JP3641469B2 - 変調搬送波周波数検出方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は変調搬送周波数検出方法および装置に関し、特に所定のサンプリング周波数(fs)でサンプリングされたI相データおよびQ相データを含んでいる変調搬送波信号の搬送周波数を算出又は検出する変調搬送周波数検出方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
変調搬送波信号の受信機には、初期捕捉時間を少なくするために、入力信号を直接フェーズロックループ(PLL)に入力するのではなく、高速フーリエ変換(FFT)処理を用いて搬送周波数を検出している。そして、検出周波数に基づき発信器を駆動させ、PLL回路を構成し、変調搬送波信号の受信を行うのが一般的である。
【0003】
例えば特開平5-273267号公報の「周波数検出器」等に開示する如く、変調搬送信号は、そのままFFT処理を行っても、変調成分により搬送波周波数が隠れてしまうために、サンプルデータ(即ち、I相データおよびQ相データ)にコスタス処理、即ちI相の符号にQ相データを掛ける処理を行い、変調成分を除去して搬送波周波数を算出している。この場合には、コスタス処理を通過させるために搬送波周波数成分は2倍の周波数成分となる。また、搬送波信号の直交成分が失われることにより、正負の判断ができなくなるため、検出周波数は+/−方向の2箇所が略同一レベルで検出することになる。そのため、一度検出した周波数をどちらかに振り、再度FFT処理を行うことにより搬送波信号の検出を行っている。
【0004】
図6は、上述した従来の変調搬送波信号検出装置のブロック図を示す。この変調搬送波信号検出装置60は、コスタス処理部61およびFFT処理部62により構成される。コスタス処理部61には、Q相データS2およびI相データS1の符号SGN(I)が入力される。そして、このコスタス処理部61からS4=SGN(I)×Qが出力される。この信号S4は、FFT処理部62のQ相に入力され、I相には0固定入力S3が入力される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来技術では、FFT処理を2回行わなければ入力される変調搬送波信号の周波数が求められないという欠点があった。そのために回路構成が複雑高価になるのみならず、初期捕捉時間が長くなる。
【0006】
【発明の目的】
本発明は、従来技術の上述した課題に鑑みなされたものであり、初期捕捉時間を短縮することが可能な変調搬送波周波数検出方法および装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するため、本発明による変調搬送波周波数検出方法および装置は次のような特徴的な構成を採用している。
【0008】
(1)サンプリングされたI相データおよびQ相データをコスタス処理およびFFT(高速フーリエ変換)処理して周波数を検出する変調搬送波周波数検出方法において、
前記I相データおよびQ相データの一方のデータを他方のデータの符号でコスタス処理することと、前記他方のデータの絶対値を、該絶対値の平均値から差し引く差データを求めることと、前記コスタス処理結果および前記差データに基づきFFT処理を行うこととよりなる変調搬送波周波数検出方法。
【0009】
(2)前記絶対値の平均値は、N(正の整数)個のサンプリングデータにより演算して求める上記(1)の変調搬送波周波数検出方法。
【0010】
(3)前記一方のデータを前記Q相データとし、前記他方のデータを前記I相データとする上記(1)又は(2)の変調搬送波周波数検出方法。
【0011】
(4)前記変調搬送波周波数は、−fs/4〜+fs/4(ここで、fsはサンプリング周波数)の範囲にて発生している変調搬送波信号の搬送波周波数を検出する上記(1)、(2)又は(3)の変調搬送波周波数検出方法。
【0012】
(5)サンプリングされたI相データおよびQ相データをコスタス処理部でコスタス処理した結果を高速フーリエ変換(FFT)処理部でFFT処理して変調搬送波周波数を検出する変調搬送波周波数検出装置において、
前記I相データおよびQ相データの一方のデータの絶対値を求める絶対値検出部、前記絶対値の平均値を求める平均値算出部および前記絶対値から前記絶対値の平均値を差し引く差データを得る減算部を備え、前記コスタス処理結果および前記差データを前記FFT処理部に入力する変調搬送波周波数検出装置。
【0013】
(6)前記一方のデータはI相データであり、該I相データの符号および前記Q相データが前記コスタス処理部に入力される上記(5)の変調搬送波周波数検出装置。
【0014】
(7)前記一方のデータはQ相データであり、該Q相データの符号および前記I相データが前記コスタス処理部に入力される上記(5)の変調搬送波周波数検出装置。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による変調搬送波周波数検出方法および装置の好適実施形態の構成および動作を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
先ず、図1は、本発明による変調搬送波周波数検出装置の好適実施形態の構成を示すブロック図である。図1に示す変調搬送波周波数検出装置10は、コスタス処理部11、FFT処理部12、符号検出部13、絶対値(ABS)検出部14、この絶対値の平均値算出部15および減算部16により構成される。
【0017】
I相データS1が符号検出部13および絶対値検出部14に入力される。コスタス処理部11には、Q相データS2および符号検出部13の出力であるI相の符号SGN(I)であるS3が入力される。コスタス処理部11は、これら両信号S2およびS3の積S7=SGN(I)×Qを出力し、この信号S7はFFT処理部12のQ相端子に入力される。一方、絶対値検出部14は、上述した信号S1の絶対値S4=ABS(I)を出力する。減算部16は、このABS(I)から平均値算出部15により算出した絶対値ABS(I)のサンプリング区間の平均値データS5=Mの差データS6=ABS(I)−Mを出力する。この減算部16から出力される差信号S6は、FFT処理部12のI相端子に入力される。
【0018】
即ち、本発明による変調搬送波周波数検出装置10は、サンプリングされたI相データS1の絶対値をとる絶対値検出部14、所定サンプリングル区間の平均値S5を算出する平均値算出部15、絶対値をとったI相データS4からサンプリング区間の平均値データS5を減算部16で差し引いたI相データS6をFFT処理部12へ入力するように構成されている。Q相データS7は、従来通りコスタス処理部11でQ相データS2に対しI相データの符号S3を掛け合わせるコスタス処理を施しFFT処理部12に入力される。
【0019】
ここで、図1中のFFT処理部12およびコスタス処理部11は、当業者には周知であり、また本発明とは直接関係しないので、その詳細な構成および動作説明は省略する。
【0020】
次に、図1に示す本発明による変調搬送波周波数検出装置10の動作を説明する。Q相データS7は、従来通りサンプリングされたQ相データS2に対し、符号検出部13からのI相データの符号S3を掛け合わせるコスタス処理をコスタス処理部11により行う。I相データS6は、サンプリングされたI相データS1から絶対値検出部14により絶対値S4をとり、平均値算出部15により算出したサンプリング区間の平均値S5を減算部16で差し引いて入力して、FFT処理部12でFFT処理を行うことにより搬送波周波数を算出する。
【0021】
次に、図2〜図5のスペクトラム波形図を参照して、図1に示す変調搬送波周波数検出装置10の動作を従来技術と対比して説明する。図2〜図5に示す各スペクトラム波形は、搬送波周波数を+fs/8にて発生させた変調搬送波信号を、サンプリング周波数fsにてサンプリングしてデータをFFT処理したものである。
【0022】
図2は、サンプリングされたI相データおよびQ相データS1、S2をFFT処理した波形を示す。図2のスペクトラム波形は、変調搬送波信号をそのままFFT処理したものとなるため、変調成分により搬送波信号の周波数を特定することができない。
【0023】
図3は、Q相データS2をI相の符号S3と掛けるコスタス処理されたデータS7とI相に0固定を入力した場合のFFT処理した、図6に示す従来技術によるスペクトラム波形を示す。図3から明らかな如く、コスタス処理を行ったことにより変調成分が除去され、2倍の搬送波周波数成分+fs/4および−fs/4が出力される。搬送波周波数成分が2箇所検出される。
【0024】
一方、図4は、コスタス処理されたデータS7とI相データS1の絶対値をとったサンプリングデータS4をFFT処理したスペクトラム波形を示す。この場合においても、2倍の搬送波周波数成分である+fs/4および−fs/4が検出される。しかし、搬送波信号の直交成分が改善するために、真の搬送波周波数成分に対して偽の搬送波周波数成分は6dB程度下がることが期待されるので、入力された搬送波信号を検出することが可能となる。また、I相データの絶対値をとっているので、正方向にオフセットをはくことによりDC成分(0Hz)が出力されることになる。そこで、実際に搬送波信号が入力されない場合においても、DC成分があるために搬送波信号の誤検出を引き起こす。
【0025】
次に、図5は、図1に示す本発明による変調搬送波周波数検出装置10においてサンプリングされたデータS6およびS7をFFT処理部12でFFT処理したスペクトラム波形を示す。I相データS1に絶対値をとったデータS4からサンプリング区間のデータの平均値S5を差し引く(差データ)ことにより、図4において発生していたDC成分が除去され、2倍の搬送波周波数成分の+fs/4が明らかに算出可能となる。また、コスタス処理は入力周波数が2倍されるので、検出周波数を半分(1/2)にすることにより入力された搬送波成分が算出できる。
【0026】
図1に示す変調搬送波周波数検出装置10においては、Q相データにI相の符号を掛けたコスタス処理を行い、I相データの絶対値をとりサンプリング区間のI相データの平均値Mを差し引いたABS(I)−M値をFFT処理部12でFFT処理することにより変調搬送波周波数の算出を行っている。同様に、I相データにQ相データの符号を掛けたコスタス処理を行い、Q相データの絶対値をとりサンプリング区間におけるQ相データの平均値を差し引いた差データをFFT処理することにより変調搬送波周波数の算出を行っても同様の結果が得られる。
【0027】
尚、I相データおよびQ相データ共に絶対値をとり、平均値を差し引く場合又はI相データおよびQ相データ共にコスタス処理をとった場合については、共に直交成分が失われるために、図3と同様のスペクトラム波形となり、搬送波周波数成分が2箇所検出される。
【0028】
以上、本発明による変調搬送波周波数検出方法および装置の好適実施形態の構成および動作を詳述した。しかし、斯かる実施形態は本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であること、当業者には容易に理解できよう。例えば、絶対値の平均値算出部および減算部等は、ハードウエア(個別の回路素子)により又はCPU(中央演算処理装置)によるソフトウエアにより実現可能である。
【0029】
【発明の効果】
以上の説明から理解される如く、本発明の変調搬送波周波数検出方法および装置によると、次の如き実用上の顕著な効果が得られる。即ち、本発明の変調搬送波周波数検出方法および装置によると、1回のFFT処理により確実に変調搬送波周波数が求められ、初期捕捉時間を従来技術に対して約1/2とすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による変調搬送波周波数検出装置の好適実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】I相およびQ相データをそのままFFT処理した場合のスペクトル波形例である。
【図3】I相およびQ相データを従来技術により処理した場合のスペクトラム波形例である。
【図4】コスタス処理されたデータとI相データの絶対値を取ったデータをFFT処理した場合のスペクトラム波形例である。
【図5】本発明により処理された場合のスペクトラム波形例である。
【図6】変調搬送波周波数検出装置の従来例の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
10 変調搬送波周波数検出装置
11 コスタス処理部
12 FFT処理部
13 符号検出部
14 絶対値検出部
15 平均値算出部
16 減算部
Claims (7)
- サンプリングされたI相データおよびQ相データをコスタス処理およびFFT(高速フーリエ変換)処理して周波数を検出する変調搬送波周波数検出方法において、
前記I相データおよびQ相データの一方のデータを他方のデータの符号でコスタス処理することと、前記他方のデータの絶対値を、該絶対値の平均値から差し引く差データを求めることと、前記コスタス処理結果および前記差データに基づきFFT処理を行うこととよりなる変調搬送波周波数検出方法。 - 前記絶対値の平均値は、N(正の整数)個のサンプリングデータにより演算して求めることを特徴とする請求項1に記載の変調搬送波周波数検出方法。
- 前記一方のデータを前記Q相データとし、前記他方のデータを前記I相データとすることを特徴とする請求項1又は2に記載の変調搬送波周波数検出方法。
- 前記変調搬送波周波数は、−fs/4〜+fs/4(ここで、fsはサンプリング周波数)の範囲にて発生している変調搬送波信号の搬送波周波数を検出することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の変調搬送波周波数検出方法。
- サンプリングされたI相データおよびQ相データをコスタス処理部でコスタス処理した結果を高速フーリエ変換(FFT)処理部でFFT処理して変調搬送波周波数を検出する変調搬送波周波数検出装置において、
前記I相データおよびQ相データの一方のデータの絶対値を求める絶対値検出部、前記絶対値の平均値を求める平均値算出部および前記絶対値から前記絶対値の平均値を差し引く差データを得る減算部を備え、前記コスタス処理結果および前記差データを前記FFT処理部に入力することを特徴とする変調搬送波周波数検出装置。 - 前記一方のデータはI相データであり、該I相データの符号および前記Q相データが前記コスタス処理部に入力されることを特徴とする請求項5に記載の変調搬送波周波数検出装置。
- 前記一方のデータはQ相データであり、該Q相データの符号および前記I相データが前記コスタス処理部に入力されることを特徴とする請求項5に記載の変調搬送波周波数検出装置。
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