JP3642153B2 - 冷陰極蛍光管 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷陰極蛍光管に関し、特にLCD(液晶ディスプレイ)用バックライト等に好適に用いられる冷陰極蛍光管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、蛍光管は、熱陰極型と冷陰極型に大別される。
【0003】
例えば、照明用蛍光灯等、概ね5φ以上の比較的管径の大きなものには、発光効率の高い熱陰極型が利用される。
【0004】
そして、熱陰極型の電極は、金属基体表面にエミッタとしてBaO、SrO、CaO等が塗布されており、これによって低電圧動作が可能となり高発光効率を実現している。
【0005】
一方で、LCDバックライト等の冷陰極蛍光管には、小型化(細管化)が容易、寿命が長い、発熱が比較的少ない、点灯回路が単純等の長所がある冷陰極型が広く利用されている。
【0006】
また、このような冷陰極蛍光管では、封入ガスとしては、1種類以上の希ガスが用いられ、多くの場合は希ガスにHg蒸気が追加されており、このようなガスの圧力は0.1〜200torr、そして放電電流1〜20mA等の条件範囲で使用されることが一般的である。
【0007】
また、このような冷陰極蛍光管では、冷陰極動作で有効に機能するエミッタがないために、電極には、W、Ta、Ni、Fe、Zr等の遷移金属やこれを主原料とする合金が用いられてきた。
【0008】
近年、冷陰極動作で有効に機能する材料を実現すべく、(LaSr)CoO3等のペロブスカイト型結晶構造を有する酸化物導電体の電極が提案されており、例えば特開平4−19941号公報に開示されている。
【0009】
これらの酸化物導電体は、化学量論的な酸化物であって、W、Ni等に比べて、放電電圧が25V程度と低いもので、冷陰極蛍光管に用いた場合の低電圧化・高効率化が可能となった。これらは焼結体、または金属基体表面に溶射法、スパッタ蒸着法、電子ビーム蒸着法、酸化物導電体粉末と適当な低融点ガラス粉末を混合したペーストによるディッピング法等で形成され電極としている。また電極のスパッタによるガラス管の黒化を防ぐための、片側中空円柱構造を持ち電極と同電位の金属で、電極の周囲を覆う工夫が一般的にされている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような化学量論的な酸化物導電体を用いた冷陰極は、第一に初期特性としては低電圧で動作可能であるが、数時間点灯後にはその効果が失われてしまうという課題と、第2に電極のスパッタが非常に多いため、電極周辺のガラス管が黒化してしまうと冷陰極蛍光管に用いるのは好ましくない課題を有していた。このスパッタは、先に説明した電極の周囲を覆う工夫をしても完全に防ぐことができない。
【0011】
本発明の目的は、このような低電圧効果消失、ガラス管黒化といった技術的課題を解決し、従来実現できなかった、低電圧特性が1000時間以上もの間長期的安定に持続し、ガラス管の黒化が起こらない、即ち高効率・長寿命な冷陰極蛍光管を実現すべく、新規な冷陰極構造を提供し、安価でしかも容易に冷陰極蛍光管を実現することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、A群(Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Ca,Sr,Ba)の中から選択される一元素以上の物質と、B群(Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zr,Nb,Mo,Ru,Rh,Hf,Ta,W,Os,Ir)の中から選択される一元素以上の物質と、酸素Oと、を含む一般式A1X(A1)…A2X(A2)…A3X(A3)…B1Y(B1)…B2Y(B2)…B3Y(B3)…B4Y(B4)…B5Y(B5)…OZで示され、その組成比が関係式4X(A1)+3X(A2)+2X(A3)+2Y(B1)+3Y(B2)+4Y(B3)+5Y(B4)+6Y(B5)>2Zを満たした酸素欠損型導電性酸化物を含む冷陰極材料が、中空円柱状の基体電極の内壁表面に膜状に形成された冷陰極を有する冷陰極蛍光体である。
【0013】
このような構成により、高効率・長寿命な冷陰極蛍光管を実現する新規な冷陰極材料を提供し、実際に高効率・長寿命な冷陰極蛍光管を実現する。
【0014】
【発明の実施の形態】
請求項1記載の本発明は、両端が閉じた中空円筒状であり、中空円柱状の基体電極は、中空円筒状のガス体収容容器の軸方向に延在し、前記ガス体収容容器の内径と前記基体電極の外径とは略等しいガス体収容容器と、前記ガス体収容容器中に存在するガス体と、前記ガス体収容容器の内面に配された蛍光体と、前記ガス体に連絡した冷陰極と、前記冷陰極と対向した一方の電極とを有する冷陰極蛍光管であって、前記ガス体収容容器は、その内部で発生した光に対して透過性を有し、前記冷陰極は、A1をCe、A2をY,La,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,及びLuからなる群より選ばれた物質、A3をCa,Sr,及びBaからなる群より選ばれた物質、B1をCu、B2をCr,Mn,Fe,Co及びNiからなる群より選ばれた物質、B3をTi,Zr,Ru,Rh,Hf,Os,及びIrからなる群より選ばれた物質、B4をV,Nb,及びTaからなる群より選ばれた物質、並びにB5をMo又はWとした場合の一般式が、〔(A1X(A1)−a−b…A1’aA1’’b…)(A2X(A2)−a’−b’…A2’a’A2’’b’…)(A3X(A3)−a’’−b’’…A3’a’’A3’’b’’…)〕〔(B1Y(B1)−c−d…B1’cB1’’d…)(B2Y(B2)−c’−d’…B2’c’B2’’d’…)(B3Y(B3)−c’’−d’’…B3’c’’B3’’d’’…)(B4Y(B4)−c’’’−d’’’…B4’c’’’B4’’d’’’…)(B5Y(B5)−c’’’’−d’’’’…B5 ’ c’’’’B5’’d’’’’…)〕OZで表され(X(A1)…、Y(B1)…、Z、a、a’…、b、b’…、c、c’…、d、d’…は、正の有理数である。)であって、組成比が関係式4X(A1)+3X(A2)+2X(A3)+2Y(B1)+3Y(B2)+4Y(B3)+5Y(B4)+6Y(B5)>2Zを満たした導電性酸化物である冷陰極材料を含み、前記冷陰極材料は、前記ガス体収容容器の内部に向けて延在する中空円柱状の基体電極の内壁表面に、膜状に形成されている冷陰極蛍光管である。
【0015】
このような構成により、低電圧特性が1000時間以上もの間長期的安定に持続し、かつガス体収容容器の黒化も発生せず、即高効率・長寿命な冷陰極蛍光管として動作する。
更に、ガス体収容容器は両端が閉じた中空円筒状であり、中空円柱状の基体電極は、中空円筒状のガス体収容容器の軸方向に延在し、前記ガス体収容容器の内径と前記基体電極の外径とは略等しい構成であることが好適である。
【0016】
ここで、請求項2記載のように、冷陰極材料の導電性酸化物は、明確な結晶構造を有さない酸素欠損型導電性酸化物であってもよい。
【0017】
また、請求項3記載のように、冷陰極材料は、厚さ0.1〜10μmの膜状であることが、より低電圧維持寿命特性を、より確実に向上する。
【0018】
そして、さらに低電圧維持寿命特性を向上するには、請求項4記載のように、ガス体収容容器は両端が閉じた中空円筒状であり、中空円柱状の基体電極は、中空円筒状のガス体収容容器の軸方向に延在し、冷陰極材料は、実質的に前記ガス体収容容器の内壁面近傍に位置することが好ましい。
【0020】
ここで、具体的には、請求項5記載のように、冷陰極材料は、ガス体収容容器の軸方向に垂直な方向の中心から前記ガス体収容容器の内壁面までの距離をrとした場合、9/10r以上の前記ガス体収容容器の内壁面側に位置することが好ましい。
【0021】
また、請求項6記載のように、冷陰極材料の導電性酸化物は、より具体的には、Y 0.9Ca0.1Mn1.0O2.7、Sr1.0Ti0.8Ru0.2O2.9、またはNd1.0Gd0.8Ca0.2CuO3.6であってもよい。
【0022】
また、請求項7記載のように、ガス体は、Heガス、Neガス、Arガス、Krガス、及びXeガスの単独又は組み合わせたものであってもよい。
【0023】
さらに、請求項8記載のように、ガス体は、さらに、Hgガスを含むことも可能である。
【0024】
また、請求項9記載のように、基体電極は、導電性のものであれば足りるが、金属製であることが好適である。
【0025】
また、請求項10記載のように、ガス体収容容器は、ガラス管であることが透過性や簡便さを考えれば、好適である。
【0026】
以下、本発明の各実施の形態について説明する前に、まず、本実施の形態の導電性酸化物材料の作製方法について説明する。
【0027】
具体的には、本実施の形態では、A1をCe、A2をY,La,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,及びLuからなる群より選ばれた物質、A3をCa,Sr,及びBaからなる群より選ばれた物質、B1をCu、B2をCr,Mn,Fe,Co及びNiからなる群より選ばれた物質、B3をTi,Zr,Ru,Rh,Hf,Os,及びIrからなる群より選ばれた物質、B4をV,Nb,及びTaからなる群より選ばれた物質、並びにB5をMo又はWとした場合の一般式が、〔(A1X(A1)−a−b…A1’aA1’’b…)(A2X(A2)−a’−b’…A2’a’A2’’b’…)(A3X(A3)−a’’−b’’…A3’a’’A3’’b’’…)〕〔(B1Y(B1)−c−d…B1’cB1’’d…)(B2Y(B2)−c’−d’…B2’c’B2’’d’…)(B3Y(B3)−c’’−d’’…B3’c’’B3’’d’’…)(B4Y(B4)−c’’’−d’’’…B4’c’’’B4’’d’’’…)(B5Y(B5)−c’’’’−d’’’’…B5 ’ c’’’’B5’’d’’’’…)〕OZで表され(X(A1)…、Y(B1)…、Z、a、a’…、b、b’…、c、c’…、d、d’…は、正の有理数である。)、組成比が関係式4X(A1)+3X(A2)+2X(A3)+2Y(B1)+3Y(B2)+4Y(B3)+5Y(B4)+6Y(B5)>2Zを満たした酸素欠損型の導電性酸化物を用意する必要がある。
【0028】
そこで、まず、各構成元素の硝酸溶液を所望の元素比率になるように混合した。
【0029】
次に、この混合溶液を、蓚酸とエタノールの混合溶液に滴下し、これらの蓚酸塩の沈殿物を得た。
【0030】
ついで、この沈殿物を約70度で乾燥して、乾燥した各固形物を混合した後、電気炉を用いて空気中にて500度程度で3時間程度加熱して、不要な蓚酸塩を熱分解し、各構成元素の酸化物を得た。
【0031】
もちろん、所望の化学量論的導電性酸化物が得られるなら、このような作製方法に限定されものではない。
【0032】
そして次に、このようにして得た化学量論的導電性酸化物から酸素欠損型酸化物を作製する方法について説明する。
【0033】
一般的に化学量論的酸化物の定常状態における酸素欠損量は、還元性雰囲気である場合を除いて、酸素分圧と温度により一義的に決定される。
【0034】
従って、所望の酸素欠損型酸化物は、化学量論的酸化物を、所定の酸素分圧と温度環境下に、定常状態になるまで保持することによって簡便に得られることになる。
【0035】
なお、このようにして得られた酸素欠損型酸化物は、簡略化した一般式(A1(x-a-b・・・)A2aA3b…)(B1(y-a'-b'・・・)B2a'B3b'…)Oz-a''で示されるとする。
【0036】
ここでa’’は、酸素欠損量に対応した正の有理数である。
ただし、このような酸素欠損型酸化物を構成する酸素以外の元素成分の化学量論比からのずれは、±10%の範囲であれば機能上実質的な支障はない。
【0037】
より具体的には、酸素以外を所望の元素比率になるように混合しておき、この混合物をターゲットとしてスパッタ蒸着法で、放電ガスと基板温度を制御することにより所望の酸素欠損型導電性酸化物を得ることができる。
【0038】
(実施の形態1)
最初に、本発明の実施の形態1について図面を参照しながら説明する。
【0039】
さて、本実施の形態では、このような酸素欠損型導電性酸化物として、La0.8Sr0.2Mn0.9O2.9を用いた。
【0040】
図1(a)は、本実施の形態の酸素欠損型酸化物を冷陰極に用いた冷陰極蛍光管の断面図を示す。
【0041】
図1(a)において、1は両端が閉じられた内径1.5mmの中空形状の硬質ガラス製のガラス管、2は冷陰極で、基体電極を2a、冷陰極材料を2bで示し、3は冷陰極に連絡したリード線、4は一方の電極、5は一方の電極に連絡したリード線、6はガラス管の内面に塗布された蛍光体、7はガラス管の内部に封入された封入ガスである。
【0042】
ここで、基体電極2aは、金属製の1.4φ(外径)x4.0mm、0.1tの中空円柱状であり、その延在する軸方向は、ガラス管2の中空形状の軸方向と平行であり、好適には一致する。そして中空円柱状の基体電極2aの内面に沿って、冷陰極材料2bの膜が均一に形成されている。
【0043】
また、ガラス管1は、封入ガス7を収容しかつ発生した光を透過すれば、ガラス製であることには限定されず、また一部が光非透過性の材料を用いてもよい。
【0044】
また、基体電極2aは、Ni製としたが、金属でなくとも適当な導電性を呈するものであれば使用可能である。
【0045】
また、リード線3、5としては、Ni−Cr−Fe合金製を用いたが、もちろんこれに限定されるものではない。
【0046】
また、蛍光体6は、基体電極2aの内壁に3μmの厚さで形成した。
また、封入ガス7は、酸素欠損型酸化物の冷陰極材料2bが成膜された後、所定の排気及び冷陰極の還元処理終了後、80torrの95%のNeガスと5%のArガスの混合ガスと、十分なHg蒸気とを封入したものである。
【0047】
もちろん、場合によっては、Hg蒸気は、省略してもかまわない。
また、図2(a)は、本実施の形態の冷陰極2の詳細構造を示す拡大断面図であり、前述したように、中空円柱状の基体電極2aの内面に、冷陰極材料2bの膜が形成され、リード線3が不図示のガラス管1を貫通して連絡されている。
【0048】
そして、このような構成を有する冷陰極蛍光管を、高周波インバータを用いて駆動周波数60kHz、放電電流5mAで点灯させ、放電特性を評価した。
【0049】
ここで、放電電流とは、冷陰極2に印加する電流である。
図3に、本実施の形態における低電圧維持寿命特性を示す。
【0050】
ここで、低電圧維持寿命とは、放電電圧の低電圧特性が完全に失われるまでの時間、換言すれば、放電電圧が、点灯時間経過とともに従来のW等の遷移金属電極の場合と同等にまで劣化するまでの時間、のことをいい、時間的制約から1000時間で測定は終了させた。
【0051】
(実施の形態2)
ついで、本発明の実施の形態2について説明する。
【0052】
本実施の形態では、酸素欠損型導電性酸化物として、Y0.9Ca0.1Mn1.0O2.7を用いたこと以外は実施の形態1と同様にして冷陰極蛍光管を作製し、同様の評価を行った。
【0053】
図3に、本実施の形態における低電圧維持寿命特性を示す。
(実施の形態3)
ついで、本発明の実施の形態3について説明する。
【0054】
本実施の形態では、酸素欠損型導電性酸化物として、Sr1.0Ti0.8Ru0.2O2.9を用いたこと以外は実施の形態1と同様にして冷陰極蛍光管を作製し、同様の評価を行った。
【0055】
図3に、本実施の形態における低電圧維持寿命特性を示す。
(実施の形態4)
ついで、本発明の実施の形態4について説明する。
【0056】
本実施の形態では、酸素欠損型導電性酸化物として、Nd1.0Gd0.8Ca0.2Cu1.0O3.6を用いたこと以外は実施の形態1と同様にして冷陰極蛍光管を作製し、同様の評価を行った。
【0057】
図3に、本実施の形態における低電圧維持寿命特性を示す。
(比較例1)
ついで、比較例1について説明する。
【0058】
本比較例では、図2(b)に示すように、冷陰極材料として中実円筒形状に形成されたWを用いたこと以外は、実施の形態1と同様にして冷陰極蛍光管を作製し、同様の評価を行った。
【0059】
図3に、本実施の形態における低電圧維持寿命特性を示す。
(比較例2)
ついで、比較例2について説明する。
【0060】
本比較例では、図2(c)に示すように、冷陰極材料として基体電極2aの内部に中実円筒形状に形成された化学量論的導電性酸化物を用いたこと以外は、実施の形態1と同様にして冷陰極蛍光管を作製し、同様の評価を行った。
【0061】
なお、本比較例で用いた導電性酸化物は、La0.5Sr0.5CoO3である。
図3に、本実施の形態における低電圧維持寿命特性を示す。
【0062】
(比較例3)
ついで、比較例3について説明する。
【0063】
本比較例では、図2(d)に示すように、化学量論的導電性酸化物を用いたこと以外は、実施の形態1と同様にして冷陰極蛍光管を作製し、同様の評価を行った。
【0064】
なお、本比較例で用いた導電性酸化物は、La0.5Sr0.5CoO3である。
図3に、本実施の形態における低電圧維持寿命特性を示す。
【0065】
以下、図3を参照しながら、中空円柱状の基体電極に膜状の酸素欠損型導電性酸化物の冷陰極材料を用いた構成の冷陰極蛍光管の低電圧維持寿命特性等の放電特性について検討する。
【0066】
図3を参照すると、実施の形態1〜4と比較例1との比較において、まず実施の形態1〜4の放電開始時の放電電圧は、約50Vと圧倒的に低下していることがわかる。
【0067】
次に、実施の形態1〜4と比較例2,3との比較において、放電開始時の放電電圧は、同等と考えられるが、低電圧維持寿命特性においては、実施の形態1〜4では、1000時間経過しても放電電圧にほとんど変化が見られないのに対して、比較例2,3では、20〜30時間前後で放電電圧が上昇し始め、1000時間経過時には、Wを用いたものと差がなくなるまで劣化している。従って、実施の形態1〜4の低電圧放電寿命維持特性は、格段に向上していることがわかる。
【0068】
また、ガラス管の黒化の原因となる耐スパッタ性に関しては、1000時間経過後、肉眼で確認した。
【0069】
これによれば、比較例1や比較例2では、放電開始(点灯)後たかだか数十時間で冷陰極電極の周辺のガラス管が肉眼で真っ黒になるのが確認された。
【0070】
また、比較例3では、1000時間経過後には、冷陰極の周辺のガラス管が肉眼で真っ黒になっていた。
【0071】
これに対して、各実施の形態では、1000時間点灯後も、ガラス管の黒化がほとんど確認できず、顕著な差が現れた。
【0072】
また、放電電流5mAにおける発光効率につき、各実施の形態とWとを互いに比較した結果、約20%の向上が見られた。
【0073】
ついで、酸素欠損型導電性酸化物の冷陰極材料の膜厚、及び冷陰極材料の位置について検討した。
【0074】
まず、実施の形態1〜4において、各々冷陰極材料の膜厚を0.01,0.05,0.1,0.3,0.5,1.0,2.0,3.0,5.0,10,30,及び50μmの12種類を作製したところ、0.1μm未満では、寿命途中で電圧が急激に上昇してしまい好ましくなく、10μmを越えると、初期電圧が向上するため好ましくない傾向が発現した。
【0075】
従って、冷陰極材料の膜厚を、0.1μm以上10μm以下の範囲で用いるとより確実に初期放電電圧や低電圧維持寿命を向上させることができる。
【0076】
ついで、基体電極とガラス管の軸を一致させたままで、基体電極の径をガラス管壁に接触するところから徐々に小さくしていったところ、軸からガラス管の内壁面までの距離をrとした場合、9/10rよりも内側に位置するようになると初期の放電電圧が向上する好ましくない傾向が発現した。
【0077】
以上より、酸素欠損型導電性酸化物の冷陰極材料の膜厚、及び冷陰極材料の位置についてより好適な範囲が各々存在することがわかる。
【0078】
なお、以上において、ガラス管の内径は、1.5mmの他に、1.2、2.0、2.5、3.0、4.0の6種類、その管長は、80mmの他に40、160及び320mmの4種類、封入されるガス圧力は、80torrの他に10、40、60、100、140及び180torrの6種類、駆動方法は、直流も含め種々の周波数の交流、希ガスは、100%のHeガス、100%のNeガス、100%のArガス、100%のKrガス、100%のXeガス、組成比が(1−x’):x’のNeガスとArガスとの混合ガス(ここで0<x’<1)、組成比が(1−x’):x’のNeガスとXeガスとの混合ガス等の種々のものを組合せて、同様の低電圧放電維持寿命と放電電圧特性を測定をしたところ、同様の結果が得られることを確認した。
【0079】
さらに、実施の形態の欄の冒頭で請求項に対応して説明した一般式の範囲内において、合計百種類以上もの組合せの酸素欠損型導電性酸化物について同様の確認を行ったところ、低電圧放電維持寿命は、ほぼ各実施の形態と同様の特性に収まり、その他初期放電電圧や黒化等についても同様の傾向が発現することがわかった。
【0080】
以上より、本発明の酸素欠損型導電性酸化物を用いた冷陰極材料を成膜して用いれば、従来の化学量論的酸化物等を用いた冷陰極では実現できなかった初期特性及び1000時間以上もの低電圧放電維持寿命等を実現したことが理解できる。
【0081】
【発明の効果】
本発明によれば、特に従来のペロブスカイト型酸化物を用いた冷陰極では実現できなかった1000時間以上もの低電圧放電維持寿命を実現し、さらに、電極のスパッタによるガラス管の黒化寿命問題をも解決することができる。
【0082】
従って、かかる冷陰極を、冷陰極蛍光管に適用した結果として、長寿命かつ高効率な冷陰極蛍光管を実現することができ、LCD用バックライト等として最適に使用可能な冷陰極蛍光管を実際に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における冷陰極蛍光管の断面図
【図2】同冷陰極蛍光管の冷陰極の構成を説明する断面図
【図3】同冷陰極蛍光管の電圧寿命特性を示した図
【符号の簡単な説明】
1 ガラス管
2 冷陰極
3 リード線
4 電極
5 リード線
6 蛍光体
7 封入ガス
Claims (10)
- 両端が閉じた中空円筒状であり、中空円柱状の基体電極は、中空円筒状のガス体収容容器の軸方向に延在し、前記ガス体収容容器の内径と前記基体電極の外径とは略等しいガス体収容容器と、前記ガス体収容容器中に存在するガス体と、前記ガス体収容容器の内面に配された蛍光体と、前記ガス体に連絡した冷陰極と、前記冷陰極と対向した一方の電極とを有する冷陰極蛍光管であって、前記ガス体収容容器は、その内部で発生した光に対して透過性を有し、前記冷陰極は、A1をCe、A2をY,La,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,及びLuからなる群より選ばれた物質、A3をCa,Sr,及びBaからなる群より選ばれた物質、B1をCu、B2をCr,Mn,Fe,Co及びNiからなる群より選ばれた物質、B3をTi,Zr,Ru,Rh,Hf,Os,及びIrからなる群より選ばれた物質、B4をV,Nb,及びTaからなる群より選ばれた物質、並びにB5をMo又はWとした場合の一般式が、〔(A1X(A1)−a−b…A1’aA1’’b…)(A2X(A2)−a’−b’…A2’a’A2’’b’…)(A3X(A3)−a’’−b’’…A3’a’’A3’’b’’…)〕〔(B1Y(B1)−c−d…B1’cB1’’d…)(B2Y(B2)−c’−d’…B2’c’B2’’d’…)(B3Y(B3)−c’’−d’’…B3’c’’B3’’d’’…)(B4Y(B4)−c’’’−d’’’…B4’c’’’B4’’d’’’…)(B5Y(B5)−c’’’’−d’’’’…B5’c’’’’B5’’d’’’’…)〕OZで表され(X(A1)…、Y(B1)…、Z、a、a’…、b、b’…、c、c’…、d、d’…は、正の有理数である。)であって、組成比が関係式4X(A1)+3X(A2)+2X(A3)+2Y(B1)+3Y(B2)+4Y(B3)+5Y(B4)+6Y(B5)>2Zを満たした導電性酸化物である冷陰極材料を含み、前記冷陰極材料は、前記ガス体収容容器の内部に向けて延在する中空円柱状の基体電極の内壁表面に、膜状に形成されている冷陰極蛍光管。
- 冷陰極材料の導電性酸化物は、明確な結晶構造を有さない酸素欠損型導電性酸化物である請求項1記載の冷陰極蛍光管。
- 冷陰極材料は、厚さ0.1〜10μmの膜状である請求項1または2記載の冷陰極蛍光管。
- ガス体収容容器は両端が閉じた中空円筒状であり、中空円柱状の基体電極は、中空円筒状のガス体収容容器の軸方向に延在し、冷陰極材料は、実質的に前記ガス体収容容器の内壁面近傍に位置する請求項1から3のいずれかに記載の冷陰極蛍光管。
- 冷陰極材料は、ガス体収容容器の軸方向に垂直な方向の中心から前記ガス体収容容器の内壁面までの距離をrとした場合、9/10r以上の前記ガス体収容容器の内壁面側に位置する請求項4記載の冷陰極蛍光管。
- 冷陰極材料の導電性酸化物は、Y 0.9Ca0.1Mn1.0O2.7、Sr1.0Ti0.8Ru0.2O2.9、またはNd1.0Gd0.8Ca0.2CuO3.6である請求項1から5のいずれかに記載の冷陰極蛍光管。
- ガス体は、Heガス、Neガス、Arガス、Krガス、及びXeガスの単独又は組み合わせたものである請求項1から6のいずれかに記載の冷陰極蛍光管。
- ガス体は、さらに、Hgガスを含む請求項7記載の冷陰極蛍光管。
- 基体電極は、金属製である請求項1から8のいずれかに記載の冷陰極蛍光管。
- ガス体収容容器は、ガラス管である請求項1から9のいずれかに記載の冷陰極蛍光管。
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