JP3644196B2 - 立体物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、立体物の製造方法に係り、詳しくは、金型、成形品の試作品、銅像等の置物、印刷板等の主として金属よりなる立体物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、金型等の立体物は、金属塊を切削加工或いは放電加工することで所望の形状に成形される。そして、最終的には、人手により研磨加工が施される。
【0003】
また、銅像等の置物の如き立体物は、例えば金型等によりダイカスト成形され、その後研磨加工が施されることにより得られる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来技術においては、次に記すような問題があった。すなわち、上記切削加工は、作業が著しく煩雑であり、作業性の低下を招いていた。また、放電加工を施すには、大型で高価な設備を必要とし、コストの増大を招いていた。さらに、これらの加工方法は、基材自身が削りとられることにより最終製品が得られるものであるため、結局は削りとられた部分が無駄になり、歩留りの悪化を招いていた。
【0005】
また、金型を用いたダイカスト成形に際し、成形品がアンダーカット形状をなすような場合や、中空状をなすような場合には、成形が困難となるとともに、場合によっては多くの部分型やスライドコアを必要としていた。そのため、金型の複雑化、製造コストの増大を招くこととなっていた。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、任意の形状をなす立体物を、作業性の向上、コストの低減、歩留りの向上を図りつつ、容易に得ることができる立体物の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明においては、めっき液を、ノズルの開口部から導電性を有する基材の表面に吹き付けることで、該めっき液を流速をもたせて衝突させる際に前記ノズルの開口部の周縁部分から噴出されるめっき液がより加速されて、該めっき液の衝突する面のほぼ全面にわたり衝突時の流速がほぼ均等になるよう、前記ノズルの開口部の外周部分からほぼ噴出方向に向けて気流を発生させ、前記ノズルを走査させつつ、前記めっき液で電気的に接続された前記ノズル及び基材間に電圧をかけることにより前記基材の任意の表面にめっき層を形成し、前記基材及び堆積されためっき層により立体物を製造する立体物の製造方法をその要旨としている。
【0010】
併せて、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の立体物の製造方法において、前記ノズルの開口部のほぼ中央部分から前記めっき液が噴出されないよう、少なくとも前記ノズルの先端部分の断面形状が、略ドーナツ形状をなしているものであることをその要旨としている。
【0012】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載の立体物の製造方法において、前記めっき液中に不溶性粒子を分散させることにより、前記めっき液の吹き付けに際し、少なくとも前記基材の表面に前記不溶性粒子からの応力を与えるようにしたことをその要旨としている。
【0013】
ここで、上記めっき液としては、各種金属イオンを含有するめっき液であればいかなるものでもよく、例えばニッケルめっき液、銅めっき液、亜鉛めっき液、錫めっき液及びこれらの組合せ等が挙げられる。
【0014】
さらに、めっき液中に不溶性粒子が分散される場合、当該不溶性粒子としては、例えばアルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、セリア等の酸化物及びこれらの2種以上の組合せからなる複合酸化物、炭化珪素、炭化チタン等の炭化物、窒化珪素、窒化硼素等の窒化物、フッ素樹脂粉末、ポリアミド粉末、ポリエチレン粉末等の有機高分子粉末等が挙げられる。しかし、不溶性粒子を構成する素材としては、これらのものに限定されるものではなく、めっき液に不溶であり、分散されうるものであり、かつ、所定の硬度を有するものあればいかなるものも採用しうる。また、不溶性粒子の粒径の範囲についても何ら限定されるものではないが、0.1μm〜1000μm程度のものが好適に使用されうる。加えて、その濃度(分散量)も適宜選定されうるが、1g/L〜1000g/L程度が好ましく、より好ましくは10〜500g/Lである。
【0015】
また、本発明においては、めっき液を、流速をもたせて基材表面に衝突せしめる必要がある。このときのめっき液の流速は、1m/s以上であるのが望ましくかつ、基材が変形しない程度のものである必要がある。なお、前記流速は、4m/s以上であることがより望ましく、さらに望ましくは10m/s以上であり、一層望ましくは12m/s以上である。このように、めっき液を、流速をもたせて衝突させることにより、ノズルから吹き付けられているめっき液によってノズル及び基材間が電気的に接続されることとなる。そして、両者間に電圧がかけられることにより、基材の表面にめっき液中の金属イオン成分が金属となって析出し、めっき層が形成される。
【0016】
このため、めっき液を流速をもたせて基材表面に接触せしめるという工程のみで、基材の任意の表面に対し強固なめっき層を形成することが可能となる。
特に、請求項1に記載の発明では、めっき層が堆積されることで、該めっき層が所定以上の厚みをもつようになり、前記基材及び堆積されためっき層により立体物が得られる。
【0017】
従って、基材及びノズルの少なくとも一方の位置を調節することで、めっき層を所望の位置に堆積させることが可能となり、ひいては容易に所望の形状を得ることが可能となる。
【0018】
さらに、ミクロンオーダーでの厚みの制御が可能となるため、場合によっては研磨加工が省略されうる。さらに、基材に対し、めっき層を堆積させることにより立体物が得られるので、無駄な金属が発生しない。
【0019】
また、めっき層は、前記ノズルを走査させることにより形成される。そのため、上記作用がより確実なものとなる。さらに、ノズルの開口部の外周部分からほぼ噴出方向に向けて気流を発生させるため、ノズルの開口部の周縁部分から噴出されるめっき液が気流によって、より加速される。このため、衝突する面の中央部分と周縁部分とでの流速の差が小さいものとなる。
また、本発明によれば、前記気流が基材に衝突することにより、めっき液が衝突する面とそれ以外の面とが気流で遮断されることとなり、ノズル直下以外の領域にはめっき層は形成されにくいものとなる。そのため、めっき部分と非めっき部分との境界部分がはっきりとし、見切り外観が良好なものとなる。
【0021】
併せて、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用に加えて、少なくとも前記ノズルの先端部分の断面形状が、略ドーナツ形状をなしているものである。このため、ノズルの開口部のほぼ中央部分からは、めっき液が噴出されず、めっき液が流速をもって衝突する際には、中央部分にもめっき液は存在し、結果的に、その衝突する面のほぼ全面にわたり衝突時の流速の均等化が図られる。
【0024】
また、請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明の作用に加えて、めっき液中に不溶性粒子が分散させられている。このため、基材の表面に存在する酸化皮膜が不溶性粒子によって削られるため、酸化皮膜を除去するという前処理工程を場合によっては省略することが可能となる。また、めっき層中に不溶性粒子を分散させることも可能となる。
【0025】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図1〜図5に基づいて説明する。図1は本実施の形態において基材1及びその表面に形成されためっき層2並びにジェットノズル15の一部を示す模式的な断面図である。同図に示すように、ニッケル製の金属基材(以下、単に「基材」という)1の表面にはめっき層2が形成されている。当該めっき層2も、ニッケルにより構成されている。本実施の形態では、図2に示すように、基材1及びめっき層2により、立体物としての金型3が構成されており、特に、めっき層2によって、基材1から図の上方へ突出する円筒状のボスが形成されている。
【0026】
次に、上記のようにニッケル製の基材1上にめっき層2を形成するためのめっき装置について説明する。
図3に示すように、本実施の形態のめっき装置は、内部に攪拌機11及びヒータ12を有してなるタンク13を備えている。そして、このタンク13内には、後述する組成よりなるめっき溶液が貯留されている。また、このタンク13の上方には、基材1を載置するための載置台14が配設されている。なお、説明の便宜上、基材1及び載置台14は、実際のものよりも小さく図示してある。さらに、載置台14の上方には、ジェットノズル15が配設されている。また、ジェットノズル15には電源16の陽極が接続され、載置台14には電源16の陰極が接続されている。
【0027】
さらに、本実施の形態では、前記タンク13とジェットノズル15とを連結する連通路17が設けられており、この連通路17の途中にはポンプ18が設けられている。そして、このポンプ18が駆動されることにより、タンク13内にて加温され、均一に攪拌されためっき液が、連通路17を通ってジェットノズル15の方へと導かれる。さらに、そのジェットノズル15からは、噴流(シャワー)状のめっき液が、載置台14に載置された基材1表面に当たるようになっている。なお、前記載置台14及びジェットノズル15は、箱状のジェットセル19内に収容されており、噴出されためっき液が外部に飛散しないようになっている。
【0028】
併せて、前記ポンプ18下流における連通路17の途中には、メインバルブ21が設けられており、このバルブ21の開度を調整することにより、ジェットノズル15からのめっき液の噴出量を調整することができるようになっている。また、ポンプ18の上流側及び下流側を連通するバイパス通路22が設けられており、その途中にはサブバルブ23が設けられている。このバルブ23の開度を調整することにより、ポンプ18の上流側から還流されるバイパス量が調整され、上記同様ジェットノズル15からのめっき液の噴出量を調整することができるようになっている。
【0029】
また、図4に示すように、本実施の形態のジェットノズル15の少なくとも先端部分には、外筒部31、内筒部32が設けられているとともに、その中心部分には心棒33が設けられている。かかる構成により、前記めっき液は、内筒部32の内側から噴出されるようになっているとともに、ジェットノズル15の開口部のほぼ中央部分、すなわち心棒33の部分からは、めっき液が噴出されないようになっている。さらに、外筒部31及び内筒部32によって形成される空間は、エアー通路34となっている。本実施の形態におけるめっき装置は、別途ジェットエアーを吹きつけるためのエアーポンプ35(図3参照)を有しており、該ポンプ35は前記エアー通路34に連通されている。なお、本実施の形態において、例えば、内筒部32の内径は14.5mmであり、心棒33の直径は5.0mmであり、さらに外筒部31の内径は17.5mmである。
【0030】
また、本実施の形態における上記めっき液は、スルファミン酸ニッケル[Ni(NH2SO4)・4H2O](430kg/m3)、塩化ニッケル[NiCl2 ・6H2O ](15kg/m3)、ホウ酸[H3 BO3 ](45kg/m3)、サッカリン[C7 H5 NO3 S](5kg/m3)よりなっている。さらに、めっきの条件として、めっき液の温度はヒータ12により328Kに、pHは2.0に、電流密度は2×102 A/m2 に、めっき液の流速は、1.0m/sにそれぞれ設定されている。但し、これらの数値はあくまでも例示である。
【0031】
次に、上記のようにして構成されてなるめっき装置等を用いて、前記金型3を製造する際の製造方法について説明する。
まず、載置台14上に基材1を載置する。そして、電源16をオン状態としてポンプ18を作動させる。但し、この際、サブバルブ23及びメインバルブ21の開状態を適宜調整する。すると、めっき液は、ポンプ18から連通路17を通ってジェットノズル15から勢いよく噴射され、基材1表面に当たる。このように、めっき液を比較的速い流速をもたせて基材1の表面に接触させる。
【0032】
また、これとともに、ジェットノズル15から吹き付けられている金属めっき液(めっき液)によって、同ノズル15及び基材1間が電気的に接続されることとなる。このとき、ジェットノズル15に電圧をかけることによって、ジェットノズル15がアノードとしての役割を果たし、基材1がカソードとしての役割を果たす。このように両者1,15間に電圧がかけられることにより、図4に示すように、基材1の表面には金属めっき液中の金属イオン成分(ニッケル)が金属マトリックスとなって析出し、めっき層2が形成される。
【0033】
ここで、上述したように、ジェットノズル15の開口部のほぼ中央部分、すなわち心棒33の部分からは、めっき液が噴出されないため、めっき液が流速をもって基材1の表面に衝突する際には、その衝突する面のほぼ全面にわたり衝突時の流速がほぼ均等になる。このため、ジェットノズル15の直下において形成されるめっき層2の厚さは、ほぼ均等となる。
【0034】
また、これとともに、ジェットノズル15の内筒部32から噴出されるめっき液の外周部分が、エアー通路34から吹きつけられるジェットエアーによって、より加速されることとなる。このため、めっき液が衝突する基材1表面の中央部分と周縁部分とでの流速の差をより小さいものとすることができる。従って、該ジェットエアーの流速等を調整することで、めっき液の流速のさらなる均等化が図られる。さらに、ジェットエアーが基材1に衝突することにより、めっき液が衝突する面とそれ以外の面とがジェットエアーで遮断されることとなり、ジェットノズル15の内筒部32直下以外の領域にはめっき層2は形成されにくいものとなる。そのため、めっき部分と非めっき分との境界部分がはっきりとし、見切り外観が良好なものとなる。
【0035】
そして、このようにめっき層2を形成しながら、上記ジェットノズル15を走査させる。より詳しくは、所望のボス形状が得られるように、円を描くようにしてジェットノズル15を移動させる。すると、環状のめっき層2が徐々に堆積されてゆくこととなり、図1に示すようなボス形状をなすめっき層2が形成され、最終的には上記の金型3が得られることとなる。
【0036】
次に、本実施の形態の作用及び効果について説明する。
(イ)本実施の形態によれば、金属めっき液を流速をもたせて基材1の表面に接触せしめるという工程のみで、基材1に強固なめっき層2を形成することが可能となる。特に、本実施の形態では、めっき層2が堆積されることで、該めっき層2が所定以上の厚みをもち、かつ、ノズル15を円環状に走査させることで、めっき層2が円筒状のボス形状をなすようになり、前記基材1及び堆積されためっき層2によって、金型3という立体物を得ることができる。このように、本実施の形態によれば、容易に所望の形状の立体物を得ることができる。
【0037】
(ロ)さらに、めっき時間を制御することで、ミクロンオーダーでの厚みの制御が可能となるため、場合によっては研磨加工の省略化を図ることができる。その結果、作業性の飛躍的な向上を図ることができる。
【0038】
(ハ)また、本実施の形態では、基材1に対し、めっき層2を堆積させることにより立体物が得られる。このため、切削加工等を施していた従来技術に比べて無駄な金属が発生しない。また、ジェットノズル15から噴出されためっき液は、再度使用に供することができる。その結果、歩留りの向上を図ることができる。
【0039】
(ニ)併せて、本実施の形態では、特に大型の設備を必要とせず、基本的にはジェットノズル15からめっき液を噴出させるとともに、電圧をかけ、ノズル15を走査させるという行為のみで所望の形状のめっき層2を得ることができる。その結果、製造に要するコストの低減を図ることができる。
【0040】
(ホ)さらに、本実施の形態では、ジェットノズル15の開口部のほぼ中央部分、すなわち、心棒33の部分からは、めっき液が噴出されない。このため、心棒の存在しない通常のノズルを用いた場合には中央部分の流速が最も速くなるのであるが、本実施の形態では、該中央部分の流速が上記構成により弱められることとなる。従って、めっき液が流速をもって基材1の表面に衝突する際には、その衝突する面のほぼ全面にわたり衝突時の流速がほぼ均等になる。そのため、ジェットノズル15直下において形成されるめっき層2の厚さを、ほぼ均等なものとすることができる。
【0041】
また、これに付随して、ジェットノズル15の内筒部32から噴出されるめっき液の外周部分が、エアー通路34から吹きつけられるジェットエアーによって、より加速されることとなる。このため、めっき液が衝突する基材1表面の中央部分と周縁部分とでの流速の差をより小さいものとすることができる。従って、該ジェットエアーの流速等を調整することで、めっき液の流速のさらなる均等化を図ることができ、ひいてはノズル直下において形成されるめっき層2の膜厚のより一層の均等化を図ることができる。
【0042】
さらに、前記ジェットエアーが基材1に衝突することにより、めっき液が衝突する面とそれ以外の面とがジェットエアーで遮断されることとなり、ジェットノズル15の内筒部32直下以外の領域にはめっき層2は形成されにくいものとなる。そのため、めっき部分と非めっき分との境界部分がはっきりとし(エッジ部分を角ばったものとすることができ)、見切り外観が良好なものとなる。
【0043】
これらのことから、得られる立体物の外観品質の向上を図ることができる。
(確認実験)
ここで、上記(ホ)の効果を確認するべく、以下の2つの実験を行った。
【0044】
確認実験1:プラチナ製の基材(カソード)及び上記組成を有するめっき液を用いるとともに、上記ジェットノズル15を有するめっき装置を用いて、基材における電流密度iの分布を測定した。その結果を図5に示す。
【0045】
同図に示すように、心棒の存在しない通常のノズルを用いた場合には、ノズルの中心部分ほど電流密度iは非常に高いものとなる。これに対し、本実施の形態においては、ジェットノズル15の直下における電流密度iはほぼ均一なものとなった。このことから、本実施の形態の構成を採用した場合には、通常のノズルを用いた場合に対し、中央部分の流速が弱められることがわかる。従って、めっき液が流速をもって基材1の表面に衝突する際には、その衝突する面のほぼ全面にわたり衝突時の流速の均等化が図られるといえる。
【0046】
確認実験2:電気めっきにおける電子の移動は、電解液中の金属イオンの移動によって支配される。そこで、本実験においては、ノズル直下における物質移動速度KL について検討した。各位置における物質移動速度KL は、次式(1)で表され、限界電流密度iL の測定値から物質移動速度KL 分布を算出できる。
【0047】
KL =iL /z・F・C0 ……(1)
ここで、zは価数、Fはファラデー定数、C0 は電解液中のイオン濃度である。すなわち、限界電流密度iL が大きいほど、物質移動速度KL は大きいものとなり、カソードへの供給イオン数が多くなる。そこで、各位置における限界電流密度iL の分布を測定することとした。図6は、上記確認実験1と同様、2種類のノズル(通常のノズルと、本実施の形態のノズル)を用いて測定した限界電流密度iL の分布を示す。
【0048】
同図に示すように、通常のノズルを用いた場合には、中心部分の方が限界電流密度iL が非常に高い分布曲線となるのに対し、本実施の形態の場合には、限界電流密度iL の分布は、ジェットノズル15の投影面内でほぼ均等なものとなることがわかる。すなわち、本実施の形態によれば、イオンの移動速度が、ジェットノズル15の投影面内、つまり、めっき液が衝突する面のほぼ全面にわたり、均等であるといえることがわかる。
【0049】
尚、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で構成の一部を適宜に変更して次のように実施することもできる。
(1)上記実施の形態では、円筒状のめっき層2を形成する場合について具体化したが、ジェットノズル15を走査させることで、任意の形状を作ることができる。例えば、図7に示すように、基材1上に円錐台状のめっき層5を形成するようにしてもよいし、或いは、図8に示すように、アンダーカット形状をなすめっき層6を形成するようにしてもよい。また、図示はしないが、空間を閉塞するようにしてめっき層を堆積させることで、従来では製造が困難であった中空状の立体物を製造することもできる。
【0050】
(2)上記実施の形態では特に言及しなかったが、めっき液中に不溶性粒子を分散させることにより、めっき液の吹き付けに際し、少なくとも基材1の表面に前記不溶性粒子からの応力を与えるようにしてもよい。ここで、基材1が酸化され易い金属により構成されている場合には、その表面には酸化皮膜が形成されやすいのであるが、このような構成とすることにより、酸化皮膜が不溶性粒子によって削られる。そのため、酸化皮膜を除去するという前処理工程を省略することが可能となる。
【0051】
また、めっき液中に不溶性粒子を配合させたような場合には、流速を比較的遅くすることにより、めっき層2中に不溶性粒子を共析させることもできる。かかる場合には、不溶性粒子の共析により、めっき層2の硬度を高めることができる等、付随的な効果をも期待することができる。
【0052】
(3)前記実施の形態では、断面円形状の外筒部31、内筒部32を有するジェットノズル15を用いる構成としたが、例えば非円形状の開口部を有するノズルを用いてもよい。
【0053】
また、ジェットエアーの噴射を行わない構成としてもよい。
(4)前記実施の形態では、基材1を構成する素材及びめっき層2を形成する金属としてニッケル系の金属を採用したが、その他の金属を採用してもよい。
【0054】
(5)前記実施の形態では、説明の便宜上1つのジェットノズル15のみを用いてめっきする場合について具体化したが、勿論、複数のノズルを用いてもよい。
【0055】
(6)前記実施の形態では、立体物として、金型3を製造する場合に具体化したが、その他の立体物を製造する場合にも本発明を適用することができる。当該立体物としては、金型のほかに、例えば、成形品の試作品、銅像等の置物、印刷板等の主として金属よりなるものを挙げることができる。
【0056】
(7)前記実施の形態では、ジェットノズル15を走査させることにより、めっき層2の形状を形作るようにしたが、ノズルを固定しておいて、基材1を移動させるようにしてもよい。また、場合によってはジェットノズル15を適宜傾けるようにしてもよい。
【0057】
特許請求の範囲の請求項に記載されないものであって、上記実施の形態から把握できる技術的思想について以下にその効果とともに記載する。
(a)前記立体物は、金型であることを特徴とする。このような構成とすることで、容易の所望の形状の金型を得ることができ、また、場合によっては研磨加工等を省略することができ、作業性の飛躍的な向上を図ることができる。
【0058】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の立体物の製造方法によれば、任意の形状をなす立体物を、作業性の向上、コストの低減、歩留りの向上を図りつつ、容易に得ることができるという従来にはない優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施の形態における基材及びめっき層並びにジェットノズルの一部を示す模式的な断面図である。
【図2】金型を示す部分斜視図である。
【図3】めっき装置を示す概略システム図である。
【図4】めっき開始直後の基材及びその表面に形成されためっき層並びにジェットノズルの一部を示す模式的な拡大断面図である。
【図5】中心部分からの距離に対する電流密度の分布の関係を示すグラフである。
【図6】中心部分からの距離に対する限界電流密度の分布の関係を示すグラフである。
【図7】他の実施の形態における基材及びめっき層を示す模式的な断面図である。
【図8】同じく他の実施の形態における基材及びめっき層を示す模式的な断面図である。
【符号の説明】
1…基材、2,5,6…めっき層、15…ジェットノズル、34…エアー通路。
Claims (3)
- めっき液を、ノズルの開口部から導電性を有する基材の表面に吹き付けることで、該めっき液を流速をもたせて衝突させる際に前記ノズルの開口部の周縁部分から噴出されるめっき液がより加速されて、該めっき液の衝突する面のほぼ全面にわたり衝突時の流速がほぼ均等になるよう、前記ノズルの開口部の外周部分からほぼ噴出方向に向けて気流を発生させ、
前記ノズルを走査させつつ、前記めっき液で電気的に接続された前記ノズル及び基材間に電圧をかけることにより前記基材の任意の表面にめっき層を形成し、
前記基材及び堆積されためっき層により立体物を製造する立体物の製造方法。 - 前記ノズルの開口部のほぼ中央部分から前記めっき液が噴出されないよう、少なくとも前記ノズルの先端部分の断面形状が、略ドーナツ形状をなしているものであることを特徴とする請求項1に記載の立体物の製造方法。
- 前記めっき液中に不溶性粒子を分散させることにより、前記めっき液の吹き付けに際し、少なくとも前記基材の表面に前記不溶性粒子からの応力を与えるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の立体物の製造方法。
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