JP3636241B2 - 内燃機関に作用する摩擦力の計測装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関のピストンとシリンダの間に作用する摩擦力の大きさを正確に計測する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関において、ピストンとシリンダの間に作用する摩擦力の大きさを計測するために、シリンダライナをシリンダブロックに固定しないで、上下方向に、即ち、ピストンの摺動方向と同じであるシリンダライナの中心軸線方向に摺動することができるように支持し、シリンダライナ内でピストンが上下方向に往復摺動することに伴って生じる可動のライナの上下方向の変位量を、ピエゾ式のピックアップのような手段によって検出する「可動ライナ法」と呼ぶべきものが知られている(自動車技術会の研究論文No.29,1984参照)。このように、シリンダブロック内で上下方向に可動に支持されたシリンダライナによってピストンの摩擦力の反力を計測する手法は古くから研究されている。
【0003】
しかしながら、従来の可動ライナ法によって摩擦力を計測する場合には、上下方向に可動のシリンダライナを、スラスト力等の横方向力が作用する条件において上下方向に摺動可能に支持する横方向支持手段が必要になるが、その横方向支持手段とシリンダライナとの間に作用する摩擦力によって、検出すべきピストンとシリンダの間に作用する摩擦力に誤差が入るという問題があると共に、一般に内燃機関において振動が大きくなる高回転時に、シリンダライナの上下方向の運動に伴ってシリンダライナの質量に作用する上下方向の慣性力によって、摩擦力の計測結果に大きな誤差が入るという問題がある。
【0004】
そこで、シリンダブロック内の横方向力支持手段とシリンダライナとの間の摩擦力によって、ピストンとシリンダライナとの間に作用する摩擦力の計測値に大きな誤差が入るのを避けるために、また、ピストンとシリンダライナとの間に作用する摩擦力だけではなく、前述のスラスト力の大きさをも計測することもできるように、シリンダライナを、それとシリンダブロックとの間に設けた剛性の高い3分力センサによって浮動的に支持するという「3分力センサ法」が提案されている(自動車技術会の研究論文No.37,1988参照)。
【0005】
3分力センサ法においては、摩擦力やスラスト力等のシリンダライナに作用する外力は全て3分力センサのみによって支持、伝達されるために、また、シリンダライナとシリンダブロックとの間に複数個の3分力センサを挿入設置する空間を確保する必要があるために、可動のシリンダライナを冷却するための冷却水が流れる通路(ウオータージャケット)をシリンダライナと一体に形成することになるので、3分力センサは、シリンダライナそのものだけでなく、それと一体に形成されたウオータージャケットの部分と、その中に充満して流れている冷却水を同時に浮動的に支持することになる。従って、3分力センサが支持する慣性質量がシリンダライナのみに比べて相当に大きくなるので、システムの振動が大きくなる高回転時には、この大きな質量に作用する慣性力による誤差が無視できない程度に大きくなるという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述の可動ライナ法においてシステムの振動が大きくなる高回転時の慣性力の影響を排除する点に関しては、その対策として、まずシリンダライナに作用する振動の加速度を検出し、この加速度とシリンダライナの質量から慣性力の大きさを算出して、その分を可動ライナ法の出力から差し引くという補正方法が考えられる。しかしながら、実際に生じている振動の変化に対して、検出された振動の加速度に基づいて補正を加えて算出される可動ライナ法による出力の変化には時間的な遅れがある上に、この遅れ時間の大きさは温度等の条件によっても変化するので、補正のために遅れ時間を正確に検出することが容易ではない。従って、可動ライナ法の出力から慣性力の分を差し引くだけでは、ピストンとシリンダの間に作用する摩擦力の大きさを正確に計測することができない場合がある。
【0007】
本発明は、これら従来の可動ライナ法や3分力センサ法における前述のような問題に対処して、或いは、それらの問題を解決しようとする試みにおける問題に対して、振動が大きい高回転時においてもピストンとシリンダの間に作用する摩擦力を正確に計測することができると共に、横方向力支持手段とシリンダライナとの間に発生する摩擦力が小さくて、その摩擦力による誤差も少ない、ピストンとシリンダの間に作用する摩擦力を計測するための改良された計測装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記の課題を解決するための手段として、特許請求の範囲の各請求項に記載された計測装置を提供する。
【0009】
本発明の計測装置においては、基本的に弾性変形可能な支持部材に関連して設けられてピストンの摺動方向においてシリンダライナに作用する荷重を検出する荷重検出手段、同じ方向の振動を検出する振動検出手段、荷重検出手段及び振動検出手段の出力を記録する記録手段に加えて演算手段が設けられており、機関の運転中の各時点における荷重検出手段及び振動検出手段の出力データが記録されて蓄積される。そして、ピストンの上死点又は下死点においては摩擦力が零になるため、荷重検出手段が検出する荷重は摩擦力以外の振動による慣性力のみであることから、この時点において荷重検出手段によって検出された荷重値が、振動検出手段によって検出された慣性力の値と同じであれば、2つの検出値に時間的なずれがないものとみなして、それ以外の時点についても、検出された荷重の値から、対応して検出された振動慣性力の値を差し引くことにより、ピストンとシリンダの間に作用する摩擦力に相当する真の荷重を算出する。
【0010】
しかしながら、荷重検出手段によって検出される荷重の値が、振動の加速度に対して時間的に遅れて影響を受ける場合には、ピストンの上死点又は下死点において荷重検出手段が検出する荷重をそのまま上死点又は下死点における振動慣性力の大きさを示すものとすることはできないから、請求項1記載の計測装置においては、特別の演算手段がピストンの上死点又は下死点における荷重検出手段の出力の記録値に対して、振動検出手段の出力の記録値が実質的に同じになるまで振動検出手段の出力の記録値の時間をずらせた後に、これを新たに振動検出手段の出力の記録値として、任意の時点において、荷重検出手段の出力の記録値からこの振動検出手段の出力の記録値を差し引くことによって真の荷重を算出する。このようにして算出されたシリンダライナに作用するピストンの摺動方向の荷重の大きさは、振動の影響を取り除いたピストンとシリンダの間に作用している真の摩擦力の大きさを示している。
【0011】
請求項2の計測装置においては、シリンダライナの支持部材が、例えばシリンダライナに形成されたフランジのように、シリンダライナとシリンダブロックとの間に介在する板状の部材によって構成されているから、ピストンの摺動方向におけるシリンダライナの移動は、この板状の部材の弾性変形をもたらすので、板状の部材に歪ゲージのような荷重検出手段の検出部を設けることによって、シリンダライナの移動量に対応する荷重、即ち、ピストンとシリンダの間に作用する摩擦力と、振動による慣性力の合力を容易に検出することができる。
【0012】
請求項3の計測装置においては、荷重検出手段が、支持部材に貼り付けられた複数の歪ゲージと、該複数の歪ゲージを要素とするブリッジ回路を含んでいるので、シリンダライナの移動に伴う支持部材の弾性変形によって歪ゲージから出力される電気的な信号がブリッジ回路において、シリンダライナに作用する荷重の値を示す電圧に変換される。この電圧は処理の容易な信号として次の演算手段に入力される。
【0013】
【発明の実施の形態】
図2は本発明計測装置の実施形態の要部構成を示す断面図であって、図3はその一部の分解斜視図である。図示例の機関部分の構成は実用の内燃機関と概ね同じであって、1はシリンダブロック、2はシリンダブロック1の上部に取り付けられたシリンダヘッド、3はシリンダブロック1の内部に支持される鋼製のシリンダライナ、4はシール用のガスケットである。5は段部51を有する円環状のカラーであって、シリンダブロック1の上部の段部1aに嵌合しており、シリンダライナ3の上部において一体に円環状に外部へ張り出すように形成されているフランジ31の周縁部分を段部51に受け入れると共に、そのフランジ31の周縁部分をシリンダヘッド2側のガスケット4との間に挟み込むことによって、シリンダライナ3を支持するものである。
【0014】
シリンダブロック1の比較的下部寄りには内方へ張り出すシールランド1bが形成されている。シールランド1bにはシリンダライナ3の外径よりも少し大きい内径を有する円形の穴1cが形成されていて、円形の穴1cにシリンダライナ3の下部が緩く挿入されている。円形の穴1cには溝1dが形成され、その中にはOリング6が装着されてシリンダライナ3の下部と接触している。従って、シリンダライナ3が上下方向に僅かに移動する時は殆ど摩擦力を発生させることがないし、シリンダライナ3が僅かな角度だけ傾斜すると、フランジ31が弾性変形すると共に、Oリング6も弾性変形してシリンダライナ3の微小な横方向移動や傾斜を許すことができる。そして、シリンダライナ3の上下方向の移動は勿論のこと、横方向の僅かな移動や傾斜の際にもOリング6のシール作用が損なわれないので、シリンダライナ3の外側にシリンダブロック1の内面の凹所として形成されるウオータージャケット15の空間に冷却水が流れていても、冷却水が外部へ洩れ出る恐れがない。
【0015】
なお、図2において21及び22はシリンダヘッド2に形成された吸気ポート及び排気ポートであって、23及び24はそれらのポートを開閉する吸気弁及び排気弁を示している。また8はシリンダライナ3に挿入されたピストン、9はシリンダライナ3の上端とシリンダヘッド2の間に設けられたシール用のOリングである。このOリング9も下部のOリング6と同様に、シリンダライナ3の微小な上下方向の移動を実質的に摩擦なしに許すと共に、シリンダライナ3の微小な傾斜をも許すことができ、そのようにシリンダライナ3が移動或いは傾斜した時にシリンダヘッド2との間で気密性を保持する作用をする。
【0016】
図2及び図3から明らかなように、シリンダライナ3の上部に一体に形成されたフランジ31の特定の位置においてその周縁部分を避けた上下の面に歪ゲージ7が貼り付けられる。即ち、フランジ31の特定の位置の上面に歪ゲージ7aが貼り付けられると共に、同じ位置のフランジ31の下面に歪ゲージ7bが貼り付けられる。また、それらと対称の位置の上面に歪ゲージ7cが貼り付けられると共に、その下面に歪ゲージ7dが貼り付けられる。ここで、特定の位置と言うのは、歪ゲージ7aと歪ゲージ7c、或いは歪ゲージ7bと歪ゲージ7dをそれぞれ結ぶ直線の方向が、シリンダヘッド2の側からピストン8を平面的に見たときに、ピストンピン81の方向に対して直角に交差するようになっていることを意味する。
【0017】
シリンダライナ3のフランジ31の特定の位置に貼り付けられた4枚の歪ゲージ7a,7b,7c及び7dは、図1に示すようなブリッジ回路10を形成するように電気的に接続される。図1において、10aは定圧電源を、10b及び10cはブリッジ回路10の出力端子を、10dはブリッジ回路10の出力信号を増幅する増幅回路を示す。増幅回路10dの出力はコンピュータ(CPU)13に入力される。
【0018】
図2に例示するように、シリンダヘッド2或いはシリンダブロック1の一部に上下方向の振動を検出することができる振動センサ11が取り付けられ、その出力信号が図1に示すように増幅回路11aによって増幅されてCPU13に入力される。また、図示しないクランクシャフトの回転位置を検出することができるクランク角センサ12が設けられ、その出力信号が増幅回路12aによって増幅されて、やはりCPU13に入力される。図1には示していないが、クランクシャフトの2回転に1個のパルス信号を発生する基準位置信号センサも併設され、その出力信号が増幅回路によって増幅されてCPU13に入力される。
【0019】
次に、図1及び図2に示した本発明の実施形態の作動を説明する。シリンダライナ3の内部でピストン8が上下方向に摺動すると、それらの間に作用する摩擦力によって、シリンダライナ3もピストン8と共に上下方向に移動しようとするが、シリンダライナ3はそのフランジ31の周縁部分が、シリンダブロック1の上部に取り付けられたカラー5とシリンダヘッド2の側に取り付けられたガスケット4の間に挟まれて固定されているので、シリンダライナ3の僅かな上下方向の移動によって、フランジ31は弾性変形して撓むことになる。フランジ31の部分的な撓み(歪み)は4個の歪ゲージ7のそれぞれに伸縮をもたらすので、それらの抵抗値が歪みの大きさに応じて変化して、ブリッジ回路10の出力端子10b,10cの間の電位差(電圧)が変化する。この電圧は増幅回路10dによって増幅されて、ピストン8とシリンダライナ3の間に作用している力の大きさを示す値としてCPU13に入力される。
【0020】
ピストン8の移動に伴う摩擦力によってシリンダライナ3が上下方向に僅かに移動するとフランジ31は上又は下に凹の皿形に弾性変形する。図2においてフランジ31の左右の位置における歪みが垂直軸線に関して対称的な形になる場合には、歪ゲージ7aと歪ゲージ7cが検出するフランジ31の歪み(撓み量)が同じ大きさになると共に、歪ゲージ7bと歪ゲージ7dがそれぞれ検出する歪み(撓み量)が同じ大きさになる。つまり、歪ゲージ7aが伸びる時には歪ゲージ7cも同じ量だけ伸び、その時に歪ゲージ7bが縮むと、歪ゲージ7dも同じ量だけ縮むことになる。この場合は図1に示すブリッジ回路10上において対向している歪ゲージ7aと歪ゲージ7cの抵抗値が同じように変化すると共に、歪ゲージ7bと歪ゲージ7dの抵抗値が同じように変化するので、出力端子10b,10cの間にはピストン8とシリンダライナ3の間に作用する摩擦力の大きさに応じた電圧が出力されることになる。
【0021】
ピストン8がシリンダライナ3を横方向に押す所謂スラスト力が作用している場合には、シリンダライナ3が僅かに横方向に移動するので、フランジ31は部分的に横方向に伸縮する。それによって歪ゲージ7aと歪ゲージ7bが縮む時には、歪ゲージ7cと歪ゲージ7dが伸びることになる。このように、図1のブリッジ回路10上において対向する歪ゲージの抵抗値が反対方向に増減するから、図1及び図2に示す実施形態において、スラスト力の作用によっては出力端子10b,10cの間には何らの電位差も生じない。これは、本発明の実施形態によれば、スラスト力の影響を受けないで上下方向に作用する摩擦力のみを正確に計測することができることを意味する。
【0022】
また、実施形態のみならず本発明の装置はいずれも、高回転時等において装置全体が激しく振動するような場合でも、フランジ31によって支持されるものはシリンダライナ3のみであって、従来の3分力センサ法のようにシリンダライナ3にウオータージャケットや、それに収容される冷却水のような大きな慣性質量が付随していないから、シリンダライナ3に作用する慣性力は比較的小さく、それが出力端子10b,10c間の出力電圧、従って作用する力の計測値に及ぼす影響は無視することができる。また、Oリング6とシリンダライナ3の間の摩擦力や、Oリング6の弾性変形による反力も、フランジ31の弾性変形による反力に比べて十分に小さいため、その影響も殆どない。
【0023】
以上の作動の結果、理想的な場合は、歪ゲージ7のブリッジ回路10の出力電圧、或いは増幅回路10dの出力信号として、図5(a)に示すような変化する荷重のデータが得られる。ただし、これを実質的に真の摩擦力とみなし得るのは、振動によってシリンダライナ3に作用する慣性力が摩擦力に比べて十分に小さい時だけに限られる。振動が大きくて振動センサ11によって図5(b)に示すような波形の振動加速度(或いは振動慣性力)が検出される時には、歪ゲージ7のブリッジ回路10から図5(a)に示すような形の摩擦力出力が得られたとしても、それは摩擦力の他に、振動によってシリンダライナ3に加わる無視できない大きさの慣性力の成分を含んでいる。この慣性力の成分は、振動センサ11の出力信号を増幅器11aによって増幅した後にCPU13へ入力し、増幅器10dから入力される歪ゲージ7のブリッジ回路10からの出力信号に補正を加えることによって除去される。
【0024】
更に、振動慣性力は図5(c)に示すように、図5(b)のような振動加速度が、摩擦力測定系(弾性体であるシリンダライナ3、フランジ31、歪ゲージ7a〜7d)を伝わる際に生じる遅れ時間の分だけずれて歪ゲージ7のブリッジ回路10から出力される場合がある。その結果、歪ゲージ7のブリッジ回路10の出力(荷重)は、図5(d)に示すように、図5の(a)と(c)の和の形で出力されるので、特別の補正が必要になる。
【0025】
以上のように、CPU13内において荷重から振動慣性力を差し引く動作を図4のフローチャートによって説明する。ステップ301において、CPU13は基準位置信号パルスを検出した時にクランク角センサ12の信号をカウントしながら、下死点(BDC)まで待機する。下死点に到達すると、ステップ302に進んで、フランジ31と歪ゲージ7を変形させた荷重のデータとして、増幅回路10dの出力を取り込む。ステップ303では、取り込んだ歪みのデータに、フランジ31の材料の弾性係数とフランジ31の形状によって決まる係数とを掛け合わせて荷重の値を求める(計算1)。
【0026】
こうして得られた荷重の値は、前述のように真の摩擦力に対して、摩擦力測定系の振動慣性力が加わったものである。ステップ304では、上述の荷重のデータをメモリに記録する。
【0027】
次にステップ305において振動センサ11の検出信号を、増幅回路11aを介して取り込む。ステップ306では、取り込んだ振動加速度のデータにシリンダライナ3の質量を掛け合わせて振動慣性力を求める(計算2)。そしてステップ307では、算出された振動慣性力のデータをメモリに記録する。その後、ステップ308からステップ302に戻り、次の下死点に到達するまで、所定の短時間の周期でステップ302からステップ307までの動作を繰り返す。このようにして、下死点から次の下死点までの荷重のデータ(図5(d)参照)と振動慣性力のデータ(図5(b)参照)が得られる。
【0028】
ステップ309では、例えば上死点(或いは下死点でもよい)での荷重のデータhと、振動慣性力のデータh′とを比較する。仮に、シリンダライナ3、フランジ301、歪ゲージ7a〜7dからなる摩擦計測系が、図5(b)のような振動加速度に対して遅れないで振動慣性力の影響を含む荷重を出力した場合には、図5(a)のように上死点(或いは下死点)における実際の(真の)摩擦力は零であるから、計算1(実際の摩擦力+振動慣性力)の結果hは、計算2(振動慣性力)の結果h′と同じになる筈である。従って、そのようになった時にはステップ311にジャンプして、下死点以外でも計算1の値(図5(d)参照)から計算2の値(図5(b)参照)を差し引くことによって実際の(真の)摩擦力の値(図5(a)参照)が得られる。
【0029】
また、振動センサ11と歪ゲージ7の設置位置の相違等から、摩擦計測系が、図5(b)に示すような実際の(真の)振動加速度に対して遅れて、図5(c)のような波形の時間的にずれた振動慣性力の影響を受ける場合には、位相がずれた分だけステップ309における上死点での計算1の結果hと計算2の結果h′が食い違うことになる。その時はステップ310に進んで、記録されている図5(b)のような計算2の振動慣性力のデータを1個ずつ後へずらしてh′の値を変えてから、再びステップ309に戻り、上死点における計算1のデータhと、ずらした時期の計算2のデータh′とを比較する。
【0030】
このように、309と310のステップを何回か繰り返して、振動加速度に対する振動慣性力の影響の遅れ分だけ、図5(b)に示す計算2の振動慣性力の影響を示す各データを時間的にずらせると、ステップ309において上死点における計算1のデータhと計算2のデータh′が同じ値になる時点が見つかる。この時点を上死点と定めて図5(b)を読みかえたものが図5(c)であって、図5(b)を時間軸上で(横に)ずらせたものである。これ以後の計算2のデータとしては図5(b)の代りに図5(c)を使用する。そこで、ステップ311にジャンプして、下死点以外の時点でも計算1のデータから修正後の計算2のデータを差し引くことによって実際の(真の)摩擦力のデータが得られる(計算3)。これは図5(d)から図5(c)を減算して図5(a)を求めることである。最後にステップ312において、前ステップまでに算出された補正後の(真の)摩擦力を出力した後に、ステップ301に戻って、次の下死点まで待機する。
【0031】
以上の実施形態では、摩擦力の計測のために、シリンダライナ3のフランジ31に貼り付けた歪ゲージ7a〜7dを用いているが、歪ゲージ7と同等のものとして、ロードセル等の荷重検出手段を使用しても同様に振動慣性力を補正した摩擦力の計測を行うことができる。また、歪ゲージ7のようなセンサを4個1組として設ける必要性は必ずしもなく、4個のうちの2個をダミーである抵抗や温度補正ゲージに置き換えることができる。さらに歪みを検出するためのフランジ31のような弾性変形し得る板状の部材は、シリンダライナ3を上下方向に可動の状態で弾力的に支持するものであれば他のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の電気的回路を含む全体構成図である。
【図2】本発明の実施形態の要部を示す縦断面図である。
【図3】実施形態の一部を分解して示す斜視図である。
【図4】実施形態における演算手段の作動を例示するフローチャートである。
【図5】実施形態の作動に関連する各データのタイムチャートである。
【符号の説明】
1…シリンダブロック
3…シリンダライナ
5…カラー
6…Oリング
7,7a〜7d…歪ゲージ
8…ピストン
10…ブリッジ回路
10b,10c…出力端子
10d,11a,12a…増幅回路
11…振動センサ
12…クランク角センサ
13…コンピュータ(CPU)
15…ウオータージャケット
31…フランジ
81…ピストンピン
Claims (3)
- シリンダブロックと、前記シリンダブロックの内部に支持されるシリンダライナと、前記シリンダライナの内面に沿って摺動して往復運動をするピストンと、前記シリンダライナを前記シリンダブロックによって支持するために設けられた弾性変形可能な支持部材と、前記支持部材に関連して設けられて前記ピストンの摺動方向において前記シリンダライナに作用する荷重を検出することができる荷重検出手段と、同じく前記シリンダライナに作用する同じ方向の振動を検出することができる振動検出手段と、前記荷重検出手段及び前記振動検出手段の出力を記録する記録手段と、更に、前記ピストンの上死点又は下死点における前記荷重検出手段の出力の記録と前記振動検出手段の出力の記録を比較して両者が実質的に同じ値になるまで前記荷重検出手段の出力の各記録に対して前記振動検出手段による振動慣性力の影響を示す各記録を時間的にずらした後に前記荷重検出手段の出力の記録から前記振動検出手段の出力の記録を差し引くことにより真の荷重を算出する演算手段とを備えていることを特徴とする、内燃機関のピストンとシリンダの間に作用する摩擦力の計測装置。
- 前記支持部材がシリンダライナと前記シリンダブロックとの間に介在する板状の部材からなることを特徴とする請求項1に記載された計測装置。
- 前記荷重検出手段が、前記支持部材に貼り付けられた複数の歪ゲージと、該複数の歪ゲージを要素とするブリッジ回路を含んでいることを特徴とする請求項1又は2に記載された計測装置。
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