JP3644736B2 - 通信ケーブル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高速データ通信等に用いられる通信ケーブルに関し、特に、複数の対を集合撚りして形成された通信ケーブルの改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば事務所やビル内等のように地域的に限定された範囲で用いられる通信ケーブルとしては、一般に、主に音声信号を伝送する屋内線若しくは構内ケーブル、又は米国電子工業会/米国通信工業会(以下、『EIA/TIA』という。)−568Aで規格が定められている10Mbpsまでのデータ伝送用の複数の対を撚り合わせて成る通信ケーブルが用いられている。これらの通信ケーブルにおいては、従来、隣り合う対を異なる撚りピッチで撚り合わせたり、各対の撚りピッチ間の関係が整数倍とならないように設定することにより、漏話特性の向上を図っていた。
【0003】
また、近年、事務所や商用ビルディング等の構内配線システムにおいても、100Mbps程度の高速データ通信の要求が高まってきていることに鑑み、最近では、複数の対を撚り合わせて形成された100Mbpsまでのデータ伝送に使用することができる通信ケーブルが、今後のマルチメディアアプリケーション対応用として用いられている。この100Mbpsまでのデータ伝送に使用することができる通信ケーブルについては、同様にEIA/TIA−568Aにおいてその標準規格が定められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、例えば、非同期転送モードのコンピュータネットワーク(以下、『ATM LAN』という)においては156Mbps程度の高速データ通信が必要となる等、今後は更に100Mbps以上の高速データ通信の要求が高まる。このため、この100Mbps以上の、特に、ATM LANにおいて必要な156Mbps程度の高速データ通信に使用することができる通信ケーブルについて、減衰量、近端漏話減衰量等の周波数特性を向上することが必要となる。
【0005】
ここに、通信ケーブルの伝送特性を考慮する際しては、近端漏話減衰量の測定値(dB)から減衰量の測定値(dB)を引いた値であるACR値が重要な指標となる。すなわち、ディジタル信号を伝送する際には、0が1に又はその逆に伝送される等のデータの誤りの発生率であるビットエラーレートが問題となり、このビットエラーレートが10-10 (100億回に1回のエラー発生率)であることが良好なデータ伝送が可能となる目安となり、これはACR値で+10dBに相当する。このため、現状の100Mbpsまでの高速データ通信に使用することができる通信ケーブルに関するEIA/TIA−568Aのカテゴリー5の標準規格を満足すれば、通信ケーブル100m、100MHzで+10dBのACR値を確保することができるようになっている。
【0006】
このEIA/TIA−568Aでは、100Mbpsを越える高速データ通信に関する規格は示されていないため、例えば、156Mbpsにおいてはどの程度のACR値を確保すれば良好な伝送特性を得ることができるかを検討する必要がある。この場合、EIA/TIA−568Aにおいては、100Mbpsの高速データ通信に関し、100MHzまでの周波数が規格の上限であり、最大限100MHzで100Mビットのデータを伝送する際のACR値が+10dBあればよいといことであるから、156Mbpsの高速データ通信については、最大限156MHzにおけるACR値として、同様に+10dBを確保すれば、それ以下の周波数におけるデータ伝送を含め、ほぼ必要な周波数帯域のいずれにおけるデータ伝送についても、良好な伝送特性を得ることができると考えられる。特に、ATM LANでは、実際には、約50〜78MHzの周波数で156Mbpsのデータ伝送を行うため、この実用レベルの周波数帯域においても確実に良好な伝送特性を確保することができると考えられる。
【0007】
また、例えば、現状のコンピュータネットワーク(以下、『LAN』という。)用の通信ケーブルは、4つの対から形成され、1つの端末に関し、入力で1対、出力で1対の計2つの対を入出力に割り当てる一方、将来の新しいアプリケーションに対応できるように残りの2つの対を予備として含めている。今後は、この現在では予備とされている2つの対も含め、4つのいずれの対をもデータ伝送に使用することが予想され、この場合の、とある1つの対に対する他の3つの対からの多重漏話特性も充分に考慮しなければ、良好な伝送特性を得ることができない。
【0008】
本発明の課題は、上記の点に鑑み、近端漏話減衰量を向上して通信ケーブル100mでの156MHzにおいて、ACR値を+10dB以上とすると共に充分な多重漏話特性も確保して、100Mbps以上の、特に、156Mbpsの高速データ通信においても良好な伝送特性を得ることができる通信ケーブルを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するための手段として、複数の対を隣り合う対が異なる撚りピッチとなるように集合撚りして形成された通信ケーブルにおいて、これらの複数の対のうち、任意に選択された2つの対Ti 、Tj の撚りピッチPi 、Pj が、下記の数式(1)及び数式(2)を同時に満足する領域から選択されていることを特徴とする通信ケーブルを提供するものである。
但し、下記の数式において、Pixは対Ti の撚りピッチPi の通信ケーブル径方向成分を、Pjxは対Tj の撚りピッチPj の通信ケーブル径方向成分を、dは複数の対を構成する絶縁電線の外径を示す。
数式(1) Pi <Pj の時は、Pi /Pj ≦0.8
i >Pj の時は、Pi /Pj ≧1.25
数式(2) 4.53≦(Pix×Pjx)/d2 ≦25.4
【0010】
複数の対の撚りピッチをこのように数値限定すると、隣り合う対の撚りピッチが必ず異なり、しかも、後に述べる実験例及び本発明の実施例に示すように、各対が実験の結果得られた最適な値の撚りピッチで撚り合わされているため、近端漏話減衰量が向上し、EIA/TIA−568Aのカテゴリー5で定める電気特性規格を満足することができる上に、通信ケーブル100mでの156MHzにおいて、ACR値を+10dB以上とすることができると同時に充分な多重漏話特性も確保することができ、100Mbps以上の、特に、156Mbpsの高速データ通信においても良好な伝送特性を得ることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明すると、図1は本発明の通信ケーブル10を示し、この通信ケーブル10は、集合撚り層12と、この集合撚り層12の上に設けられたシース層22とから成っている。なお、シース層22は、例えば、ポリ塩化ビニル等から形成され、集合撚り層12を外部環境から保護する。
【0012】
集合撚り層12は、図1に示すように、複数の対14を集合撚りして形成されている。図示の実施の形態では、集合撚り層12は、4つの対14A乃至14Dから成っているが、必要に応じて他の適宜な数としてもよい。
【0013】
各対14は、図1及び図2に示すように、2つの絶縁電線16を撚り合わせて形成されている。この絶縁電線16の各々は、特に図2に示すように、導体18に絶縁層20を被覆して形成される。この導体18としては、例えば、軟銅線等を用いることができ、また、絶縁層20は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等から形成することができ、特に、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレンから形成すると、低誘電率化することができるので好ましい。
【0014】
これらの4つの対14A乃至14Dは、漏話が生じないよう、隣り合う対14が異なる撚りピッチとなるように撚り合わされている。従って、例えば、図1に示す隣り合う対14Aと対14Bの一方の対14Aの撚りピッチPA と他方の対14Bの撚りピッチPB は異なり、このことは対14Bと対14C、対14Cと対14D、また対14Dと対14Aとの間でも成立する。すなわち対14Aの撚りピッチをPA 、対14Bの撚りピッチをPB 、対14Cの撚りピッチをPC 、対14Dの撚りピッチをPD とした場合、PA ≠PB 、PB ≠PC 、PC ≠PD 、PD ≠PA が常に成立する。なお、本発明において、対14の撚りピッチとは、各対14を構成する2つの絶縁電線16を撚り合わせるピッチをいう。
【0015】
本発明においては、これらの複数の対14のうち、任意に選択された2つの対Ti 、Tj の撚りピッチPi 、Pj が、下記の数式(1)及び数式(2)を同時に満足する領域から選択されている。
但し、下記の数式において、Pixは対Ti の撚りピッチPi の通信ケーブル径方向成分を、Pjxは対Tj の撚りピッチPj の通信ケーブル径方向成分を、dは複数の対を構成する絶縁電線の外径を示す。
数式(1) Pi <Pj の時は、Pi /Pj ≦0.8
i >Pj の時は、Pi /Pj ≧1.25
数式(2) 4.53≦(Pix×Pjx)/d2 ≦25.4
【0016】
複数の対14の撚りピッチをこのように数値限定して設定すると、後に述べる実験例及び本発明の実施例から解るように、各対が実験の結果得られた最適な値の撚りピッチで撚り合わされているため、近端漏話減衰量が向上し、EIA/TIA−568Aのカテゴリー5で定める電気特性規格を満足することができる上に、通信ケーブル100mでの156MHzにおけるACR値を+10dB以上とすることができると同時に多重漏話特性も向上し、156Mbpsの高速データ通信において良好な伝送特性を得ることができる。また、本発明の通信ケーブル10においては、これらの数式を満足する結果、複数の対14は、全て異なる撚りピッチで撚り合わせれ、この結果、隣り合う対14の撚りピッチも相互に異なることになる。
【0017】
ここに、上記の数式(2)において、Pix及びPjxは、図3に示すように、それぞれ、対Ti の撚りピッチPi の通信ケーブル径方向成分又は対Tj の撚りピッチPj の通信ケーブル径方向成分を示す。同じくdは、対14を構成する絶縁電線16の外径を示す。また、本明細書中において、撚りピッチを示すPの後に付される小文字のx は、いずれも、上記と同様に、その撚りピッチPについての通信ケーブル径方向成分を示す。なお、図3において、Piy、Pjyは、それぞれ、対Ti の撚りピッチPi の通信ケーブル長手方向成分、対Tj の撚りピッチPj の通信ケーブル長手方向成分を示す。
【0018】
このように、本発明においては、対Ti の撚りピッチPi 及び対Tj の撚りピッチPj については、通信ケーブル径方向成分に変換して考える。ここに、対Ti の撚りピッチPi の通信ケーブル径方向成分Pixは、図3に示すように、対Ti 及び対Tj を有する通信ケーブルKの撚りピッチ(4つの対14を撚り合わせるピッチ)をPk とおき、また通信ケーブルKの外径をDk とおくと、Pix=〔πDk /[Pk 2+(πDk21/2 〕×Pi (数式(3))により求めることができる。
【0019】
同様にして、対Tj の撚りピッチPj の通信ケーブル径方向成分Pjxも、数式(3)のPi をPj に置き換えて、Pjx=〔πDk /[Pk 2+(πDk21/2 〕×Pj (数式(4))により求めることができる。
【0020】
上記の数式(1)及び数式(2)、すなわち、複数の対14の撚りピッチの関係について、例えば、図1を例に説明すると、図1に示す実施の形態の通信ケーブル10は、4つの対14A乃至14Dを有しているため、これらの4つの対14A乃至14Dのうち、任意に選択された2つの対14、例えば、対14Aと対14Bを選択した場合には、対14Aの撚りピッチPA と対14Bの撚りピッチPB とが、下記の数式(1)′及び数式(2)′を同時に満足する領域から選択されている。
数式(1)′ PA <PB の時にはPA /PB ≦0.8
A >PB の時にはPA /PB ≧1.25
数式(2)′ 4.53≦(PAx×PBx)/d2 ≦25.4
これらの数式は、勿論、他の、例えば、対14Aと対14C、対14Bと対14C等のいずれの対14の組み合わせにおいても同様に成立し、図示の4つの対14A乃至14Dの場合には、計6通りの対14の組み合わせのいずれについても成立する。
【0021】
【実施例】
次に、上述した数式を導いた過程を実験例を参照しながら説明すると共に、本発明の効果を実施例を参照しながら立証する。
【0022】
まず、外径が0.94mmである2つの絶縁電線16を撚り合わせて形成された特性インピーダンスが100Ωの4つの対14を、撚りピッチが相互に異なるようにして集合撚りした通信ケーブル10において、これらの4つの対14の撚りピッチの組み合わせを変えて15の実験例を設定した。各実験例における対14の撚りピッチの具体的な値は、次の表1に示す通りである。
【0023】
【表1】
Figure 0003644736
【0024】
この表1に示す各実験例につき、4つの対14の全ての組み合わせ(1つの実験例につき対14の組み合わせは、計6通り)について、近端漏話減衰量を測定した。
【0025】
次いで、対14の撚りピッチの組み合わせと、各組み合わせにおける近端漏話減衰量との関係を調べた。
【0026】
この場合において、対14の撚りピッチの組み合わせを数値化する指標として、対14の撚りピッチの比を採用し、この対14の撚りピッチの比と近端漏話減衰量との関係を調べた。これは、通常、近端漏話は、対14の撚りピッチの比によって左右されると考えられるためである。
【0027】
【表2】
Figure 0003644736
【0028】
また、対14の各組み合わせの近端漏話レベルを示す指標は、以下のようにして定めた。すなわち、表2に示すように、表1に示す各実験例における対14の全ての組み合わせ(例えば、表1に示す実験例1における対▲1▼と対▲2▼、対▲1▼と対▲3▼、対▲1▼と対▲4▼等の組み合わせ)につき得られた近端漏話減衰量の測定値から、EIA/TIA−568Aのカテゴリー5で定める規格値を引いた値を算出し、これを各組み合わせにつき表2に示す標準規格の全周波数帯域(表2に示す11の周波数)にわたって求めた。そして、最悪の場合でも表2に示すEIA/TIA−568Aのカテゴリー5で定める規格値をクリアすることができるかが問題となるため、対14の各組み合わせにつき、全周波数帯域において得られた11通りの測定値−規格値の中から、最小値をもって、各組み合わせの近端漏話レベルとした。
【0029】
以上のようにして実験結果を数値化して、その結果得られた対14の撚りピッチの組み合わせと、各組み合わせにおける近端漏話減衰量との関係を図4に示し、評価を行った。なお、1つの実験例につき対14の組み合わせは6通りあり、これを15の実験例についてデータを採取したため、計90のデータを得ることができたが、例えば、実験例15については、表1に示すように、4つの対14の撚りピッチの値が等しいため、計6通りある対14の組み合わせにつき得られた近端漏話減衰量は全て重なり、プロットとしては1点のみに表示され(図4の横軸の1上のプロット参照)、また、その他の対14の組み合わせにおいても、対14の撚りピッチの比及び得られた近端漏話減衰量とも微小な差であるものについては、プロットは重ねて示した。
【0030】
この図4は、横軸に対14の撚りピッチの比をとり、縦軸に表2に示す対14の各組み合わせにつき得られた近端漏話減衰量の測定値からEIA/TIA−568Aのカテゴリー5で定める規格値を引いた値の全周波数帯域の中での最小値をとって、各実験例における対14の組み合わせの近端漏話減衰量の評価を示したものである。
【0031】
従って、この図4において、縦軸がOdB以上の時には、測定値が規格値以上であったことを示し(すなわち、測定値≧規格値)、規格値をクリアしていることを示す。しかも、この場合、図4における各プロットは、対14の各組み合わせにつき、全周波数帯域において得られた近端漏話減衰量の測定値から規格値を引いた値の中での最小値を示しているため、このプロットが縦軸のOdB以上にある場合には、その対14の組み合わせにおいては、他の全ての周波数帯域においても規格値をクリアすることができることを示している。
【0032】
また、この図4の横軸は、対14の撚りピッチの比、すなわち、例えば、一方の対TI の撚りピッチをPI と、他方の対TIIの撚りピッチをPIIとすると、PI /PIIを示しているため、横軸が1より小さい場合には、PI <PIIであることを示し、横軸が1より大きい場合には、PI >PIIであることを示している。なお、表1に示すように、実験例15の対14の撚りピッチは、全て15mmに等しく設定しているため(すなわち、PI =PII)、この実験例15における対14の組み合わせに関するプロットは、図4に示すように、横軸の1上に表示される一方、その他の実験例1乃至実験例14については、対14の撚りピッチは、全て異なるように設定しているため、これらの実験例1乃至実験例14においてPI /PII=1となることはあり得ず、図4においても、実験例15における対14の組み合わせ以外に関するデータは、全て横軸の1以外の箇所にプロットされている。
【0033】
この図4に示した実験結果の評価に際しては、まず、近端漏話減衰量の測定値がEIA/TIA−568Aのカテゴリー5で定める規格値に対し+9dBのマージンを有することができる対14の組み合わせを模索した。この+9dBというマージンを設定した理由は、以下の通りである。
【0034】
本発明においては、前述したように、156MbpsのATM LAN等の高速データ通信において良好な伝送特性を得るために、156MHzにおけるACR値(近端漏話減衰量−減衰量)を+10dBとする必要がある。そこで、まず、そのためには、どの程度の近端漏話減衰量を確保すれば良いかを模索する必要がある。なお、ACR値で+10dBを確保するためには、近端漏話減衰量又は減衰量のいずれか一方又は双方の特性を向上する必要がある。すなわち、近端漏話減衰量を大きくするか、減衰量を小さくするか、あるいはそれら双方を行うが、通信ケーブル10においては、減衰量を低減するためには、遮蔽体等の別途の構成要素を必要とすること、その一方で、一般に、近端漏話減衰量は対14の撚りピッチを適切に選択することによって向上することができ、また、通信ケーブル10においては主に近端漏話が問題となり近端漏話特性を充分に向上する必要があることから、本発明においては、近端漏話減衰量の向上によって、この目標を達成することに主眼を置いた。
【0035】
ここに、通信ケーブル10の減衰量及び近端漏話減衰量に関しては、EIA/TIA−568Aのカテゴリー5において、下記の数式により、標準規格が定められている。
▲1▼ 減衰量:ATT(f)=K1・√(f)+K2・f+K3/√(f)
▲2▼ 近端漏話減衰量:NEXT(f) =NEXT(0.772) −15log(f/0.772) なお、上記の数式において、K1、K2、K3は定数であり、それぞれ、K1=1.967 、K2=0.023 、K3=0.050 を示す。また、fは周波数(単位:MHz)を示す。
【0036】
この標準規格は、周波数100MHzまでの範囲に限定して適用されるものであり、ここに、実証として、周波数100MHzを上記数式に代入して100MHzにおける減衰量及び近端漏話減衰量を算出してみる。まず、減衰量は、ATT(100)=K1・√(100) +K2・100 +K3/√(100) =21.97から21.97dBである。また、近端漏話減衰量は、NEXT(100) =NEXT(0.772) −15log(100/0.772)=64−31.68≒32から32dBとなり、表2に示すEAI/TIA−568Aのカテゴリー5で定める100MHzでの標準規格の通りである(表2参照)。なお、近端漏話減衰量に関する数式▲2▼において、『NEXT(0.772) 』は、この表2の最上段に示す数値から『64』となる。
【0037】
次に、これらの減衰量及び近端漏話減衰量の値から、100MHzにおけるACR値(NEXT(100) −ATT(100))を求めると、32−21.97=10.03(dB)となることから、周波数100MHzにおいては、このEIA/TIA−568Aのカテゴリー5に定める標準規格を満足すれば、確かに、+10dBのACR値を確保ができることが解る。
【0038】
上記標準規格における数式は、周波数100MHzまでの範囲に限定して適用されるものであるが、次に、同様にして、上記数式に周波数156MHzを代入して156MHzにおける減衰量及び近端漏話減衰量を算出すると、減衰量は、ATT(156)=K1・√(156) +K2・156 +K3/√(156) =28.16から28.16dBであり、近端漏話減衰量は、NEXT(156) =NEXT(0.772) −15log(156/0.772)=64−34.58=29.42となる。このため、ACR値は、29.42−28.16=+1.26(dB)となり、+10dBには全く及ばない。
【0039】
従って、156MHzの周波数において、+10dB以上のACR値を確保するためには、単に、上記標準規格の数式通りの近端漏話減衰量を確保するだけでは足りず、周波数100MHzにおける規格値より近端漏話減衰量を更に向上する必要があることが判明した。ここに、上記の通り、周波数156MHzにおける減衰量の規格値は、ATT(156)=28.16(dB)であることから、周波数156MHzにおいてACR値を+10dB以上とするためには、28.16+10.0=38.16(dB)より、近端漏話減衰量を38.16dB以上とする必要がある。
【0040】
そこで、この38.16dBという近端漏話減衰量が、EIA/TIAで定める標準規格に照らして、どの程度のマージンであるかを考慮すると、上記標準規格に定める数式によって算出した周波数156MHzにおける近端漏話減衰量は、NEXT(156) =29.42(dB)であることから、38.16−29.42=8.74≒9(dB)となる。従って、近端漏話減衰量として、EIA/TIA−568Aのカテゴリー5で定める規格値に対して、+9dBのマージンを持たせることができれば、周波数156MHzにおけるACR値として、+10dBを確保することができると考えられる。
【0041】
このため、図4において、規格値に対し、この+9dBのマージンを持つことができる対14の組み合わせを模索したところ、図4の斜線領域に示すように、撚りピッチの比(PI /PII)が、PI <PIIの時には(すなわち、横軸が1より小さい場合)、0.8以下(PI /PII≦0.8)となる対14の組み合わせであることが判明した。
【0042】
また、前述したように、PI とPIIの大小関係を逆転して捉え、PI >PIIとした場合にも、近端漏話減衰量の値は等しく、かつ、この場合の撚りピッチの比は、丁度逆数の関係になる。このことから、PI <PIIの場合には、PI /PII≦0.8であれば規格値+9dBという基準をクリアするということは、その逆のPI >PIIの場合には、この0.8という数値の逆数、すなわち1.25をとって、PI /PII≧1.25の範囲内であれば、同様に、規格値+9dBという基準をクリアすることができる。実際に、図4においても、その斜線領域に示すように、撚りピッチの比(PI /PII)が、PI >PIIの時には(すなわち、横軸が1より大きい場合)、1.25以上(PI /PII≧1.25)の範囲内では、規格値+9dBという基準をクリアしているのを確認することができる。
【0043】
この場合、1つの通信ケーブル10内における、いずれの対14の組み合わせにおいても、この図4の斜線領域に示す範囲に含まれるように選択しなければ、良好な伝送特性を得ることができない。そこで、1つの通信ケーブル10内において任意に選択された2つの対14の組み合わせが、図4の斜線領域の範囲に含まれるように、上記の撚りピッチPI 、PIIを任意に選択された2つの対Ti 、Tj の撚りピッチPi 、Pj と置き換えて、
i <Pj の時は、Pi /Pj ≦0.8
i >Pj の時は、Pi /Pj ≧1.25
という数式(1)を導いたのである。
【0044】
上記の数式(1)は、4つの対14を用いて実験した結果導き出されたものであるが、この数式は、対14の各組み合わせに関する数式であるため、1つの通信ケーブル10内における対14の数には左右されず、いずれの対14の組み合わせをとっても、この数式を満たすようにすれば、勿論、4つの以外の他の数の対14を集合撚りする場合でも、良好な伝送特性を得ることができる。
【0045】
なお、このように、周波数156MHzにおけるACR値を+10dBとするために、近端漏話減衰量を向上させるに際して、対14の撚りピッチを適切に選択する方法をとったのは、細径、軽量で、充分な可撓性を備えつつ、高速データ通信において、良好な伝送特性を得るためである。すなわち、各対14毎にシールドを施して各対14間の絶縁性を向上して近端漏話減衰量を向上することも考えられるが、これでは、通信ケーブル10の直径が大きく、また、重量も重くなる上に、通信ケーブル10にある程度必要とされる可撓性に欠ける問題が生じ、更には、コストアップにもつながるからである。
【0046】
以上のようにして導いた数式(1)により、対14の数を問わず、2つの対14間の関係については、いずれの対14の組み合わせをとっても、周波数0.772MHzから周波数156MHzまでの全周波数帯域においてEIA/TIA−568Aで定める近端漏話に関する標準規格に対して+9dB以上のマージンを確保することができ、周波数156MHzにおいてもACR値を+10dB以上とすることができる。
【0047】
しかし、例えば、4つの対14から成る通信ケーブル10において、これらの4つの対14のいずれをもデータ伝送に使用する場合には、2つの対14間の個別的な関係のみならず、任意の1つの対14に対する他の3つの対14からの多重漏話も考慮する必要がある。この観点から条件として導かれたのが、数式(2)であり、以下、この数式(2)を導いた過程を説明する。
【0048】
まず、多重漏話は、図5に示すように、対14A乃至対14Dの4つの対14から成る通信ケーブル10において、例えば、任意に選択された対14Aを例に説明すると、対14Aの受信側(誘導側)が、対14Aの発信側(被誘導側)から伝送された信号S1 (図5参照)が減衰されて伝達される信号S2 (図5参照)と同時に、他の3つの対14B乃至14Dから送信された信号SB 乃至SD (図5参照)をも、それぞれの対14B乃至14Dから近端漏話として受信することにより生じる。
【0049】
従って、多重漏話特性を向上して、任意の1つの対14Aの伝送信号を正常に読み取るためには、ノイズとなる他の3つの対14B乃至14Dからの近端漏話の皮相電力の和(信号SB 乃至SD の皮相電力の和)と、任意の1つの対14Aの送り皮相電力(信号S2 の皮相電力)との差が大きくなるようにする必要がある。このため、この任意の1つの対14Aに対する他の3つの対14B乃至14Dからの近端漏話の皮相電力の和と、任意の1つの対14Aの送り皮相電力との比からdB値、すなわち、10*log(近端漏話の皮相電力の和/送り皮相電力)を算出し、このdB値を指標として多重漏話特性につき検討を加ることとした。この場合のdB値をパワーサム値という。
【0050】
このパワーサム値は、2つの対14間の近端漏話減衰量から求めることができ、具体的には、1つの対14の他の3つの対14との間の組み合わせの近端漏話減衰量であるX1 、X2 、X3 をそれぞれ測定し、その結果得られた各近端漏話減衰量を、P=10log10 [10x1/10 +10x2/10 +10x3/10 ]に代入して求めることができる。
【0051】
この場合、良好な近端漏話特性とするためには、上述したように、他の3つの対14からの近端漏話の皮相電力の和と、問題となる1つの対14の送り皮相電力との差を充分に大きくする必要があることから、その目安として、前述した数式(1)で問題としたACR値、すなわち、近端漏話減衰量から減衰量を引いた値と同様に、問題となる1つの対14のパワーサム値からその対14の減衰量を引いた値が+10dB以上であればよいと考えられる。そして、周波数156MHzにおいて、この+10dB以上というマージンを確保するためには、前述した数式(1)を導いた過程から解るように、パワーサム値が、EIA/TIA−568Aのカテゴリー5で定める近端漏話減衰量の標準規格値である29.42dBに対して、前述した8.74dBのマージンを有すればよいと考えられる。このことから、29.42+8.74=38.16より、パワーサム値として、38.16dBを確保すれば、他の3つの対14からの多重漏話を考慮しても、充分な近端漏話特性を得ることができると考えられる。
【0052】
そこで、次に、このパワーサム値で38.16dBを確保するためには、2つの対14間ではどの程度の近端漏話減衰量を確保すれば良いかを模索した。具体的には、他の3つの対14から等しい皮相電力が漏話して、問題となる1つの対14に関するパワーサム値が38.16dBになったとすると、1つの対14当りの近端漏話の皮相電力Xは、
X=10-38.16/10 /3
となり、この時、問題となる1つの対14と他の3つの対14のうちの任意に選択された1つの対14の2つの対14間の近端漏話減衰量のdB値は、
−10logX=42.93
より、42.93dBとなる。
【0053】
従って、4つの対14を有する通信ケーブル10に関して、対14の全ての組み合わせにおいて、周波数156MHzにおける近端漏話減衰量として42.93dB以上を確保することができれば、任意に選択された1つの対14について、他の3つの対14からの近端漏話のパワーサム値として38.16dB以上を確保することができる。
【0054】
次いで、この42.93dBという近端漏話減衰量が、EIA/TIAで定める標準規格に照らして、どの程度のマージンであるかを考慮すると、上記標準規格に定める数式によって算出した周波数156MHzにおける近端漏話減衰量は、NEXT(156) =29.42(dB)であることから、42.93−29.42=13.51(dB)となる。従って、2つの対14間における近端漏話減衰量として、EIA/TIA−568Aのカテゴリー5で定める規格値に対して、+13.51dBのマージンを持たせることができれば、どの対14においても周波数156MHzにおけるパワーサム値として38.16dB以上を確保することができると考えられる。
【0055】
この点について、再び、図4に着目すると、図4の実線A(図4参照)に示すように、数式(1)で示す撚りピッチの比である0.8又は1.25よりも更に1倍に近い領域(すなわち、数式(1)を満足する領域以外の領域)では、13.51dBというマージンを確保することができる対14の組み合わせが殆どないことが解る。このため、少なくとも、数式(1)を満足する領域内でなければ、38.16dB以上のパワーサム値を得ることができないと考えられる。そこで次に、4つの対14から成る通信ケーブル10において、対14の撚りピッチを数式(1)を満足する領域から選択することを前提として、この場合の通信ケーブル10の撚りピッチに着目することとした。具体的には、対14の撚りピッチは変えることなく、通信ケーブル10の撚りピッチのみを様々に変えて、種々の実験を行い、近端漏話減衰量に関する効果を検討した。なお、本発明において、通信ケーブル10の撚りピッチとは、複数の対14を相互に撚り合わせるピッチをいう。
【0056】
実験例として、外径0.511mmの軟銅線から成る導体18に、ポリエチレンから成る絶縁層20を被覆した外径0.94mmの絶縁電線16から成る4つの対14を用いて、図1に示すように、集合撚り層12とシース層22とを有する通信ケーブル10を製造した。
【0057】
この場合において、各対14の撚りピッチは、上記の数式を満たす範囲から次のようにして選択した。まず、4つの対14の撚りピッチの最小値P1 をP1 =10.0mmと設定し、以下、できるだけ小さい撚りピッチを選択して4つの対14の撚りピッチの最大値をできるだけ小さくすべく、上記数式を相互に満足する範囲での最小値を順次選択していくことにした。
【0058】
すなわち、撚りピッチの最小値P1 の次に大きい撚りピッチP2 (4つの対14の撚りピッチの中で、2番目に小さく、3番目に大きい撚りピッチ)は、P2 /P1 ≧1.25より、P2 ≧1.25×P1 ≧1.25×10≧12.5mmとなり、12.5mm以上の中での最小値、すなわち、12.5mmと設定した。同様にして、その次に大きい撚りピッチP3 は、P3 ≧1.25×P2 より16.0mmと、また撚りピッチの中の最大値P4 は、P4 ≧1.25×P3 より、20.0mmと設定した。このようにして、4つの対14の撚りピッチP1 乃至P4 をそれぞれ▲1▼10.0mm、▲2▼12.5mm、▲3▼16.0mm、▲4▼20.0mmに設定した。また、このように設定していくことにより、対14のすべての組み合わせにおいて、上記数式を満足することができる。
【0059】
【表3】
Figure 0003644736
【0060】
次いで、各対14の撚りピッチは上記の数値に固定したままで、表3に示すように、通信ケーブル10の撚りピッチ(4つの対14を撚り合わせるピッチ)を、30mm(実験例16)、40mm(実験例17)、50mm(実験例18)、60mm(実験例19)、70mm(実験例20)、90mm(実験例21)、110mm(実験例22)、130mm(実験例23)の計8種類設定して、各実験例毎に、1つの通信ケーブル10内における4つの対14の全ての組み合わせ(1つの実験例につき、上記の対▲1▼と対▲2▼等の組み合わせで、計6つの組み合わせ)について、近端漏話減衰量を測定した。
【0061】
次いで、対14の撚りピッチの組み合わせと、各組み合わせにおける近端漏話減衰量との関係を調べた。
【0062】
この場合において、対14の各組み合わせの近端漏話レベルを示す指標は、図4の場合と同様にして定めた。すなわち、表2に示すように、表3に示す各実験例における対14の全ての組み合わせにつき得られた近端漏話減衰量の測定値から、EIA/TIA−568Aのカテゴリー5で定める規格値を引いた値を算出し、これを各組み合わせにつき表2に示す標準規格の全周波数帯域(表2に示す11の周波数)にわたって求めた。そして、最悪の場合でも表2に示すEIA/TIA−568Aのカテゴリー5で定める規格値をクリアすることができるかが問題となるため、対14の各組み合わせにつき、全周波数帯域において得られた11通りの測定値−規格値の中から、最小値をもって、各組み合わせの近端漏話レベルとした。
【0063】
また、対14の撚りピッチの組み合わせを数値化する指標は、図4の場合と異なり、以下のようにして定めた。すなわち、撚り合わされているために通信ケーブル10内において斜めに走査している対14の撚りピッチPを、図3に示すように、通信ケーブル径方向成分(図3のPix、Pjx参照)と、通信ケーブル長手方向成分(図3のPiy、Pjy参照)とに分解して考えた。そして、これらの通信ケーブル径方向成分と通信ケーブル長手方向成分のうち、通信ケーブル10の撚りピッチの大きさによって顕著な差が出るのは、通信ケーブル径方向成分であり、具体的には、通信ケーブル10の撚りピッチが小さい程通信ケーブル径方向成分は大きくなり、通信ケーブル10の撚りピッチが大きい程通信ケーブル径方向成分は小さくなる。よって、対14の撚りピッチを数値化する指標として、対14の撚りピッチの通信ケーブル径方向成分の積(Pix×Pjx)を採用し、この対14の撚りピッチの通信ケーブル径方向成分の積と近端漏話減衰量との関係を調べた。
【0064】
以上のようにして実験結果を数値化し、その結果得られた対14の撚りピッチの組み合わせと、各組み合わせにおける近端漏話減衰量との関係を図6に示し、評価を行った。
【0065】
この図6は、横軸に対14の撚りピッチの通信ケーブル径方向成分の積(Pix×Pjx)をとり、縦軸に表3に示す対14の各組み合わせにつき得られた近端漏話減衰量の測定値からEIA/TIA−568Aのカテゴリー5で定める規格値を引いた値の全周波数帯域の中での最小値をとって、各実験例における対14の組み合わせの近端漏話減衰量の評価を示したものである。
【0066】
この図6より、EIA/TIA−568Aのカテゴリー5で定める近端漏話減衰量の規格値に対して、+13.51dB以上のマージンを持つことができる対14の組み合わせを模索したところ、図6の斜線領域に示すように、対14の撚りピッチの通信ケーブル径方向成分の積が4≦Pix×Pjx≦22.5の範囲となる対14の組み合わせであることが判明した。
【0067】
具体的には、通信ケーブル10の撚りピッチを50mmに設定した実験例18と、60mmに設定した実験例19については、いずれの対14の組み合わせをとっても、規格値に対して+13.51dBのマージンを持つことができた。なお、この場合、図6における各プロットは、対14の各組み合わせにつき、全周波数帯域において得られた近端漏話減衰量の測定値から規格値を引いた値の中での最小値を示しているため、縦軸の+13.51dB以上の箇所にプロットされる対14の組み合わせにおいては、他の全ての周波数帯域においても、規格値に対して+13.51dB以上のマージンを持つことができる。
【0068】
そして、この結果を対14を構成する絶縁電線16の外径dとの関係で条件付けするため、この4≦Pix×Pjx≦22.5を、対14を構成する絶縁電線16の外径d(d=0.94)の2乗で割ることにより4.53≦(Pix×Pjx)/d2 ≦25.4という数式(2)を導いたのである。
【0069】
なお、上記のように、数式(2)は、数式(1)を満足する領域から対14の撚りピッチを選択することが前提となっている。従って、本発明の通信ケーブル10においては、条件として、対14の撚りピッチを数式(1)及び数式(2)を同時に満足する領域から選択することが必要となる。また、1つの通信ケーブル10内における、いずれの対14の組み合わせにおいても、この数式(2)を満足するように対14の撚りピッチを選択しなければ、良好な伝送特性を得ることができないため、上記数式(2)におけるPi 、Pj をそれぞれ任意に選択された2つの対Ti 、Tj の撚りピッチPi 、Pj と考えて、条件とした。
【0070】
数式(1)及び数式(2)は、それぞれ、以上のようにして導き出されたものであるが、次に、これらの数式を同時に満足する領域から、対14の撚りピッチを選択した本発明の実施例を挙げて、その効果を立証する。
【0071】
具体的には、外径0.511mmの軟銅線から成る導体18に、ポリエチレンから成る絶縁層20を被覆した外径0.94mmの絶縁電線16から成る4つの対14を用いて、図1に示すように、集合撚り層12とシース層22とを有する通信ケーブル10を製造した。なお、シース層22として、ポリ塩化ビニルを被覆した。
【0072】
この場合において、各対14の撚りピッチは、数式(1)を満足するように、表3に示す実験例16乃至実験例23と同様にして、最小値P1 から順に、▲1▼P1 =10.0mm、▲2▼P2 =12.5mm、▲3▼P3 =16.0mm、▲4▼P4 =20.0mmに設定した。その上で、通信ケーブル10の撚りピッチを60mmに設定し、これらの4つの対14を、数式(2)を満足するように、相互に60mmの撚りピッチで撚り合わせた。すなわち、この本発明の実施例は、上記表3に示す実験例19と同じものである。
【0073】
【表4】
Figure 0003644736
【0074】
なお、この本発明の実施例における対14の撚りピッチの通信ケーブル径方向成分を表4に示す。この表4から解るように、対14の撚りピッチのいずれの組み合わせをとっても、4.53≦(Pix×Pjx)/d2 ≦25.4という本発明の数式(2)を満足していることが解る。
【0075】
以上の実施例につき、まず、対14の全ての組み合わせ(合計6通り)につき、近端漏話減衰量を測定し、その結果を図7に示した。具体的には、対14の各組み合わせにつき、表2に示すEIA/TIA−568Aのカテゴリー5で定める全周波数帯域(表2に示す11の周波数)と、本発明において問題となる156MHzの計12の周波数において、近端漏話減衰量を測定した。この図7から解るように、対14のいずれの組み合わせに関する近端漏話減衰量をとっても、全周波数帯域にわたってEIA/TIA−568Aのカテゴリー5で定める規格値に対し+13.51dBのマージンを確保することができ、特に、156MHzにおける近端漏話減衰量も規格値に対して+13.51dBのマージンを確保することができるのが解る。
【0076】
次に、このように近端漏話減衰量で規格値に対して+13.51dBのマージンを有すれば、パワーサム値で規格値に対して+8.74dBのマージンを確保することができるかを確認した。具体的には、対14の各組み合わせにつき得られた近端漏話減衰量から、4つの対14の各々についてパワーサム値を算出して、その結果を図8に示した。この図8から解るように、いずれの対14においても、多重漏話特性の指標となるパワーサム値で、EIA/TIA−568Aのカテゴリー5で定める近端漏話減衰量の規格値に対して、+8.74dBのマージンを確保することができたのが確認された。この図8からは、特に、問題となる周波数156MHzにおいても、パワーサム値で充分なマージンを確保することができるのが解る。
【0077】
更に、対14の各組み合わせにつき得られた近端漏話減衰量を基に、ACR値を算出した。この場合、周波数が増加するに従い、減衰量は増加し、近端漏話減衰量は減少するため、近端漏話減衰量から減衰量を差し引いた値であるACR値は、通常、その対14における最高の使用周波数において最小値となることから、最高の周波数におけるACR値が+10dB以上であれば、他の周波数においてもACR値として+10dBを確保することができると共に、最高の周波数において近端漏話減衰量の値が最小であった対14の組み合わせに関するACR値が+10dB以上であれば、他の対14の組み合わせについても、+10dB以上のACR値を確保することができると考えられる。このため、図7に示す近端漏話減衰量のうち、最高の周波数である156MHzにおける近端漏話減衰量の値が最小であった対14の組み合わせ(すなわち、図7に示すように、▲2▼12.5mmと▲3▼16.0mmの対14の組み合わせ)につき、各周波数毎にACR値を算出して、これを図9に示した。
【0078】
この図9から解るように、いずれの周波数においても、ACR値として、+10dB以上を確保することができた。この場合、この図9に示すACR値は、最高の周波数156MHzにおける近端漏話減衰量の値が最小であった対14の組み合わせに関するACR値を示したものであるため、図9に示すACR値の最小値が+10dB以上という目標を達成しているということは、すなわち、他の対14の組み合わせについても、いずれの周波数においてもACR値として+10dB以上を確保することができることを示している。
【0079】
また、図9から解るように、特に問題となる周波数156MHzにおけるACR値についても、+10dB以上を確保することができた。このため、本発明に示す対14の撚りピッチの範囲から選択すれば、156Mbpsの高速データ通信において良好な伝送特性を得ることができることが解る。
【0080】
【発明の効果】
本発明によれば、上記のように、複数の対の撚りピッチを数値限定しているため、隣り合う対の撚りピッチが必ず異なり、しかも、各対が実験の結果得られた最適な値の撚りピッチで撚り合わされているため、近端漏話減衰量が向上し、EIA/TIA−568Aのカテゴリー5で定める電気特性規格を満足することができる上に、通信ケーブル100mでの156MHzにおいて、ACR値を+10dB以上とすることができると同時に充分な多重漏話特性も確保することができ、100Mbps以上の、特に、156Mbpsの高速データ通信においても良好な伝送特性を得ることができる実益がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の通信ケーブルの一例を示す断面図である。
【図2】本発明に用いられる対の断面図である。
【図3】通信ケーブル内における対の撚りピッチの通信ケーブル径方向成分と通信ケーブル長手方向成分とを示す撚りピッチ分解図である。
【図4】本発明に関する実験例における対の組み合わせにつき得られた近端漏話減衰量と、対の撚りピッチの比との関係を示すプロット図である。
【図5】通信ケーブル内で生じる多重漏話の状態を示す概略図である。
【図6】本発明に関する実験例における対の組み合わせにつき得られた近端漏話減衰量と、対の撚りピッチの通信ケーブル径方向成分の積との関係を示すプロット図である。
【図7】本発明の実施例における対の組み合わせにつき得られた近端漏話減衰量の測定値を示したプロット図である。
【図8】本発明の実施例における対につき得られたパワーサム値を示すプロット図である。
【図9】本発明の実施例における対の組み合わせにつき得られたACR値を示すプロット図である。
【符号の説明】
10 通信ケーブル
12 集合撚り層
14 対
16 絶縁電線
18 導体
20 絶縁層
22 シース層

Claims (1)

  1. 複数の対を隣り合う対が異なる撚りピッチとなるように集合撚りして形成された通信ケーブルにおいて、前記複数の対のうち、任意に選択された2つの対Ti 、Tj の撚りピッチPi 、Pj が、下記の数式(1)及び数式(2)を同時に満足する領域から選択されていることを特徴とする通信ケーブル。
    但し、下記の数式において、Pixは前記対Ti の撚りピッチPi の通信ケーブル径方向成分を、Pjxは前記対Tj の撚りピッチPj の通信ケーブル径方向成分を、dは前記複数の対を構成する絶縁電線の外径を示す。
    数式(1) Pi <Pj の時は、Pi /Pj ≦0.8
    i >Pj の時は、Pi /Pj ≧1.25
    数式(2) 4.53≦(Pix×Pjx)/d2 ≦25.4
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