JP3636478B2 - 光磁気薄膜、光磁気記録媒体、およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、光磁気記録媒体の記録層などに有用な、磁気光学効果を利用する光磁気薄膜およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光記録媒体は、高密度、大容量の情報記録媒体として種々の研究開発が行われている。特に情報の繰り返し記録消去が可能な光磁気記録媒体は応用分野が広く、さまざまな光磁気記録媒体が発表されている。ところでこれまでの光磁気記録システムでは、波長830nm のレーザ光が通常用いられている。しかし、将来的により高密度記録を実現するシステムでは、現在用いられているレーザ光波長よりもさらに短い400 〜550nm の短波長レーザ光の使用が考えられている。
【0003】
ところでこうした光磁気記録媒体には、磁気光学効果を有する光磁気薄膜が記録層として用いられる。そして現在市販されている光磁気記録媒体においては、通常記録層として膜面に対し垂直方向に磁気容易軸を持ち、垂直磁気異方性に優れたTbFeCo膜などの稀土類遷移金属非晶質合金が用いられている。ただしこれらの記録膜では、短波長領域では有効な磁気光学特性を得ることができない。それに対し短波長領域における磁気光学特性と垂直磁気異方性とを有する磁気記録膜として、白金(Pt)層とコバルト(Co)層とを交互に積層した構造のCo/Pt多層膜等が、実用化に向けてこれまで盛んに研究されて来た。
【0004】
しかし記録膜を構成するこれらの光磁気薄膜のKerr回転角は 0.2°〜 0.3°であり、光磁気記録媒体として高い信号雑音比を得るために、さらに大きなKerr回転角を有する光磁気薄膜が求められている。
【0005】
このような光磁気薄膜としては、蒸着やスパッタリングにより形成するC1b型結晶構造を持つPtMnSbのホイスラー合金(Pt:Mn:Sb = 1:1:1)が広く知られている(例えばP.G. van Engen et al., Appl.Phys.Lett.,42,202(1983) )。このPtMnSbホイスラー合金膜は、Kerr回転角の点で優れた磁気光学特性をポテンシャルとしてもつ光磁気薄膜として盛んに研究されてきた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらC1b型結晶構造をもつPtMnSbホイスラー合金膜は、磁気異方性が小さいという欠点をもつ。これは光磁気薄膜に必要とされる機能、すなわち一方向に磁気容易軸を有した垂直磁化膜として機能の点において、記録の安定性等を考慮した場合に不都合であった。一方、ホイスラー合金以外の結晶構造と組成の従来のPtMnSb三元系合金においては、磁気光学特性をほとんど有しない。このようにこれまでのMnSbPt三元系合金膜では、光磁気記録媒体の記録層等への用途を考えた光磁気薄膜としては不適当であった。
【0007】
本発明の目的は、一軸異方性を有するMnSbPt合金であって、かつTbFeCo膜などに比べ優れた磁気光学特性を備えた光磁気薄膜を得ることである。さらに、記録層を構成する光磁気薄膜がそうした特徴を有する光磁気記録媒体を得ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明における光磁気薄膜は、マンガン(Mn)、アンチモン(Sb)、白金(Pt)よりなる3元系合金からなるスパッタリングによって形成された合金薄膜であって、その組成がMnaSbbPtc、40≦a≦60、32≦b≦55、1≦c≦20、a+b+c=100(ただしa、b、cは原子%による組成比)であり、かつB81型結晶構造を合金中に75体積%以上含むことを特徴としている。
【0009】
従来のC1b型結晶構造をもつPtMnSbホイスラー合金膜は、立方晶であるため対称軸が4本存在する。このため磁気容易軸が複数存在し、磁気異方性が小さいものとなっていた。一方、ホイスラー合金以外の組成の従来のPtMnSb三元系合金においては、一軸異方性を有する六方晶系の結晶構造が存在する。しかしながら、従来の六方晶系の結晶構造をもつMnSbPt三元系合金膜は、不規則相であって磁気光学特性をほとんど有しないものとなっていた。すなわち、組成が本発明と同じだけの合金膜では磁気光学効果はほとんど発現せず、記録材料等への用途に適さなかった。しかしながら膜構造と磁気光学特性につき鋭意検討した結果、C1b型結晶構造の体積比率が少なく、B81 型(NiAs型)結晶構造を75体積%以上含む本発明の合金膜には優れた磁気光学特性があることを見い出した。
【0010】
すなわち本発明の光磁気薄膜としては、磁化容易軸が記録層形成面に対して垂直である一軸異方性を有する必要がある。そしてそのためには、合金中にB81 型結晶構造が75体積%以上含まれる必要がある。このための組成としてはMna Sbb Ptc 、40≦a≦60、c≦20、a+b+c=100 とする必要がある。本組成の合金では、75体積%以上のB81 型結晶構造の存在で優れた磁気光学効果が発現する。
【0011】
そして光磁気記録において情報の読み出しを行う際には、十分な磁気光学特性を有することが必要である。そこでカー回転角を実用上必要な 0.4°より大きくするために、光磁気薄膜の組成はMna Sbb Ptc 、32≦b≦55、1 ≦c、a+b+c=100 とする必要がある。
【0012】
従って本発明の光磁気薄膜においては、組成がMna Sbb Ptc 、40≦a≦60、32≦b≦55、1 ≦c≦20、a+b+c=100 であり、かつB81 型結晶構造が合金中に75体積%以上含まれる必要がある。
【0013】
またさらに光磁気薄膜としては、B81 型結晶構造をより確実に安定して含み、磁化容易軸が記録層形成面に対して垂直である一軸異方性をより有するものであることが好ましい。かつTbFeCo膜などに比べカー回転角がより大きいことが好ましい。すなわちカー回転角は 0.5°以上であることが好ましい。
【0014】
そのために光磁気薄膜としては、組成範囲をMna Sbb Ptc 、35≦b≦52、 2a+b≧ 130、a+b+c=100 であって、かつB81 型結晶構造を合金中に80体積%以上含むことがより好ましい。
【0015】
ここで、上述のMnSbPt合金組成においてB8 1 型結晶構造を含む磁化膜を得るには、スパッタリングを用いることができる。この時使用する蒸発源は、MnPtSb合金蒸発源であってもよいし、各元素の独立した蒸発源であってもよい。例えば、スパッタリングにより合金薄膜を作成する際には、MnSbPt合金ターゲットを使用してもよいし、Mnターゲットの上にPt、Sbのチップを載置した、いわゆる複合ターゲットを使用してもよい。そして合金膜中にB8 1 型結晶構造が含まれるようにするためには、製膜中もしくは製膜後に基板加熱(アニール)などによって、光磁気薄膜の熱処理を行う方法を用いることができる。その際に、よりB8 1 型結晶構造が含まれるようにするためには、300℃以上の温度で熱処理することがより好ましい。
【0016】
また本発明による光磁気薄膜は、上述の特徴を生かして光磁気記録媒体の記録層や光アイソレーター等の磁気光学素子の材料として用いることができる。なおこの際に用いられる基板や下地層および誘電体膜は特に限定されない。
【0017】
さらに本発明による光磁気薄膜は、添加元素効果や下地層効果等により一層の特性改善を図るようにしてもよい。このとき添加元素としては、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Re、Rh、Ag、In、Sn、Hf、Ta、W、Os、Ir、Au、Pb、Pd、Bi等が例示される。
【0018】
あるいは、他の金属薄膜、誘電体薄膜と前記MnSbPt合金薄膜とを交互に積層し、いわゆる人工格子構造光磁気記録媒体として効率の改善を図ることも可能である。
【0019】
【実施例および比較例】
図1は、本発明の実施例および比較例として作成したMnSbPt合金薄膜試料の組成を示す。図中、底辺はMnの組成比(原子%、左端が70原子%、右端が30原子%)、左斜辺はPtの組成比(原子%、上端が40原子%、下端が0 原子%)、右斜辺はSbの組成比(原子%、上端が30原子%、下端が70原子%)の目盛り軸を示す。さらに、図中の◎印は実施例1〜11、そして○印は実施例12の組成を示す。ここで比較例1〜12の組成は、実施例1〜12の組成と同じである。また図中の×印は比較例13〜14の組成を示す。
【0020】
そして実施例と比較例は次のように作製した。まず、RFマグネトロンスパッタリング装置のチャンバー内に、複合ターゲットとしてMnSbターゲットとその上にPtのチップを、作製する膜組成に応じて適宜載置した。さらにその複合ターゲットと対向する水冷装置付きの基台に、ガラス基板を設置した。そしてガス圧1.7 〜6.7 Pa(=13〜50mTorr )のArガス雰囲気中で、RFスパッタリングを行い、ガラス基板上にMnSbPt合金薄膜を製膜した。
【0021】
さらに実施例および比較例13〜14については、製膜後に 300℃で 0.7mPa(=5×10-6Torr)以下の真空中で10時間熱処理を行った。
【0022】
こうして得られたMnSbPt合金薄膜の組成は、電子プローブ微小分析法(EPMA)により確定した。また薄膜の結晶構造はX線回折法により決定した。種々の磁気特性は偏光面変調法カースペクトル測定装置、振動試料型磁力計(VSM) により測定し評価した。
【0023】
表1には、実施例1〜12と比較例1〜13の各試料についての組成比と測定結果を示す。ただし、表1において組成比は原子%である。また表中のMs(emu/g,1emu/g =4π×10-7Wb・m/kg) は、磁性薄膜の飽和磁化で振動試料型磁力計(VSM) の測定値を磁性膜の質量で割った値である。またθk(deg)は、測定波長633nm での飽和カー回転角の絶対値を示す。また比較例14の組成比は、Mn=44.72原子%、Sb=33.14原子%、Pt=22.14原子%であった。
【0024】
表1に示したように比較例1〜12においては、結晶構造が不規則相六方晶系である。一方実施例1〜12においては、結晶構造にB81 型が75体積%以上含まれる薄膜となった。ここで実施例1〜11については、B81 型の結晶構造がより安定して確実に合金中に含まれるものとなった。
【0025】
そして表1の結果から判るように、比較例1〜12の不規則相六方晶系の合金膜は、磁気光学効果がほとんどないか、小さい値しか示さない。これに対し実施例1〜12で示すとおり、同じ組成でもB81 型構造が合金膜中に存在すると、優れた磁気光学効果が得られることがわかる。そしてB81 型構造がより安定して確実に含まれる実施例1〜11のものは、より好ましい磁気光学効果が得られている。
【0026】
一方、本発明の組成範囲から外れる比較例13においては、合金膜内にB81 型構造は存在するが磁気光学効果は示さなかった。また同じように本発明の組成範囲から外れる比較例14においては、実施例と同じ熱処理をしたにもかかわらず膜中にB81 型結晶構造は現われなかった。
【0027】
【表1】
【0028】
【発明の効果】
本発明では以上説明したように、一軸異方性を有するB81 型結晶構造を含むことで、例えばTbFeCo膜などに比べ優れた磁気光学特性を備えた光磁気薄膜を得ることができる。
【0029】
さらに、記録層を構成する光磁気薄膜がこれらの特徴を有する光磁気記録媒体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例および比較例の組成
【産業上の利用分野】
本発明は、光磁気記録媒体の記録層などに有用な、磁気光学効果を利用する光磁気薄膜およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光記録媒体は、高密度、大容量の情報記録媒体として種々の研究開発が行われている。特に情報の繰り返し記録消去が可能な光磁気記録媒体は応用分野が広く、さまざまな光磁気記録媒体が発表されている。ところでこれまでの光磁気記録システムでは、波長830nm のレーザ光が通常用いられている。しかし、将来的により高密度記録を実現するシステムでは、現在用いられているレーザ光波長よりもさらに短い400 〜550nm の短波長レーザ光の使用が考えられている。
【0003】
ところでこうした光磁気記録媒体には、磁気光学効果を有する光磁気薄膜が記録層として用いられる。そして現在市販されている光磁気記録媒体においては、通常記録層として膜面に対し垂直方向に磁気容易軸を持ち、垂直磁気異方性に優れたTbFeCo膜などの稀土類遷移金属非晶質合金が用いられている。ただしこれらの記録膜では、短波長領域では有効な磁気光学特性を得ることができない。それに対し短波長領域における磁気光学特性と垂直磁気異方性とを有する磁気記録膜として、白金(Pt)層とコバルト(Co)層とを交互に積層した構造のCo/Pt多層膜等が、実用化に向けてこれまで盛んに研究されて来た。
【0004】
しかし記録膜を構成するこれらの光磁気薄膜のKerr回転角は 0.2°〜 0.3°であり、光磁気記録媒体として高い信号雑音比を得るために、さらに大きなKerr回転角を有する光磁気薄膜が求められている。
【0005】
このような光磁気薄膜としては、蒸着やスパッタリングにより形成するC1b型結晶構造を持つPtMnSbのホイスラー合金(Pt:Mn:Sb = 1:1:1)が広く知られている(例えばP.G. van Engen et al., Appl.Phys.Lett.,42,202(1983) )。このPtMnSbホイスラー合金膜は、Kerr回転角の点で優れた磁気光学特性をポテンシャルとしてもつ光磁気薄膜として盛んに研究されてきた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらC1b型結晶構造をもつPtMnSbホイスラー合金膜は、磁気異方性が小さいという欠点をもつ。これは光磁気薄膜に必要とされる機能、すなわち一方向に磁気容易軸を有した垂直磁化膜として機能の点において、記録の安定性等を考慮した場合に不都合であった。一方、ホイスラー合金以外の結晶構造と組成の従来のPtMnSb三元系合金においては、磁気光学特性をほとんど有しない。このようにこれまでのMnSbPt三元系合金膜では、光磁気記録媒体の記録層等への用途を考えた光磁気薄膜としては不適当であった。
【0007】
本発明の目的は、一軸異方性を有するMnSbPt合金であって、かつTbFeCo膜などに比べ優れた磁気光学特性を備えた光磁気薄膜を得ることである。さらに、記録層を構成する光磁気薄膜がそうした特徴を有する光磁気記録媒体を得ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明における光磁気薄膜は、マンガン(Mn)、アンチモン(Sb)、白金(Pt)よりなる3元系合金からなるスパッタリングによって形成された合金薄膜であって、その組成がMnaSbbPtc、40≦a≦60、32≦b≦55、1≦c≦20、a+b+c=100(ただしa、b、cは原子%による組成比)であり、かつB81型結晶構造を合金中に75体積%以上含むことを特徴としている。
【0009】
従来のC1b型結晶構造をもつPtMnSbホイスラー合金膜は、立方晶であるため対称軸が4本存在する。このため磁気容易軸が複数存在し、磁気異方性が小さいものとなっていた。一方、ホイスラー合金以外の組成の従来のPtMnSb三元系合金においては、一軸異方性を有する六方晶系の結晶構造が存在する。しかしながら、従来の六方晶系の結晶構造をもつMnSbPt三元系合金膜は、不規則相であって磁気光学特性をほとんど有しないものとなっていた。すなわち、組成が本発明と同じだけの合金膜では磁気光学効果はほとんど発現せず、記録材料等への用途に適さなかった。しかしながら膜構造と磁気光学特性につき鋭意検討した結果、C1b型結晶構造の体積比率が少なく、B81 型(NiAs型)結晶構造を75体積%以上含む本発明の合金膜には優れた磁気光学特性があることを見い出した。
【0010】
すなわち本発明の光磁気薄膜としては、磁化容易軸が記録層形成面に対して垂直である一軸異方性を有する必要がある。そしてそのためには、合金中にB81 型結晶構造が75体積%以上含まれる必要がある。このための組成としてはMna Sbb Ptc 、40≦a≦60、c≦20、a+b+c=100 とする必要がある。本組成の合金では、75体積%以上のB81 型結晶構造の存在で優れた磁気光学効果が発現する。
【0011】
そして光磁気記録において情報の読み出しを行う際には、十分な磁気光学特性を有することが必要である。そこでカー回転角を実用上必要な 0.4°より大きくするために、光磁気薄膜の組成はMna Sbb Ptc 、32≦b≦55、1 ≦c、a+b+c=100 とする必要がある。
【0012】
従って本発明の光磁気薄膜においては、組成がMna Sbb Ptc 、40≦a≦60、32≦b≦55、1 ≦c≦20、a+b+c=100 であり、かつB81 型結晶構造が合金中に75体積%以上含まれる必要がある。
【0013】
またさらに光磁気薄膜としては、B81 型結晶構造をより確実に安定して含み、磁化容易軸が記録層形成面に対して垂直である一軸異方性をより有するものであることが好ましい。かつTbFeCo膜などに比べカー回転角がより大きいことが好ましい。すなわちカー回転角は 0.5°以上であることが好ましい。
【0014】
そのために光磁気薄膜としては、組成範囲をMna Sbb Ptc 、35≦b≦52、 2a+b≧ 130、a+b+c=100 であって、かつB81 型結晶構造を合金中に80体積%以上含むことがより好ましい。
【0015】
ここで、上述のMnSbPt合金組成においてB8 1 型結晶構造を含む磁化膜を得るには、スパッタリングを用いることができる。この時使用する蒸発源は、MnPtSb合金蒸発源であってもよいし、各元素の独立した蒸発源であってもよい。例えば、スパッタリングにより合金薄膜を作成する際には、MnSbPt合金ターゲットを使用してもよいし、Mnターゲットの上にPt、Sbのチップを載置した、いわゆる複合ターゲットを使用してもよい。そして合金膜中にB8 1 型結晶構造が含まれるようにするためには、製膜中もしくは製膜後に基板加熱(アニール)などによって、光磁気薄膜の熱処理を行う方法を用いることができる。その際に、よりB8 1 型結晶構造が含まれるようにするためには、300℃以上の温度で熱処理することがより好ましい。
【0016】
また本発明による光磁気薄膜は、上述の特徴を生かして光磁気記録媒体の記録層や光アイソレーター等の磁気光学素子の材料として用いることができる。なおこの際に用いられる基板や下地層および誘電体膜は特に限定されない。
【0017】
さらに本発明による光磁気薄膜は、添加元素効果や下地層効果等により一層の特性改善を図るようにしてもよい。このとき添加元素としては、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Re、Rh、Ag、In、Sn、Hf、Ta、W、Os、Ir、Au、Pb、Pd、Bi等が例示される。
【0018】
あるいは、他の金属薄膜、誘電体薄膜と前記MnSbPt合金薄膜とを交互に積層し、いわゆる人工格子構造光磁気記録媒体として効率の改善を図ることも可能である。
【0019】
【実施例および比較例】
図1は、本発明の実施例および比較例として作成したMnSbPt合金薄膜試料の組成を示す。図中、底辺はMnの組成比(原子%、左端が70原子%、右端が30原子%)、左斜辺はPtの組成比(原子%、上端が40原子%、下端が0 原子%)、右斜辺はSbの組成比(原子%、上端が30原子%、下端が70原子%)の目盛り軸を示す。さらに、図中の◎印は実施例1〜11、そして○印は実施例12の組成を示す。ここで比較例1〜12の組成は、実施例1〜12の組成と同じである。また図中の×印は比較例13〜14の組成を示す。
【0020】
そして実施例と比較例は次のように作製した。まず、RFマグネトロンスパッタリング装置のチャンバー内に、複合ターゲットとしてMnSbターゲットとその上にPtのチップを、作製する膜組成に応じて適宜載置した。さらにその複合ターゲットと対向する水冷装置付きの基台に、ガラス基板を設置した。そしてガス圧1.7 〜6.7 Pa(=13〜50mTorr )のArガス雰囲気中で、RFスパッタリングを行い、ガラス基板上にMnSbPt合金薄膜を製膜した。
【0021】
さらに実施例および比較例13〜14については、製膜後に 300℃で 0.7mPa(=5×10-6Torr)以下の真空中で10時間熱処理を行った。
【0022】
こうして得られたMnSbPt合金薄膜の組成は、電子プローブ微小分析法(EPMA)により確定した。また薄膜の結晶構造はX線回折法により決定した。種々の磁気特性は偏光面変調法カースペクトル測定装置、振動試料型磁力計(VSM) により測定し評価した。
【0023】
表1には、実施例1〜12と比較例1〜13の各試料についての組成比と測定結果を示す。ただし、表1において組成比は原子%である。また表中のMs(emu/g,1emu/g =4π×10-7Wb・m/kg) は、磁性薄膜の飽和磁化で振動試料型磁力計(VSM) の測定値を磁性膜の質量で割った値である。またθk(deg)は、測定波長633nm での飽和カー回転角の絶対値を示す。また比較例14の組成比は、Mn=44.72原子%、Sb=33.14原子%、Pt=22.14原子%であった。
【0024】
表1に示したように比較例1〜12においては、結晶構造が不規則相六方晶系である。一方実施例1〜12においては、結晶構造にB81 型が75体積%以上含まれる薄膜となった。ここで実施例1〜11については、B81 型の結晶構造がより安定して確実に合金中に含まれるものとなった。
【0025】
そして表1の結果から判るように、比較例1〜12の不規則相六方晶系の合金膜は、磁気光学効果がほとんどないか、小さい値しか示さない。これに対し実施例1〜12で示すとおり、同じ組成でもB81 型構造が合金膜中に存在すると、優れた磁気光学効果が得られることがわかる。そしてB81 型構造がより安定して確実に含まれる実施例1〜11のものは、より好ましい磁気光学効果が得られている。
【0026】
一方、本発明の組成範囲から外れる比較例13においては、合金膜内にB81 型構造は存在するが磁気光学効果は示さなかった。また同じように本発明の組成範囲から外れる比較例14においては、実施例と同じ熱処理をしたにもかかわらず膜中にB81 型結晶構造は現われなかった。
【0027】
【表1】
【0028】
【発明の効果】
本発明では以上説明したように、一軸異方性を有するB81 型結晶構造を含むことで、例えばTbFeCo膜などに比べ優れた磁気光学特性を備えた光磁気薄膜を得ることができる。
【0029】
さらに、記録層を構成する光磁気薄膜がこれらの特徴を有する光磁気記録媒体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例および比較例の組成
Claims (5)
- マンガン(Mn)、アンチモン(Sb)、白金(Pt)よりなる3元系合金からなり、スパッタリングによって形成された合金薄膜であって、その組成がMnaSbbPtc、40≦a≦60、32≦b≦55、1≦c≦20、a+b+c=100(ただしa、b、cは原子%による組成比)であり、かつB81型結晶構造を合金中に75体積%以上含むことを特徴とする光磁気薄膜。
- 組成がMnaSbbPtc、40≦a≦60、35≦b≦52、1≦c≦15、2a+b≧130、a+b+c=100であり、かつB81型結晶構造を合金中に80体積%以上含むことを特徴とする請求項1記載の光磁気薄膜。
- 請求項1〜2のいずれかに記載の光磁気薄膜を記録層に用いたことを特徴とする光磁気記録媒体。
- 請求項1〜2のいずれかに記載の光磁気薄膜の製造方法において、光磁気薄膜の製膜中もしくは製膜後に、光磁気薄膜の熱処理を行うことを特徴とする光磁気薄膜の製造方法。
- 熱処理を300℃以上で行うことを特徴とする請求項4記載の光磁気薄膜の製造方法。
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JP05201393A JP3636478B2 (ja) | 1993-03-12 | 1993-03-12 | 光磁気薄膜、光磁気記録媒体、およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP05201393A JP3636478B2 (ja) | 1993-03-12 | 1993-03-12 | 光磁気薄膜、光磁気記録媒体、およびその製造方法 |
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Publication Number | Publication Date |
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JPH06267743A JPH06267743A (ja) | 1994-09-22 |
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Family
ID=12902943
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP05201393A Expired - Fee Related JP3636478B2 (ja) | 1993-03-12 | 1993-03-12 | 光磁気薄膜、光磁気記録媒体、およびその製造方法 |
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Country | Link |
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1993
- 1993-03-12 JP JP05201393A patent/JP3636478B2/ja not_active Expired - Fee Related
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Publication number | Publication date |
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JPH06267743A (ja) | 1994-09-22 |
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