JP3640936B2 - 薄鋳片を用いた高靭性鋼材の熱間圧延方法 - Google Patents

薄鋳片を用いた高靭性鋼材の熱間圧延方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、厚さ155mm以下の薄鋳片を用いて熱間圧延を行うことにより、高靭性鋼材を製造する薄鋳片の熱間圧延方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
連続鋳造を経て熱間圧延鋼板を製造するに際し、従来は厚さ200mmから300mmの連続鋳造スラブを素材とし、このスラブを厚板圧延や連続熱延によって所定の厚さの鋼板とする熱間圧延方法が用いられている。
【0003】
これに対し、厚さ155mm以下の薄鋳片、より具体的には厚さ40〜100mmの薄鋳片(薄スラブ)を連続鋳造によって鋳造し、この薄スラブを安価なコンパクト熱間圧延設備で熱間圧延して熱延鋼板を製造する方法が注目されている。このプロセスは、従来プロセスに比較して初期設備投資が非常に小さくて済むという特徴を有している。現在では、薄スラブ圧延法は世界の鋼生産の5%程度を占めるまでに普及が進んでおり、今後の急速な普及が予測されている。
【0004】
熱延鋼板のみならず、形鋼についても、厚さ155mm以下の亜鈴断面を有するブルーム連続鋳造によって薄鋳片を製造し、この薄鋳片を熱間圧延して形鋼を製造することとすれば、熱間圧延設備の初期設備投資を非常に小さくすることができる。
【0005】
厚さ155mm以下の薄鋳片から比較的板厚の厚い鋼板や形鋼を熱間圧延で製造する場合、特に圧延後の製品厚さが鋳片厚さの1/5以上となるような場合には、従来の圧減比が大きいプロセスに比較して小さな圧下量しか取れないため、熱間圧延直後のオーステナイト結晶組織の微細化が十分にはできず、製品の低温靭性が十分に確保できないという問題を有している。
【0006】
薄鋳片の熱間圧延によって比較的厚手の製品を製造するに際しては、熱間圧延パスの最初の段階で圧下率の大きな圧延を行う圧延法が採用されていた。熱間圧延の初期にオーステナイト高温域で大きな圧下を加えることにより、動的再結晶を促進させてある程度のオーステナイト粒径の調整を行おうとするものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
熱間圧延の初期に大きな圧下を加える方法を採用しても、例えば圧延後の製品厚さが鋳片厚さの1/5以上となるような低圧下率の圧延においては、圧延後に鋳造組織の影響が強く残り、熱間圧延終了後のオーステナイト結晶粒が十分に整細粒とならない。そのため、そこから変態してできるフェライト−パーライトやフェライト−アシキュラー組織中には粗大な結晶粒が相当な頻度で散在することになる。粗大な結晶粒が残ると、鋼材の低温靭性が劣り、たとえば高い低温靭性が求められるラインパイプや使用温度が寒冷地仕様の鋼構造物あるいは鋼製のタンク・容器類ならびにH形鋼などに使用することができない。
【0008】
以上のような理由により、従来は、板厚が7mm以上でのラインパイプ材でAPI規格におけるX52〜X80グレード、同じく板厚が7mm以上の液化ガス貯蔵用の容器用鋼材あるいはその付属構造部分などに使用される鋼材で引張強度が450MPa〜800MPaに至るような鋼材製品については、薄鋳片を熱間圧延して製造することが困難であった。
【0009】
本発明は、連続鋳造された薄鋳片を用いて熱間圧延を行うことにより、高靭性鋼材を製造することのできる熱間圧延方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)厚さ155mm以下の薄鋳片を用いた高靭性鋼材の熱間圧延方法であって、薄鋳片はNbを0.01〜0.50質量%含有する鋼であり、熱間圧延の途中で圧延材を急冷却してベイナイト組織とし、その後該圧延材を再加熱し、最終厚さまでの熱間圧延を行うことを特徴とする高靭性鋼材の熱間圧延方法。
(2)厚さ155mm以下の薄鋳片を用いた高靭性鋼材の熱間圧延方法であって、薄鋳片はNbを0.01〜0.50質量%含有する鋼であり、熱間圧延の途中で圧延材を急冷却し、該急冷却は450℃以下の温度まで水冷することによって行い、その後該圧延材を再加熱し、最終厚さまでの熱間圧延を行うことを特徴とす高靭性鋼材の熱間圧延方法。
(3)前記熱間圧延の途中での圧延材の急冷却は、圧延材の厚さが仕上げ厚さの1.5倍以上5倍以下の範囲において行うことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の高靭性鋼材の熱間圧延方法。
(4)再加熱温度は、850℃以上1050℃以下の範囲であることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の高靭性鋼材の熱間圧延方法。
(5)薄鋳片は、さらにC:0.03〜0.20質量%、Mn:0.3〜2.0質量%を含有する鋼であることを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の高靭性鋼材の熱間圧延方法。
(6)薄鋳片は、さらにMo:0.02〜1.00質量%、V:0.02〜0.50質量%、Cr:0.01〜1質量%、Ti:0.005〜0.1質量%、Ni:0.01〜1質量%、Cu:0.01〜1%の1種又は2種以上を含有する鋼であることを特徴とする上記(5)に記載の高靭性鋼材の熱間圧延方法。
(7)前記薄鋳片は、薄スラブ連続鋳造によって鋳造し、前記熱間圧延によって厚さ7mm以上の高靭性鋼板を製造することを特徴とする上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の高靭性鋼材の熱間圧延方法。
(8)前記薄鋳片は、亜鈴断面を有するブルーム連続鋳造によって鋳造し、前記熱間圧延によって7mm以上のフランジ厚さとウェブ厚さを有する高靭性形鋼を製造することを特徴とする上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の高靭性鋼材の熱間圧延方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、厚さ155mm以下の薄鋳片を用いて高靭性鋼材を熱間圧延で製造するに際し、Nbを0.01〜0.50質量%含有する鋼を用い、熱間圧延の途中で圧延材を急冷却してベイナイト組織とし、その後該圧延材を再加熱し、最終厚さまでの熱間圧延を行うことを特徴とする。
【0012】
熱間圧延の途中でいったん圧延材を急冷してベイナイト組織とし、その後その圧延材を再加熱すると、再加熱によって圧延材の温度が高まるにつれ、ベイナイト組織中の炭化物が分解し、やがてその分解した炭化物の部分からオーステナイトへの変態が始まる。ベイナイト組織において、炭化物は数μm程度の間隔でプレート状炭化物層として形成されている。再加熱の比較的初期の段階では、このプレート状炭化物層がオーステナイトに変態を開始するものの、隣り合って層状に存在している板状フェライトに遮られ、オーステナイトの成長は層状組織の厚み方向への成長が抑制された状態に留まる。
【0013】
板状フェライトが有しているオーステナイト粒成長抑制効果は、ニオブを含有しない鋼ではAC3直上温度までしか発揮されない。ニオブを含有しない鋼では、形成される炭化物相は鉄の炭化物すなわちFe3Cであるために、AC3に達すると容易に分解してCがオーステナイト地中に拡散してしまうためオーステナイトの粒成長を阻止する役割を担えないためである。これでは、ベイナイトの炭化物プレートのモルフォロジーに対応して形成されている炭化物形成元素の微細な局所的偏在状態が、再加熱時に容易に解消されてしまうために、引き続いて実施される熱間圧延によって微細な組織形成ができなくなる。
【0014】
これに対し、本発明者は、圧延材がニオブを含有していると、加熱炉で実際に圧延材を再加熱する過程においては、AC3点を超えて数十℃以上の温度に至るまでオーステナイト粒成長抑制効果が発揮されることを見出した。ここでは、この温度を「オーステナイト粒成長抑制温度」という。AC3を超えてオーステナイトの生成が始まってからも形成され始める微細なオーステナイト粒の成長が抑制されると同時に、その合体さえも起こり難くなるのである。この効果は、ニオブが添加された鋼では炭化物中に存在しているNb(CN)が分解されきってしまう温度に至るまで、すなわち通常は1000℃近くまでオーステナイト粒成長抑制温度の範囲までは安定して発揮されるのである。しかるに本発明が対象としている薄鋳片からの熱間圧延途中の鋼材の場合、今日の工業的な加熱炉による再加熱のプロセスでは加熱速度が速いためにNb(CN)が平衡状態で分解を終える1000℃よりもさらに50℃ほど高温に至るまでオーステナイト粒の成長抑制効果が得られるのである。そのため、引き続き行う再加熱において、オーステナイト粒の成長を抑制することが可能になる。
【0015】
さらに本発明者は、圧延材がNbを含有すると同時にMo、V、Cr、Tiの1種以上を含有すると、オーステナイト粒成長抑制温度はさらに高い温度となることを見いだした。また、同一の加熱温度であれば、Mo、V、Cr、Tiの1種以上の含有によってオーステナイト粒成長抑制の程度を一層向上することができる。この理由は、Mo、V、Cr、Tiの1種以上をNbと複合して含有する鋼では、形成されるベイナイト中の炭化物の中にNbの炭化物と同時にこれらの元素の炭化物が形成されるために炭化物相がより安定となりオーステナイト粒の成長を抑制する効果が高まるためである。
【0016】
加えて、ニオブ含有鋼の場合には、再加熱時にオーステナイト粒成長抑制温度より高い温度域に入ってオーステナイト粒が成長をはじめても、ベイナイト組織中の炭化物を形成するNb、Cの局在状態は完全には解消されない。そのため、オーステナイト粒成長後おいても、旧ベイナイトの炭化物層部分は板状フェライト部分に比較してNb、Cが局所的に高い状態が保存される。再加熱後の熱間圧延および冷却過程において、この局所的な成分不均一に対応してオーステナイトが分解してフェライトと第2相である炭化物層の生成過程に不均一が生じる。その結果、再加熱後に成長したオーステナイト粒の状態とは無関係に、それよりは遙かに微細なベイナイトの炭化物のモルフォロジーに対応した微細組織が、熱間圧延後に形成されることとなる。
【0017】
しかも、圧延材がNbを含有すると共に、炭化物形成元素となるMo、V、Cr、Tiの1種以上を含有する場合には、上記ニオブ炭化物が局在することによる組織微細化効果がより一層高まることが認められた。
【0018】
即ち、本発明においては、ニオブ含有鋼薄鋳片を熱間圧延中に急冷してベイナイト組織とし、その後再加熱して再度熱間圧延を行うことにより、再加熱時のオーステナイト粒の成長が抑制され、オーステナイト粒成長抑制温度も上昇し、再度の熱間圧延後においても微細なベイナイト組織に起因した微細組織が得られるため、これらの相乗効果として、圧減比が小さい薄鋳片の熱間圧延においても、きわめて高靭性の鋼材を製造することが可能になるのである。
【0019】
本発明において、鋼のNb含有量は0.01〜0.50質量%とする。Nbが0.01%未満では上記組織の微細化効果を発揮することができない。また、0.50%を超えると、鋳造の途中の高温の状態からNb(CN)が析出し始めるために粗大なNb析出物となり、熱間圧延の途中で水冷して得られるベイナイト中の炭化物相中には有効な微細Nb(CN)が極めて不十分にしか存在し得ないため、本発明の予定する効果が得られないためである。Nb含有量は0.01〜0.15質量%とすると好ましい。Nb含有量は0.02〜0.10質量%の範囲とするとより好ましい。Nb含有量は0.03〜0.07質量%の範囲とするとさらに好ましい。
【0020】
本発明において、最初の熱間圧延後の急冷によって形成するベイナイト組織とは、本発明の対象とする炭素含有量が0.20%以下の鋼においては、最も冷却速度の大きなときに得られるマルテンサイトと、その対極になる最も冷却速度の小さなときに得られるフェライト−パーライト組織の中間の冷却速度でオーステナイトから冷却されたときに得られる組織であって、おおむね、毎秒10℃〜50℃の冷却速度で冷却することにより得られる組織である。
【0021】
本発明において、圧延材をベイナイト組織化するためには、熱間圧延の途中で圧延材を水冷し、450℃以下の温度まで急冷すればよい。より具体的には、毎秒10〜50℃の冷却速度となるように冷却することにより、圧延材をベイナイト組織とすることができる。冷却手段として水冷を用いることにより、この冷却速度を実現することができる。冷却後の温度を450℃以下の温度までとするのは、ベイナイト変態は本発明が対象とする鋼においては550℃付近から変態が始まり450℃までにおわるからである。
【0022】
本発明において、前記熱間圧延の途中での圧延材の急冷却は、圧延材の厚さが仕上げ厚さの1.5倍以上5倍以下の範囲において行うこととすると好ましい。圧延材の厚さが仕上げ厚さの1.5倍未満であると、再加熱後の第二段階の熱間圧延において十分な圧下を取ることができず、本発明の特徴である第一段階の圧延直後の水冷によって形成されたベイナイトに対応した微細組織が得られない。また、圧延材の厚さを仕上げ厚さの5倍以下とすれば、水冷時に圧延材の厚さ方向すべての位置において冷却速度が毎秒10℃以上となり、厚さ方向すべての位置において十分にベイナイト組織とすることができる。第一段階の熱間圧延が終わって水冷される圧延材の厚さは、仕上げ厚さの2倍以上4倍以下の範囲であるとより好ましい。
【0023】
本発明おいて、急冷却後の圧延材の再加熱温度は、850℃以上1050℃以下の範囲とすると好ましい。850℃未満では、水冷組織が十分な焼鈍効果を受けないでそのまま圧延加工に付されるために極度の加工硬化が起こり鋼材の靭性が損なわれる。また1050℃を超えると、本発明の技術的な核心である微細なベイナイト組織に対応する位置に存在するNb等の炭化物形成元素の局在状態が解消されてしまって均質な状態となるために通常の再加熱後の熱間圧延とまったく変わらない状態となり、すぐれた靭性が得られない。再加熱温度は、900℃以上1000℃以下であるとより好ましい。
【0024】
上記温度範囲に再加熱後は、保持時間を、鋼材のすべての部位でオーステナイト化が完了後、可能な限り短時間で終え熱間圧延を再開すると好ましい。その理由は既に説明したとおり、水冷によるベイナイト組織に対応した微細な成分偏析状態ができる限り維持された状態から熱間圧延されることが本発明の効果を発揮させる上で必須の条件だからである。
【0025】
本発明の薄鋳片は、さらにC:0.03〜0.20質量%、Mn:0.3〜2.0質量%を含有する鋼であると好ましい。Cが0.03%より少ない場合には水冷によるベイナイト組織が得られ難くなり、また、多きに失すると鋼材の靭性を損なうゆえに0.03〜0.20%とする。Mnは0.3%以下では鋼中の硫化物が低融点のFeSとなるため鋳片の熱間われの原因となる。また、2.0%を超えると焼入れ性が高くなりすぎて水冷時にベイナイトとならずマルテンサイトになってしまうために成分のミクロ的な局在が得られない。これゆえに0.3〜2.0%をMnに関する要件とする。C含有量は0.05〜0.10質量%であるとより好ましい。Mn含有量は1.2〜1.6質量%であるとより好ましい。
【0026】
前述したように、圧延材がMo、V、Cr、Tiの1種以上を含有すると、オーステナイト粒成長抑制温度はさらに高い温度となる。また、圧延材が炭化物形成元素となるMo、V、Cr、Tiの1種以上を含有する場合には、ニオブ炭化物が局在することによる組織微細化効果がより一層高まる。ここにおいて、薄鋳片は、Mo:0.02〜1.00質量%、V:0.02〜0.50質量%、Cr:0.01〜1質量%、Ti:0.005〜0.1質量%の1種又は2種以上を含有する鋼とすると好ましい。この理由は、すでに述べたようにMo、V、Cr、TiはNbと共存して炭化物の安定化に効果があるが、本発明の効果に対して有効な範囲として、それぞれ、上記の添加範囲とした。これらの添加元素の範囲を限定した理由を下記に述べる。これらの炭化物形成元素はいずれも多きに失するとNbの場合と同様に鋳造後の冷却過程で粗大な析出物となるため本発明に言うところの微細な組織の形成に役立たない。反対に少なすぎるとその効果が得られない。この理由ゆえに、Mo:0.02〜1.00質量%、V:0.02〜0.50質量%、Cr:0.01〜1質量%、Ti:0.005〜0.1質量%を本発明の構成要件とした。
【0027】
さらに、Ni:0.01〜1質量%、Cu:0.01〜1%に関して添加範囲を規定している理由を以下に述べる。NiならびにCuは添加量の如何を問わず本発明の目指す靭性を高めることに寄与するが、それらの効果は添加量が多くなるほど高まる。しかしながら添加量が多きに失するとNiに関しては合金コストが本発明の対象とする鋼材の許容範囲を逸脱する。したがって上限の添加範囲を1%とした。また添加効果を得ることのできる下限値として0.01%とした。Cuの上限値は1%を超えて添加すると鋳片の熱間割れを誘起しやすくなるので上限を1%とした。下限値はNiと同様な理由で0.01%とした。
【0028】
Mo含有量は0.03〜0.3質量%であるとより好ましい。Mo含有量は0.10〜0.20質量%であるとさらに好ましい。V含有量は0.02〜0.2質量%であるとより好ましい。V含有量は0.03〜0.10質量%であるとさらに好ましい。Cr含有量は0.15〜0.30質量%であるとより好ましい。Ti含有量は0.01〜0.03質量%であるとより好ましい。また、Ni含有量は0.20〜0.50質量%であるとより好ましい。Cu含有量は0.20〜0.35質量%であるとより好ましい。
【0029】
本発明の鋼は、Siを0.05〜0.50質量%含有しても良い。Siは脱酸元素として添加されるのであるが、そのためには0.05%以上添加されなければならない。いっぽう多きに失すると鋼の靭性を低下させるので上限を0.50%とした。同様に、本発明の鋼は、Alを0.005〜0.050質量%含有しても良い。Alは脱酸元素として添加されるのであるが、そのためには0.005%以上添加されなければならない。いっぽう多きに失すると鋼の靭性を低下させるので上限を0.050%とした。
【0030】
以上に述べた各種成分を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなる薄鋳片を用いることにより、本発明の高靭性鋼板を製造することができる。
【0031】
本発明において、Pは鋼の靭性に有害であり少ないほど好ましい。P≦0.02質量%であれば好ましい。P≦0.01質量%であればより好ましい。
【0032】
本発明において、Sは鋼の靭性に有害であり少ないほど好ましい。S≦0.008質量%であれば好ましい。S≦0.004質量%であればより好ましい。
【0033】
本発明は、連続鋳造によって鋳造された厚さ155mm以下の薄鋳片を用いる。厚さが155mm以下であれば、圧減比が不十分なため、従来の熱間圧延方法では高靭性を有する鋼材の製造が困難であったが、本発明によって高靭性の鋼材が製造できるためである。薄鋳片の厚さは薄スラブ鋳造法のもつ高速での鋳造を達成するために通常は45mm以上155mm以下の厚さの鋳片として鋳込まれる。
【0034】
本発明は、熱間圧延後の鋼材の厚さが7mm以上の場合において顕著な効果を発揮することができる。薄鋳片を用いて行った従来の熱間圧延方法では、鋼材の厚さが7mm以上では圧減比が不足し高靭性を有する鋼材の製造が困難であったが、本発明によって高靭性の鋼材が製造できるためである。熱間圧延後の鋼材の厚さは10mm以上であれば本発明の効果がより顕著となる。
【0035】
本発明は、圧延素材の薄鋳片の厚さと熱間圧延後の製品厚さとの比(圧減比)が1.5倍以上において、従来の熱間圧延法と対比して顕著な効果を発揮することができる。圧減比が2.5倍以上であれば従来法と対比した効果はより顕著である。
【0036】
本発明は、薄スラブ連続鋳造によって薄鋳片を鋳造し、熱間圧延によって厚さ7mm以上の高靭性鋼板を製造する場合に用いることができる。本発明はまた、亜鈴断面を有するブルーム連続鋳造によって薄鋳片を鋳造し、熱間圧延によって7mm以上のフランジ厚さとウェブ厚さを有する高靭性形鋼を製造する場合にも用いることができる。いずれの場合も、従来の熱間圧延方法では十分な高靭性を有する鋼材を製造することが困難であったが、本発明の熱間圧延方法を採用することにより、優れた高靭性鋼材を製造することができる。
【0037】
本発明は、連続鋳造後の薄鋳片を冷却せずにそのまま熱間圧延を行う直送圧延方法において適用することができるのはもちろん、連続鋳造後の薄鋳片をいったん冷却し、その後熱間圧延のために加熱する方法において適用することができる。いずれの方法においても、本発明の効果を十分に発揮することができる。
【0038】
本発明の熱間圧延方法を用いて製造することのできる高靭性鋼材は、鋼構造物として使用される環境の温度が0℃以下の用途の鋼材に最も適している。たとえばラインパイプ、液化ガス貯蔵容器類、寒冷な海洋での使用に供せられる船舶や海洋構造物などが適している。
【0039】
本発明は、引張強度が450MPa以上800MPaまでの鋼材において適用すると好ましい。さきに述べた用途の鋼構造物ではもっとも一般的には450MPa以上800MPaの範囲の強度を有する鋼材が使用されるので本発明の対象とする鋼材の強度の範囲として450〜800MPaとした。
【0040】
【実施例】
薄スラブ連続鋳造装置によって薄スラブを鋳造し、この薄スラブを連続熱間圧延によって高靭性鋼板を製造するに際し、本発明を適用した。
【0041】
各実施例の鋼成分を表1に示し、圧延条件及び品質結果を表2に示す。No.1〜10が本発明例であり、No.11〜13が比較例である。
【0042】
表2において、TSは引張強度、YSは降伏強度、ELは伸びを示す。また、Charpy特性において、E−60Cは吸収エネルギーを、FATTは脆性延性遷移温度を示す。表1に示す本発明に規定する成分範囲にある鋼成分の鋼を表2に示すプロセス条件で製造した場合、表2に示すとおり比較例に比べて強度の点でも30MPa以上高い値となり、Charpy切欠靭性は吸収エネルギーも高く脆性延性遷移温度(FATT)は著しく改善される。
【0043】
【表1】
Figure 0003640936
【0044】
【表2】
Figure 0003640936
【0045】
本発明例No.1〜10に示すものは、鋼成分および熱間圧延条件がいずれも本発明に規定する条件を満たすものである。本発明例の鋼板組織の代表例として、本発明例No.2の鋼板の顕微鏡組織を図1に示す。図1は倍率500倍の光学顕微鏡写真である。図1から明らかなように、本発明鋼の組織は結晶粒径が数μm以下の極めて微細な組織となっており、フェライト相、炭化物層からなる中間段階組織である。他の本発明例のいずれにおいても図1と同様の組織を得ることができた。このような微細組織とすることができた結果として、表2に示すように、本発明例No.1〜10の鋼品質は優れた低温靭性を発揮することができた。本発明例は薄スラブを出発材料としているにもかかわらず、厚スラブを出発材料とした従来のプロセスで製造したものと同等の優れた低温靭性の鋼材を得ることができた。
【0046】
比較例No.12の鋼板の顕微鏡組織を図2に示す。比較例No.12は、Nbを含有せず、再加熱の温度が1100℃と高きに失しており、加えてTi含有量が高すぎたため、鋼板組織中には数10μm程度の粗大なフェライト粒を高い頻度で含む組織となっている。その結果、低温靭性は本発明例に比較して劣る結果となった。
【0047】
比較例No.11は、Nbを含有せず、C、Vの含有量が高すぎ、熱間圧延途中での急冷と再加熱を行っていない。そのため、強度・靭性ともに著しく劣っている。
【0048】
比較例No.13は、熱間圧延条件は本発明条件を満たしているものの、必須成分であるNbを含有していないため、本発明例と比較して低温靭性が劣っている。
【0049】
【発明の効果】
本発明は、薄鋳片を用いて鋼材を製造する熱間圧延方法において、鋼中にNbを含有させ、熱間圧延の途中で圧延材を急冷却してベイナイト組織とし、その後該圧延材を再加熱し、最終厚さまでの熱間圧延を行うことにより、優れた靭性特性を有する鋼材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明法で製造した鋼材の組織を示す顕微鏡写真である。
【図2】従来法で製造した鋼材の組織を示す顕微鏡写真である。

Claims (8)

  1. 厚さ155mm以下の薄鋳片を用いた高靭性鋼材の熱間圧延方法であって、薄鋳片はNbを0.01〜0.50質量%含有する鋼であり、熱間圧延の途中で圧延材を急冷却してベイナイト組織とし、その後該圧延材を再加熱し、最終厚さまでの熱間圧延を行うことを特徴とする高靭性鋼材の熱間圧延方法。
  2. 厚さ155mm以下の薄鋳片を用いた高靭性鋼材の熱間圧延方法であって、薄鋳片はNbを0.01〜0.50質量%含有する鋼であり、熱間圧延の途中で圧延材を急冷却し、該急冷却は450℃以下の温度まで水冷することによって行い、その後該圧延材を再加熱し、最終厚さまでの熱間圧延を行うことを特徴とする高靭性鋼材の熱間圧延方法。
  3. 前記熱間圧延の途中での圧延材の急冷却は、圧延材の厚さが仕上げ厚さの1.5倍以上5倍以下の範囲において行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の高靭性鋼材の熱間圧延方法。
  4. 再加熱温度は、850℃以上1050℃以下の範囲であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の高靭性鋼材の熱間圧延方法。
  5. 薄鋳片は、さらにC:0.03〜0.20質量%、Mn:0.3〜2.0質量%を含有する鋼であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の高靭性鋼材の熱間圧延方法。
  6. 薄鋳片は、さらにMo:0.02〜1.00質量%、V:0.02〜0.50質量%、Cr:0.01〜1質量%、Ti:0.005〜0.1質量%、Ni:0.01〜1質量%、Cu:0.01〜1%の1種又は2種以上を含有する鋼であることを特徴とする請求項5に記載の高靭性鋼材の熱間圧延方法。
  7. 前記薄鋳片は、薄スラブ連続鋳造によって鋳造し、前記熱間圧延によって厚さ7mm以上の高靭性鋼板を製造することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の高靭性鋼材の熱間圧延方法。
  8. 前記薄鋳片は、亜鈴断面を有するブルーム連続鋳造によって鋳造し、前記熱間圧延によって7mm以上のフランジ厚さとウェブ厚さを有する高靭性形鋼を製造することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の高靭性鋼材の熱間圧延方法。
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