JP3644619B2 - 高周波伝送線路を有した電子部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波伝送線路を有した電子部品、例えば遅延線路部品、高周波スイッチ部品、高周波フィルタ部品、又は分波フィルタ部品等に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば高周波伝送線路部品として、図15に示すものが提案されている。この高周波伝送線路部品151は、一つの伝送線路導体からなる1本の伝送線路152を表面に設けた誘電体シート153と、グランド導体154を表面に設けた誘電体シート153と、保護用シート153等を積層したものである。伝送線路152を表面に設けた誘電体シート153は、グランド導体154を表面に設けた2枚の誘電体シート153の間に配設されている。従って、この高周波伝送線路部品151は、二つのグランド導体154の間に、所定の特性インピーダンスを有する1本の伝送線路152を1層で構成している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の高周波伝送線路部品151は、二つのグランド導体154の間に伝送線路152を1層で構成するものであったため、一層当たりの伝送線路の長さが長くなり、部品サイズが大きくなるという問題があった。
【0004】
また、外部からの電磁界ノイズから伝送線路152を遮蔽するため、二つのグランド導体154の間に伝送線路152を配設しているので、伝送線路152とグランド導体154との間に形成される浮遊容量の影響により、伝送線路152の特性インピーダンスが低くなる。従って、この高周波伝送線路部品151を、バイアス印加回路等の分岐線路として用いると、主線の挿入損失が大きく、帯域幅が狭くなるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、所定の特性インピーダンスを確保し、かつ、小型化が可能で周波数特性が優れている高周波伝送線路を有した電子部品を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
以上の目的を達成するため、本発明に係る高周波伝送線路を有した電子部品は、
(a)複数の誘電体層と複数の伝送線路導体と複数のグランド導体を積層して構成され、複数の前記伝送線路導体を積層方向に誘電体層を介して略対向させると共に積層方向に隣り合う二つの伝送線路導体を伝播する高周波信号の進行方向が相互に同方向になるように電気的に直列に接続させて構成した伝送線路を複数形成し、かつ、複数の前記グランド導体間に複数の前記伝送線路を積層方向に沿って並設した積層体と、
(b)前記伝送線路に電気的に接続された電気機能素子とを備え、
(c)複数の前記伝送線路のうち少なくとも一つの伝送線路が積層方向に異なる導体幅を有した複数の前記伝送線路導体にて形成され、複数の前記伝送線路に対して積層方向に前記誘電体層を介して共通の前記グランド導体が対向し、かつ、複数の前記伝送線路のそれぞれの特性インピーダンスが異なること、
を特徴とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
また、本発明に係る高周波伝送線路を有した電子部品は、
(d)複数の誘電体層と複数の伝送線路導体と複数のグランド導体を積層して構成され、複数の前記伝送線路導体を積層方向に誘電体層を介して略対向させると共に積層方向に隣り合う二つの伝送線路導体を伝播する高周波信号の進行方向が相互に同方向になるように電気的に直列に接続させて構成した伝送線路を複数形成し、かつ、複数の前記グランド導体間に複数の前記伝送線路を積層方向に沿って並設した積層体と、
(e)前記伝送線路に電気的に接続された電気機能素子とを備え、
(f)複数の前記伝送線路が伝送線路毎に異なる導体幅を有した複数の前記伝送線路導体にて構成され、複数の前記伝送線路に対して積層方向に前記誘電体層を介して共通の前記グランド導体が対向し、かつ、複数の前記伝送線路のそれぞれの特性インピーダンスが異なること、
を特徴とする。
【0009】
【作用】
以上の構成により、伝送線路が複数層で構成されるため、特性インピーダンスが一定であれば、一層当たりの伝送線路導体の長さは、従来より短くてすむ。従って、部品のサイズが従来より小さくなる。
【0010】
さらに、隣り合う二つの伝送線路導体を伝播する高周波信号の進行方向が相互に同方向であるため、伝送線路導体のそれぞれの周囲に発生する磁束の周回方向が同方向となる。従って、隣り合う二つの伝送線路導体の間隔を近接させることにより、伝送線路導体間の結合が大きくなる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る高周波伝送線路を有した電子部品の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0012】
[第1実施形態、図1〜図3]
図1に示すように、高周波伝送線路部品1は、伝送線路導体2a,2b及びビアホール6をそれぞれ設けた誘電体シート5と、グランド導体4を設けた誘電体シート5と、保護用誘電体シート5等にて構成されている。
【0013】
伝送線路導体2a,2bは、それぞれ大略ミアンダ形状をしており、伝送線路導体2aの引出し部3aはシート5の手前側の辺の左側部に露出し、伝送線路導体2bの引出し部3bはシート5の手前側の辺の右側部に露出している。さらに、伝送線路導体2a,2bは、引出し部3a,3bを残して、シート5を挟んで対向している。第1実施形態では、伝送線路導体2a,2bは積層方向に完全に重なり合うように配置されている(図3参照)。ただし、伝送線路導体2a,2bの配置は必ずしもこれに限るものではなく、例えば、導体幅の略半分が重なり合うように伝送線路導体2a,2bを配置してもよい。伝送線路導体2a,2bは、ビアホール6を介して電気的に直列に接続され、1本の伝送線路(例えば1/4波長の分布定数線路)2を形成する。
【0014】
グランド導体4は、シート5の表面に広面積に設けられている。グランド導体4の引出し部4aはシート5の左辺に露出し、引出し部4bはシート5の右辺に露出し、引出し部4c,4dはそれぞれシート5の奥側の辺の左側部及び右側部に露出している。
【0015】
導体2a,2b,4はAg,Pd,Ag−Pd,Cu等からなり、シート5の表面に、周知の印刷法やスパッタリング法や真空蒸着法等の方法によって形成される。矩形状誘電体シート5は、誘電体セラミック粉末を結合剤等と共に混練したものをシート状にしたものである。
【0016】
以上の構成からなる各シート5は積み重ねられ、一体的に焼結されることにより、図2に示すように積層体とされる。積層体の手前側の側面部の左側及び右側の位置には、それぞれ入力端子11及び出力端子13が形成され、奥側の側面部の左側及び右側の位置には、それぞれグランド端子12,14が形成される。さらに、積層体の左右の側面部には、それぞれグランド端子15,16が形成される。これらの端子11〜16は、スパッタリング法、真空蒸着法、あるいは塗布焼付等の方法にて形成される。
【0017】
入力端子11は伝送線路2の一方の端部、具体的には伝送線路導体2aの引出し部3aに電気的に接続している。出力端子13は伝送線路2の他方の端部、具体的には伝送線路導体2bの引出し部3bに電気的に接続している。グランド端子12,14,15,16は、それぞれグランド導体4の引出し部4c,4d,4a,4bに電気的に接続している。
【0018】
こうして得られた高周波伝送線路部品1は、図3に示すように、上下に配置された二つのグランド導体4,4の間に、1本の伝送線路2が伝送線路導体2aと2bの2層で構成されている。従って、特性インピーダンスが一定であれば、一層当たりの伝送線路導体の長さは、従来の略1/2となる。この結果、伝送線路部品1は、従来の高周波伝送線路部品と比較して、小さい部品サイズで所定の特性インピーダンスを確保することができる。
【0019】
また、入力端子11に入った高周波信号が、伝送線路2を伝播して出力端子13から出力される場合、図1に示すように、伝送線路導体2aを伝播する高周波信号の進行方向aと、伝送線路導体2bを伝播する高周波信号の進行方向bとが同方向となる。従って、伝送線路導体2a,2bのそれぞれの周囲に発生する磁束の周回方向が同方向となり、伝送線路導体2aと2bはこの相互に同方向に周回する磁束によって電磁気的に結合することになる。これにより、図3に示すように、伝送線路導体2aと2bが近接して重なり合う部分において、伝送線路導体2a及び2bを中心として周回する磁束φが形成される。このため、例えば伝送線路導体2aと2bの間隔を25μm程度に設定することにより、伝送線路導体2aと2b間の結合を大きくすることができ、所望の特性インピーダンスを容易に得ることができる。
【0020】
従って、外部からの電磁界ノイズから伝送線路2を遮蔽するため、二つのグランド導体4の間に伝送線路2を配設しても、伝送線路2とグランド導体4との間に形成される浮遊容量の影響による伝送線路2の特性インピーダンスの低下を補償して、一定の特性インピーダンスを確保することができる。そして、この高周波伝送線路部品1を、バイアス印加回路等の分岐線路として用いる場合には、主線の挿入損失の低下及び帯域幅縮小を抑えることができる。
【0021】
さらに、伝送線路2において、伝送線路導体2a,2bが積層方向に重なっている部分の線路長をLとすると、L=λ/4となる波長λの高周波信号が伝送線路2を伝播した際に、最も大きな結合が生じる。そして、この重なっている部分の線路長Lを短くすることで、伝送線路2を伝播する高周波信号のうちで最も大きな結合が得られる高周波信号の周波数(以下、中心周波数と記す)を高くすることができる。
【0022】
さらに、伝送線路導体2a,2bの導体幅、あるいは伝送線路導体2a,2bとグランド導体4の間隔、あるいは伝送線路導体2aと2bの重なり面積、あるいは伝送線路導体2a,2b相互の間隔を任意に設定することにより、特性インピーダンスを所望の値に調整することができる。
【0023】
[第2実施形態、図4〜図7]
図4に示すように、高周波伝送線路部品21は、伝送線路導体22a,22b,22c及びビアホール26a,26bをそれぞれ設けた誘電体シート25と、グランド導体24を設けた誘電体シート25と、保護用誘電体シート25等にて構成されている。
【0024】
伝送線路導体22a〜22cは、それぞれ大略ミアンダ形状をしている。伝送線路導体22a,22cの引出し部23a,23cは、それぞれシート25の手前側の辺の左側部及び右側部に露出している。さらに、伝送線路導体22a〜22cは、引出し部23a、23cを残して、シート25を挟んで対向し、電磁気的に結合している。伝送線路導体22a〜22cは、ビアホール26a,26bを介して電気的に直列に接続され、1本の伝送線路22を形成する。
【0025】
グランド導体24は、シート25の表面に広面積に設けられている。グランド導体24の引出し部24a,24bはそれぞれシート25の左辺及び右辺に露出し、引出し部24c,24dはそれぞれシート25の奥側の辺の左側部及び右側部に露出している。
【0026】
以上の構成からなる各シート25は積み重ねられ、一体的に焼結されることにより、図5に示すように積層体とされる。積層体の手前側の側面部の左寄り及び右寄りの位置には、それぞれ入力端子31及び出力端子32が形成され、奥側の側面部の左寄り及び右寄りの位置には、それぞれグランド端子35,36が形成され、左右の側面部には、それぞれグランド端子33,34が形成される。
【0027】
入力端子31は伝送線路22の一方の端部、具体的には伝送線路導体22aの引出し部23aに電気的に接続している。出力端子32は伝送線路22の他方の端部、具体的には伝送線路導体22cの引出し部23cに電気的に接続している。グランド端子33,34,35,36は、それぞれグランド導体24の引出し部24a,24b,24c,24dに電気的に接続している。
【0028】
こうして得られた高周波伝送線路部品21は、図6(A)に示すように、上下に配置された二つのグランド導体24,24の間に、1本の伝送線路22が伝送線路導体22aと22bと22cの3層で構成されているので、特性インピーダンスが一定であれば、一層当たりの伝送線路導体の長さは従来の1/3となる。従って、伝送線路部品21を従来の高周波伝送線路部品と比較して小型にすることができる。
【0029】
ここで、図6(B)に示すように、一対のグランド導体24の間に、伝送線路導体22a〜22cのうちの一つしか配置しない構造を有する伝送線路部品と比較する。グランド導体24と伝送線路導体22a(又は22b,22c)の間隔T1を150μm程度とすると、伝送線路導体22a〜22c相互の間隔T2は25μm程度にできる。従って、図6(B)に示されている構造の伝送線路部品の寸法T4は900μm程度となるのに対して、第2実施形態の伝送線路部品21の寸法T3は350μm程度に抑えることができる。
【0030】
また、図4に示すように、伝送線路導体22a,22b,22cをそれぞれ伝播する高周波信号の進行方向a,b,cは同方向となる。従って、図6(A)に示すように、伝送線路導体22a,22b,22cが近接して重なり合う部分において、伝送線路導体22a〜22cをほぼ中心として周回する磁束φが形成される。この結果、伝送線路部品21は、伝送線路導体22a〜22c相互の間隔を所定量確保することにより、伝送線路導体22a〜22c間の結合を大きくすることができ、所望の特性インピーダンスを容易に得ることができる。
【0031】
また、特性インピーダンスを所定値に調整するため、伝送線路導体22a〜22cの導体幅、あるいは伝送線路導体22a〜22cとグランド導体24の間隔、あるいは伝送線路導体22a〜22c相互の間隔を任意に設定することができる。特に、図7に示すように、積層方向において、最も外側に位置している伝送線路導体22a,22cと内側に位置している伝送線路導体22bのそれぞれの導体幅を異ならせておけば、伝送線路導体22a〜22cの積層ずれによる特性インピーダンスの変動を抑えることができるので、有効である。
【0032】
[第3実施形態、図8及び図9]
図8に示すように、高周波伝送線路部品41は、伝送線路導体42a,42cを設けた誘電体シート45と、伝送線路導体42bを設けた誘電体シート45と、グランド導体44を設けた誘電体シート45と、保護用誘電体シート45等にて構成されている。
【0033】
伝送線路導体42a〜42cは、それぞれ大略ミアンダ形状をしている。伝送線路導体42a,42cの引出し部43a,43cは、それぞれシート45の手前側の辺の中央左寄りの位置及び右側の位置に露出している。さらに、伝送線路導体42a〜42cは、引出し部43a,43c等を残してシート45を挟んで対向し、電磁気的に結合している。伝送線路導体42a〜42cは、ビアホール46a,46bを介して電気的に直列に接続され、1本の伝送線路42を形成する。
【0034】
グランド導体44は、シート45の表面に広面積に設けられている。グランド導体44の引出し部44a,44bはそれぞれシート45の左辺及び右辺に露出し、引出し部44c,44dはそれぞれシート45の奥側の辺の中央左寄りの位置及び右側の位置に露出している。
【0035】
以上の構成からなる各シート45は積み重ねられ、一体的に焼結されることにより、図9に示すように積層体とされる。積層体の手前側の側面部の中央左寄り及び右側の位置には、それぞれ入力端子51及び出力端子52が形成され、奥側の側面部の中央左寄り及び右側の位置には、それぞれグランド端子55,56が形成され、左右の側面部にはそれぞれグランド端子53,54が形成される。
【0036】
入力端子51は伝送線路42の一方の端部、具体的には伝送線路導体42aの引出し部43aに電気的に接続している。出力端子52は伝送線路42の他方の端部、具体的には伝送線路導体42cの引出し部43cに電気的に接続している。グランド端子53,54,55,56は、それぞれグランド導体44の引出し部44a,44b,44c,44dに電気的に接続している。
【0037】
こうして得られた高周波伝送線路部品41は、上下に配置された二つのグランド導体44,44の間に、1本の伝送線路42が、伝送線路導体42a,42cの層と、伝送線路導体42bの層の2層で構成されている。従って、特性インピーダンスが一定であれば、一層あたりの伝送線路導体の長さは、従来の長さより短くなる。この結果、伝送線路部品41は、従来の高周波伝送線路部品と比較して小型にすることができる。
【0038】
また、図8に示すように、伝送線路導体42a,42b,42cをそれぞれ伝播する高周波信号の進行方向a,b,cが同方向となる。従って、伝送線路導体42a,42b,42cのそれぞれの周囲に発生する磁束の周回方向が同方向となる。この結果、伝送線路部品41は、伝送線路導体42a〜42c相互の間隔を近接させることにより、伝送線路導体42a〜42c間の結合を大きくすることができ、所望の特性インピーダンスを容易に得ることができる。
【0039】
[第4実施形態、図10及び図11]
図10に示すように、高周波伝送線路部品61は、伝送線路導体62a,62b及びビアホール66をそれぞれ設けた誘電体シート65と、グランド導体64を設けた誘電体シート65と、保護用誘電体シート65等にて構成されている。伝送線路導体62aの引出し部63aはシート65の手前側の辺の左側部に露出し、伝送線路導体62bの引出し部63bはシート65の手前側の辺の左側部に露出している。さらに、伝送線路導体62a,62bは、引出し部63a,63bを残してシート65を挟んで対向している。伝送線路導体62a,62bはビアホール66を介して直列に電気的に接続され、1本の伝送線路62を形成する。
【0040】
グランド導体64は、シート65の表面に広面積に設けられている。グランド導体64の引出し部64a,64bはそれぞれシート65の左辺及び右辺に露出し、引出し部64cはシート65の手前側の辺の右側部に露出し、引出し部64d,64eはそれぞれシート65の奥側の辺の右側部及び左側部に露出している。
【0041】
以上の構成からなる各シート65は積み重ねられ、一体的に焼結されることにより、図11に示すように積層体とされる。積層体の手前側の側面部の左側及び右側の位置には、それぞれ入出力端子71及びグランド端子73が形成され、奥側の側面部の左側及び右側の位置には、それぞれグランド端子72,74が形成され、左右の側面部には、それぞれグランド端子75,76が形成される。
【0042】
入出力端子71は、伝送線路62の一方の端部、具体的には伝送線路導体62aの引出し部63aに電気的に接続している。グランド端子73は伝送線路62の他方の端部、具体的には伝送線路導体62bの引出し部63b及びグランド導体64の引出し部64cに電気的に接続している。グランド端子72,74,75,76は、それぞれグランド導体64の引出し部64e、64d、64a,64bに電気的に接続している。なお、この実施形態においては、伝送線路導体62bの引出し部63bとグランド導体64とが電気的に接続されているが、回路とのマッチングをとる場合等、回路構成上必要な場合に限って接続されるものである。
【0043】
こうして得られた高周波伝送線路部品61は、前記第1実施形態の伝送線路部品1と同様の作用効果を奏する。
【0044】
[第5実施形態、図12〜図14]
第5実施形態は、高周波スイッチ部品を例にして説明する。
【0045】
図12に示すように、高周波スイッチ部品81は、伝送線路導体82a,82b等を設けた誘電体シート95と、グランド導体84を設けた誘電体シート95と、コンデンサ導体85,86を設けた誘電体シート95と、伝送線路導体87a〜87c,88a,88bをそれぞれ設けた誘電体シート95と、ビアホール付きパッド107a〜110bを設けた誘電体シート95等にて構成されている。
【0046】
伝送線路導体87a,87b,87cは、それぞれ大略スパイラル形状をしており、伝送線路導体87aの引出し部89aはシート95の奥側の辺の左側部に露出し、伝送線路導体87cの引出し部89cはシート95の手前側の辺の左側部に露出している。さらに、伝送線路導体87a〜87cは、引出し部89a,89cを残してシート95を挟んで対向している。これらの伝送線路導体87a〜87cは、シート95に設けたビアホール120a、120bを介して電気的に直列に接続され、1本の伝送線路87を形成する。この伝送線路87は、バイアス回路の分岐線路として用いられる。
【0047】
同様に、伝送線路導体88a,88bはそれぞれ大略ミアンダ形状をしており、伝送線路導体88aの引出し部90aはシート95の奥側の辺の右側部に露出し、伝送線路導体88bの引出し部90bはシート95の手前側の辺の中央部に露出している。さらに、伝送線路導体88a,88bは、引出し部90a,90bを残してシート95を挟んで対向している。これらの伝送線路導体88a,88bは、シート95に設けたビアホール121a,121bを介して電気的に直列に接続され、1本の伝送線路88を形成する。この伝送線路88は、特性インピーダンスを50Ω程度するため、伝送線路導体88aと88bの2層構造にして、伝送線路導体88aと88bの間隔を大きくしている。さらに、伝送線路88の場合、伝送線路導体88a,88bの導体幅を伝送線路87の伝送線路導体87a〜87cより太くすることにより、特性インピーダンスを調整している。この伝送線路88は、高周波スイッチ部品81の主線路として用いられる。
【0048】
伝送線路導体82a,82bはそれぞれ大略スパイラル形状をしており、伝送線路導体82bの引出し部83はシート95の手前側の辺の中央部に露出している。さらに、伝送線路導体82a,82bは、引出し部83を残してシート95を挟んで対向している。これらの伝送線路導体82a,82bは、シート95に設けたビアホール122を介して電気的に直列に接続され、1本の伝送線路82を形成する。伝送線路82,87,88の特性インピーダンスはそれぞれ異なる値を有している。
【0049】
グランド導体84は、シート95の表面に広面積に設けられている。グランド導体84の引出し部84aはシート95の左辺に露出し、引出し部84bはシート95の右辺に露出し、引出し部84cはシート95の奥側の辺の中央部に露出している。
【0050】
コンデンサ導体85,86は、それぞれシート95の表面の左側及び右側に設けられている。コンデンサ導体85の引出し部85aはシート95の手前側の辺の左側部に露出している。これらのコンデンサ導体85,86はそれぞれシート95を挟んでグランド導体84に対向しており、グランド導体84と共にコンデンサC1,C2を形成する。
【0051】
さらに、伝送線路導体82aが設けられているシート95の表面には、引出し導体100,101,102,103及び中継導体104が設けられている。引出し導体100,101の一端は、それぞれシート95の奥側の辺の左側部及び右側部に露出し、引出し導体102,103の一端はそれぞれシート95の手前側の辺の中央部及び右側部に露出している。そして、伝送線路導体82aはビアホール付きパッド109bに電気的に接続され、引出し導体101,102,103はそれぞれビアホール付きパッド108b,107a,110aに電気的に接続される。中継導体104はビアホール付きパッド110b及び108aに電気的に接続されると共に、シート95に設けたビアホール123a,123b,123cを介してコンデンサ導体86に電気的に接続される。
【0052】
以上の構成からなる各シート95は積み重ねられ、一体的に焼結されることにより、図13に示すように積層体とされる。積層体の手前側の側面部の左側、中央及び右側の位置には、それぞれ電圧制御用端子Vc1、アンテナ用端子ANT及び電圧制御用端子Vc2が形成される。積層体の奥側の側面部の左側、中央及び右側の位置には、それぞれ送信回路用端子TX、グランド端子G3及び受信回路用端子RXが形成される。さらに、積層体の左右の側面部には、それぞれグランド端子G1,G2が形成される。
【0053】
送信回路用端子TXは、伝送線路87の一方の端部、具体的には伝送線路導体87aの引出し部89aと、引出し導体100とに電気的に接続している。受信回路用端子RXは、伝送線路88の一方の端部、具体的には伝送線路導体88aの引出し部90aと、引出し導体101とに電気的に接続している。アンテナ用端子ANTは、伝送線路82の一方の端部、具体的には伝送線路導体82bの引出し部83と、引出し導体102と、伝送線路88の他方の端部、具体的に伝送線路導体88bの引出し部90bとに電気的に接続している。電圧制御用端子Vc1は、伝送線路87の他方の端部、具体的には伝送線路導体87cの引出し部89cと、コンデンサ導体85の引出し部85aとに電気的に接続している。電圧制御用端子Vc2は、引出し導体103に電気的に接続している。グランド端子G1,G2,G3はそれぞれグランド導体84の引出し部84a,84b,84cに電気的に接続している。
【0054】
さらに、積層体の上面のパッド107a,107bにはそれぞれダイオード素子D1のカソード電極及びアノード電極が半田付けされ、パッド108a,108bにはそれぞれダイオード素子D2のカソード電極及びアノード電極が半田付けされ、パッド109a,109bにはそれぞれコンデンサ素子C3の端子電極が半田付けされ、パッド110a、110bにはそれぞれ抵抗素子Rの端子電極が半田付けされる。
【0055】
図14は、以上の構成からなる高周波スイッチ部品81の電気等価回路図である。送信回路用端子TXにはダイオード素子D1のアノードが接続されている。ダイオード素子D1のアノードは、分岐線路である伝送線路87及びコンデンサC1の直列回路を介し、グランドに接地している。伝送線路87とコンデンサC1との中間点には電圧制御用端子Vc1が接続している。この電圧制御用端子Vc1には、高周波スイッチ部品81の伝送路切り換えを行うためのコントロール回路が接続される。ダイオード素子D1の両端(アノード・カソード間)には、伝送線路82及びコンデンサ素子C3の直列回路が接続している。伝送線路82及びコンデンサ素子C3は、ダイオード素子D1がOFF状態のときのアイソレーションを確保するためのものである。さらに、ダイオード素子D1のカソードは、アンテナ用端子ANTに接続している。
【0056】
アンテナ用端子ANTには、主線路である伝送線路88を介して受信回路用端子RXが接続している。さらに、受信回路用端子RXには、ダイオード素子D2のアノードが接続している。ダイオード素子D2のカソードは、コンデンサC2を介し、グランドに接地している。ダイオード素子D2とコンデンサC2との中間点には、抵抗素子Rを介して電圧制御用端子Vc2が接続している。この電圧制御用端子Vc2には、前記電圧制御用端子Vc1と同様に、高周波スイッチ部品81の伝送路切り換えを行うためのコントロール回路が接続される。
【0057】
なお、図14の中で点線で表示しているように、ダイオード素子D1に対して並列に、逆バイアス印加時の電圧安定化のための抵抗素子Raを接続したり、OFF状態のときのアイソレーションを確保するためのコンデンサ素子Caを接続してもよい。また、ダイオード素子D2についても、ダイオード素子D1と同様に、抵抗素子Ra、コンデンサ素子Ca、伝送線路82及びコンデンサ素子C3を接続してもよいことは言うまでもない。そして、高周波スイッチ部品81を使用する際には、送信回路用端子TX、受信回路用端子RX及びアンテナ用端子ANTのそれぞれを、別部品のバイアスカット用のカップリングコンデンサ素子を介して送信回路、受信回路及びアンテナに接続する。
【0058】
次に、この高周波スイッチ部品81を用いての送受信について説明する。
送信を行う場合には、電圧制御用端子Vc1とVc2の間に正の電位差を与える。この電圧は、ダイオード素子D1,D2に対して順方向のバイアス電圧として働くため、ダイオード素子D1,D2をON状態にする。このとき、コンデンサC1〜C3によって直流分がカットされ、ダイオード素子D1,D2を含む回路にのみ電圧制御用端子Vc1,Vc2に加えられた電圧が印加される。従って、伝送線路88がダイオード素子D2により接地されて送信周波数で共振し、インピーダンスが略無限大となる。この結果、送信回路用端子TXに入った送信信号は、受信回路用端子RXに殆んど伝送されることなく、ダイオード素子D1を経てアンテナ用端子ANTに伝送される。一方、伝送線路87はコンデンサC1を介して接地されているため、送信周波数で共振してインピーダンスが略無限大となり、送信信号がグランド側へ漏れることを防止している。
【0059】
受信を行う場合は、電圧制御用端子Vc1とVc2の間に負の電位差を与える。この電圧は、ダイオード素子D1,D2に対して逆方向のバイアス電圧として働くため、ダイオード素子D1,D2はOFF状態になり、アンテナ用端子ANTに入った受信信号は、伝送線路88を経て受信回路用端子RXに伝送され、送信回路用端子TXには殆ど伝送されない。このように、高周波スイッチ部品81は、電圧制御用端子Vc1,Vc2に印加するバイアス電圧をコントロールすることにより、送受の信号の伝送路を切り換えることができる。
【0060】
以上の構成からなる高周波スイッチ部品81は、二つのグランド導体84,84の間に、2本の伝送線路87,88が並設され、かつ、それぞれの伝送線路87,88が伝送線路導体87a〜87cの3層及び88a,88bの2層で構成されている。さらに、1本の伝送線路82が伝送線路82a,82bの2層で構成されている。従って、一定の特性インピーダンスを確保する場合、一層当たりの伝送線路の長さは従来より短くてすみ、高周波スイッチ部品81の小型化を図ることができる。具体的には、900MHz帯の高周波スイッチ部品81で、従来8×5×3mmのサイズであったものが、5×4×2mmに小型化することができた。
【0061】
[他の実施形態]
なお、本発明に係る高周波伝送線路を有した電子部品は前記実施形態に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
高周波伝送線路は、占有面積や所望の特性インピーダンスの仕様によってミアンダ形状の他に、スパイラル形状のもの、あるいは、ミアンダ形状とスパイラル形状を組み合わせたもの等であってもよい。さらに、前記実施形態は、それぞれ導体が形成された誘電体シートを積み重ねた後、一体的に焼成するものであるが、必ずしもこれに限定されない。シートは予め焼結されたものを用いてもよい。
【0062】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、伝送線路が複数層で構成されているので、特性インピーダンスが一定であれば、一層当たりの伝送線路導体の長さは、従来より短くてすむ。この結果、高周波伝送線路は、従来と比較して小さいサイズで所定の特性インピーダンスを確保することができる。
【0063】
さらに、隣り合う二つの伝送線路導体を伝播する高周波信号の進行方向が相互に同方向であるため、伝送線路導体のそれぞれの周囲に発生する磁束の周回方向が同方向となる。従って、隣り合う二つの伝送線路導体の間隔を近接させることにより、伝送線路導体間の結合を大きくすることができ、所望の特性インピーダンスを容易に得ることができる。
【0064】
従って、外部からの電磁界ノイズから伝送線路を遮蔽するため、二つのグランド導体の間に伝送線路を配設しても、伝送線路とグランド導体との間に形成される浮遊容量の影響による伝送線路の特性インピーダンスの低下を補償して、一定の特性インピーダンスを確保することができる。そして、この高周波伝送線路を、バイアス印加回路等の分岐線路として用いる場合には、主線の挿入損失の低下及び帯域幅縮小を抑えることができる。
【0065】
また、伝送線路において、伝送線路導体が積層方向に重なっている部分の線路長を短くすることで、伝送線路を伝播する高周波信号のうちで最も大きな結合が得られる高周波信号の周波数を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る高周波伝送線路を有した電子部品の第1実施形態を示す分解斜視図。
【図2】図1に示されている電子部品の外観を示す斜視図。
【図3】図2のIII−III断面図。
【図4】本発明に係る高周波伝送線路を有した電子部品の第2実施形態を示す分解斜視図。
【図5】図4に示されている電子部品の外観を示す斜視図。
【図6】(A)は図5のVI−VI断面図、(B)は比較例を示す断面図。
【図7】図4に示されている電子部品の変形例を示す分解斜視図。
【図8】本発明に係る高周波伝送線路を有した電子部品の第3実施形態を示す分解斜視図。
【図9】図8に示されている電子部品の外観を示す斜視図。
【図10】本発明に係る高周波伝送線路を有した電子部品の第4実施形態を示す分解斜視図。
【図11】図10に示されている電子部品の外観を示す斜視図。
【図12】本発明に係る高周波伝送線路を有した電子部品の第5実施形態を示す分解斜視図。
【図13】図12に示されている電子部品の外観を示す斜視図。
【図14】図12に示されている電子部品の電気等価回路図。
【図15】従来の高周波伝送線路を有した電子部品を示す分解斜視図。
【符号の説明】
1,21,41,61…高周波伝送線路部品
2,22,42,62…伝送線路
2a,2b,22a〜22c,42a〜42c,62a,62b…伝送線路導体
4,24,44,64…グランド導体
5,25,45,65…誘電体シート
81…高周波スイッチ部品
82,87,88…伝送線路
82a,82b,87a〜87c,88a,88b…伝送線路導体
84…グランド導体
95…誘電体シート
C1,C2…コンデンサ
C3…コンデンサ素子
D1,D2…ダイオード素子
R…抵抗素子
Claims (2)
- 複数の誘電体層と複数の伝送線路導体と複数のグランド導体を積層して構成され、複数の前記伝送線路導体を積層方向に誘電体層を介して略対向させると共に積層方向に隣り合う二つの伝送線路導体を伝播する高周波信号の進行方向が相互に同方向になるように電気的に直列に接続させて構成した伝送線路を複数形成し、かつ、複数の前記グランド導体間に複数の前記伝送線路を積層方向に沿って並設した積層体と、
前記伝送線路に電気的に接続された電気機能素子とを備え、
複数の前記伝送線路のうち少なくとも一つの伝送線路が積層方向に異なる導体幅を有した複数の前記伝送線路導体にて形成され、複数の前記伝送線路に対して積層方向に前記誘電体層を介して共通の前記グランド導体が対向し、かつ、複数の前記伝送線路のそれぞれの特性インピーダンスが異なること、
を特徴とする高周波伝送線路を有した電子部品。 - 複数の誘電体層と複数の伝送線路導体と複数のグランド導体を積層して構成され、複数の前記伝送線路導体を積層方向に誘電体層を介して略対向させると共に積層方向に隣り合う二つの伝送線路導体を伝播する高周波信号の進行方向が相互に同方向になるように電気的に直列に接続させて構成した伝送線路を複数形成し、かつ、複数の前記グランド導体間に複数の前記伝送線路を積層方向に沿って並設した積層体と、
前記伝送線路に電気的に接続された電気機能素子とを備え、
複数の前記伝送線路が伝送線路毎に異なる導体幅を有した複数の前記伝送線路導体にて構成され、複数の前記伝送線路に対して積層方向に前記誘電体層を介して共通の前記グランド導体が対向し、かつ、複数の前記伝送線路のそれぞれの特性インピーダンスが異なること、
を特徴とする高周波伝送線路を有した電子部品。
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