JP3628427B2 - 三軸補強土工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、自然土の盛土や人工の路盤材等を補強改質してその崩落を防止する補強土工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来盛土や路盤の補強土構造として、テールアルメ構造やジオテキスタイル構造が知られている。テールアルメ構造では金属ストリップ(帯板)を土中に埋設し、またジオテキスタイル構造では繊維質のネットを土中に埋設して、段差面に現れるそれらの先端に土止め板や土嚢などを連結したものである。テールアルメ構造のストリップやジオテキスタイル構造のネットは、土との摩擦によって土中に保持され、抗張力部材であるこれらの部材の張力によって、土止め板や土嚢に作用する土圧に抵抗し、段差の崩落を防止しているのである。
【0003】
これらの補強土構造において、補強主体となっているストリップやネットは、一軸方向(一次元)または二軸方向(二次元)に延在して土中に埋め込まれており、材質としては鋼材や繊維強化プラスチックなどの抗張力の大きな材料が用いられている。土中に埋設されたこれらの補強主体は、盛土や路盤材の剪断破壊に抵抗し、同時にその抗張力によって段差土の崩落を防止しているのである。盛土や路盤材の崩落は、斜めの剪断面に沿って生じるので、ストリップやネットなどの補強材が水平に埋設されていれば、これらの補強材によって斜めの剪断破壊が防止できる。
【0004】
一方、従来の補強土構造では、補強主体が水平面内での一軸方向(テールアルメ構造の場合)か、または水平面内での二軸方向(ジオテキスタイル構造の場合)にのみ延在させた構造であり、鉛直方向に延びる補強部材は設けられていない。重力のみが作用する静的な状態では、水平方向のずれを生じさせるような大きな外力は働かず、また水平面内の剪断に対しては、土の自重をW、土の摩擦角をφとするときに、W×tanφなる摩擦抵抗力が働くので、一般的な条件のもとでは、水平面内の剪断による盛土や路盤材の破壊というものは起こらない。
【0005】
また水平方向に補強主体を埋設した補強土構造では、補強主体が土との摩擦力によって保持されており、従って補強主体の近傍では、土のずれが補強主体との摩擦によっても阻止されるため、補強主体の近傍における土の水平方向の剪断移動も防止されることとなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来の補強土構造は、重力のみが作用する静的状態においては安定である。しかし地震で大きな水平力が加わった場合や、自動車の走行による振動が長期に亘って作用した場合など、水平方向のずれが生ずるおそれがある。そして従来の補強土構造において、盛土や路盤材に水平方向のずれが生ずると、段差土(スキン)の崩落を防止する機能が一挙に失われてしまう。すなわち、段差面に逆勾配を生じ、重力による段差土の落下を防止することができなくなるのである。
【0007】
特に従来の補強土構造は、展圧した盛土の上に高さ中間部分にストリップやネットを埋め込んだ所定高さの盛土を盛ってその上を展圧する、という作業を繰り返して構築されるのであるが、上下の補強主体の配置面の中間位置となる展圧面は、補強作用が最も低い位置となるうえ、振動締め固め等を行ったときには、展圧面に細かい粒子の土が集まって土の摩擦角φを低下させるため、剪断に対する土自体の抵抗力W×tanφも最も低くなり、補強主体を配置した上下の層の中間位置で、水平方向の剪断移動が起こる危険性が最も高くなる。
【0008】
この発明は、このような従来の補強土構造の問題点に鑑みてなされたもので、地震により大きな水平力が加わったときや、長期に亘って振動が継続的に加わった場合等においても、盛土や路盤材の水平方向剪断移動による崩落の危険のないより安定した補強土構造を得るための三軸補強土工法を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明の三軸補強土工法は、盛土ないし路盤材を展圧し、その展圧面に、枠部材11とこの枠部材の面に直交する方向に突出する複数の杭部材12とを一体に備えたブロックの当該枠部材を、杭部材を当該展圧面打ち込んだ状態で展開し、その上に盛土を盛ってさらに展圧する作業を繰り返して、上層のブロックの杭部材の下端が下層のブロックの上端より下に打ち込まれた状態で、土中に平面的に展開された多数の枠部材11で二次元補強層23の複数層を形成することを特徴とするものである。
【0010】
上記工法に用いるブロックは、枠状に一体形成した抗張力部材からなる枠部材11にこの枠部材の面に直交する方向に突出する複数の杭部材12を一体に成形してなるものである。この場合の杭部材12は、枠部材11の面の両側に突出させて設けることができる。
【0011】
【作用】
この発明の工法で得られる補強土構造においては、二次元補強層23と直交する方向に突出する杭部材12が、盛土や路盤材の水平方向の剪断移動に抵抗する。杭部材12は、各一体となったものが二次元補強層23の上下に突出しているので、二次元補強層23自体の移動にも抵抗する。またこの杭部材12は、その上層のものの下端が下層のものの上端より下まで打ち込まれているので、盛土や路盤材を二次元補強層23と平行に切ったとき、どの切断位置においても杭部材12が存在することとなり、剪断滑り面が生ずる余地がない。
【0012】
また圧密等によって盛土や路盤材全体が沈降したときでも、それらとともに沈降しかつ当初の補強作用も失われることがない。またこの発明の構造によれば、土中での枠部材11の移動が杭部材12によって阻止されるので、枠部材11の配置深さDを短くしても、土中の定位置に確実に保持され、従って充分な強度の補強構造を得るために地山を深く削らなければならないということも起こらない。
【0013】
この発明の補強土工法によれば、盛土や路盤材を展圧して、その展圧面に杭部材12を打ち込んだ状態で、上記構造のブロックの枠部材11を展開し、その上に盛土を盛ってさらに展圧するという作業を繰り返すことにより、多層の二次元補強層23を有する補強土構造を容易に構築することができる。
【0014】
また枠部材11と一体の杭部材12が枠部材の両面に突出している構造のブロック1a、1bは、杭部材が片側にのみ突出しているブロックに比べて、二次元補強層23の上下間隔を広くすることができ、また上層のブロックの杭部材を打ち込んだときに、下層のブロックの枠部材と干渉して杭部材の打込みが困難になる事態も避けることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1はこの発明で用いるブロックの第1実施例を、図2は第2実施例を示したものである。これらの実施例のブロック1(1a、1b)は、枠部材11と杭部材12とを一体に設けたもので、杭部材12が枠部材11の上下両面に突出しているものである。このようなブロック1a、1bの枠部材11を水平にして補強面に配置すれば、必然的に枠部材11で形成される二次元補強層の上下に杭部材12が突出する補強構造となる。
【0016】
枠部材11は正方形や三角形等が好ましいが、それらに限定されるものではない。枠部材11や杭部材12は、鉄筋またはガラス繊維ないし炭素繊維で補強されたコンクリートまたはプラスチック成形品であり、全体を一体に成形したものである。図3は枠部材11の断面の一例を示したもので、上下方向に長い菱形断面で、その断面の上下に鉄筋13を配したコンクリートブロック製である。この構造により、枠部材11に上下方向の曲げ強度を付与することができる。
【0017】
図1、2に示す構造のブロックは、枠部材11が正方形で、図1のものでは、枠部材11の四隅部分及び各辺の中央部分に交互に反対向きに延びる杭部材12が突出している。図2に示すものでは、正方形の枠部材11の四隅に上下両側に突出する杭部材12が一体に形成されている。杭部材12の先端は尖っている。このようなブロックを一体に成形することが困難な場合には(コンクリートブロック製とするときは通常困難である)、図4に示すように枠部材11の断面中央で分割した形状で上下のものを一体成形し、上下の枠部材相互をボルト、ナット等で締結して一体化する。
【0018】
施工に際しては、図5に示すように、盛土施工開始面20の上に一層分の盛土21を撒き出し、その上面を展圧する。そしてその展圧面22に下方に延びる杭部材12を打ち込んで、枠部材11を展開していく。その展開状態を図6に断面で、図7に平面で示す。
【0019】
ブロックを展開する施工手順としては、まず配置されるブロックを一つおきに、その相互の間隔がブロックの差し渡し寸法より短い間隔となるようにして、展圧面22に枠部材11の下縁が当接するまで杭部材12を圧入する。次にそのようにして打ち込んだブロック1a、1bの間に、下側の杭部材12が先に配置した両隣のブロックの枠部材11の内側に差し込まれるようにして、展圧面22に杭部材12を圧入する。このようにして展圧面22上には、枠部材11相互が杭部材12の根元部分を介して平面的に連結された状態で、ブロック1a、1b・・が展開される。各ブロック1a、1bは、たとえばクレーンやパワーショベルのブームの先端に取り付けた振動杭打機により一列ずつ圧入して配置していくことにより、圧入作業に支障が生ずることがない。必要があれば、圧入機の押圧面に枠部材11の上方に突出する杭部材12の当接を避けるための切欠や透孔を設けておく。
【0020】
図8に示すように盛土を盛った部分の地山が深いときには、ブロック1は段差面30から所要の一定の深さまで配置すれば充分である。このブロックの配置深さDは、杭部材12がブロックの滑り移動に対して抵抗するため、テールアルメ構造におけるストリップの延在深さより短くすることができる。
【0021】
またブロック1の展開面は必ずしも平面である必要はなく、図9に示すように斜面に沿ってブロックを展開していくことが可能である。
【0022】
このようにして1層目の盛土の展開面に展開されたブロックの枠部材11によって1層目の二次元補強層23を形成したら、上方に突出する杭部材12が隠れる高さまで盛土を撒き出し、その上面を展圧する。そして前述したと同様にして、その2層目の展圧面にブロックの杭部材を圧入して枠部材を展圧面に沿って展開して、2層目の二次元補強層を形成する。段差面の土の崩落を防止する土止め板2は、展圧面にブロックを打ち込んだ後、その上方に突出する杭部材に繋着して装着すればよい。
【0023】
以上のようにして盛土の撒き出しと盛土の上面の展圧と展圧面へのブロックの配置及び打込みと土止め板の装着とを順次行っていくことにより、図11に示すような補強土構造が得られる。得られた構造は、盛土が3軸方向に補強され、地震の際の大きな水平力や継続的に長期に亘って作用する振動によっても崩落することのない、強固な補強土構造となるとともに、段差面30も急勾配にすることが可能となり、土地の有効活用が図れて経済的である。
【0024】
図12はこの発明で用いるブロックの第4実施例を示したもので、この第2実施例のブロック1cは、正方形の枠部材11の四隅からその一方側のみに突出する杭部材12を一体に設けた構造である。この構造のブロックを用いる場合には、図13に示すように、下層の展圧面に展開した枠部材の枠の間に上層の展圧面のブロックの杭部材12の先端が挿入されるように、各層の盛土の厚さを決める。盛土の段差面に一定の勾配を設けてやれば、上層のブロックは下層のブロックから一定距離だけ後退した位置に配置されるから、上層のブロックの杭部材と下層のブロックの枠部材との位置関係をほぼ一定にして、ブロックを多層に配置した補強土構造を構築することができる。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したこの発明の工法によれば、補強対象となる土中に、斜めの剪断面に対してはもちろん水平方向の剪断面に対しても、剪断抵抗の弱い面がどこにも生じず、水平方向の強い力や継続的な振動が長期に亘って作用した場合にも、崩落することのない安定な補強土を形成することができる。また盛土の展圧面への杭部材の圧入により、土の締め固め効果が増し、盛土の圧縮沈下も小さく抑えられ、またたとえ圧縮沈下が起こっても、補強作用が低下することのない構造を得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】ブロックの第1実施例の斜視図
【図2】ブロックの第2実施例の斜視図
【図3】枠部材の断面図
【図4】ブロックの第3実施例を示す斜視図
【図5】展圧した盛土を示す断面図
【図6】ブロックの配置を示す断面図
【図7】ブロックの配置を示す平面図
【図8】ブロックの配置を示す第2実施例の断面図
【図9】ブロックの配置を示す第3実施例の断面図
【図10】補強層の上の盛土を示す断面図
【図11】補強土構造の完成した実施例を示した断面図
【図12】ブロックの第4実施例を示す斜視図
【図13】第4実施例のブロックで構築した補強土構造の断面図
【符号の説明】
11 枠部材
12 杭部材
23 二次元補強層
Claims (1)
- 盛土ないし路盤材を展圧し、その展圧面に、枠部材 (11) とこの枠部材の面に直交する方向に突出する複数の杭部材 (12) とを一体に備えたブロックの当該枠部材を、杭部材を当該展圧面打ち込んだ状態で展開し、その上に盛土を盛ってさらに展圧する作業を繰り返して、上層のブロックの杭部材の下端が下層のブロックの上端より下に打ち込まれた状態で、土中に平面的に展開された多数の枠部材 (11) で二次元補強層 (23) の複数層を形成することを特徴とする、三軸補強土工法。
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