JP3638160B2 - エレクトレット及びその形成方法及び静電リレー - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、シリコン系無機薄膜を用いたエレクトレット及びその形成方法と、エレクトレットを用いた静電リレーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のエレクトレット材料としては、特開昭61−289177号公報、特開平1−287914号公報等に記載れているような有機(高分子重合体)材料が使用されている。この材料は通常シート状で用いられ、高いトラップ電荷量を蓄積でき且つ長時間電荷を安定に保つことができる等優れた特性を有する。
【0003】
近年、IC・LSI等の半導体の微細加工技術を利用してセンサ、アクチュエータ等を作るマイクロマシニング技術が飛躍的に進歩し圧力センサ等の実用化が進められている。このような状況のもと静電力を利用したアクチュエータ実現への取り組みも行われている。このようなアクチュエータを備えた所謂マイクロリレーにおいては特開平6−223698号の明細書に記載されているように、エレクトレットを用いて静電力の増強を行い特性の向上を図っており、エレクトレットはリレー特性を決める重要な構成要件である。
【0004】
このような状況のもと、エレクトレットはマイクロマシンの分野において必要不可欠な技術となりつつある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで上記の従来のエレクトレット材料では以下のような問題があり、実用化への障害となっている。
まず従来の有機材料は低融点(〜200℃)材料であり、シリコンプロセスへの導入が困難である。つまり通常シリコンをベースとした半導体製造プロセスは1000℃で処理されるため、テフロン等の200℃付近に融点を持つ有機材料の使用は困難である。またこのような材料を無理に導入しようとすれば、プロセスの最終工程にしか置くことができず、必然的にプロセスの自由度を極端に制限することとなる。
【0006】
上記の問題に加えて、低融点材料であるため、表面実装(SMD)に適応したデバイスには用いることができない。通常表面実装の手段としてIR実装等があるが、ピーク温度として250℃付近で処理されるため、テフロン等200℃付近に融点を持つ有機材料の使用は困難である。またこのような材料が溶融を起こさないとしても、注入保持されている電荷が放電され、デバイスとしては機能しないという問題がある。
【0007】
更に従来の有機材料ではフォトリソグラフィ工程による微細加工が困難である。つまりIC等の微細加工は通常レジストを用いたフォトリソグラフィ工程とエッチング工程により行われる。ここでレジストとしては、光重合体の有機薄膜が使用されているため、エレクトレットのレジストの現像液に対する耐腐食性が問題となる。また現状においても半導体製造プロセスに影響を与えずエレクトレットを微細にエッチング液も見いだされていない。
【0008】
また更に、半導体製造プロセスにマッチした有機材料による薄膜形成技術が確立されていない。テフロン等の薄膜形成はPCVD、蒸着等で行われているが、半導体製造プロセスにマッチしたという観点からは実用化されていない。図17はPCVD(プラズマ気相成長法)や蒸着で形成したテフロン、パリレンのエレクトレット特性を示したものであるが、常温においてさえ、必要とされる初期電圧(250V以上)も電圧保持力も得られなかった。尚図17中のIはテフロンCVD(1.0μm厚さ)、IIはパリレン(1.5μm)、III はテフロンFEP(25.4μm厚さ)のエレクトレット特性を示す。
【0009】
このようにエレクトレットに関しては、大きな期待がかけられているにもかわわらず、実用化(マイクロマシニング技術として)されていないのが現状である。
本発明は上記問題点に鑑みて為されたもので、請求項1の発明は、高い融点を有し、微細加工が可能で且つ薄膜化が容易な半導体製造プロセスに導入できるエレクトレットを提供することを目的とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明の目的に加えて、電荷保持力が強く、高温でも安定したエレクトレットを提供することを目的とする。
請求項3の発明は、請求項1、請求項2の目的に加えて、より劣化の少ない優れた特性を持つエレクトレットを提供することを目的とする。
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかの発明の目的に加えて、
長期安定性に優れたエレクトレットを提供することを目的とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4の発明のエレクトレットを半導体製造プロセスで製造することができるエレクトレットの形成方法を提供することを目的とする。
請求項6の発明は、請求項5の発明の目的に加えて、優れたエレクトレット特性を持つエレクトレットが製造できるエレクトレットの形成方法を提供することを目的とする。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1乃至請求項4の発明のエレクトレットを用い、吸引力が大きく、しかも低電圧駆動ができる静電リレーを提供するにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明では、禁制帯内の電子エネルギー準位に電荷を保持させたシリコン系無機薄膜から成る。
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記シリコン系無機薄膜は電子エネルギー準位が禁制帯領域の略中央に位置しているものである。
【0014】
請求項3の発明では、請求項1又は2の発明において、前記シリコン系無機薄膜は300℃以上加熱される場合に、電荷が前記電子エネルギー準位と伝導帯の間のギャップを越えて励起されるものである。
請求項4の発明では、請求項1〜請求項3のいずれかの発明において、前記シリコン系無機薄膜は不純物として水素又は窒素を含むシリコン酸化物から成るものである。
【0015】
請求項5の発明では、シランと亜酸化窒素の混合ガスのプラズマ分解による化学気相成長法によりシリコン酸化膜をシリコン基板上に形成する過程と、形成後の該シリコン酸化膜に電荷を注入して電荷をシリコン酸化膜の禁制帯内の電子エネルギー準位に保持させる充電過程とで成ることを特徴とする。
請求項6の発明では、請求項5の発明において、上記シランと亜酸化窒素の流量比を1/30以下とし、且つガス圧力を80Pa以下で、基板温度を300℃以上であることを特徴とする。
【0016】
請求項7の発明では、可動接点とこの可動接点とは絶縁された可動電極とを有する可動片と、可動接点と接触開離する固定接点とこの固定接点とは絶縁された固定電極とを有する固定片とからなり、両片の両電極間に電圧を加えることによって発生する静電力によって可動片を固定片側に移動させて可動接点を固定接点に接触させる静電リレーにおいて、可動片と固定片との間に請求項1〜4に記載のいずれかのエレクトレットを設けたことを特徴とする。
【0017】
【作用】
請求項1の発明によれば、禁制帯内の電子エネルギー準位に電荷を保持させたシリコン系無機薄膜から成るので、膜の形成や微細加工を行うとが容易な半導体製造プロセスをそのまま使用することができ、半導体製造プロセスに適用できるためマイクロマシンの駆動源として用いることが可能となるエレクトレットを提供することができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明において、前記シリコン系無機薄膜は電子エネルギー準位が禁制帯領域の略中央に位置しているので、電荷保持力が強く高温でも安定したエレクトレットを提供することができる。
請求項3の発明によれば、請求項1又は2の発明において、前記シリコン系無機薄膜は300℃以上加熱される場合に、電荷が前記電子エネルギー準位と伝導帯の間のギャップを越えて励起されるから、電荷保持力が強く高温でも安定し、劣化の少ない優れた特性を持つエレクトレットを提供することができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、請求項1〜請求項3のいずれかの発明において、前記シリコン系無機薄膜は不純物として水素又は窒素を含むシリコン酸化物から成るので、SiO2 以外のSiOH、SiHの不純物や多くの格子欠陥を持つことができ、そのため不純物や格子欠陥により電荷を禁制帯内の中央の電子エネルギー準位に保持させることができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、シランと亜酸化窒素の混合ガスのプラズマ分解による化学気相成長法によりシリコン酸化膜をシリコン基板上に形成する過程と、形成後の該シリコン酸化膜に電荷を注入して電荷をシリコン酸化膜の禁制帯内の電子エネルギー準位に保持させる充電過程とで成るので、半導体製造プロセスによりシリコン酸化膜からなるエレクトレットを得ることができる。
【0021】
請求項6の発明によれば、請求項5の発明において、上記シランと亜酸化窒素の流量比を1/30以下とし、且つガス圧力を80Pa以下で、基板温度を300℃以上であるので、優れたエレクトレット特性を持つエレクトレットを得ることができる。
請求項7の発明によれば、可動接点とこの可動接点とは絶縁された可動電極とを有する可動片と、可動接点と接触開離する固定接点とこの固定接点とは絶縁された固定電極とを有する固定片とからなり、両片の両電極間に電圧を加えることによって発生する静電力によって可動片を固定片側に移動させて可動接点を固定接点に接触させる静電リレーにおいて、可動片と固定片との間に請求項1〜4に記載のいずれかのエレクトレットを設けたので、低電圧駆動が可能で、強い接点力を持つリレーを提供することができる。
【0022】
【実施例】
(実施例1)
通常半導体製造プロセスにおいて使用されているシリコン系無機薄膜としてはSiO2 又はSiN4 等があり、電気的絶縁膜又は表面保護膜として使用されている。このような目的で使用されるシリコン系無機薄膜に要求される特性としては、帯電しにくく、帯電しても速やかに放電する特性が臨まれる。しかしエレクトレットとして使用する場合は、このような特性はエレクトレットの理想特性とは全く逆の特性となり、半導体プロセスにおいて使用されるシリコン系無機薄膜をエレクトレットとしてそのまま使用することは困難である。
【0023】
しかしながら本発明者らは、PCVD(プラズマ気相成長)法等により形成されたアモルファス状態のシリコン系無機薄膜において、形成条件を変化させることにより優れたエレクトレット特性を得られることを見いだした。
以下そのメカニズムと評価方法について詳細に説明する。
先ず図1乃至図3は、本発明に関わるエレクトレットの充放電機構を示したものである。一般に半導体製造プロセスにおいて使用される図1(a)に示すシリコン系薄膜(以下の説明ではSiO2 膜を用いる)1は、図1(b)に示すように、価電子帯2、禁制帯3、伝導帯4のバンド構造を持っている。
【0024】
本実施例のエレクトレットは、禁制帯3の領域内の深い電子エネルギー準位に電荷5を保持させる準位(以下トラッピング準位という)を持つことを特徴としており、このトラッピング準位としては禁制帯3の中央付近に位置することが望ましい。
次に、電荷の充電機構について説明する。まず、図2(a)に示すSiO2 膜1からなるエレクトレットを後述のように半導体製造プロセスを使用して得(図2(b)は充電前のバンド構造を示す)、図3(a)に示すようにコロナ放電等によりSiO2 膜1の表面に電荷5を注入し、このSiO2 膜1中に注入された電荷5はSiOHやSiHの不純物、格子欠陥(≡Si−O・)に保持される。つまり図3(b)に示すようにエネルギーを与えられ電荷5(電子)が伝導帯4中を移動し、エネルギーを失って禁制帯3中のトラッピング準位に固定されるのである。このように膜中の深い電子エネルギー準位に電気的に固定(トラップ)されることにより図1(a)(b)に示す安定したエレクトレット特性を有するエレクトレットが得られるのである。
【0025】
放電機構については以下のようになる。つまり図1(a)(b)に示すように充電されたエレクトレットは禁制帯3中のトラッピング準位に電荷5がトラップされている。ここでトラップ準位から伝導帯4までのエネルギーをEaとする。熱、光等によりEa以上のエネルギーが図4(a)に示すように電荷5に与えられると、電荷5は励起されて自由電子となりSiO2 膜1中を移動し放電が行われる。図4(b)に示すバンド構造では、禁制帯3中のトラッピング準位にトラップされている電荷5(電子)にEa以上のエネルギーが与えられると、電荷5(電子)は電子エネルギー準位と伝導帯4との間のギャップを越えるように励起されて、図5(a)(b)に示すように放電が行われ、図2(a)(b)の状態に戻ることになる。
【0026】
従って、禁制帯3のトラップ準位の位置によりエレクトレット特性が大きく変化するのである。図6(a)(b)は、深い準位にトラッピング準位を持つエレクトレット1と、浅い準位にトラッピング準位を持つエレクトレット1のバンド構造を示しており、浅い準位にトラッピング準位を持つエレクトレット1は図7(b)に示すように低い温度(低エネルギーLE)により容易に放電されるため、熱的安定性が悪く、電荷保持力が小さい。
【0027】
これに対し、深い準位にトラップ準位を持つエレクトレットは図7(a)に示すように高い温度(高エネルギーHE)が加えられなければ放電されないため、熱的安定性が良く、電荷保持力も大きなものが得られる。
SiO膜1のエレクトレット特性は熱刺激電流(TSC)を測定することにより容易に評価することができる。この熱刺激電流は図8に示す方法で測定することができる。この図8に示すようにオーブン6中に平行平板の電極7a,7bが設けられており、この電極7a.7b間にSiO膜1からなるエレクトレットが置かれている。このエレクトレットの表面は帯電されており、図9に示すように上部電極7aに向かって電場(電気力線)が発生している。オーブン6によりエレクトレットを加熱すると、前述のようにトラッピング準位の電荷5が励起され放電が行われる。放電が行われるとエレクトレット表面の電荷量が変化(ΔQ)し、それに伴って電荷5が変化するため外部に電流I(=ΔQ/Δt)が流れ始め、この電流値を電流計8で測定するのである。
【0028】
ここで縦軸に電流値、横軸に加熱温度をとると図10(a)(B)に示すような熱刺激電流特性が得られるのである。
ここで、図10(a)に示すように電流ピークを高い温度(T1)に持つSiO膜1は、エレクトレットとしての特性が優れていると評価でき、逆に図10(b)に示すように電流ピークを低い温度(T2)に持つSiO膜1はエレクトレットとしての特性が劣ると評価できる。
【0029】
このように膜のエレクトレット特性を熱刺激電流により容易に評価することができるのである。
そこで本実施例のエレクトレットは表1の形成条件を用いて製造した。
【0030】
【表1】
【0031】
本実施例のエレクトレットを構成するシリコン系無機薄膜であるSiO2 膜1はプラズマCDV法により形成したもので、図11に示すように平行平板型のプラズマCVD装置100により13.56MHzの放電周波数を用いて形成される。尚101はシリコンウェハ基板、102、103は温度制御式上部電極、下部電極、104は13.56MHzの発振器、105はマッチングボックスであり、106は槽で、この槽106内に上記条件のガス圧力でSiH4 、N2 Oの混合ガスを入れる。
【0032】
このようにして製造されたSiO膜1の熱刺激電流を測定したところ、図12に示すように390℃付近に電流のピークを持つエレクトレット特性の優れた膜が得られた。
尚表2は本実施例の比較例として取り上げた半導体デバイスの表面保護膜として使われるSiO2 の膜形成条件を示す。
【0033】
【表2】
【0034】
表2の形成条件で形成されたSiO2 膜では、エレクトレット特性が大きく変化しており、このSiO2 膜の熱刺激電流を測定したところ、図13に示すように400℃付近の電流ピークの他に110℃付近の電流ピークを持つ特性となっている。そして表1、2で示す形成条件で形成した2種のSiO2 膜を帯電させ、その劣化特性を測定したところ、図14に示す(イ)ように390℃付近にピークを持つ前者のSiO2 膜が殆ど劣化していないのに、110℃付近にピークを持つSiO2 膜は(ロ)に示すように4日程度で帯電特性が急激に劣化している。
【0035】
このように本実施例はプラズマCVD法により形成されたSiO2 膜が、その形成条件を変えることにより、エレクトレット特性を容易に変化させることができることに着目して為されたものである。即ち、SiO2 膜の禁制帯中の深い準位にトラッピング準位を形成するような形成条件(高い温度に熱刺激電流のピークを持つ)を選択することにより、通常のプラズマCVD装置において特性の良いエレクトレット10を構成するSiO膜1が形成できるのである。
【0036】
尚上記実施例はエレクトレット材料としてSiO2 膜を用いているが、Si3 N4 等の他のシリコン系無機薄膜でも所望する特性を持つエレクトレットを得ることができ、また形成方法もプラズマCVD法に限定されるものではなく、熱酸化法、減圧CVD法等の半導体薄膜形成プロセスでも形成できる。
(実施例2)
本実施例は請求項7の発明に対応する実施例であり、上記実施例1で得られたエレクトレットを用いて静電リレー(マイクロリレー)にかかるものであり、本実施例は図15に示すように固定片10と可動片20とで構成され、可動片20は図16に示すようにシリコン単結晶ウェハを基材とするもので、可動電極24、固定接点25、可動接点26、固定片接合用金属薄膜層27、電極端子28等を形成している。可動電極24は、可動片20の周辺部より異方性エッチングされて可動片20と切り離され、その一端が可動片20と一体に繋がった支持端部19となっており、可動電極24は上記支持端部19を中心に回転する。
【0037】
また、固定片10は可動片20と同様にシリコン単結晶ウェハを基材とするもので、図14に示すように絶縁膜15に固定電極11及び実施例1で説明した本発明によりエレクトレット16、固定接点12、可動片接合用の金或いは金合金層からなる金属薄膜層17を夫々形成し、各固定電極11トエレクトレット16はコンタクト18を介して接続される。チップ間の接合接続には通常金共晶或いは金ゲルマニウム共晶が用いられ300℃付近まで加熱して行われる。金錫共晶においては更に低い温度において接合が可能であるが、エレクトレットとしては少なくとも200℃以上に加熱されても特性の劣化(表面電位の放電等)が少ないものが要望されている。
【0038】
次に本実施例の静電リレーの動作について説明する。まず可動片20の可動電極24と固定片10の固定電極11との間に電圧が印加されると、その間に生じた静電力により可動片20が固定片10側に引き寄せられ、可動片20の可動接点26が固定片10の固定接点12に接触することによりオン動作状態となる。次に前記電圧が除かれると、可動片20が持つ弾性力により可動片20が固定片10より離れ、可動接点26が固定接点12より離れオフ動作状態となる。
【0039】
ここでエレクトレット16は、可動電極24に対向する固定片10上に設けられており、可動電極40の吸引力を増加させるとともに低電圧でリレーの駆動を可能にするのである。
以上のような構成の本実施例の静電リレーでは、エレクトレット16にり可動電極24に及ぼす静電力を一層増大させることができ、大きな接点圧を有し、接点の接触信頼性を高めた静電リレーを提供することができるのである。
【0040】
尚請求項7の発明は実施例2で示す構造に特に限定されるのではなく、可動片20を固定片10の上、下に夫々配置して固定片10をサンドウィッチ状に挟む構造等でも良く、実施例1で示すエレクトレットを用いることにより実施例2と同様に可動電極40の吸引力を増加させるとともに低電圧でリレーの駆動を可能にする。
【0041】
【発明の効果】
請求項1の発明は、禁制帯内の電子エネルギー準位に電荷を保持させたシリコン系無機薄膜から成るので、膜の形成や微細加工を行うとが容易な半導体製造プロセスをそのまま使用することができ、半導体製造プロセスに適用できるためマイクロマシンの駆動源として用いることが可能となるエレクトレットを提供することができるという効果がある。
【0042】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記シリコン系無機薄膜は電子エネルギー準位が禁制帯領域の略中央に位置しているので、電荷保持力が強く高温でも安定したエレクトレットを提供することができるという効果がある。
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記シリコン系無機薄膜は300℃以上加熱される場合に、電荷が前記電子エネルギー準位と伝導帯の間のギャップを越えて励起されるから、電荷保持力が強く高温でも安定し、劣化の少ない優れた特性を持つエレクトレットを提供することができるという効果がある。
【0043】
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかの発明において、前記シリコン系無機薄膜は不純物として水素又は窒素を含むシリコン酸化物から成るので、SiO2 以外のSiOH、SiHの不純物や多くの格子欠陥を持つことができ、そのため不純物や格子欠陥により電荷を禁制帯内の中央の電子エネルギー準位に保持させることができ、長期安定性に優れたエレクトレットを提供できるという効果がある。
【0044】
請求項5の発明は、シランと亜酸化窒素の混合ガスのプラズマ分解による化学気相成長法によりシリコン酸化膜をシリコン基板上に形成する過程と、形成後の該シリコン酸化膜に電荷を注入して電荷をシリコン酸化膜の禁制帯内の電子エネルギー準位に保持させる充電過程とで成るので、半導体製造プロセスによりシリコン酸化膜からなるエレクトレットを得ることができるという効果がある。
【0045】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、上記シランと亜酸化窒素の流量比を1/30以下とし、且つガス圧力を80Pa以下で、基板温度を300℃以上であるので、優れたエレクトレット特性を持つエレクトレットを得ることができるという効果がある。
請求項7の発明は、可動接点とこの可動接点とは絶縁された可動電極とを有する可動片と、可動接点と接触開離する固定接点とこの固定接点とは絶縁された固定電極とを有する固定片とからなり、両片の両電極間に電圧を加えることによって発生する静電力によって可動片を固定片側に移動させて可動接点を固定接点に接触させる静電リレーにおいて、可動片と固定片との間に請求項1〜4に記載のいずれかのエレクトレットを設けたので、低電圧駆動が可能で、強い接点力を持つリレーを提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の実施例1のエレクトレットの説明図である。
(b)は同上のエレクトレットのバンド構造の説明図である。
【図2】(a)は同上のエレクトレットの充電過程の説明図である。
(b)は同上のエレクトレットの充電過程のバンド構造の説明図である。
【図3】(a)は同上のエレクトレットの充電過程の説明図である。
(b)は同上のエレクトレットの充電過程のバンド構造の説明図である。
【図4】(a)は同上のエレクトレットの放電過程の説明図である。
(b)は同上のエレクトレットの放電過程のバンド構造の説明図である。
【図5】(a)は同上のエレクトレットの放電過程の説明図である。
(b)は同上のエレクトレットの放電過程のバンド構造の説明図である。
【図6】(a)は深いトラッピング準位を持つエレクトレットのバンド構造の説明図である。
(b)は浅いトラッピング準位を持つエレクトレットのバンド構造の説明図である。
【図7】(a)は深いトラッピング準位を持つエレクトレットの放電についての説明図である。
(b)は浅いトラッピング準位を持つエレクトレットの放電についての説明図である。
【図8】エレクトレットの評価に用いる装置の概略構成図である。
【図9】エレクトレットの評価方法の説明図である。
【図10】(a)は深いトラッピング準位を持つエレクトレットの熱刺激電流特性図である。
(b)は浅いトラッピング準位を持つエレクトレットの熱刺激電流特性図である。
【図11】同上の形成に用いる装置の概略構成図である。
【図12】実施例1の熱刺激電流特性図である。
【図13】比較例の熱刺激電流特性図である。
【図14】実施例1と比較例のエレクトレット特性の経時変化説明図である。
【図15】本発明の静電リレーの実施例の分解斜視図である。
【図16】同上の拡大断面図である。
【図17】従来例の説明図である。
【符号の説明】
1 SiO2 膜
2 価電子帯
3 禁制帯
4 伝導帯
5 電荷
Claims (7)
- 禁制帯内の電子エネルギー準位に電荷を保持させたシリコン系無機薄膜から成ることを特徴としたエレクトレット。
- 前記シリコン系無機薄膜は電子エネルギー準位が禁制帯領域の略中央に位置していることを特徴とする請求項1記載のエレクトレット。
- 前記シリコン系無機薄膜は300℃以上加熱される場合に、電荷が前記電子エネルギー準位と伝導帯の間のギャップを越えて励起されることを特徴とする請求項1又は2記載のエレクトレット。
- 前記シリコン系無機薄膜は不純物として水素又は窒素を含むシリコン酸化物から成ることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のエレクトレット。
- シランと亜酸化窒素の混合ガスのプラズマ分解による化学気相成長法によりシリコン酸化膜をシリコン基板上に形成する過程と、形成後の該シリコン酸化膜に電荷を注入して電荷をシリコン酸化膜の禁制帯内の電子エネルギー準位に保持させる充電過程とで成ることを特徴とするエレクトレットの形成方法。
- 上記シランと亜酸化窒素の流量比を1/30以下とし、且つガス圧力を80Pa以下で、基板温度を300℃以上であることを特徴とする請求項5記載のエレクトレットの形成方法。
- 可動接点とこの可動接点とは絶縁された可動電極とを有する可動片と、可動接点と接触開離する固定接点とこの固定接点とは絶縁された固定電極とを有する固定片とからなり、両片の両電極間に電圧を加えることによって発生する静電力によって可動片を固定片側に移動させて可動接点を固定接点に接触させる静電リレーにおいて、可動片と固定片との間に請求項1〜4に記載のいずれかのエレクトレットを設けたことを特徴とする静電リレー。
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1995
- 1995-04-25 JP JP10083695A patent/JP3638160B2/ja not_active Expired - Fee Related
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