JP3635528B2 - 木造トラス用構造部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は木造トラス用構造部材に係り、詳しくは、天然材による自然感あふれる木造トラス構造物の強化を図るため、トラスを構成するノードにトラス部材としての丸太材を寸法精度高く取り付けることができると共に、丸太材を補強して圧縮力作用時の座屈を可及的に抑制できるようにした木製トラス部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
木造構造物に使用される木材は、一般的に鋼製材料を使用した場合のように高い強度や靱性が発揮され難くまた経年変化による劣化を招きやすい。そこで、予め十分に乾燥させておくことはもとより、硬い材質や緻密な資質の材料が選定されたり、荷重による変形をきたし難い極めて太い径のものが使用されるといったことが多い。
【0003】
このような木造構造物は自然の感覚を残して安らぎを与える点で日常生活等に馴染みやすく、また自然呼吸による調湿作用も発揮され、湿潤な気候や風土において貴重であることは言うまでもない。ところで、木質材料を用いてトラス構造やすじかい構造を実現しようとする場合、接合形態を考慮すると、鋼製トラス等の場合と同様に長尺な構造部材が必要となるが、木材のみでこれを実現することは不可能に近い。
【0004】
とりわけ体育館やホールといった大型建築物の屋根や壁をトラス構造で実現する場合には大量の資材が投入されることになるが、高い機械的強度や大きな剛性を発揮させるためとはいえ、太い木材のみを使用することはしばしば制約を受ける。そのために細い丸太材を使用しながらも、所望する接合強度を発揮させるために、従来から以下のような構造が提案され、また採用されている。
【0005】
図3に示すように、丸太材11の端部に接合装置12を取り付け、これを介して各ノード13に接合することによりトラス構造が実現される。接合装置は接合ボルト14、スリーブ15、コーン部材16およびガセットプレート17よりなる。接合ボルト14には軸部の途中にボス部14aが形成され、スリーブ15を回転させるとボス部を介して接合ボルトがノードのねじ孔に螺進できるようになっている。
【0006】
コーン部材16は接合ボルト14を予め通しておいた後にガセットプレート17と溶接され、丸太材11の端部に設けた割り込みスリット11aにガセットプレートが挿入して取り付けられる。このガセットプレート17には適数個のボルト孔17a,17aが設けられ、図4に示すように貫通ボルト18を用いて固定される。
【0007】
上記のボルト孔17aは丸太材の外から見えないので、貫通ボルトの挿入を容易にしておくため、丸太材およびガセットプレートにボルト径よりかなり大きい孔が設けられる。この場合、貫通ボルトがガタつくことを防止するため、ガセットプレート17の表面に接着材が塗布されると共に、各隙間18aにも接着材が充填される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような方法においては、木材が乾燥することによる収縮がそのまま構造部材の長さ精度に影響を及ぼす。これはトラス構造物の組み立て精度に直接影響するものであり、それゆえ設計値に対する狂いが生じると、強度や耐力が所望値から外れることになる。もちろん、素材の不均一性や不等質性が構造部材の耐力に影響し、大スパン用トラス部材として材質の信頼性・安定性・安全性を期待しがたくなる問題がある。
【0009】
従って、木材の乾燥度を十分に管理しておく必要があること、信頼性のある品質のよい材料を厳選するといったことが行われる。しかし、上質木材であっても不可避的に生じる図4に示した隙間18aを接着材等で充填することは容易でない。上質材を厳選した例でも毎年かなりの数の部材の取り替えが余儀なくされることがある。
【0010】
一方、若年齢の間伐材等は、トラス構造物への利用の可能性がほとんどないといっても過言でない。すなわち、我国で大量に産出されるものの利用価値が著しく乏しい低品質間伐材は付加価値の高い大スパン構造用部材に適用し得るものでない。これは、言うまでもなく若齢ゆえに強度が低いこと、材質的なばらつきが大きく低品質であること、乾燥による収縮が非常に大きいことに基づくもので、我国で最も大量に得られる杉丸太は特にこの傾向が強い。
【0011】
本発明は上記の問題に鑑みなされたもので、その目的は、自然感あふれソフトな雰囲気を漂わせる木造トラス構造物に若年齢間伐材の適用を可能にしてその有効利用が図られるようにすること、高い寸法精度を維持した木造トラス構造物を実現して所望の耐力を発現させやすくすること、経年変化による劣化や寸法の狂いを可及的に抑制できること、木製トラス部材としての耐力増強がなされると共に圧縮力に対する座屈を起こし難くすることを実現した木造トラス用構造部材を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、トラス構造物のノードに接合することができる接合装置が、長尺な木製構造部材の両端部に備えられている木造トラス部材に適用される。その特徴とするところは、図1を参照して、トラス部材1は、長尺な丸太材2と、その丸太材2を縦通する鋼棒材3と、その鋼棒材3に取り付けられる接合装置4とを有している。接合装置4は、多角形断面のボス部41aを挟んだ一方の側にノード5のねじ孔5aに噛み合う接合用右ねじ41Rが形成されると共に他方の側にアンカー用左ねじ41Lが設けられている接合ボルト41と、ボス部41aの外面に係合して回転力を伝達すると共に接合ボルト41の軸方向変位を許容した挿通孔42aを有するスリーブ42と、接合ボルト41の軸部41bを摺動可能に支持するスリーブナット43と、そのスリーブナット43から出たアンカー用左ねじ41Lに螺合されるアンカーナット44とを備える。丸太材2には、その軸芯部分が長手方向にくり抜かれて鋼棒材3を収容可能とした縦通孔25が形成されると共に、その縦通孔25に連なり丸太材2の端部で開口しスリーブナット43を取り付けるためのソケット6を収容できるように拡径したソケット嵌入孔26が形成される。そして、ソケット6には、そのノード側で開口しスリーブナット43の外面に刻設された取付用左ねじ43Lと螺合する取付用ねじ孔61Lとその取付用ねじ孔61Lに連なりアンカーナットを収容する空間62が設けられる一方、反ノード側では、鋼棒材3の先端に刻設した接続用左ねじ3Lに螺合しかつその接続用左ねじ3Lの先端が底当たりする接続用ねじ孔63Lが形成されていることである。
【0013】
接合ボルト41のボス部41aとスリーブナット43との間のボルトの軸部41bにコイルスプリング45を外嵌させ、アンカーナット44を収容する空間62を接合ボルトの後退可能な退避用空間としておくとよい。
【0014】
縦通孔25とソケット嵌入孔26との境界部に向けて半径方向へ延び、丸太材2の外面から接着材をソケット嵌入孔26の底部および鋼棒材3の接続用左ねじ3L近傍に供給することができる接着材注入孔28が設けられる。
【0015】
図2の(a)に示すように、丸太材2の外周部に、丸太材2を針金24で縛っておくための止め溝23を形成しておくことが好ましい。
【0016】
丸太材2の外面は、両端部21,21が円錐台状に、軸部22が円筒状となるように加工されている。
【0017】
【発明の効果】
本発明によれば、トラス部材が長尺な丸太材と鋼棒材と接合装置とを有し、丸太材はその軸芯部分がくり抜かれて鋼棒材を収容可能にする縦通孔が設けられると共に、丸太材の端部で開口してスリーブナットを取り付けるソケットを収容するソケット嵌入孔が形成され、ソケットにはノード側で開口する取付用ねじ孔が設けられる一方、接続用左ねじに螺合しかつその先端が底当たりする接続用ねじ孔が反ノード側に形成された構成となっているので、鋼棒材によって補強された木製トラス部材は、引張力や圧縮力が作用した場合、軸部が木質のみの構造部材に比べて格段に大きな耐力を発揮する。従って、丸太材を使用しても立体トラスによる屋根構造や壁構造が実現され、体育館やホール等で要求される大スパン木造建築物の構築が可能となる。
【0018】
ソケットや鋼棒材およびその各ねじ部の寸法精度を高く加工しておくことによって、それらからなる軸芯部材の長さが高い精度で仕上げられ、構造計算による部材応力の再現性が格段に向上し、構造物の安全性の確保が容易となる。もちろん、丸太材の乾燥による長さ方向の影響もほとんど受けることがない。引張や圧縮といった応力に対しては丸太材を貫通している鋼棒材が対抗し、丸太材の荷重負担は大きく軽減される。従って、若年齢間伐材や杉丸太といった低品質材であっても、大スパン構造用部材として利用する途が開かれる。
【0019】
鋼棒材は丸太材で全長覆われているので、鋼棒材が座屈しようとしても、丸太材が鋼棒材の曲げ変形を周囲から抑制するように働き、相互に寄与しあうことになる。スリーブナット、アンカーナットや鋼棒材に形成されたねじは全て左ねじであるので、接合ボルトをノードに螺合して本締めする際に大きなトルクが作用しても、上記した各ねじ部が緩んだりすることはない。
【0020】
接合ボルトのボス部とスリーブナットとの間のボルトの軸部にコイルスプリングが外嵌され、アンカーナットを収容する空間が接合ボルトの後退を許容する退避用空間となっている場合には、接合ボルトの接合用右ねじがスリーブ内に退避可能となり、ノード間距離が正寸になっていてもトラス部材を簡単に配置でき、またスプリングの復元力によって接合ボルトを押し出させ、ノードのねじ孔に簡単に噛み合わせることができる。
【0021】
丸太材に設けた縦通孔とソケット嵌入孔との境界部に向けて半径方向へ延びる接着材注入孔が設けられていれば、工作上生じる不可避な隙間すなわちソケット嵌入孔の底部および鋼棒材の接続用左ねじ近傍へ丸太材の外面から接着材を供給することができ、ソケットと鋼棒材と丸太材との一体性の強化が図られる。
【0022】
丸太材の外周部に止め溝を形成しておけば、針金を掛けて丸太材が縛りやすくなる。これによって、丸太材と鋼棒材との密着性を高めて丸太材の一体化が促され、また爾後的に発生するひび割れも抑制される。針金の採用により、木製トラス部材の野趣性も豊かにしておくことができる。
【0023】
丸太材の外面の両端部を円錐台状に軸部を円筒状に加工しておけば、丸太材の外観とあいまって表面の木肌に落ちついた雰囲気と自然美および機能美が与えられ、その見栄えが向上する。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係る木造トラス用構造部材を、その例を示した図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明が適用された長尺な木製トラス部材1の一方の端部における断面を示す。このトラス部材は、長尺な丸太材2と、その丸太材を縦通する鋼棒材3と、この鋼棒材に取り付けられる接合装置4とを備えるもので、接合装置を介して木製トラス部材がノード5に接合され、体育館やホール等の屋根や壁をトラス構造によって構築することができるようになっている。
【0025】
言うまでもなく上記の接合装置4は例えば3ないし5メートルにも及ぶ丸太材の両端に設けられるものであり、上記した鋼棒材3も丸太材2と共にトラス部材1を構成するものであって、丸太材と略等しい長さを有している。尚、丸太材2の外径が150ミリメートルである場合、鋼棒材3の直径としては例えば30ないし40ミリメートル前後のものが使用される。
【0026】
順を追って詳しく述べると、接合装置4は接合ボルト41とスリーブ42とスリーブナット43とアンカーナット44とを有し、これが後述するソケット6を介して鋼棒材3と接続される。ソケット6と鋼棒材3とは丸太材2の軸芯部に納められて一体化されるので、トラス部材1に引張力や圧縮力が作用した場合、鋼棒材3で補強された丸太材2は、それ単独の場合すなわち図3に表した従来例に比べれば格段に大きな耐力を発揮することができる。また、鋼棒材3が座屈しようとしても、丸太材2が鋼棒材の曲げ変形を周囲から抑制するように働き、相互に寄与しあった構造となっている。
【0027】
丸太材2は、図2の(a)に示すごとく、その外面が両端部21,21で円錐台状をなすように、また軸部22では円柱状となるように旋盤加工やロール加工等される。表面の木肌は上記の形状とあいまって落ちついた雰囲気と自然美および機能美をかもし出し、その見栄えが向上する。外周部には長手方向に或る間隔をおいた止め溝23も併せて切削成形される。
【0028】
この止め溝23は針金24を掛けて丸太材2を縛りやすくするためのものであるが、これによって丸太材2と鋼棒材3との密着性を高めたり爾後的に発生するひび割れが抑制され、さらには後述するように丸太材2を半割れとする場合には両者の一体化が維持されやすくなる。因みに、あえて針金を採用しているのは野趣性を高める意図によるが、ベルト等を使用して逆にスマートさを出すようにしてもよいことは述べるまでもない。
【0029】
このように外面に機械加工が施された丸太材2には、図2の(b)のように軸芯部分が長手方向にくり抜かれ、鋼棒材を収容可能とした縦通孔25が形成される。加えて、この縦通孔に連なり丸太材2の端部で開口する拡径部が形成され、これがスリーブナット43(図1を参照)を取り付けるための円筒状をしたソケット6を収容するソケット嵌入孔26となっている。
【0030】
この縦通孔25やソケット嵌入孔26は長尺ドリルによって芯抜きすれば形成することができるが、上でも触れたように、ロール加工等した後に半割れに切断し、各半割れ材にそれぞれを形成するようにしても差し支えない。
【0031】
図1に戻って、接合ボルト41には、多角形断面のボス部41aを挟んだ一方の側にノード5のねじ孔5aに噛み合う接合用右ねじ41Rが刻設されており、他方の側にアンカー用左ねじ41Lが形成されたものである。スリーブ42は、ボス部41aの外面に係合し、回転力を伝達すると共に接合ボルト41の軸方向変位を許容した挿通孔42aを有したもので、その外形の断面も例えば六角形となっている。
【0032】
スリーブナット43は接合ボルト41の軸部41bを摺動可能に支持するもので、スリーブ42の回転により接合ボルトの進退を案内すると共に、次に述べるアンカーナット44を当接させることにより、接合ボルト41のそれ以上の前進を阻止するように機能する。アンカーナット44は、スリーブナット43から出たアンカー用左ねじ41Lに螺合され、接合ボルト41によるトラス部材1とノード5との接合反力を受けるようになっている。
【0033】
尚、このような形式の接合装置は特開昭62−55347号公報に記載されているものであり、接合部の構造としては既に知られたものである。本発明においては、このような接合装置と組み合わされる上記したソケット6に以下の配慮が施される。図1に示すように、そのノード側に取付用ねじ孔61Lと空間62が設けられると共に、反ノード側には接続用ねじ孔63Lが形成される。
【0034】
取付用ねじ孔61Lはノード側で開口しスリーブナット43の外面に刻設された取付用左ねじ43Lと螺合することができるものであり、空間62は取付用ねじ孔61Lに連なる空洞部を形成して、前記したアンカーナット44を格納しておいたり後述するコイルスプリングが採用される場合には接合ボルト41の後退を可能にするためのものである。接続用ねじ孔63Lは、鋼棒材3の先端に刻設した接続用左ねじ3Lに反ノード側で螺合し、かつこの接続用左ねじの先端が底当たりする程度の深さの孔となっている。
【0035】
このように丸太材を主体にしたトラス部材には、丸太材2の補強と接合装置4との連結することを目的としたソケット6および鋼棒材3からなる軸芯部材7が採用され、強化の図られた木製トラス部材の実現を可能としている。因みに、接合装置として例えば特開昭63−51539号公報に記載されているように、ボス部41aとスリーブナット43との間のボルトの軸部41bにコイルスプリング45を外嵌しておくようにしておくこともできる。
【0036】
ところで、ソケット嵌入孔26の底部とソケット6との間や、鋼棒材3と縦通孔25の開口部の間には、加工上避けることのできない隙間27が生じる。この僅かな空隙を充填してそれぞれの一体性を強化するため、接着材を注入できるようにしておくことが望ましい。そこで、本例においては、図1に示すように、縦通孔25とソケット嵌入孔26との境界部に向けて半径方向へ延びる接着材注入孔28が設けられる。このようにしておけば、丸太材2の外面から接着材をソケット嵌入孔26の底部および鋼棒材3の接続用左ねじ3Lの近傍に供給することができるようになる。
【0037】
以上のような構成によれば、立体トラスによる屋根構造や壁構造が実現され、体育館やホール等で要求される大スパン木造建築物を、安価な間伐材等であってもそれを用いて構築することができる。まず、その製作手順から述べる。丸太材2を図2の(a)のように成形し、それを長手方向に沿って半割れに切断する。そして、(b)に示した縦通孔25およびソケット嵌入孔26を形成する。
【0038】
一方、鋼棒材3の両端に刻設した接続用左ねじ3Lに接着材を塗布し、左右それぞれのソケット6に設けた接続用ねじ孔63Lに螺着する。このとき、接続用左ねじ3Lが接続用ねじ孔63Lに底当たりするまでねじ込まれる。ソケット6や鋼棒材3およびそれぞれのねじ部の寸法精度は極めて高く加工しておくことができるので、底当たりさせた時点で、一方のソケット6の端部から他方のソケット6のそれまでの長さを、±0.2ミリメートル程度の精度で仕上げた軸芯部材7としておくことができる。
【0039】
半割れ状態にある丸太材2の縦通孔25、ソケット嵌入孔26および半割れ面29に接着材を塗布しておき、上のようにして準備された軸芯部材7を半割れ状態にある丸太材に嵌めこむ。他の半割れ材にも同様に接着材を施して、これを重ねて一体化した後に針金24で縛る。その後に、接着材注入孔28から縦通孔25とソケット嵌入孔26との境界部に向けて接着材を供給し、ソケット嵌入孔26の底部および鋼棒材3の接続用左ねじ3Lの近傍の隙間27を埋める。
【0040】
その間に、接合ボルト41のアンカー用左ねじ41Lをスリーブナット43に通し、そこから出た部分に接着材を塗布しアンカーナット44をねじ端まで螺着して、接合装置4を組み立てておく。尚、コイルスプリング45を採用している場合には、接合ボルト41をスリーブナット43に通す前に、アンカー用左ねじ41L側からボルトの軸部41bに嵌めておけばよい。
【0041】
その状態で、スリーブナット43の外面に刻設した取付用左ねじ43Lにねじロック材を塗布し、これをソケット6に設けた取付用ねじ孔61Lに螺着する。スリーブナット43の螺進操作は、二つの小孔43aにひっ掛けることができる一対の爪体を有した捩じ込みツール(図示せず)を使用すればよい。このようにしてスリーブ42を除く接合装置4の各要素が鋼棒材3から脱落しない状態で装着される。
【0042】
丸太材2は半割れとしなくても縦通孔25やソケット嵌入孔26を形成できることは上で述べたとおりであるが、そのような場合には、鋼棒材3の一方側にソケット6を接続した状態で、鋼棒材3を丸太材2に縦通させ、他方側においてはソケット6をソケット嵌入孔26に入れて回転させればよい。その回転は上で触れた捩じ込みツールの類を使用すればよい。ソケット6の端面と丸太材2の端面は一致していなければならないというものではないので、ソケット6の端部にレンチ等をかませることができる回転作用部を形成しておくこともできる。
【0043】
以上の操作は、設備の整った工場において行われる。工事現場の所定のノードの位置にトラス部材が運び込まれると、接合ボルト41に被せたスリーブ42を回転させ、ボス部41aを介して伝達された回転力で接合ボルト41の接合用右ねじ41Rをノード5のねじ孔5aに噛み合わせる。アンカーナット44がスリーブナット43に当接した時点で接合ボルト41の螺進が阻止される(図1中の仮想線を参照)。
【0044】
スリーブ42の外面にレンチをかまして本締めすれば、順次トラスを構築することができる。尚、スリーブナット43、アンカーナット44や鋼棒材3に形成されたねじは全て左ねじであるので、本締めの際の大きなトルクによってねじロック効果が消失しても、接合ボルト41はノード5から緩んだり移動することがない。
【0045】
トラスが順次組みあがるとノード間の距離がトラス部材の長さしか残らなくなるが、コイルスプリング45によって接合ボルト41の後部を退避用空間62へ押し込めば正寸領域においてもトラス部材1を嵌め込み、またスプリングの復元力によって接合ボルト41をノード5のねじ孔5aに取り付けることができる。スリーブ42の長さも精度高く製作されるので、スリーブ42の一方端はノード5の平坦面に他方端はソケット6の端面に密着してノード間の距離が所望どおりに保たれ、かつ接合ボルト41の露出を回避して発錆も抑えられる。
【0046】
このようにして組あげられたトラス部材は全長にわたって鋼棒材が貫通しているので、丸太材の乾燥による長さ方向の影響をほとんど受けることがない。これは、鋼棒材が材長方向の丸太材の変化を拘束しているからである。引張や圧縮といった応力に対しては丸太材を貫通している鋼棒材が対抗し、丸太材の荷重負担を大きく軽減することは述べるまでもない。
【0047】
従って、材質的にばらつきが大きく強度も低くさらには乾燥による収縮が非常に大きいと言われている若年齢間伐材や、我国で最も大量に産出される杉丸太といった低品質材であっても大スパン構造用部材として利用する途が開かれる。
【0048】
このように木質が余り高くない場合であっても、鋼棒材は丸太材で全長覆われていることから、トラス部材に圧縮力が作用したとき、主として軸力を受ける鋼棒材の座屈が抑制される。すなわち、丸太材は鋼棒に対して十分大きな径すなわち大きな肉厚を持っているので、鋼棒の座屈を防止するに十分な曲げ剛性を発揮するからである。尚、丸太材の要所に用いた針金は経年変化によるひび割れ等を防止し、曲げ剛性の持続性も高めている。
【0049】
以上の説明から分かるように、ソケットと鋼棒材とは底当りで組立てられるので、木造トラス用構造部材として極めて精度よく仕上げられることになる。従って、従来の木造用構造部材の精度が±1ないし2ミリメートルであるのに比べると、前述したごとくの非常に高い精度が得られ、構造計算による部材応力の再現性が格段に向上して安全性が確保されやすくなる。また、上記のとおり、従来利用の難しいといわれてきた低級品の間伐材も付加価値の高い立体トラス部材として有効に利用でき、資源保護の立場からも価値ある利用法が提供されることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る木造トラス用構造部材におけるノード近傍における断面図。
【図2】 (a)は木造トラス用構造部材の全体外観図、(b)は丸太材を半割れとした場合の一方側における斜視図。
【図3】 丸太材に採用されている従来の接合装置を備えた構造部材の端部断面図。
【図4】 図3の一部外観および内部構造を示す平面図。
【符号の説明】
1…トラス部材、2…丸太材、3…鋼棒材、3L…接続用左ねじ、4…接合装置、5…ノード、5a…ノードのねじ孔、6…ソケット、21…丸太材の端部、22…丸太材の軸部、23…止め溝、24…針金、25…縦通孔、26…ソケット嵌入孔、28…接着材注入孔、41…接合ボルト、41a…接合ボルトのボス部、41b…接合ボルトの軸部、41R…接合用右ねじ、41L…アンカー用左ねじ、42…スリーブ、42a…挿通孔、43…スリーブナット、43L…取付用左ねじ、44…アンカーナット、45…コイルスプリング、61L…取付用ねじ孔、62…空間(退避用空間)、63L…接続用ねじ孔。
Claims (5)
- トラス構造物のノードに接合することができる接合装置が、長尺な木製構造部材の両端部に備えられている木造トラス部材において、
前記トラス部材は、長尺な丸太材と、該丸太材を縦通する鋼棒材と、該鋼棒材に取り付けられる接合装置とを有し、
前記接合装置は、多角形断面のボス部を挟んだ一方の側にノードのねじ孔に噛み合う接合用右ねじが形成されると共に他方の側にアンカー用左ねじが設けられている接合ボルトと、前記ボス部の外面に係合して回転力を伝達すると共に前記接合ボルトの軸方向変位を許容した挿通孔を有するスリーブと、前記接合ボルトの軸部を摺動可能に支持するスリーブナットと、該スリーブナットから出た前記アンカー用左ねじに螺合されるアンカーナットとを備え、
前記丸太材には、その軸芯部分が長手方向にくり抜かれて前記鋼棒材を収容可能とした縦通孔が形成されると共に、該縦通孔に連なり丸太材の端部で開口し前記スリーブナットを取り付けるためのソケットを収容できるように拡径したソケット嵌入孔が形成され、
前記ソケットには、そのノード側で開口し前記スリーブナットの外面に刻設された取付用左ねじと螺合する取付用ねじ孔と該取付用ねじ孔に連なり前記アンカーナットを収容する空間が設けられる一方、反ノード側では、前記鋼棒材の先端に刻設した接続用左ねじに螺合しかつ該接続用左ねじの先端が底当たりする接続用ねじ孔が形成されていることを特徴とする木造トラス用構造部材。 - 前記接合ボルトのボス部とスリーブナットとの間のボルトの軸部にはコイルスプリングが外嵌され、前記アンカーナットを収容する空間は接合ボルトの後退を許容する退避用空間となっていることを特徴とする請求項1に記載された木造トラス用構造部材。
- 前記縦通孔とソケット嵌入孔との境界部に向けて半径方向へ延び、丸太材の外面から接着材をソケット嵌入孔の底部および前記鋼棒材の接続用左ねじ近傍に供給することができる接着材注入孔が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された木造トラス用構造部材。
- 前記丸太材の外周部には、丸太材を針金で縛っておくための止め溝が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載された木造トラス用構造部材。
- 前記丸太材の外面は、両端部が円錐台状に軸部が円筒状となるように加工されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載された木造トラス用構造部材。
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JP2000075602A JP3635528B2 (ja) | 2000-03-17 | 2000-03-17 | 木造トラス用構造部材 |
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