JP3627254B2 - 電気採暖具 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、消臭手段をもつ布製電気採暖具、特にこの消臭手段の構成に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の布製電気採暖具は、特開平1−285212号公報に示すように、金属キレート含有触媒形消臭繊維を布製電気採暖具に構成することにより、人体から発生する汗や汚れによる不快な臭いを取り去ることを可能にするものであり、布製電気採暖具の使用感を高めるものであった。しかも、この消臭繊維は触媒形であり永続的な消臭効果を持続するものであり、電気毛布等ではこの効果はきわめて有効であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、こうした従来の電気採暖具は表布等の表面材に消臭手段を構じることにより消臭機能面では良好となるが、逆にこの表面材の色柄がこの消臭繊維の色によって制約され、明るく鮮やかなデザインを実現できるものでなく、暗いイメージのものとなりデザイン面でむしろ不快感を与えるものであった。すなわち、触媒形消臭剤を付加された消臭繊維自身は例えば青系等の色を有しており、またこの消臭剤の強いガス活性によりこの色が変色することもあり、こうした消臭繊維の色及び色変化を抑制するため、この消臭繊維よりも暗い色で目立たないようにしたデザインとなり、明るく鮮やかなデザインを供するものでない。この消臭繊維の量を減ずるとデザイン性は向上するものの、消臭効果及びこの耐久性を低下させることになり、問題の解決にはならない。
【0004】
本発明はかかる従来の問題点を解消するもので、消臭効果が高くしかも明るく鮮やかなデザインを実現できる電気採暖具の繊維構成を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の電気採暖具は、触媒形消臭剤が繊維重量当たり3重量%以上担持されてなる消臭繊維と、セラミック系抗菌剤が前記消臭繊維とは異なる繊維に付加されてなる抗菌繊維の少なくともこの2繊維が混紡されてなる混紡糸を製織加工した布生地と、この布生地に配設される発熱線とを備え、前記消臭繊維はカルボキシル基、アミノ基、スルホン酸基より選ばれた少なくとも1種を有する構成であり、この消臭繊維の前記混紡糸中の混紡率を10重量%以下にし、さらにこの消臭繊維の繊維長を前記混紡糸中のその他の繊維の平均繊維長よりも短く設定したものである。
【0006】
【作用】
この技術的手段による作用は次のようになる。金属フタロシアニン誘導体もしくは金属硫酸塩よりなる触媒形消臭剤が付加された消臭繊維は、この金属キレート部が消臭触媒作用を有し、硫化水素、メチルメルカプタン等の酸性ガスからなる臭気成分を分解する。また、この繊維のカルボキシル基、アミノ基、スルホン酸基等はアンモニア、アミン等の塩基性ガスの臭気成分を吸着する作用をもつ。この吸着された臭気成分は洗濯によって脱臭することができ、洗濯によって再活性されることになる。こうした触媒形消臭剤が繊維重量当たり3重量%以上担持され、かつこの消臭繊維の布生地の混紡率を10重量%以下にする、すなわち消臭剤が高密度に構成された消臭機能の高い消臭繊維を低混紡率で布生地を構成することにより、消臭機能を低下させることなく低混紡率にすることができ、これにより、明るく鮮やかなデザインが可能となる。
【0007】
電気毛布等の布製電気採暖具では、採暖面に直接人が触れて使用するものではどうしても汗や汚れが付着する。これによる微生物の増殖、及びこれに伴う悪臭はセラミック系の抗菌剤で抑制され、これで抑制できなかった悪臭や他からの悪臭が上記消臭メカニズムで消臭されることになる。汗等により消臭繊維の水分率が高くなった場合は、上記消臭の触媒活性を高めることになり、臭いの発生しやすい時ほど消臭能力が高まることになる。また、この消臭繊維は抗菌効果も有するが、例えば、上記塩基性ガスとの吸着後では、この抗菌効果はこれに遮へいされる傾向となるが、この消臭繊維とは異なる他の繊維に抗菌剤を配しているため、お互いの効果を損ない合うこともなくなる。
【0008】
こうして、消臭機能の高い消臭繊維とこれとは独立した抗菌機能繊維を構成することにより、消臭効果及びこの耐久性を低下させることなく、従来のデザイン性を損なう消臭繊維の混紡率を低下させることができ、明るく鮮やかなデザインが可能となる。
【0009】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。本実施例の電気採暖具は、例えば、図1の電気毛布の実施例に示すような構成である。図1において、1は毛布の布生地であり、布生地1は接結糸2によって袋状に構成された貫通孔に紐状の発熱線3が配設されている。また、発熱線3の端末部は端末端子処理されコード口ケース4に配設されている。なお、5は電気毛布の温度制御用コントローラである。
【0010】
この毛布の布生地1を構成する糸は、消臭繊維及び抗菌繊維を含む混紡糸を用いた。この消臭繊維は金属フタロシアニン誘導体よりなる触媒形消臭剤がレーヨン繊維に繊維重量当り5重量%担持されてなる消臭繊維を用いた。なお、この消臭繊維はスルホン酸基を有している。また、抗菌繊維はセラミック系抗菌剤が前記消臭繊維とは異なるアクリル繊維に練り込まれてなる抗菌繊維を用いた。この消臭繊維9重量%、抗菌アクリル繊維20重量%、アクリル繊維21重量%、ポリエステル繊維50重量%となるように混紡し混紡糸を得た。この糸で製織加工の後、起毛加工を施し、毛布の布生地を得た。
【0011】
次に、この比較例として、金属フタロシアニン誘導体よりなる触媒形消臭剤がレーヨン繊維に繊維重量当り2重量%担持されてなる消臭繊維を用いた。なお、この消臭繊維も同様にスルホン酸基を有している。上記アクリル繊維に練り込まれてなる抗菌繊維は用いずに、この消臭繊維18重量%、アクリル繊維32重量%、ポリエステル繊維50重量%となるように混紡し混紡糸を得た。この糸で同様の加工の後、比較例の毛布の布生地を得た。また、両生地ともに消臭繊維に対して同一の染色を行った。
【0012】
比較例の構成との消臭効果の比較実験では、図2、図3の特性図に示すように、硫化水素ガス、アンモニアガスによる消臭効果では、消臭繊維の少ない本発明の布生地構成は上記比較例の布生地構成のものと比較して、消臭性能に劣るところはなく、図2、図3の2h、3h後のデータでは、本発明の実施例の方がむしろ優れているという結果であった。また、さらにこの布生地構成で実際にモニター実験を行った結果、本発明の構成の消臭効果の方が優れていることがわかった。また、この傾向は時間が経過するほど顕著であった。
【0013】
このように、本発明の構成は消臭繊維の量を減らしているにもかかわらず、消臭効果は比較例の構成よりもむしろ優れており、しかも消臭繊維を減じているために、明るく鮮やかなデザインを実現することができ、実用上の価値はきわめて高いものであった。また、この消臭効果の耐久性では、本発明の構成は比較例の構成よりも優れており、これは時間経過とともに顕著であるので、布製電気採暖具にとっては、きわめて有効な発明である。
【0014】
一般に、電気毛布等の布製電気採暖具では、人が直接採暖面に触れて使用するものではどうしても汗や汚れが付着する。本発明の構成によれば、この汗や汚れによる微生物の増殖、及びこれに伴う悪臭はセラミック系の抗菌剤で抑制され、これで抑制できなかった悪臭や他からの悪臭が消臭繊維で消臭されることになる。また、汗等により消臭繊維の水分率が高くなった場合は、上記消臭の触媒活性を高めることになり、臭いの発生しやすい時ほど消臭能力が高まることになる。
【0015】
ところで、上記モニター実験では実験が経過するほど本発明の消臭効果の方が優れた結果になったのは、消臭繊維は抗菌効果も有するが、例えば、上記塩基性ガスとの吸着後では、この抗菌効果はこれに遮へいされる傾向となるが、本発明の場合、この消臭繊維とは異なる他の繊維に抗菌剤を配しているため、お互いの効果を損ない合うことがなくなるためであると考えられる。
【0016】
ここで、本発明の消臭繊維とは、金属フタロシアニン誘導体よりなる触媒形消臭剤が付加されてなる消臭繊維であり、この金属キレート部が消臭触媒作用を有し、硫化水素、メチルメルカプタン等の酸性ガスからなる臭気成分を分解し、また、この繊維に存するカルボキシル基、アミノ基、スルホン酸基等がアンモニア、アミン等の塩基性ガスの臭気成分を吸着する作用をもつものである。
【0017】
また、金属硫酸塩よりなる触媒形消臭剤が付加されてなる消臭繊維も上記消臭繊維と同様の消臭メカニズム、消臭効果を有するものであり、例えば金属硫酸塩としての硫酸銅をレーヨン繊維に重合させた消臭繊維を用いた実施例では、上記本発明の実施例と同じように、優れた消臭効果でありながら明るく鮮やかなデザインを実現できるものであった。
【0018】
消臭繊維を混紡する場合、色柄等デザイン性を良好にするためには、この消臭繊維の量が少ないことが必要であり、好ましくは、混紡率は10重量%以下、さらに好ましくは、5重量%以下であるとよい。また、この混紡率で消臭効果及びこの耐久性を維持するためには、上記消臭剤が高添加量で付加させることが必要である。こうした消臭剤の添加量は2重量%以下であることが一般的であるが、好ましくは、繊維重量当り3重量%以上付加されてなる消臭繊維であるとよい。この繊維重量当たりの担持等の付加量は余り多くなると繊維に十分に結合することができなくなることもあり、3重量%〜10重量%の範囲で付加されることが望ましい。
【0019】
また、一般に、抗菌繊維とは抗菌剤を付加してなる繊維であり、この抗菌剤自身は消臭機能を有さないが、悪臭の発生源となる細菌の増殖を抑制するということで結果的に防臭機能をもつものであり、他の悪臭を積極的にとることはできない。本発明の抗菌繊維は、セラミック系抗菌剤が前記消臭繊維とは異なる繊維に付加されてなる繊維であり、無機化合物より構成される抗菌剤であるため、有機系抗菌剤と比較して、経時変化もほとんどなく、長時間にわたって安定して抗菌効果を維持でき、また上記消臭繊維との影響もなく、独立して各機能を確実に果たせるものである。なお、本発明の抗菌繊維の色は、ほとんど白色にすることが容易であり、染色によってどのような色にも着色できるので、この抗菌繊維の量を増やしてもデザイン性を損なうものではない。
【0020】
また、デザイン性をさらに向上させるためには、この混紡糸中にこの消臭繊維を均一に分散させると良く、この消臭繊維の繊維長をこの混紡糸中のその他の繊維の平均繊維長よりも短くするとよい。
【0021】
本実施例では、布製電気採暖具として電気毛布の実施例で説明してきたが、電気ひざかけ、足温器、あんか、座ぶとん等の布製電気採暖具でも同様の効果を奏するものであり、実用上の効果もきわめて大きい。
【0022】
【発明の効果】
以上のように本発明の電気採暖具によれば、消臭剤が繊維重量当たり3重量%以上担持されてなる消臭繊維とセラミック系抗菌剤がこの消臭繊維とは異なる繊維に付加されてなる抗菌繊維の少なくともこの2繊維が、この消臭繊維の混紡率が10重量%以下になるように低混紡率で布生地を構成しているので、布製電気採暖具の快適性にも影響する布生地のデザインを明るく鮮やかなデザインにすることができるばかりでなく、優れた消臭効果及びこの耐久性も有しており、非常に快適な電気採暖具を提供するものであり、実用上きわめて有益なものである。また、この消臭繊維の繊維長を短くすることにより、この消臭繊維の混紡糸中における分散性を高め、さらにデザイン性を高めることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における電気採暖具の構成図
【図2】本発明の一実施例における電気採暖具の消臭効果の特性図
【図3】本発明の一実施例における電気採暖具の消臭効果の特性図
【符号の説明】
1 布生地
2 接結糸
3 発熱線
4 コード口ケース
5 コントローラ

Claims (4)

  1. 触媒形消臭剤が繊維重量当たり3重量%以上担持されてなる消臭繊維と、セラミック系抗菌剤が前記消臭繊維とは異なる繊維に付加されてなる抗菌繊維の少なくともこの2繊維が混紡されてなる混紡糸を製織加工した布生地と、この布生地に配設される発熱線とを備え、前記消臭繊維はカルボキシル基、アミノ基、スルホン酸基より選ばれた少なくとも1種を有する構成であり、この消臭繊維の前記混紡糸中の混紡率を10重量%以下にし、さらにこの消臭繊維の繊維長を前記混紡糸中のその他の繊維の平均繊維長よりも短く設定した電気採暖具。
  2. 触媒形消臭剤が金属フタロシアニン誘導体よりなる請求項1記載の電気採暖具。
  3. 触媒形消臭剤が金属硫酸塩よりなる請求項1記載の電気採暖具。
  4. 消臭繊維に対する触媒形消臭剤の担持量を繊維重量当たり3重量%〜10重量%の範囲に設定した請求項1記載の電気採暖具。
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