JP3632000B2 - 水質改善用流入調整フェンス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、流水調整を必要とする河川、ダム堰、調整池などに設置し得る水質改善用のフェンスに関し、特に、その開放構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
河川、ダム堰、調整池などにおいては、従来から、流水を塞き止める方向に水質改善用のフェンスを配置し、水質の改善に役立たせることが行われている。
流れの遅い河川やダム堰、調整池などでは、通常、流水はこのフェンスの下をくぐり抜け下流方向に流れる。一方、濁水がこのフェンスの下をくぐり抜ける際、濁水に含まれる土その他の粒子はそのまま沈下し、下流に流れる水の水質を改善することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、洪水時など激しく水が流れる場合には、施設を激しい流水から守るために、水質改善用のフェンスの上部のみを開放する必要がある。フェンスの上部のみを開放すると、流速の最も大きい水面上にある施設の受圧面積を小さくできるから、それによってこの施設を激しい流水から守ることができる。
【0004】
逆に、渇水時に土石流が起こることがある。この現象は災害規模ほどではなく、通常、河川等で水位が低下した後において一定量の増水による流水が発生し始める段階で、護岸面であった土などが乾燥することで流水が濁り、河床部に粗い粒子の流れが生じる。このような現象から施設を守るために、少なくとも粗い粒子で埋まりやすいフェンスの下部を水面付近まで浮上させる必要がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように、水質改善用のフェンスは、時と場合によってフェンスの上部のみを開放したり、フェンス全体を開放しなければならない。
本発明は、フェンスの上部のみの開放とフェンス全体の開放とを、エアーにより浮力調整可能なフロートを使用することによって容易に行い得るようにしたもので、特に、少なくとも上下二段に分割されているフェンスの上部の開閉、すなわち、上側のフェンスの開閉をスムーズかつ誤動作なく行うことができるようにしたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、本発明では、水面W.L に浮かべる固定式のフロート6から垂下させ得るフェンスFを、少なくとも上下二段に分割し、分割されている上側のフェンス f 1 側と下側のフェンス f 2 側とに、エアーにより浮力調整可能なフロートをそれぞれ独立して取り付けるとともに、上側のフェンス f 1 の上端に位置するフロートを、あるいは、上側のフェンス f 1 の下端に位置するフロートを、固定式のフロート6から垂下させたガイドワイヤ7,7に摺動可能に取り付けてある。
【0007】
エアーにより浮力調整可能なフロートのうち、上側のフェンス f 1 の上端に位置するフロートにエアーが保持されている場合、あるいは、上側のフェンス f 1 の下端に位置するフロートにエアーが保持されていない場合には、フェンスFは図1(a) 及び図2(a) に示すように、流水方向である白矢印と直交する方向に全高にわたって張りめぐらせることができる。この状態が通常時であり、流水はフェンスFの下を潜り抜けて下流方向に流れる。
【0008】
エアーにより浮力調整可能なフロートのうち、上側のフェンス f 1 の上端に位置するフロートにエアーが保持されていない状態にすると、あるいは、上側のフェンス f 1 の下端に位置するフロートにエアーが保持されている状態にすると、図1(b) あるいは図2(b) に示すように、フェンスFの上部のみ、すなわち、少なくとも上下二段に分割されているフェンスFのうち上側のフェンス f 1 を開放することができ、開放されたこの部分から水が下流方向に流れる。
この状態とすることにより、上述したように、洪水時などの激しい流水から施設を守ることができる。
【0009】
エアーにより浮力調整可能なフロートの全てにエアーが保持されている状態にすると、図1(c) あるいは図2(c) に示すように、全てのフロートが水面もしくは水面近くまで浮上し、フェンスF全体を浮上させることができ、フェンスF全体を開放させることができる。
この状態とすることにより、上述したように、渇水時において河床部に生じる粗い粒子によって、少なくともフェンスFの下部が埋まるのを防止することができる。
【0010】
そして、本発明の場合においては、上側のフェンス f 1 を開閉するに当って、上側のフェンス f 1 の上端に位置するフロート、あるいは、上側のフェンス f 1 の下端に位置するフロートを浮力調整することによって、固定式のフロート6から垂下せしめられているガイドワイヤ7,7に沿ってこれらのフロートを摺動させることができ、フェンスFの上部の開閉、すなわち、少なくとも上下二段に分割されているフェンスFのうち上側のフェンスf1の開閉をスムーズかつ誤動作なく行うことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい実施の形態を、図面に基いて詳細に説明する。
水質改善用のフェンスFは、図1(a) 及び図2(a) に示すように、流水を塞き止める方向に、すなわち、流水方向である白矢印と直交する方向に配置され、一定の間隔を置いて配置されている固定式の複数のフロート6,6により全高にわたって水面W.L 下に張りめぐらされるものである。図1及び図2はフェンスFを側面側から見た状態を、図3はこのフェンスFを正面側から見た状態を示す。
水質改善用のフェンスFの全高(図面の上下方向)は10m程度であるのに対して、幅(図3の左右方向)は設置場所の幅に応じて決められる。全体としては極めて大きいものであるということができる。本明細書においては、この大きなフェンスを図面符号Fで表すこととする。
【0012】
図3に示すように、各フロート6,6からはガイドワイヤ7をそれぞれ垂下させてあり、各ガイドワイヤ7,7の上端であって各フロート6,6の直下には幅全体にわたって横方向にワイヤ8が、また、各ガイドワイヤ7,7の半分の高さのところと下端にもこのワイヤ8と平行のワイヤ9,9'がそれぞれ幅全体にわたって配置されている。そして、縦方向に配置されている各ガイドワイヤ7,7と横方向に配置されているワイヤ8、ワイヤ9,9'とに全て跨がるように、全面にわたってフェンスFが取り付けられている。
なお、各ガイドワイヤ7,7の半分の高さのところと下端に配置されているワイヤ9,9'には、横方向に多数並べて沈錘ウエイト10が取り付けられ、フェンスF設置時において各ガイドワイヤ7,7やフェンスFがピンと張られた状態で、しかも、垂直方向を保つようにしてある。
【0013】
ここでは、このフェンスFが上下二段に分割され、分割されている上側のフェンスf1を各ガイドワイヤ7,7よりも図1(a) 、図2(a) の左側に、また、分割されている下側のフェンスf2を各ガイドワイヤ7,7よりも右側にそれぞれ位置させた場合が例示されている。なお、各ガイドワイヤ7,7に対する上下二段のフェンスf1,f2の取付位置を逆にしてもよい。
そして、上側のフェンスf1のみの開放と、上側と下側のフェンスf1,f2全体を水面付近まで浮上させることによるフェンスF全体の開放とを行い得るようにするために、エアーにより浮力調整可能なフロートが各ガイドワイヤ7,7と上側のフェンスf1とに関連させて複数取り付けられている。
【0014】
図面に示す場合には、下側のフェンスf2の上下両端は各ガイドワイヤ7,7の半分の高さのところと下端に配置されている横方向のワイヤ9,9'に定着されており、前記ガイドワイヤ7,7に対して図面の上下方向には動かない。
そして、下側のフェンスf2が張りめぐらされている各ガイドワイヤ7,7の下半分の中央部分(各ガイドワイヤ7,7全体から見て、下から1/4のところ)と下端とに、図1の場合には、各ガイドワイヤ7,7に跨がるように横方向(図3の左右方向)に長いフロート4,5が、また、図2の場合には、各ガイドワイヤ7,7に跨がるように横方向(図3の左右方向)に長いフロート3',4'がそれぞれ取り付けられている。
【0015】
一方、上側のフェンスf1はそれを開放させ得るようにするために、各ガイドワイヤ7,7に対して上下方向に摺動可能としてある。
上側のフェンスf1を各ガイドワイヤ7,7に対して上下方向に摺動可能とするための方式として、二つの方式が考えられる。その一つは、図1に示すように、上側のフェンスf1の上端に各ガイドワイヤ7,7に跨がるように横方向(図3の左右方向)に長いフロート1を取り付けるとともに、各ガイドワイヤ7,7のところではそれらを貫通させる。
このようにすると、各ガイドワイヤ7,7に対して横方向に長いフロート1を図1の上下方向に摺動させることができる。
【0016】
また、上側のフェンスf1の半分の高さのところと下端には、各ガイドワイヤ7,7に跨がる横方向(図3の左右方向)に長い別のフロート2,3を取り付け、さらに、上側のフェンスf1の下端に取り付けられているフロート3は、各ガイドワイヤ7,7の半分の高さのところに取り付けられている前記ワイヤ9に定着させてある。
そして、上下五つのフロート1〜5内にエアーを保持させたり、いずれかのフロートからエアーを抜いてその中にエアーを保持させないようにする。
【0017】
例えば、上下五つのフロート1〜5のうち最上位のフロート1内にのみエアーが保持され、それ以外のフロート2〜5の中にはエアーが保持されていない状態にすると、上側のフェンスf1の上端に取り付けられている最上位のフロート1には浮力が働き、図1(a) に示すように、各ガイドワイヤ7,7の上端(厳密に言うと、上端に位置する横方向のワイヤ8の直下)に位置し、上側のフェンスf1は張りめぐらされた状態になる。
また、下側のフェンスf2は元々張りめぐらされた状態になっていて、その状態が保たれている。
したがって、上下二段に分割された二枚のフェンスf1,f2はいずれも水中で張りめぐらされた状態にあり、通常時の姿を保っている。
【0018】
エアーが保持されていた最上位のフロート1内のエアーを抜き、それを含む五つのフロート1〜5の全てのフロートの中にエアーが保持されていない状態とすると、図1(b) に示すように、最上位のフロート1は浮力を失って各ガイドワイヤ7,7を滑り落ちる。
したがって、水中で張りめぐらされていた上側のフェンスf1は、各ガイドワイヤ7,7の途中以下(半分の高さより下側)に垂れ下がり、上側のフェンスf1、すなわち、フェンスFの上部のみが開放される。
この場合において、各ガイドワイヤ7,7の半分のところに位置する横方向のワイヤ9がいわゆるストッパーの役目をなし、各ガイドワイヤ7,7を滑り落ちて来た最上位のフロート1がそれより下がることがないようになっている。
【0019】
渇水時などフェンスF全体を水面に浮上させてフェンス全体を開放するには、最上位のフロート1を含む五つのフロート1〜5の全てのフロートの中にエアーを保持させる。
すると、五つのフロート1〜5に全て浮力が働いて図1(c) に示すようにフロート2〜5を水面に、フロート1をワイヤ8の直下である水面近くにまで浮上させることができ、各ガイドワイヤ7,7、横方向のワイヤ9,9'、沈錘ウエイト10を含む上下二枚のフェンスf1,f2を、すなわち、フェンスF全体を開放することができる。
なお、固定式のフロート6の直下にある横方向のワイヤ8は絶えずそこに位置している。
【0020】
上側のフェンスf1を各ガイドワイヤ7,7に対して上下方向に摺動可能とするためのもう一つの方式とは、図2に示すように、上側のフェンスf1の下端に各ガイドワイヤ7,7に跨がるように横方向(図3の左右方向)に長いフロート1'を取り付けるとともに、各ガイドワイヤ7,7のところではそれらを貫通させる。
このようにすると、各ガイドワイヤ7,7に対して横方向に長いフロート1' を図2の上下方向に摺動させることができる。
【0021】
一方、上側のフェンスf1の上端は固定式のフロート6の直下に位置させた横方向のワイヤ8に定着し、さらに、上側のフェンスf1面(図2では、右面)には、上下方向に所定の間隔を置いて(図2では、上下3箇所に)スライドリング11を取り付け、それらを各ガイドワイヤ7,7に係着させる。
また、各ガイドワイヤ7,7の半分の高さのところに取り付けられている前記ワイヤ9に、別のフロート2'を定着させる。
そして、上下四つのフロート1'〜4'内にエアーを保持させたり、いずれかのフロートからエアーを抜いてその中にエアーを保持させないようにする。
【0022】
例えば、上下四つのフロート1'〜4'の全てのフロートの中にエアーが保持されていない状態にすると、上側のフェンスf1の下端に取り付けられている最上位のフロート1'は、図2(a) に示すように、各ガイドワイヤ7,7の途中(厳密に言うと、半分の高さのところに位置する横方向のワイヤ9の直上)に位置し、上側のフェンスf1は張りめぐらされた状態になる。
また、下側のフェンスf2は元々張りめぐらされた状態になっていて、その状態が保たれている。
したがって、上下二段に分割された二枚のフェンスf1,f2はいずれも水中で張りめぐらされた状態にあり、通常時の姿を保っている。
【0023】
上下四つのフロート1'〜4'のうち最上位のフロート1'内にのみエアーが保持され、他の三つのフロート2'〜4'のフロートの中にはエアーが保持されていない状態とすると、図2(b) に示すように、最上位のフロート1'に浮力が働いて各ガイドワイヤ7,7に沿って上向きに摺動する。
したがって、水中で張りめぐらされていた上側のフェンスf1は、各ガイドワイヤ7,7の上端(厳密に言うと、上端に位置している横方向のワイヤ8の直下)までめくり上げられ、フェンスFの上部のみが開放される。
この場合において、各ガイドワイヤ7,7の上端に位置する横方向のワイヤ8がいわゆるストッパーの役目をなし、各ガイドワイヤ7,7に沿って上向きに摺動して来た最上位のフロート1'がそれより上に行くことがない。
【0024】
渇水時などフェンスF全体を水面に浮上させてフェンス全体を開放するには、最上位のフロート1'を含む四つのフロート1'〜4'の全てのフロートの中にエアーを保持させる。
すると、四つのフロート1'〜4'に全て浮力が働いて図2(c) に示すようにフロート2'、3'、4'を水面に、また、フロート1'をワイヤ8の直下である水面近くまで浮上させることができ、各ガイドワイヤ7,7、横方向のワイヤ9,9'、沈錘ウエイト10を含む上下二枚のフェンスf1,f2を、すなわち、フェンスF全体を開放することができる。この場合において、下側のフェンスf2のうちの一部は、図2(c) に示すように、フロート2'と横方向のワイヤ9との間に位置し、残りの大半の部分は各フロート2',3',4'間で彎曲した状態で水面下に垂れ下がる。
なお、固定式のフロート6の直下にある横方向のワイヤ8は絶えずそこに位置している。
【0025】
以上、上側のフェンスf1のみを、すなわち、フェンスFの上部のみを開放させる方式と、上下二枚のフェンスf1,f2を、すなわち、フェンスF全体を開放させるための二つの方式について説明したが、いずれの場合とも、エアーにより複数あるフロートの浮力を調整することによって行い得るものである。
そして、渇水時などフェンスF全体を開放するに当って、図1に示す方式では、図2に示す場合に比べてフェンスF全体を浮上させることができるのみならず、簡単な構造であるため誤動作が少ないという利点を有している。
一方、図2に示す方式では、通常時、フロート2',3',4'にはエアーが保持されていない状態であるため、それらが破損してもフェンスとしての機能は維持できるという利点を有している。
【0026】
上下五つのフロート1〜5及び上下四つのフロート1'〜4'内にエアーを保持させたり、いずれかのフロートからエアーを抜いてその中にエアーを保持させないようにするには、例えば、図3に示すように、陸上に設置したコンプレッサーCと各フロート1〜5あるいは各フロート1'〜4'とを給気ホース12で接続し、各配管に調整バルブA、開放バルブB、逆止弁Dをそれぞれ取り付けておくとよい。
なお、図3では、コンプレッサーCと五つのフロート1〜5とを接続する配管のうち最上位の配管のみに調整バルブA、開放バルブB、逆止弁Dを取り付けた状態が図示されているが、他の四本の配管にも勿論それらが取り付られている(ただし、図示は省略)。
【0027】
フロートにエアーを送る場合には、開放バルブBを閉じ、調整バルブAを開けることによって行うことができる。逆に、フロートからエアーを抜く場合には、調整バルブAを閉じ、開放バルブBを開けることによって行うことができる。この場合において、エアーはフロートに作用する水圧によって放出される。
調整バルブAに電動弁、開放バルブBに電磁弁を用い、制御盤等によって自動もしくは手動によって制御できるようにしておくのがよい。
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、フェンスの上部の開閉、すなわち、少なくとも上下二段に分割されているフェンスのうち上側のフェンスの開閉をスムーズかつ誤動作なく行うことができるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による水質改善用流入調整フェンスの通常時の設置状態と、上部開放とフェンス全体の開放とを行うための一例とを示す側面図で、(a) は通常時の設置状態を、(b) はフェンスの上部のみを開放した場合の状態を、(c) はフェンス全体を開放した場合の状態をそれぞれ示す。
【図2】本発明による水質改善用流入調整フェンスの通常時の設置状態と、上部開放とフェンス全体の開放とを行うための別の一例とを示す側面図で、(a) は通常時の設置状態を、(b) はフェンスの上部のみを開放した場合の状態を、(c) はフェンス全体を開放した場合の状態をそれぞれ示す。
【図3】図1(a) の状態に設置されている水質改善用流入調整フェンスを正面側から見た場合の概略図である。
【符号の説明】
1〜5…フロート、1'〜4'…フロート、6…固定式のフロート、7…ガイドワイヤ、F…フェンス、f1,f2…フェンス、C…コンプレッサー。
Claims (1)
- 水面W.L に浮かべる固定式のフロート6から垂下させ得るフェンスFを、少なくとも上下二段に分割し、分割されている上側のフェンス f 1 側と下側のフェンス f 2 側とに、エアーにより浮力調整可能なフロートをそれぞれ独立して取り付けるとともに、上側のフェンス f 1 の上端に位置するフロートを、あるいは、上側のフェンス f 1 の下端に位置するフロートを、固定式のフロート6から垂下させたガイドワイヤ7,7に摺動可能に取り付けたことを特徴とする水質改善用流入調整フェンス。
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