JP3638343B2 - Fmダイバーシティ受信機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はFMダイバーシティ受信機に関し、特に移動体に搭載され、多重化されたデータの受信エラーを防止するFMダイバーシティ多重放送受信機に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記FMダイバーシティ受信機に、1チューナ方式ダイバーシティが採用され、これにより、19kHzパイロット信号のレベル変動を検出することにより、マルチパス検出を行っているものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、FM放送界では、新たに移動体に対するFM多重放送が開始される。この放送の受信においては、音声のみならずデータ受信という要素が加わる。しかしながら、従来のダイバーシティ方式では音声を良好に受信するための技術であり、FM多重データ受信に対して最適になるものではないとの問題がある。すなわち、FM多重データ受信でのデータエラーとマルチパス歪みとの関係が完全に一致していない場合があり、たとえばFM多重データの方が音声品質より高い入力レベルからデータエラーが発生するので、マルチパス歪みがなく音声品質が良くてもデータエラーが発生するとの問題がある。特に、移動体がビルの影になったり、放送局から離れたときのように弱入力となった場合には、マルチパス検出だけではデータエラーの発生を防止できない。このためにFM音声受信とFM多重データとで最適受信法を異なるようにした場合、両方を同時に良好に受信する必要がある。
【0004】
また、FM多重受信では、データ伝送品質を確保するため、誤り訂正符号化が行われているが、短い期間のエラーは、訂正符号で正しいデータに訂正して受信することができる。このため訂正可能な状態でのダイバーシティ動作は、アンテナの切換頻度を高めるとの問題がある。
また、アンテナ切換頻度が高い場合には不要な切換を強制的に抑制する必要がある。
【0005】
したがって、本発明は、上記課題に鑑み、音声の受信と同時にデータ受信の性能向上を行うことができるFMダイバーシティ受信機を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記問題点を解決するために、次の構成を有するFMダイバーシティ受信機を有する。すなわち、音声信号とデータ信号とを多重化したFM放送波を受信する2つのアンテナを有し、受信状況の良い方の放送波を選択するFMダイバーシティ受信機に、前記2つのアンテナの1つを選択するためのアンテナ切換回路と、前記2つのアンテナの1つに接続され、高周波増幅器、局部発振器、ミクサ、チャンネル同調回路を収容するフロントエンドと、該フロントエンドに接続され、変調信号を元のコンポジット信号に戻す復調回路とが設けられる。マルチパス検出部は、該復調回路からの前記コンポジット信号から抽出した信号レベルの変動を検出して変動レベルが一定のスレシュホールド電圧を越えたときにマルチパス検出信号を出力する。データエラー検出部は、前記復調回路からのSレベルが基準値よりも小さくなるときに前記データのエラー検出信号を出力する。アンテナ選択信号発生部は、前記マルチパス検出信号及び前記データエラー検出信号のいずれかを前記アンテナ切換回路へのアンテナ選択信号として形成する。
【0007】
前記データエラー検出部は、前記基準値以下である前記Sレベルが一定時間だけ継続する場合に、データエラー検出信号を出力するようにしてもよい。
前記データエラー検出部は、データ信号の受信の有無を検出してデータ信号の受信が無い場合には、前記基準値の値を小さくしてデータエラー検出信号の出力を抑制するようにしてもよい。
【0008】
さらに、スレシュホールド電圧変更部が設けられ、該スレシュホールド電圧変更部は、前記マルチパス検出部において前記変動レベルが前記スレシュホールド電圧を越える場合には、このスレシュホールド電圧を大きくする変更を行ってもよい。
前記マルチパス検出部は、前記マルチパス検出信号を積分する誤検出防止回路を有し、該誤検出防止回路は、前記マルチパス検出信号を積分して、外部から侵入する時間幅の小さいノイズを除去するようにしてもよい。
【0009】
さらに、アンテナ制御補助回路が設けられ、該アンテナ制御補助回路は前記2つのアンテナの選択の発生頻度が所定値以上になった場合には、前記2つのアンテナの時間的な選択割合を比較し、2つのアンテナのうち前記選択割合が大きい方を選択するようにしてもよい。
前記アンテナ制御補助回路は、前記2つのアンテナの選択の発生頻度を、前記アンテナ切換回路に出力されるアンテナ選択信号の立ち上がり、立ち下がりで計測するようにしてもよい。
【0010】
前記前記マルチパス検出部は、検出範囲変更部を有し、該検出範囲変更部は前記復調回路からのパイロット信号の有無を判別しステレオ又はモノラルの区別を行って、この区別を基に、前記コンポジット信号から抽出した信号レベルの変動の検出範囲を変更するようにしてもよい。
前記マルチパス検出部は、前記復調回路の前記コンポジット信号からパイロット信号を抽出して変動信号を形成するようにしてもよい。
【0011】
前記マルチパス検出部は、前記復調回路の前記コンポジット信号からデータ信号の周波数を越える高域ノイズレベルをを抽出して変動信号を形成するようにしてもよい。
前記マルチパス検出部は、前記復調回路の前記コンポジット信号から周波数76kHzのデータ信号を抽出してFM多重データ処理を行うための前記76kHzバンドパスフィルタの出力を分岐して、変動信号を形成するようにしてもよい。
【0012】
前記マルチパス検出部は、前記76kHzバンドパスフィルタの抽出信号を、FFTを用いて、周波数分析し、周波数分析の結果のレベルが所定範囲から外れるレベル変動を検出しこれをマルチパス検出信号として求めるようにしてもよい。
前記マルチパス検出部は、前記76kHzバンドパスフィルタの抽出信号を複数のバントパスフィルタを用いて周波数分析し、周波数分析の結果のレベルが、複数のレベル判別器を用いて、所定範囲から外れるレベル変動を検出しこれをマルチパス検出信号として求めるようにしてもよい。
【0013】
前記マルチパス検出部は、前記2つのアンテナに切換を低減する切換低減部を有し、該切換低減部は前記復調回路からの前記コンポジット信号から抽出した信号レベルの変動を検出して変動レベルが一定のスレシュホールド電圧を越えたときにマルチパス検出信号を出力した後一定期間内のマルチパス検出信号の出力を阻止するようにしてもよい。
【0014】
前記切換低減部は、前記マルチパス検出信号のレベルが一定のスレシュホールド電圧を越える場合に時間の計測を開始し、一定の時間になるまで計測し、この間、マルチパス検出信号の出力を阻止するようにしてもよい。
本発明によれば、マルチパス検出部は、該復調回路からの前記コンポジット信号から抽出した信号レベルの変動を検出して変動レベルが一定のスレシュホールド電圧を越えたときにマルチパス検出信号を出力し、データエラー検出部は、前記復調回路からのSレベルが基準値よりも小さくなるときに前記データのエラー検出信号を出力する。アンテナ選択信号発生部は、前記マルチパス検出信号及び前記データエラー検出信号のいずれかを前記アンテナ切換回路へのアンテナ選択信号として形成することにより、移動体がビルの影になったり、放送局から離れたときのように弱入力となった場合のようにマルチパス検出によるダイバシティだけでは改善できない弱入力に対してビットエラーを低減でき、FM多重受信品質の改善が可能になり、全体にFM多重受信の品質が向上する。
【0015】
前記データエラー検出部は、前記基準値以下である前記Sレベルが一定時間だけ継続する場合に、データエラー検出信号を出力することにより、よりきめ細かなFM多重受信限界が判定でき不必要なダイバシティ切換による逆効果を防ぐことができる。
前記データエラー検出部は、データ信号の受信の有無を検出してデータ信号の受信が無い場合には、前記基準値の値を小さくしてデータエラー検出信号の出力を抑制することにより音声、FM多重受信ともに良好な受信品質を得ることができる。
【0016】
さらに、スレシュホールド電圧変更部が設けられ、該スレシュホールド電圧変更部は、前記マルチパス検出部において前記変動レベルが前記スレシュホールド電圧を越える場合には、このスレシュホールド電圧を大きくする変更を行うことにより、小さな変動レベルに対してはアンテナ切換頻度を強制的に低減し不要な切換を低減する。
【0017】
前記マルチパス検出部は、前記マルチパス検出信号を積分する誤検出防止回路を有し、該誤検出防止回路は、前記マルチパス検出信号を積分して、外部から侵入する時間幅の小さいノイズを除去することにより、車載用の場合、エンジンのイグニッションのノイズが電源ラインを伝わってくるが、これにより誤動作を防止できる。
【0018】
さらに、アンテナ制御補助回路が設けられ、該アンテナ制御補助回路は前記2つのアンテナの選択の発生頻度が所定値以上になった場合には、具体的には前記アンテナ切換回路に出力されるアンテナ選択信号の立ち上がり、立ち下がりで計測して、前記2つのアンテナの時間的な選択割合を比較し、2つのアンテナのうち前記選択割合が大きい方を選択することにより、メイン、サブの両アンテナがマルチパス妨害を受けているときであってもより受信状況の良い方のアンテナを選択することができる。
【0019】
前記前記マルチパス検出部は、検出範囲変更部を有し、該検出範囲変更部は前記復調回路からのパイロット信号の有無を判別しステレオ又はモノラルの区別を行って、この区別を基に、前記コンポジット信号から抽出した信号レベルの変動の検出範囲を変更することにより、レベル変動検出のより最適なスレシュホールド電圧を設定することができる。
【0020】
前記マルチパス検出部は、前記復調回路の前記コンポジット信号からパイロット信号、データ信号の周波数を越える高域ノイズレベル、前記76kHzバンドパスフィルタの出力を分岐信号から具体的には変動信号を形成することができ、特に、前記76kHzバンドパスフィルタの抽出信号を用いる場合には、上記のように、パイロットフィルタ、高域ノイズ抽出用のフィルタが不要であり、FM多重データ処理に使用するバンドパスフィルタが使用でき、データと相関の高いマルチパス検出が可能になり音声体の高周波歪みを影響が受け難くい。
【0021】
前記マルチパス検出部はFFT又は複数のバンドパスフィルタを用いて、前記76kHzバンドパスフィルタの抽出信号を周波数分析し、周波数分析の結果のレベルが所定範囲から外れるレベル変動を検出しこれをマルチパス検出信号として求めることにより、より詳細なレベル変動を基にマルチパス検出が可能になる。
【0022】
前記マルチパス検出部の切換低減部は前記復調回路からの前記コンポジット信号から抽出した信号レベルの変動を検出して変動レベルが一定のスレシュホールド電圧を越えたときにマルチパス検出信号を出力した後一定期間内のマルチパス検出信号の出力を阻止することにより、過渡のアンテナ切換を防止する。
前記切換低減部は、前記マルチパス検出信号のレベルが一定のスレシュホールド電圧を越える場合に時間の計測を開始し、一定の時間になるまで計測し、この間、マルチパス検出信号の出力を阻止することにより、上記と同様に過度のアンテナ切換を防止する。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係るFMダイバーシティ受信機を示す図である。本図に示すように、移動体に搭載されるFMダイバーシティ受信機は、二つのアンテナ1−1(メイン側)、1−2(サブ側)と、アンテナ1−1、1−2の一方に切り換えるアンテナ切換回路2と、アンテナ切換回路2に接続されRF増幅器、局部発振器、ミクサ、チャンネル同調回路などを収容するフロントエンド3と、フロントエンド3に接続され変調信号を元の信号に戻しコンポジット信号を形成する復調回路4と、音声処理を行うために、復調回路4に接続されコンポジット信号を復調し音声信号としてステレオ信号を形成するステレオ復調回路5と、音声信号を電力増幅するパワーアンプ6と、パワーアンプ6により駆動されるスピーカ7と、FM多重データ処理 行うために、前記復調回路4に接続されコンポジット信号から76kHzのデータ信号を抽出する76kHzバンドパスフィルタ8と、76kHzバンドパスフィルタ8に接続されデータ信号を復調しデコードするFM多重復調・デコード部9と、FM多重復調・デコード部9に接続されデータを表示するFM多重データ表示部10と、ダイバーシティ制御処理を行うために、復調回路4からのコンポジット信号を共にマルチパスを検出するマルチパス検出部11と、復調回路4から受信電界レベル信号であるSレベル信号の低下を検出して前記データ信号のエラーを防止するためのデータエラー検出部12と、マルチパス検出部11とデータエラー検出部12との出力信号を入力する論理和(OR)回路23と、アンテナ切換回路2にアンテナ選択信号を発生するため論理和回路23の信号の立ち上がりで反転するための双安定マルチバイブレータからなるアンテナ選択信号発生部24とを具備する。
【0024】
図2は移動体FM多重放送の周波数配置を説明する図である。本図に示すように、移動体FM多重放送の周波数配置として、周波数が小さい順に、メイン信号(L+R)、パイロット信号、サブ信号(L−R)、FM多重データが配置される。パイロット信号(19Hz)、FM多重データの信号レベルは正常時に4〜10%の範囲にある。
【0025】
マルチパス検出部11はコンポジット信号からパイロット信号を検出するフィルタを有するパイロット信号検出部20と、パイロット信号検出部20に接続され検出パイロット信号のレベル変動を検出するレベル変動検出部21と、レベル変動検出部21に接続されレベル変動信号とスレシュホールド電圧とを比較するコンパレータからなりアンテナ切換信号を発生するスレシュホールド電圧比較部22とを具備する。
【0026】
図3は図1のレベル変動検出部21を示す図である。本図に示すように二つの減算回路からなり、それぞれの減算回路の一方の入力端子へのスレシュホールドVth1、Vth2(Vth1>Vth2)とし、入力信号vi、出力信号voとすると、上段の減算回路により、
vo=vi−Vth1
を得る。そして、減算回路の後段のダイオードにより、vo≧0となる。また、下段の減算回路により、
vo=Vth2−vi
を得る。そして、減算回路の後段のダイオードにより、vo≧0となる。
【0027】
図2のスレシュホールド電圧Vth1は前記信号レベル10%に対応し、同様にVth2は前記信号レベルの4%に対応する。
このようにして、マルチパス歪みによりアンテナを切り換えるダイバーシティ制御を行って音声品質の劣化を防止可能とする。
データエラー検出部12は、復調回路4からのSレベル信号を反転端子に入力し、多重データ受信限界電界レベルを示す基準電圧Vr1を非反転端子に入力する比較器31と、一方が比較器31の出力に接続され他方が論理和23に接続されるコンデンサ32と、コンデンサ32の出力側にカソードが接続されアノードが接地されるダイオード33とを具備し、コンデンサ32とダイオード33とで検出立ち上がり時にパルスを発生する。基準電圧Vr1は、入力レベルが小さくなるとFM多重データエラーが増加し、あるレベル以下では誤り訂正ができずFM多重が受信できなくなる入力レベルとする。このようにして、移動体がビルの影になったり、放送局から離れたときのように弱入力となった場合のように、Sレベルを基にダイバーシティ制御によりアンテナを切換えてデータエラーを防止可能とする。
【0028】
図4は図1のダイバーシティ制御処理を説明する図である。本図(a)に示すように、多重データ受信限界電界レベルを示す基準電圧Vr1に対してSレベル信号が入力し、本図(b)に示すように、仮にマルチパスが検出されない場合には1つのアンテナで多重データ受信が継続されて異常が発生し、本図(c)に示すように、このデータ異常発生に対応してデータエラーが検出でき、本図(d)に示すように、データエラー検出を基にアンテナが切り換わって、正常にFM多重受信が可能になる。
【0029】
したがって、本形態によれば、マルチパス歪み信号と一定値以下のSレベル信号とを論理和処理して動作させることにより、マルチパス検出によるダイバーシティ制御では改善できない弱入力のFM多重受信の音質、データ品質の改善が可能となる。
図5は図1のパイロット信号検出部20とレベル変動検出部21に代わる変形例である高域ノイズレベル検出部40を示す図である。本図に示すように、パイロット信号検出部20とレベル変動検出部21に代わりに高域ノイズレベル検出部40を設けてもよい。高域ノイズレベル検出部40は、100KHz以上のノイズを検出する高域通過フィルタ41と、高域通過フィルタ41に接続され所定値Vr2以上のノイズレベルを検出する比較器42とからなり、ノイズの検出の場合にはFM多重データにノイズが重畳してエラーが発生しているとする。
【0030】
次に、よりきめ細かなFM多重受信限界が判定でき、不必要なダイバーシティ制御による逆効果を防ぐため、データエラー検出部12により、Sレベルが一定値以下の時間が一定値以上の場合、Sレベル検出を行うことを説明する。
まず、FM多重データは誤り訂正符号によってある程度のデータエラーは訂正されるが、訂正の可否は単位時間当たりのエラーの数で決まる。すなわち、入力レベルが瞬時的に下がってデータエラーが発生しても符号長の中で訂正可能な時間以下であれば訂正される。そのため、一定時間以下の弱入力Sレベル検出時間を判別してアンテナの切換パルスを発生させるようにしてものである。時間の判別にはSレベルの応答自体を遅くすることでも可能である。
【0031】
時間の設定は、FM多重データが16kbpsで符号長を272ビット、訂正可能数8ビットで連続8ビットエラーする最悪ケースを考えれば、
Figure 0003638343
であり、
また、エラーが分散する最大ケースを考えれば、
Figure 0003638343
符号長分の時間となる。以下に具体的に説明を行う。
【0032】
図6は図2のデータエラー検出部12の変形例を示す図である。本図(a)に示すように、データエラー検出部12の反転入力端子の前段に低域通過フィルタ34が設けられる。このデータエラー検出12の低域通過フィルタ34により、Sレベルの急峻な変化が鈍化されSレベルが一定値以下の時間が一定値以下の場合、Sレベル検出が行わなれない、すなわち一定時間以上一定値を維持する場合にSレベルの検出が行われる。
【0033】
図7は図6のデータエラー検出部12の動作を説明する図である。本図(a)に示す実線のように、データエラー検出部12にSレベル信号が入力すると、 低域通過フィルタ34により点線のように短い期間のSレベル低下が鈍化しSレベルが前記基準電圧Vr1を下回るのを避けることができ、このため本図(d)のように点線のデータエラーを検出するのを阻止でき、不要なアンテナ切換を防止できる。本図(a)に示すように、Sレベルの点線が基準電圧Vr1を下た回る場合には、本図(c)に示すように多重データの訂正ができず、実線が下回り点線が下回らない部分では、多重データの訂正が可能である。このため、本図(b)に示すように、多重データの訂正ができない部分はダイバーシティ制御によりアンテナを切り換えるが、多重データの訂正ができる部分はアンテナの切換は、誤り訂正が可能なため、アンテナの切換が不要となる。
【0034】
図6(b)に示すデータエラー検出部12は別の変形例であり、このデータエラー検出部12の比較器31の後段に検出時間判別部35が設けられる。
図8は図6(a)のデータエラー検出部12における検出時間判別部35の動作を説明するフローチャートである。
ステップS1において、
比較器31の出力電圧<0
が成立する否かを判断する。この判断が「NO」でSレベルが基準電圧Vr1を上回る場合には処理を終了し、「YES」であれば、ステップS2に進む。
【0035】
ステップS2において、Sレベルが基準電圧Vr1を下回った時に、時間tの計測を開始する。
ステップS3において、計測時間tが式(1)又は(2)の前記時間幅t0 と以下の様な大小比較を行い、
t>t0
ならば、ステップS4に進み、そうでなければステップS1に戻り以上の手順を繰り返す。
【0036】
ステップS4において、計測時間tが前記時間幅t0 を越えた場合には、データエラーの検出用のパルス検出を発生する。
このようにして上記と同様の目的を達成することができる。
次に、音声受信、FM多重データ受信ともに良好な受信品質を得るために、データエラー検出部12に、FM多重受信を判別する部分を持たせ、この判別結果によってSレベルの検知レベルを変更することを説明する。
【0037】
まず、FM受信機は、FM多重データ受信専用のものもあるが、本願の場合のように音声用との兼用品もある。兼用品の場合、FM多重が常に放送されない場合もあるので、放送状態に合わせてベストなダイバーシティ制御条件に設定することにより、不要なアンテナ切換を防止する。以下に具体的に説明する。
図9は図1のデータエラー検出部12の他の変形例を示す図である。本図(a)に示すように、データエラー検出12に比較器31の非反転端子に異なる2つの基準電圧Vr11 、Vr12 (Vr11 <Vr12 )を示す端子a、bに切り換えるスイッチ34と、FM多重データの状況により該スイッチ34を切り換える多重データ検出部35とを備える。すなわち、音声用に設定する場合には、FM多重デー受信の基準電圧(Vr12 )の場合よりも低い基準電圧に(Vr11 )する。また、Vr11 を0ボルトにしてこの回路を全く動作させないようにOFFにしてもよい。
【0038】
図10はSレベルに対する基準電圧Vr11 、Vr12 を示す図である。本図に示すように、FM多重データ受信を検知した場合には、スイッチ34の端子aに切り換えられ、FM多重データ受信を検知しない場合には、スイッチ34の端子bに切り換えられる。
本図(b)に示すように、多重データ検出部35は、具体的には、76kHzバンドパスフィルタ8の出力を検波する検波部36と、この検波信号を入力する比較器37で構成される。
【0039】
このようにして、多重データ検出部35は、上記検波信号のレベルからFM多重データ信号の有無を検出する。この場合、このような機能を図1のFM多重復調・デコード部9の処理を行うマイクロコンピュータに持たせてもよい。
また、FM多重データが放送されている場合、ユーザが、どちらの受信を選択しているかを判断した方が良い場合がある。このため、FM多重受信選択スイッチを設けてもよい。さらに、データ呼び出し状態等の判別結果に連動して基準電圧の設定を変更させるようにしてもよい。
【0040】
次に、マルチパス検出の頻度が多い場合に、FMダイバーシティ受信機のFM多重データ受信のマルチパスにおいて、不要なアンテナ切換を強制的に抑制することを、以下に説明する。
図11は本発明の第2の実施例に係るFMダイバーシティ受信機を示す図である。本図に示すように、マルチパス検出部11には、データエラー検出部12を取り除き、図1のパイロット信号検出の代わりに、76kHzバンドパスフィルタ8からの信号を検波する76kHz帯信号検波部20が設けられ、スレシュホールド電圧比較部22の出力にアンテナ選択信号発生部24が直接接続され、スレシュホールド電圧比較部22からのアンテナ切換信号の発生の発生状況に応じてスレシュホールド電圧比較部22のスレシュホールド電圧を変更するスレシュホールド電圧変更部25とが設けられる。
【0041】
図12は図11のスレシュホールド電圧変更部24を示す図である。本図に示すように、スレシュホールド電圧比較部22の矩形のアンテナ切換信号を微分回路51により微分し、ダイオードDIで負側のパルスを除去し、単安定マルチバイブレータ52に一定時間幅のパルスを発生させ、このパルスを積分回路53により積分して、スレシュホールド電圧比較部22へのスレシュホールド電圧Vth0を形成する。
【0042】
図13は図11のマルチパス検出部11の出力信号を説明する図である。76kHzバンドパスフィルタ8で抽出されたデータ信号は、マルチパスなどでひずんだ場合には、本図に示すような波形になる。76kHz帯信号検波部20では点線のようにデータ信号が検波される。図3のレベル変動検出部21の上段の減算回路では、76kHz帯信号検波部20の正極の検波信号が、FM多重データの信号レベルの10%に相当する基準信号を越えるレベル変動をマルチパス信号として検出する。同様に、レベル変動検出部21の下段の減算回路では、76kHz帯信号検波部20の正極の検波信号が、FM多重データの信号レベルの4%に相当する基準信号を下回るレベル変動をマルチパス信号として検出する。
【0043】
図14は図11のスレシュホールド電圧比較部22とスレシュホールド電圧変更部25の動作を説明する図である。本図(a)、(c)に示すように、スレシュホールド電圧比較部22では、マルチパス検出信号のレベルとスレシューホルド電圧Vth0とを比較し、
Vth0<マルチパス検出信号のレベル
の場合には、アンテナ選択信号発生部24にアンテナ切換信号を出力し、
Vth0≧マルチパス検出信号のレベル
の場合には、アンテナ選択信号発生部24へのアンテナ切換信号の出力を停止する。なお、アンテナ選択信号発生部24では、前述のように、スレシュホールド電圧比較部22からのアンテナ切換信号の立ち上がりで、アンテナ選択信号を反転して、アンテナ1−1、1−2を切り換えるのに使用する。
【0044】
スレシュホールド電圧変更部25は、本図(b)に示すように、スレシュホールド電圧比較部22のアンテナ切換信号の発生頻度が高いとスレシュホールド電圧Vth0が上昇し、スレシュホールド電圧比較部22のアンテナ切換信号の発生頻度が低いとスレシュホールド電圧Vth0が下降する。
このように、アンテナ切換信号の高発生頻度に対してスレショホールド電圧Vth0を大きくする理由を説明する。アンテナ切換信号の高発生頻度になることは、レベル変動検出部21の出力レベルの変動周期が短くなることを意味する。しかし、レベル変動検出部21の出力レベルの観点では大きいものと小さいものが混在している場合がある。この場合、小さい出力レベルは相対的に正常な状態にあるので、小さい出力レベルでアンテナを切り換えることは不要であり、却って異常な状態に切り換えによりビットエラーの原因となる。
【0045】
したがって、本形態によれば、FM多重データのレベル変動を検出するので、データのビットエラーと相関の高いマルチパス検出が行え、FM多重放送を受信するためにもともと必要な76kHzバンドパスフィルタをマルチパス検出にも兼用するため、フィルタが余分に必要とならない。また、76kHz帯のレベル変動検出のため音声帯の高周波ひずみの影響を受けにくい。さらに、マルチパス検出の頻度が高い場合には不要なアンテナ切換に伴う受信データのビットエラーが低減する。
【0046】
図15は図11のマルチパス検出部11の変形例を示す図である。本図に示すように、マルチパス検出部11のスレシュホールド電圧比較部22とアンテナ選択信号発生部24との間に誤検出防止回路27が設けられる。この場合、スレシュホールド電圧変更部25は誤検出防止回路26から入力信号を得る。
図16は誤検出防止回路27を示す図である。誤検出防止回路27は、レベル変動検出部21の出力信号の積分器27−1と、これに接続されるコンパレータ27−2を具備する。誤検出防止回路26により、イグニッションノイズなどによるマルチパス検出部11でのマルチパス検出の誤検出がカットされる。なお、この積分器27−1には抵抗に並列にダイオードが設けられ、コンデンサへの充電時間を放電時間よりも早めている。ノイズを除去しやすくするためである。
【0047】
図17は図16の誤検出防止回路27の動作を説明する図である。本図(a)に示すように、スレシュホールド電圧比較部22の出力信号にイグニッションノイズが混入すると、本図(b)に示すように、誤検出防止回路27の積分器27−1の出力信号▲1▼に示すように、イグニッションノイズのレベルが低下する。イグニッションノイズの時間幅が、アンテナ切換信号の時間幅に比較して、小さいためである。本図(c)に示すように、誤検出防止回路27のコンパレータ27−2の出力信号▲2▼に示すように、イグニッションノイズが除去され、さらに、本図(b)に示すスレシュホールドVth4以上の元の信号の波形成形が行われる。
【0048】
したがって、車載用で用いる際に、エンジンのイグニッションのノイズが電源ラインを伝わってくるが、これによる誤動作を防止できる。
図18は図15のダイバーシティ制御部の変形例を示す図である。本図に示すように、スレシュホールド電圧変更部24及びアンテナ選択信号発生部23の出力信号を基に、受信状況が改善されない時に、アンテナ1−1、1−2の切換制御の補助を行うアンテナ制御補助回路28が設けられる。
【0049】
図19は図18のアンテナ制御補助回路28を示す図である。本図に示すアンテナ制御補助回路28は、計測用クロック61と、このクロックを計数し所定時間でリセット信号を出力するカウンタ62と、アンテナ選択信号発生部24の出力信号、計測用クロック61のクロック信号、カウンタ62のリセット信号を入力しアンテナ選択信号発生部63の出力信号のうち「H(high) 」部分の時間を、リセット信号が入力するまで、計測するメイン選択時間計測部63と、アンテナ選択信号発生部24の出力信号、計測用クロック61のクロック信号、カウンタ62のリセット信号を入力しアンテナ選択信号発生部24の出力信号のうち「L(low)」部分の時間を、リセット信号が入力するまで、計測するサブ選択時間計測部64と、メイン選択時間計測部63の計測時間とサブ選択時間計測部64の計測時間とを比較する選択時間比較部65と、スレシュホールド電圧変更部25からのスレシュホールド電圧が、例えば連続アンテナ切換信号n回分で到達する最大スレシューホルド電圧以上になったか否かを判定するスレシューホルド電圧判定部66と、選択時間比較部65とアンテナ切換回路2との間に接続され、スレシューホルド電圧判定部66の最大スレショホールド電圧以上との判定の場合に、オンとなるスイッチ67とを具備する。
【0050】
図20は図19のアンテナ制御補助回路28の動作を説明する図である。本図に示すように、カウンタ62の所定時間τsに対して、メイン選択時間計測部63の計測時間の合計Smは、アンテナ1−1(メイン側)の選択時間として、
Sm=▲1▼+▲2▼+▲3▼
となる。サブ選択時間計測部64の計測時間の合計Ssは、アンテナ1−2(サブ側)の選択時間として、
Ss=(1)+(2)+(3)
となる。
【0051】
この計測時間の合計Sm、Ssが選択時間比較部65で比較され、スイッチ67の出力は、
Sm≧Ss
の場合はアンテナ1−1(メイン側)に切換える信号を出力し、
Sm<Ss
の場合はアンテナ1−2(サブ側)に切換える信号を出力する。
【0052】
このようにして、ある一定期間τs、例えばスレシュホールド電圧の放電時定数あるいはそれに相当する期間よりも十分短い期間で連続してアンテナ切換信号が発生している状況(図19参照)は、アンテナ1−1、1−2のどちらを選択してもマルチパスが発生している状況である。アンテナ制御補助回路28によりこのようなときに受信状況が良い(マルチパスによる影響が軽い)方のアンテナが、アンテナ選択信号発生部24の補助として、選択される。
【0053】
なお、メイン選択時間計測部63、サブ選択時間計測部64でそれぞれのアンテナ選択時間の計測に代わり、アンテナ選択信号の立ち上がり立ち下がりでアンテナ1−1(メイン側)、1−2(サブ側)の選択回数を計測するようにしてもよい。例えば、立ち上がりでアンテナ1−1(メイン側)の選択回数を計測し、立ち下がりでアンテナ1−2(サブ側)の選択回数を計測する。
【0054】
したがって、メイン、サブのアンテナ1−1、1−2がマルチパス妨害を受けているときであっても、より受信状況の良い方のアンテナを選択することが可能になる。
図21は図11のマルチパス検出部11の変形例を示す図である。本図に示すように、マルチパス検出部11は、76kHzバンドパスフィルタ8からのデータ信号の周波数分析を行うためにFFT(Fast Fourier Transformation) からなる周波数分析部43と、周波数分析結果を基にひずみを受けず正常に受信された周波数成分と比較し、異常なレベルの周波数成分の有無を判別してその結果をアンテナ選択信号発生部24に出力するレベル判別器44とを具備する。
【0055】
図22図21のマルチパス検出部11の動作を説明する図である。レベル判定器42により、ひずみを受け異常に受信された周波数成分(本図点線参照)が、本図の点線に示すように、ひずみを受けず正常に受信された周波数成分(本図実線参照)を越えるレベル変動を求め、このレベル変動を周波数に関して平均して得たレベル変動をマルチパス検出信号としてスレシュホールド電圧比較部22に出力する。
【0056】
図23は図21のマルチパス検出部11の変形例を示す図である。本図に示すように、76kHzバンドパスフィルタ8の出力に接続され、中心周波数f1、f2、…fnの信号を抽出する複数のバンドパスフィルタ45と、複数のバンドパスフィルタ45のそれぞれに接続され、周波数に関して図21に示す正常な場合のレベル分布をそれぞれの基準レベルとして使用し、これらの基準レベルを越えるレベル変動分を求める複数のレベル判別器46と、複数のレベル判別器46の出力を平均化しその結果をアンテナ選択信号発生部24に出力する平均化部47とを具備する。
【0057】
したがって、データ部のレベル変動を検出するので、データと相関の高いマルチパス検出が行える。また、76kHz帯のレベル変動検出のため音声帯の高調波ひずみの影響を受けにくい。さらに、マルチパス検出の誤検出を防止したので、受信データのビットエラーが低減する。
図24は図11のマルチパス検出部11の別の変形例を示す図である。本図に示すように、マルチパス検出部11に、レベル変動検出部21の検出範囲を変更する検出範囲変更部29が設けられる。
【0058】
図25は図24の検出範囲変更部29を示す図である。本図に示すように、検出範囲変更部29は、復調回路4からコンポジット信号を入力しパイロット信号に対応する19kHz帯の信号を抽出する19kHz帯バンドパスフィルタ71と、この抽出信号のレベルを基に19kHzのパイロット信号の有無を判別しステレオ又はモノラルの区別を行うためのレベル判定器52と、このレベル判定部72によりレベル変動検出部21のレベル変動を検出する範囲を決めるスレシュホールド電圧Vth1、Vth2を変更する電圧可変器73とを具備する。
【0059】
したがって、FM多重のデータは、ステレオのサブ信号(L−R)のすぐ上の周波数帯に、サブ信号のレベルにより、変調度を変化させるレベルコントロールMSK(Minimum Shift Keying)変調により多重されるが、モノラルの場合は変調度が固定であるので、ステレオとモノラルの2つの場合において、レベル変動検出のより最適なスレシュホールド電圧を設定することが可能になる。
【0060】
図26は図11のマルチパス検出部11の別の変形例を示す図である。本図に示すように、マルチパス検出部11のスレシュホールド電圧比較部22とアンテナ選択信号発生部24との間にスレシュホールド電圧比較部22からのアンテナ切換信号の数を低減する切換低減部30が設けられる。
図27は図26の切換低減部30を示す図である。本図に示すように、切換低減部30は、スレシュホールド電圧比較部22とアンテナ選択信号発生部24との間にスイッチ81と、アンテナ切換信号を基にマルチパス検出後一定期間アンテナ切換を停止させる電圧保持回路82を具備する。
【0061】
図28は図27のスイッチ81及び電圧保持回路82の具体例を示す図である。本図には、スレシュホールド電圧比較部22の出力段を接地するスイッチング用トランジスタ81と、スレシュホールド電圧比較部22からのアンテナ切換信号を積分した電圧をスイッチング用トランジスタ81のベースに印加する積分器82とを具備する。
【0062】
図29は図28のスイッチング用トランジスタ81の動作を説明する図である。本図(a)に示すように、アンテナ切換信号があると、A点の電圧はスイッチング用トランジスタ81のベース・エミッタ間の電圧VBEを越えて徐々に減少する。この場合、ベース電圧がVBE以上にある時間Tだけ、スイッチング用トランジスタ81はonとなる。この間に次のアンテナ切換信号があると、アンテナ選択信号発生部24への入力がカットされる。その後、ベース電圧がVBE未満になると、スイッチング用トランジスタ81はoffとなる。このとき、アンテナ切換信号があると、アンテナ選択信号発生部24これを入力する。なお、積分器82は抵抗に並列にダイオードが接続され、充電時間を放電時間よりも短くしている。アンテナ切換信号発生後から電圧を保持するための前記時間Tを設けるためである。
【0063】
図30は図27の切換低減部30の変形例を示す図である。本図に示すパルスカウンタ83は、クロック信号を入力し、アンテナ切換信号の入力で、クロック信号を計数し、同時にスイッチ81をoffにする。パルスカウンタ83の計数が所定時間Tになると、リセット信号を出力し、このリセット信号により、スイッチ81はonにされる。
【0064】
したがって、マルチパス検出信号をある一定期間だけ次段の回路へ入力しないようにすることにより過度のアンテナ切換え数を低減することができる。
図31は本発明の第3の実施の形態に係るFMダイバーシティ受信機を示す図である。本図に示すように、FMダイバーシティ受信機のダイバーシティ制御部に、前述したデータエラー検出部12と、同様に前述したように、このデータエラー検出部12とマルチパス検出部11の出力の論理和をとってアンテナ選択信号発生部24に出力する論理和23とが設けられるようにしてもよい。
【0065】
このようにして、移動体がビルの影になったり、移動体が放送局から大きく離れて、Sレベルが小さくなった場合にはアンテナ1−1、1−2の切換が行われる。したがって、受信データのビットエラーにはマルチパスひずみによるものの他に単なる受信電界強度の低下によっても発生するので、Sレベルの低下(受信電界強度の低下)を検出し、アンテナ切換を行うことにより、受信レベル低下によるビットエラーを回避することができる。
【0066】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、復調回路からのコンポジット信号から抽出した信号レベルの変動を検出して変動レベルが一定のスレシュホールド電圧を越えたときにマルチパス検出信号を出力し、復調回路からのSレベルが基準値よりも小さくなるときにデータのエラー検出信号を出力するので、移動体がビルの影になったり、放送局から離れたときのように弱入力となった場合のようにマルチパス検出によるダイバシティだけでは改善できない弱入力のFM多重受信品質の改善が可能になり、全体にFM多重受信の品質が向上する。
基準値以下であるSレベルが一定時間だけ継続する場合に、データエラー検出信号を出力するので、よりきめ細かなFM多重受信限界が判定でき不必要なダイバシティ切換による逆効果を防ぐことができる。
データ信号の受信の有無を検出してデータ信号の受信が無い場合には、基準値の値を小さくしてデータエラー検出信号の出力を抑制するので、より音声、FM多重受信ともに良好な受信品質を得ることができる。
変動レベルがスレシュホールド電圧を越える場合には、このスレシュホールド電圧を大きくする変更を行うので、小さな変動レベルに対してはアンテナ切換頻度を強制的に低減し不要な切換を低減する。
マルチパス検出信号を積分して、外部から侵入する時間幅の小さいノイズを除去するので、車載用の場合、エンジンのイグニッションのノイズが電源ラインを伝わってくるが、これにより誤動作を防止できる。
2つのアンテナの選択の発生頻度が所定値以上になった場合には、具体的にはアンテナ切換回路に出力されるアンテナ選択信号の立ち上がり、立ち下がりで計測して、2つのアンテナの時間的な選択割合を比較し、2つのアンテナのうち選択割合が大きい方を選択するので、2つのアンテナがマルチパス妨害を受けているときであってもより受信状況の良い方のアンテナを選択することができる。
復調回路からのパイロット信号の有無を判別しステレオ又はモノラルの区別を行って、この区別を基に、コンポジット信号から抽出した信号レベルの変動の検出範囲を変更するので、レベル変動検出のより最適なスレシュホールド電圧を設定することができる。
復調回路のコンポジット信号からパイロット信号、データ信号の周波数を越える高域ノイズレベル、76kHzバンドパスフィルタの出力を分岐信号から具体的には変動信号を形成することができ、特に、76kHzバンドパスフィルタの抽出信号を用いる場合には、上記のように、パイロットフィルタ、高域ノイズ抽出用のフィルタが不要であり、FM多重データ処理に使用するバンドパスフィルタが使用でき、データと相関の高いマルチパス検出が可能になり音声体の高周波歪みを影響が受け難くい。
FFT又は複数のバンドパスフィルタを用いて、76kHzバンドパスフィルタの抽出信号を周波数分析し、周波数分析の結果のレベルが所定範囲から外れるレベル変動を検出しこれをマルチパス検出信号として求めるので、より詳細なレベル変動を基にマルチパス検出が可能になる。
復調回路からのコンポジット信号から抽出した信号レベルの変動を検出して変動レベルが一定のスレシュホールド電圧を越えたときにマルチパス検出信号を出力した後一定期間内のマルチパス検出信号の出力を阻止するので、過度のアンテナ切換を防止する。また、マルチパス検出信号のレベルが一定のスレシュホールド電圧を越える場合に時間の計測を開始し、一定の時間になるまで計測し、この間、マルチパス検出信号の出力を阻止するので、上記と同様に過度のアンテナ切換を防止する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るFMダイバーシティ受信機を示す図である。
【図2】移動体FM多重放送の周波数配置を説明する図である。
【図3】図1のレベル変動検出部21を示す図である。
【図4】図1のダイバーシティ制御処理を説明する図である。
【図5】図1のパイロット信号検出部20とレベル変動検出部21に代わる高域ノイズレベル検出部40を示す図である。
【図6】図2のデータエラー検出部12の変形例を示す図である。
【図7】図6のデータエラー検出部12の動作を説明する図である。
【図8】図6(a)のデータエラー検出部12における検出時間判別部35の動作を説明するフローチャートである。
【図9】図1のデータエラー検出部12の他の変形例を示す図である。
【図10】Sレベルに対する基準電圧Vr11 、Vr12 を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係るFMダイバーシティ受信機を示す図である。
【図12】図11のスレシュホールド電圧変更部25を示す図である。
【図13】図11のマルチパス検出部11の出力信号を説明する図である。
【図14】図11のスレシュホールド電圧比較部22とスレシュホールド電圧変更部25の動作を説明する図である。
【図15】図11のマルチパス検出部11の変形例を示す図である。
【図16】図11の誤検出防止回路27を示す図である。
【図17】図16の誤検出防止回路27の動作を説明する図である。
【図18】図15のダイバーシティ制御部の変形例を示す図である。
【図19】図18のアンテナ制御補助回路28を示す図である。
【図20】図19のアンテナ制御補助回路28の動作を説明する図である。
【図21】図11のマルチパス検出部11の変形例を示す図である。
【図22】図21のマルチパス検出部11の動作を説明する図である。
【図23】図21のマルチパス検出部11の変形例を示す図である。
【図24】図11のマルチパス検出部11の変形例を示す図である。
【図25】図24の検出範囲変更部29を示す図である。
【図26】図11のマルチパス検出部11の別の変形例を示す図である。
【図27】図26の切換低減部30を示す図である。
【図28】図27の電圧保持回路82、スイッチ81を示す図である。
【図29】図28のスイッチング用トランジスタ81の動作を説明する図である。
【図30】図27の切換低減部30の変形例を示す図である。
【図31】本発明の第2の実施形態に係るFMダイバーシティ受信機を示す図である。
【符号の説明】
1−1、1−2…アンテナ
2…アンテナ切換回路
3…フロントエンド
4…復調回路
8…76kHzバンドパスフィルタ
11…マルチパス検出部
12…データエラー検出部
25…スレシュホールド電圧変更部
27…誤検出防止回路
28…アンテナ制御補助回路
29…検出範囲変更部29
30…切換低減部
35…FM多重検出部
43…FFT

Claims (6)

  1. アンテナ切換回路に接続される2つのアンテナ(1−1、1−2)と、アンテナ切換信号により選択された該アンテナの1つに接続され、高周波増幅器、局部発振器、ミクサ、チャンネル同調回路を有するフロントエンド(3)と、該フロントエンドに接続され、変調信号を元のコンポジット信号に戻す復調回路(4)とを有し、音声信号とデータ信号とを多重化したFM放送波を選択して受信するFMダイバーシティ受信機において、
    前記復調回路からの前記コンポジット信号から抽出したパイロット信号のレベル変動を検出し、該変動レベルが一定のスレシュホールド電圧を越えたときにマルチパス検出信号を出力するマルチパス検出部(11)と、
    前記復調回路からのSレベルが基準値よりも小さくなるときに、前記データのエラー検出信号を出力し、前記データ信号の受信が無い場合には、前記基準値の値を小さくして前記データのエラー検出信号を出力抑制するデータエラー検出部(12)と、
    前記マルチパス検出信号及び前記データエラー検出信号のいずれかを前記アンテナ切換信号として形成するアンテナ選択信号発生部(24)とを備えたことを特徴とするFMダイバーシティ受信機。
  2. アンテナ切換回路に接続される2つのアンテナ(1−1、1−2)と、アンテナ切換信号により選択された該アンテナの1つに接続され、高周波増幅器、局部発振器、ミクサ、チャンネル同調回路を有するフロントエンド(3)と、該フロントエンド(3)に接続され、変調信号を元のコンポジット信号に戻す復調回路(4)とを有し、音声信号とデータ信号とを多重化したFM放送波を選択して受信するFMダイバーシティ受信機において、
    前記復調回路からの前記コンポジット信号から抽出した周波数76kHzのデータ信号のレベル変動を検出して該変動レベルが一定のスレシュホールド電圧を超えたときにマルチパス検出信号を出力し、前記アンテナ切換信号の発生頻度が高い場合には、前記スレシュホールド電圧を大きくする変更を行って前記マルチパス検出信号を出力するマルチパス検出部(11)と、
    前記マルチパス検出信号を前記アンテナ切換信号として形成するアンテナ選択信号発生部(24)とを備え、
    前記アンテナ切換信号による前記アンテナの選択の発生頻度が所定値以上である場合に、前記アンテナの時間的な選択割合を比較し、前記アンテナのうち該選択割合が大きい方を選択するアンテナ制御補助回路(28)を有することを特徴とするFMダイバーシティ受信機。
  3. 前記アンテナ制御補助回路は、前記アンテナの選択の発生頻度を、前記アンテナ切換信号の立ち上がり、立ち下がりで計測することを特徴とする請求項2に記載のFMダイバーシティ受信機。
  4. アンテナ切換回路に接続される2つのアンテナ(1−1、1−2)と、アンテナ切換信号により選択された該アンテナの1つに接続され、高周波増幅器、局部発振器、ミクサ、チャンネル同調回路を有するフロントエンド(3)と、該フロントエンド(3)に接続され、変調信号を元のコンポジット信号に戻す復調回路(4)とを有し、音声信号とデータ信号とを多重化したFM放送波を選択して受信するFMダイバーシティ受信機において、
    前記復調回路からの前記コンポジット信号から抽出した周波数76kHzのデータ信号のレベル変動を検出して該変動レベルが一定のスレシュホールド電圧を超えたときにマルチパス検出信号を出力し、前記アンテナ切換信号の発生頻度が高い場合には、前記スレシュホールド電圧を大きくする変更を行って前記マルチパス検出信号を出力するマルチパス検出部(11)と、
    前記マルチパス検出信号を前記アンテナ切換信号として形成するアンテナ選択信号発生部(24)とを備え、
    前記マルチパス検出部は、検出範囲変更部(29)を有し、
    前記検出範囲変更部が、前記復調回路からのパイロット信号の有無によりステレオ又はモノラルの区別を行い、該区別を基に、前記コンポジット信号から抽出した信号レベルの変動の検出範囲を変更することを特徴とするFMダイバーシティ受信機。
  5. アンテナ切換回路に接続される2つのアンテナ(1−1、1−2)と、アンテナ切換信号により選択された該アンテナの1つに接続され、高周波増幅器、局部発振器、ミクサ、チャンネル同調回路を有するフロントエンド(3)と、該フロントエンド(3)に接続され、変調信号を元のコンポジット信号に戻す復調回路(4)とを有し、音声信号とデータ信号とを多重化したFM放送波を選択して受信するFMダイバーシティ受信機において、
    前記復調回路からの前記コンポジット信号から抽出した周波数76kHzのデータ信号のレベル変動を検出し、該変動レベルが一定のスレシュホールド電圧を越えたときに、マルチパス検出信号を出力し、前記アンテナの切換頻度を低減する切換低減部(30)により一定期間内のマルチパス検出信号の出力が阻止されるマルチパス検出部(11)と、
    前記復調回路からのSレベルが基準値よりも小さくなるときに前記データのエラー検出信号を出力するデータエラー検出部(12)と、
    前記マルチパス検出信号及び前記データエラー検出信号のいずれかを前記アンテナ切換信号として形成するアンテナ選択信号発生部(24)とを備えたことを特徴とするFMダイバーシティ受信機。
  6. 前記切換低減部は、前記マルチパス検出信号のレベルが一定のスレシュホールド電圧を越える場合に時間の計測を開始し、一定の時間になるまで計測を行ってマルチパス検出信号の出力を阻止することを特徴とする請求項5に記載のFMダイバーシティ受信機。
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