁気特性の劣化を効果的に抑制できることの知見を得た。
この発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0007】
すなわち、この発明は、C:0.01wt%以下、Si:4.5 wt%以下およびMn:2.5 wt%以下を含有する電磁鋼板用スラブを、熱間粗圧延後、得られたシートバーをコイルに巻取り、ついで巻戻しつつ仕上げ圧延を施す熱間圧延工程、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延によって最終板厚とする冷間圧延工程、および仕上げ焼鈍によって製品に最終磁気特性を発現させる磁性処理工程からなる一連の工程によって無方向性電磁鋼板を製造するに際し、
上記熱間圧延工程の粗圧延段階において、シートバーの幅方向端部の板厚(tE )と幅方向中央部の板厚(tC )とが、次式(1)
50 ≧tE −tC ≧1(mm) --- (1)
の関係を満足するような幅方向板厚制御を行い、しかるのちシートバー巻取りを行うことを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法である。
【0008】
この発明の実施に際しては、上掲式(1) の条件を満たすシートバーの幅方向端部領域からシートバーの幅方向最端部までの距離dを
0≦d≦5 (mm)
の範囲内に抑制することが有利である。
また、上掲式(1) の条件を満たすシートバーの幅方向端部領域の長さLおよび幅方向中央部のシートバー厚さtC について、次式
L≧1/4 tC
の関係を満足させることが、実施に当たり有利である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を導くに至った実験結果について具体的に説明する。
C:0.002 wt%, Si:0.35wt%, Mn:0.25wt%, Al:0.01wt%およびP:0.05wt%を含有し、残部は実質的にFeの組成になる無方向性電磁鋼板用の連続鋳造スラブ(厚み:220 mm)を、通常のガス燃焼型加熱炉にて1200℃に加熱後、熱間粗圧延によりシートバーとした後、コイルに巻取り、保熱後再び巻戻しつつ仕上げ圧延を施して板厚:2.0 mm、幅:1200mmの熱延板コイルとした。
上記の熱間粗圧延において、シートバーの幅方向中央部の厚さは40mmと一定にする一方、幅方向端部については厚さを35〜50mmの範囲で変化させた。
その後、熱延板は冷間圧延を施して厚さ:0.5 mmの冷延板とした後、 780℃,10秒間の仕上げ焼鈍を施した。
【0010】
かくして得られた製品板の幅方向中央部および端部(幅方向最端部より100 mmの位置)からL方向のエプスタインサンプルを採取し、磁気特性を測定した。
得られた結果を図1に示す。
同図より明らかなように、シートバーの幅方向端部の板厚(tE )と幅方向中央部の板厚(tC )の差が、tE −tC ≧1の関係を満足する領域では幅方向中央部と端部との磁気特性差は格段に小さくなることが判明した。
【0011】
以上の実験結果より、電磁鋼板の熱間圧延工程において、熱間粗圧延後にシートバーコイリングを行う際、幅方向にわたる温度差を抑制するためには、シートバーの幅方向中央部の板厚tC と幅方向端部の板厚tE とが、次式
tE −tC ≧1 (単位:mm)
の関係を満足すれば良いことが判る。
【0012】
しかしながら、幅方向端部の板厚が幅方向中央部の板厚に比べてあまりに大きくなると、シートバーコイリングの際に巻取りが困難となるだけでなく、仕上げ圧延後の形状制御が困難となることから、(tE −tC )の上限は50mm(好ましくは20mm)程度とすることが望ましい。
そこで、この発明では、シートバーの幅方向端部と幅方向中央部の板厚差につき、
50 ≧tE −tC ≧1 (単位:mm)
の範囲に限定したのである。
【0013】
この発明に従い、シートバー幅方向中央部の板厚tC と幅方向端部の板厚tEとを上記の範囲に制御することによって、上述のような効果が得られる理由については、必ずしも明確にされてはないが、次のとおりと考えられる。
図2に、シートバーの断面形状を、また図3には、これらのシートバーをコイリングしたときの断面形状を、それぞれ模式で示す。
図3から明らかなように、tE −tC <0の場合は端部において外気に曝される表面積が大きく、従って抜熱も大きい。また、tE −tC =0の場合はtE −tC <0の場合に比べると端部からの抜熱は幾分緩和されるとはいうものの、この場合も端部からの抜熱は避けられないので、やはり端部における磁性劣化を招く。
これに対して、tE −tC >0の場合は、端部で密閉するような形状となることおよび端部の熱容量が大きくことの2つの理由から抜熱が抑制されると考えられ、このような効果が顕著になるのが、前述したtE −tC ≧1(mm) の範囲であると考えられる。
【0014】
なお、図2,3では、tE −tC >0の場合として、幅方向最端部が最大厚みとなる場合について示したが、この発明における幅方向端部厚みとはこれだけに限るものではなく、図4に示すような場合も含まれる。
すなわち、この発明における幅方向端部厚みとは、幅方向端部付近における最大厚みを意味するものである。
また、この発明において、幅方向端部付近とは幅方向最端部からの距離が100mm程度の範囲を指すが、図5に示すように、tE −tC ≧1を満たすのが、幅方向端部付近における最大厚みの1点ではなく、幅方向にある長さを持った領域となる場合もある。
【0015】
いずれの場合においても、実施に際しては、シートバー最端部よりtE −tC≧1を満たす領域までの距離(図5におけるd)を、0≦d≦5(mm)の範囲内に抑制することが、有利である。
また、tE −tC ≧1を満たす領域の長さ(図5におけるL)についても、L≧1/4 tc を満たすようにすることが、実施に当たり有利である。
なお、このtE −tC ≧1を満たす領域は必ずしも連続している必要はなく、離散的に存在している場合はその長さの和が 1/4tc 以上となるようにすればこの発明の効果は得られる。
【0016】
また、かような端部形状に成形する手段としては、粗圧延時に被圧延材の端部をプッシャーや垂直ロールで圧下する方法、さらにはバックアップロールのベンディングを大きくして圧延ロールの撓みを制御する方法等が有利に適合する。
【0017】
以下、この発明において素材の成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。
C:0.01wt%以下
無方向性電磁鋼板の製造に関しては、製品の時効劣化を防止する意味で0.01wt%以下とする必要がある。なお、下限は経済上な理由から0.0001wt%とするのが望ましい。
【0018】
Si:4.5 wt%以下
Siは、電気抵抗を高め鉄損を改善するのに有用な元素であるが、4.5 wt%を超えて添加されると冷間圧延性を劣化させるので、4.5 wt%を上限とする。
なお、鉄損を改善する意味では0.05wt%以上とするのが好ましい。
【0019】
Mn:2.5 wt%以下
Mnは、熱間加工性を向上させるのに有用な元素であるが、2.5 wt%を超えると変態量が増加して磁気特性の劣化を招くので、2.5 wt%以下で含有させるものとした。
【0020】
以上、必須成分について説明したが、その他にも各種の公知元素を添加することが可能である。
たとえば、磁気特性改善成分としてAl, B, Ni, Cu,Sn, Sb、Bi, CaおよびREM 等を添加することができる。
【0021】
次に、製造方法について述べる。
上記の好適成分組成に調整された鋼スラブは、必要に応じて圧延処理を加え、スラブ加熱を施すかまたは鋳造後そのまま直接に粗圧延に供される。
この発明では、かかる粗圧延後にシートバーを一旦コイルに巻取り、保熱後、巻戻して仕上げ圧延に供するわけであるが、かかるシートバー巻取り時に、
50 ≧tE −tC ≧1(単位:mm) --- (1)
ここでtE :シートバーの幅方向端部の板厚
tC :シートバーの幅方向中央部の板厚
の関係を満足させることが重要である。
【0022】
また、実施に際しては、上掲(1) 式を満足する端部領域からシートバーの最端部までの距離dが
0≦d≦5 (mm)
の範囲内にすることが有利である。
さらに、上掲(1) 式を満たす領域の幅方向長さLと幅方向中央部のシートバー厚さtc とが
L≧1/4 tC
の関係を満たすことが、実施に当たり有利である。
【0023】
なお、巻戻したシートバーを仕上げ圧延に供するに際しては、先行シートバーの後端部に後行シートバーの先端部を接合して連続的に処理することは有利である。
ここに、先行するシートバーの後端部と後行するシートバーの先端部との接合には、公知の接合技術が適用できる。また、仕上げ圧延後の巻取りに関しても公知の技術の適用が可能である。
【0024】
熱間圧延後、常法に従い、1回または2回以上の冷間圧延を施した後、仕上げ焼鈍を施すことによって、製品板とする。
【0025】
【実施例】
実施例1
C:0.004 wt%、Si:3.1 wt%、Mn:0.15wt%、Al:0.3 wt%およびP:0.01wt%を含有し、残部は実質的にFeの組成になる無方向性電磁鋼板用スラブ(鋼A;厚み 220mm)ならびにC:0.003 wt%、Si:1.4 wt%、Mn:0.30wt%、Al:0.3 wt%およびP:0.02wt%を含有し、残部は実質的にFeの組成になる無方向性電磁鋼板用スラブ(鋼B;厚み 220mm)をそれぞれ、通常のガス燃焼型加熱炉にて1200℃に加熱後、熱間粗圧延を行いシートバーとした。この時、シートバーの幅方向中央部と端部の板厚を種々に変化させた。ついで、このシートバーをコイルに巻取り、再び巻戻して仕上げ圧延によって 2.5mm厚の熱延板コイルとした。
ついで、鋼Aは熱延板焼鈍後、また鋼Bは熱延板焼鈍を施さずに、冷間圧延により0.50mmに仕上げたのち、 850℃, 30秒の連続焼鈍を施した。
かくして得られた製品板の幅方向中央部および端部(幅方向最端部より100 mmの位置)のL方向磁性を測定した結果を、表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
同表から明らかなように、(tE −tC )がこの発明の適正範囲を満足する場合はいずれも、幅方向にわたる磁気特性が均一な製品板を得ることができた。
【0028】
実施例2
C:0.002 wt%、Si:0.67wt%、Mn:0.21wt%、Al:0.81wt%およびP:0.07wt%を含有し、残部は実質的にFeの組成になる無方向性電磁鋼板用スラブ(鋼C;厚み 220mm)ならびにC:0.003 wt%、Si:0.30wt%、Mn:0.24wt%、Al:0.24wt%およびP:0.04wt%を含有し、残部は実質的にFeの組成になる無方向性電磁鋼板用スラブ(鋼D;厚み 220mm)をそれぞれ、通常のガス燃焼型加熱炉にて1100℃に加熱後、熱間粗圧延を行ってシートバーとした。この時、シートバーの幅方向中央部と端部の板厚を種々に変化させた。ついで、このシートバーをコイルに巻取り、再び巻戻して仕上げ圧延により 2.3mm厚の熱延板コイルとした。
ついで、鋼Cは熱延板焼鈍後、また鋼Dは熱延板焼鈍を施さずに、冷間圧延により0.52mmに仕上げたのち、 850℃で30秒の連続焼鈍を施した。その後、スキンパス圧延により、0.50mmの最終板厚に仕上げた。
かくして得られた製品板に 750℃、2時間の歪取り焼鈍を施した後に幅方向中央部および端部(幅方向最端部より100 mmの位置)のL方向磁性を測定した。
得られた結果を表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
同表より明らかなように、(tE −tc ) がこの発明の適正範囲を満足する場合はいずれも、幅方向にわたる磁気特性が均一な製品板を得ることかできた。
【0031】
【発明の効果】
かくして、この発明によれば、熱間圧延工程においてシートバーコイリングを適用した場合であっても、コイルの幅方向にわたる磁気特性が均一な無方向性電磁鋼板を安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】シートバーの幅方向端部と中央部との板厚差(tE −tC )と磁束密度B50との関係を示したグラフである。
【図2】シートバーの断面形状を示す模式図である。
【図3】シートバーをコイリングしたときの断面形状を示す模式図である。
【図4】シートバーの端部形状の別例を示す模式図である。
【図5】シートバー最端部よりtE −tC ≧1を満たす領域までの距離dおよびtE −tC ≧1を満たす領域の長さLの説明図である。
Claims (3)
- C:0.01wt%以下、Si:4.5 wt%以下およびMn:2.5 wt%以下を含有する電磁鋼板用スラブを、熱間粗圧延後、得られたシートバーをコイルに巻取り、ついで巻戻しつつ仕上げ圧延を施す熱間圧延工程、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延によって最終板厚とする冷間圧延工程、および仕上げ焼鈍によって製品に最終磁気特性を発現させる磁性処理工程からなる一連の工程によって無方向性電磁鋼板を製造するに際し、
上記熱間圧延工程の粗圧延段階において、シートバーの幅方向端部の板厚(tE )と幅方向中央部の板厚(tC )とが、次式(1)
50 ≧tE −tC ≧1(mm) --- (1)
の関係を満足するような幅方向板厚制御を行い、しかるのちシートバー巻取りを行うことを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。 - 請求項1において、関係式(1) の条件を満たすシートバーの幅方向端部領域からシートバーの幅方向最端部までの距離dが
0≦d≦5 (mm)
の関係を満足することを特徴とする、無方向性電磁鋼板の製造方法。 - 請求項1において、関係式(1) の条件を満たすシートバーの幅方向端部領域の長さLと幅方向中央部のシートバー厚さtC とが
L≧1/4 tC
の関係を満足することを特徴とする、無方向性電磁鋼板の製造方法。
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