JP3645028B2 - 金属フープ材の冷間ロール成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、金属フープ材の側端面を凹凸面化するための冷間ロール成形方法に関する。この成形方法で得られた金属フープ材は、例えば道路の側溝に敷設されるグレーチング用の格子材として使用され、凹凸面によって滑り止め作用を発揮する。
【0002】
【従来の技術】
グレーチング用の格子材として、断面長方形やI形の金属フープ材が多用されており、必要に応じて格子材の踏面側に滑り止め用の凹面や突起が形成されている。この種の格子材には、大別して車輛等の大重量を前提とした重荷重用と、負荷対象を歩行者等に限定した軽荷重用とがある。重荷重用の格子材の需要は、道路や交通施設の拡充に伴って増加し続けており、生産ロットが大きいことから熱間加工で一貫生産される。特公平3−44841号公報にその一例を見ることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
軽荷重用の格子材は、重荷重用の格子材に比べて極端に需要が少なく生産ロットは小さい。そのため、熱間加工で滑り止め用の凹凸を形成すると採算割れに陥る。金属フープ材に切削加工やプレス加工を施して滑り止め用の凹凸を形成した格子材が一部に見られるが、これらは生産効率が低く、格子材の製造コストを十分に低下できない。従って、歩行者用のグレーチングの殆どは、踏面に滑り止めを備えていない安価な格子材で形成されており、十分な安全性を確保しにくい点に改善の余地がある。
【0004】
この発明の目的は、金属フープ材の側端面に冷間ロール成形加工を施して凹凸面を形成できるようにし、生産ロットが小さい場合にも、側端面が凹凸面化された金属フープ材を能率良く生産し、その製造コストを十分に減少できる、金属フープ材の冷間ロール成形方法を提供することにある。この発明の目的は、踏面に滑り止め用の凹凸を備えている歩行者用のグレーチングを安価に製造できる金属フープ材の冷間ロール成形方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明の冷間ロール成形方法は、厚み方向に対向する一対の主壁面19と、幅方向に対向する一対の側端面20とを備えた金属フープ材2を強制的に一方向へ搬送し、搬送経路の途中に設けたロール成形機9で側端面20に凹刻部21を形成する。そのロール成形機9は、金属フープ材2の一対の主壁面19・19および一方の側端面20をそれぞれ押圧する3個の押圧ロール11・12・13と、周面に印刻歯22を有していて、金属フープ材2の他方の側端面20を押圧して凹刻部21を形成する印刻ロール14とを備えている。主壁面19を押圧する一対の押圧ロール11・12と印刻ロール14との間に、金属フープ材2の押付け変形を許す隙間Eを有する状態で、各ロール11・12・13・14の回転中心軸を同一面上に位置させる。以て金属フープ材2の断面外郭線を各ロール11〜14で同時に押圧して、金属フープ材2の側端面20に凹刻部21を形成する。
【0006】
具体的には、ロール成形機9の次段に配置した引抜機4で、金属フープ材2を一方向へ強制搬送する。各ロール11・12・13・14の回転中心軸を通るロール中心面Pは、図3に示すごとく金属フープ材2の搬送方向と直交する基準面Rに対して所定の角度θだけ傾斜させておき、印刻ロール14がこれと対向する押圧ロール13よりも金属フープ材2の搬送方向下手側で側端面20を押圧する状態で凹刻部21を形成する。
【0007】
【作用】
金属フープ材2はロール成形機9を通過する間に3個の押圧ロール11・12・13と印刻ロール14とで同時に押圧される。換言すると、主壁面19を押圧する一対の押圧ロール11・12と、一方の側端面20を押圧する押圧ロール13とで金属フープ材2を押圧保持し、この状態で他方の側端面20に印刻ロール14を押圧して凹刻部21を形成する。凹刻部21の形成に伴って印刻歯22で押し除かれる肉壁の流動を許し、凹刻部21の成形を容易化するために、一対の押圧ロール11・12と印刻ロール14との間に所定量の隙間Eが設けられている。
【0008】
このように、3個の押圧ロール11・12・13と印刻ロール14とで、金属フープ材2の側端面20に凹刻部21を形成する成形方法によれば、金属フープ材2を一定速度で搬送しながら、その側端面20に凹凸面を常温下で連続して形成できる。4個のロール11〜14を備えたロール成形機9に金属フープ材2を通すだけなので、切削加工やプレス加工を行う場合に比べて金属フープ材2の凹凸面化処理に要する設備の簡素化を図れる。引抜機4を備えている既存のフープ材整形ラインの場合には、引抜機4の前段にロール成形機9を配置するだけで、側端面20が凹凸面化された金属フープ材2を容易に成形できる。
【0009】
金属フープ材2の組成や硬度の違い、凹刻部21の深さや形状によっては、ロール成形機9を通過した加工済みの金属フープ材2が、印刻ロール14を基端にして凹刻部21側に弧状に湾曲変形する傾向を生じる。この湾曲傾向を矯正して、加工済みの金属フープ材2をほぼ直線状に送出するために、ロール成形機9のロール中心面Pを、金属フープ材2の搬送方向と直交する基準面Rに対して所定の角度θだけ傾斜させている。
【0010】
【実施例】
図1ないし図5は本発明に係る金属フープ材の冷間ロール成形方法の実施例を示しており、とくに既存のフープ材整形ラインを利用して冷間成形を行う場合を示す。図2に示すフープ材整形ラインにおいて、符号1はアンコイラー、2はアンコイラー1から導出される金属フープ材、3はライン終端に設けたリコイラーである。金属フープ材2は厚みが2〜4.5mmで、幅寸法が10〜50mmの断面長方形、あるいは断面I形の鋼材からなる。この実施例における金属フープ材2は歩行者用の軽荷重型のグレーチングの格子材として使用するので、SS材(一般構造用圧延鋼材)、SPHC材(熱間圧延軟鋼板)あるいはステンレス鋼材等を金属フープ材2の形成素材としている。
【0011】
金属フープ材2はリコイラー3の前段に配置した引抜機4で強制搬送されて矢印方向に定速度で移行する。引抜機4とアンコイラー1との間には、アンコイラー1側から順に第1〜第4整形ロール5・6・7・8を配置し、これらのロール群5〜8を通過する間に金属フープ材2の断面寸法や断面形状を調整し、あるいは隅部の面取りを行うなどの整形処理を行う。各整形ロール5〜8は、金属フープ材2を上下に挟持する一対の水平ロール、あるいは金属フープ材2を前後に挟持する一対の垂直ロールで構成されており、整形目的に応じてロールの段数およびその組み合わせを自由に変更できる。以上が既存のフープ材整形ラインとなる。
【0012】
最後段の整形ロール8と引抜機4との間に、本発明に係るロール成形機9を配置して、金属フープ材2の側端面20を凹凸面化する。図4に示すように、ロール成形機9は縦横一対ずつの合計4個のロール11・12・13・14と、これらを遊転自在に支持する4個の軸受ブロック15と、軸受ブロック15を支持する円盤状のフレーム16および取付ベース17などで構成されている。
ロール11・12・13・14の材質はSKD材(ダイス鋼)や超硬合金材である。
【0013】
4個のロール11〜14のうち、上下に対向する押圧ロール11・12は、図1に示すごとく金属フープ材2の厚み方向に対向する一対の主壁面19・19を押圧する。左右に対向する押圧ロール13と印刻ロール14とは、金属フープ材2の幅方向に対向する一対の側端面20・20を押圧する。換言すると、3個の押圧ロール11〜13で金属フープ材2の上下面と一側面を押圧保持し、残る他方の一側面に印刻ロール14を押圧して該側端面20にV溝状の凹刻部21を形成する。
【0014】
上下の押圧ロール11・12の幅寸法は金属フープ材2の幅寸法より小さく設定してある。残る押圧ロール13と印刻ロール14の厚み寸法は金属フープ材2の厚み寸法より十分に大きく、25〜30mmとされる。印刻ロール14は爪歯車状に形成してあって、その周面に三角形状の印刻歯22を一定ピッチで突設する。先に述べた整形ロール群5〜8が縦横交互に間をあけて配置してあるのに対し、押圧ロール11〜13および印刻ロール14は、それぞれの回転中心軸が同一垂直面上に位置するよう配置して、各ロール11〜14を通過する金属フープ材2の断面外郭線に、各ロール11〜14の押圧力を同時に作用させる。さらに、上下の押圧ロール11・12と印刻ロール14との間に、金属フープ材2の厚み方向および内側方への押付け変形を許す隙間Eを設けて、印刻歯22で押し除かれた肉壁の流動を許し、成形を容易化する。
【0015】
図3において、引抜機4はそれぞれ同方向に回転駆動されるドラム23・24を有し、それぞれの周面に螺旋溝25を有する。金属フープ材2は一方のドラム23と他方のドラム24の螺旋溝25に沿って数回巻き付けられた後、後段側のドラム24を介してリコイラー3へと送出される。螺旋溝25に沿って巻回された金属フープ材2に両ドラム23・24の回転力を伝えることにより、金属フープ材2を強大な力で強制搬送できる。
【0016】
金属フープ材2がロール成形機9を通過するとき、金属フープ材2の組成や硬度の違い、あるいは凹刻部21の深さや形状によって、図1に想像線で示すごとく、金属フープ材2が印刻ロール14を基端にして弧状に湾曲変形することがある。こうした湾曲傾向を矯正して、加工済みの金属フープ材2をロール成形機9からほぼ直線状態で送出するために、ロール成形機9を金属フープ材2の搬送方向に対して傾く状態で配置する。
【0017】
詳しくは、図3に示すようにロール成形機9の各ロール11〜14の回転中心軸を通るロール中心面Pを想定し、これが金属フープ材2の搬送方向と直交する基準面Rに対して所定角度θだけ傾斜するようロール成形機9を配置して、その取付ベース17をロールベッドに固定する。これにより、印刻ロール14の印刻歯22は、対向する押圧ロール13の周面より、金属フープ材2の搬送方向下手側で側端面20を押圧する。そのため、金属フープ材2は凹刻部21が一側に限って形成されることによる湾曲傾向力と、印刻歯22で押圧ロール13へ向かって押圧される傾向力とを同時に受け、両傾向力が均衡するようロー成形機9を傾斜配置することにより、ほぼ直線状態の金属フープ材2を送出できる。
【0018】
なお、ロール中心面Pの傾斜角度θは10〜30度の範囲内が実用的である。ラインスピードは、金属フープ材2の断面積や硬度等に応じて異なるが、10〜50m/min の範囲内にある。
【0019】
フープ材整形ラインで得られた金属フープ材2は、レベラーで形状調整したのち定尺に切断して出荷される。この定尺材を用いることによって、図5に示すごとく踏面27の側に印刻部21を備えた格子材26でグレーチングを構成できる。凹刻部21は回転する印刻歯22で形成されるので、踏面27との境界においてバリ(薄い張り出し)を生じることもない。踏面27はロール成形時に膨出して厚み方向へ僅かに湾曲する。従って、グレーチングとして仕上げた状態では、過度の引っ掛かりを生じることもなく、印刻部21によって十分な滑り止め作用を発揮できる。
【0020】
上記の実施例以外に、印刻歯22は鋸刃形、台形あるいは錐形等に変更でき、必要に応じてその隣接ピッチを不定ピッチ化できる。本発明の金属フープ材はグレーチング用の格子材以外の汎用鋼材としても利用できる。
【0021】
【発明の効果】
本発明では、3個の押圧ロール11〜13と、1個の印刻ロール14とで金属フープ材2を同時に押圧し、金属フープ材2が各ロール11〜14を通過する間に、その側端面20に印刻部21を形成し、側端面20を常温下で一定の搬送速度を維持しながら連続して凹凸面化できるようにした。従って、この種の金属フープ材2の生産ロットが小さい場合であっても、側端面20に凹凸面を有する金属フープ材2を能率良く生産でき、その製造に要するコストを十分に減少できる。得られた金属フープ材2をグレーチング用の格子材として利用することにより、踏面27に滑り止め用の凹刻部21を備えた歩行者用のグレーチングを安価に製造できるうえ、グレーチングの滑り止め機能を強化して歩行時の安全性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ロール成形方法の原理を示す説明図である。
【図2】フープ材整形ラインの概略正面図である。
【図3】ロール成形機および引抜機の概略平面図である。
【図4】ロール成形機を金属フープ材の出口側から見た側面図である。
【図5】成形済みの金属フープ材の斜視図である。
【符号の説明】
2 金属フープ材
11 押圧ロール
12 押圧ロール
13 押圧ロール
14 印刻ロール
19 主壁面
20 側端面
21 凹刻部
22 印刻歯
E 隙間
Claims (2)
- 厚み方向に対向する一対の主壁面19と、幅方向に対向する一対の側端面20とを備えた金属フープ材2を強制的に一方向へ搬送し、搬送経路の途中に設けたロール成形機9で側端面20に凹刻部21を形成する冷間ロール成形方法であって、
ロール成形機9の次段に配置した引抜機4で、金属フープ材2を一方向へ強制搬送しており、
ロール成形機9は、金属フープ材2の一対の主壁面19・19および一方の側端面20をそれぞれ押圧する3個の押圧ロール11・12・13と、周面に印刻歯22を有していて、金属フープ材2の他方の側端面20を押圧して凹刻部21を形成する印刻ロール14とを備えており、
主壁面19を押圧する一対の押圧ロール11・12と印刻ロール14との間に、金属フープ材2の押付け変形を許す隙間Eを有する状態で、各ロール11・12・13・14の回転中心軸を同一面上に位置させ、金属フープ材2の断面外郭線を各ロール11〜14で同時に押圧して、金属フープ材2の側端面20に凹刻部21を形成することを特徴とする金属フープ材の冷間ロール成形方法。 - 各ロール11・12・13・14の回転中心軸を通るロール中心面Pを、金属フープ材2の搬送方向と直交する基準面Rに対して所定の角度θだけ傾斜させておき、
印刻ロール14がこれと対向する押圧ロール13よりも金属フープ材2の搬送方向下手側で側端面20を押圧する状態で凹刻部21を形成する請求項1記載の金属フープ材の冷間ロール成形方法。
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