JP3640891B2 - 到来波方向推定装置及び到来波方向推定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、移動通信や構内無線やレーダ装置などに利用される到来波方向推定装置及び到来波方向推定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、送受共用のアダプティブアンテナ装置に対する需要が高まっており、例えばTDMA/TDDの通信システムにおいては、送受の周波数が一致することから、送受で同一のパターンを形成するアダプティブアンテナ装置を利用することが有効である。
【0003】
図12は従来の送受共用のアダプティブアンテナ装置の構成例を示したブロック図である。アダプティブアンテナを形成する複数のアンテナ素子31a、…、31nがあり、個々のアンテナ素子には信号を受信する受信アナログ部32a、…、32nと、信号を送信する送信アナログ部33a、…、33nが切り替えで接続されている。
【0004】
受信アナログ部32a、…、32nの受信信号は受信パターン形成回路34に入力されて最終的な受信信号になる。送信信号は送信パターン形成回路35に入力され、個々の送信アナログ部33a、…、33nに分配される。
【0005】
このような送受信共用のアダプティブアンテナ装置は、個々のアンテナ素子31a、…、31nに対する受信信号に基づいて、個々のアンテナ素子31a、…、31nに対応する複素振幅の重み付けを受信パターン形成回路34で決定し、この重みを共通のアンテナ素子に対応する受信信号に付与し、或いは前記重み付けを送信パターン形成回路35で送信信号に付与することで、所望のアンテナパターンを形成している。従って原理的には、受信と送信で同一のパターンを形成することができることになる。
【0006】
しかしながら、受信と送信で同一のパターンを形成することは現実的には困難である。その理由は、多くの場合、アダプティブアンテナ内のアンテナ素子毎の送信アナログ部33、受信アナログ部32の通過特性(通過振幅特性、通過位相特性)に偏差(ばらつき)があることに起因している。
【0007】
このような偏差があると、図13に示すように、受信のパターン50と送信パターン60が異なり、所望方向への利得が低くなったり、干渉ユーザーへの利得が高くなったりしてしまう。
【0008】
或いは、受信アダプティブアンテナ装置において、方向拘束付のアダプティブアルゴリズムを用いる場合がある。この場合にも、受信アナログ部の通過特性に偏差(ばらつき)があると、最適な解を得ることができなくなる。
【0009】
更に、受信アダプティブアンテナ装置はレーダ装置の一部として、電波の到来方向を推定することに使用されるが、受信アナログ部の通過特性に偏差(ばらつき)があると、正確に電波の到来方向を推定することができなくなる。
【0010】
上記のような偏差を取り除く方法として、一般的には、キャリブレーションが行われる。キャリブレーションとは、アダプティブアンテナ装置の製作が終了した時点で、すべての受信アナログ部と送信アナログ部の偏差を測定し、補正量 (偏差量に同じ)を予め算出しておく。そして、実際にアダプティブアンテナ装置を運用するときには、補正量を考慮して各素子に設定する振幅位相(重み)を算出すればよい。
【0011】
しかしながら、最初に求めた補正量が運用中に変化してしまう場合がある。例えば、昼夜の外気温度変化の違いによるアナログ部の部品(増幅器、周波数変換機、フィルタなど)の特性変化、そして、それらを接続するケーブルの長さの伸縮が考えられる。このような変化が生じると、受信アダプティブアンテナ装置はその性能が大幅に劣化して到来方向を正確に推定できなくなり、更に、これにより加入者容量が大幅に劣化して、最悪的には、通信の切断にまで及ぶ場合がある。つまり、キャリブレーションは一度では不十分であり、運用中にリアルタイムにキャリブレーションすることが要求される。
【0012】
このような問題を解決する方法として、図14は特開平2000−91833の発明例を示したもので、アンテナ素子41a、41b、41cで受信した受信信号はビームフォーマー42を通ってビームスペースデータに変換される。ビームフォーマーの出力(ビームスペースデータ)は、レベル調整器44b,44cにより補正される。補正されたデータは、逆変換回路によって再び、アンテナ素子で受信した受信信号(これは補正されている)に変換される。
【0013】
位相補正量演算部43は各、ビームフォーマーの出力間の相対的な位相差を検出する。ここでは、到来波がひとつであり、アンテナ素子41a、41b、…、41cの配置位置が決まっていれば、ビームフォーマーの出力間の位相差は到来角度によって決まってくる。そこで、位相補正量演算部43では、検出した位相差と本来得られる値との差を補正量として算出し、その補正量によりアンテナ素子41b、41cの受信レベルをレベル調整器44b、44cにより調整して、到来波の推定方向の精度を高めることができる。しかも、この従来例では、運用中に上記の補正をリアルタイムに行うことができるメリットがある。
【0014】
しかしながら、到来波の数は、ひとつに限定され、また、位相のみの補正になっているので、振幅の変動があった場合には、偏差を保証することができない。特に、アダプティブアンテナ装置では、複数の到来波を受信している状態でパターン形成を行うものである。到来してくる電波の数をひとつにしなければいけないので、通常の通信中にキャリブレーションを行うことができない。
【0015】
以上説明したように、従来のアダプティブアンテナ装置に対して発明されたキャリブレーション方法は、リアルタイムに行えるものであるが、到来波の数がひとつに限定され、位相しか補正できないという問題点があった。
【0016】
また、以上のアダプティブアンテナ装置に関する従来の問題点は、受信アダプティブ装置と同様の構成を一部に持つアンテナレーダ装置における到来方向の推定精度を向上させる場合においても、まったく同様な問題点となる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
以上説明したように従来の到来波方向推定装置では、回路の特性偏差を取り除く方法として、一般的にキャリブレーションが行われるが、最初に求めた補正量が運用中に変化してしまう場合があるため、リアルタイムにキャリブレーションを行なわなければならない。しかし、その場合、到来波はひとつに限定され、しかも位相のみの補正しかできず、しかも複数の到来波がある運用中にキャリブレーションを行うことができないため、実用上不十分なものであった。
【0018】
本発明は、上述の如き従来の課題を解決するためになされたもので、運用中の受信データを用いてリアルタイムに高精度なキャリブレーションを行うことができ、到来波方向推定精度を向上させることができる到来波方向推定装置及び到来波方向推定方法を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、到来波方向推定装置において、複数のアンテナ素子と、前記複数のアンテナ素子に対応して設けられ、対応するアンテナ素子より伝達される受信信号を前記アンテナ素子対応で処理する複数の受信部と、前記複数の受信部から出力される受信信号から前記複数の受信部から出力される信号間の相対的な偏差を推定する補正量算出手段と、前記複数の受信部から出力される受信信号を前記補正量算出手段により得られる偏差量を用いて補正し、これら補正された受信信号を用いて前記複数のアンテナ素子に到来する少なくともひとつの電波の到来方向を推定する到来方向推定手段と、を具備し、前記補正量算出手段は、ひとつ或いは複数の電波の到来方向と、複数の受信部から出力される信号間の振幅位相偏差と、複数の受信部から出力される信号間の相互結合係数の3種類の未知変数を求める処理を行い、ステップ1として振幅位相偏差と相互結合係数を固定して到来方向を推定し、ステップ2として到来方向と相互結合係数を固定して振幅位相偏差を推定し、ステップ3として到来方向と振幅位相偏差を固定して相互結合係数を推定し、前記ステップ1からステップ3の処理を推定結果が収束するまで繰り返し実行することにより、前記偏差量を求めることにある。
【0020】
本発明の他の特徴は、到来波方向推定装置において、複数のアンテナ素子と、前記複数のアンテナ素子に対応して設けられ、対応するアンテナ素子より伝達される受信信号を前記アンテナ素子対応で処理する複数の受信部と、前記複数の受信部から出力される受信信号から前記複数の受信部から出力される信号間の相対的な偏差を推定する補正量算出手段と、前記複数の受信部から出力される受信信号を前記補正量算出手段により得られる偏差量を用いて補正し、これら補正された受信信号を用いて前記複数のアンテナ素子に到来する少なくともひとつの電波の到来方向を推定する到来方向推定手段と、を具備し、前記補正量算出手段は、ステップ1として振幅位相偏差と相互結合係数を固定して到来方向を推定し、ステップ2として到来方向と相互結合係数を固定して振幅位相偏差を推定し、ステップ3として振幅位相偏差と相互結合係数を固定して到来方向を推定し、ステップ4として到来方向と振幅位相偏差を固定して相互結合係数を推定し、前記ステップ1からステップ4の処理を推定結果が収束するまで繰り返し実行することにより、前記偏差量を求めることにある。
【0021】
本発明の他の特徴は、到来波方向推定装置において、複数のアンテナ素子と、前記複数のアンテナ素子に対応して設けられ、対応するアンテナ素子より伝達される受信信号を前記アンテナ素子対応で処理する複数の受信部と、前記複数の受信部から出力される受信信号から前記複数の受信部から出力される信号間の相対的な偏差を推定する補正量算出手段と、前記複数の受信部から出力される受信信号を前記補正量算出手段により得られる偏差量を用いて補正し、これら補正された受信信号を用いて前記複数のアンテナ素子に到来する少なくともひとつの電波の到来方向を推定する到来方向推定手段と、を具備し、前記到来波方向推定装置は、偏差量算出のためのひとつ或いは複数の電波の送信装置を有しており、前記電波の送信装置の電波発信位置は、前記到来波推定装置に対して相対的な方向が既知であり、前記補正量算出手段は、前記送信装置から発せられた既知の方向から到来する電波の受信信号を用いて、ステップ1として到来方向と相互結合係数を固定して振幅位相偏差を推定し、ステップ2として到来方向と振幅位相偏差を固定して相互結合係数を推定し、前記ステップ1とステップ2の処理を推定結果が収束するまで繰り返し実行することにより、前記偏差量を求めることにある。
【0022】
本発明の他の特徴は、到来波方向推定装置において、複数のアンテナ素子と、前記複数のアンテナ素子に対応して設けられ、対応するアンテナ素子より伝達される受信信号を前記アンテナ素子対応で処理する複数の受信部と、前記複数の受信部から出力される受信信号から前記複数の受信部から出力される信号間の相対的な偏差を推定する補正量算出手段と、前記複数の受信部から出力される受信信号を前記補正量算出手段により得られる偏差量を用いて補正し、これら補正された受信信号を用いて前記複数のアンテナ素子に到来する少なくともひとつの電波の到来方向を推定する到来方向推定手段と、を具備し、前記補正量算出手段は補正量記憶装置を有しており、偏差量を算出する毎に得られた偏差量を補正量記憶装置に記憶して記憶内容を更新し、前記補正量記億装置は、前記補正量算出装置によって算出された偏差量と、そのときの外気気温の両方を記憶することにある。
【0023】
本発明の他の特徴は、到来波方向推定装置において、複数のアンテナ素子と、前記複数のアンテナ素子に対応して設けられ、対応するアンテナ素子より伝達される受信信号を前記アンテナ素子対応で処理する複数の受信部と、前記複数の受信部から出力される受信信号から前記複数の受信部から出力される信号間の相対的な偏差を推定する補正量算出手段と、前記複数の受信部から出力される受信信号を前記補正量算出手段により得られる偏差量を用いて補正し、これら補正された受信信号を用いて前記複数のアンテナ素子に到来する少なくともひとつの電波の到来方向を推定する到来方向推定手段と、を具備し、前記補正量算出手段は補正量記憶装置を有しており、偏差量を算出する毎に得られた偏差量を補正量記憶装置に記憶して記憶内容を更新し、前記補正量記憶装置は、前記補正量算出装置によって算出された偏差量と、そのときの受信アナログ部の周りの気温の両方を記憶することにある。
【0024】
本発明の他の特徴は、到来波方向推定装置において、複数のアンテナ素子と、前記複数のアンテナ素子に対応して設けられ、対応するアンテナ素子より伝達される受信信号を前記アンテナ素子対応で処理する複数の受信部と、前記複数の受信部から出力される受信信号から前記複数の受信部から出力される信号間の相対的な偏差を推定する補正量算出手段と、前記複数の受信部から出力される受信信号を前記補正量算出手段により得られる偏差量を用いて補正し、これら補正された受信信号を用いて前記複数のアンテナ素子に到来する少なくともひとつの電波の到来方向を推定する到来方向推定手段と、を具備し、前記補正量算出手段は補正量記憶装置を有しており、偏差量を算出する毎に得られた偏差量を補正量記憶装置に記憶して記憶内容を更新し、前記補正量記憶装置は、前記補正量算出手段によって算出された偏差量と、そのときの時刻、日時の両方を記憶することにある。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の到来波方向推定装置の第1の実施形態に係る構成を示したブロック図である。到来波方向推定装置は、複数のアンテナ素子1a、…、1nと、複数のアンテナ素子1a、…、1nに対応して設けられ、対応するアンテナ素子より伝達される受信信号を処理する複数の受信アナログ部2a、…、2nと、受信アナログ部2a、…、2nの出力信号をデジタル変換するA/D変換器3a、…、3nと、複数の受信アナログ部2a、…、2nの相対的な偏差を推定する補正量算出手段4と、補正量算出手段4の出力する補正量を用いて複数のアンテナ素子1a、…、1nに到来するひとつ或いは複数の電波の到来方向を推定する到来方向推定手段5とから構成される。
【0035】
ここで、受信アナログ部2(受信アナログ部2a、…、2nの総称)は、所望信号を増幅する低雑音増幅器21と、所望の周波数帯域のみを抽出するフィルタ22と、周波数帯をRF(電波周波数)からBB(ベースバンド)又はIF(中間周波数)へ変換するための周波数変換器23とから構成されている。この受信アナログ部2は、受信信号を抽出し、周波数変換し、増幅する機能を有するものであれば、他のいかなる構成を有するものに置き換えて構わない。
【0036】
次に本実施形態の動作について説明する。補正量計算手段4は、ひとつ或いは複数の到来してくる電波の受信信号を用い、MUSIC(Multiple Signal Classification)アルゴリズムで推定される複数の電波の到来方向情報を利用して補正量を算出する第1の実施例の方法を採用している。
【0037】
ここで、複数のアンテナ素子1a、1nはどのようなものであっても良い。例えば、ダイポールアンテナを用いれば、水平面内で概略無指向性が得られるため、ひとつの到来波方向推定装置で360度をカバーできる。例えば、ホーンアンテナを用いれば各アンテナは指向性を有しており、限定した領域のみを到来波方向推定手段5でカバーすることになる。こうすると、領域が限定されるものの、後方からの到来波の影響を受けずに電波の方向を推定することができる。ここで、アンテナの放射パターンは予め測定しておき、到来方向推定手段5と補正量算出手段4において使用するものとする。
【0038】
次に受信アナログ部2であるが、ここでは、受信信号が低雑音増幅器21で増幅され、フィルタ22により所望の周波数帯域のみが抽出され、周波数変換器23により周波数がベースバンド(BB)または中間周波(IF)へ変換される。ここで、各受信アナログ部2a、…、2nは、偏差(ばらつき)を有しており、ブランチ毎に異なった通過特性を有することとなる。また、受信アナログ部2a、…、2n間には、シールドが完全でない場合に相互結合が生じることがある。つまり、ある受信アナログ部で受信した信号が、他の受信アナログ部へ漏れこむ現象が発生する。
【0039】
次に各受信信号は、各A/D変換器3a、…、3nによってデジタル信号に変換され、到来方向推定手段5において処理され、到来波の方向が推定される。
【0040】
一方、補正量算出手段4は、各A/D変換器3a、…、3nによってデジタル信号に変換された受信信号を用いて補正量を算出する。この補正量が正確に求まったならば、どのような偏差があったとしても(ケーブルが切断され振幅が0となった場合を除く)、それを補正できるものであり、精度良く到来波方向を推定できるようになる。また、到来波方向推定手段5は、どのような方法によって方向を推定するものでも構わない。MUSICアルゴリズムを用いても、ESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational In rariance Techniques)アルゴリズムを用いても、モノパルス側角であっても、ビームフォーマー法でも構わない。
【0041】
図2は受信アナログ部2の偏差を回路モデルで表した図である。複数のアンテナ1a、…、1nで受信した信号は、Γii(i=1〜n)(nは素子数)倍される。ここでΓiiは通過特性をあらわす複素数であり、振幅と位相の偏差を意味している。つまり、全てのΓiiがlexp(j0゜)ならば、通過特性はすべての受信アナログ部2a、…、2nで同一であることを意味している。一方、Γiiが受信アナログ部2a、…、2nによって異なる場合には、通過特性を補正する必要がある。
【0042】
次に、Γii倍された受信信号は、Cij(i=1〜n,j=1〜n)倍されて、他の受信アナログ部2に漏れこむ。Cijとは受信アナログ部i番目とj番目の相互結合係数である。ここで、Ciiは常に1である。また、Cij(i≠j)=0ならば、結合は発生していない状態を意味している。このように、受信アナログ部2a、…、2nでは、振幅位相偏差と相互結合の二つの補正をしなければならない未知変数がある。
【0043】
尚、振幅位相偏差と相互結合の2つは受信アナログ部2a、…、2nのどの部分に発生しているかは問題としない。つまり、受信アナログ部2の全体の偏差を求めることが重要であるからである。また、振幅位相偏差と相互結合の回路モデルの順番も問題ではない。なぜならば、順番を逆にしたとしても、受信アナログ部2の全体の偏差としては等価なものが得られるからである。
【0044】
次に補正量算出手段4であるが、ひとつ或いは複数の到来してくる電波の受信信号を用いるものである。つまり、任意の到来電波を使用することができるので、アダプティブアンテナ装置を運用中にリアルタイムにキャリブレーションを行うことができ、また、キャリブレーション用の特別な送信源を必要としない。そして、MUSICアルゴリズムで推定される複数の電波の到来方向情報を利用して補正量を算出する。
【0045】
一般的に、キャリブレーションが正確に行われていたならば、MUSICアルゴリズムによって推定される到来方向においては、図3の実線に示すように、鋭いピークを有するものとなる。なお、MUSICスペクトラムは、アンテナの放射パターンと、受信信号と、補正量(キャリブレーションデータ)から算出されるものである。しかしながら、偏差がある場合には、図3の破線に示すように推定方向のピークが鈍り、推定精度が劣化してしまう。
【0046】
ここでの補正量算出手段4は、MUSICによって得られるMUSICスペクトラムのピークを鋭くするように、補正量(図2におけるΓiiとCij)を算出するものである。算出する方法は、いかなる方法によっても良い。例えば、考えうる全ての組み合わせの補正量からもっともスペクトラムが鋭くなるものを選んでもよい。または、ジェネティックアルゴリズム(遺伝的手法)によっても良いし、ニューロを用いた方法でも良い。以下に、Γを求めるための計算方法の一例を示す。なお、この計算方法は文献(B.Friedlander,et al.,"Direction finding in the presence of mutual coupling,"IEEE Trans.Antenna and Propagation,vol.39,no.3,pp.273-284,March 1991.)を参考にしている。
【0047】
複数のアンテナ(ここではn素子)1a、…、1nで受信した受信ベクトルは以下の式で与えられる。
【0048】
X(t)=AS(t)+N(t)
ここでX(t)は受信ベクトル、Aは到来方向におけるアレイマニフォルド、S(t)は信号ベクトル、N(t)はノイズベクトルである。
【0049】
そして、偏差のある受信アナログ部2を通過した後の受信ベクトルX“(t)は以下のようになる。
【0050】
X“(t)=CΓAS(t)+N(t)
Γ=diag{Γ11、Γ22、…、Γnn}
Cは、要素Cijがi番目とj番目の受信アナログ部2の相互結合係数を意味する行列である。
【0051】
この例では、振幅位相Γiiを算出する方法を記述する。本計算では、以下の評価関数Jcを最小化する。この評価関数は、到来方向におけるMUS1Cスペクトラムの合計値の逆数を表している。つまり、MUSICスペクトラムの値の最大化を目的とするが、計算の都合上、逆数を用いて最小化を目指す。
【0052】
【数1】
ここで、Nは到来波の数、θmはm番目の波の到来方向、a(θm)はθm方
【外1】
前)の相関行列の雑音固有ベクトルから構成される行列である。
【0053】
また、δ=[Γ11,Γ22,…,Γmm]T,Q1(m)=diag{a (θm)}である。但し、Tは転置。
【0054】
このとき、Jcを最小化するΓiiは以下の式で与えられる。
【0055】
【数2】
MUSICのスペクトラムを鋭くするようにする補正量は、実際の補正量を表すものとなる。そこで、この補正量を到来方向推定手段5に反映することで、最適な到来方向を推定することができる。即ち、到来方向推定手段5は補正量算出手段4で算出された補正量を受け取ると、その逆数をA/D変換器3a、…、3nの出力に掛けて、アンテナの通過特性であるΓiiや他の受信アナログ部2との相互結合係数Cijにより生じる受信誤差を解消して、入力受信レベルを対応するアンテナ素子の本来の受信レベルと同じにする。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の到来波方向推定装置では、複数の電波の受信信号のみを用いて、MUSICアルゴリズムで得られる到来方向情報を利用し、補正量を算出(つまりキャリブレーション)できる。ここで、複数の電波の受信信号は、キャリブレーション用として特別に用意する必要はなく、実使用中の受信信号を用いるだけでよい。
【0057】
また、振幅位相、そして相互結合までもが、リアルタイムにキャリブレーションできるようになる。更に、新たなアナログ部品を必要とすることもなく、装置を安価に構成することができる。
【0058】
次に補正量算出手段4における第2の実施例の算出方法について図4のフローチャートを参照して説明する。始めに、振幅位相Γiiと相互結合係数Cijに初期値を与える(ステップ401)。初期値としては、前回のキャリブレーションデータが存在するならばその値を、まったく未知な場合には、偏差や相互結合がない条件で与えればよい。次に、振幅位相偏差と相互結合係数を固定して到来方向をMUSICアルゴリズムで推定する(ステップ402)。ここでは、振幅位相Γiiと相互結合係数Cijは固定である。
【0059】
次に到来方向と相互結合係数を固定して振幅位相偏差Γiiを推定する(ステップ403)。ここでは、到来方向と相互結合係数は固定である。Γiiは、MUSICスペクトラムのピークが到来方向においてより鋭くなる(大きな値になる)ように設定される。
【0060】
更に、到来方向と振幅位相偏差を固定して相互結合係数Cijを推定する(ステップ404)。ここでは、到来方向と振幅位相は固定である。Cijは、MUSICスペクトラムのピークが到来方向において鋭くなる(大きな値になる)ように設定される。このステップ402からステップ404の処理を繰り返し計算して、推定結果が収束して未知変数の値が変化しなくなったら計算を終了し(ステップ405)、補正量を到来方向推定手段5に出力する(ステップ406)。尚、ステップ403と404の処理における計算方法は、いかなる手法を用いても良い。
【0061】
この実施例は、効率的に補正量を算出する方法について記述している。未知パラメータとしては、電波の到来方向、振幅位相偏差、相互結合係数の3種類である。これらを同時に推定することは未知パラメータの数が膨大になり、リアルタイムにキャリブレーションを行う場合に問題になる。そこで、これら3種類の未知変数を同時に算出するのではなく、順番に算出し、結果が収束するまで繰り返し求めていくものである。
【0062】
このアルゴリズムを用いた場合の補正量算出結果の一例を示す。アンテナは6素子の円形アレイで、誤差として図5に示す振幅位相を設定した。このときの上記アルゴリズムを用い、ステップ402からステップ404の処理を繰り返し行った結果を図5に示す。尚、振幅位相の初期値としては、誤差のない値を用いている。また、振幅位相を求める計算は、第1の実施例で記述した方法で行った。図5より、初期値として誤差のない条件を用いているにも拘らず、補正量が計算できていることがわかる。値としては、100%真の値にはなっていないが、十分キャリブレーションデータとして使用できる値になっている。
【0063】
以上のように、本実施例によれば、未知変数を繰り返し計算で求めるため、効率的に計算することができるようになり、リアルタイムでのキャリブレーションを行うに際して高価な高速の計算機を用いなくともよく、装置を安価に構成することに大いに貢献することとなる。
【0064】
次に補正量算出手段の第3の実施例の算出方法について図6のフローチャートを参照して説明する。始めに、振幅位相Γiiと相互結合係数Cijに初期値を与える(ステップ601)。初期値としては、前回のキャリブレーションデータが存在するならばその値を、まったく未知な場合には、偏差や相互結合がない条件で与えればよい。次に、振幅位相偏差と相互結合係数を固定して到来方向をMUSICアルゴリズムで推定する(ステップ602)。ここでは、振幅位相Γiiと相互結合係数Cijは固定である。次に到来方向と相互結合係数を固定して振幅位相偏差Γiiを推定する(ステップ603)。ここでは、到来方向と相互結合係数は固定である。Γiiは、MUSICスペクトラムのピークが到来方向においてより鋭くなる(大きな値になる)ように設定される。次に、振幅位相偏差と相互結合係数を固定して到来方向をMUSICアルゴリズムで推定する(ステップ604)。ここでは、振幅位相Γiiと相互結合係数Cijは固定である。
【0065】
更に、到来方向と振幅位相偏差を固定して相互結合係数Cijを推定する(ステップ605)。ここでは、到来方向と振幅位相は固定である。Cijは、MUSICスペクトラムのピークが到来方向において鋭くなる(大きな値になる)ように設定される。このステップ602からステップ605の処理を繰り返し計算して、推定結果が収束して未知変数の値が変化しなくなったら計算を終了し(ステップ606)、補正量を到来方向推定手段5に出力する(ステップ607)。
【0066】
本実施例では、図4で示した第2の実施例に対して、計算順序を変え、特に到来波推定方向の算出をステップ602とステップ604の処理で2回行っている。
【0067】
本実施例においては、図6に示したように、到来方向の推定→振幅位相算出→到来方向の推定→相互結合係数算出→…としている。このようにすると、到来方向推定のステップがひとつ増えて計算量が増加するように見えるが、繰り返し回数が減少する効果が期待できる。以下にその理由を説明する。
【0068】
図4では、ステップ403で補正量が算出されるが、補正後のデータを用いて到来方向を推定し直すと、方向が変化している場合がある。つまり、図4に示したようなステップを踏むと、ステップ402で推定した到来方向と、ステップ403で補正したデータを用いて改めて推定した到来方向は異なっている場合がある。ここで、このままステップ404で補正を行うが、ステップ402の到来方向のデータと、ステップ403の補正データは整合が取れていないために、ステップ404で求まる補正量には誤差が含まれている場合がある。
【0069】
そこで、本実施例では、振幅位相の補正量を算出した後に、ステップ604で到来方向を推定する。そして、相互結合係数の算出を行う。その結果、相互結合係数の算出においては、誤差を含まない形で求めることができるので、繰り返し回数を少なくして補正量を求めることができるようになる。
【0070】
以上説明したように、本実施例によれば、補正量を算出した後に毎回到来方向を推定し直すので、誤差のない補正量算出が実現でき、その結果、少ない繰り返し回数で算出結果が収束し、リアルタイムでのキャリブレーションをより早く行うことができる。
【0071】
また、振幅位相補正量が相互結合補正量に比ベて明らかに大きい場合には、ステップ602、603、602、603、602、604、602、603、602、603、602、604、…、と、振幅位相の補正量を求める回数を増やすことで、更に繰り返し回数を減少させる効果も期待できる。
【0072】
図7は本発明の到来波方向推定装置の第2の実施形態の構成を示した図である。本例の到来波方向推定装置100は、図7に示すように、補正量算出のためのひとつ或いは複数の電波の送信装置9a、9bを有している。また、前記電波の送信装置9a、9bは、前記到来波推定装置100に対しての相対的な方向が既知となっている。尚、本例の到来波方向推定装置100は図1に示した第1の実施形態と同様であるため、以降、図1を借用して説明する。
【0073】
図8は図7に示した到来波方向推定装置の補正量算出手段4の補正量算出方法の実施例を示したフローチャートである。本例の補正量算出手段4は、図7に示すように既知の方向から到来する送信装置9a、9bから送信された電波の受信信号を用いて、振幅位相Γiiと相互結合係数Cijを繰り返し計算して補正量を算出する。
【0074】
始めに、振幅位相Γiiと相互結合係数Cijに初期値を与える(ステップ801)。初期値としては、前回のキャリブレーションデータが存在するならばその値を、まったく未知な場合には、偏差や相互結合がない条件で与えればよい。
【0075】
次に到来方向(これは既知である)と相互結合係数を固定して振幅位相偏差Γiiを推定する(ステップ802)。ここでは、到来方向と相互結合係数は固定である。ΓiiはMUSICスペクトラムのピークが到来方向においてより鋭くなる(大きな値になる)ように設定される。
【0076】
更に、到来方向と振幅位相偏差を固定して相互結合係数Cijを推定する(ステップ803)。ここでは、到来方向と振幅位相は固定である。Cijは、MUSICスペクトラムのピークが到来方向において鋭くなる(大きな値になる)ように設定される。このステップ802からステップ803の処理を繰り返し計算して、推定結果が収束して未知変数の値が変化しなくなったら計算を終了し(ステップ804)、補正量を到来方向推定手段5に出力する(ステップ805)。
【0077】
本実施例では、効率的に補正量を算出する方法について記述している。本例では、既知の方向の波源からの電波の受信信号を用いているため、未知パラメータとしては、振幅位相偏差、相互結合係数の2種類だけである。つまり、未知パラメータであった到来方向が既知の条件となり、この条件で補正量を推定する。従って、方向推定の計算がまつたく不要になるので処理量も減少する。また、方向が既知であるので、最終的に得られる補正量の精度の向上が期待できる。
【0078】
図9に方向が既知とした場合の補正量の算出結果を示す。シミュレーション条件は図5と同じである。図5に示した未知の方向からの受信信号を用いた場合に比べて、精度良く補正量を算出できていることが分かる。
【0079】
尚、本例は、ひとつのみの送信装置を用いても、補正量は算出できる。しかし、複数の送信装置を用いることで、送信装置の位置ずれ、送信装置と到来波推定装置の間の伝搬環境の変化、送信装置の故障、などに対する対応が可能となり、補正量を安定且つ更に精度良く算出することができる。
【0080】
以上説明したように、本実施形態によれば、補正量を算出するための電波の送信装置を用いて補正量を算出することで、処理量を大幅に少なくでき、また、精度の高い補正量が得られるキャリブレーションをリアルタイムに行うことができる。
【0081】
図10は本発明の到来波方向推定装置の第3の実施形態の構成を示したブロック図である。但し、図1に示した第1の実施形態と同様の部分には同一符号を用い、且つ適宜その説明を省略する。到来波方向推定装置は、複数のアンテナ素子1a、…、1nと、複数のアンテナ素子1a、…、1nに対応して設けられ、対応するアンテナ素子より伝達される受信信号を処理する複数の受信アナログ部2a、…、2nと、受信アナログ部2a、…、2nの出力信号をデジタル変換するA/D変換器3a、…、3nと、複数の受信アナログ部2a、…、2nの相対的な偏差を推定する補正量算出手段4と、補正量算出手段4の出力する補正量を用いて複数のアンテナ素子1a、…、1nに到来するひとつ或いは複数の電波の到来方向を推定する到来方向推定手段5及び補正量が算出される毎に、新たな補正量を記憶して記憶内容を更新する補正量記憶装置6を有している。
【0082】
次に本実施形態の動作について説明する。本例の到来波方向推定動作、特に補正量算出手段4による補正量の算出動作は第1の実施形態のそれと同様である。異なる動作は、補正量算出手段4により算出された補正量を補正量記憶装置6によって記憶しているところにある。
【0083】
本実施形態でも、補正量はリアルタイムに補正することが可能であるが、短時間の変動が小さい場合には、ある一定の時間間隔で補正すれば十分である。この場合には、補正量記憶装置6に記憶された補正量を用いて到来波方向の推定を間欠的に行えばよく、装置及び本装置を含むシステムの負荷を減らすことができる。また、補正量を計算する時の初期値として、補正量記憶装置6内の補正量を用いれば、補正量算出アルゴリズムの収束時間を短くすることができる。
【0084】
以下、上記した補正量記憶装置6内の補正量を用いて、到来波の推定を行う動作の実施例について説明する。
【0085】
本例の補正量算出手段4は、補正量記億装置6に記憶された過去の補正量を利用して、次の補正量を予測する。
【0086】
ここで、補正量をリアルタイムに算出することは、精度を向上させる上では重要である。しかし、補正量の算出回数を減らし、その空いた時間には、補正量を算出するための計算リソースを到来方向推定アルゴリズムに利用し、方向推定に係る計算時間を短くすることはリアルタイム処理にとっては非常に重要である。
【0087】
そこで、本例では、補正量記憶装置6に記憶された過去の補正量から現時点での補正量を予測し、その補正量を用いて電波の到来方向を推定する。
【0088】
補正量を予測する方法の具体例を以下に示す。第1の例として補正量を線形補間で予測する。図11は振幅位相の振幅を線形補間で予測する方法を示した例である。横軸は補正回数、縦軸は補正振幅量を表している。過去の2回の振幅補正量から現在の補正量を一次の線形補間で予測する。ここで、過去の3回およびそれ以上のデータを用いて2次の近似から予測することもできる。
【0089】
第2の例として、補正量算出手段4によって算出された補正量と、そのときの外気気温の両方を補正量記憶装置6に記憶することで予測することもできる。受信アナログ部2の偏差が外気気温に相関がある場合がある。つまり、外気気温が分かっていれば、受信アナログ部2の偏差が予測できる場合がある。このような場合には、外気気温をモニターすることで、補正量を予測することもできる。または、受信アナログ部2が外気気温とは関わりがなく、受信アナログ部2を含んでいる装置内の気温と関わりがある場合がある。つまり、装置内の機器の発生する熱によって外気と装置内の温度差が異なる場合がある。この場合には、装置内の気温と補正量を補正量記憶装置6に記憶することが有効である。
【0090】
第3の例として、補正量算出手段4によって算出された補正量と、そのときの時刻の両方を補正量記憶装置6に記憶する。例えば、構内無線や、移動体通信の基地局では、使用時間と使用頻度の間には相関がある。つまり、工場内の構内無線では、昼間に使用される頻度が高く、屋外の基地局では、社会人の仕事が終わった時間帯に使用される頻度が高い。使用する頻度が高いと、機器内の発生する熱量も多くなり、装置内の温度が上昇する。つまり、時刻と気温の間にも相関がある。そして、先に説明したように、気温と補正量の間にも相関がある。つまり、時刻と気温の間に相関がある。つまり、時刻と補正量を補正量記憶装置6に記憶しておくことは有効なことである。また、時刻によって外気の気温に変化がある。また、季節によって外気の差がある。そこで、時刻のほかにも、日時も記憶することは有効なことである。
【0091】
また、記憶された離散的な時刻や日時と補正量の値から、線形補間によって記憶されていない時刻や日時における補正量を予測することも有効である。
【0092】
同様に、記憶された離散的な気温と補正量の値から、線形補間によって記憶されていない気温における補正量を予測することも有効である。
【0093】
更に、上記した気温、装置内部の温度、時刻や日時により、補正量算出時の初期値の設定をより適切なものにすることもできる。
【0094】
尚、上記の各実施形態では、到来方向推定装置での説明であったが、同様に、アダプティブアンテナ装置の受信系の補正としてもまったく同様に用いることができる。
【0095】
また、上記の各実施形態で得られる補正量と受信で用いたアダプティブアンテナ装置の重みから、送信に用いるべき重みを逆算することも勿論可能である。このときには、別に用意した送信用のキャリブレーションデータを必要とする。特にTDMA/TDDシステムでは、送受で同一のパターンが要求されるので、有効である。以上の説明では、相互結合係数の補正量を算出していたが、受信アナログ部のシールドが精度良く構成されている場合には、相互結合係数を無視することができる。このような場合には、振幅位相の補正量のみを算出すればよい。また、以上の説明に用いた複数の実施形態を組み合わせて到来方向推定装置を構成することも勿論、可能である。
【0096】
更に、本発明は上記実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲において、具体的な構成、機能、作用、効果において、他の種々の形態によっても実施することができる。
【0097】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、運用中の受信データを用いてリアルタイムに高精度なキャリブレーションを行うことができ、到来波方向推定精度を向上させることができる。また、キャリプレーション用の送信装置を用いることで、さらに、精度の良い補正を行うことができるようになる。また、過去の補正量を記憶しておくことで、現時点での補正量を線形補間などで簡易に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の到来波方向推定装置の第1の実施形態に係る構成を示したブロック図である。
【図2】図1に示した受信アナログ部の偏差を回路モデルで表した等価回路図である。
【図3】図1に示した補正量算出手段で用いるMUSICスペクトラムの特性を示した特性図である。
【図4】図1に示した補正量算出手段における補正量算出方法の第2の実施例を示したフローチャートである。
【図5】図1に示した補正量算出手段により算出される振幅位相Γiiの設定値と計算値を示した表図である。
【図6】図1に示した補正量算出手段における補正量算出方法の第3の実施例を示したフローチャートである。
【図7】本発明の到来波方向推定装置の第2の実施形態に係る構成を示したブロック図である。
【図8】図7に示した補正量算出手段における補正量算出方法の実施例を示したフローチャートである。
【図9】図7に示した補正量算出手段により算出される振幅位相Γiiの設定値と計算値を示した表図である。
【図10】本発明の到来波方向推定装置の第3の実施形態に係る構成を示したブロック図である。
【図11】図10の補正量算出手段により求められる振幅量の線形補間方法を説明する図である。
【図12】従来のアダプティブアンテナ装置の構成例を示したブロック図である。
【図13】図12の装置における送信パターンと受信パターン例を示した図である。
【図14】従来の到来波方向推定装置の構成例を示したブロック図である。
【符号の説明】
1a、1n アンテナ素子
2a、2n 受信アナログ部
3a、3n A/D変換器
4 補正量算出手段
5 到来方向推定手段
6 補正量記憶装置
9a、9n 送信装置
21 低雑音増幅器
22 フィルタ
23 周波数変換器
100 到来波方向推定装置
Claims (6)
- 複数のアンテナ素子と、
前記複数のアンテナ素子に対応して設けられ、対応するアンテナ素子より伝達される受信信号を前記アンテナ素子対応で処理する複数の受信部と、
前記複数の受信部から出力される受信信号から前記複数の受信部から出力される信号間の相対的な偏差を推定する補正量算出手段と、
前記複数の受信部から出力される受信信号を前記補正量算出手段により得られる偏差量を用いて補正し、これら補正された受信信号を用いて前記複数のアンテナ素子に到来する少なくともひとつの電波の到来方向を推定する到来方向推定手段と、を具備し、
前記補正量算出手段は、ひとつ或いは複数の電波の到来方向と、複数の受信部から出力される信号間の振幅位相偏差と、複数の受信部から出力される信号間の相互結合係数の3種類の未知変数を求める処理を行い、ステップ1として振幅位相偏差と相互結合係数を固定して到来方向を推定し、ステップ2として到来方向と相互結合係数を固定して振幅位相偏差を推定し、ステップ3として到来方向と振幅位相偏差を固定して相互結合係数を推定し、前記ステップ1からステップ3の処理を推定結果が収束するまで繰り返し実行することにより、前記偏差量を求めることを特徴とする到来波方向推定装置。 - 複数のアンテナ素子と、
前記複数のアンテナ素子に対応して設けられ、対応するアンテナ素子より伝達される受信信号を前記アンテナ素子対応で処理する複数の受信部と、
前記複数の受信部から出力される受信信号から前記複数の受信部から出力される信号間の相対的な偏差を推定する補正量算出手段と、
前記複数の受信部から出力される受信信号を前記補正量算出手段により得られる偏差量を用いて補正し、これら補正された受信信号を用いて前記複数のアンテナ素子に到来する少なくともひとつの電波の到来方向を推定する到来方向推定手段と、を具備し、
前記補正量算出手段は、ステップ1として振幅位相偏差と相互結合係数を固定して到来方向を推定し、ステップ2として到来方向と相互結合係数を固定して振幅位相偏差を推定し、ステップ3として振幅位相偏差と相互結合係数を固定して到来方向を推定し、ステップ4として到来方向と振幅位相偏差を固定して相互結合係数を推定し、前記ステップ1からステップ4の処理を推定結果が収束するまで繰り返し実行することにより、前記偏差量を求めることを特徴とする到来波方向推定装置。 - 複数のアンテナ素子と、
前記複数のアンテナ素子に対応して設けられ、対応するアンテナ素子より伝達される受信信号を前記アンテナ素子対応で処理する複数の受信部と、
前記複数の受信部から出力される受信信号から前記複数の受信部から出力される信号間の相対的な偏差を推定する補正量算出手段と、
前記複数の受信部から出力される受信信号を前記補正量算出手段により得られる偏差量を用いて補正し、これら補正された受信信号を用いて前記複数のアンテナ素子に到来する少なくともひとつの電波の到来方向を推定する到来方向推定手段と、を具備し、
前記到来波方向推定装置は、偏差量算出のためのひとつ或いは複数の電波の送信装置を有しており、前記電波の送信装置の電波発信位置は、前記到来波推定装置に対して相対的な方向が既知であり、
前記補正量算出手段は、前記送信装置から発せられた既知の方向から到来する電波の受信信号を用いて、ステップ1として到来方向と相互結合係数を固定して振幅位相偏差を推定し、ステップ2として到来方向と振幅位相偏差を固定して相互結合係数を推定し、前記ステップ1とステップ2の処理を推定結果が収束するまで繰り返し実行することにより、前記偏差量を求めることを特徴とする到来波方向推定装置。 - 複数のアンテナ素子と、
前記複数のアンテナ素子に対応して設けられ、対応するアンテナ素子より伝達される受信信号を前記アンテナ素子対応で処理する複数の受信部と、
前記複数の受信部から出力される受信信号から前記複数の受信部から出力される信号 間の相対的な偏差を推定する補正量算出手段と、
前記複数の受信部から出力される受信信号を前記補正量算出手段により得られる偏差量を用いて補正し、これら補正された受信信号を用いて前記複数のアンテナ素子に到来する少なくともひとつの電波の到来方向を推定する到来方向推定手段と、を具備し、
前記補正量算出手段は補正量記憶装置を有しており、偏差量を算出する毎に得られた偏差量を補正量記憶装置に記憶して記憶内容を更新し、
前記補正量記億装置は、前記補正量算出装置によって算出された偏差量と、そのときの外気気温の両方を記憶することを特徴とする到来波方向推定装置。 - 複数のアンテナ素子と、
前記複数のアンテナ素子に対応して設けられ、対応するアンテナ素子より伝達される受信信号を前記アンテナ素子対応で処理する複数の受信部と、
前記複数の受信部から出力される受信信号から前記複数の受信部から出力される信号間の相対的な偏差を推定する補正量算出手段と、
前記複数の受信部から出力される受信信号を前記補正量算出手段により得られる偏差量を用いて補正し、これら補正された受信信号を用いて前記複数のアンテナ素子に到来する少なくともひとつの電波の到来方向を推定する到来方向推定手段と、を具備し、
前記補正量算出手段は補正量記憶装置を有しており、偏差量を算出する毎に得られた偏差量を補正量記憶装置に記憶して記憶内容を更新し、
前記補正量記憶装置は、前記補正量算出装置によって算出された偏差量と、そのときの受信アナログ部の周りの気温の両方を記憶することを特徴とする到来波方向推定装置。 - 複数のアンテナ素子と、
前記複数のアンテナ素子に対応して設けられ、対応するアンテナ素子より伝達される受信信号を前記アンテナ素子対応で処理する複数の受信部と、
前記複数の受信部から出力される受信信号から前記複数の受信部から出力される信号間の相対的な偏差を推定する補正量算出手段と、
前記複数の受信部から出力される受信信号を前記補正量算出手段により得られる偏差量を用いて補正し、これら補正された受信信号を用いて前記複数のアンテナ素子に到来する少なくともひとつの電波の到来方向を推定する到来方向推定手段と、を具備し、
前記補正量算出手段は補正量記憶装置を有しており、偏差量を算出する毎に得られた偏差量を補正量記憶装置に記憶して記憶内容を更新し、
前記補正量記憶装置は、前記補正量算出手段によって算出された偏差量と、そのときの時刻、日時の両方を記憶することを特徴とする到来波方向推定装置。
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