JP3635743B2 - 内燃機関の燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の燃料噴射制御装置に関し、詳しくは、電子制御式燃料噴射制御装置の噴射時期制御の精度向上技術に関する。
【従来の技術】
ディーゼルエンジンでは、燃焼過程において、燃焼室に燃料が噴射されてから着火するまでの着火遅れ期間が存在するが、この着火遅れ期間は化学反応時間等により定まるものでありエンジン回転速度自体の影響は小さく略一定であるので、エンジン回転速度の上昇に従って噴射開始時期を進角させる必要がある。
即ち、エンジン回転速度が速くなると、1燃焼サイクル当たりの所要時間(換言すれば、クランク角度が1°進むのに必要な時間)が短くなるが、前述したように着火遅れ期間はあまり変化しないので、低速域と同等の噴射開始時期(所定のクランク角度)に設定しておくと、高速域で着火が開始されるときには、低速域の場合に比較してクランク角度が余計に進行していることになるので、高速域での燃焼の重心がより下死点側(膨張行程側)に移行することになり、良好な燃焼が得られなくなる。そこで、高速域では、噴射開始時期を、低速域に比べて進角させる必要がある。
このため、従来のディーゼルエンジンの燃料噴射ポンプでは、エンジン回転速度の上昇に従って、噴射開始時期を進角させる特性を持たせるため、機関駆動されるドライブシャフトと、ポンププランジャを駆動するカムディスクと、の間の回転位相差を変化させるべく、タイマが内装するタイマピストンを、回転速度の上昇に連れて上昇する燃料圧力を利用して移動させることで、これに連動するように構成されたローラホルダ延いてはカムディスクと、ドライブシャフトと、の間に回転位相差を発生させるようにした所謂機械式タイマ機構を備えるようにしたものがある。
さらに、回転負荷に応じて噴射時期を可変とすることで、運転性能,排気性能,燃費,騒音・振動等を改善することができるので、図10等に示すように、タイミングコントロールバルブ(高速電磁弁。Timing Controll Valve;TCV )の開度制御により、高圧室に作用する油圧を低圧室にバイパスさせることで、タイマの内装するタイマピストンの位置を移動させて、前記同様にローラホルダ延いてはカムディスクとドライブシャフトとの間の回転位相差を運転中でも制御可能とした電子制御式燃料噴射ポンプも提案されている。
なお、フロー中或いは図中において、ITは「噴射時期」を意味する(以下、同様)。
ところで、電子制御式燃料噴射ポンプにおける噴射時期の制御方法としては、
▲1▼図10に示すように、例えば、回転負荷に対応した目標タイマ進角が得られる目標タイマピストン位置と、タイマピストン位置測定値(実タイマピストン位置)と、を比較し、実タイマピストン位置が、目標タイマピストン位置となるように、タイマピストン位置をフィードバック制御するようにした静的噴射時期制御方法がある。
▲2▼また、図11に示すように、回転負荷に対応した目標噴射時期と、基準角度信号に対する実際の燃料噴射弁の針弁リフト時期(噴射管の歪み、管内圧から予測する方法もある)と、を比較して、針弁リフト時期が、目標噴射時期となるように、タイマピストン位置をフィードバック制御するようにした動的噴射時期制御方法がある。この方法によれば、実際の動的な噴射時期に基づいて噴射時期を制御するので、上記▲1▼の方法に対し、より高精度な制御が行なえるという利点がある。
ところが、目標動的噴射時期は、一般に運転条件によってあまり変化しないという特性を有する。このため、上記▲2▼の動的噴射時期では、例えば加速時にエンジン回転速度が増大しても、目標値自体があまり変化しないので、タイマピストン位置を移動させる手段(例えば、上記TCV)への命令には変化がなく、加速後一旦実際の噴射時期が目標値から遅角し、この遅角が検出されて初めてフィードバック制御による進角制御が開始されることになるので、加速中等の噴射時期制御に遅れが生じ、十分に高精度なものとは言えなかった。
そこで、本願出願人は、この加速時等の過渡運転時の噴射時期制御をより高精度なものとするために、動的噴射時期から静的噴射時期を予測し(静的噴射時期=動的噴射時期+ΔIT,ΔIT=燃料輸送遅れなどに起因する噴射遅れ期間)、この予測した静的噴射時期に基づいて(即ち、動的噴射時期を動的噴射時期より大きく変化する静的噴射時期に変換して)フィードバック制御するようにした噴射時期制御方法(以下、静的補償型動的噴射時期制御方法と言う)を特願平7−190613号において提案した。
なお、動的噴射時期とは、実際に燃料が燃料噴射弁から噴射開始される時期を意味し、静的噴射時期とは、燃料噴射ポンプのセットタイミング+タイマ進角量等で定まる燃料の輸送遅れ等が考慮されない燃料噴射ポンプの燃料圧縮開始或いは吐出開始時期、タイマピストン位置等を意味するものである。
【発明が解決しようとする課題】
ところで、省資源,環境保護の見地から、より良好な燃焼、延いては燃費の低減、排気性能の向上を促進する必要があり、燃料噴射制御を更に高精度化する必要がある。特に、近年では、排気性能等を改善するために、所謂EGR制御を行なう場合が多く、かかる場合には、事実上空気過剰率が小さくなっているので、燃焼に影響を与える燃料噴射時期(IT)の制御遅れ等は、より敏感に燃焼悪化に影響し、燃費,排気性能,黒煙,パティキュレート(PM)の悪化を招き易い状況となっている。
また、噴射時期を高精度に制御することができれば、エンジンモディフィケーション(燃焼室形状、燃料噴射特性、EGR系の改良)により、運転領域によっては従来トレードオフの関係にあるとされていたNOxとPMとを双方同時に低減できるということも解明されているが、この領域は回転速度・負荷毎に異なるため、運転状態、特に、負荷に応じて噴射時期とEGR量の精密な制御が必要となってくる(図12〜図15参照)。
しかし、上記従来の静的補償型動的噴射時期制御方法にあっては、所定温度の標準的な燃料性状の燃料しか考慮できておらず、従って最大限に高精度化が図られているとは言えず、更に改善できる余地が残されているものであった。
即ち、静的補償型動的噴射時期制御方法において、回転に対する静的噴射時期と動的噴射時期との相関(差)を利用して静的噴射時期を補償(予測)する場合には、燃料の粘度μの変化によって、燃料の輸送遅れ時間(燃料の圧力上昇速度)が変化し、静的噴射時期と動的噴射時期との相関(差)、即ち、噴射遅れ期間ΔIT(=動的噴射時期−静的噴射時期)が大幅に変化することになるが、このことが考慮されていなかった(図16参照)。
より詳細に説明すると、通常燃料の標準的な粘度より低粘度な軽質燃料を使用すると、燃料噴射ポンプ内部のプランジャによる燃料の圧送効率(ポンプ効率)が低下し、また、プランジャ圧送行程での燃料のリーク量も増えるので、燃料の圧力上昇に時間を要することになるため、通常燃料を使用した場合とタイマピストン位置(進角量)を同じくしても、動的噴射時期(針弁が実際に開弁する時期)は、軽質燃料の場合の方が遅くなる。
このような場合、定常時や過渡運転時の静的噴射時期の予測が実際と異なるため、即ち、通常燃料を使用した場合の静的噴射時期の予測値に対し、軽質燃料を使用した場合の静的噴射時期の予測値は進角側に設定する必要があるのに、かかる考慮がなされていなかったので、進角量不足となり運転性,燃費,排気性能,黒煙,PM等が悪化する惧れがある。
逆に、通常燃料の標準的な粘度より粘度が高い重質燃料を使用すると、燃料噴射ポンプ内部のプランジャによる燃料の圧送効率が高くなり、また、プランジャ圧送行程での燃料のリーク量も減るので、燃料の圧力上昇の時間が短縮されることになるため、標準的な比重・粘度の場合とタイマピストン位置を同じくしても、動的噴射時期は、重質燃料の場合の方が早くなる。
このような場合、定常時や過渡運転時の静的噴射時期の予測が実際と異なるため、即ち、通常燃料を使用した場合の静的噴射時期の予測値に対し、重質燃料を使用した場合の静的噴射時期の予測値は遅角側に設定する必要があるのに、かかる考慮がなされていなかったので、進角量過大となりNOx、燃焼加振力増大に伴う騒音,振動等が悪化する惧れがある。
なお、標準的な燃料と同質の燃料を使用しても、燃料温度によって粘度は変化するので、上記と同様の問題が発生する。
ここで、市場における燃料の性状について、簡単に説明しておく。
ガソリンスタンドから供給される燃料は、常に一定性状の燃料ではなく、石油メーカーや地域によって若干異なる。特に寒冷地では、JIS特3号軽油といった軽質燃料が供給されるが、このJIS特3号軽油は、寒冷地における軽油のワックス化等を防止すると共に、冬期の寒冷地で良好な運転性が得られるような粘度特性等が与えられている。ところが、寒冷地であっても、春先から秋口にかけては、比較的気温も高くなるため、このような時期には、JIS特3号軽油を使用していても冬期に比較して粘度が大きく変化することになる。また、このような時期には、寒冷地でも、比較的重質な燃料(通常燃料や重質燃料)が供給される場合もあるため、一の標準的な燃料性状に合わせて噴射時期制御を行なおうとすると、上記のような問題が発生することになるのである。
ところで、上記従来の静的補償型動的噴射時期制御方法では、燃料噴射ポンプの時定数に応じて目標値を補正する(目標値にゲインを加える)ことで、噴射時期の応答遅れを改善しようとているが、燃料噴射ポンプの個体間の生産バラツキや燃料性状、及びドライバーの運転の癖等により、補正ゲインの適正値が変化してしまい、補正ゲインが大き過ぎる場合は目標値を上回る噴射時期になってしまい、逆に補正ゲインが小さ過ぎる場合は過渡運転時における所望の噴射時期応答性の改善効果が得られなくなってしまうという惧れもある。
さらに、従来において、動的噴射時期の検出により噴射時期を制御する場合、燃料が噴射されていない時(減速時のフューエルカット時等)には、針弁リフトセンサのセンサ出力がなくなり良好な制御が行なえなくなるため、例えば、TCVのデューティ比を固定したり、回転速度に応じてTCVのデューティ比を与えたりすることが一般的に行なわれている。
しかし、TCVのデューティ比を固定しても、駆動反力の影響でタイマピストンの位置は少しずつズレてしまうし、燃料性状や燃料温度の変化によって、大幅にタイマピストンの位置は変化することになるので、フューエルリカバリ時のタイマピストンの移動量が大きくなってしまう。また、針弁リフト量が小さく動的噴射時期(開弁時期)を良好に検出できないような低燃料噴射量時は、噴射時期が不安定になったり、燃料噴射量のバラツキが大きくなるので、燃焼が不安定となり、運転性や排気性能(特に、PM,HC)等が悪化する惧れもある。
本発明は、このような従来の実情に鑑みなされたもので、燃料性状や燃料噴射装置の個体間のバラツキや運転者の運転の癖等に起因する噴射時期制御の制御精度の低下を防止して、より一層、噴射時期制御の応答性向上と制御安定性とを高いレベルで両立させることができるようにした内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することを目的とする。また、本装置の噴射時期制御の制御精度を更に改善することも目的とする。更に、本装置において、減速時やフューエルリカバリ時の噴射時期制御の制御精度を向上させることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1に記載の発明にかかる内燃機関の燃料噴射制御装置は、図1に示すように、
運転状態に基づいて、燃料噴射弁から燃料の噴射を開始させる目標動的噴射時期を設定する目標動的噴射時期設定手段と、
燃料噴射弁から実際に燃料噴射が開始される時期に相当する動的噴射時期を検出する動的噴射時期検出手段と、
燃料噴射ポンプの燃料の圧縮開始時期或いは燃料の吐出開始時期に相当する静的噴射時期を制御する静的噴射時期制御手段と、
実際の静的噴射時期を検出する静的噴射時期検出手段と、
前記静的噴射時期検出手段の検出値と、前記動的噴射時期検出手段の検出値と、に基づいて、実際の静的噴射時期から実際の動的噴射時期までの噴射遅れ期間を検出する噴射遅れ期間検出手段と、
前記目標動的噴射時期を、前記噴射遅れ期間に基づいて、静的噴射時期に変換した目標値として算出する目標値変換算出手段と、
前記動的噴射時期検出手段により検出された動的噴射時期を、前記噴射遅れ期間に基づいて、静的噴射時期に変換した検出値として算出する検出値変換算出手段と、
前記目標値変換算出手段により算出された目標値と、前記検出値変換算出手段により算出された検出値と、に基づいて、前記静的噴射時期制御手段を制御する第1燃料噴射時期制御手段と、
を含んで構成した。
このような構成により、運転状態に応じて設定される目標動的噴射時期を、検出した実際の動的噴射時期と、検出した実際の静的噴射時期と、に基づいて求められる噴射遅れ期間に基づいて、静的噴射時期に変換した目標値として算出する一方、実際の動的噴射時期を、前記噴射遅れ期間に基づいて、静的噴射時期に変換した検出値として算出し、当該検出値が、前記目標値となるように、静的噴射時期制御手段(燃料ポンプの噴射時期制御装置)を制御するようにしたので、
従来の静的補償型動的噴射時期制御装置と同様に、従来の前記▲2▼の制御方法のように検出された動的噴射時期を目標の動的噴射時期に制御しようとした場合に比較して、運転状態の変化に対して制御目標値を比較的大きく変化させることができるので(即ち、従来の動的噴射時期によるフィードバック制御に対し、動的噴射時期を静的噴射時期に変換してフィードバック制御するようにすれば、運転状態の変化に伴い目標値が先に大きく変化することになるので、検出値と目標値との差を早く検知できるので)、運転状態変化に応答性よく追従した制御が行なえると共に、目標値に比較的急速に近づけるように静的噴射時期制御手段(燃料噴射ポンプの噴射時期制御装置〔例えば、タイマ機構のタイミングコントロールバルブ〕)への駆動量を制御しても制御安定性を高く維持することができ、以って燃料噴射時期の制御応答性,制御精度を向上させることができる。
さらに、従来の静的補償型動的噴射時期制御装置に対し、目標動的噴射時期を静的噴射時期に変換した目標値へ変換する際に、実測の噴射遅れ期間を用いて変換するようにしたので、燃料性状(粘度や温度)が変化しても、また、各部に生産バラツキ等があっても、これらの影響を全て含めて目標値を算出することが可能となるので、燃料性状や生産バラツキの影響を受けることのない高精度な噴射時期制御が行なえることになる。
請求項2に記載の発明では、
前記動的噴射時期検出手段が良好に実際の動的噴射時期を検出できない状態において、運転状態に基づき予め設定されている目標静的噴射時期と、前記静的噴射時期検出手段により検出された実際の静的噴射時期と、に基づいて、前記静的噴射時期制御手段を制御する第2燃料噴射時期制御手段を含んで構成した。
上記構成によれば、請求項1に記載の発明の作用効果に加え、良好に実際の動的噴射時期を検出できなくなる減速時やフューエルカット時、或いは故障時でも、機関回転速度に応じた噴射時期の制御が可能となる。また、フューエルリカバ時の静的噴射時期制御手段の制御量変化を大幅に低減できるほか、低燃料噴射量時の正確な噴射時期の制御が可能となるため、より一層、運転性能と排気性能とを向上できることとなる。
請求項3に記載の発明では、前記目標値変換算出手段が、
静的噴射時期に変換された目標値を算出する際に、噴射時期制御の応答遅れを改善すべく、噴射時期制御系の時定数に応じた進み処理を行なわせる進み処理手段と、
前記進み処理手段による処理結果を、前記目標値の算出に反映させるための応答遅れ補償ゲインを、運転条件に応じ、前記目標動的噴射時期と、前記動的噴射時期検出手段により検出された実際の動的噴射時期と、前記目標値変換算出手段により算出された目標値と、に基づいて、学習更新する応答遅れ補償ゲイン学習更新手段と、
を含んで構成されるようにした。
上記構成により、請求項1,請求項2に記載の発明の作用効果に加え、燃料ポンプの個体差や燃料性状変化や運転者の癖等に見合った制御応答性を達成することができるようになる。
請求項4に記載の発明では、前記目標値変換算出手段が、
静的噴射時期に変換された目標値を算出する際に、噴射時期制御の応答遅れを改善すべく、噴射時期制御系の時定数に応じた進み処理を行なわせる進み処理手段と、
前記噴射時期制御系の時定数を、運転条件に応じ、目標動的噴射時期の変化率と、前記目標値変換算出手段により算出された目標値の変化率と、に基づいて、学習更新する時定数学習更新手段と、
を含んで構成されるようにした。
上記構成によれば、請求項1,請求項2,請求項3に記載の発明の作用効果に加え、燃料ポンプの個体差や燃料性状変化による噴射時期制御系(タイマ機構等)の時定数の変化を補償することができるので、より一層噴射時期制御の制御精度を向上させることができる。
請求項5に記載の発明では、前記目標値変換算出手段が、
運転条件に応じて予め設定された噴射遅れ期間に基づいて、前記目標動的噴射時期を、静的噴射時期に変換した目標値として算出する手段を備えると共に、前記噴射遅れ期間検出手段により実際に検出された噴射遅れ期間に基づいて、前記予め設定されている噴射遅れ期間を学習更新する手段を備えて構成されるようにした。
過渡運転時、例えば、加速時には、回転速度の上昇に伴い噴射遅れ期間が増加するが、実測の噴射遅れ期間を用いるようにすると、1サイクル分遅れた値を用いることになるため、所望の噴射遅れ期間に比較して小さめな値となり、実噴射時期のズレの原因となるが、上記構成によれば、初回から所望の値に近い噴射遅れ期間を用いることができ、かつ、それを所望の噴射遅れ期間となるように学習更新させることができるので、実噴射時期のズレを極力改善することができる。更に、万一、静的噴射時期検出手段が故障等した場合でも、故障する前の値を用いて、噴射時期を決定することができることとなる。
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を、添付の図面に基づいて説明する。
第1の実施の形態の構成を示す図2は、図示しないディーゼル機関等に搭載される電子制御式のVE型燃料噴射ポンプ100を示している。なお、ディーゼル機関には、燃料噴射ポンプ100から圧送供給されてくる燃料を、所定圧力で開弁して燃料を噴射供給する燃料噴射弁114が設けられると共に、この燃料噴射弁114には、針弁のリフト(開弁)状態を検出して実際の動的噴射時期を検出する動的噴射時期検出手段としての針弁リフトセンサ114A(所謂ギャップセンサ等を用いることができる)が設けられている。この針弁リフトセンサ114Aの検出信号は、CPU,ROM,RAM,A/D変換器,入・出力I/F等から構成され機関制御(燃料噴射制御を含む)を行なうためのコントロールユニット119へ送られるようになっている。なお、コントロールユニット119は、以下に説明するように、本発明にかかる目標動的噴射時期設定手段、噴射遅れ期間検出手段、目標値変換算出手段、検出値変換算出手段、第1燃料噴射時期制御手段としての機能をソフトウェア的に備えるものである。
また、クランク角度信号を検出し燃料ポンプ100の回転速度或いは機関回転速度Neを検出する回転速度センサ118が設けられ、該検出信号もコントロールユニット119へ入力される。更に、アクセル開度(C/L)を検出するコントロールレバー開度センサ117が設けられ、この信号も、コントロールユニット119へ入力されている。
そして、燃料噴射ポンプ100では、燃料噴射量の制御は、運転者のアクセル操作に対応したコントロールレバー開度センサ117からの信号やエンジン回転速度等の信号を受けてコントロールユニット119で設定され出力される要求燃料噴射量に対応した制御信号に基づいて、ロータリソレノイド(ガバナモータ)106の回転角が制御され、当該ロータリソレノイド106に連結されたコントロールスリーブ105のプランジャ103の長手方向に対する相対位置を、移動させることにより行われる。つまり、プランジャ103により圧縮された燃料を、スピルポートを介してリークする位置(即ち、圧送ストローク)を制御することでなされる。
なお、プランジャ103の長手方向への往復運動は、機関回転に同期して回転駆動されるドライブシャフト101により、後述するタイマ機構を介して、ドライブシャフト101と所定の回転位相差をもって回転駆動されるフェイスカム104によってなされる。
また、ロータリソレノイド106の回転角度位置、即ちコントロールスリーブ105の位置は、コントロールスリーブ位置センサ107により検出され、コントロールユニット119へ入力され、これにより実際の燃料噴射量を検出することができるようになっている。これにより、実際の燃料噴射量が、アクセル開度に応じた目標の燃料噴射量となるように、コントロールスリーブ105の位置をフィードバック制御することができる。
一方、燃料噴射時期の制御は、タイマ機構を介して行なわれる。
即ち、コントロールユニット119の指令値(機関回転速度や負荷等に応じて予め設定されている)に基づき、タイミングコントロールバルブ(TCV)113のデューティ比を制御することによって、タイマピストン111に面する高圧室111A内の油圧を低圧室111B側にバイパスさせることで、タイマピストン111の位置を移動させ、レバー110を揺動させることで、レバー110に連結されるフェイスカム104と、ドライブシャフト101と、の間の回転位相差(即ち、噴射時期)を可変制御するようになっている。当該タイマ機構が、本発明にかかる静的噴射時期制御手段に相当する。
また、本実施形態では、タイマピストン111の位置を検出して静的噴射時期を検出する静的噴射時期検出手段としてのタイマピストン位置センサ112が設けられている。更に、燃料噴射ポンプ100内の燃料温度を検出する燃料温度センサ115と、機関水温を検出する水温センサ116と、が設けられており、これらの検出信号は、コントロールユニット119へ入力されている。
そして、燃料噴射ポンプ100には、燃料供給を停止し、機関運転を停止させるための燃料停止弁108が設けられている。なお、ポンプ室109は、図示しないフィードポンプによって加圧され送られてきた燃料を蓄えると共に、当該蓄えた燃料で燃料ポンプ100の内部を潤滑させるための室である。
以下に、本実施形態におけるコントロールユニット119が行なう燃料噴射時期制御について、図3のフローチャートに従って説明することにする。なお、当該フローは、回転同期(REF job)で行なわれる。
ステップ(図では、Sと記してある。以下、同様)1では、各種センサからの検出信号を取込み、機関回転速度Neや燃料噴射量Qf(負荷パラメータであれば他のパラメータでよい)を求めると共に、フロー中に示したような予めコントロールユニット119内に設定記憶してあるマップ等を参照し、現在の運転状態(機関回転速度Ne、燃料噴射量Qf)における目標動的噴射時期(IT LD)を求める。
ステップ2では、クランク角度信号と針弁リフト信号とから求められる実際の動的噴射時期(ITNLS)と、タイマピストン位置信号から求められれる実際の静的噴射時期(ITTPS)と、に基づいて、噴射遅れ期間ΔT(ITDNE)を求める。なお、タイマピストン位置と静的噴射時期の関係は、例えば、次式で求められる。
ITTPS(CA)=2.44×タイマピストン位置(mm)+ポンプセットタイミング(CA)
2.44は、燃料ポンプ100を用いた場合の定数である。CAはクランク角度である。
ステップ3では、目標動的噴射時期(IT LD)に前記噴射遅れ期間ΔT(ITDNE)を加算し、目標静的噴射時期(Tit 0)へ換算する。
ステップ4では、噴射時期制御系(タイマ機構等の噴射時期を制御する系)を1次遅れ要素とみなし、フロー中に示すような式(後述する)に従い、目標静的噴射時期(Tit 0)を、1次遅れ補償した目標値(Tit 1)へ変換する。なお、Ritは「1次遅れ噴射時期」であり、Tit 1は「変換値(目標値)」であり、Gkitは「1次遅れ補償ゲイン」であり、TcITは「噴射時期制御系時定数相当値」である。
ところで、1次遅れ要素とその補償の原理は、以下の通りである。
文字の説明:X=目標値、Y=1次遅れ要素値、Z=1次遅れ補償ゲイン、t=時定数の逆数(1/T)
添字の説明:(n)=今回の○○、(n−1)=前回の○○
1次遅れ要素:Y(n)=X(n)×t+X(n-1)×(1−t)
1次遅れ補償:Z(n)=A×X(n)−Y(n)×(A−1)
従って、これを噴射時期制御系に適用すると、以下のようになる。
1次遅れ要素:Rit(n)=Tit 0(n)×TcIT+Tit 0(n-1)×(1−TcIT)
1次遅れ補償:Tit 1(n)=Gkit×Tit 0(n)−Rit(n)×(Gkit−1)
なお、噴射時期制御系の時定数には、タイマ機構等(タイマピストン111の動作遅れや、TCV113の応答遅れ等も含まれる)の応答遅れ、即ち、静的噴射時期の変更指令から、実際に静的噴射時期が変更されるまでの遅れが考慮されるようになっている。
ステップ5では、スタート信号(図示しないスタートスイッチ〔ST sw〕からの信号)と、水温センサ116からの水温信号(Tw)と、に基づいて、始動時進角および低水温時進角補正量(H it)を求める。
ステップ6では、ステップ4で求めた目標静的噴射時期(Tit 1)に、始動時進角および低水温時進角補正量(H it)を加算して、最終的な目標静的噴射時期(ITsol)を求める。
ステップ7では、実測の動的噴射時期(ITNLS)に、実測の噴射遅れ期間(ITDNE)を加算し、実測静的噴射時期相当値(ITist)を求める。
これは、噴射遅れ期間に基づいて目標動的噴射時期を静的噴射時期に変換し、この変換された静的噴射時期が達成できるようにフィードバック制御(ステップ8での処理)を行なうために、現在の実測の動的噴射時期(ITNLS)を、現在の実際の静的噴射時期相当値(ITist)に変換しておくための処理である。
ステップ8では、最終的な目標静的噴射時期(ITsol)と、実測静的噴射時期相当値(ITist)と、を比較して、PID(比例積分)ロジックにより、TCV(タイミングコントロールバルブ)113のデューティ比(TCV C)を求める。
ステップ9では、オープン制御時の機関回転速度Neに応じたTCVデューティ比(TCV O)を算出する。
ステップ10では、針弁リフトセンサ114Aの検出信号が良好であるか否か(リフトを検出できているか否か)を判断し、YESの場合には、TCV(タイミングコントロールバルブ)113へデューティ比(TCV C)を送信する(フィードバック制御を行なう)。一方、NOの場合には燃料噴射量が少ない減速時等であるとして、TCVデューティ比(TCV O)を送信する(オープン制御を行う)。
以上のように、本実施形態によれば、燃料噴射弁114に設けられた針弁リフトセンサ(NLS)114Aから検出される動的噴射時期と、タイマピストン位置センサ(TPS)112から検出される静的噴射時期と、から噴射遅れ期間(ΔIT)を検出し、この噴射遅れ期間(ΔIT)に基づいて、動的噴射時期として与えられた目標噴射時期を静的噴射時期(タイマピストン位置)に変換し、この目標動的噴射時期を得るために必要なタイマピストン位置が達成できるように、TCV113を制御するので、目標動的噴射時期が運転条件によらずあまり変化しなくても、実測の噴射遅れ期間(ΔIT)に基づいて、運転条件によって比較的大きく変化するタイマピストン111の移動量(即ち静的噴射時期)を正確に求めることができ、この動的噴射時期から変換されて求められた変化幅の比較的大きな静的噴射時期を利用して噴射時期制御を行なうことで、過渡運転時の制御応答遅れに起因する噴射時期の制御精度の低下を防止することができる。
また、目標動的噴射時期を目標静的噴射時期へ変換する際に、実測の噴射遅れ期間(ΔIT)を用いているので、燃料性状(粘度や温度)が変化しても、また、各部に生産バラツキ等があっても、これらの影響を全て含めた目標静的噴射時期(タイマピストン位置)を高精度に求めることが可能となるので、燃料性状や生産バラツキの影響を受けることのない高精度な噴射時期制御が行なえることになる(図4参照)。
次に、第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態は、第1の実施形態と全体構成は略同様で、噴射時期制御が異なる。即ち、第1の実施形態の噴射時期制御方法の基本的な部分(図3のフローチャートのステップ1〜ステップ8、及びステップ10)を備えた上で、針弁リフト信号が出力されないような減速時等のフューエルカット時の噴射時期制御を、タイマピストン位置センサ112の検出信号を用いてフィードバック制御できるようにしたものである。
ここで、請求項2に記載の発明にかかる第2燃料噴射時期制御手段としての機能をソフトウェア的に兼ね備えた第2の実施形態におけるコントロールユニット119が行なう燃料噴射時期制御について、図5のフローチャートに従って説明する。なお、当該フローは、回転同期(REF job)で行なわれる。但し、第1の実施形態と重複する部分についての説明は省略する。
即ち、
ステップ18では、第1の実施形態と同様の方法で、最終的な目標静的噴射時期(ITsol)と、実測静的噴射時期相当値(ITist)と、を比較して、PID(比例積分)ロジックにより、TCV(タイミングコントロールバルブ)113のデューティ比(TCV N)を求める。
ステップ19では、機関回転速度Neと、燃料噴射量Qf(負荷パラメータであれば他のパラメータでよい)と、に基づいて、フロー中に示すようなマップを参照して、目標タイマピストン位置(TPSsol)を求める。
ステップ20では、タイマピストン位置センサ112から検出される実測のタイマピストン位置(TPSist)と、ステップ19で求めた目標タイマピストン位置(TPSsol)と、を比較し、PID(比例積分)ロジックにより、TCV(タイミングコントロールバルブ)113のデューティ比(TCV T)を求める。
ステップ21では、針弁リフトセンサ114Aの検出信号が良好であるか否か(リフトを検出できているか否か)を判断し、YESの場合には、TCV(タイミングコントロールバルブ)113へデューティ比(TCV N)を送信する。即ち、この場合には、第1の実施形態と同様に、動的噴射時期に基づいたフィードバック制御が行なわれることになる。
一方、NOの場合には、燃料噴射量が少ない減速時等であるとして、TCVデューティ比(TCV T)を送信する。即ち、この場合には、第1の実施形態ではオープン制御を行なわせたのに対し、第2の実施形態では、静的噴射時期によるフィードバック制御が行なわれることになる。
このため、第2の実施形態では、減速時でも機関回転速度Neに応じたタイマピストン位置の制御が可能となるので、フューエルリカバ時の噴射時期制御量の変化量を大幅に低減できるほか、低燃料噴射量時の正確な噴射時期の制御が可能となるため、第1の実施形態に対し、より一層、運転性能と排気性能とを向上できることとなる(図6参照)。
つづけて、第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態では、第1の実施形態や第2の実施形態における噴射時期制御の基本的な部分を備えたうえで、噴射時期目標値に噴射時期制御系の時定数に応じた進み処理を加えることにより、噴射時期制御の応答遅れを一層改善すると共に、運転条件に応じて応答遅れ補償ゲインを動的噴射時期を参照して学習更新し(燃料ポンプの個体差や燃料性状変化や運転者の癖等に見合った制御応答性を達成するための処理)、かつ噴射時期制御系の時定数を静的噴射時期を参照して学習更新する(燃料ポンプの個体差や燃料性状変化による時定数の変化を補償するための処理)ようにしたものである。なお、当該第3の実施形態は、請求項3,請求項4に記載の発明について説明するための実施形態に相当する。
ここで、第3の実施形態におけるコントロールユニット119が行なう燃料噴射時期制御について、図7のフローチャートに従って説明する。なお、当該フローは、回転同期(REF job)で行なわれる。但し、第2の実施形態と重複する部分についての説明は省略する。
即ち、
ステップ25では、目標動的噴射時期(IT LD)、目標静的噴射時期換算値(Tit 1)、実測の動的噴射時期(ITNLS)、機関回転速度Neを読み込み、以下の手順で1次遅れ補償ゲイン(Gkit)の適性値を算出し、回転速度毎に割り当てられたテーブルの該当する部分を学習・更新して行く。
Gkit=(Tit 1+ITNLS)/(IT LD)
ステップ26では、単位時間(ΔT)当たりの目標動的噴射時期の変化量(ΔIT LD)と目標静的噴射時期の変化量(ΔITTPS)、及び機関回転速度Neを読み込み、以下の手順でタイマ機構等の噴射時期制御系の時定数相当値を算出し、回転速度毎に割り当てられたテーブルの該当する部分を学習・更新して行く。
1/TcIT=(ΔITTPS/ΔIT LD)×ΔT×0.632
そして、ステップ27では、ステップ25で学習更新された「Gkit」と、ステップ26で学習更新された「TcIT」と、を読み込み、これらを用いて、目標静的噴射時期(Tit 0)を、1次遅れ補償した目標値(Tit 1)へ変換する。
以降の処理は、第2の実施形態の場合と同様である。
このように、第3の実施形態では、燃料噴射ポンプ100の個体毎の生産バラツキや燃料性状の変化、及びドライバーの運転の癖等に応じて、応答遅れ補償ゲインを適正値となるように学習・更新できるため、応答遅れ補償ゲインが大き過ぎたり、小さ過ぎたりすることがなく、過渡運転時における所望の噴射時期制御の応答性が得られることとなる。また、燃料噴射ポンプ100の個体毎の生産バラツキや燃料性状の変化等によるタイマ機構等の噴射時期制御系の時定数の変化を補償すべく、噴射時期制御系の時定数も学習更新するようにしたので、過渡運転時における噴射時期制御をより高精度なものとすることができる(図8参照)。
次に、第4の実施形態について説明する。
第1の実施形態〜第3の実施形態では、実際に検出された噴射遅れ期間ΔITを、目標動的噴射時期に加えているが、第4の実施形態では、予めテーブルで回転速度に応じたΔITを備えておき、それを実測値で学習更新するようにした場合の実施形態である。なお、その他は略同様であるので説明を省略する。なお、当該第4の実施形態は、請求項5に記載の発明を説明するための実施形態に相当する。
ここで、第4の実施形態におけるコントロールユニット119が行なう燃料噴射時期制御について、図9のフローチャートに従って説明する。なお、当該フローは、回転同期(REF job)で行なわれる。但し、第2の実施形態と重複する部分についての説明は省略する。
即ち、
ステップ36では、第1の実施形態等と同様に、クランク角度信号と針弁リフト信号とから求められる実際の動的噴射時期(ITNLS)と、タイマピストン位置信号から求められる実際の静的噴射時期(ITTPS)と、に基づいて、噴射遅れ期間ΔT(ITDNE)を求める。
ステップ37では、初回においては、予めコントロールユニット119内に記憶してあるフロー中の示したようなテーブルを参照して、回転速度Neに応じたΔITを求め、ステップ38へ送り、次回以降は、ステップ36で求めたΔITに基づいて、前記テーブルの該当する部分を学習・更新し、その値をステップ38へ送る。
従って、過渡運転時、例えば、加速時には、回転速度の上昇に伴いΔITが増加するが、第1の実施形態〜第3の実施形態における理論では、1サイクル分遅れた値を用いることになるため、所望のΔITに比較して小さめな値となり、実噴射時期のズレの原因となるが、上記構成とすることにより、初回から所望の値に近いΔITを用いることができ、かつ、それを所望のΔITとなるように学習更新させることができるので、実噴射時期のズレを極力改善することができる。加えて、万一、タイマピストン位置センサ112が故障等した場合でも、故障する前の値を用いて、噴射時期を決定することができるという利点もある。
ところで、上記各実施形態では、所謂分配型の燃料ポンプであるVE型燃料ポンプについて説明してきたが、これに限るものではなく、電子制御化された列型ポンプ延いてはユニットインジェクタ等にも適用できるものである。
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、所謂静的補償型動的噴射時期制御装置において、燃料性状や燃料噴射装置の個体毎の性能・生産バラツキに起因する噴射時期制御の制御精度低下を防止することができ、以って、より一層、噴射時期制御の応答性向上と制御安定性とを高いレベルで両立させることができる。また、減速時やフューエルリカバリ時等における噴射時期制御の制御精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1に記載の発明の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施形態の構成図。
【図3】同上実施形態における燃料噴射時期制御を説明するためのフローチャート。
【図4】同上実施形態の効果を説明するためのタイムチャート。
【図5】本発明の第2の実施形態における燃料噴射時期制御を説明するためのフローチャート。
【図6】同上実施形態の効果を説明するためのタイムチャート。
【図7】本発明の第3の実施形態における燃料噴射時期制御を説明するためのフローチャート。
【図8】同上実施形態の効果を説明するためのタイムチャート。
【図9】本発明の第4の実施形態における燃料噴射時期制御を説明するためのフローチャート。
【図10】従来の噴射時期制御方法▲1▼(静的噴射時期制御)における装置の構成図と機能説明図。
【図11】従来の噴射時期制御方法▲2▼(動的噴射時期制御)における装置の構成図と機能説明図。
【図12】NOx・PM同時低減領域(回転負荷の影響)を示す図〔低速負中低回転時(発進直後)〕。
【図13】NOx・PM同時低減領域(回転負荷の影響)を示す図〔中速負中低回転時(加速時)〕。
【図14】NOx・PM同時低減領域(回転負荷の影響)を示す図〔低負荷低回転時(定常運転時)〕。
【図15】燃料噴射時期(IT)と負荷がエミッションや燃費に及ぼす影響を説明する図。
【図16】燃料性状(燃料粘度)が噴射遅れ期間(ΔIT)に及ぼす影響を説明する図。
【符号の説明】
100 燃料噴射ポンプ
101 ドライブシャフト
103 プランジャ
104 フェイスカム
105 コントロールスリーブ
106 ロータリソレノイド
107 コントロールスリーブ位置センサ
110 レバー
111 タイマピストン
112 タイマピストン位置センサ
113 タイミングコントロールバルブ(TCV)
114A 針弁リフトセンサ
115 燃料温度センサ
116 水温センサ
117 コントロールレバー開度センサ
118 回転速度センサ
119 コントロールユニット
本発明は、内燃機関の燃料噴射制御装置に関し、詳しくは、電子制御式燃料噴射制御装置の噴射時期制御の精度向上技術に関する。
【従来の技術】
ディーゼルエンジンでは、燃焼過程において、燃焼室に燃料が噴射されてから着火するまでの着火遅れ期間が存在するが、この着火遅れ期間は化学反応時間等により定まるものでありエンジン回転速度自体の影響は小さく略一定であるので、エンジン回転速度の上昇に従って噴射開始時期を進角させる必要がある。
即ち、エンジン回転速度が速くなると、1燃焼サイクル当たりの所要時間(換言すれば、クランク角度が1°進むのに必要な時間)が短くなるが、前述したように着火遅れ期間はあまり変化しないので、低速域と同等の噴射開始時期(所定のクランク角度)に設定しておくと、高速域で着火が開始されるときには、低速域の場合に比較してクランク角度が余計に進行していることになるので、高速域での燃焼の重心がより下死点側(膨張行程側)に移行することになり、良好な燃焼が得られなくなる。そこで、高速域では、噴射開始時期を、低速域に比べて進角させる必要がある。
このため、従来のディーゼルエンジンの燃料噴射ポンプでは、エンジン回転速度の上昇に従って、噴射開始時期を進角させる特性を持たせるため、機関駆動されるドライブシャフトと、ポンププランジャを駆動するカムディスクと、の間の回転位相差を変化させるべく、タイマが内装するタイマピストンを、回転速度の上昇に連れて上昇する燃料圧力を利用して移動させることで、これに連動するように構成されたローラホルダ延いてはカムディスクと、ドライブシャフトと、の間に回転位相差を発生させるようにした所謂機械式タイマ機構を備えるようにしたものがある。
さらに、回転負荷に応じて噴射時期を可変とすることで、運転性能,排気性能,燃費,騒音・振動等を改善することができるので、図10等に示すように、タイミングコントロールバルブ(高速電磁弁。Timing Controll Valve;TCV )の開度制御により、高圧室に作用する油圧を低圧室にバイパスさせることで、タイマの内装するタイマピストンの位置を移動させて、前記同様にローラホルダ延いてはカムディスクとドライブシャフトとの間の回転位相差を運転中でも制御可能とした電子制御式燃料噴射ポンプも提案されている。
なお、フロー中或いは図中において、ITは「噴射時期」を意味する(以下、同様)。
ところで、電子制御式燃料噴射ポンプにおける噴射時期の制御方法としては、
▲1▼図10に示すように、例えば、回転負荷に対応した目標タイマ進角が得られる目標タイマピストン位置と、タイマピストン位置測定値(実タイマピストン位置)と、を比較し、実タイマピストン位置が、目標タイマピストン位置となるように、タイマピストン位置をフィードバック制御するようにした静的噴射時期制御方法がある。
▲2▼また、図11に示すように、回転負荷に対応した目標噴射時期と、基準角度信号に対する実際の燃料噴射弁の針弁リフト時期(噴射管の歪み、管内圧から予測する方法もある)と、を比較して、針弁リフト時期が、目標噴射時期となるように、タイマピストン位置をフィードバック制御するようにした動的噴射時期制御方法がある。この方法によれば、実際の動的な噴射時期に基づいて噴射時期を制御するので、上記▲1▼の方法に対し、より高精度な制御が行なえるという利点がある。
ところが、目標動的噴射時期は、一般に運転条件によってあまり変化しないという特性を有する。このため、上記▲2▼の動的噴射時期では、例えば加速時にエンジン回転速度が増大しても、目標値自体があまり変化しないので、タイマピストン位置を移動させる手段(例えば、上記TCV)への命令には変化がなく、加速後一旦実際の噴射時期が目標値から遅角し、この遅角が検出されて初めてフィードバック制御による進角制御が開始されることになるので、加速中等の噴射時期制御に遅れが生じ、十分に高精度なものとは言えなかった。
そこで、本願出願人は、この加速時等の過渡運転時の噴射時期制御をより高精度なものとするために、動的噴射時期から静的噴射時期を予測し(静的噴射時期=動的噴射時期+ΔIT,ΔIT=燃料輸送遅れなどに起因する噴射遅れ期間)、この予測した静的噴射時期に基づいて(即ち、動的噴射時期を動的噴射時期より大きく変化する静的噴射時期に変換して)フィードバック制御するようにした噴射時期制御方法(以下、静的補償型動的噴射時期制御方法と言う)を特願平7−190613号において提案した。
なお、動的噴射時期とは、実際に燃料が燃料噴射弁から噴射開始される時期を意味し、静的噴射時期とは、燃料噴射ポンプのセットタイミング+タイマ進角量等で定まる燃料の輸送遅れ等が考慮されない燃料噴射ポンプの燃料圧縮開始或いは吐出開始時期、タイマピストン位置等を意味するものである。
【発明が解決しようとする課題】
ところで、省資源,環境保護の見地から、より良好な燃焼、延いては燃費の低減、排気性能の向上を促進する必要があり、燃料噴射制御を更に高精度化する必要がある。特に、近年では、排気性能等を改善するために、所謂EGR制御を行なう場合が多く、かかる場合には、事実上空気過剰率が小さくなっているので、燃焼に影響を与える燃料噴射時期(IT)の制御遅れ等は、より敏感に燃焼悪化に影響し、燃費,排気性能,黒煙,パティキュレート(PM)の悪化を招き易い状況となっている。
また、噴射時期を高精度に制御することができれば、エンジンモディフィケーション(燃焼室形状、燃料噴射特性、EGR系の改良)により、運転領域によっては従来トレードオフの関係にあるとされていたNOxとPMとを双方同時に低減できるということも解明されているが、この領域は回転速度・負荷毎に異なるため、運転状態、特に、負荷に応じて噴射時期とEGR量の精密な制御が必要となってくる(図12〜図15参照)。
しかし、上記従来の静的補償型動的噴射時期制御方法にあっては、所定温度の標準的な燃料性状の燃料しか考慮できておらず、従って最大限に高精度化が図られているとは言えず、更に改善できる余地が残されているものであった。
即ち、静的補償型動的噴射時期制御方法において、回転に対する静的噴射時期と動的噴射時期との相関(差)を利用して静的噴射時期を補償(予測)する場合には、燃料の粘度μの変化によって、燃料の輸送遅れ時間(燃料の圧力上昇速度)が変化し、静的噴射時期と動的噴射時期との相関(差)、即ち、噴射遅れ期間ΔIT(=動的噴射時期−静的噴射時期)が大幅に変化することになるが、このことが考慮されていなかった(図16参照)。
より詳細に説明すると、通常燃料の標準的な粘度より低粘度な軽質燃料を使用すると、燃料噴射ポンプ内部のプランジャによる燃料の圧送効率(ポンプ効率)が低下し、また、プランジャ圧送行程での燃料のリーク量も増えるので、燃料の圧力上昇に時間を要することになるため、通常燃料を使用した場合とタイマピストン位置(進角量)を同じくしても、動的噴射時期(針弁が実際に開弁する時期)は、軽質燃料の場合の方が遅くなる。
このような場合、定常時や過渡運転時の静的噴射時期の予測が実際と異なるため、即ち、通常燃料を使用した場合の静的噴射時期の予測値に対し、軽質燃料を使用した場合の静的噴射時期の予測値は進角側に設定する必要があるのに、かかる考慮がなされていなかったので、進角量不足となり運転性,燃費,排気性能,黒煙,PM等が悪化する惧れがある。
逆に、通常燃料の標準的な粘度より粘度が高い重質燃料を使用すると、燃料噴射ポンプ内部のプランジャによる燃料の圧送効率が高くなり、また、プランジャ圧送行程での燃料のリーク量も減るので、燃料の圧力上昇の時間が短縮されることになるため、標準的な比重・粘度の場合とタイマピストン位置を同じくしても、動的噴射時期は、重質燃料の場合の方が早くなる。
このような場合、定常時や過渡運転時の静的噴射時期の予測が実際と異なるため、即ち、通常燃料を使用した場合の静的噴射時期の予測値に対し、重質燃料を使用した場合の静的噴射時期の予測値は遅角側に設定する必要があるのに、かかる考慮がなされていなかったので、進角量過大となりNOx、燃焼加振力増大に伴う騒音,振動等が悪化する惧れがある。
なお、標準的な燃料と同質の燃料を使用しても、燃料温度によって粘度は変化するので、上記と同様の問題が発生する。
ここで、市場における燃料の性状について、簡単に説明しておく。
ガソリンスタンドから供給される燃料は、常に一定性状の燃料ではなく、石油メーカーや地域によって若干異なる。特に寒冷地では、JIS特3号軽油といった軽質燃料が供給されるが、このJIS特3号軽油は、寒冷地における軽油のワックス化等を防止すると共に、冬期の寒冷地で良好な運転性が得られるような粘度特性等が与えられている。ところが、寒冷地であっても、春先から秋口にかけては、比較的気温も高くなるため、このような時期には、JIS特3号軽油を使用していても冬期に比較して粘度が大きく変化することになる。また、このような時期には、寒冷地でも、比較的重質な燃料(通常燃料や重質燃料)が供給される場合もあるため、一の標準的な燃料性状に合わせて噴射時期制御を行なおうとすると、上記のような問題が発生することになるのである。
ところで、上記従来の静的補償型動的噴射時期制御方法では、燃料噴射ポンプの時定数に応じて目標値を補正する(目標値にゲインを加える)ことで、噴射時期の応答遅れを改善しようとているが、燃料噴射ポンプの個体間の生産バラツキや燃料性状、及びドライバーの運転の癖等により、補正ゲインの適正値が変化してしまい、補正ゲインが大き過ぎる場合は目標値を上回る噴射時期になってしまい、逆に補正ゲインが小さ過ぎる場合は過渡運転時における所望の噴射時期応答性の改善効果が得られなくなってしまうという惧れもある。
さらに、従来において、動的噴射時期の検出により噴射時期を制御する場合、燃料が噴射されていない時(減速時のフューエルカット時等)には、針弁リフトセンサのセンサ出力がなくなり良好な制御が行なえなくなるため、例えば、TCVのデューティ比を固定したり、回転速度に応じてTCVのデューティ比を与えたりすることが一般的に行なわれている。
しかし、TCVのデューティ比を固定しても、駆動反力の影響でタイマピストンの位置は少しずつズレてしまうし、燃料性状や燃料温度の変化によって、大幅にタイマピストンの位置は変化することになるので、フューエルリカバリ時のタイマピストンの移動量が大きくなってしまう。また、針弁リフト量が小さく動的噴射時期(開弁時期)を良好に検出できないような低燃料噴射量時は、噴射時期が不安定になったり、燃料噴射量のバラツキが大きくなるので、燃焼が不安定となり、運転性や排気性能(特に、PM,HC)等が悪化する惧れもある。
本発明は、このような従来の実情に鑑みなされたもので、燃料性状や燃料噴射装置の個体間のバラツキや運転者の運転の癖等に起因する噴射時期制御の制御精度の低下を防止して、より一層、噴射時期制御の応答性向上と制御安定性とを高いレベルで両立させることができるようにした内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することを目的とする。また、本装置の噴射時期制御の制御精度を更に改善することも目的とする。更に、本装置において、減速時やフューエルリカバリ時の噴射時期制御の制御精度を向上させることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1に記載の発明にかかる内燃機関の燃料噴射制御装置は、図1に示すように、
運転状態に基づいて、燃料噴射弁から燃料の噴射を開始させる目標動的噴射時期を設定する目標動的噴射時期設定手段と、
燃料噴射弁から実際に燃料噴射が開始される時期に相当する動的噴射時期を検出する動的噴射時期検出手段と、
燃料噴射ポンプの燃料の圧縮開始時期或いは燃料の吐出開始時期に相当する静的噴射時期を制御する静的噴射時期制御手段と、
実際の静的噴射時期を検出する静的噴射時期検出手段と、
前記静的噴射時期検出手段の検出値と、前記動的噴射時期検出手段の検出値と、に基づいて、実際の静的噴射時期から実際の動的噴射時期までの噴射遅れ期間を検出する噴射遅れ期間検出手段と、
前記目標動的噴射時期を、前記噴射遅れ期間に基づいて、静的噴射時期に変換した目標値として算出する目標値変換算出手段と、
前記動的噴射時期検出手段により検出された動的噴射時期を、前記噴射遅れ期間に基づいて、静的噴射時期に変換した検出値として算出する検出値変換算出手段と、
前記目標値変換算出手段により算出された目標値と、前記検出値変換算出手段により算出された検出値と、に基づいて、前記静的噴射時期制御手段を制御する第1燃料噴射時期制御手段と、
を含んで構成した。
このような構成により、運転状態に応じて設定される目標動的噴射時期を、検出した実際の動的噴射時期と、検出した実際の静的噴射時期と、に基づいて求められる噴射遅れ期間に基づいて、静的噴射時期に変換した目標値として算出する一方、実際の動的噴射時期を、前記噴射遅れ期間に基づいて、静的噴射時期に変換した検出値として算出し、当該検出値が、前記目標値となるように、静的噴射時期制御手段(燃料ポンプの噴射時期制御装置)を制御するようにしたので、
従来の静的補償型動的噴射時期制御装置と同様に、従来の前記▲2▼の制御方法のように検出された動的噴射時期を目標の動的噴射時期に制御しようとした場合に比較して、運転状態の変化に対して制御目標値を比較的大きく変化させることができるので(即ち、従来の動的噴射時期によるフィードバック制御に対し、動的噴射時期を静的噴射時期に変換してフィードバック制御するようにすれば、運転状態の変化に伴い目標値が先に大きく変化することになるので、検出値と目標値との差を早く検知できるので)、運転状態変化に応答性よく追従した制御が行なえると共に、目標値に比較的急速に近づけるように静的噴射時期制御手段(燃料噴射ポンプの噴射時期制御装置〔例えば、タイマ機構のタイミングコントロールバルブ〕)への駆動量を制御しても制御安定性を高く維持することができ、以って燃料噴射時期の制御応答性,制御精度を向上させることができる。
さらに、従来の静的補償型動的噴射時期制御装置に対し、目標動的噴射時期を静的噴射時期に変換した目標値へ変換する際に、実測の噴射遅れ期間を用いて変換するようにしたので、燃料性状(粘度や温度)が変化しても、また、各部に生産バラツキ等があっても、これらの影響を全て含めて目標値を算出することが可能となるので、燃料性状や生産バラツキの影響を受けることのない高精度な噴射時期制御が行なえることになる。
請求項2に記載の発明では、
前記動的噴射時期検出手段が良好に実際の動的噴射時期を検出できない状態において、運転状態に基づき予め設定されている目標静的噴射時期と、前記静的噴射時期検出手段により検出された実際の静的噴射時期と、に基づいて、前記静的噴射時期制御手段を制御する第2燃料噴射時期制御手段を含んで構成した。
上記構成によれば、請求項1に記載の発明の作用効果に加え、良好に実際の動的噴射時期を検出できなくなる減速時やフューエルカット時、或いは故障時でも、機関回転速度に応じた噴射時期の制御が可能となる。また、フューエルリカバ時の静的噴射時期制御手段の制御量変化を大幅に低減できるほか、低燃料噴射量時の正確な噴射時期の制御が可能となるため、より一層、運転性能と排気性能とを向上できることとなる。
請求項3に記載の発明では、前記目標値変換算出手段が、
静的噴射時期に変換された目標値を算出する際に、噴射時期制御の応答遅れを改善すべく、噴射時期制御系の時定数に応じた進み処理を行なわせる進み処理手段と、
前記進み処理手段による処理結果を、前記目標値の算出に反映させるための応答遅れ補償ゲインを、運転条件に応じ、前記目標動的噴射時期と、前記動的噴射時期検出手段により検出された実際の動的噴射時期と、前記目標値変換算出手段により算出された目標値と、に基づいて、学習更新する応答遅れ補償ゲイン学習更新手段と、
を含んで構成されるようにした。
上記構成により、請求項1,請求項2に記載の発明の作用効果に加え、燃料ポンプの個体差や燃料性状変化や運転者の癖等に見合った制御応答性を達成することができるようになる。
請求項4に記載の発明では、前記目標値変換算出手段が、
静的噴射時期に変換された目標値を算出する際に、噴射時期制御の応答遅れを改善すべく、噴射時期制御系の時定数に応じた進み処理を行なわせる進み処理手段と、
前記噴射時期制御系の時定数を、運転条件に応じ、目標動的噴射時期の変化率と、前記目標値変換算出手段により算出された目標値の変化率と、に基づいて、学習更新する時定数学習更新手段と、
を含んで構成されるようにした。
上記構成によれば、請求項1,請求項2,請求項3に記載の発明の作用効果に加え、燃料ポンプの個体差や燃料性状変化による噴射時期制御系(タイマ機構等)の時定数の変化を補償することができるので、より一層噴射時期制御の制御精度を向上させることができる。
請求項5に記載の発明では、前記目標値変換算出手段が、
運転条件に応じて予め設定された噴射遅れ期間に基づいて、前記目標動的噴射時期を、静的噴射時期に変換した目標値として算出する手段を備えると共に、前記噴射遅れ期間検出手段により実際に検出された噴射遅れ期間に基づいて、前記予め設定されている噴射遅れ期間を学習更新する手段を備えて構成されるようにした。
過渡運転時、例えば、加速時には、回転速度の上昇に伴い噴射遅れ期間が増加するが、実測の噴射遅れ期間を用いるようにすると、1サイクル分遅れた値を用いることになるため、所望の噴射遅れ期間に比較して小さめな値となり、実噴射時期のズレの原因となるが、上記構成によれば、初回から所望の値に近い噴射遅れ期間を用いることができ、かつ、それを所望の噴射遅れ期間となるように学習更新させることができるので、実噴射時期のズレを極力改善することができる。更に、万一、静的噴射時期検出手段が故障等した場合でも、故障する前の値を用いて、噴射時期を決定することができることとなる。
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を、添付の図面に基づいて説明する。
第1の実施の形態の構成を示す図2は、図示しないディーゼル機関等に搭載される電子制御式のVE型燃料噴射ポンプ100を示している。なお、ディーゼル機関には、燃料噴射ポンプ100から圧送供給されてくる燃料を、所定圧力で開弁して燃料を噴射供給する燃料噴射弁114が設けられると共に、この燃料噴射弁114には、針弁のリフト(開弁)状態を検出して実際の動的噴射時期を検出する動的噴射時期検出手段としての針弁リフトセンサ114A(所謂ギャップセンサ等を用いることができる)が設けられている。この針弁リフトセンサ114Aの検出信号は、CPU,ROM,RAM,A/D変換器,入・出力I/F等から構成され機関制御(燃料噴射制御を含む)を行なうためのコントロールユニット119へ送られるようになっている。なお、コントロールユニット119は、以下に説明するように、本発明にかかる目標動的噴射時期設定手段、噴射遅れ期間検出手段、目標値変換算出手段、検出値変換算出手段、第1燃料噴射時期制御手段としての機能をソフトウェア的に備えるものである。
また、クランク角度信号を検出し燃料ポンプ100の回転速度或いは機関回転速度Neを検出する回転速度センサ118が設けられ、該検出信号もコントロールユニット119へ入力される。更に、アクセル開度(C/L)を検出するコントロールレバー開度センサ117が設けられ、この信号も、コントロールユニット119へ入力されている。
そして、燃料噴射ポンプ100では、燃料噴射量の制御は、運転者のアクセル操作に対応したコントロールレバー開度センサ117からの信号やエンジン回転速度等の信号を受けてコントロールユニット119で設定され出力される要求燃料噴射量に対応した制御信号に基づいて、ロータリソレノイド(ガバナモータ)106の回転角が制御され、当該ロータリソレノイド106に連結されたコントロールスリーブ105のプランジャ103の長手方向に対する相対位置を、移動させることにより行われる。つまり、プランジャ103により圧縮された燃料を、スピルポートを介してリークする位置(即ち、圧送ストローク)を制御することでなされる。
なお、プランジャ103の長手方向への往復運動は、機関回転に同期して回転駆動されるドライブシャフト101により、後述するタイマ機構を介して、ドライブシャフト101と所定の回転位相差をもって回転駆動されるフェイスカム104によってなされる。
また、ロータリソレノイド106の回転角度位置、即ちコントロールスリーブ105の位置は、コントロールスリーブ位置センサ107により検出され、コントロールユニット119へ入力され、これにより実際の燃料噴射量を検出することができるようになっている。これにより、実際の燃料噴射量が、アクセル開度に応じた目標の燃料噴射量となるように、コントロールスリーブ105の位置をフィードバック制御することができる。
一方、燃料噴射時期の制御は、タイマ機構を介して行なわれる。
即ち、コントロールユニット119の指令値(機関回転速度や負荷等に応じて予め設定されている)に基づき、タイミングコントロールバルブ(TCV)113のデューティ比を制御することによって、タイマピストン111に面する高圧室111A内の油圧を低圧室111B側にバイパスさせることで、タイマピストン111の位置を移動させ、レバー110を揺動させることで、レバー110に連結されるフェイスカム104と、ドライブシャフト101と、の間の回転位相差(即ち、噴射時期)を可変制御するようになっている。当該タイマ機構が、本発明にかかる静的噴射時期制御手段に相当する。
また、本実施形態では、タイマピストン111の位置を検出して静的噴射時期を検出する静的噴射時期検出手段としてのタイマピストン位置センサ112が設けられている。更に、燃料噴射ポンプ100内の燃料温度を検出する燃料温度センサ115と、機関水温を検出する水温センサ116と、が設けられており、これらの検出信号は、コントロールユニット119へ入力されている。
そして、燃料噴射ポンプ100には、燃料供給を停止し、機関運転を停止させるための燃料停止弁108が設けられている。なお、ポンプ室109は、図示しないフィードポンプによって加圧され送られてきた燃料を蓄えると共に、当該蓄えた燃料で燃料ポンプ100の内部を潤滑させるための室である。
以下に、本実施形態におけるコントロールユニット119が行なう燃料噴射時期制御について、図3のフローチャートに従って説明することにする。なお、当該フローは、回転同期(REF job)で行なわれる。
ステップ(図では、Sと記してある。以下、同様)1では、各種センサからの検出信号を取込み、機関回転速度Neや燃料噴射量Qf(負荷パラメータであれば他のパラメータでよい)を求めると共に、フロー中に示したような予めコントロールユニット119内に設定記憶してあるマップ等を参照し、現在の運転状態(機関回転速度Ne、燃料噴射量Qf)における目標動的噴射時期(IT LD)を求める。
ステップ2では、クランク角度信号と針弁リフト信号とから求められる実際の動的噴射時期(ITNLS)と、タイマピストン位置信号から求められれる実際の静的噴射時期(ITTPS)と、に基づいて、噴射遅れ期間ΔT(ITDNE)を求める。なお、タイマピストン位置と静的噴射時期の関係は、例えば、次式で求められる。
ITTPS(CA)=2.44×タイマピストン位置(mm)+ポンプセットタイミング(CA)
2.44は、燃料ポンプ100を用いた場合の定数である。CAはクランク角度である。
ステップ3では、目標動的噴射時期(IT LD)に前記噴射遅れ期間ΔT(ITDNE)を加算し、目標静的噴射時期(Tit 0)へ換算する。
ステップ4では、噴射時期制御系(タイマ機構等の噴射時期を制御する系)を1次遅れ要素とみなし、フロー中に示すような式(後述する)に従い、目標静的噴射時期(Tit 0)を、1次遅れ補償した目標値(Tit 1)へ変換する。なお、Ritは「1次遅れ噴射時期」であり、Tit 1は「変換値(目標値)」であり、Gkitは「1次遅れ補償ゲイン」であり、TcITは「噴射時期制御系時定数相当値」である。
ところで、1次遅れ要素とその補償の原理は、以下の通りである。
文字の説明:X=目標値、Y=1次遅れ要素値、Z=1次遅れ補償ゲイン、t=時定数の逆数(1/T)
添字の説明:(n)=今回の○○、(n−1)=前回の○○
1次遅れ要素:Y(n)=X(n)×t+X(n-1)×(1−t)
1次遅れ補償:Z(n)=A×X(n)−Y(n)×(A−1)
従って、これを噴射時期制御系に適用すると、以下のようになる。
1次遅れ要素:Rit(n)=Tit 0(n)×TcIT+Tit 0(n-1)×(1−TcIT)
1次遅れ補償:Tit 1(n)=Gkit×Tit 0(n)−Rit(n)×(Gkit−1)
なお、噴射時期制御系の時定数には、タイマ機構等(タイマピストン111の動作遅れや、TCV113の応答遅れ等も含まれる)の応答遅れ、即ち、静的噴射時期の変更指令から、実際に静的噴射時期が変更されるまでの遅れが考慮されるようになっている。
ステップ5では、スタート信号(図示しないスタートスイッチ〔ST sw〕からの信号)と、水温センサ116からの水温信号(Tw)と、に基づいて、始動時進角および低水温時進角補正量(H it)を求める。
ステップ6では、ステップ4で求めた目標静的噴射時期(Tit 1)に、始動時進角および低水温時進角補正量(H it)を加算して、最終的な目標静的噴射時期(ITsol)を求める。
ステップ7では、実測の動的噴射時期(ITNLS)に、実測の噴射遅れ期間(ITDNE)を加算し、実測静的噴射時期相当値(ITist)を求める。
これは、噴射遅れ期間に基づいて目標動的噴射時期を静的噴射時期に変換し、この変換された静的噴射時期が達成できるようにフィードバック制御(ステップ8での処理)を行なうために、現在の実測の動的噴射時期(ITNLS)を、現在の実際の静的噴射時期相当値(ITist)に変換しておくための処理である。
ステップ8では、最終的な目標静的噴射時期(ITsol)と、実測静的噴射時期相当値(ITist)と、を比較して、PID(比例積分)ロジックにより、TCV(タイミングコントロールバルブ)113のデューティ比(TCV C)を求める。
ステップ9では、オープン制御時の機関回転速度Neに応じたTCVデューティ比(TCV O)を算出する。
ステップ10では、針弁リフトセンサ114Aの検出信号が良好であるか否か(リフトを検出できているか否か)を判断し、YESの場合には、TCV(タイミングコントロールバルブ)113へデューティ比(TCV C)を送信する(フィードバック制御を行なう)。一方、NOの場合には燃料噴射量が少ない減速時等であるとして、TCVデューティ比(TCV O)を送信する(オープン制御を行う)。
以上のように、本実施形態によれば、燃料噴射弁114に設けられた針弁リフトセンサ(NLS)114Aから検出される動的噴射時期と、タイマピストン位置センサ(TPS)112から検出される静的噴射時期と、から噴射遅れ期間(ΔIT)を検出し、この噴射遅れ期間(ΔIT)に基づいて、動的噴射時期として与えられた目標噴射時期を静的噴射時期(タイマピストン位置)に変換し、この目標動的噴射時期を得るために必要なタイマピストン位置が達成できるように、TCV113を制御するので、目標動的噴射時期が運転条件によらずあまり変化しなくても、実測の噴射遅れ期間(ΔIT)に基づいて、運転条件によって比較的大きく変化するタイマピストン111の移動量(即ち静的噴射時期)を正確に求めることができ、この動的噴射時期から変換されて求められた変化幅の比較的大きな静的噴射時期を利用して噴射時期制御を行なうことで、過渡運転時の制御応答遅れに起因する噴射時期の制御精度の低下を防止することができる。
また、目標動的噴射時期を目標静的噴射時期へ変換する際に、実測の噴射遅れ期間(ΔIT)を用いているので、燃料性状(粘度や温度)が変化しても、また、各部に生産バラツキ等があっても、これらの影響を全て含めた目標静的噴射時期(タイマピストン位置)を高精度に求めることが可能となるので、燃料性状や生産バラツキの影響を受けることのない高精度な噴射時期制御が行なえることになる(図4参照)。
次に、第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態は、第1の実施形態と全体構成は略同様で、噴射時期制御が異なる。即ち、第1の実施形態の噴射時期制御方法の基本的な部分(図3のフローチャートのステップ1〜ステップ8、及びステップ10)を備えた上で、針弁リフト信号が出力されないような減速時等のフューエルカット時の噴射時期制御を、タイマピストン位置センサ112の検出信号を用いてフィードバック制御できるようにしたものである。
ここで、請求項2に記載の発明にかかる第2燃料噴射時期制御手段としての機能をソフトウェア的に兼ね備えた第2の実施形態におけるコントロールユニット119が行なう燃料噴射時期制御について、図5のフローチャートに従って説明する。なお、当該フローは、回転同期(REF job)で行なわれる。但し、第1の実施形態と重複する部分についての説明は省略する。
即ち、
ステップ18では、第1の実施形態と同様の方法で、最終的な目標静的噴射時期(ITsol)と、実測静的噴射時期相当値(ITist)と、を比較して、PID(比例積分)ロジックにより、TCV(タイミングコントロールバルブ)113のデューティ比(TCV N)を求める。
ステップ19では、機関回転速度Neと、燃料噴射量Qf(負荷パラメータであれば他のパラメータでよい)と、に基づいて、フロー中に示すようなマップを参照して、目標タイマピストン位置(TPSsol)を求める。
ステップ20では、タイマピストン位置センサ112から検出される実測のタイマピストン位置(TPSist)と、ステップ19で求めた目標タイマピストン位置(TPSsol)と、を比較し、PID(比例積分)ロジックにより、TCV(タイミングコントロールバルブ)113のデューティ比(TCV T)を求める。
ステップ21では、針弁リフトセンサ114Aの検出信号が良好であるか否か(リフトを検出できているか否か)を判断し、YESの場合には、TCV(タイミングコントロールバルブ)113へデューティ比(TCV N)を送信する。即ち、この場合には、第1の実施形態と同様に、動的噴射時期に基づいたフィードバック制御が行なわれることになる。
一方、NOの場合には、燃料噴射量が少ない減速時等であるとして、TCVデューティ比(TCV T)を送信する。即ち、この場合には、第1の実施形態ではオープン制御を行なわせたのに対し、第2の実施形態では、静的噴射時期によるフィードバック制御が行なわれることになる。
このため、第2の実施形態では、減速時でも機関回転速度Neに応じたタイマピストン位置の制御が可能となるので、フューエルリカバ時の噴射時期制御量の変化量を大幅に低減できるほか、低燃料噴射量時の正確な噴射時期の制御が可能となるため、第1の実施形態に対し、より一層、運転性能と排気性能とを向上できることとなる(図6参照)。
つづけて、第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態では、第1の実施形態や第2の実施形態における噴射時期制御の基本的な部分を備えたうえで、噴射時期目標値に噴射時期制御系の時定数に応じた進み処理を加えることにより、噴射時期制御の応答遅れを一層改善すると共に、運転条件に応じて応答遅れ補償ゲインを動的噴射時期を参照して学習更新し(燃料ポンプの個体差や燃料性状変化や運転者の癖等に見合った制御応答性を達成するための処理)、かつ噴射時期制御系の時定数を静的噴射時期を参照して学習更新する(燃料ポンプの個体差や燃料性状変化による時定数の変化を補償するための処理)ようにしたものである。なお、当該第3の実施形態は、請求項3,請求項4に記載の発明について説明するための実施形態に相当する。
ここで、第3の実施形態におけるコントロールユニット119が行なう燃料噴射時期制御について、図7のフローチャートに従って説明する。なお、当該フローは、回転同期(REF job)で行なわれる。但し、第2の実施形態と重複する部分についての説明は省略する。
即ち、
ステップ25では、目標動的噴射時期(IT LD)、目標静的噴射時期換算値(Tit 1)、実測の動的噴射時期(ITNLS)、機関回転速度Neを読み込み、以下の手順で1次遅れ補償ゲイン(Gkit)の適性値を算出し、回転速度毎に割り当てられたテーブルの該当する部分を学習・更新して行く。
Gkit=(Tit 1+ITNLS)/(IT LD)
ステップ26では、単位時間(ΔT)当たりの目標動的噴射時期の変化量(ΔIT LD)と目標静的噴射時期の変化量(ΔITTPS)、及び機関回転速度Neを読み込み、以下の手順でタイマ機構等の噴射時期制御系の時定数相当値を算出し、回転速度毎に割り当てられたテーブルの該当する部分を学習・更新して行く。
1/TcIT=(ΔITTPS/ΔIT LD)×ΔT×0.632
そして、ステップ27では、ステップ25で学習更新された「Gkit」と、ステップ26で学習更新された「TcIT」と、を読み込み、これらを用いて、目標静的噴射時期(Tit 0)を、1次遅れ補償した目標値(Tit 1)へ変換する。
以降の処理は、第2の実施形態の場合と同様である。
このように、第3の実施形態では、燃料噴射ポンプ100の個体毎の生産バラツキや燃料性状の変化、及びドライバーの運転の癖等に応じて、応答遅れ補償ゲインを適正値となるように学習・更新できるため、応答遅れ補償ゲインが大き過ぎたり、小さ過ぎたりすることがなく、過渡運転時における所望の噴射時期制御の応答性が得られることとなる。また、燃料噴射ポンプ100の個体毎の生産バラツキや燃料性状の変化等によるタイマ機構等の噴射時期制御系の時定数の変化を補償すべく、噴射時期制御系の時定数も学習更新するようにしたので、過渡運転時における噴射時期制御をより高精度なものとすることができる(図8参照)。
次に、第4の実施形態について説明する。
第1の実施形態〜第3の実施形態では、実際に検出された噴射遅れ期間ΔITを、目標動的噴射時期に加えているが、第4の実施形態では、予めテーブルで回転速度に応じたΔITを備えておき、それを実測値で学習更新するようにした場合の実施形態である。なお、その他は略同様であるので説明を省略する。なお、当該第4の実施形態は、請求項5に記載の発明を説明するための実施形態に相当する。
ここで、第4の実施形態におけるコントロールユニット119が行なう燃料噴射時期制御について、図9のフローチャートに従って説明する。なお、当該フローは、回転同期(REF job)で行なわれる。但し、第2の実施形態と重複する部分についての説明は省略する。
即ち、
ステップ36では、第1の実施形態等と同様に、クランク角度信号と針弁リフト信号とから求められる実際の動的噴射時期(ITNLS)と、タイマピストン位置信号から求められる実際の静的噴射時期(ITTPS)と、に基づいて、噴射遅れ期間ΔT(ITDNE)を求める。
ステップ37では、初回においては、予めコントロールユニット119内に記憶してあるフロー中の示したようなテーブルを参照して、回転速度Neに応じたΔITを求め、ステップ38へ送り、次回以降は、ステップ36で求めたΔITに基づいて、前記テーブルの該当する部分を学習・更新し、その値をステップ38へ送る。
従って、過渡運転時、例えば、加速時には、回転速度の上昇に伴いΔITが増加するが、第1の実施形態〜第3の実施形態における理論では、1サイクル分遅れた値を用いることになるため、所望のΔITに比較して小さめな値となり、実噴射時期のズレの原因となるが、上記構成とすることにより、初回から所望の値に近いΔITを用いることができ、かつ、それを所望のΔITとなるように学習更新させることができるので、実噴射時期のズレを極力改善することができる。加えて、万一、タイマピストン位置センサ112が故障等した場合でも、故障する前の値を用いて、噴射時期を決定することができるという利点もある。
ところで、上記各実施形態では、所謂分配型の燃料ポンプであるVE型燃料ポンプについて説明してきたが、これに限るものではなく、電子制御化された列型ポンプ延いてはユニットインジェクタ等にも適用できるものである。
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、所謂静的補償型動的噴射時期制御装置において、燃料性状や燃料噴射装置の個体毎の性能・生産バラツキに起因する噴射時期制御の制御精度低下を防止することができ、以って、より一層、噴射時期制御の応答性向上と制御安定性とを高いレベルで両立させることができる。また、減速時やフューエルリカバリ時等における噴射時期制御の制御精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1に記載の発明の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第1の実施形態の構成図。
【図3】同上実施形態における燃料噴射時期制御を説明するためのフローチャート。
【図4】同上実施形態の効果を説明するためのタイムチャート。
【図5】本発明の第2の実施形態における燃料噴射時期制御を説明するためのフローチャート。
【図6】同上実施形態の効果を説明するためのタイムチャート。
【図7】本発明の第3の実施形態における燃料噴射時期制御を説明するためのフローチャート。
【図8】同上実施形態の効果を説明するためのタイムチャート。
【図9】本発明の第4の実施形態における燃料噴射時期制御を説明するためのフローチャート。
【図10】従来の噴射時期制御方法▲1▼(静的噴射時期制御)における装置の構成図と機能説明図。
【図11】従来の噴射時期制御方法▲2▼(動的噴射時期制御)における装置の構成図と機能説明図。
【図12】NOx・PM同時低減領域(回転負荷の影響)を示す図〔低速負中低回転時(発進直後)〕。
【図13】NOx・PM同時低減領域(回転負荷の影響)を示す図〔中速負中低回転時(加速時)〕。
【図14】NOx・PM同時低減領域(回転負荷の影響)を示す図〔低負荷低回転時(定常運転時)〕。
【図15】燃料噴射時期(IT)と負荷がエミッションや燃費に及ぼす影響を説明する図。
【図16】燃料性状(燃料粘度)が噴射遅れ期間(ΔIT)に及ぼす影響を説明する図。
【符号の説明】
100 燃料噴射ポンプ
101 ドライブシャフト
103 プランジャ
104 フェイスカム
105 コントロールスリーブ
106 ロータリソレノイド
107 コントロールスリーブ位置センサ
110 レバー
111 タイマピストン
112 タイマピストン位置センサ
113 タイミングコントロールバルブ(TCV)
114A 針弁リフトセンサ
115 燃料温度センサ
116 水温センサ
117 コントロールレバー開度センサ
118 回転速度センサ
119 コントロールユニット
Claims (5)
- 運転状態に基づいて、燃料噴射弁から燃料の噴射を開始させる目標動的噴射時期を設定する目標動的噴射時期設定手段と、
燃料噴射弁から実際に燃料噴射が開始される時期に相当する動的噴射時期を検出する動的噴射時期検出手段と、
燃料噴射ポンプの燃料の圧縮開始時期或いは燃料の吐出開始時期に相当する静的噴射時期を制御する静的噴射時期制御手段と、
実際の静的噴射時期を検出する静的噴射時期検出手段と、
前記静的噴射時期検出手段の検出値と、前記動的噴射時期検出手段の検出値と、に基づいて、実際の静的噴射時期から実際の動的噴射時期までの噴射遅れ期間を検出する噴射遅れ期間検出手段と、
前記目標動的噴射時期を、前記噴射遅れ期間に基づいて、静的噴射時期に変換した目標値として算出する目標値変換算出手段と、
前記動的噴射時期検出手段により検出された動的噴射時期を、前記噴射遅れ期間に基づいて、静的噴射時期に変換した検出値として算出する検出値変換算出手段と、
前記目標値変換算出手段により算出された目標値と、前記検出値変換算出手段により算出された検出値と、に基づいて、前記静的噴射時期制御手段を制御する第1燃料噴射時期制御手段と、
を含んで構成したことを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 前記動的噴射時期検出手段が良好に実際の動的噴射時期を検出できない状態において、運転状態に基づき予め設定されている目標静的噴射時期と、前記静的噴射時期検出手段により検出された実際の静的噴射時期と、に基づいて、前記静的噴射時期制御手段を制御する第2燃料噴射時期制御手段を含んで構成したことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
- 前記目標値変換算出手段が、
静的噴射時期に変換された目標値を算出する際に、噴射時期制御の応答遅れを改善すべく、噴射時期制御系の時定数に応じた進み処理を行なわせる進み処理手段と、
前記進み処理手段による処理結果を、前記目標値の算出に反映させるための応答遅れ補償ゲインを、運転条件に応じ、前記目標動的噴射時期と、前記動的噴射時期検出手段により検出された実際の動的噴射時期と、前記目標値変換算出手段により算出された目標値と、に基づいて、学習更新する応答遅れ補償ゲイン学習更新手段と、
を含んで構成されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 前記目標値変換算出手段が、
静的噴射時期に変換された目標値を算出する際に、噴射時期制御の応答遅れを改善すべく、噴射時期制御系の時定数に応じた進み処理を行なわせる進み処理手段と、
前記噴射時期制御系の時定数を、運転条件に応じ、目標動的噴射時期の変化率と、前記目標値変換算出手段により算出された目標値の変化率と、に基づいて、学習更新する時定数学習更新手段と、
を含んで構成されたことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。 - 前記目標値変換算出手段が、
運転条件に応じて予め設定された噴射遅れ期間に基づいて、前記目標動的噴射時期を、静的噴射時期に変換した目標値として算出する手段を備えると共に、前記噴射遅れ期間検出手段により実際に検出された噴射遅れ期間に基づいて、前記予め設定されている噴射遅れ期間を学習更新する手段を備えて構成されたことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1つに記載の内燃機関の燃料噴射装置。
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