JP3630420B2 - 流体寝具 - Google Patents
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Description
本発明は就寝時に頭部または全身を快適に支える寝具に関するものである。
背景技術
従来、流体を利用した寝具として、内部を空気で満たした寝具、所謂エアーマットやエアー枕、内部を水で満たした寝具、所謂ウォーターベッドや水枕が有った。
従来のエアーマットやエアー枕は、主に空気を封入した袋の張力で人体を支える。然るに、袋体の張力によって生じる人体を支える圧力は、人体の各部の形状によって場所毎に著しく不均一であり、袋体と人体の接し方によっても大きく変わるため、寝具が人体を常に均一な圧力で支えることができず、快適な睡眠を得ることができなかった。また、ウォーターベッドや水枕については、主に水の浮力を利用し、人体を常に均一に支える方法が考案されている。然るに、従来の枠体を持たないウォーターベッドや水枕は、寝具としての形を維持するために水を封入する袋体の内部空間の最大体積にほぼ等しい量の水を入れなければならず、人体を支える力のうち、袋に働く張力の占める割合が大きく、快適な睡眠を得ることができなかった。このような課題から、袋体の内部に封入する流体の体積を減らしながら寝具として形を維持するための技術として、袋体の内部に寝具として所望される形に形成された連続気泡の弾性体をいれ、連続体の表面と袋体の内側の面をすべて接着して寝具としての形を維持するものがあった。しかし、この場合には、袋体が弾性体と面で接着されている為に、自在に変形はできず、人体を支える際には袋体の張力による割合が高くなってしまう欠点があった。また、人体を支える力のうち、張力の占める割合を減らすための技術として、水を封入する袋の人体に触れる部分には張力が発生しないよう袋に適度なたるみを持たせ、かつ寝具としての形が維持できるよう、袋の一部を固体としたり、袋の周囲を固体で囲んだりするものがあった。しかし、この場合には、人体を支える力のほとんどが浮力となるものの、固体部分が人体に触れないような大きなベッドの用途でしか採用できず、さらに、十分な浮力を得るためにはベッドの内部にかなりの深さの液体を封入する必要があるため、ベッドの重量が大きくなり、特殊な基準で設計された建物内にしか設置できない問題があった。
このように、従来の寝具には、浮力によって一定の圧力で頭部や身体全体を快適に支え、且つ、軽量小型で安価なものは存在しなかった。
発明の開示
本発明の上記の事情に鑑み為されたもので、その解決しようとする課題は、流体の浮力によって頭部や全身を均一の圧力で快適に支え、且つ、軽量小型で安価な寝具を実現することにある。
本発明では、液体を封入するための袋体に、例えば連続気泡のスポンジのような複数の連続的に孔のあいた弾性体を入れておき、袋体の内面のうち寝具の側面に当たる部分と弾性体とを接合することによって袋体の内部に封入する水の量が袋の内部に形成される空間の体積と比べて小さい場合にも寝具としての形を維持することを可能とした。これにより、寝具の人体を支える部分には袋体に適度なたるみを持たせることができ、人体を支える力のうち袋体の張力による割合を十分に小さくすることができる。また、袋体内部の弾性体については袋を挟んで人体が触れるとその部分には弾性体の弾性力が働き、場合によっては、人体が弾性体に触れていない部分とで人体に生じる圧力分布に大きな差異が出てしまう問題があるが、本発明においては、無数の連続的に孔のあいた弾性体を用いることによってこの問題を解決している。すなわち、無数の連続的にあいた孔は液体で満たされているので、人体から圧力を受けてへこんだ部分も液体の浮力を発生させることができ、その上、へこんだ部分が元に戻ろうとする弾性力は液体の粘性によって見かけ上弱められ、寝具の側面方向には形を維持するために必要な弾性力を得ながら、上下方向の弾性力は打ち消し、人体を浮力で均一に支えることを可能にしている。さらに、人体を主に浮力で支えると十分な浮力を得るために必要な液体の量が増し、重量が大きくなる問題は、内部を液体と弾性体とで満たした袋体を薄く形成し、その下方に内部を気体と弾性体とで満たした袋を厚く形成して配置することによって解決している。すなわち、袋体に封入した気体の圧力を適当に調整し、2つの袋体の接する面には適度なたるみを持たせておくと、液体の袋体と気体の袋体とはこれらにかかる荷重の分布に応じて一体となって凹む。液体と気体とは共に体積を一定に保つように働くので、荷重が加わらない部分は凸部となり、凹部と凸部の差が水深となって水深に比例した水の浮力が発生する。このことを利用し、従来の液体を使用した寝具と比べ、必要な液体の量を大幅に減らし軽量な寝具を実現した。
【図面の簡単な説明】
第1図は流体寝具の構造を示した説明図である。
第2図は流体寝具の実施方法を示した説明図である。(実施例1)
第3図は気体の通路の例を示した説明図である。
第4図は流体寝具が人体を支える様子を示した説明図である。
第5図は流体寝具の実施方法を示した説明図である。(実施例2)
第6図は流体寝具の実施方法を示した説明図である。(実施例3)
第7図は流体寝具の実施方法を示した説明図である。(実施例4)
発明を実施するための最良の形態
図2は本発明の実施の一形態である枕を示している。縦300mm、横500mm、高さ110mmの直方体状の袋体8を塩化ビニール製シートで形成している。底面から60mmのところでは塩化ビニール製のシートの仕切り9で直方体の内部が上部と下部に仕切られ、上部には水10、下部には空気11が封入されている。直方体状の袋体下部には空気を注入または排出するための弁12aが設けられ、上部には水を注入または排出するための弁12bが設けられている。また、仕切り9は水平面に投影した形状では直方体を水平面に投影した直方体と同じ形状であるが、封入した水、空気が適度に自由に形状を変えられるよう、たるみを持たせてあり、仕切り9の面積は約1664平方cm程度ある。水は、常温で深さ約3cmに相当する、約4500立方cm、空気は常温1気圧で約9000立方cm程度封入されている。袋体8の上部の空間には、外形が縦30mm、横50mm、高さ30mmの直方体の形状をした連続気泡の弾性体4が配置され、袋体の内側の面と弾性体の側面が接合されている。袋体8の下部の空間には、外形が縦300mm、横500mm、高さ60mmの直方体の形状をした連続気泡の弾性体1が配置され、袋体8の内側の面と弾性体の側面が接合されている。弾性体1は、枕に荷重がかかって気体が一部に偏った場合にも枕としての形状を維持し、また、荷重がなくなったときには速やかにもとの形状に復帰する役割がある。さらに、袋体は通常可撓性材料で形成されるが、このような物質の分子間の距離は気体の分子の大きさに比べて大きく、長時間のうちに内部の気体が外部に抜けてしまうことがあるが、このような場合にも弾性体1が袋体を広げる方向に弾性力をもつため、外部から空気を取りこむ働きもする。また、この弾性体1には表面及び内部に複数の通路7を形成して弾性体1の内部を気体が速やかに移動できるようにした。この通路7は、枕に荷重がかかったときにもつぶれにくいよう、弾性体1の下方にも弾性体1に比べて弾性率の大きな弾性体13で形成して、袋体8下方の空間内部を気体が速やかに移動できるようにした。この通路について図3にいくつかの例を示す。
図3aは弾性体の表面に通路7を形成し、この通路に沿って気体を移動しやすくしやすくしたものを示している。図3bは弾性体内部に通路7を形成した例を、弾性体のある断面でみた図で示している。内部に形成すれば弾性体の表面から離れた位置にある気体も移動しやすくなる効果がある。図3cは、弾性体1よりも弾性率の大きな弾性体13を用いて弾性体1の下部に通路7を形成した例を示している。弾性体1より、やや硬めの材料を用いて通路を形成することで、枕に荷重がかかった場合に通路が圧迫されて変形する程度を小さくすることができる。この通路を弾性体1の内部に形成された通路と連絡すれば、より気体を移動しやすくさせることができる。また、図3の例の通路を弾性体の各部に複合的に形成してもよい。
このような構造としたことによって、枕はおよそ縦300mm、横500mm、高さ90mmの直方体の形を維持しながら人の頭部に触れる面については適度なたるみを持たせることができたので、人の頭部が載せられる際に人の頭部に生じる圧力のうち、袋体の表面の張力によるものを、水を満杯に封入した所謂水枕に比べて十分小さく抑えられている。直方体の上部の空間にある弾性体については、人の頭部が乗せられた直後は弾性力を人の頭部に及ぼすが、無数にあいている孔にある水が常に人の頭部を支えるため、弾性力の小さな弾性体としておけば影響は小さくなる。さらに、一度水の中で縮んだ弾性体は、水の粘性のため、伸びるときには水から受ける摩擦力に逆らって伸びなければならないが、頭部が載せられる際、縮んで静止している状態での弾性体の弾性力が、最大静止摩擦力と同程度となっているので、頭部に生じる圧力のうち、弾性体の弾性力によるものを水の浮力による圧力に比べて十分小さく抑えられている。
本実施例の枕に人の頭部が載せられたときの様子を、図4を用いて説明する。図4は人の頭部に見たてた、縦100mm、横100mm、高さ100mmの立方体14が本発明の枕に載せられたときの状態を示した断面図である。直方体上部の水深はおよそ30mmとなっており、たとえば、この立方体に相当する体積で、質量6kg程度の頭部があった場合、この頭部を完全に浮力のみで支えるには60mm程度の水深が必要となる。この実施例では、液体を封入した袋体の上部には十分なたるみがあるため、立方体は袋体の張力をほとんど受けずに一定の深さまで沈むことができる。この過程で水は周囲に押しのけられ、また、水中の弾性体は下方に押されるため、立方体の底面15は立方体のない時の水の底面よりも下がり、立方体の底面15は、立方体のない時の水の底面より2cm低い位置まで沈んだ。また立方体の底面で水中の弾性体が下方に押されることによってその下方の気体も周囲に移動する。この程度の荷重では、気体の体積はそれほど変化しない為、移動した周辺部分では気体を封入した袋体は膨らみ、この上部にある水を押し上げる。その結果、この部分の水位は上がり、頂点16に示すように最も高いところでは荷重のないときに比べおよそ1cm高い位置まであがった。このようにして、実際の水深は3cmであるにもかかわらず、立方体には実質的には6cmの深さのある水中に入れたのと同じ浮力を作用させることができた。
図5は本発明の別の実施例である。縦300mm、横500mm、高さ70mmの直方体状の袋体6が塩化ビニール製シートで形成され、袋体6には水を注入、排出するための弁12bが取り付けられ、内部におよそ75000立方cmの水10が注入されている。また、この袋体の内部には縦300mm、横500mm、高さ50mmの連続気泡を有する弾性体4を有し、弾性体4の側面はビニールシートの内側の面と接着されている。袋体6の下部には縦300mm、横500mm高さ50mmの連続気泡を有する弾性体1が接着されて配置されている。先の実施例と同様に、縦100mm、横100mm、高さ100mm、質量およそ6kgの立方体を枕に載せると、水面が立方体を載せない状態に比べ約3mm上昇し、立方体の底面は、立方体を載せない状態の水の底面より約4mm低い位置まで沈んだ。この場合は実質的に約5.7cmの深さのある水中にいれたときと同じ浮力を立方体に作用させることができた。
このような構造とすると先の実施例と比べて、空気を封入する袋体が不要となり、構造が簡単になる。空気漏れによる性能の劣化の心配もない。ただし、枕に荷重がかかった場合、荷重のかかった部分については水中の弾性体が下方に押され、それに伴い、袋体の下方に配置されている弾性体もその部分が下方に押されるが、その部分にあった空気が周囲に逃げても、枕の荷重のかからない部分を押し上げる効果は得られないため、先の実施例と比べ、同じ浮力を得るためには最初に封入する水の深さを多く取る必要があり、やや枕の重量が重くなるという不都合がある。
図6には、上記実施例の袋体を互いに連結させて1つの寝具を形成した例を示す。図6の17は上記実施例の袋体である。図6aは、塩化ビニールで形成した袋体上部を塩化ビニール製の接合部18で接合した例を側面から示した図である。袋体上部を形成する塩化ビニール製が複数の袋体で一体となっていてもよい。袋体17は個々には小さな寸法で作られ、袋体の内部の流体はそれぞれの袋体で独立しているため、何らかの理由で袋体が破れるなどしても孔のあいた袋体の流体のみが外に流出するので、このような事故に対しても被害を小さく抑えることができる。図6bは袋体の側面に着脱可能な接合部、たとえばマジックテープ19を備え、各々の袋体が着脱自在に連結されている例を側面から示した図である。各々の袋体を着脱自在にすれば、持ち運ぶ際にかさばらずに済み、また、使用する場所、使用する人物、使用する用途などに合わせて最も好適に全体の形状を組みかえることができる。
図7は上記実施例の袋体17を枠体20で囲んだ例を示す。枠体で囲めば袋体の形状がより維持しやすくなり、また複数の袋体を個々には小さな寸法に形成し、それぞれ互いに連結することなく枠体の内側に配置することも可能となる。図7aは側面のみを囲む枠体を有する例の断面図を示す。図7bは側面と底面を有し、これらが連続して形成されている枠体を有する例の断面図を示す。この場合は、何らかの理由で袋体が破れるなどして袋体内部の液体が流出しても液体は枠体の内側にとどまり、この寝具が設置された部屋などに液体が広がることを防止できる。
上記実施例では、主に枕を例に説明したが、本発明は枕に限定されず、ベッド、椅子、ソファ、クッションなど人体を支える様々な用途に応用できる。
産業上の利用の可能性
以上により、流体を使用してかつ、主に流体の浮力を利用して人体を支えることを可能にし、快適な睡眠が得られる寝具を実現した。また、人体を支えるのに必要な流体を激減させたため、設置場所を選ばない軽量な寝具とすることができる。さらに流体を固体で囲まない構造を可能としたため、枕など小さな寝具でも、同様の効果が実現可能となった。また、ベッドのような大型の場合でも軽量、小型で安価な寝具を実現できた。
Claims (4)
- 内部に複数の連続する孔を持つ弾性体1と気体2が封入され上部にたるみを持つ気密性の袋体3と、該袋体3の上部に配置され内部に複数の連続する孔を持つ弾性体4と液体5が封入され上部と下部にたるみを持つ水密性の袋体6とから成る寝具。
- 複数の連続する孔を持つ弾性体1と、該弾性体1の上部に配置され内部に複数の連続する孔を持つ弾性体4と液体5が封入され上部と下部にたるみを持つ水密性の袋体6とから成る寝具。
- 前記弾性体1およびまたは前記弾性体4の表面または内部に互いに独立あるいは連続の通路7を有することを特徴とする請求項1または2記載の寝具。
- 個々には小さな寸法に作られた請求項1〜3記載の寝具が複数個連結されて1個の寝具を形成することを特徴とする寝具。
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