JP3628193B2 - 研磨装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体ウェーハなどの表面を研磨する研磨装置に係わり、特に半導体ウェーハを平坦に研磨できる研磨装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体ウェーハを製造するには、多結晶シリコンから例えばチョクラルスキー法により単結晶の半導体インゴットを作り、このインゴットをマルチワイヤソーなどにより所定の厚さにスライシングし、半導体ウェーハを製造する。
【0003】
この半導体ウェーハの表面を平坦にするため、研磨装置により研磨が行われる。
【0004】
従来の研磨装置としては、特開昭63−52967号公報に記載されているように、キャリア本体の下方に、下方が開放された収納凹部を形成し、この収納凹部の下部に下端開口縁を閉塞する弾性膜を設け、収納凹部の弾性膜により仕切られて形成された加圧室に流体を充填すると共に、扁平円板形状を弾性膜に当接して圧力伝達媒体(マウントプレート)を設けて、この圧力伝達媒体によりワークを均一押圧するようにした研磨装置がある。
【0005】
また、図5に示すように、キャリア31は下方が開放された収納凹部32を有するキャリア本体33と、収納凹部32に加圧室34が形成されるように設けられた弾性膜35と、この弾性膜35を挟んで加圧室34と反対側に設けられた扁平円板形状の圧力伝達媒体36と、この圧力伝達媒体36の周囲に設けられワークWを保持するリテーナ37と、このリテーナ37を囲繞するスキージ40とを有し、この圧力伝達媒体36によりバックフィルム39を介してワークWを均一に定盤38に設けられた研磨布Pに押圧するようにした研磨装置がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
これら従来の研磨装置は、いずれも扁平円板形状の圧力伝達媒体によりワークを均一に押圧するものであるため、例えば図5における従来例では、研磨中のワークWの面内部分の研磨布Pに対する相対速度ベクトルを時間積分すると、その値はワークWの中心で最小値をとり、外周部分で最大値をとることになり、いずれの従来の研磨装置を用いて研磨したワークもその加工後の形状が中心部分が最も厚く、外周部分にいくに従って肉薄になるコンベックス形状になる。
【0007】
このコンベックス形状になる原因は、ワークの研磨加工レートが研磨布との相対速度、圧力、温度などの時間関数であり、それぞれが大きくなると研磨加工レートが大きくなるためである。すなわち、圧力分布が均一な場合には、各部分の相対速度の大小に応じて研磨加工レートが変化することになるからである。
【0008】
そのため、従来、片面研磨を行うとワークの面形状がコンベックス形状になってしまい、実質平坦度が低下していた。
【0009】
本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、研磨による面粗さが向上できると共に、面形状をコンベックス形状にさせずに平坦度を維持できる研磨装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためになされた本願請求項1の発明は、研磨布が設けられた定盤と、前記研磨布に押圧されて研磨されるワークが取付けられ回転軸により回転されるキャリアとを有する研磨装置において、キャリアは下方が開放された収納凹部を有するキャリア本体と、この収納凹部に加圧室が形成されるように設けられた弾性膜と、この弾性膜を挟んで加圧室と反対側に設けられた圧力伝達媒体と、この圧力伝達媒体の周囲に設けられワークを保持するリテーナとを有し、前記圧力伝達媒体は前記弾性膜により押圧される頂部が球面形状または平面形状に截頭され、さらに前記頂部から断面積が順次拡大する末広形状をなし、かつ底面部がワーク押圧のために平面形状をなすことを特徴とする研磨装置であることを要旨としている。
【0011】
本願請求項2の発明では、前記圧力伝達媒体は底面部が平面形状をなす扁平円柱部を有する円錐体であることを特徴とする請求項1に記載の研磨装置であることを要旨としている。
【0013】
本願請求項3の発明では、前記圧力伝達媒体の円錐体は扁平であり、その頂部が球面形状または平面形状に截頭されていることを特徴とする請求項2に記載の研磨装置であることを要旨としている。
【0014】
本願請求項4の発明では、前記圧力伝達媒体はアルミナ系ファインセラミクスであることを特徴とする請求項1ないし3項のいずれか1項に記載の研磨装置であることを要旨としている。
【0015】
本願請求項5の発明では、前記圧力伝達媒体は厚さが3〜5mmの薄肉体の積層構造であることを特徴とする請求項1ないし4項のいずれか1項に記載の研磨装置であることを要旨としている。
【0016】
本願請求項6の発明では、前記薄肉体はアルミナ系ファインセラミクスの成形体であることを特徴とする請求項5に記載の研磨装置であることを要旨としている。
【0017】
本願請求項7の発明では、前記圧力伝達媒体は薄肉体を接着剤で接着して積層構造にしたことを特徴とする請求項5または6項に記載の研磨装置であることを要旨としている。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係わる研磨装置の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0019】
本発明に係わる研磨装置1は、図2に示すように、研磨布Pが設けられ駆動回転される定盤2と、研磨布Pに押圧し研磨されるワークWが取付けられ回転軸3により回転されるキャリア4と、スラリSを供給するスラリパイプ5を有している。
【0020】
図1に示すように、キャリア4は扁平円板形状で、下方が開放された収納凹部6を有するキャリア本体7と、収納凹部6に加圧室8が形成されるように設けられた弾性膜9と、この弾性膜9を挟んで加圧室8と反対側に設けられた圧力伝達媒体10と、この圧力伝達媒体10の周囲に設けられワークWを保持するリテーナ11と、圧力伝達媒体10とリテーナ11を囲繞するように設けられ弾性体から成るリング形状のスキージ12と、圧力伝達媒体10とワークW間に介在するバックフィルム13とを有している。
【0021】
弾性膜9は例えば薄板円板形状のステンレスファイバー強化シリコンゴム製であり、リテーナ11はPTFE(Polytetrafluoroethylene )製であり、円弧面を有する短冊形状であり、複数本リング形状に配設されている。
【0022】
図3に示すように、圧力伝達媒体10は断面積が順次拡大する末広形状をなしかつ底面部10dはワークWを押圧するために平面形状をなしており、例えばシリコンウェーハWが直径300mm用では、直径D300.8mm、頂部10aが球面形状をなし、中心部厚さT25mm、外周端部厚さt10mmを有し、下部に扁平の円柱部10bを有する截頭円錐体10c形状をなしており、円柱部10bの平面形状の底面部10dでバックフィルム13を介してシリコンウェーハWを押圧するようになっている。
【0023】
なお、圧力伝達媒体10の頂部10aは必ずしも球面形状でなく平面形状に截頭したものでもよく、さらに必ずしも球面形状または平面形状に截頭する必要がなく、円錐形状であっても本発明の目的を達成できるが、シリコンウェーハWに加わる圧力の調整、弾性膜9の耐久性を考慮すると球面形状または平面形状に截頭するのが好ましい。
【0024】
スキージ12は例えばシリコンゴム製であり、バックフィルム13は例えば発泡ポリウレタン製である。
【0025】
上記加圧室8は回転軸3に設けられた送気路14を介して加圧装置(図示せず)に接続されて、適宜加圧されるようになっている。
【0026】
次に本発明に係わる圧力伝達媒体10を有する研磨装置1を用いたシリコンウェーハWの研磨工程について説明する。
【0027】
図1に示すように、研磨すべきシリコンウェーハWはリテーナ11により挟持されてキャリア4に取付けられる。キャリア4に取付けられたシリコンウェーハWはバックフィルム13を介して平面形状の底面部10dに密接している。
【0028】
しかる後、図2に示すスラリパイプ5からスラリSを研磨布Pに供給しながら、時計方向に回転するキャリア4を下降させて、時計方向に回転定盤2に設けられた研磨布PにシリコンウェーハWを押圧する。シリコンウェーハWを回転する研磨布Pに押圧しながら、回転するキャリア4をX軸、Y軸方向に揺動させて二次元の複雑な動きにより、シリコンウェーハWを均一に研磨する。この研磨工程において、キャリア本体7の加圧室8は回転軸3に設けられた送気路14を介して加圧装置からの圧縮空気により加圧されており、圧力伝達媒体10は弾性膜9を介して下方に押圧される。このとき圧力伝達媒体10は下部に扁平の円柱部10bを有する截頭円錐体10c形状をなしているので、シリコンウェーハWにかかる押圧力は、中心部分が大きく、圧力伝達媒体10が撓むので外周部分は小さくなる。これに伴って、加圧力による研磨速度は中心部分で最大になり、外周に向かうに従って小さくなり、外周部分で最小になる。一方、研磨布Pとの相対速度による研磨速度は、これとは反対に中心部分で最小になり、外周部分で最大になるので、これらの現象の相乗作用によりお互いに相殺されて、シリコンウェーハWの中心部分と外周部分は均一に研磨され、ウェーハW全体も均一に研磨される。
【0029】
上述のように相対速度による研磨速度の増減を相殺するように圧力伝達媒体10の形状を設計することにより圧力による研磨速度の増減を調整すれば、平坦度の優れたシリコンウェーハWを常に得ることができる。
【0030】
また、圧力伝達媒体10は断面形状が末広薄肉形状になっているので、圧力伝達媒体10は弾性を有し、振動を吸収し易く、そのため研磨面が振動の影響を受けることがなく、高精度の研磨面を得ることができる。
【0031】
さらに、例えばシリコンウェーハWの中心部分により大きな押圧力がかかるように圧力伝達媒体10を設計すれば、全体的に凹面形状のシリコンウェーハを得ることもできる。
【0032】
なお、圧力伝達媒体10の下部に扁平の円柱部10bが設けられているので、圧力伝達媒体10の製造時に先端部分が欠けたり、使用中に集中応力により破損することもない。
【0033】
なお、上記実施形態においては、加圧媒体を空気で説明したが、窒素などの不活性ガスまたは水、油等の液体を使用することも可能である。
【0034】
次に本発明に係わる研磨装置の他の実施形態について説明する。
【0035】
第1の実施形態を同一部分には同一符号を付して説明する。図4に示すように、キャリア4は扁平円板形状で、下方が開放された収納凹部6を有するキャリア本体7と、収納凹部6に加圧室8が形成ように設けられた弾性膜9と、この弾性膜9を挟んで加圧室8と反対側に設けられた圧力伝達媒体20と、この圧力伝達媒体20の周囲に設けられワークWを保持するリテーナ11と、圧力伝達媒体20と、この圧力伝達媒体20とリテーナ11を囲繞するように設けられ弾性体のリング形状のスキージ12と、圧力伝達媒体20とワークW間に介在するバックフィルム13とを有している。
【0036】
圧力伝達媒体20は球面形状の頂部20aと下部に扁平な円柱部20bを有する截頭円錐体20c形状をなしており、円柱部20bの底面部20dは平面形状をなしている。さらに、圧力伝達媒体20は、中心部厚さ25mmであり直径300.8mmの末広形状であることから、その形状に類似させるために厚さが3〜5mmの薄肉体の積層構造で形成されており、この積層構造はアルミナ系ファインセラミクスの成形体20pを結合手段、例えば接着剤で結合することにより形成されている。
【0037】
このような構造の圧力伝達媒体20は、板バネ構造となるためワークWの中心部分を大きな押圧力で、外周部分を小さな押圧力でより効果的に押圧することができ、より均一にワークWを研磨することができる。
【0038】
なお、本実施形態において、結合手段に接着剤を用いたが、例えばネジまたはピンを用いても板バネ構造の圧力伝達媒体20が得られ、さらには円柱形状の圧力伝達媒体を加工して一体形状としてもよく、これを用いればより均一にワークWを研磨することができる。
【0039】
【実施例】
直径300.8mm、頂部が球面形状をなし、中心部厚さ25mm、外周端部厚さ10mmを有するアルミナ系セラミックス製圧力伝達媒体を用い直径300mm、厚さ750mmのシリコンウェーハをコロイダルシリカの純水懸濁液を用いて研磨したところ、中心部分の厚さが外周部分よりも1μm薄い、凹面形状のシリコンウェーハを得た。
【0040】
【発明の効果】
本発明に係わる研磨装置を用いることで、高精度の研磨面を得ることができると共に、面形状をコンベックス形状にさせずにより平坦なワークを得ることができる。
【0041】
圧力伝達媒体に扁平円柱部を設けられば、圧力伝達媒体の製造時に先端部分が欠けたり、使用中に集中応力により破損することもない。
【0042】
圧力伝達媒体の円錐体を扁平にし、頂部を球面体または平面形状に截頭すれば、ワークに加わる圧力の調整が容易になり、より高精度の研磨面を得ることができると共に、弾性膜の耐久性を向上させることができる。
【0043】
圧力伝達媒体はアルミナ系ファインセラミクスにすれば、耐久性があり、ワークに対する汚染もない。
【0044】
圧力伝達媒体を厚さが3〜5mmの薄肉体の積層構造にすれば、板バネ構造になり、ワークの中心部分を大きな押圧力で、外周部分を小さな押圧力でより効果的に押圧することができて、より均一にワークを研磨することができる。
【0045】
薄肉体をアルミナ系ファインセラミクスの成形体で形成すれば、耐久性があり、ワークを汚染しない板バネ構造の圧力伝達媒体が得られる。
【0046】
圧力伝達媒体が薄肉体を接着剤で接着した積層構造であれば、容易に板バネ構造の圧力伝達媒体が得られる。
【0047】
圧力伝達媒体が薄肉体をネジまたはピンで固定した積層構造であれば、より強固な板バネ構造の圧力伝達媒体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる研磨装置に用いられるキャリアの断面図。
【図2】本発明に係わる研磨装置の説明図。
【図3】本発明に係わる研磨装置のキャリアに用いられる圧力伝達媒体の側面図。
【図4】本発明に係わる研磨装置に用いられるキャリアの他の実施形態の断面図。
【図5】従来の研磨装置に用いられるキャリアの断面図。
【符号の説明】
1 研磨装置
2 定盤
3 回転軸
4 キャリア
5 スラリパイプ
6 収納凹部
7 キャリア本体
8 加圧室
9 弾性膜
10 圧力伝達媒体
10a 頂部
10b 円柱部
10c 截頭円錐体
10d 底面部
11 リテーナ
12 スキージ
13 バックフィルム
14 送気路

Claims (7)

  1. 研磨布が設けられた定盤と、前記研磨布に押圧されて研磨されるワークが取付けられ回転軸により回転されるキャリアとを有する研磨装置において、キャリアは下方が開放された収納凹部を有するキャリア本体と、この収納凹部に加圧室が形成されるように設けられた弾性膜と、この弾性膜を挟んで加圧室と反対側に設けられた圧力伝達媒体と、この圧力伝達媒体の周囲に設けられワークを保持するリテーナとを有し、前記圧力伝達媒体は前記弾性膜により押圧される頂部が球面形状または平面形状に截頭され、さらに前記頂部から断面積が順次拡大する末広形状をなし、かつ底面部がワーク押圧のために平面形状をなすことを特徴とする研磨装置。
  2. 前記圧力伝達媒体は底面部が平面形状をなす扁平円柱部を有する円錐体であることを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
  3. 前記圧力伝達媒体の円錐体は扁平であり、その頂部が球面形状または平面形状に截頭されていることを特徴とする請求項2に記載の研磨装置。
  4. 前記圧力伝達媒体はアルミナ系ファインセラミクスであることを特徴とする請求項1ないし3項のいずれか1項に記載の研磨装置。
  5. 前記圧力伝達媒体は厚さが3〜5mmの薄肉体の積層構造であることを特徴とする請求項1ないし4項のいずれか1項に記載の研磨装置。
  6. 前記薄肉体はアルミナ系ファインセラミクスの成形体であることを特徴とする請求項5に記載の研磨装置。
  7. 前記圧力伝達媒体は薄肉体を接着剤で接着して積層構造にしたことを特徴とする請求項5または6項に記載の研磨装置。
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