JP3634154B2 - 内燃機関の気筒判別方法及び装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の気筒判別方法及び気筒判別装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等に用いられている内燃機関は、各気筒のピストンをクランクシャフトに連結することによってピストンの往復運動を回転運動に変換して取り出している。ここで、吸気、圧縮、膨張、排気の4行程のサイクルをクランクシャフトの2回転で行なう4サイクル内燃機関を多気筒連結している場合には、クランクシャフトの回転角度を判別するのみではどの気筒が圧縮行程にあるのか、またどの気筒が圧縮上死点位置にあるのか等、すなわち気筒の判別を正確に行なうことができない。このため、通常は、クランクシャフトにタイミングベルト等の連結手段を介して連結され、吸排気弁を開閉させるためのカムを有するカムシャフトの回転角度とクランクシャフトの回転角度とを検出し、両シャフトの回転角度に基づいてクランク角度(2回転中の回転角度;0度〜720度)を判別することによって気筒の判別を行っている。
【0003】
従来の内燃機関の気筒判別装置に用いられているカム角検出用ロータ及びクランク角検出用ロータを図9及び図10に示す。なお、図9及び図10に示すカム角検出用ロータ及びクランク角検出用ロータは8気筒内燃機関用である。
カムシャフトに連結されているカム角検出用ロータ60は、強磁性体等で形成され、歯61が設けられている。このカム角検出用ロータ60の外周に対向して、歯61を検出するカム角センサ70が配設されている。カム角センサ70は、例えばカムシャフトが8番気筒の圧縮上死点位置(TDC)にある状態で歯61の回転方向始端位置に配設されている。
一方、クランクシャフトに連結されているクランク角検出用ロータ80は、強磁性体等で形成され、基準角度、図では10度間隔で歯81が設けられているとともに、連続する2つの歯を欠き落とした欠歯部83が設けられている。このクランク角検出用ロータ80の外周に対向して、歯81を検出するクランク角センサ90が配設されている。クランク角センサ90は、例えばクランクシャフトが2番気筒あるいは3番気筒の圧縮上死点位置にある状態で欠歯部83の回転方向始端位置に配設されている。
なお、カム角センサ70からのカム角信号及びクランク角センサ90からのクランク角信号に基づいてクランク角度及び気筒を判別する気筒判別手段が設けられている。
【0004】
このようなカム角検出用ロータ60及びクランク角検出用ロータ80を用いてクランク角度及び気筒を判別する動作を図11に示すタイミングチャート図を用いて説明する。
クランク角信号の立上りから次の立上りまでの時間間隔、すなわちパルス間隔T(n)を測定し、今回のパルス間隔T(n)が前回のパルス間隔T(n−1)より大きいか否かを判断することによって欠歯部83に対応する部分C83を検出する。そして、欠歯部に対応する部分C83の立上り点からクランク角信号を所定数計数することによってクランク角度を判別(例えば、クランク角度で90度か450度を判別)し、各気筒の圧縮上死点位置(例えば、1番気筒の圧縮上死点位置か6番気筒の圧縮上死点位置)を判別する。また、クランク角信号の欠歯部33に対応する部分C83を検出する前にカム角信号の歯61に対応する部分C61を検出したか、欠歯部33に対応する部分C83を検出したかを判別することによってクランク角度を判別する(例えば、C83を検出する前にC61を検出した場合にはクランク角度が450度、C83を続けて検出した場合にはクランク角度が90度)。
この従来の内燃機関の気筒判別装置では、カム角信号の歯61に対応する部分C61の立ち上がり点直前の位置で内燃機関が始動した場合には、クランク角信号の欠歯部83に対応する部分C83を1個検出した時点(クランクシャフトが約180度回転)で、またカム角信号の歯61に対応する部分C61の立下り点直後の位置でエンジンが始動した場合には、クランク角信号の欠歯部83に対応する部分C83を2個検出した時点(クランクシャフトが約550度回転)でクランク角度を正確に判別することができる。すなわち、クランク角度で180度〜550度の範囲でクランク角度及び気筒を判別することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ライトの消し忘れや低温時等にはバッテリ電圧が極端に低下する。このようなローバッテリ電圧条件下で内燃機関を始動する(始動クランキング)時には、スタータモータのトルクが小さいためクランクシャフトは気筒数に対応した所定回転範囲(始動クランキング回転可能範囲)しか回転することができない。
しかしながら、従来の内燃機関の気筒判別装置は、クランク角度及び気筒を判別することができる気筒判別範囲がローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲に基づいて設定されていない。例えば、前記従来の内燃機関の気筒判別範囲は、180度〜550度の範囲である。このため、ローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲が180度より小さい場合には始動クランキング時にクランク角度及び気筒を判別することができず、内燃機関を始動させることができない。
また、ローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲が180度〜550度の範囲であっても、クランクシャフトは始動クランキング回転可能範囲だけ回転した後に正転、逆転を繰り返しながら負荷が最も小さい位置に停止する。しかしながら、気筒判別手段は、クランクシャフトの正転時及び逆転時に出力されるクランク角信号を共にカウントしてクランク角度を判別するため、クランクシャフト停止時に判別しているクランク角度が実際のクランク角度と一致しなくなる。このため、次回の始動時に誤ったクランク角度からクランク角信号のカウントを開始することになり、正確に気筒を判別することができず、内燃機関を始動させることができない。
このように、従来の内燃機関の気筒判別装置では、ローバッテリ電圧条件下で内燃機関を確実に始動させることができない。
本発明は、このような問題点を解決するために創案されたものであり、ローバッテリ電圧条件下でも内燃機関を確実に始動させることができる内燃機関の気筒判別方法及び内燃機関の気筒判別装置を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、カムシャフトに設けられたカム角検出用ロータの周縁の山部あるいは谷部をカム角センサにより検出することで得られるカム角情報と、クランクシャフトに設けられたクランク角検出用ロータの周縁の歯をクランク角センサにより検出することで得られるクランク角情報とに基づいて気筒判別を行う内燃機関の気筒判別方法であって、内燃機関を始動させる際に、前記クランクシャフトが回転したにも係わらずその内燃機関が始動せずに停止した場合、停止するまでに得られた前記カム角情報と前記クランク角情報とに基づいて気筒判別を行う工程と、前記内燃機関が停止する前に圧縮行程を終了した気筒の圧縮上死点位置に相当する前記クランクシャフトの角度と、前記内燃機関が停止するときに圧縮行程中の気筒の圧縮上死点位置に相当する前記クランクシャフトの角度との中間位置を停止時の前記クランクシャフトの角度として記憶する工程とを有することを特徴とする。
これによって、始動時に内燃機関が停止しても停止時のクランク角度及び気筒を正確に判別することができ、ローバッテリ電圧条件下でも内燃機関を良好に始動させることができる。
請求項2の発明は、カムシャフトに設けられたカム角検出用ロータの周縁の山部あるいは谷部をカム角センサにより検出することで得られるカム角情報と、クランクシャフトに設けられたクランク角検出用ロータの周縁の歯をクランク角センサにより検出することで得られるクランク角情報とに基づいて気筒判別を行う内燃機関の気筒判別装置であって、内燃機関を始動させる際に、前記クランクシャフトが回転したにも係わらずその内燃機関が始動せずに停止した場合、停止するまでに得られた前記カム角情報と前記クランク角情報とに基づいて気筒判別を行う気筒判別手段と、前記内燃機関が停止する前に圧縮行程を終了した気筒の圧縮上死点位置に相当する前記クランクシャフトの角度と、前記内燃機関が停止するときに圧縮行程中の気筒の圧縮上死点位置に相当する前記クランクシャフトの角度との中間位置を停止時の前記クランクシャフトの角度として記憶する手段とを有することを特徴とする。
このため、請求項2の発明に係る装置により、請求項1の発明を実施できるようになる。
請求項3の発明は、ローバッテリ電圧条件下で、クランクシャフトが回転を開始した後、そのクランクシャフトが最初にいずれかの気筒の圧縮上死点位置に相当する角度を通過し、次の気筒の圧縮上死点位置に相当する角度の前で停止する場合における前記クランクシャフトの回転可能範囲である始動クランキング回転可能範囲よりも小さい角度で気筒判別が可能ように構成されていることを特徴とする。
このように、始動クランキング回転可能範囲内で気筒判別が可能なため、ローバッテリ電圧条件下でも内燃機関を確実に始動させることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
まず、ローバッテリ電圧条件について説明する。
内燃機関の停止時には、負荷が最も小さい位置、すなわち内燃機関のクランクシャフトは各気筒の圧縮上死点位置の間のほぼ中央で停止する。
この状態で、イグニッションスイッチを電源オン位置を介してスタート位置に操作すると、スタータモータにバッテリ電圧が供給される。この時、バッテリ電圧が正常であれば、スタータモータによって内燃機関のクランクシャフトを回転させている間にクランク角度及び気筒を判別して燃料噴射制御や点火時期制御を行うことができるので、内燃機関を確実に始動させることができる。しかしながら、ライトの消し忘れ時、低温時等のようにバッテリ電圧が極端に低下している場合には、スタータモータのトルクが小さいため、内燃機関のクランクシャフトを充分に回転させることができない。この場合、クランクシャフトが圧縮上死点位置を1回も通過できない程バッテリ電圧が低下している時には内燃機関を始動させるのは困難であるが、クランクシャフトが圧縮上死点位置を少なくとも1回通過できる程度にバッテリ電圧が低下している時にはクランク角度及び気筒の判別を早期に行うことにより内燃機関を始動させることができる。本発明では、クランクシャフトが圧縮上死点位置を1回だけ通過させることができる程度にバッテリ電圧が低下している状態をローバッテリ電圧条件下という。
【0008】
次に、ローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲について説明する。図1は、4気筒内燃機関(エンジン)のローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲を示す図である。4気筒内燃機関の場合、クランクシャフトが180度回転する毎に各気筒の圧縮行程が順次行われる。
内燃機関をスタータモータによって回転させる場合、圧縮行程で大きな負荷が発生し、圧縮上死点位置(TDC)付近で最も負荷が大きくなる。
内燃機関の停止時にはクランクシャフトは最も負荷が小さい位置、すなわち圧縮上死点位置のほぼ中央(図1では0度の位置)で停止しているため、バッテリ電圧が低くてもスタータモータが起動可能である。スタータモータ起動後、いずれかの気筒の圧縮行程が行われるため負荷が増大していくが、スタータモータの慣性力とバッテリ通電時に発生する初期電力により最初の圧縮上死点位置(図1では90度の位置)を通過することができる。その後、次の気筒の圧縮行程が行われるため再び負荷が増大していく。しかしながら、今回はバッテリの初期電力がないためスタータモータのトルクが小さく、負荷の増大とともに回転数が減少していき、次の圧縮上死点位置(図1では270度の位置)の手前の位置(図1では240度の位置)まで回転して停止する。そして、内燃機関のクランクシャフトは、最も負荷が小さい位置(図1では180度の位置)まで気筒内の圧縮圧によって逆回転して停止する。この時、内燃機関のクランクシャフトは、最も負荷が小さい位置(図1では180度の位置)を中心に正転、逆転を繰り返しながら停止する。本発明では、ローバッテリ電圧条件下でスタータモータを起動させた場合に内燃機関のクランクシャフトが回転可能な範囲をローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲という。
内燃機関の気筒数とローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲との関係を図2に示す。
【0009】
本発明の内燃機関の気筒判別装置の一実施の形態の構成を図3に示す。本実施の形態の気筒判別装置は、カムシャフトに連結されたカム角検出用ロ−タ(図示せず)、カム角センサ20、クランクシャフトに連結されたクランク角検出用ロ−タ(図示せず)、クランク角センサ40、気筒判別手段50等により構成されている。
気筒判別手段50は、処理回路(MPU)51、処理回路51等にマスタ−クロックを供給するクロック発生器52、カム角センサ20からのカム角信号やクランク角センサ40からのクランク角信号を入力する入力ポ−ト54、処理プログラム等を格納したリ−ドオンリメモリ(ROM)55、作業領域等として用いられるランダムアクセスメモリ(RAM)55、これらを接続するバスライン57を備えている。
本発明の気筒判別装置は、クランク角度及び気筒を判別することができるクランクシャフトの回転角度、すなわち気筒判別範囲がローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲内となるように、例えばカム角検出用ロータやクランク角検出用ロータ等が構成されている。
【0010】
次に、本発明の図3に示した内燃機関の気筒判別装置を用いた内燃機関の気筒判別方法の一実施の形態を図4に示す始動タイミング図により説明する。なお、図4は、4気筒内燃機関をローバッテリ電圧条件下で始動する場合の始動タイミング図である。また、本実施の形態では、気筒判別範囲を4気筒内燃機関のローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲である240度より小さい120度に設定されているものとする。
いま、4番気筒の圧縮上死点位置(図4の0度)と2番気筒の圧縮上死点位置(図4の180度)のほぼ中央の停止位置T1(図4の90度)でクランクシャフトが停止しているものとする。
内燃機関を始動する場合、イグニッションキーを電源位置を介してスタータ位置に操作する始動操作を行う。これにより、スタータモータが起動する。
ここで、本実施の形態では気筒判別区間が120度に設定されているため、クランクシャフトが停止位置T1から120度回転した位置でクランク角度及び気筒の判別を行う。この場合、クランク角度が210度であり、2番気筒の圧縮行程であり、3番気筒の吸気行程であることを判別する。その後、クランク角信号をカウントすることによって順次クランク角度及び気筒を判別する。なお、クランク角信号のカウントにより判別したクランク角度は、クランク角信号及びカム角信号によって所定回転位置で補正される。
【0011】
ローバッテリ電圧条件下では、クランクシャフトは最初の圧縮上死点位置(図4の180度)は通過できるが、次の圧縮上死点位置(図4の360度)は通過できない。このため、クランクシャフトは、ローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲である240度回転した後(図4の330度)、最も負荷が小さい2番気筒の圧縮上死点位置(図4の180度)と1番気筒の圧縮上死点位置(図4の360度)のほぼ中央の停止位置T2(図4の270度)まで戻り、正転、逆転を繰り返しながら停止位置T2に停止する。
ここで、気筒判別手段50は、クランクシャフトが停止位置T2に停止するまでの間におけるクランクシャフトの正転及び逆転に伴って発生するクランク角信号を続けてカウントするため、クランクシャフトが安定位置T2に停止した時点で判別しているクランク角度は実際のクランク角度と一致しなくなる。そこで、気筒判別手段50は、クランクシャフトが停止した場合にはローバッテリ電圧条件下での始動であると判断し、停止前に判別した気筒の判別結果に基づいてクランクシャフト停止時のクランク角度を判別する。例えば、クランクシャフトが最初の圧縮上死点位置を通過後最初に判別した気筒の判別結果を用いる。本実施の形態では、ローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲が240度であり、気筒判別範囲が120度に設定されているため、最初の圧縮上死点位置(図4の180度)を通過後最初に気筒を判別する位置は、クランクシャフトが気筒判別範囲である120度回転した位置である。図4では、1番気筒の圧縮行程を判別する。そして、1番気筒の圧縮行程での停止位置である2番気筒の圧縮上死点位置(図4の180度)と1番気筒の圧縮上死点位置(図4の360度)のほぼ中央の停止位置T2(270度)を、クランクシャフト停止時のクランク角度として判別する。
【0012】
なお、クランクシャフトが圧縮上死点位置を2回以上通過して停止した場合には、このようにして判別したクランク角度と実際のクランク角度が一致しない。しかしながら、次回の始動時にクランクシャフトが気筒判別範囲だけ回転した位置で正しいクランク角度に補正され、またクランクシャフトが圧縮上死点位置を2回以上通過する場合には内燃機関が始動する可能性が高い。このため、停止時のクランク角度及び気筒の判別を前記のように行っても内燃機関の始動性に影響はない。
また、例えば気筒判別範囲が90度より小さい60度の場合には、停止位置T1からクランクシャフトが60度回転した位置でクランク角度及び気筒の判別を行うが(クランク角度が150度、2番気筒の圧縮行程)、この位置は最初の圧縮上死点位置(図4の180度)を通過していない。このため、この場合には、クランクシャフトが気筒判別範囲だけ回転した位置で判別した気筒の判別結果(2番気筒の圧縮行程)から次行程の気筒を判別し(1番気筒の圧縮行程)、これをクランクシャフトが最初の圧縮上死点位置を通過後最初に判別した気筒の判別結果として、すなわち停止前に判別した気筒の判別結果として用いる。
【0013】
1回目の始動操作で内燃機関が始動しなかった場合には、イグニッションスイッチを一旦電源オン位置まで戻した後、再度スタート位置に操作して2回目の始動操作を行う。これにより、スタータモータが再起動する。なお、気筒判別手段50は、イグニッションスイッチが一旦電源オン位置に操作されたら、電源オフ位置に操作されるまで気筒判別結果を保持し、電源オフ位置に操作されると気筒判別結果を初期化する。この時、気筒判別手段50は、1回目の始動操作によってクランクシャフト停止時のクランク角度が270度であると判別しているので、2回目の始動時には、270度からクランク角信号のカウントを開始する。
そして、クランク角信号を所定個数カウントした時にクランク角度が360度で、1番気筒の圧縮上死点位置であることを判別するとともに、次行程が3番気筒の圧縮行程、4番気筒の吸気行程であることを判別する。ここで、1回目の始動操作時に1番気筒に燃料が噴射されていないため、燃料爆発による爆発圧力が発生しない。このため、停止位置T2からローバッテリ電圧条件下での始動クランキング可能回転範囲である240度回転した後、1番気筒の圧縮上死点位置(図4の360度)と3番気筒の圧縮上死点位置(図4の540度)のほぼ中央の停止位置T3(図4の450度)位置に停止する。なお、気筒判別手段50は、停止位置T2から気筒判別範囲120度回転した位置でクランク角度及び気筒の判別を行い、クランク角信号のカウントにより判別したクランク角信号を補正する。この場合、クランク角度が390度で3番気筒の圧縮行程であることを判別する。また、前記と同様に、停止前に判別した気筒の判別結果に基づいてクランクシャフト停止時のクランク角度を判別する。この場合、3番気筒の圧縮行程での停止位置である1番気筒の圧縮上死点位置(図4の360度)と3番気筒の圧縮上死点位置(図4の540度)のほぼ中央の停止位置T3(450度)を、クランクシャフト停止時のクランク角度として判別する。
【0014】
2回目の始動操作でも内燃機関が始動しなかった場合、3回目の始動操作を行う。この時、気筒判別手段50は、2回目の始動操作によってクランクシャフト停止時のクランク角度が450度であると判別しているので、3回目の始動時には、450度からクランク角信号のカウントを開始する。
そして、クランク角信号を所定個数カウントした時にクランク角度が540度で、3番気筒の圧縮上死点位置であることを判別し、3番気筒の点火装置を作動させる。3番気筒には1回目の始動操作時に燃料が噴射されているため、3番気筒内の燃料が点火する。これにより、燃料爆発による爆発圧力が発生し、内燃機関が始動する。
なお、気筒判別手段50は、停止位置T3からクランクシャフトが気筒判別範囲である120度回転した位置でクランク角度を判別し、クランク角度を補正する。
3回目の始動操作でも内燃機関が始動しなかった場合には、同様の始動操作を繰り返す。
【0015】
図5は、4気筒直接噴射式(筒内噴射式)内燃機関をローバッテリ電圧条件下で始動する場合の始動タイミング図である。図4に示す場合とは、燃料の噴射タイミングが異なり、2回目の始動クランキングで燃料が点火する点が異なっている。本実施の形態では、気筒判別範囲は4気筒内燃機関のローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲である240度より小さい120度に設定されているものとする。
クランクシャフトが停止位置T1(図5の90度)で停止している状態で、イグニッションキーが電源オン位置を介してスタータ位置に操作されると、スタータモータにバッテリ電圧が供給される。これにより、スタータモータが起動する。
気筒判別手段50は、クランクシャフトが停止位置T1から120度回転した位置でクランク角度及び気筒の判別を行う。この場合、クランク角度が210度であり、1番気筒の圧縮行程であることを判別する。その後、クランク角信号をカウントすることによって順次クランク角度及び気筒を判別する。
ローバッテリ電圧条件下では、クランクシャフトは最初の圧縮上死点位置(図5の180度)は通過するが、次の圧縮上死点位置(図5の360度)は通過することができない。このため、クランクシャフトは、ローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲である240度回転した後、最も負荷が小さい2番気筒の圧縮上死点位置(図4の180度)と1番気筒の圧縮上死点位置(図4の360度)のほぼ中央の停止位置T2(図4の270度)まで戻り、正転、逆転を繰り返しながら停止位置T2に停止する。
【0016】
気筒判別手段50は、クランクシャフトが停止した場合にはローバッテリ電圧条件下での始動であると判断し、前記と同様の方法で停止前に判別した気筒の判別結果に基づいてクランクシャフト停止時のクランク角度を判別する。この場合、停止位置T1からクランクシャフトが120度回転した位置で判別した気筒の判別結果(1番気筒の圧縮行程)に基づいて、1番気筒の圧縮行程での停止位置である2番気筒の圧縮上死点位置(図4の180度)と1番気筒の圧縮上死点位置(図4の360度)のほぼ中央の停止位置T2(270度)をクランクシャフト停止時のクランク角度として判別する。
【0017】
内燃機関が始動しなかった場合には、2回目の始動操作を行う。この時、1回目の始動操作によってクランクシャフト停止時のクランク角度が270度であると判別しているので、2回目の始動操作時には270度からクランク角信号のカウントを開始する。そして、クランク角信号を所定個数カウントした時にクランク角度が360度で、1番気筒の圧縮上死点位置であることを判別し、1番気筒の点火装置を作動させる。1番気筒には1回目の始動操作時に燃料が噴射されているため、1番気筒内の燃料が点火する。これにより、燃料爆発による爆発圧力が発生し、内燃機関が始動する。
なお、気筒判別手段50は、停止位置T2からクランクシャフトが気筒判別範囲120度回転した位置でクランク角度を判別し、クランク角度を補正する。
2回目の始動操作でも内燃機関が始動しなかった場合には、同様の始動操作を繰り返す。
【0018】
次に、ローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲内で気筒判別を行うことができるカム角検出用ロータ及びクランク角検出用ロータの一実施の形態を図6及び図7に示す。なお、図6に示すカム角検出用ロータ及び図7に示すクランク角検出用ロータは8気筒内燃機関用である。
カム角検出用ロータ10は、カム角検出用ロータが所定角度のいずれに位置しているかを示すカム角情報を形成する山部11〜18及び谷部21〜28が設けられている。本実施の形態では、山部11〜18の回転方向終端位置の間隔が45度となるように設けられ、かつ山部11〜18はそれぞれ10度、20度、30度、40度、50度、60度、70度、80度の角度の幅を有している。このカム角検出用ロータ10の外周に対向して、山部11〜18及び谷部21〜29を検出するカム角センサ20が配設されている。カム角センサ20は、例えばカムシャフトが1番気筒の圧縮上死点の位置にある状態で山部11の回転方向終端位置に配設されている。
山部及び谷部によりカム角情報形成部が構成されている。
【0019】
クランク角検出用ロータ30は、基準角度、図では10度間隔で歯31が設けられれているとともに、連続する2つの歯を欠き落とした欠歯部23が設けられている。このクランク角検出用ロータ30の外周に対向してクランク角センサ40が配設されている。クランク角センサ40は、例えばクランクシャフトが2番気筒あるいは3番気筒の圧縮上死点の位置にある状態で欠歯部33の回転方向始端位置に配設されている。
カム角検出用ロータ10とカム角検出センサ20とによってカム角情報出力手段が構成され、クランク角検出用ロータ30とクランク角センサ40とによってクランク角情報出力手段が構成されている。
【0020】
このようなカム角検出用ロータ10及びクランク角検出用ロータ30を用いてクランク角度及び気筒を判別する動作を図8に示すタイミングチャート図を用いて説明する。
気筒判別手段50は、カム角センサ20から出力されるカム角信号及びクランク角センサ40から出力されるクランク角信号に基づいてクランク角度及び気筒を判別する。クランク角度を判別する場合、▲1▼カム角センサ20がカム角検出用ロータ10の谷部を検出している状態で始動操作が行われた時、すなわち図8に示すカム角信号のLo部分C21〜C28の位置で始動操作が行われた時、▲2▼カム角センサ20がカム角検出用ロータ10の山部を検出している状態で始動操作が行われ、カム角センサ20がカム角検出用ロータ10の山部を検出しなくなった直後にクランク角センサ40がクランク角検出用ロータ30の欠歯部33を検出しない時、すなわち図8に示すカム角信号のHi部分C11〜C13、C15〜C17の位置で始動操作が行われた時、▲3▼カム角センサ20がカム角検出用ロータ10の山部を検出している状態で始動操作が行われ、カム角センサ20がカム角検出用ロータ10の山部を検出しなくなった直後にクランク角センサ40がクランク角検出用ロータ30の欠歯部33を検出する時、すなわち図8に示すカム角信号のHi部分C14、C18の位置で始動操作が行われた時の3パターンがある。以下に、各パターンにおけるクランク角度及び気筒を判別する方法を説明する。
【0021】
▲1▼のパターンの場合。
例えば、カム角信号の山部18と11との間の谷部21に対応する部分C21の位置で始動操作が行われた時には、カム角信号の立上り点t2から立下り点t3までの区間内のクランク角信号のパルス数を計数し、カム角信号の立下り点t3でクランク角度を判別する。この場合、クランク角信号のパルスを1個計数するのでカム角信号の立下り点t3でクランク角度が90度であり、1番気筒の圧縮上死点であることをを判別する。
このパターンの場合、カム角信号の山部11に対応する部分C11の立上り点の直前の位置で始動操作が行われた時にはクランクシャフトが約10度回転した位置でクランク角度及び気筒を判別することができ、カム角信号の山部11〜18に対応する部分C11〜C18の立下り点の直後の位置で始動操作が行われた時にはクランクシャフトが約90度回転した位置でクランク角度及び気筒を判別することができる。すなわち、始動操作が行われてからクランクシャフトが約10度〜90度回転する範囲でクランク角度及び気筒を判別することができる。
【0022】
▲2▼のパターンの場合。
例えば、カム角信号の山部17に対応する部分C17の位置で始動操作が行われた時には、カム角信号の立下り点t15から立上り点t16までの区間内のクランク角信号のパルスを計数し、カム角信号の立上り点t16でクランク角度を判別する。この場合、クランク角信号のパルスを1個計数するのでカム角信号の立上り点t16でクランク角度が640度で、2番気筒の圧縮行程であることを判別する。
このパターンの場合、カム角信号の山部17に対応する部分C17の立下り点の直前の位置で始動操作が行われた時にはクランクシャフトが約10度回転した位置でクランク角度及び気筒を判別することができ、カム角信号の山部11〜13、15〜17に対応する部分C11〜C13、C15〜C17の立上り点の直後の位置で始動操作が行われた時にはクランクシャフトが約80度回転した位置でクランク角度及び気筒を判別することができる。すなわち、始動操作が行われてからクランクシャフトが約10度〜80度回転する範囲でクランク角度及び気筒を判別することができる。
【0023】
▲3▼のパターンの場合。
例えば、カム角信号の山部14に対応する部分C14の位置で始動操作が行われた時には、カム角信号の立下りの直後でクランク角信号の欠歯部33に対応する部分C33を検出するが、クランク角信号の欠歯部33に対応する部分C33を検出するまでに5個以上のパルスを計数しない。そして、クランク角信号の欠歯部33に対応する部分C33の立上り点からクランク角信号のパルスを2個計数した時点t10でカム角信号が立上る。これにより、カム角信号のHiの部分は山部14に対応する部分C14であることを判別し、カム角信号の立上り点t10でクランク角度が400度であり、6番気筒の圧縮行程であることを判別する。このパターンの場合には、クランクシャフトが約80度回転する範囲でクランク角度及び気筒を判別することができる。
また、カム角信号の山部18に対応する部分C18の前半部分(始動後カム角信号の立下り点を検出するまでの間にクランク角信号のパルスを5個以上計数できる部分)の位置で始動操作が行われた時には、カム角信号の立下り点t17の直後でクランク角信号の欠歯部33に対応する部分C33を検出するとともに、クランク角信号の欠歯部33に対応する部分C33を検出するまでに5個以上のパルスを計数する。クランク角信号の欠歯部33に対応する部分C33の前に5個以上のパルスが存在することによりカム角信号のHiの部分は山部18に対応する部分C18であることを判別し、欠歯部33に対応する部分C33の立上り点t21でクランク角度が22.5度であり、1番気筒の圧縮行程であることを判別する。このパターンの場合には、クランクシャフトが約102.5度回転する範囲でクランク角度及び気筒を判別することができる。
また、カム角信号の山部18に対応する部分C18の後半部分(始動後カム角信号の立下り点を検出するまでの間にクランク角信号のパルスを5個以上計数できない部分)の位置で始動操作が行われた時には、カム角信号の立下り点t17の直後でクランク角信号の欠歯部33に対応する部分C33を検出するが、クランク角信号の欠歯部33に対応する部分C33を検出するまでに5個以上のパルスを計数しない。そして、クランク角信号の欠歯部33に対応する部分33の立上り点からパルスを3個計数した時点でカム角信号のHiの部分が山部18に対応する部分C18であることを判別し、クランク角信号の欠歯部33に対応する部分C33の立上り点からパルスを3個計数した点でクランク角度が50度であり、1番気筒の圧縮行程であることを判別する。このパターンの場合には、クランクシャフトが約90度回転する範囲でクランク角度及び気筒を判別することができる。
【0024】
なお、クランク角検出用ロータの欠歯部を省略することもできる。この場合には、前記▲1▼及び▲2▼のパターンによりクランクシャフトの回転角度及び気筒を判別することができる。
図6及び図7に示すようなカム角検出用ロータ及びランク角検出用ロータを用いる場合には、始動操作が行われた時のクランク角度に応じて気筒判別範囲が10度〜102.5度のように異なる。このため、始動後の最初のクランク角度及び気筒の判別が、始動操作が行われた時のクランク角度によって、最初の圧縮上死点を通過する前に行われたり、最初の圧縮上死点位置を通過した後に行われたりする。そこで、このような場合には、停止前に判別した気筒の判別結果、すなわち始動後最初の圧縮上死点位置を通過後最初に判別した気筒の判別結果を、始動後最初に判別したクランク角度に応じて判断するように気筒判別手段を構成するのが好ましい。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ローバッテリ電圧条件下でも内燃機関を確実に始動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲を説明する図である。
【図2】内燃機関の気筒数に応じたローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲を示す図である。
【図3】内燃機関の気筒判別装置の一実施の形態のブロック図である。
【図4】4気筒内燃機関のローバッテリ電圧条件下での始動タイミング図である。
【図5】4気筒直接噴射式内燃機関のローバッテリ電圧条件下での始動タイミング図である。
【図6】カム角検出用ロータの一実施の形態を示す図である。
【図7】クランク角検出用ロータの一実施の形態を示す図である。
【図8】図6に示すカム角検出用ロータ及び図7に示すクランク角検出用ロータを用いてクランク角度及び気筒を判別するタイミングチャート図である。
【図9】従来のカム角検出用ロータを示す図である。
【図10】従来のクランク角検出用ロータを示す図である。
【図11】従来のカム角検出用ロータ及びクランク角検出用ロータを用いてクランク角度及び気筒を判別するタイミングチャート図である。
【符号の説明】
10、60 カム角検出用ロータ
11〜18 山部
20、70 カム角センサ
21〜28 谷部
30、80 クランク角検出用ロータ
31、81 歯
33、83 欠歯部
40、90 クランク角センサ
50 気筒判別手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の気筒判別方法及び気筒判別装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等に用いられている内燃機関は、各気筒のピストンをクランクシャフトに連結することによってピストンの往復運動を回転運動に変換して取り出している。ここで、吸気、圧縮、膨張、排気の4行程のサイクルをクランクシャフトの2回転で行なう4サイクル内燃機関を多気筒連結している場合には、クランクシャフトの回転角度を判別するのみではどの気筒が圧縮行程にあるのか、またどの気筒が圧縮上死点位置にあるのか等、すなわち気筒の判別を正確に行なうことができない。このため、通常は、クランクシャフトにタイミングベルト等の連結手段を介して連結され、吸排気弁を開閉させるためのカムを有するカムシャフトの回転角度とクランクシャフトの回転角度とを検出し、両シャフトの回転角度に基づいてクランク角度(2回転中の回転角度;0度〜720度)を判別することによって気筒の判別を行っている。
【0003】
従来の内燃機関の気筒判別装置に用いられているカム角検出用ロータ及びクランク角検出用ロータを図9及び図10に示す。なお、図9及び図10に示すカム角検出用ロータ及びクランク角検出用ロータは8気筒内燃機関用である。
カムシャフトに連結されているカム角検出用ロータ60は、強磁性体等で形成され、歯61が設けられている。このカム角検出用ロータ60の外周に対向して、歯61を検出するカム角センサ70が配設されている。カム角センサ70は、例えばカムシャフトが8番気筒の圧縮上死点位置(TDC)にある状態で歯61の回転方向始端位置に配設されている。
一方、クランクシャフトに連結されているクランク角検出用ロータ80は、強磁性体等で形成され、基準角度、図では10度間隔で歯81が設けられているとともに、連続する2つの歯を欠き落とした欠歯部83が設けられている。このクランク角検出用ロータ80の外周に対向して、歯81を検出するクランク角センサ90が配設されている。クランク角センサ90は、例えばクランクシャフトが2番気筒あるいは3番気筒の圧縮上死点位置にある状態で欠歯部83の回転方向始端位置に配設されている。
なお、カム角センサ70からのカム角信号及びクランク角センサ90からのクランク角信号に基づいてクランク角度及び気筒を判別する気筒判別手段が設けられている。
【0004】
このようなカム角検出用ロータ60及びクランク角検出用ロータ80を用いてクランク角度及び気筒を判別する動作を図11に示すタイミングチャート図を用いて説明する。
クランク角信号の立上りから次の立上りまでの時間間隔、すなわちパルス間隔T(n)を測定し、今回のパルス間隔T(n)が前回のパルス間隔T(n−1)より大きいか否かを判断することによって欠歯部83に対応する部分C83を検出する。そして、欠歯部に対応する部分C83の立上り点からクランク角信号を所定数計数することによってクランク角度を判別(例えば、クランク角度で90度か450度を判別)し、各気筒の圧縮上死点位置(例えば、1番気筒の圧縮上死点位置か6番気筒の圧縮上死点位置)を判別する。また、クランク角信号の欠歯部33に対応する部分C83を検出する前にカム角信号の歯61に対応する部分C61を検出したか、欠歯部33に対応する部分C83を検出したかを判別することによってクランク角度を判別する(例えば、C83を検出する前にC61を検出した場合にはクランク角度が450度、C83を続けて検出した場合にはクランク角度が90度)。
この従来の内燃機関の気筒判別装置では、カム角信号の歯61に対応する部分C61の立ち上がり点直前の位置で内燃機関が始動した場合には、クランク角信号の欠歯部83に対応する部分C83を1個検出した時点(クランクシャフトが約180度回転)で、またカム角信号の歯61に対応する部分C61の立下り点直後の位置でエンジンが始動した場合には、クランク角信号の欠歯部83に対応する部分C83を2個検出した時点(クランクシャフトが約550度回転)でクランク角度を正確に判別することができる。すなわち、クランク角度で180度〜550度の範囲でクランク角度及び気筒を判別することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ライトの消し忘れや低温時等にはバッテリ電圧が極端に低下する。このようなローバッテリ電圧条件下で内燃機関を始動する(始動クランキング)時には、スタータモータのトルクが小さいためクランクシャフトは気筒数に対応した所定回転範囲(始動クランキング回転可能範囲)しか回転することができない。
しかしながら、従来の内燃機関の気筒判別装置は、クランク角度及び気筒を判別することができる気筒判別範囲がローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲に基づいて設定されていない。例えば、前記従来の内燃機関の気筒判別範囲は、180度〜550度の範囲である。このため、ローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲が180度より小さい場合には始動クランキング時にクランク角度及び気筒を判別することができず、内燃機関を始動させることができない。
また、ローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲が180度〜550度の範囲であっても、クランクシャフトは始動クランキング回転可能範囲だけ回転した後に正転、逆転を繰り返しながら負荷が最も小さい位置に停止する。しかしながら、気筒判別手段は、クランクシャフトの正転時及び逆転時に出力されるクランク角信号を共にカウントしてクランク角度を判別するため、クランクシャフト停止時に判別しているクランク角度が実際のクランク角度と一致しなくなる。このため、次回の始動時に誤ったクランク角度からクランク角信号のカウントを開始することになり、正確に気筒を判別することができず、内燃機関を始動させることができない。
このように、従来の内燃機関の気筒判別装置では、ローバッテリ電圧条件下で内燃機関を確実に始動させることができない。
本発明は、このような問題点を解決するために創案されたものであり、ローバッテリ電圧条件下でも内燃機関を確実に始動させることができる内燃機関の気筒判別方法及び内燃機関の気筒判別装置を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、カムシャフトに設けられたカム角検出用ロータの周縁の山部あるいは谷部をカム角センサにより検出することで得られるカム角情報と、クランクシャフトに設けられたクランク角検出用ロータの周縁の歯をクランク角センサにより検出することで得られるクランク角情報とに基づいて気筒判別を行う内燃機関の気筒判別方法であって、内燃機関を始動させる際に、前記クランクシャフトが回転したにも係わらずその内燃機関が始動せずに停止した場合、停止するまでに得られた前記カム角情報と前記クランク角情報とに基づいて気筒判別を行う工程と、前記内燃機関が停止する前に圧縮行程を終了した気筒の圧縮上死点位置に相当する前記クランクシャフトの角度と、前記内燃機関が停止するときに圧縮行程中の気筒の圧縮上死点位置に相当する前記クランクシャフトの角度との中間位置を停止時の前記クランクシャフトの角度として記憶する工程とを有することを特徴とする。
これによって、始動時に内燃機関が停止しても停止時のクランク角度及び気筒を正確に判別することができ、ローバッテリ電圧条件下でも内燃機関を良好に始動させることができる。
請求項2の発明は、カムシャフトに設けられたカム角検出用ロータの周縁の山部あるいは谷部をカム角センサにより検出することで得られるカム角情報と、クランクシャフトに設けられたクランク角検出用ロータの周縁の歯をクランク角センサにより検出することで得られるクランク角情報とに基づいて気筒判別を行う内燃機関の気筒判別装置であって、内燃機関を始動させる際に、前記クランクシャフトが回転したにも係わらずその内燃機関が始動せずに停止した場合、停止するまでに得られた前記カム角情報と前記クランク角情報とに基づいて気筒判別を行う気筒判別手段と、前記内燃機関が停止する前に圧縮行程を終了した気筒の圧縮上死点位置に相当する前記クランクシャフトの角度と、前記内燃機関が停止するときに圧縮行程中の気筒の圧縮上死点位置に相当する前記クランクシャフトの角度との中間位置を停止時の前記クランクシャフトの角度として記憶する手段とを有することを特徴とする。
このため、請求項2の発明に係る装置により、請求項1の発明を実施できるようになる。
請求項3の発明は、ローバッテリ電圧条件下で、クランクシャフトが回転を開始した後、そのクランクシャフトが最初にいずれかの気筒の圧縮上死点位置に相当する角度を通過し、次の気筒の圧縮上死点位置に相当する角度の前で停止する場合における前記クランクシャフトの回転可能範囲である始動クランキング回転可能範囲よりも小さい角度で気筒判別が可能ように構成されていることを特徴とする。
このように、始動クランキング回転可能範囲内で気筒判別が可能なため、ローバッテリ電圧条件下でも内燃機関を確実に始動させることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
まず、ローバッテリ電圧条件について説明する。
内燃機関の停止時には、負荷が最も小さい位置、すなわち内燃機関のクランクシャフトは各気筒の圧縮上死点位置の間のほぼ中央で停止する。
この状態で、イグニッションスイッチを電源オン位置を介してスタート位置に操作すると、スタータモータにバッテリ電圧が供給される。この時、バッテリ電圧が正常であれば、スタータモータによって内燃機関のクランクシャフトを回転させている間にクランク角度及び気筒を判別して燃料噴射制御や点火時期制御を行うことができるので、内燃機関を確実に始動させることができる。しかしながら、ライトの消し忘れ時、低温時等のようにバッテリ電圧が極端に低下している場合には、スタータモータのトルクが小さいため、内燃機関のクランクシャフトを充分に回転させることができない。この場合、クランクシャフトが圧縮上死点位置を1回も通過できない程バッテリ電圧が低下している時には内燃機関を始動させるのは困難であるが、クランクシャフトが圧縮上死点位置を少なくとも1回通過できる程度にバッテリ電圧が低下している時にはクランク角度及び気筒の判別を早期に行うことにより内燃機関を始動させることができる。本発明では、クランクシャフトが圧縮上死点位置を1回だけ通過させることができる程度にバッテリ電圧が低下している状態をローバッテリ電圧条件下という。
【0008】
次に、ローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲について説明する。図1は、4気筒内燃機関(エンジン)のローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲を示す図である。4気筒内燃機関の場合、クランクシャフトが180度回転する毎に各気筒の圧縮行程が順次行われる。
内燃機関をスタータモータによって回転させる場合、圧縮行程で大きな負荷が発生し、圧縮上死点位置(TDC)付近で最も負荷が大きくなる。
内燃機関の停止時にはクランクシャフトは最も負荷が小さい位置、すなわち圧縮上死点位置のほぼ中央(図1では0度の位置)で停止しているため、バッテリ電圧が低くてもスタータモータが起動可能である。スタータモータ起動後、いずれかの気筒の圧縮行程が行われるため負荷が増大していくが、スタータモータの慣性力とバッテリ通電時に発生する初期電力により最初の圧縮上死点位置(図1では90度の位置)を通過することができる。その後、次の気筒の圧縮行程が行われるため再び負荷が増大していく。しかしながら、今回はバッテリの初期電力がないためスタータモータのトルクが小さく、負荷の増大とともに回転数が減少していき、次の圧縮上死点位置(図1では270度の位置)の手前の位置(図1では240度の位置)まで回転して停止する。そして、内燃機関のクランクシャフトは、最も負荷が小さい位置(図1では180度の位置)まで気筒内の圧縮圧によって逆回転して停止する。この時、内燃機関のクランクシャフトは、最も負荷が小さい位置(図1では180度の位置)を中心に正転、逆転を繰り返しながら停止する。本発明では、ローバッテリ電圧条件下でスタータモータを起動させた場合に内燃機関のクランクシャフトが回転可能な範囲をローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲という。
内燃機関の気筒数とローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲との関係を図2に示す。
【0009】
本発明の内燃機関の気筒判別装置の一実施の形態の構成を図3に示す。本実施の形態の気筒判別装置は、カムシャフトに連結されたカム角検出用ロ−タ(図示せず)、カム角センサ20、クランクシャフトに連結されたクランク角検出用ロ−タ(図示せず)、クランク角センサ40、気筒判別手段50等により構成されている。
気筒判別手段50は、処理回路(MPU)51、処理回路51等にマスタ−クロックを供給するクロック発生器52、カム角センサ20からのカム角信号やクランク角センサ40からのクランク角信号を入力する入力ポ−ト54、処理プログラム等を格納したリ−ドオンリメモリ(ROM)55、作業領域等として用いられるランダムアクセスメモリ(RAM)55、これらを接続するバスライン57を備えている。
本発明の気筒判別装置は、クランク角度及び気筒を判別することができるクランクシャフトの回転角度、すなわち気筒判別範囲がローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲内となるように、例えばカム角検出用ロータやクランク角検出用ロータ等が構成されている。
【0010】
次に、本発明の図3に示した内燃機関の気筒判別装置を用いた内燃機関の気筒判別方法の一実施の形態を図4に示す始動タイミング図により説明する。なお、図4は、4気筒内燃機関をローバッテリ電圧条件下で始動する場合の始動タイミング図である。また、本実施の形態では、気筒判別範囲を4気筒内燃機関のローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲である240度より小さい120度に設定されているものとする。
いま、4番気筒の圧縮上死点位置(図4の0度)と2番気筒の圧縮上死点位置(図4の180度)のほぼ中央の停止位置T1(図4の90度)でクランクシャフトが停止しているものとする。
内燃機関を始動する場合、イグニッションキーを電源位置を介してスタータ位置に操作する始動操作を行う。これにより、スタータモータが起動する。
ここで、本実施の形態では気筒判別区間が120度に設定されているため、クランクシャフトが停止位置T1から120度回転した位置でクランク角度及び気筒の判別を行う。この場合、クランク角度が210度であり、2番気筒の圧縮行程であり、3番気筒の吸気行程であることを判別する。その後、クランク角信号をカウントすることによって順次クランク角度及び気筒を判別する。なお、クランク角信号のカウントにより判別したクランク角度は、クランク角信号及びカム角信号によって所定回転位置で補正される。
【0011】
ローバッテリ電圧条件下では、クランクシャフトは最初の圧縮上死点位置(図4の180度)は通過できるが、次の圧縮上死点位置(図4の360度)は通過できない。このため、クランクシャフトは、ローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲である240度回転した後(図4の330度)、最も負荷が小さい2番気筒の圧縮上死点位置(図4の180度)と1番気筒の圧縮上死点位置(図4の360度)のほぼ中央の停止位置T2(図4の270度)まで戻り、正転、逆転を繰り返しながら停止位置T2に停止する。
ここで、気筒判別手段50は、クランクシャフトが停止位置T2に停止するまでの間におけるクランクシャフトの正転及び逆転に伴って発生するクランク角信号を続けてカウントするため、クランクシャフトが安定位置T2に停止した時点で判別しているクランク角度は実際のクランク角度と一致しなくなる。そこで、気筒判別手段50は、クランクシャフトが停止した場合にはローバッテリ電圧条件下での始動であると判断し、停止前に判別した気筒の判別結果に基づいてクランクシャフト停止時のクランク角度を判別する。例えば、クランクシャフトが最初の圧縮上死点位置を通過後最初に判別した気筒の判別結果を用いる。本実施の形態では、ローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲が240度であり、気筒判別範囲が120度に設定されているため、最初の圧縮上死点位置(図4の180度)を通過後最初に気筒を判別する位置は、クランクシャフトが気筒判別範囲である120度回転した位置である。図4では、1番気筒の圧縮行程を判別する。そして、1番気筒の圧縮行程での停止位置である2番気筒の圧縮上死点位置(図4の180度)と1番気筒の圧縮上死点位置(図4の360度)のほぼ中央の停止位置T2(270度)を、クランクシャフト停止時のクランク角度として判別する。
【0012】
なお、クランクシャフトが圧縮上死点位置を2回以上通過して停止した場合には、このようにして判別したクランク角度と実際のクランク角度が一致しない。しかしながら、次回の始動時にクランクシャフトが気筒判別範囲だけ回転した位置で正しいクランク角度に補正され、またクランクシャフトが圧縮上死点位置を2回以上通過する場合には内燃機関が始動する可能性が高い。このため、停止時のクランク角度及び気筒の判別を前記のように行っても内燃機関の始動性に影響はない。
また、例えば気筒判別範囲が90度より小さい60度の場合には、停止位置T1からクランクシャフトが60度回転した位置でクランク角度及び気筒の判別を行うが(クランク角度が150度、2番気筒の圧縮行程)、この位置は最初の圧縮上死点位置(図4の180度)を通過していない。このため、この場合には、クランクシャフトが気筒判別範囲だけ回転した位置で判別した気筒の判別結果(2番気筒の圧縮行程)から次行程の気筒を判別し(1番気筒の圧縮行程)、これをクランクシャフトが最初の圧縮上死点位置を通過後最初に判別した気筒の判別結果として、すなわち停止前に判別した気筒の判別結果として用いる。
【0013】
1回目の始動操作で内燃機関が始動しなかった場合には、イグニッションスイッチを一旦電源オン位置まで戻した後、再度スタート位置に操作して2回目の始動操作を行う。これにより、スタータモータが再起動する。なお、気筒判別手段50は、イグニッションスイッチが一旦電源オン位置に操作されたら、電源オフ位置に操作されるまで気筒判別結果を保持し、電源オフ位置に操作されると気筒判別結果を初期化する。この時、気筒判別手段50は、1回目の始動操作によってクランクシャフト停止時のクランク角度が270度であると判別しているので、2回目の始動時には、270度からクランク角信号のカウントを開始する。
そして、クランク角信号を所定個数カウントした時にクランク角度が360度で、1番気筒の圧縮上死点位置であることを判別するとともに、次行程が3番気筒の圧縮行程、4番気筒の吸気行程であることを判別する。ここで、1回目の始動操作時に1番気筒に燃料が噴射されていないため、燃料爆発による爆発圧力が発生しない。このため、停止位置T2からローバッテリ電圧条件下での始動クランキング可能回転範囲である240度回転した後、1番気筒の圧縮上死点位置(図4の360度)と3番気筒の圧縮上死点位置(図4の540度)のほぼ中央の停止位置T3(図4の450度)位置に停止する。なお、気筒判別手段50は、停止位置T2から気筒判別範囲120度回転した位置でクランク角度及び気筒の判別を行い、クランク角信号のカウントにより判別したクランク角信号を補正する。この場合、クランク角度が390度で3番気筒の圧縮行程であることを判別する。また、前記と同様に、停止前に判別した気筒の判別結果に基づいてクランクシャフト停止時のクランク角度を判別する。この場合、3番気筒の圧縮行程での停止位置である1番気筒の圧縮上死点位置(図4の360度)と3番気筒の圧縮上死点位置(図4の540度)のほぼ中央の停止位置T3(450度)を、クランクシャフト停止時のクランク角度として判別する。
【0014】
2回目の始動操作でも内燃機関が始動しなかった場合、3回目の始動操作を行う。この時、気筒判別手段50は、2回目の始動操作によってクランクシャフト停止時のクランク角度が450度であると判別しているので、3回目の始動時には、450度からクランク角信号のカウントを開始する。
そして、クランク角信号を所定個数カウントした時にクランク角度が540度で、3番気筒の圧縮上死点位置であることを判別し、3番気筒の点火装置を作動させる。3番気筒には1回目の始動操作時に燃料が噴射されているため、3番気筒内の燃料が点火する。これにより、燃料爆発による爆発圧力が発生し、内燃機関が始動する。
なお、気筒判別手段50は、停止位置T3からクランクシャフトが気筒判別範囲である120度回転した位置でクランク角度を判別し、クランク角度を補正する。
3回目の始動操作でも内燃機関が始動しなかった場合には、同様の始動操作を繰り返す。
【0015】
図5は、4気筒直接噴射式(筒内噴射式)内燃機関をローバッテリ電圧条件下で始動する場合の始動タイミング図である。図4に示す場合とは、燃料の噴射タイミングが異なり、2回目の始動クランキングで燃料が点火する点が異なっている。本実施の形態では、気筒判別範囲は4気筒内燃機関のローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲である240度より小さい120度に設定されているものとする。
クランクシャフトが停止位置T1(図5の90度)で停止している状態で、イグニッションキーが電源オン位置を介してスタータ位置に操作されると、スタータモータにバッテリ電圧が供給される。これにより、スタータモータが起動する。
気筒判別手段50は、クランクシャフトが停止位置T1から120度回転した位置でクランク角度及び気筒の判別を行う。この場合、クランク角度が210度であり、1番気筒の圧縮行程であることを判別する。その後、クランク角信号をカウントすることによって順次クランク角度及び気筒を判別する。
ローバッテリ電圧条件下では、クランクシャフトは最初の圧縮上死点位置(図5の180度)は通過するが、次の圧縮上死点位置(図5の360度)は通過することができない。このため、クランクシャフトは、ローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲である240度回転した後、最も負荷が小さい2番気筒の圧縮上死点位置(図4の180度)と1番気筒の圧縮上死点位置(図4の360度)のほぼ中央の停止位置T2(図4の270度)まで戻り、正転、逆転を繰り返しながら停止位置T2に停止する。
【0016】
気筒判別手段50は、クランクシャフトが停止した場合にはローバッテリ電圧条件下での始動であると判断し、前記と同様の方法で停止前に判別した気筒の判別結果に基づいてクランクシャフト停止時のクランク角度を判別する。この場合、停止位置T1からクランクシャフトが120度回転した位置で判別した気筒の判別結果(1番気筒の圧縮行程)に基づいて、1番気筒の圧縮行程での停止位置である2番気筒の圧縮上死点位置(図4の180度)と1番気筒の圧縮上死点位置(図4の360度)のほぼ中央の停止位置T2(270度)をクランクシャフト停止時のクランク角度として判別する。
【0017】
内燃機関が始動しなかった場合には、2回目の始動操作を行う。この時、1回目の始動操作によってクランクシャフト停止時のクランク角度が270度であると判別しているので、2回目の始動操作時には270度からクランク角信号のカウントを開始する。そして、クランク角信号を所定個数カウントした時にクランク角度が360度で、1番気筒の圧縮上死点位置であることを判別し、1番気筒の点火装置を作動させる。1番気筒には1回目の始動操作時に燃料が噴射されているため、1番気筒内の燃料が点火する。これにより、燃料爆発による爆発圧力が発生し、内燃機関が始動する。
なお、気筒判別手段50は、停止位置T2からクランクシャフトが気筒判別範囲120度回転した位置でクランク角度を判別し、クランク角度を補正する。
2回目の始動操作でも内燃機関が始動しなかった場合には、同様の始動操作を繰り返す。
【0018】
次に、ローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲内で気筒判別を行うことができるカム角検出用ロータ及びクランク角検出用ロータの一実施の形態を図6及び図7に示す。なお、図6に示すカム角検出用ロータ及び図7に示すクランク角検出用ロータは8気筒内燃機関用である。
カム角検出用ロータ10は、カム角検出用ロータが所定角度のいずれに位置しているかを示すカム角情報を形成する山部11〜18及び谷部21〜28が設けられている。本実施の形態では、山部11〜18の回転方向終端位置の間隔が45度となるように設けられ、かつ山部11〜18はそれぞれ10度、20度、30度、40度、50度、60度、70度、80度の角度の幅を有している。このカム角検出用ロータ10の外周に対向して、山部11〜18及び谷部21〜29を検出するカム角センサ20が配設されている。カム角センサ20は、例えばカムシャフトが1番気筒の圧縮上死点の位置にある状態で山部11の回転方向終端位置に配設されている。
山部及び谷部によりカム角情報形成部が構成されている。
【0019】
クランク角検出用ロータ30は、基準角度、図では10度間隔で歯31が設けられれているとともに、連続する2つの歯を欠き落とした欠歯部23が設けられている。このクランク角検出用ロータ30の外周に対向してクランク角センサ40が配設されている。クランク角センサ40は、例えばクランクシャフトが2番気筒あるいは3番気筒の圧縮上死点の位置にある状態で欠歯部33の回転方向始端位置に配設されている。
カム角検出用ロータ10とカム角検出センサ20とによってカム角情報出力手段が構成され、クランク角検出用ロータ30とクランク角センサ40とによってクランク角情報出力手段が構成されている。
【0020】
このようなカム角検出用ロータ10及びクランク角検出用ロータ30を用いてクランク角度及び気筒を判別する動作を図8に示すタイミングチャート図を用いて説明する。
気筒判別手段50は、カム角センサ20から出力されるカム角信号及びクランク角センサ40から出力されるクランク角信号に基づいてクランク角度及び気筒を判別する。クランク角度を判別する場合、▲1▼カム角センサ20がカム角検出用ロータ10の谷部を検出している状態で始動操作が行われた時、すなわち図8に示すカム角信号のLo部分C21〜C28の位置で始動操作が行われた時、▲2▼カム角センサ20がカム角検出用ロータ10の山部を検出している状態で始動操作が行われ、カム角センサ20がカム角検出用ロータ10の山部を検出しなくなった直後にクランク角センサ40がクランク角検出用ロータ30の欠歯部33を検出しない時、すなわち図8に示すカム角信号のHi部分C11〜C13、C15〜C17の位置で始動操作が行われた時、▲3▼カム角センサ20がカム角検出用ロータ10の山部を検出している状態で始動操作が行われ、カム角センサ20がカム角検出用ロータ10の山部を検出しなくなった直後にクランク角センサ40がクランク角検出用ロータ30の欠歯部33を検出する時、すなわち図8に示すカム角信号のHi部分C14、C18の位置で始動操作が行われた時の3パターンがある。以下に、各パターンにおけるクランク角度及び気筒を判別する方法を説明する。
【0021】
▲1▼のパターンの場合。
例えば、カム角信号の山部18と11との間の谷部21に対応する部分C21の位置で始動操作が行われた時には、カム角信号の立上り点t2から立下り点t3までの区間内のクランク角信号のパルス数を計数し、カム角信号の立下り点t3でクランク角度を判別する。この場合、クランク角信号のパルスを1個計数するのでカム角信号の立下り点t3でクランク角度が90度であり、1番気筒の圧縮上死点であることをを判別する。
このパターンの場合、カム角信号の山部11に対応する部分C11の立上り点の直前の位置で始動操作が行われた時にはクランクシャフトが約10度回転した位置でクランク角度及び気筒を判別することができ、カム角信号の山部11〜18に対応する部分C11〜C18の立下り点の直後の位置で始動操作が行われた時にはクランクシャフトが約90度回転した位置でクランク角度及び気筒を判別することができる。すなわち、始動操作が行われてからクランクシャフトが約10度〜90度回転する範囲でクランク角度及び気筒を判別することができる。
【0022】
▲2▼のパターンの場合。
例えば、カム角信号の山部17に対応する部分C17の位置で始動操作が行われた時には、カム角信号の立下り点t15から立上り点t16までの区間内のクランク角信号のパルスを計数し、カム角信号の立上り点t16でクランク角度を判別する。この場合、クランク角信号のパルスを1個計数するのでカム角信号の立上り点t16でクランク角度が640度で、2番気筒の圧縮行程であることを判別する。
このパターンの場合、カム角信号の山部17に対応する部分C17の立下り点の直前の位置で始動操作が行われた時にはクランクシャフトが約10度回転した位置でクランク角度及び気筒を判別することができ、カム角信号の山部11〜13、15〜17に対応する部分C11〜C13、C15〜C17の立上り点の直後の位置で始動操作が行われた時にはクランクシャフトが約80度回転した位置でクランク角度及び気筒を判別することができる。すなわち、始動操作が行われてからクランクシャフトが約10度〜80度回転する範囲でクランク角度及び気筒を判別することができる。
【0023】
▲3▼のパターンの場合。
例えば、カム角信号の山部14に対応する部分C14の位置で始動操作が行われた時には、カム角信号の立下りの直後でクランク角信号の欠歯部33に対応する部分C33を検出するが、クランク角信号の欠歯部33に対応する部分C33を検出するまでに5個以上のパルスを計数しない。そして、クランク角信号の欠歯部33に対応する部分C33の立上り点からクランク角信号のパルスを2個計数した時点t10でカム角信号が立上る。これにより、カム角信号のHiの部分は山部14に対応する部分C14であることを判別し、カム角信号の立上り点t10でクランク角度が400度であり、6番気筒の圧縮行程であることを判別する。このパターンの場合には、クランクシャフトが約80度回転する範囲でクランク角度及び気筒を判別することができる。
また、カム角信号の山部18に対応する部分C18の前半部分(始動後カム角信号の立下り点を検出するまでの間にクランク角信号のパルスを5個以上計数できる部分)の位置で始動操作が行われた時には、カム角信号の立下り点t17の直後でクランク角信号の欠歯部33に対応する部分C33を検出するとともに、クランク角信号の欠歯部33に対応する部分C33を検出するまでに5個以上のパルスを計数する。クランク角信号の欠歯部33に対応する部分C33の前に5個以上のパルスが存在することによりカム角信号のHiの部分は山部18に対応する部分C18であることを判別し、欠歯部33に対応する部分C33の立上り点t21でクランク角度が22.5度であり、1番気筒の圧縮行程であることを判別する。このパターンの場合には、クランクシャフトが約102.5度回転する範囲でクランク角度及び気筒を判別することができる。
また、カム角信号の山部18に対応する部分C18の後半部分(始動後カム角信号の立下り点を検出するまでの間にクランク角信号のパルスを5個以上計数できない部分)の位置で始動操作が行われた時には、カム角信号の立下り点t17の直後でクランク角信号の欠歯部33に対応する部分C33を検出するが、クランク角信号の欠歯部33に対応する部分C33を検出するまでに5個以上のパルスを計数しない。そして、クランク角信号の欠歯部33に対応する部分33の立上り点からパルスを3個計数した時点でカム角信号のHiの部分が山部18に対応する部分C18であることを判別し、クランク角信号の欠歯部33に対応する部分C33の立上り点からパルスを3個計数した点でクランク角度が50度であり、1番気筒の圧縮行程であることを判別する。このパターンの場合には、クランクシャフトが約90度回転する範囲でクランク角度及び気筒を判別することができる。
【0024】
なお、クランク角検出用ロータの欠歯部を省略することもできる。この場合には、前記▲1▼及び▲2▼のパターンによりクランクシャフトの回転角度及び気筒を判別することができる。
図6及び図7に示すようなカム角検出用ロータ及びランク角検出用ロータを用いる場合には、始動操作が行われた時のクランク角度に応じて気筒判別範囲が10度〜102.5度のように異なる。このため、始動後の最初のクランク角度及び気筒の判別が、始動操作が行われた時のクランク角度によって、最初の圧縮上死点を通過する前に行われたり、最初の圧縮上死点位置を通過した後に行われたりする。そこで、このような場合には、停止前に判別した気筒の判別結果、すなわち始動後最初の圧縮上死点位置を通過後最初に判別した気筒の判別結果を、始動後最初に判別したクランク角度に応じて判断するように気筒判別手段を構成するのが好ましい。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ローバッテリ電圧条件下でも内燃機関を確実に始動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲を説明する図である。
【図2】内燃機関の気筒数に応じたローバッテリ電圧条件下での始動クランキング回転可能範囲を示す図である。
【図3】内燃機関の気筒判別装置の一実施の形態のブロック図である。
【図4】4気筒内燃機関のローバッテリ電圧条件下での始動タイミング図である。
【図5】4気筒直接噴射式内燃機関のローバッテリ電圧条件下での始動タイミング図である。
【図6】カム角検出用ロータの一実施の形態を示す図である。
【図7】クランク角検出用ロータの一実施の形態を示す図である。
【図8】図6に示すカム角検出用ロータ及び図7に示すクランク角検出用ロータを用いてクランク角度及び気筒を判別するタイミングチャート図である。
【図9】従来のカム角検出用ロータを示す図である。
【図10】従来のクランク角検出用ロータを示す図である。
【図11】従来のカム角検出用ロータ及びクランク角検出用ロータを用いてクランク角度及び気筒を判別するタイミングチャート図である。
【符号の説明】
10、60 カム角検出用ロータ
11〜18 山部
20、70 カム角センサ
21〜28 谷部
30、80 クランク角検出用ロータ
31、81 歯
33、83 欠歯部
40、90 クランク角センサ
50 気筒判別手段
Claims (3)
- カムシャフトに設けられたカム角検出用ロータの周縁の山部あるいは谷部をカム角センサにより検出することで得られるカム角情報と、クランクシャフトに設けられたクランク角検出用ロータの周縁の歯をクランク角センサにより検出することで得られるクランク角情報とに基づいて気筒判別を行う内燃機関の気筒判別方法であって、
内燃機関を始動させる際に、前記クランクシャフトが回転したにも係わらずその内燃機関が始動せずに停止した場合、停止するまでに得られた前記カム角情報と前記クランク角情報とに基づいて気筒判別を行う工程と、
前記内燃機関が停止する前に圧縮行程を終了した気筒の圧縮上死点位置に相当する前記クランクシャフトの角度と、前記内燃機関が停止するときに圧縮行程中の気筒の圧縮上死点位置に相当する前記クランクシャフトの角度との中間位置を停止時の前記クランクシャフトの角度として記憶する工程と、
を有することを特徴とする内燃機関の気筒判別方法。 - カムシャフトに設けられたカム角検出用ロータの周縁の山部あるいは谷部をカム角センサにより検出することで得られるカム角情報と、クランクシャフトに設けられたクランク角検出用ロータの周縁の歯をクランク角センサにより検出することで得られるクランク角情報とに基づいて気筒判別を行う内燃機関の気筒判別装置であって、
内燃機関を始動させる際に、前記クランクシャフトが回転したにも係わらずその内燃機関が始動せずに停止した場合、停止するまでに得られた前記カム角情報と前記クランク角情報とに基づいて気筒判別を行う気筒判別手段と、
前記内燃機関が停止する前に圧縮行程を終了した気筒の圧縮上死点位置に相当する前記クランクシャフトの角度と、前記内燃機関が停止するときに圧縮行程中の気筒の圧縮上死点位置に相当する前記クランクシャフトの角度との中間位置を停止時の前記クランクシャフトの角度として記憶する手段と、
を有することを特徴とする内燃機関の気筒判別装置。 - 請求項2に記載の内燃機関の気筒判別装置であって、
ローバッテリ電圧条件下で、クランクシャフトが回転を開始した後、そのクランクシャフトが最初にいずれかの気筒の圧縮上死点位置に相当する角度を通過し、次の気筒の圧縮上死点位置に相当する角度の前で停止する場合における前記クランクシャフトの回転可能範囲である始動クランキング回転可能範囲よりも小さい角度で気筒判別が可能ように構成されていることを特徴とする内燃機関の気筒判別装置。
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