JP3643007B2 - 水面流発生装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、湖沼や池あるいは内海などの閉鎖的な水域の水面近辺に表層的な流れを発生させることで、水面を覆うようなプランクトンの大量発生を抑制したり、あるいは油輸送船の座礁による海洋汚染被害の低減を図るなどに好適な水面流発生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
湖沼や池あるいは内海のような閉鎖的な水域においては、そこに栄養塩類が過剰に流入して富栄養化が進むことでプランクトンなどのの大量発生を招くことが少なくない。このようなプランクトンなどの大量発生を抑制し、同時に水域の浄化を図る技術の一つとして、水域に強制的に水流を形成し、この水流でプランクトンの大量発生を抑制し、あるいは発生したプランクトンなどを水流に乗せて回収するなどする技術がある。そのような技術としては、例えば特開昭63−28759号、特開平8−168797号、特開平10−292343号、特開平11−28495号、特開平11−57699号あるいは特開平11−197687号などの各公報に開示の例が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、閉鎖的な水域において大量発生するプランクトンなどにはその大量発生に際して水面近辺で浮上性の膜状群体を形成するものが多い。このようなプランクトンなどの大量発生の抑制に重点をおく場合には、水面近辺に集中させて表層的な流れを発生させるのが望ましいといえる。すなわち大量発生により膜状群体を水面近辺で形成するプランクトンなどの場合には、その膜状群体の形成を妨げたり、すでに膜状群体が形成されている場合にはそれを壊すだけでもかなり有効に大量発生を抑制することができる。そして膜状群体の形成を効果的に妨げたり、形成された膜状群体を効果的に壊すには水面近辺における表層的な流れ、つまり水面流が特に有効であり、したがってこの水面流を水流として選択的に発生させることで、より効率的な処理とすることができる。
【0004】
このような観点からみた場合、上記したような従来の技術は何れも不十分である。上記各公報にみられるように従来の技術では水流の発生にプロペラ方式(またはスクリュー方式)を用いており、そのために水面近辺での表層的な流れを効率的に発生させることができにくい。すなわちプロペラは、これを設置する水域が景観を重視される湖沼であったり、あるいは公園の池などである場合には、景観を悪くする水面の乱れなどが現れることがないように、ある程度深い位置に設置する必要があるが、プロペラによる水流は軸に直交する方向にはそれほど広がらないために、その設置レベルでしか水流を発生させることができず、したがって水面近辺での表層的な流れを効率的に発生させることが困難となる。
【0005】
またプロペラ方式の場合には、プロペラの回転数が例えば毎分数十回転程度とかなり低いものであるのが一般であり、高速な水流を発生させることが難しい。そのため水流による膜状群体の形成阻害や破壊効果が小さく、この点でも効率が低いといえる。またプロペラ方式には、これを水深の浅い水域に用いた場合に水底の泥を巻き上げやすく、そのため水深の浅い場合が多い公園の池などには実際上使えないという問題もある。
【0006】
本発明は、以上のような事情を背景になされたものであり、水面近辺で浮上性の膜状群体を形成するプランクトンなどの大量発生をより効果的に抑制することを可能とする水面流を効率的に発生させることができ、しかも水深の浅い水域にあっても水底泥の巻き上げなどを伴わずに済む水面流発生装置の提供を目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、水域の水面近辺に表層的な流れである水面流を発生させるための水面流発生装置であって、取水を取り込むための吸込口と外部放出のための流路管とを持つ水中ポンプと、取水口を有する箱状にして前記水中ポンプを覆うように形成され、水域に固定した状態で前記取水口が水面近辺に位置し、この水面近辺に位置する前記取水口を介して箱内に取り込みポンプの上記吸込口からのポンプへの吸水を可能にする箱状のフレームと、前記取水口に設けた導流板とを備えるとともに、
上記導流板は、前記箱状のフレームの取水口からの吸水範囲を水面近辺に制限すべく、前記取水口に、水面に平行になるように設けられ、上記流路管の吐出口は、箱状のフレームの外側に導出され、且つこの吐出口の方向は水面に平行になるように形成したものとする水面流発生装置を開示する。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1に第1の実施形態による水面流発生装置の構成を簡略化した断面図で示す。図に見られるように水面流発生装置は、水中ポンプ1を箱状フレーム2の内部に組み込んだ構成となっている。水中ポンプ1は、その下端部に吸込み口3を有するとともに、流路管4で上方に延設されて水面近辺で水面Sに平行するように放水できるようされた吐出口5を有している。箱状フレーム2は、図の例では四角な箱に形成されており、水中ポンプ1を覆うようにして支持している。この箱状フレーム2は、その側面上端部に取水口6が設けられており、この取水口6を介して水域Zと連通している。したがって水中ポンプ1の吸込み口3もこの取水口6を介して水域Zと連通することになる。そして後述するような浮上設置によりこの取水口6が水域Zの水面近辺に位置することにより、箱状フレーム2の内部に取り込む水域水を水域Zの表層(水面近辺)のそれに制限することができる。
【0009】
箱状フレーム2の取水口6には、図2に示すように、パンチングメタルなどが用いられるフィルタ7が設けられている。このフィルタ7は、水域における浮遊物で一定以上の大きさのものが箱状フレーム2の内部に吸い込まれるのを防止するのに機能する。このようなフィルタ7を箱状フレーム2の取水口6に設けることには次のような利点がある。水中ポンプ1は、図に示すように、一般的な構造としてその吸込み口3にフィルタ8を有する。そしてもし箱状フレーム2に浮遊物が入り込んでこれが水中ポンプ1のフィルタ8に捉えられるようであると、水中ポンプ1が箱状フレーム2で覆われていることから、浮遊物により目詰まりが生じた場合のメンテナンスが大変となる。これに対して、箱状フレーム2の取水口6におけるフィルタ7であると、外部に露呈しているために、容易にフィルタ7のメンテナンスを行なうことができる。
【0010】
また取水口6には導流板9が設けられている。この導流板9は、上記のように箱状フレーム2の取水口6で水域Zからの水域水の取り込みを水面近辺に制限するのに加えて、さらに水域水の取り込みを水面近辺に制限するためのもので、箱状フレーム2の側面から突出させることで、水面Sとの間に導流路を形成している。
【0011】
このような水面流発生装置は、通常、水面から一部を浮き出させた状態で水域Zに浮上させるようにして設置される。そのためには、箱状フレーム2にフロート10を取り付け、このフロート10で浮力を与える一方で、図示を省略してあるアンカーなどにより水底あるいは岸辺に固定する。また浮上設置で水面から露出する箱状フレーム2の上面には、景観上のことから、適当な植物を用いた植生11を形成したり、あるいは岩などの自然物を模した装飾などを施すようにする。なお図1や図2では吐出口5を1本のパイプで示してあるが、これは適宜に分岐したりして平面的に放水できるような構造とすることもある。
【0012】
以上のような水面流発生装置の作用は以下の通りである。水中ポンプ1が駆動されると、取水口6を経て水域Zから箱状フレーム2に取り込まれた水域水が吸込み口3から水中ポンプ1に吸い込まれて吐出口5から水域Zに放水される。この水域水の取り込みと放水において、上記のように箱状フレーム2の取水口6が水面近辺にあり、しかもこの取水口6に導流板9が設けられていることにより、水域水の吸い込みは水面近辺に制限され、また吐出口5からの放水は、上記のように水面近辺で水面に平行するようになされる。したがって水面近辺に集中する水面流を効率的に発生させることができる。しかも吐出口5からの放水がポンプによる大きな加圧力を受けたものであることから、水面流を高速な流れとすることができる。この結果、浮上性の膜状群体を形成して大量発生するプランクトンなどに対して、その膜状群体を形成するを効果的に妨げることができ、かりに膜状群体が形成されてもそれを効果的に壊すことができ、このことでプランクトンなどの大量発生をより有効に防止することができる。このプランクトンなどの大量発生を防止するのには、水域Zからの取水範囲を水面近辺に制限していることが、それにより水面流が効率的に形成されることの他でも寄与している。すなわち取水範囲を水面近辺に制限することで、水面近辺に浮遊するプランクトンなどを効率的に水流に乗せて水中ポンプ1に引き込むことができる。そして水中ポンプ1を通すことにより、プランクトンなどの群体の破壊などをさらに効果的なものとすることができる。
【0013】
また本発明による水面流発生装置は、水中ポンプ1が吸い込む水域水の取水範囲を水面近辺に制限することができるため、水深の浅い水域に用いても水底の泥を巻き上げるようなことがない。そのため水深の浅い公園の池などにも適している。なお以上ではプランクトンなどの発生を抑制する場合を例にとって説明したが、本発明による水面流発生装置では、水域に水流を発生させることによる他の水域浄化作用も得られる。また本発明による水面流発生装置における水面流を効率的に発生させることができるという機能は、油輸送船の座礁などによる海洋汚染被害を低減したりするのにも利用することができる。
【0014】
図3に第2の実施形態による水面流発生装置の外観を簡略化して示す。本実施形態では、複数枚の単位導流板21をつなぎ合わせて導流板22を形成している。各単位導流板21は、つなぎ部材23を用いてつなぎ合わせされる。このように導流板を分割構造とすることで、水域における設置作業が行ないやすくなる。つまり導流板はその面積を大きくするほど上記のような効果を高めることができるが、その面積の大きい導流板が一枚ものであると、その設置作業が大変になるのに対し、本実施形態のような分割構造であると面積の小さい単位導流板21を順次つなぎ合わせることで大面積の導流板22を設置することができ、その作業を容易に行なえる。また分割構造は、状況に応じて単位導流板21を追加することで導流板22の面積を増やすことができるという点でも利点がある。このような複数枚の単位導流板21によるつなぎ合わせ構造とするについては、各単位導流板21に適当な浮力を与えるようにしてもよい。なお導流板22は箱状フレーム2の左右に取り付けられるものであるが、図ではその一方の図示を省略してある。
【0015】
図4に第3の実施形態による水面流発生装置を水域への設置状態とともに模式化して示す。本実施形態の水面流発生装置は、例えば公園の池などのように水深が浅く、水底Bに直接固定した状態で箱状フレーム31の上面を水面近辺に位置させることのできる条件で用いるタイプである。そのため箱状フレーム31の上面に取水口32を設けている。また水中ポンプ1の吐出口5からの放出水が取水口32に設けてあるフィルタ33に沿って流れるようにしてある。したがって本実施形態では、フィルタ33に目詰まり発生させるような大きな浮遊物を吐出口5からの放出水で洗いとることができる。このため長期にわたって目詰まりを防止することができ、より安定な運転を実現できる。また本実施形態のように水底に直接固定する設置方式の場合には浮上用のフロートなどが不要であり、その分、低コスト化を図れる。なお図の例では導流板を用いていないが、本実施形態の構造においても導流板を設けることがさらに好ましい条件となる。
【0016】
図5に第4の実施形態による水面流発生装置を簡略化して示す。本実施形態では、図1における流路管4から分岐した分岐管41を設け、この分岐管41からの放出水が取水口42のフィルタ43に沿って流れるようにしてある。このため長期にわたって目詰まりを防止することができ、より安定な運転を実現できる。また本実施形態では、景観上の目的で、水面上に露出する箱状フレーム44の上面に大理石模様などによる装飾部45を施してある。
【0017】
以上に説明したような本発明による水面流発生装置は、例えば下水終末処理場の貯水池においてそこに発生するスカムなどの浮遊物を除去するのにも用いることができる。そのような目的で水面流発生装置を利用する場合には、図6に示すように、その貯水池が方形であれば、その三隅に水面流発生装置51を設置し、残りの一隅に例えば案内板52とフィルタ53からなるフィルタ装置54を設置する。このような構成において三隅の水面流発生装置51により貯水池の全体にわたる循環流が形成され、この循環流に乗せて浮遊物がフィルタ装置54に導かれ、そこで浮遊物を効率的に回収・除去することができる。このような浮遊物の回収・除去方式とすることで、従来では全面的に人手に頼っており、そのために多大な人件費を必要としていた浮遊物の除去を低コストで行なうことが可能となる。なお三隅に設置した水面流発生装置51だけでは貯水池の中央部で水面流に死角を生じるような場合には、四方に向けて水面流を発生させることのできるようにした水面流発生装置を貯水池の中央部に設置するとよい。
【0018】
【発明の効果】
以上説明したように本発明による水面流発生装置は、水面近辺に集中する表層的な流れである水面流を効率的に発生させることができる。したがって本発明による水面流発生装置を用いることにより、湖沼や池などの閉鎖的な水域におけるプランクトンの大量発生などをより有効に抑制することができ、また水域の浄化を図ることもでき、プランクトンの大量発生により水域の景観が悪化したり、養魚場に被害をもたらしたりすることなどをより効果的に防ぐことを期待できる。また本発明による水面流発生装置は、水底の泥を巻き上げることなどなく水流を発生させることができるので、水深の浅いのが一般的である公園の池などの浄化も効果的に行なうことを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態による水面流発生装置の構成を簡略化して示す断面図である。
【図2】図1の水面流発生装置の簡略化した外観図である。
【図3】第2の実施形態による水面流発生装置の簡略化した外観図である。
【図4】第3の実施形態による水面流発生装置を水域への設置状態とともに模式化して示す図である。
【図5】第4の実施形態による水面流発生装置の簡略化した外観図である。
【図6】本発明による水面流発生装置を用いて池の浮遊物を除去する場合の構成を示す図である。
【符号の説明】
1 水中ポンプ
2 箱状フレーム
5 吐出口
6 取水口
7 フィルタ
9 導流板
21 単位導流板
33 フィルタ
43 フィルタ
S 水面
Z 水域

Claims (3)

  1. 水域の水面近辺に表層的な流れである水面流を発生させるための水面流発生装置であって、取水を取り込むための吸込口と外部放出のための流路管とを持つ水中ポンプと、取水口を有する箱状にして前記水中ポンプを覆うように形成され、水域に固定した状態で前記取水口が水面近辺に位置し、この水面近辺に位置する前記取水口を介して箱内に取り込みポンプの上記吸込口からのポンプへの吸水を可能にする箱状のフレームと、前記取水口に設けた導流板とを備えるとともに、
    上記導流板は、前記箱状のフレームの取水口からの吸水範囲を水面近辺に制限すべく、前記取水口に、水面に平行になるように設けられ、上記流路管の吐出口は、箱状のフレームの外側に導出され、且つこの吐出口の方向は水面に平行になるように形成したものとする水面流発生装置。
  2. 複数枚の単位導流板をつなぎ合わせて前記導流板を形成するようにされている請求項1に記載の水面流発生装置。
  3. 上記取水口にフィルタを設けるとともに、このフィルタに沿うように前記水中ポンプの吐出口からの放水をなさせるようにしてある請求項1〜2のいずれかに記載の水面流発生装置。
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