JP3633380B2 - アレルゲン測定用被検液作成装置 - Google Patents

アレルゲン測定用被検液作成装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気中や畳、絨毯等の中の塵埃に含有されるアレルゲンの濃度分析を行うために必要な被検液を調製するアレルゲン測定用被検液作成方法及びアレルゲン測定用被検液作成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性気管支喘息、アトピー性皮膚炎等のいわゆるアレルギー症状が、先進諸国を中心に増加傾向にあり、ダニ、花粉、動物の毛、カビ等のようなアレルギーの抗原となる発症原因物質がアレルゲンとして特定されてきている。これらのアレルギー症状は比較的軽度の場合もあるが、アレルギー性気管支喘息のように死に至るほど重篤な場合もある。このため、感作、発症を抑制するための一つの手段として、各個人に特有な発症原因物質となる環境中のアレルゲン濃度を低レベルに維持することが必要になってくる。しかし、現状ではアレルゲン濃度の測定は比較的難しい高度な技術とされ、専門の測定技術者を必要とし、半日から1日かかる長い測定時間を必要とし、かつ高価な測定装置が必要である。ところで、環境中のアレルゲン濃度とアレルギー疾患の感作、発症は一般的に相関することが知られている。このようにアレルゲン濃度は、掃除、洗濯等をどの程度で行ったり、どのくらいの頻度で行えばよいのかの指標となり、アレルギー症の患者やアレルギー疾患の感作の危険のある者にとって社会生活上有用なものである。また、アレルギー症の患者の血液中のIgE抗体の濃度が即時型アレルギー反応のI型アレルギーの感作の程度の指標になることも一般に知られており、血液中のIgE抗体濃度の測定が感作の程度ひいてはアレルギー疾患の程度を知るための指標としてきわめて有用である。
【0003】
これらアレルゲンは、各個人が長い時間を過ごす家庭や職場等の環境中に例えば塵埃に付着して存在したり、又は単独で存在したりするものであり、これらアレルゲンが各個人の家庭、職場等で簡単に分析可能であれば、アレルギーへの対応が取り易くなり有用である。この家庭でのアレルゲンの分析を実現するには、この測定方法の確立と共に、測定用被検液を作成する方法とその方法実現のための手段とを確立する必要が有る。
【0004】
ここでアレルゲン測定用被検液を作成する従来の方法とその方法実現のための手段を説明する。例えば、免疫学的方法等によってアレルゲンの分析を行うに際してダニアレルゲンの測定用被検液を作成する場合には、下記(1)〜(3)の操作が行われている。
【0005】
(1)畳、絨毯の一定面積を一定時間、掃除機で吸引し、吸引された空気中の塵埃を捕集する。
【0006】
(2)捕集した塵埃を取り出して緩衝液に浸漬させ、緩衝液の撹拌操作を行いながらアレルゲンを抽出する。
【0007】
(3)上記抽出液より測定時の阻害成分を除去する分離操作を行って被検液を作成する。
【0008】
例えば、特開平8−313406号公報には、掃除機の吸引側に設置したスポンジ体に塵埃を捕集することが記載され、さらに特開平8−178807には、掃除機の吸引側に設けたスポンジ体で塵埃を捕集し、前記スポンジ体を抽出液を入れた収納容器内に収納し、外側から手で揉むことによりダニアレルゲンの測定用被検液を作成する方法が記載されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来のダニレルゲンの測定用被検液の作成方法には、次の4つの問題点を有していた。
【0010】
(1)塵埃を捕集した捕集体を抽出液に移行させる際に塵埃がむき出しとなり埃が舞い上がるため、作業者がその埃に付着または単独で存在するアレルゲンを吸込んだり、埃に手が触れてしまい、不快かつ不衛生である。
【0011】
(2)塵埃を捕集した捕集体を抽出液に移行させる際、また抽出液を手で揉むことにより抽出するため手間が掛かる。
【0012】
(3)抽出液を手で揉むことにより抽出するため一定のアレルゲンの抽出ができず測定誤差の原因となる。
【0013】
(4)分離困難な微細懸濁物質が測定用被検液に残存するため、この微細懸濁物質が原因となって、測定されるアレルゲン濃度に誤差を生じさせる。
【0014】
このような理由から、捕集条件、抽出条件、分離条件を一定にすることができ、一連のアレルゲン測定用被検液の作成を衛生的で、簡易に、精度高くしかも安価に行えることが要求されている。
【0015】
本発明は、捕集条件、抽出条件、分離条件を一定にして、一連のアレルゲン測定用被検液の作成を衛生的で、簡易に、精度高くしかも安価に行うためのアレルゲン測定用被検液作成装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明のアレルゲン測定用被検液作成装置は、サンプリングされる空気を吸気側から排気側に透過させて空気中に浮遊する塵埃を捕捉するサンプリング用フィルタを備えた塵埃溜め部と、サンプリング用フィルタの排気側の下方に配置され、塵埃に含まれるアレルゲンを抽出する抽出液及びアレルゲン抽出後の被検液が溜められる抽出液部と、サンプリング用フィルタの吸気側及び排気側の空気圧をファンを用いて制御し、サンプリングされる空気、抽出液及び被検液をサンプリング用フィルタを介して吸気側から排気側又は排気側から吸気側に移動させる切替え手段を備えた送風機構とを有している。これにより、捕集条件、抽出条件、分離条件を容易に一定化することができ、一連のアレルゲン測定用被検液の作成を衛生的かつ簡易に高精度で行うことができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
請求項に記載のアレルゲン測定用被検液作成装置は、サンプリングされる空気を吸気側から排気側に透過させて空気中に浮遊する塵埃を捕捉するサンプリング用フィルタを備えた塵埃溜め部と、サンプリング用フィルタの排気側の下方に配置され、塵埃に含まれるアレルゲンを抽出する抽出液及びアレルゲン抽出後の被検液が溜められる抽出液部とサンプリング用フィルタの吸気側及び排気側の空気圧をファンを用いて制御し、サンプリングされる空気、抽出液及び被検液をサンプリング用フィルタを介して吸気側から排気側又は排気側から吸気側に移動させる送風機構とを有する構成としている。これによって、サンプリング用フィルタの排気側からの吸引で塵埃溜め部内に塵埃を溜め、この排気側を抽出液に浸漬し、塵埃と抽出液をファンで移送して接触させるので、一定の捕捉精度を有するサンプリング用フィルタにより、捕集条件、分離条件を安定化でき、またアレルゲンに手を接触させることなくサンプリング用フィルタによりアレルゲン測定用被検液を作成することができ、一連のアレルゲン測定用被検液の作成を衛生的、簡易に、かつ高精度で行えるという作用を有する。
【0024】
請求項に記載のアレルゲン測定用被検液作成装置は、請求項において、送風機構には、サンプリング用フィルタの排気側が抽出液部の抽出液中に浸漬されたときに、塵埃溜め部に入れられた抽出液に撹拌用空気を供給して抽出液を撹拌する旋回流路が設けられる構成としている。これによって、塵埃溜め部に抽出液を保持させた状態のままで抽出液を短時間で効果的に撹拌することができ、アレルゲンの空気との接触が最小限に押さえられアレルゲンの変性がおこりにくく、一連のアレルゲン測定用被検液の作成を衛生的、簡易に、高精度で行えるという作用を有する。
【0025】
請求項に記載のアレルゲン測定用被検液作成装置は、請求項又はにおいて、アレルゲン測定用被検液作成装置には、抽出液を溜めておく貯液槽が設けられ、貯液槽に溜められた抽出液を重力またはファンによる負圧力を用いて抽出液部に導入する構成としている。これによって、塵埃の捕集後、抽出液を自動的に供給することができるので、塵埃に使用者が触れることなく衛生的、簡易にアレルゲン測定用被検液の作成を行うことができるという作用を有する。
【0026】
請求項に記載のアレルゲン測定用被検液作成装置は、請求項乃至のいずれか1項において、塵埃溜め部でアレルゲンと接触させた抽出液を、重力またはファンの負圧力を利用してサンプリング用フィルタに透過させ、アレルゲン抽出後の塵埃とアレルゲンを抽出した被検液とに分離する構成としている。これによって、塵埃の捕集後、抽出液を自動的に供給することができるので、塵埃に使用者が触れることなく衛生的、簡易に抽出液の作成を行うことができるという作用を有する。
【0027】
請求項に記載のアレルゲン測定用被検液作成装置は、請求項1乃至のいずれか1項において、ファンを制御する制御部を備え、制御部は塵埃の捕集、抽出および分離の動作を自動的に行う構成としている。これによって、捕集条件、抽出条件、分離条件を自動制御により一定にすることができるので、一連のアレルゲン測定用被検液の作成を精度高く、安価に行うことができるという作用を有する。
【0028】
請求項6に記載のアレルゲン測定用被検液作成装置は、請求項乃至のいずれか1項において、アレルゲン測定用被検液作成装置には、抽出液の温度を一定に保持する温度保持装置が設けられている構成としている。これによって、抽出条件の中でも特に大きな誤差要因となる抽出液の温度を一定とすることが可能であり、アレルゲン測定用被検液の作成を精度高く行うことができ、また、抽出液の温度を周囲温度よりも高く設定することで拡散速度の向上ひいては抽出時間の短縮が可能になるという作用を有する。
【0029】
以下、本発明の実施の形態、実施例について図1〜図11を参照しながら説明する。
【0030】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1によるアレルゲン測定用被検液作成装置を示す構成図であり、図2は図1のアレルゲン測定用被検液作成装置を適用するアレルゲン測定用被検液作成方法における捕集工程を示す捕集工程説明図、図3(a)〜(c)は同アレルゲン測定用被検液作成方法における抽出工程を示す抽出工程説明図、図4は同アレルゲン測定用被検液作成方法における分離工程を示す分離工程説明図である。
【0031】
図1〜図4において、1はアレルゲンの含まれた空気を吸入するためのサンプリグ用ノズル、2はサンプリング用ノズル1から吸い込まれた塵埃を含む空気を後述の吸気路4Aを介して後述のサンプリング用フィルタ6に移送するための外部吸気路、3は塵埃のうちで測定誤差の要因となる比較的大きな粒径のものを除去するためのスクリーニング用フィルタである。
【0032】
4A〜4Dは内部吸気路で、内部吸気路4Aの一端は外部吸気路2とテーパ接続等により着脱自在に接続され、他端は後述の抽出液溜め7内の後述の塵埃溜め5とテーパ接続等により着脱自在に接続され、前記2点の接続部の間で内部吸気路4Dと接続されている。内部吸気路4Bの一端は抽出液溜め7に接続され、他端は後述の捕集抽出切替用弁8(本発明の切替え手段)に接続されている。
【0033】
内部吸気路4Cの一端は捕集抽出切替用弁8に接続され、他端は後述のフィルタバッグ固定用ジョイント9を介して後述のフィルタバッグ10と着脱自在に接続されている。内部吸気路4Dの一端は内部吸気路4Aと接続され、他端は捕集抽出切替用弁8に接続されている。
【0034】
5はサンプリング用フィルタ6を固定した略円筒状の塵埃溜め(本発明の塵埃溜め部)、6は塵埃を捕集、抽出、分離するためのサンプリング用フィルタ、7は塵埃からアレルゲンを抽出して作成した被検液を貯留する抽出液溜め(本発明の抽出液部)、8は内部吸気路の流路を制御する捕集抽出切替用弁、9はフィルタバッグ10を固定するためのフィルタバッグ固定用ジョイント、10はサンプリング用フィルタ6で捕集しきれなかった微細な塵埃を除去するフィルタバッグ、11は吸引力を発生するための吸引ファン(本発明のファン)、12はフィルタバッグ10で捕集しきれなかった微細な塵埃を除去する最終フィルタ、13は排気を排出する排気口、14は抽出液を貯えておくための抽出液貯液槽、15は抽出液・吸気(空気)を移送・導入するための抽出液吸気導入管、16は抽出液貯液槽14内の抽出液の抽出液溜め7への移送を制御するための抽出用弁、17は作成した被検液を取り出すための被検液採取用内部配管、18は被検液採取用ポート、19は被検液採取用シリンジ、20は分離のためのフィルタを内蔵した分離用フィルタ、21は筐体、22は本体の移動用のハンドル、23はフィルタバッグ10の交換のためのフィルタバッグ交換用扉、24は抽出液溜めのメンテナンスのための抽出液溜めメンテナンス用扉、25は本体の移動用キャスター、28は抽出工程において撹拌用の空気を導入するための抽出液貯液槽上部開口、抽出用吸気路、31はコンセント、32は電線、33はAC/DCコンバータ、34は一連の吸引装置の動作、自動化、温度の制御をするための制御部、35は演算部、36はスイッチである。
【0035】
また、60は抽出工程において撹拌用の空気を塵埃溜め5に導入し、抽出液に旋回流をおこさせるために設けられた撹拌用開口、61は撹拌用開口60へ空気を供給するための撹拌用内部配管である。
【0036】
以上説明したように実施の形態1におけるアレルゲン測定用被検液作成装置は、サンプリングされる空気を吸気側から排気側に透過させて空気中に浮遊する塵埃を捕捉するサンプリング用フィルタ6を備えた塵埃溜め5と、サンプリング用フィルタ6の排気側の下方に配置され、塵埃に含まれるアレルゲンを抽出する抽出液及びアレルゲン抽出後の被検液が溜められる抽出液溜め7と、サンプリング用フィルタ6の吸気側及び排気側の空気圧を吸引ファン11を用いて制御し、サンプリングされる空気、抽出液及び被検液をサンプリング用フィルタ6を介して吸気側から排気側又は排気側から吸気側に移動させる送風機構とを有して構成されている。なお、送風機構は、サンプリング用フィルタ6の吸気側及び排気側の空気圧を制御するための機構であり、内部吸気路4A〜4D、内部吸気路の空気の流れ制御するための捕集抽出切替用弁8、内部吸気路内を減圧するための吸引ファン11を構成要素として備えている。
【0037】
図1〜図4に示すように、塵埃溜め5は、その上端の開放部が内部吸気路4Aの下端に密着して接続され、下側にはサンプリング用フィルタ6が抽出液と接触できる高さに取り付けられている。そして塵埃溜め5の下端の開放部は抽出液溜め7の底部に位置付けられ、塵埃溜め5の下端の開放部を介して抽出液溜め7内の抽出液や空気をサンプリング用フィルタ6の部分に導入したり、塵埃溜め5内の空気やアレルゲン抽出後の被検液を抽出液溜め7に排出したりすることができる。また、前記塵埃溜め5と抽出液溜め7との上下方向の相対位置は必要に応じて変更することができるようになっている。これによって、塵埃溜め5内でアレルゲンの溶解抽出を終了したときに、塵埃溜め5の下端開放部を抽出液溜め7の底部より引き上げて、塵埃を含む抽出液をサンプルリング用フィルタ6に透過させ、得られる被検液を抽出溜め7の底部に滴下させることができる。
【0038】
以上のように構成されたアレルゲン測定用被検液作成装置について、その機能、動作等を図2〜図6を用いて説明する。図5は図1のアレルゲン測定用被検液作成装置の塵埃溜めと抽出液溜めを示す断面図、図6はダニアレルゲンrDerf IIの検量線を示すグラフ図である。図5において、塵埃溜め5、サンプリング用フィルタ6、抽出液溜め7とは図1と同様のものなので、同一符号を付し、説明は省略する。51は抽出液溜め7と塵埃溜め5が設置された状態において抽出液溜め7と塵埃溜め5の間に空気、液体が流通する為の間隙を形成するための開口形成用脚、52は塵埃溜め5の一端にサンプリング用フィルタ6を通気性、通液性を維持しながら固定する支持体、70は抽出液である。
【0039】
図1において、外部吸気路2は塵埃のサンプリングが容易なように例えば蛇腹式等の軟質の合成樹脂を使用することが好ましい。
【0040】
また、スクリーニング用フィルタ3は掃除がし易いように、脱着自在に構成されている。そして、スクリーニング用フィルタ3が捕捉する最低粒径は0.1mm以上、3mm以下とすることにより、捕集する塵埃中の測定誤差となる比較的大きな塵埃を除去し、後の抽出等の操作を容易かつ安定にすることができる。より好ましくは0.2mm以上、1mm以下の範囲である。形状は網状、織布状、不織布状等のいずれか1種類のものまたは複数種類が複合したものが使用でき、材質はセルロース、ポリプロピレン、ナイロン、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ステンレス、チタン、鉄、銅等のいずれか1種類のものまたは複数種類が複合したものが使用できる。この複合の形態としては、スクリーニング用フィルタ3を2層以上で構成し、各層毎に捕捉できる塵埃の最低粒径、材質、形状を変えること等が考えられる。
【0041】
内部吸気路4A〜4D、塵埃溜め5、サンプリング用フィルタ6、抽出液溜め7、捕集抽出切替用弁8、撹拌用開口60、撹拌用内部配管61は抽出液70の上部に空気を導入し、抽出液70に旋回流をおこさせることにより撹拌してアレルゲンを抽出液中に抽出する主要構成を成すものであり、内部吸気路4A〜4D、塵埃溜め5、サンプリング用フィルタ6、抽出液溜め7はアレルゲン抽出後の塵埃と被検液を分離する主要構成を成すものである。サンプリング用フィルタ6の捕捉する最低粒径は1μm以上、100μm以下とすることにより、捕集する塵埃中のアレルゲンの大部分を捕捉することができ、抽出操作後の分離操作にも適用することができる。より好ましくは10μm以上、60μm以下の範囲である。サンプリング用フィルタ6の形状は網状、織布状、不織布状等のいずれか1種類のものまたは複数種類が複合したものが使用でき、材質はセルロース、ポリプロピレン、ナイロン、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ステンレス、チタン、鉄、銅等のいずれか1種類のものまたは複数種類が複合したものが使用できる。この複合の形態としては、サンプリング用フィルタ6を2層以上で構成し、各層で捕捉する塵埃の最低粒径、材質、形状を変えること等が考えられる。
【0042】
そして、抽出液溜め7側の空気圧を塵埃溜め5側より負圧にすると外部吸気配管2から空気がサンプリング用フィルタ6に吸引され、空気中に浮遊する塵埃を分離することができる。逆に、抽出液を抽出液溜め7に注いだ後、塵埃溜め5側を負圧にすると、撹拌用開口60から撹拌用の空気が塵埃溜め5内の抽出液の上部に吹きつけられ、抽出液70に旋回流をおこさせて撹拌することができる。ここで前記空気の流れを制御する捕集抽出切替用弁8は手動弁であっても自動弁であっても使用することができる。
【0043】
フィルタバッグ10が捕捉する塵埃の最低粒径は0.1μm以上、1μm以下とすることにより、サンプリング用フィルタ6を通過した微細な塵埃を、ひいてはアレルゲンの大部分を捕捉することができる。より好ましくは0.2μm以上、0.5μm以下の範囲である。形状は網状、不織布状等のいずれか一種類または複数が複合したものが使用でき、材質はセルロース、ポリプロピレン、ナイロン、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ステンレス、チタン、鉄、銅等のいずれか1種類のものまたは複数種類が複合したものが使用できる。複合の形態としては、2層以上で構成し各層の捕捉する塵埃の最低粒径、材質、形状を変えること等が考えられる。また、フィルタバッグ10の形態は通気抵抗を低下させるためにプリーツ状、蛇腹状等の形態を適用し表面積を大きくする構造をとり通気抵抗を極力小さくすることが好ましい。
【0044】
また、最終フィルタ12は通気抵抗を低下させるためにプリーツ状、蛇腹状等の形態を適用し表面積を大きくする構造をとることが好ましい。そして、最終フィルタ12が捕捉する最低粒径は0.1μm以上、1μm以下とすることにより、フィルタバッグ10を通過した微細な塵埃ひいてはアレルゲンの大部分を捕捉することができる。より好ましくは0.2μm以上、0.5μm以下の範囲である。形状は網状、織物、不織布状等のいずれか1種類のものまたは複数種類が複合したものが使用でき、材質はセルロース、ポリプロピレン、ナイロン、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ステンレス、チタン、鉄、銅等のいずれか1種類のものまたは複数種類が複合したものが使用できる。この複合の形態としては、最終フィルタ12を2層以上で構成し各層の捕捉する最低粒径、材質、形状を変えること等が考えられる。また、複合の形態は通気抵抗を低下させるためにプリーツ状、蛇腹状等の形態を適用し表面積を大きくする構造をとり通気抵抗を極力小さくすることが好ましい。最終フィルタ12はフィルタバッグ10が排出すべきでないアレルゲンを十分に捕捉可能な場合は省略することが可能である。
【0045】
図1において、前述の通り、抽出液貯液槽14、抽出液吸気導入管15、抽出用弁16は抽出液を送り込む主要構成を成している。そして、抽出用弁16は自動化のために自動弁が採用されている。しかし、手動で切り替えを行う手動弁であってもよい。また、前述の通り、被検液採取用内部配管17、被検液採取用ポート18、被検液採取用シリンジ19、分離用フィルタ20は抽出液を採取する主要構成である。そして、吸引ファン11と内部吸気路4A〜4Dと捕集抽出切替用弁8とは、捕集抽出切替用弁8を切り替えることにより、塵埃溜め5側と抽出液溜め7側を選択的に負圧にすることのできる吸引装置となっている。塵埃溜め5のサンプリング用フィルタ6が塵埃を捕集する場合の排気側となる抽出液溜め7側を塵埃溜め5の排気側と定義することにする。また、これとは逆の方向を吸気側と称することにする。そして、抽出液溜め7に溜まった被検液を被検液採取用ポート18、分離用フィルタ20を介して被検液採取用内部配管17に接続した被検液採取用シリンジ19のピストンを引っ張ることで被検液採取用シリンジ19の内部に負圧を発生させ、抽出液溜め7に溜まった被検液を被検液採取用シリンジ19内に移送する。この際分離用フィルタ20で被検液中の残存する懸濁物質と被検液を分離することができる。
【0046】
ここで、サンプリング用フィルタ6が固定された塵埃溜め5と抽出液溜め7とについて図5に基づいて説明する。まず、図5の抽出液の状態は塵埃溜め5の上部が負圧となり、当初抽出液溜め7と塵埃溜め5に満たされていた抽出液70の大部分が塵埃溜め5に移行した状態を示している。
【0047】
次に、アレルゲン測定用被検液作成の各工程について説明する。図1のアレルゲン測定用被検液作成装置においては、▲1▼捕集工程と▲2▼抽出工程と▲3▼分離工程と▲4▼採取工程との4段階の工程によりアレルゲン測定用被検液を作成する。
【0048】
▲1▼捕集工程
これは測定対象である塵埃を一定条件でサンプリング用フィルタ6上に捕集する工程である。図2に示すように、あらかじめ抽出用弁16を閉じた状態で所定量の抽出液70を抽出液貯液槽14に注入し、捕集抽出切替用弁8は内部吸気路4Bと内部吸気路4Cが導通するように設定する。スイッチ36により吸引ファン11を起動して負圧を発生させ、一定時間、一定面積の条件でサンプリング用ノズル1を測定対象物に接触させ、測定対象物に付着している塵埃の大部分を外部吸気路2、スクリーニング用フィルタ3、内部吸気路4A、塵埃溜め5を介してサンプリング用フィルタ6上に捕集し、大部分の塵埃が取り除かれた空気はさらに抽出液溜め7、内部吸気路4B、捕集抽出切替用弁8、内部吸気路4C、フィルタバッグ10、吸引ファン11、最終フィルタ12、排気口13を通過して系外に排出される。この際、微細なアレルゲンはフィルタバッグ10または最終フィルタ12で捕捉され、系外にアレルゲンを撒き散らさない。
【0049】
抽出液70は、pHを一定に保持すると共に、主に蛋白質であるアレルゲンの変性を抑制する為にpHの緩衝作用を有する緩衝液であり、好ましくはりん酸緩衝液、ホウ酸緩衝液等である。より好ましくは緩衝液に主に蛋白質であるアレルゲンの変性を抑制する為に浸透圧を一定に保持する作用を有する塩である塩化ナトリウム、塩化カリウム、界面活性作用により主に蛋白質であるアレルゲンの抽出作用を有する界面活性剤等を混合して使用するのが適当である。界面活性剤はポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(80)ソルビタンモノラウレート等を含有させたものが適当である。界面活性剤の濃度は好ましくは0.001W/V%以上、1W/V%以下にすることにより、アレルゲン等を効率的に抽出することができる。より好ましくは0.01W/V%以上、0.2W/V%以下の範囲である。緩衝液のpHは好ましくはpH5以上、pH9以下にすることにより安定な抽出ができる。より好ましくはpH6以上、pH8以下の範囲である。また、抽出液70の液量は1mL(ミリリットル)以上、200mL以下とすることにより測定に必要な液量とアレルゲン濃度を確保することができる。より好ましくは5mL以上、20mLの範囲である。ここで捕集する時間は好ましくは10秒間以上、10分間以下で一定とすることにより、一定条件下で塵埃ひいてはアレルゲンの測定に必要な量を捕集することができる。より好ましくは30秒間以上、5分間以下の範囲である。また、捕集する面積は好ましくは0.1m以上、10m以下で一定とすることにより、一定条件下で塵埃ひいてはアレルゲンの測定に必要な量を捕集することができる。より好ましくは0.5m以上、2m以下の範囲である。
【0050】
▲2▼抽出工程
これは測定対象である塵埃から一定条件でアレルゲンを抽出液70に抽出する工程である。抽出工程は、第1の抽出工程と第2の抽出工程とから構成される。
【0051】
まず第1の抽出工程について説明する。第1の抽出工程は抽出液70を抽出液溜め7に流入させる工程である。スイッチ36により吸引ファン11を停止した状態で、図3(a)に示すように、抽出用弁16を開放して、抽出液70を抽出液溜め7に流入させる。すると、図3(b)に示すように、抽出液溜め7と塵埃溜め5に抽出液が満たされ、サンプリング用フィルタ6上の塵埃は抽出液70により浸漬された状態となる。捕集抽出切替用弁8は内部配管4Dと4Cを導通させた状態に切替える。
【0052】
次に第2の抽出工程について説明する。第2の抽出工程は抽出液70の上部の撹拌用開口60と撹拌用内部配管61によて空気を導入し、抽出液70に旋回流をおこさせることにより撹拌し、サンプリング用フィルタ6に捕捉された塵埃からアレルゲンを抽出する工程である。スイッチ36により吸引ファン11を起動し、一定時間運転する。図3(c)に示すように、この際、一部の吸気は、抽出液貯液槽上部開口28から入り、抽出液吸気導入管15、抽出用弁16を介して一部は抽出液溜め7ひいてはサンプリング用フィルタ6に到達し、一部は撹拌用内部配管61、撹拌用開口60を介して塵埃溜め5の上部に到達する。抽出液70の大部分はサンプリング用フィルタ6より上部すなわち塵埃溜め5内に移行した状態で、撹拌用開口60から流入する空気を導入し、抽出液70に旋回流をおこさせることにより撹拌される。その排気は内部吸気路4A、内部吸気路4D、捕集抽出切替用弁8、内部吸気路4Cを介してフィルタバッグ10、吸引ファン11、最終フィルタ12、排気口13を通過して系外に排出される。また、残りの吸気はサンプリング用ノズル1より流入し、外部吸気路2、内部吸気路4D、捕集抽出切替用弁8、内部吸気路4Cを介してフィルタバッグ10、吸引ファン11、最終フィルタ12、排気口13を通過して系外に排出される。この際、微細なアレルゲンは最終フィルタ12で捕捉され、系外にアレルゲンを撒き散らさない。この際、フィルタバッグ10に空気は通過するが微細なアレルゲンは通過しない仕様のフィルタを採用すると最終フィルタ12を省略することも可能である。
【0053】
ここで上述の抽出液70上部への空気の導入による撹拌は抽出液が塵埃溜め5から吸気側に移行しない程度の強さで行う必要がある。もし抽出液70上部への空気の導入による撹拌が強すぎると抽出液の系外への流出が生じることになる。そこで、抽出液70上部への空気の導入による撹拌の強さを調整できるように抽出液貯液槽14上部に設けた抽出液充填用の開口部の開口面積を調整できるように構成したり、撹拌専用の吸引ファンを設置したり、塵埃溜め5の内側上部に邪魔板を設置したりすることで、より安定した空気の混入による撹拌を行うことができる。また、抽出液70上部への空気の導入による撹拌以外にも様々な撹拌方式を適用することができる。例えば、吸引力を利用する方法であれば、吸引力により羽根車を回転させこの回転運動を同軸またはギヤ等を使用して、抽出液70内に設置した撹拌用プロペラに伝達する方法等が適用できる。その他にも、独立したモータを設置しその回転運動を同軸またはギヤ等を使用して、抽出液70内に設置した撹拌用プロペラに伝達する方法等を適用することができる。
【0054】
抽出液70は抽出液70上部への空気の導入による撹拌される際に、物理的な撹拌作用を受け、抽出液70と塵埃の接触機会が増えることでサンプリング用フィルタ6上に捕捉した塵埃からアレルゲンが抽出液70に溶解され易くなる。ここで抽出する時間は好ましくは10秒間以上、30分以下で一定とすることにより、一定条件下で塵埃ひいては測定に必要な量のアレルゲンを抽出することができる。より好ましくは30秒間以上、5分間以下の範囲である。
【0055】
抽出時間をより早めたり、抽出条件を一定化するために、抽出液の温度調整機構(温度保持装置(図示せず)および制御部34)を設けることも可能である。より詳細には、熱源にペルチェ素子、電熱線ヒータ等を使用し、温度検出に熱電対、サーミスタ、白金測温体等を使用し、検出した温度により熱源を起動・停止して設定温度を保持する制御部34よりなる温度調整機構である。また、設定温度は好ましくは5℃以上、45℃以下で一定とすることにより、抽出時間をより早めたり、抽出条件を一定化することができる。より好ましくは30℃以上、40℃以下の範囲である。
【0056】
測定全体をより簡便にしたり、測定精度を向上させるために、アレルゲン自体を測定するアレルゲン測定器を本実施の形態によるアレルゲン測定用被検液作成装置に組み込むことも可能である。
【0057】
▲3▼分離工程
分離工程は測定対象である塵埃からの抽出液70をサンプリング用フィルタ6により塵埃とアレルゲンを抽出した被検液とに分離する工程である。スイッチ36により吸引ファン11を停止する。図4に示すように、抽出液70は負圧が解除され開放となる為、塵埃溜め5内に保持された状態から抽出液溜め7に重力で流下する。この際、サンプリング用フィルタ6により、塵埃とアレルゲンを抽出した被検液とに分離されてアレルゲン測定用被検液となり、抽出液溜め7に溜まる。
【0058】
▲4▼採取工程
採取工程は作成されたアレルゲン測定用被検液を測定用に採取する工程である。抽出液溜め7を外してアレルゲン測定用被検液を取り出し、測定に供する。または、例えば図1の被検液採取用内部配管17、被検液採取用ポート18、被検液採取用シリンジ19からなる被検液を採取する機構によりアレルゲン測定用被検液を取り出し、測定に供する。アレルゲン測定用被検液に分離精度がさらに必要な場合には、例えば分離用フィルタ20を被検液採取用ポート18と被検液採取用シリンジ19との間に設置して分離することもできる。
【0059】
被検液採取用シリンジ19から取り出した被検液はサンドイッチELISA法等の手法を使ってアレルゲンの濃度を測定することができる。例えば図6はダニアレルゲンrDer f IIの検量線を示すグラフ図であるが、このように作成した検量線により、アレルゲンの濃度を測定することができる。図6の縦軸のAbs(−、490nm)は490nmの吸光度を示す。
【0060】
ところで、本実施の形態では、アレルゲンの被検液作成のための一連の操作を自動化するために制御部34が設けられている。制御部34はマイクロコンピュータ等からソフトウェア的に構成されるもので、当初ファン11を駆動して抽出液溜め7側を吸引して、サンプリング用フィルタ6に塵埃を捕集し、次いでファン11を停止すると共に、抽出用弁16を開放して抽出液貯液槽14内の抽出液を抽出液溜め7に移行させ、次いで捕集抽出切替用弁8を切り替えてファン11を駆動して塵埃溜め5側を吸引し、この負圧により抽出液に空気の混入をおこなって抽出液の撹拌を行い、サンプリング用フィルタ6上の塵埃からアレルゲンを抽出液に溶解させる。次いで制御部34は、ファン11を停止し、上記抽出液から、アレルゲンが溶解した塵埃をサンプリング用フィルタ6により分離する。この様に制御部34はアレルゲンの被検液作成のための一連の操作を自動的に行うことができる。なお、制御部34はソフトウェア的に動作するとしたが、ハードウェア的な回路の組合わせでも制御部34の動作を実現することができる。
【0061】
以上のように本実施の形態によれば、捕集条件、分離条件は一定の捕捉精度を有するサンプリング用フィルタにより安定化され、抽出条件は各撹拌手段により一定の撹拌強度を与えることができ、一連のアレルゲン測定用被検液の作成を衛生的、簡易に、精度高くしかも安価に行うことができる。
【0062】
(実施の形態2)
図7は本発明の実施の形態2によるアレルゲン測定用被検液作成装置を示す構成図であり、図8(a)、(b)、(c)は図7のアレルゲン測定用被検液作成装置での被検液作成における抽出工程を示す抽出工程説明図、図8(d)は図7のアレルゲン測定用被検液作成装置での被検液作成における分離工程を示す分離工程説明図である。
【0063】
図7、図8において、サンプリング用ノズル1、外部吸気路2、スクリーニング用フィルタ3、サンプリング用フィルタ6、フィルタバッグ固定用ジョイント9、フィルタバッグ10、吸引ファン11、最終フィルタ12、排気口13、抽出用弁16、筐体21、ハンドル22、フィルタバッグ交換用扉23、コンセント31、電線32、AC/DCコンバータ33、制御部34、演算部35、スイッチ36、抽出液70は図1、図2と同様のものなので、同一符号を付し、説明は省略する。4は内部吸気路、5A及び5Bはそれぞれ外部に開放された開放部が形成され、サンプリング用フィルタ6A、6Bが底面をなすように取り付けられた塵埃溜め(本発明の塵埃溜め部)、7Aは内部吸気路4の上方に形成された抽出液溜め(本発明の抽出液部)、26は抽出時に抽出用弁16と抽出用継手27の間に空気の流路を形成するための抽出用吸気路、27は抽出時に抽出用吸気路26と塵埃溜め5Aの間に空気の流路を形成するための抽出用継手である。
【0064】
なお、塵埃溜め5A、5Bは同一のものであって、塵埃の補集工程時には、5Aに示す位置に取りつけて塵埃を捕捉し、抽出工程以降では5Bに示す位置に取り付けて塵埃に含まれるアレルゲンの抽出を行うようになっているが、同時に別の塵埃溜めをそれぞれの位置に配置して用いることもできる。
【0065】
60は抽出工程において撹拌用の空気を塵埃溜め5Aに空気を導入し、抽出液70に旋回流をおこさせるように上部に設けられた撹拌用開口である。なお、内部吸気路4の吸気側の端部には装着部が設けられ(図示しない)、サンプリングされた空気を取り込むための塵埃溜め5Aが装着できるようになっている。
【0066】
以上のように構成されたアレルゲン測定用被検液作成装置の機能、動作等について、図7、図8を用いて説明する。
【0067】
図7において、抽出用弁16は吸引ファン11により発生させた負圧を内部吸気路4と抽出用吸気路26と抽出用継手27とを介して塵埃溜め5Bへ伝達するものである。このように吸引ファン11、内部吸気路4、抽出用弁16、抽出用吸気路26、抽出用継手27、塵埃溜め5B、サンプリング用フィルタ6B、抽出液溜め7A、撹拌用開口60は抽出を行うための主要構成を成している。
【0068】
また、サンプリング用ノズル1、外部吸気路2、塵埃溜め5A、サンプリング用フィルタ6A、内部吸気路4は、アレルゲンを含む空気から塵埃を捕集するための主要構成を成すものである。そして、抽出用弁16は手動で切り替えを行う手動弁が採用されている。しかし、自動化のために自動弁を使用してもよい。
【0069】
次に、アレルゲン測定用被検液作成の各工程について説明する。図7のアレルゲン測定用被検液作成装置は、▲1▼捕集工程と▲2▼抽出工程と▲3▼分離工程と▲4▼採取工程との4段階の工程によりアレルゲン測定用被検液を作成する。
【0070】
▲1▼捕集工程
捕集工程は測定対象である塵埃を一定条件で塵埃溜め5Aのサンプリング用フィルタ6上に捕集する工程である。図7に示すように、あらかじめ塵埃溜め5Aを外部吸気路2と内部吸気路4との間に装着し、抽出用弁16を閉じた状態でスイッチ36により吸引ファン11を起動して排気側に負圧を発生させ、一定時間、測定しようとする面をサンプリング用ノズル1で一定面積となるように掃く条件で操作して、サンプリング用ノズル1を測定対象物に接触させ、測定対象物に付着している塵埃の大部分を外部吸気路2、スクリーニング用フィルタ3、塵埃溜め5Aを介してサンプリング用フィルタ6A上に捕集する。大部分の塵埃が取り除かれた空気はさらに内部吸気路4、フィルタバッグ10、吸引ファン11、最終フィルタ12、排気口13を通過して系外に排出される。この際、微細なアレルゲンはフィルタバッグ10または最終フィルタ12で捕捉され、系外にアレルゲンを撒き散らさない。ここで捕集する時間は好ましくは10秒間以上、10分間以下で一定とすることにより、一定条件下で塵埃ひいてはアレルゲンを測定に必要な量だけ捕集することができる。この補集時間は、より好ましくは30秒間以上、5分間以下の範囲である。また、捕集する面積は好ましくは0.1m以上、10m以下で一定とすることにより、一定条件下で塵埃ひいてはアレルゲンを測定に必要な量、捕集することができる。より好ましくは0.5m以上、2m以下の範囲である。
【0071】
▲2▼抽出工程
抽出工程は測定対象である塵埃から一定条件でアレルゲンを抽出液70に抽出する工程であり、第1の抽出工程と第2の抽出工程とから構成される。
【0072】
第1の抽出工程は抽出液70を抽出液溜め7Aに注ぐ工程である。
【0073】
まず、スイッチ36により吸引ファン11を停止した状態で、図8(a)に示すように、塵埃の捕集された塵埃溜め5Aを外部吸気路2と内部吸気路4との間から取り外して、抽出液溜め7A内に配置して、これを塵埃溜め5Bとする。そして、抽出液70を塵埃溜め5B内に注ぎ入れる。これによりサンプリング用フィルタ6上の塵埃は抽出液70により浸漬され、以降の操作で空気中に移行し難くなる。さらに、図8(b)に示すように、抽出用継手27を塵埃溜め5Bに連結して、抽出用弁を開ける。
【0074】
次に第2の抽出工程について説明する。第2の抽出工程は抽出液70の上部の撹拌用開口60から空気を導入し、抽出液70に旋回流をおこさせることにより撹拌し、サンプリング用フィルタ6に捕捉された塵埃からアレルゲンを抽出する工程である。スイッチ36により吸引ファン11を起動し、一定時間排気側とは逆方向に運転する。図8(c)に示すように、この際、撹拌用空気が撹拌用開口60から導入される。これによって、抽出液70の大部分をサンプリング用フィルタ6Bより上部のレベルに移行させた状態で、撹拌用開口60から流入する空気によって抽出液70に旋回流をおこさせる。
【0075】
その排気は内部吸気路4を介してフィルタバッグ10、吸引ファン11、最終フィルタ12、排気口13を通過して系外に排出される。また、一部の吸気はサンプリング用ノズル1より流入し、外部吸気路2、スクリーニング用フィルタ3、内部吸気路4を介してフィルタバッグ10、吸引ファン11、最終フィルタ12、排気口13を通過して系外に排出される。この際、微細なアレルゲンは最終フィルタ12で捕捉され、系外にアレルゲンを撒き散らさない。この際、フィルタバッグ10に空気は通過するが微細なアレルゲンは通過しない仕様のフィルタを採用すると最終フィルタ12を省略することも可能である。
【0076】
ここで上述の抽出液70上部への空気の導入による撹拌は抽出液が塵埃溜め5Bから吸気側に移行しない程度の強さで行う必要がある。もし抽出液70上部への空気の導入による撹拌が強すぎると抽出液の系外への流出が生じることになる。そこで、抽出液70上部への空気の導入による撹拌の強さを調整できるように、撹拌専用の吸引ファンを設置したり、塵埃溜め5の内側上部に邪魔板を設置したりすることで、より安定した空気の混入による撹拌を行うことができる。また、抽出液70上部への空気の導入による撹拌以外にも様々な撹拌方式を適用することができる。例えば、吸引力を利用する方法であれば、吸引力により羽根車を回転させこの回転運動を同軸回転する棒材またはギヤ等を使用して、抽出液70内に設置した撹拌用プロペラに伝達する方法等が適用できる。その他にも、独立したモータを設置しその回転軸またはギヤ等を使用して、抽出液70内に設置した撹拌用プロペラに伝達する方法等を適用することができる。
【0077】
抽出液70は抽出液70上部への空気の導入による撹拌される際に、物理的な撹拌作用を受け、抽出液70と塵埃の接触機会が増えることでサンプリング用フィルタ6B上に捕捉した塵埃からアレルゲンが抽出液70に溶解され易くなる。ここで抽出する時間は好ましくは10秒間以上、30分以下で一定とすることにより、一定条件下で塵埃ひいては測定に必要な量のアレルゲンを抽出することができる。より好ましくは30秒間以上、5分間以下の範囲である。
【0078】
抽出時間をより早めたり、抽出条件を一定化するために、抽出液の温度調整機構(温度保持装置(図示せず)および制御部34)を設けることも可能である。より詳細には、熱源にペルチェ素子、電熱線ヒータ等を使用し、温度検出に熱電対、サーミスタ、白金測温体等を使用し、検出した温度により熱源を起動、停止して設定温度を保持する温度制御のための制御部34を備えた送風機構である。また、設定温度は好ましくは5℃以上、45℃以下で一定とすることにより、抽出時間をより早めたり、抽出条件を一定化することができる。より好ましくは30℃以上、40℃以下の範囲である。
【0079】
測定全体をより簡便にしたり、測定精度を向上させるために、アレルゲン自体を測定するアレルゲン測定器を本実施の形態によるアレルゲン測定用被検液作成装置に組み込むことも可能である。
【0080】
▲3▼分離工程
分離工程は測定対象である塵埃からの抽出液70をサンプリング用フィルタ6Bを用いて塵埃と前記アレルゲンを抽出した被検液とに分離する工程である。スイッチ36により吸引ファン11を停止し、抽出用継手27を塵埃溜め5Bから外す。図8(d)に示すように抽出液70は負圧が解除されるため、塵埃溜め5B内に保持された状態から抽出液溜め7Aに重力で流下する。この際、サンプリング用フィルタ6Bにより塵埃と前記アレルゲンを抽出した被検液とに分離されてアレルゲン測定用被検液となり抽出液溜め7Aに溜まる。
【0081】
▲4▼採取工程
採取工程は作成されたアレルゲン測定用被検液を測定用に採取する工程である。抽出液溜め7Aを外してアレルゲン測定用被検液を取り出し、測定に供する。この際、競合法等を適用してサンプルの清澄性があまり必要とされない場合にはこの工程を省略することも可能である。なお、制御部34はソフトウェア的に動作するとしたが、ハードウェア的な回路の組合わせでも制御部34の動作を実現することができる。
【0082】
本実施の形態2によれば、捕集条件、分離条件は一定の捕捉精度を有するサンプリング用フィルタにより安定化され、抽出条件は各撹拌手段により一定の撹拌強度を与えることができ、一連のアレルゲン測定用被検液の作成を衛生的、簡易に、精度高くしかも安価に行うことができる。
【0083】
(実施例1)
本実施例では、コナヒョウヒダニ(Dermatofagoides farinae)のアレルゲンであるDer f IIを含む含有量が既知の培地を一定量ずつ撒いた状態の絨毯からアレルゲン測定用被検液を作成した。本実施例では図1のアレルゲン測定用被検液作成装置を使用し、4段階の工程(▲1▼捕集工程、▲2▼抽出工程、▲3▼分離工程、▲4▼採取工程)によりアレルゲン測定用被検液を作成する。あらかじめコナヒョウヒダニを繁殖させた培地を1μg−Der f II/mから0.005μg−Der f II/mとなるように絨毯に散布したものを試験に供した。
【0084】
図9はダニアレルゲンDer f IIの塵埃における粒径分布例を示すグラフ図であり、図10は本実施例において散布したダニアレルゲンの設定値と図1のアレルゲン測定用被検液作成装置を使用したダニアレルゲンの測定値との関係を示すグラフ図である。つまり、図10には、前記絨毯に散布したダニアレルゲンの設定値と図1のアレルゲン測定用被検液作成装置により作成した被検液のサンドイッチELISA法によるダニアレルゲンの測定値との関係が示されている。
【0085】
▲1▼捕集工程
あらかじめ抽出用弁16が閉じた状態で、抽出液としてダルベッコりん酸緩衝生理食塩水に0.05w/v%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを含有し、pH7.4±0.2の溶液(以下PBS−T)10mLを抽出液貯液槽14に注入した。抽出用弁16は自動弁を使用した。
【0086】
捕集抽出切替用弁8は内部配管4Bと4Cを導通させた状態で、スイッチ36により吸引ファン11を起動し1.2m/分で吸気しながら、測定対象となる部位をサンプリング用ノズル1で2分間、1mの条件で操作した。サンプリング用ノズル1から吸い込まれた塵埃の大部分を外部吸気路2、スクリーニング用フィルタ3、内部吸気路4A、塵埃溜め5を介してサンプリング用フィルタ6上に捕集し、大部分の塵埃が取り除かれた空気はさらに抽出液溜め7、内部吸気路4B、捕集抽出切替用弁8、内部吸気路4C、フィルタバッグ10、吸引ファン11、排気口13を通過して系外に排出された。この際、微細なアレルゲンはフィルタバッグ10で捕捉した。
【0087】
本実施例では、スクリーニング用フィルタ3で捕捉する塵埃の最低粒径は0.3mmでステンレス製の網状のものを使用した。また、サンプリング用フィルタ6で捕捉する塵埃の最低粒径は25μmでステンレス製網状体で、直径25mmのものを使用した。ここで、サンプリング用フィルタ6で捕捉する塵埃の最低粒径を25μmとしたのは、事前の調査結果である図9に示すように、塵埃中のダニアレルゲンDer f IIの粒径分布は25μm以上のところに大部分が存在することが判明していたからである。また、フィルタバッグ10が捕捉する塵埃の最低粒径は0.3μmで不織布状、セルロースのものを使用した。なお、最終フィルタ12はフィルタバッグ10が排出すべきでないアレルゲンを十分に捕捉可能であるため設置しなかった。
【0088】
▲2▼抽出工程
抽出工程は前述の通り、第1及び第2の抽出工程とから構成される。
【0089】
まず第1の抽出工程について説明する。第1の抽出工程は抽出液70を抽出液溜め7に流入させる工程である。まず抽出用弁16を開放して、抽出液70を抽出液溜め7に流入させた。この後、サンプリング用フィルタ6は抽出液70により浸漬された状態とした。捕集抽出切替用弁8は内部配管4Dと4Cを導通させた状態に切替える。捕集抽出切替用弁8は自動弁を使用した。
【0090】
次に第2の抽出工程について説明する。第2の抽出工程は抽出液70の上部の撹拌用開口60と撹拌用内部配管61によて空気を導入し、抽出液70に旋回流をおこさせることにより撹拌し、サンプリング用フィルタ6に捕捉された塵埃からアレルゲンを抽出する工程である。まずスイッチ36により吸引ファン11を起動し、5分間運転した。この際一部の吸気は、抽出液貯液槽14の開口部から入り抽出液吸気導入管15、抽出用弁16を介して抽出液溜め7ひいてはサンプリング用フィルタ6に到達し、抽出液70の大部分はサンプリング用フィルタ6より上部すなはち塵埃溜め5内に移行した状態で撹拌用開口60から流入する空気を導入し、抽出液70に旋回流をおこさせることにより撹拌された。このときのサンプリング用フィルタ6における線速度は50m/sであった。その排気は内部吸気路4A、内部吸気路4D、捕集抽出切替用弁8、内部吸気路4Cを介してフィルタバッグ10、吸引ファン11、最終フィルタ12、排気口13を通過して系外に排出された。また、一部の吸気はサンプリング用ノズル1より流入し、外部吸気路2、内部吸気路4D、捕集抽出切替用弁8、内部吸気路4Cを介してフィルタバッグ10、吸引ファン11、排気口13を通過して系外に排出された。この際、微細なアレルゲンはフィルタバッグ10で捕捉された。
【0091】
▲3▼分離工程
スイッチ36により吸引ファン11を停止した。抽出液70は負圧が解除され開放となる為、塵埃溜め5内から抽出液溜め7に、サンプリング用フィルタ6により塵埃と前記アレルゲンを抽出した被検液に分離されて測定用被検液となり抽出液溜め7に溜まった。
【0092】
▲4▼採取工程
抽出液溜め7内の測定用被検液をピペットで採取した。本実施例では、分離用フィルタ20による分離精度の向上は不必要であったため、分離用フィルタ20は使用しなかった。
【0093】
サンドイッチELISA法により前記測定用被検液のダニアレルゲンDer f IIを測定した。
【0094】
図10より図1のアレルゲン測定用被検液作成装置により作成したアレルゲン測定用被検液は設定値の90%程度を検出可能であること、また、相関係数が0.999と高く、安定に検出可能であることがわかる。
【0095】
本実施例以外にもアレルゲン測定用被検液作成装置は種々考えることが出来る。例えば、より自動化を推進した装置や、測定装置も一体化された装置等が考えられる。
【0096】
(実施例2)
本実施例では、コナヒョウヒダニ(Dermatofagoides farinae)のアレルゲンであるDer f IIを含む含有量が既知の培地を、一定量ずつ撒いた状態の絨毯から測定用被検液を作成した。本実施例では図1のアレルゲン測定用被検液作成装置を使用し、4段階の工程(▲1▼捕集工程、▲2▼抽出工程、▲3▼分離工程、▲4▼採取工程)によりアレルゲン測定用被検液を作成する。あらかじめコナヒョウヒダニを繁殖させた培地を1μg−Der f II/mから0.005μg−Der f II/mとなるように絨毯に散布したものを試験に供した。
【0097】
図11は本実施例において散布したダニアレルゲンの設定値と図1のアレルゲン測定用被検液作成装置を使用したダニアレルゲンの測定値との関係を示すグラフ図である。つまり、図11には、前記絨毯に散布したダニアレルゲンの設定値と図1のアレルゲン測定用被検液作成装置により作成した被検液のサンドイッチELISA法によるダニアレルゲンの測定値との関係が示されている。
【0098】
▲1▼捕集工程
抽出用弁16を閉じた状態で、スイッチ36により吸引ファン11を起動し1.0m/分で吸気しながら、測定対象となる部位をサンプリング用ノズル1で2分間、1mの条件で操作した。サンプリング用ノズル1から吸い込まれた塵埃の大部分を外部吸気路2、スクリーニング用フィルタ3、塵埃溜め5を介してサンプリング用フィルタ6上に捕集し、大部分の塵埃が取り除かれた空気はさらに内部吸気路4、フィルタバッグ10、吸引ファン11、最終フィルタ12、排気口13を通過して系外に排出した。この際、微細なアレルゲンはフィルタバッグ10で捕捉した。また、スクリーニング用フィルタ3、サンプリング用フィルタ6、フィルタバッグ10は実施例1と同様のものを用い、最終フィルタ12はフィルタバッグ10が排出すべきでないアレルゲンを十分に捕捉可能であるため設置しなかった。
【0099】
▲2▼抽出工程
抽出工程は前述の通り、第1の抽出工程と第2の抽出工程とから構成される。まず第1の抽出工程について説明する。第1の抽出工程は抽出液70を抽出液溜め7に注ぐ工程である。まずスイッチ36により吸引ファン11を停止した状態で、塵埃を捕集した塵埃溜め5とサンプリング用フィルタ6を抽出液溜め7に設置し、抽出液70を塵埃溜め5を介して注いだ。抽出液として、ダルベッコりん酸緩衝生理食塩水に0.05w/v%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを含有し、pH7.4±0.2の溶液(以下PBS−T)10mLを使用した。
【0100】
次に第2の抽出工程について説明する。第2の抽出工程は抽出液70の上部の撹拌用開口60によて空気を導入し、抽出液70に旋回流をおこさせることにより撹拌し、サンプリング用フィルタ6に捕捉された塵埃からアレルゲンを抽出する工程である。まずスイッチ36により吸引ファン11を起動し、5分間運転した。この際、一部の吸気は、抽出液溜め7から入り、サンプリング用フィルタ6に到達し、抽出液70の大部分はサンプリング用フィルタ6より上部すなわち塵埃溜め5内に移行した状態で、撹拌用開口60から流入する空気を導入し、抽出液70に旋回流をおこさせることにより撹拌された。空気が吹き込まれて撹拌された。その排気は内部吸気路4を介してフィルタバッグ10、吸引ファン11、最終フィルタ12、排気口13を通過して系外に排出された。また、一部の吸気はサンプリング用ノズル1より流入し、外部吸気路2、スクリーニング用フィルタ3、内部吸気路4を介してフィルタバッグ10、吸引ファン11、最終フィルタ12、排気口13を通過して系外に排出された。
【0101】
▲3▼分離工程
スイッチ36により吸引ファン11を停止して、抽出用継手27を塵埃溜め5から外した。抽出液70は負圧が解除され開放となる為、塵埃溜め5内に保持された状態から抽出液溜め7に重力で流下する。この際、サンプリング用フィルタ6によりアレルゲンを抽出し後の抽出液から塵埃が分離されて測定用被検液となり抽出液溜め7に溜まった。
【0102】
▲4▼採取工程
抽出液溜め7内の測定用被検液をピペットで採取した。本実施例では、分離用フィルタ20による分離精度の向上は不必要であったため、分離用フィルタ20は使用しなかった。サンドイッチELISA法により前記測定用被検液のダニアレルゲンDer f IIを測定した。
【0103】
図11より図1のアレルゲンの測定用被検液作成装置により作成した被検液は設定値の80%程度を検出可能であること、また、相関係数が0.998と高く、安定に検出可能であることがわかる。
【0104】
本実施例以外にもアレルゲン測定用被検液作成装置は種々考えることが出来る。例えば、自動化をさらに推進した装置や、アレルゲン自体を測定する装置も一体化された装置等が考えられる。
【0105】
【発明の効果】
以上のように本発明のアレルゲン測定用被検液作成方法によれば、以下のような有利な効果が得られる。
【0111】
請求項に記載の発明によれば、サンプリングされる空気を吸気側から排気側に透過させて空気中に浮遊する塵埃を捕捉するサンプリング用フィルタを備えた塵埃溜め部と、サンプリング用フィルタの排気側の下方に配置され、塵埃に含まれるアレルゲンを抽出する抽出液及びアレルゲン抽出後の被検液が溜められる抽出液部とサンプリング用フィルタの吸気側及び排気側の空気圧をファンを用いて制御し、サンプリングされる空気、抽出液及び被検液をサンプリング用フィルタを介して吸気側から排気側又は排気側から吸気側に移動させる送風機構とを有するので、サンプリング用フィルタを用いて塵埃溜め部内に塵埃を捕捉し、この排気側を抽出液に浸漬し、塵埃と抽出液を送風機構を用いて移送して捕集条件、分離条件を安定化できる。塵埃溜め部を移動させことなく塵埃の補集、抽出、分離が行えるので、アレルゲンに直接手を触れることなくアレルゲン測定用被検液を作成することができ、一連のアレルゲン測定用被検液の作成を衛生的、簡易に、精度高くおこなえるという効果を有する。
【0112】
請求項に記載の発明によれば、請求項の効果に加えて、次の効果を有する。即ち、送風機構には、サンプリング用フィルタの排気側が抽出液部の抽出液中に浸漬されたときに、塵埃溜め部に入れられた抽出液に撹拌用空気を供給して抽出液を撹拌する旋回流路が設けられているので、塵埃溜め部を固定したままで保持する保持する抽出液を短時間で効率的に撹拌混合することができる。これによって、アレルゲンの空気との接触が最小限に押さえられ変性がおこりにくく、一連のアレルゲン測定用被検液の作成を衛生的、簡易に、精度高くおこなえる。
【0113】
請求項に記載の発明によれば、請求項又はの効果に加えて、次の効果を有する。即ち、アレルゲン測定用被検液作成装置には、抽出液を溜めておく貯液槽が設けられ、貯液槽に溜められた抽出液を重力またはファンによる負圧力を用いて抽出液部に導入するので、塵埃の捕集後、抽出液を自動的に供給して、塵埃に使用者が触れることなく衛生的、簡易にアレルゲン測定用被検液の作成を行うことができる。
【0114】
請求項に記載の発明によれば、請求項乃至のいずれか1項の効果に加えて、次の効果を有する。即ち、塵埃溜め部でアレルゲンと接触させた抽出液を、重力またはファンの負圧力を利用してサンプリング用フィルタに透過させ、アレルゲン抽出後の塵埃とアレルゲンを抽出した被検液とに分離するので、塵埃の捕集後、抽出液を自動的に供給することができ、塵埃に使用者が触れることなく衛生的に抽出液の簡単に作成を行うことができる。
【0115】
請求項に記載の発明によれば、請求項乃至のいずれか1項の効果に加えて、次の効果を有する。ファンを制御する制御部を備え、制御部は塵埃の捕集、抽出および分離の動作を自動的に行うことができるので、捕集条件、抽出条件、分離条件を自動制御により一定にして、一連のアレルゲン測定用被検液の作成を精度高く、安価に行うことができる。
【0116】
請求項に記載の発明によれば、請求項乃至のいずれか1項の効果に加えて、次の効果を有する。即ち、アレルゲン測定用被検液作成装置には、抽出液の温度を一定に保持する温度保持装置が設けられているので、抽出条件の中でも特に大きな誤差要因となる抽出液の温度を一定として、アレルゲン測定用被検液の作成を高い精度で行うことができ、また、抽出液の温度を周囲温度よりも高く設定することで拡散速度の向上ひいては抽出時間の短縮が可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1によるアレルゲン測定用被検液作成装置を示す構成図
【図2】図1のアレルゲン測定用被検液作成装置を適用するアレルゲン測定用被検液作成方法における捕集工程を示す捕集工程説明図
【図3】(a)図1のアレルゲン測定用被検液作成装置を適用するアレルゲン測定用被検液作成方法における抽出工程を示す抽出工程説明図
(b)図1のアレルゲン測定用被検液作成装置を適用するアレルゲン測定用被検液作成方法における抽出工程を示す抽出工程説明図
(c)図1のアレルゲン測定用被検液作成装置を適用するアレルゲン測定用被検液作成方法における抽出工程を示す抽出工程説明図
【図4】図1のアレルゲン測定用被検液作成装置を適用するアレルゲン測定用被検液作成方法における分離工程を示す分離工程説明図
【図5】図1のアレルゲン測定用被検液作成装置の塵埃溜めと抽出液溜めを示す断面図
【図6】ダニアレルゲンrDer f IIの検量線を示すグラフ
【図7】本発明の実施の形態2によるアレルゲン測定用被検液作成装置を示す構成図
【図8】(a)図7のアレルゲン測定用被検液作成装置を適用するアレルゲン測定用被検液作成方法における抽出工程を示す抽出工程説明図
(b)図7のアレルゲン測定用被検液作成装置を適用するアレルゲン測定用被検液作成方法における抽出工程を示す抽出工程説明図
(c)図7のアレルゲン測定用被検液作成装置を適用するアレルゲン測定用被検液作成方法における抽出工程を示す抽出工程説明図
(d)図7のアレルゲン測定用被検液作成装置を適用するアレルゲン測定用被検液作成方法における分離工程を示す分離工程説明図
【図9】ダニアレルゲンDer f IIの塵埃における粒径分布例を示すグラフ
【図10】実施例1において散布したダニアレルゲンの設定値と図1のアレルゲン測定用被検液作成装置を使用したダニアレルゲンの測定値との関係を示すグラフ
【図11】実施例2において散布したダニアレルゲンの設定値と図1のアレルゲン測定用被検液作成装置を使用したダニアレルゲンの測定値との関係を示すグラフ
【符号の説明】
1 サンプリング用ノズル
2 外部吸気路
3 スクリーニング用フィルタ
4、4A、4B、4C、4D 内部吸気路
5、5A、5B 塵埃溜め
6、6A、6B サンプリング用フィルタ
7、7A 抽出液溜め
8 捕集抽出切替用弁(ファン吸引側切替器)
9 フィルタバッグ固定用ジョイント
10 フィルタバッグ
11 吸引ファン
12 最終フィルタ
13 排気口
14 抽出液貯液槽
15 抽出液・吸気導入管
16 抽出用弁
17 被検液採取用内部配管
18 被検液採取用ポート
19 被検液採取用シリンジ
20 分離用フィルタ
21 筐体
22 ハンドル
23 フィルタバッグ交換用扉
24 抽出液溜めメンテナンス用扉
25 移動用キャスター
26 抽出用吸気路
27 抽出用継手
28 抽出液貯液槽上部開口
31 コンセント
32 電線
33 AC/DCコンバータ
34 制御部
35 演算部
36 スイッチ
51 開口形成用脚
52 支持体
60 撹拌用開口
61 撹拌用内部配管
70 抽出液

Claims (6)

  1. サンプリングされる空気を吸気側から排気側に透過させて空気中に浮遊する塵埃を捕捉するサンプリング用フィルタを備えた塵埃溜め部と、
    前記サンプリング用フィルタの排気側の下方に配置され、塵埃に含まれるアレルゲンを抽出する抽出液及びアレルゲン抽出後の被検液が溜められる抽出液部と、
    前記サンプリング用フィルタの吸気側及び排気側の空気圧をファンを用いて制御し、前記サンプリングされる空気、前記抽出液及び前記被検液を前記サンプリング用フィルタの吸気側から排気側又は排気側から吸気側に移動させる切替え手段を備えた送風機構とを有することを特徴とするアレルゲン測定用被検液作成装置。
  2. 前記送風機構には、前記サンプリング用フィルタの排気側が前記抽出液部の抽出液中に浸漬されたときに、前記塵埃溜め部に入れられた抽出液の上部に撹拌用空気を供給して抽出液を撹拌する旋回流路が設けられていることを特徴とする請求項に記載のアレルゲン測定用被検液作成装置。
  3. 前記アレルゲン測定用被検液作成装置には、前記抽出液を溜めておく貯液槽が設けられ、前記貯液槽に溜められた抽出液を重力または前記ファンによる負圧力を用いて前記抽出液部に導入することを特徴とする請求項又はに記載のアレルゲン測定用被検液作成装置。
  4. 前記塵埃溜め部でアレルゲンと接触させた抽出液を、重力または前記ファンの負圧力を利用して前記サンプリング用フィルタに透過させ、アレルゲン抽出後の塵埃とアレルゲンを抽出した被検液とに分離することを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載のアレルゲン測定用被検液作成装置。
  5. 前記ファンを制御する制御部を備え、前記制御部は塵埃の捕集、抽出および分離の動作を自動的に行うことを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載のアレルゲン測定用被検液作成装置。
  6. 前記アレルゲン測定用被検液作成装置には、前記抽出液の温度を一定に保
    持する温度保持装置が設けられていることを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載のアレルゲン測定用被検液作成装置。
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